(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記力制御要素が、前記密封構造に結合された少なくとも1つの伸長制限要素を備え、前記少なくとも1つの伸長制限要素が、前記密封構造の少なくとも一部の伸長の量を制限するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記伸長制限要素が、前記密封構造の第1の量の伸長を許容する第1の状態から前記密封層の第2の量の伸長を許容する第2の状態に変化することができる、請求項2に記載のシステム。
前記伸長制限要素が、前記第1の状態と前記第2の状態との間の中間状態に変化することができ、前記中間状態が、前記第1の量と前記第2の量との間の中間の量の伸長を許容する、請求項3に記載のシステム。
前記少なくとも1つの伸長制限要素が、少なくとも1つの細長い要素を備え、前記少なくとも1つの細長い要素が、その長軸に沿って最大長さまで伸長でき、かつ制限距離を越えた前記密封構造の伸長を防止する、請求項2記載のシステム。
前記可撓性密封構造が、伸長の方向とは反対方向に収縮するように構成され、前記密封構造が、前記密封構造の収縮の量を制限する少なくとも1組の収縮制限構造を備える、請求項1に記載のシステム。
前記密封構造に取り外し可能に結合された保持構造をさらに備え、前記保持構造が、前記密封構造に結合されたときに前記密封構造を伸長した状態に維持する、請求項1に記載のシステム。
前記密封構造に結合された送達装置をさらに備え、前記送達装置が、前記システムが組織に配置されたときに前記組織外傷部の軸に対して横断方向に向くように適合された複数の横断方向の要素を備える、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
外科切開部および創傷部の感染は、皮下および/または皮下組織内に形成され得る液体貯留小嚢で生じる細菌の増殖から起こり得る。これらの小さい液体貯留部は、血流が不足するため、感染を防止または処置するのに不十分な免疫機能または抗生物質の浸透をもたらし得る。細菌で汚染されると、これらの部位で無制限の増殖が起こり得る。したがって、これらの液体貯留部の形成を減少させることにより、創傷感染のリスクを低減することができる。一部の閉鎖技術は、これらの液体小嚢の形成を減少させるために皮膚または深部の縫合を利用しているが、これらの縫合は、創傷感染のリスクを増加させ得る異物としても作用し得る。さらに、不適切な縫合技術は、液体が貯留して最終的に細菌による汚染を可能にするリスクを伴う重大な皮下死腔を残すことがある。創傷感染に加えて、創傷治癒が、創傷部の過度の張力によって阻害され得る。過度の張力は、切開部または創傷部の一部に局所的な力を加える縫合糸または他の創傷閉鎖装置から起きることがあり、瘢痕の増大をもたらすこともある。創傷部に亘る張力は、他の理由、例えば、閉鎖後の運動中、重力などからも起こり得る。
【0022】
研究により、保湿創傷治癒環境は、乾燥創傷環境を創生する現行のガーゼ包帯に比べ、創傷部の中心に向かった細胞遊走を容易にすることによって創傷部のより迅速な再上皮形成を促進し得ることも実証された。さらに、外科および他の創傷部では、免疫細胞の浸潤と、炎症と、それに続く浮腫とが起こる。免疫応答は、創傷治癒の不可欠な過程であり得るが、続いて起こる浮腫は、治癒の障害ともなり得る。最後に、適切な治癒には、酸素および栄養物が必要であり、これには、一部の免疫過程によって妨げられ得る切開部の十分な灌流が必要である。
【0023】
一例では、陰圧または減圧創傷治療システムを用いて、外科的に閉鎖された皮膚外傷部または他の種類の細長い裂傷部もしくは創傷部を処置することができる。陰圧閉鎖療法システムは、密封層と収集チャンバとを備えることができる。密封層は、外科切開部などの外科的に閉鎖された皮膚外傷部の周囲にシールを形成し、かつ密封されたエンクロージャまたは空間を形成できるようにデザインすることができる。一部の例では、密封層は、単一要素または本体を含むことができ、他の例では、密封層は、密封された空間または領域を形成するように一緒に取り付けることができる複数の要素を含むことができる。密封層は、単一の材料層および複数の材料層も含むことができる。