【課題を解決するための手段】
【0013】
この技術的課題は、請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプと請求項12に記載の特徴を有する真空ポンプを備える装置とによって解決される。
【0014】
ケーシングと、固定子内に回転可能に軸支されている回転子用の駆動装置だけを有するポンプ装置とを備える本発明の真空ポンプは、前記ケーシングに連結可能に据え付けられた少なくとも1つの追加のケーシング部分が、このケーシングに対して同軸方向に配置されていること、及び、1つの吸気口が、前記ケーシング内に同軸方向に設けられていて、1つの排気口が、前記少なくとも1つの追加のケーシング部分内に同軸方向に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の真空ポンプには、顧客側から頻繁に要求されるような、大きい構造長さの真空ポンプが、同軸方向に据え付けられた追加のケーシング部分によって実現可能であるという利点がある。さらに、標準的な真空ポンプが使用され得る。このとき、当該据え付けられたケーシング部分は、その顧客の仕様に合った要求に対して必要な寸法を有する。
【0016】
さらに、従来の公知の工具を用いて可能であるケーシングよりも大きい構造長さを有する連続したケーシングを備える真空ポンプが製造され得る。すなわち、ケーシングの構造長さは、その長さを従来の技術に属する工作機械によって制限される。
【0017】
原理的には、任意の長さが、少なくとも1つの追加のケーシング部分を設けることによって提供され得る。
【0018】
したがって、当該据え付けられたケーシング部分は、例えば据え付けられた導管と比べて、ケーシングの直径及び外郭が、真空ポンプの全体に対して一定に且つ均質に形成されているという利点がある。その結果、例えば質量分析計を有する装置内のフランジ、開口部、レールシステム等が、本発明の真空ポンプによって使用され得る。
【0019】
さらに、真空ポンプの長手軸に対して半径方向に配置されたポンプチャンバの排気口に連結できるようにするため、据え付けられた導管が、多くの場合に屈曲部分を有する。この屈曲部分のために、当該従来の技術に属する、据え付けられた導管を有する真空ポンプが、装置に存在する収容部内で使用できない。
【0020】
本発明の好適な実施の形態によれば、当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分は、少なくとも1つのラジアル吸気口を有する。
【0021】
このラジアル吸気口は、真空ポンプが配置される装置のポンプチャンバの排気口に連結させるために使用される。
【0022】
当該装置が、複数のチャンバを有する場合は、据え付けられたケーシング部分が、対応する数の吸気口を有することが好ましい。これらの吸気口はそれぞれ、当該チャンバの排気口に一致する。
【0023】
本発明の別の好適な実施の形態は、据え付けられたケーシング部分の少なくとも1つのラジアル吸気口が、当該据え付けられたケーシング部分の駆動部から離れた端部に配置されていることを提唱する。
【0024】
例えば、飛行時間型システムを有する質量分析計を備える装置は、多くの場合に、複数の異なる吸引口間に相当な間隔を有する。当該複数のラジアル吸気口が、据え付けられたケーシング部分内で顧客の仕様に合わせて形成され得ることによって、少なくとも1つの吸気口又は最後のラジアル吸気口を駆動部から離れた端部に設けること、すなわちポンプ能動構造体から離れて配置されているケーシング部分の端部に設けることが有益である。
【0025】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、真空ポンプのケーシングが、少なくとも1つのラジアル吸気口を有する。このことは、追加のケーシング部分が据え付けられる当該ケーシング内の真空ポンプ自体が、少なくとも1つのラジアル吸気口を既に有することを意味する。
【0026】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分が、ケーシングに対して同じ外郭を少なくとも部分的に有する。これにより、真空ポンプのケーシングと据え付けられたケーシング部分とが、ただ1つのケーシングの外郭及び形を成すことが保証される。したがって、真空ポンプを装置の収容部内に、例えば質量分析計と一緒に非常に有効に配置することが可能である。
【0027】
ケーシングと据え付けられたケーシング部分との当該等しい外郭は、例えばくびれ部によって中断され得る。
【0028】