シールは、密封されたエンクロージャまたは空間内の圧力を低下させて低いレベルに維持できるように十分に気密にすることができる。陰圧閉鎖療法システムは、切開部または創傷部の長さに沿った外科的に閉鎖された切開部に加えられる減圧を分配するように構成された収集チャンバを含むこともできる。陰圧閉鎖療法システムを用いて、二次癒合または遅延一次閉鎖(すなわち、三次癒合)による治癒のために開いたままの外科切開部を処置することもできる。このシステムは、密封層によって形成される閉じた系内に密閉される外科切開部につながった収集チャンバも備えることができる。収集チャンバは、作動されると、外科切開部に陰圧を生成して、例えば、治癒を促進する、滲出物を除去する、かつ/または感染率を低下させることができる。一部の特定の例では、本明細書において提供されるシステムは、細長い構造を有することができ、かつ外科切開部の長さに適合する大きさまたは構造にすることができる。収集チャンバは、密封層に一体に形成する、もしくは予め取り付けても良く、または収集チャンバおよび密封層を、収集チャンバを密封層の下側に配置できるように構成しても良い。
【0024】
一部の実施形態では、システムは、吸引装置をさらに備えている。吸引装置がシステムと共に使用される場合は、吸引装置は、密封されたエンクロージャまたは空間と連通するように構成することができる。吸引装置は、密封層および収集チャンバと共に、外科切開部または他の種類の創傷部を処置するための閉じた系を形成することができる。吸引装置は、結合されたら、密封されたエンクロージャ内の空気の体積を強制的に膨張させることによって、密封されたエンクロージャ内の圧力レベルを下げるために用いることができる。吸引源は、閉じた系または開いた系とすることができる。例えば、吸引装置は、シリンジ、動力ポンプ、ベンチュリ系、強制膨張装置、定荷重ばね装置、静的な陰圧装置、またはあらゆる適切な能動的もしくは受動的吸引源とすることができる。一部の実施形態では、吸引源は、収集チャンバと一体に形成することができる。一部の実施形態では、吸引源は、延長チューブの使用によって収集チャンバに接続されている。
【0025】
一部の実施形態では、システムは、さらに接触層を備えている。接触層は、収集チャンバとの流体連通を可能にするように構成することができる。接触層は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部の表面に接触して配置することができる。一部の実施形態では、接触層は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部のみに接触させ、外傷部を取り囲んでいる部分には接触しないようにすることができる。他の実施形態では、接触層は、皮膚外傷部と皮膚外傷部を取り囲んでいる部分との両方に接触させることができる。接触層は、収集チャンバと皮膚外傷の外科部位との間の流体連通の連続性を容易にすることができる。一部の例では、接触層は、限定されるものではないが、発泡体、積層メッシュマトリックス、ガーゼ、綿、スポンジ、もしくは当技術分野で既知の適切な材料を含め、多孔質材料または他の空隙を有する構造を含み得る。接触層が使用される一部の実施形態では、接触層は、送達物質の送達媒体として機能することができる。送達物質は、限定されるものではないが、成長因子、抗生物質、抗菌剤、またはあらゆる適切な送達剤を含み得る。一部の実施形態では、治癒の改善に使用される送達物質は、接触層と一体にされる。一部の実施形態では、使用される送達物質は、収集チャンバと一体にされる、または収集チャンバと共に配置される。
【0026】
一部の実施形態では、システムは、保護層をさらに備える。保護層を用いて、皮膚外傷の外科部位を包囲することができる。例えば、保護層は、皮膚外傷部を取り囲んでいる皮膚の部分に取り付けまたは接着することができる。保護層の下側の感圧接着剤は、皮膚への取り付け性または接着性を提供することができる。保護層を用いて、密封層と共にシールを形成することもできる。このシールは、気密性であるか、または水蒸気に対して半透過性または不透過性とすることができる。一部の実施形態では、保護層は、皮膚外傷部の周囲に適合するように皮膚外傷の外科部位に合った大きさにすることができる。一部の例では、保護層は、大きさを合わせるためにカットすることができるが、他の実施形態では、保護層は、大きさを合わせやすくするためにミシン目または他の事前に画定された分離構造を備えることができる。特定の実施形態では、保護層は、この保護層が皮膚外傷部の周囲に配置された後に除去することができる薄い中心剥離ストリップまたは層を有することができる。このような実施形態では、広めの接触層を保護層の上に配置することができる。保護層は、接触層を皮膚外傷の外科部位に取り付けるために用いることができ、かつ外科部位にアクセスするための接触層の除去に伴う外傷から下側の皮膚または組織を保護することができる。保護層は、浸軟から皮膚外傷部の周囲の皮膚を保護するのに適したあらゆる既知の材料とすることができる。保護層は、Duoderm(登録商標)創傷ケア製品を含め、あらゆる様々な発泡体および/または親水コロイド材料を含むことができる。
【0027】
静的な陰圧閉鎖療法システムの収集チャンバは、切開部に加えられる圧力レベルを、外科的に閉鎖された外傷部の長さに亘って分配するように構成することができる。一部の実施形態では、収集チャンバは、皮膚外傷部の外科的に閉鎖された切開部に配置される前に、予め真空化された状態にすることができる。このような実施形態では、収集チャンバは、皮膚外傷部に連通したら、作動させて皮膚外傷部に減圧をかけることができる。一部の例では、収集チャンバは、管状構造を含む。管状構造は、格子管、例えば、成形管または可撓管を含み得る。この管は、この管が特定の構造に曲がる、または変形するのを可能にすると共に、管がその構造に管を保持または付勢するのを可能にする変形可能な支持体または弾性支持体を備えることができる。例えば、支持構造体は、管の内腔に結合されるか、または他の方法で管を支持する、管を取り囲んでいるワイヤ・メッシュ・ケージまたはフレームを備えることができる。一部の実施形態では、管は、この管の壁部内に一体化されたワイヤ支持構造体を有する。支持構造体は、成形用プラスチック材料も含んでも良いし、または管自体が、成形用プラスチックを含んでも良い。成形用材料は、限定されるものではないが、熱可塑性プラスチック、弾性材料、またはあらゆる適切な成形材料を含み得る。一部の実施形態では、収集チャンバは、使い捨て用に構成することができ、他の実施形態では、収集チャンバは、使用中に真空化して再び真空化することができる。
【0028】
一部の実施形態では、収集チャンバは、1つ以上の波形部分を含む可撓管である。このような実施形態では、波形管状部分は、可撓性にすることができ、外科的に閉鎖された皮膚外傷部の表面トポロジーに適合することができる。波形管状部分により、可撓管が創傷部または切開部の2次元または3次元構造に適合することができ、かつ可撓管が、患者が動くとき、または創傷部が治癒するときに創傷部の構造の変化に応じて受動的に調整することができる。一部の実施形態では、可撓管は、全体が波形の管を含むことができ、他の実施形態では、可撓管は、複数の波形管状部分であり、これらの部分間に個別収集チャンバまたは非波形部分を備えている。一実施形態では、非波形部分は、硬質としても良いし、または半硬質もしくは波形部分よりも可撓性が低い可撓性としても良い。一部の実施形態は、管内に配置された少なくとも1つの非波形部分を備えることができ、他の実施形態は、管に沿って配置された2つ以上の非波形部分を備えることができる。管状セグメントは、管の長さに沿って流体連通させ、かつ/または管に可撓性を付与して、全収集チャンバ構造と、硬質非波形部分と、可撓性波形管状部分とが、皮膚または外科部位が動くときにこの部位に適合するようにする波形管によって連結することができる。時には、可撓管は、患者の不快感を緩和する、または治療システムから局所的な圧力点を減少させることができる。収集チャンバに沿って硬質収集部分と可撓性部分との両方を備える一部の実施形態では、可撓管セグメントと硬質収集部分とは、密封層に埋め込む、密封層に結合する、または密封層と一体に形成することができる。一部の実施形態では、個別収集部材のみが、密封層に結合されるか、または埋め込まれる一方、可撓管セグメントは、結合されたり埋め込まれたりしない。
【0029】