本発明の別の好適な実施の形態は、真空ポンプのポンプ能動構造体が、その少なくとも一部を据え付けられたケーシング部分内に配置されていることを提唱する。例えば、真空ポンプの回転子の軸受用の星形軸受台を据え付けられたケーシング部分内に配置することが可能である。
【0029】
同様に、その他の部品が、ケーシング部分内に設けられ得る。
【0030】
本発明の別の好適な実施の形態は、真空ポンプのポンプ能動構造体が、据え付けられたケーシング部分内に配置されていないことを提唱する。この場合には、当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分は、この真空ポンプのケーシングの純粋な延長部分を形成する。
【0031】
当該ケーシングと当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分とは、好ましくは少なくとも550ミリメートルの全長を有する。500ミリメートル未満の真空ポンプのケーシングの長さは、既存の機械によって通常の経費で製造され得る。
【0032】
当該ケーシングと当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分とは、好ましくは少なくとも700ミリメートルの全長を有する。本発明は、550ミリメートルより長いときに非常に有益であり、例えば、700ミリメートルより長い寸法が、有効に使用可能である。
【0033】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、当該ケーシングの吸気口と当該据え付けられたケーシング部分の排気口とが、重なって形成されている。したがって、当該据え付けられたケーシング部分が、真空ポンプのケーシングの延長部分のように作用することが保証される。
【0034】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、ケーシングのさらなる延長を可能にするため、据え付けられた第1ケーシング部分の吸気口と据え付けられた第2ケーシング部分の排気口とが、同様に重なって形成されている。
【0035】
本発明の別の特に好適な実施の形態は、少なくとも1つの断熱要素及び/又は振動遮断要素及び/又は電気絶縁要素が、当該真空ポンプのケーシングと当該据え付けられたケーシング部分との間に設けられているか又は据え付けられた2つのケーシング部分間に設けられていることを提唱する。この機能は、例えば、特別に形成された密封要素中に組み込まれ得る。
【0036】
例えば、ケーシング部分とケーシング部分との間の断熱をこの実施の形態によって実現することが可能である。電気絶縁及び/又は振動遮断も、この実施の形態によって可能である。
【0037】
本発明の好適な実施の形態によれば、真空ポンプが、ターボ分子ポンプとして構成されている。
【0038】
しかしながら、その他の種類の真空ポンプを本発明のケーシング延長部分と一緒に設けることも可能である。
【0039】
別の実施の形態によれば、真空ポンプが、少なくとも2つの気体吸気口を有する真空ポンプとして形成され得る。この種類の真空ポンプは、スプリットフローポンプとも呼ばれる。多段式の気体吸気システムを有するこの種類の真空ポンプは、多くの場合に、例えば質量分析計を有する装置内で使用される。当該装置でも、顧客の仕様に合った要求に適合されたケーシングの構造が多くの場合に有益である。
【0040】
当該真空ポンプは、例えば、少なくとも1つのターボ分子ポンプ段及び/又は少なくとも1つのホルベックポンプ段を有し得る。一般に、当該少なくとも1つのホルベックポンプ段は、気体の送り方向に沿って、当該少なくとも1つのターボ分子ポンプ段の後方に配置されている。当該複数の気体吸気口が、特に、当該複数のターボ分子ポンプ段及び/又は複数のホルベックポンプ段の前方に配置されているか又はこれらのポンプ段の間に配置されているか又はこれらのポンプ段の後方に配置されている。
【0041】
ケーシングと、固定子内に回転可能に軸支されている回転子用の駆動装置だけを有するポンプ装置とを備える真空ポンプを持つ本発明の装置であって、この装置が、少なくとも1つのポンプ用フランジと、1つのチャンバ用フランジを有する1つのチャンバとを有し、この装置が、1つのポンプ用フランジと1つのチャンバ用フランジとから成る、チャンバと真空ポンプとを真空気密に結合させるためのフランジ結合部を有する当該装置は、前記ケーシングに連結可能に据え付けられた少なくとも1つの追加のケーシング部分が、前記真空ポンプの前記ケーシングに対して同軸方向に配置されていること、1つの吸気口が、前記ケーシング内に同軸方向に設けられていて、1つの排気口が、前記少なくとも1つの追加のケーシング部分内に同軸方向に設けられていること、及び、当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分が、少なくとも1つのラジアル吸気口を有し、当該ラジアル吸気口は、前記装置の少なくとも1つのチャンバに連結可能に形成されていることを特徴とする。
【0042】
真空ポンプを有する装置のこの本発明の構成によって、非常に高い加工コスト及び製造コストが、当該ケーシングの製造時に発生することなしに、この真空ポンプは、複数の吸引口を有する装置内で使用され得る。この装置では、これらの吸引口は、互いにかなり離れている。
【0043】
本発明の特に好適な実施の形態によれば、当該装置が、力伝達構造部を有する。この力伝達構造部は、力をガイド部からフランジ結合部内に存在する少なくとも1つの作用点に伝達する力伝達構造部として構成されている。この力伝達構造部は、欧州特許出願公開第2228540号明細書に記載されている。
【0044】
既に説明されたように、本発明の装置は、質量分析計を有する装置で非常に有益に使用される。何故なら、当該装置では、互いに離れている必要に応じた複数の吸引口を有する複数の気体吸気口が存在するからである。
【0045】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、当該真空ポンプのケーシングと、当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分とが、当該装置内に配置された収容部に適合された外郭を有する。したがって、当該据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分を有する真空ポンプを既定の構造の装置内に差し込むことが可能である。真空ポンプのケーシング用の当該装置内のこの収容部は、この真空ポンプのケーシングの外郭に合わせて形成されている。この場合には、当該据え付けられたケーシング部分を有するこのケーシングの収容が、問題なく可能であるように、当該据え付けられたケーシング部分が、同じ外郭を有することが好ましい。
【0046】
基本的には、当該据え付けられた少なくとも1つのハウジング部分を当該真空ポンプのケーシングに対してずらすことも可能である。この構成は、対応する顧客の仕様に合った要求で実現される。
【0047】
個々のケーシング部分の許容誤差に起因して、及び、当該差し込み時に、ケーシングと、据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分との相互の形状偏差及び位置偏差が発生するので、高真空側の軸受を真空ポンプの当該ケーシング内に設けることが好ましい。このとき、当該据え付けられたケーシング部分に対する許容誤差が、より大きく選択され得る。
【0048】
好ましくは、本発明の真空ポンプは、レールシステムによって装置内に固定される。欧州特許出願公開第2228540号明細書に記載されているように、このレールシステムは、真空ポンプを軸方向の差し込み又は引き抜きによって片側から取り付けること及び取り外すことを可能にする。このとき、当該取り付け及び取り外しのための真空ポンプへのアクセスは、片側だけから可能である。したがって、当該システムは、よりコンパクトに構成され得る、又は、当該真空ポンプは、より少ない経費で点検若しくは交換され得る。
【0049】
好ましくは、凸面並びにその他の形状誤差及び軸受誤差に起因して、ケーシングが、応力に曝される結果、許容されないほどに変形されることがないように、据え付けられた複数のケーシング部分上の密封面間の領域が、再設定されるように構成される。
【0050】
据え付けられたケーシング部分内のラジアル吸引口の、ケーシングまでの距離が大きいことによって、特に、真空ポンプの高真空領域をより高い温度で加熱することが可能になる。据え付けられた少なくとも1つのケーシング部分の大きい表面と構造長さとが、当該真空ポンプの温度挙動に有利に作用する。
【0051】
当該複数の部材から成る構成によって、ケーシング部分と真空ポンプのケーシングとの間の断熱をさらに実現することが可能である。当該断熱は、接触面を減少させることによって又は断熱性の中間要素若しくは密封要素を使用することによって達成され得る。したがって、電気絶縁又は振動遮断も実現可能である。
【0052】
ベースとなる真空ポンプとしての真空ポンプのケーシングと、異なるケーシング延長部分、すなわち、据え付けられた、異なる長さのケーシング部分とから成るモジュール構造が、本発明によって可能である。しかしながら、当該ベースとなる真空ポンプを延長部分の代わりにタブを用いて駆動させることも可能である。
【0053】
本発明のその他の特徴及び利点を、本発明の真空ポンプの複数の実施の形態が専ら例示的に示されている添付図面に基づいて説明する。