システムの一部の実施形態は、収集チャンバと密封層とを備え、この密封層と収集チャンバとは、皮膚外傷部に流体連通している。流体連通は、皮膚外傷部と収集チャンバとの間を流体連通させる密封層と収集チャンバとにおける一連の開口部によって確立することができる。開口部は、密封層の対応する開口部が収集チャンバの開口部に整合するように、収集チャンバの長さに沿って長手方向に配置することができる。次いで、流体またはあらゆる他の適切な物質を、外科的に閉鎖された皮膚外傷部から収集チャンバ内に引き込むことができる。任意選択の接触層を利用する場合、流体は、まず接触層を通過し、次いで密封層と収集チャンバとを連結している孔を通過することができる。加えて、収集チャンバ全体に配置された一連の開口部は、皮膚外傷部への圧力の分配を可能にし、程度が部分によって異なり得る局所圧力部分または流体集積部分を減少させる、または排除することができる。
【0030】
一部の実施形態では、収集チャンバは、一方向弁をさらに備える。この一方向弁を用いて収集チャンバの真空化を容易にすることができる。一方向弁を用いて、収集チャンバ内の減圧または予め真空化されたレベルの圧力を再び達成することもできる。一部の実施形態では、一方向弁を用いて、収集チャンバの真空化と収集チャンバの再真空化との両方を促進することができる。一方向弁は、この弁を介した吸引源の収集チャンバへの取り付けを容易にすることと、吸引源による収集チャンバからの空気分子の除去を可能にすることによって、収集チャンバの再真空化を容易にする役割を果たすことができる。吸引源を用いて、一方向弁の使用によって収集チャンバから滲出物または空気を除去することもできる。一部の実施形態では、第1の一方向弁を用いて収集チャンバを真空化し、第2の一方向弁を用いて収集チャンバを再び真空化する。一部の実施形態では、一方向弁は、収集チャンバと一体にすることができる。一部の実施形態では、一方向弁は、収集チャンバの一端を塞ぐために使用される取り外し可能なプラグに取り付けられる。一部の実施形態では、複数の一方向弁を設けることができ、空気または物質が収集チャンバまたは密封層から皮膚外傷部に逆流するのを防止するために1つ以上の弁を一連の開口部内に配置するか、または開口部に接続する。一方向弁は、ダックビル弁またはフラップ弁を含め、あらゆる様々な構造を有することができる。
【0031】
セグメント化収集装置または他の多腔装置を、一部の実施形態の単一チャンバ型収集チャンバの代わりに使用することができる。セグメント化収集チャンバは、互いに流体連通してもしなくても良い第1のチャンバと第2のチャンバとを備えることができる。一例では、第1のチャンバは、密封層と直接連通しているが、第2のチャンバは、第1のチャンバと連通している。デュアルチャンバ型収集チャンバが使用される実施形態では、1つ以上のセグメントまたはチャンバを吸引源とすることができる。吸引源は、限定されるものではないが、定荷重ばねなどのばね機構を含め、非動力式または受動式の作動/制御機構を備えることができる。受動式作動/制御機構を用いて、収集チャンバと密封層との間の密封されたエンクロージャまたは空間内を一定レベルの圧力にして維持することができる。一部の実施形態では、デュアルチャンバ型収集チャンバは、限定されるものではないが、プランジャを含む往復運動機構を備えている。プランジャは、例えば、定荷重ばねに取り付けられるときに、手動でよけても良いし、または受動的によけられても良い。一部の実施形態では、第2のチャンバは、密封されたエンクロージャとデュアルチャンバ型収集チャンバとの間で共有される空間の連結体積中の空気の体積を膨張させる。1つまたはセグメントもしくはチャンバは、動力式または能動式の作動/制御機構を備えることもできる。
【0032】
一部の実施形態では、システムは、外科的に閉鎖された切開部の長さに適合する大きさまたは構造にすることもできる。一部の実施形態では、収集チャンバは、創傷部の長さまで伸長されることによって、皮膚外傷の閉鎖された切開部の長さに適合する。このような実施形態では、収集チャンバは、親水コロイド材料から形成することができる。このような材料により、収集チャンバを新たな所望の長さまで伸長することができ、長さの変化をもたらす応力が解放された後もその長さを維持する。このような実施形態では、システムは、親水コロイドまたはあらゆる適切な材料から形成することができる。一部の実施形態では、システムは、閉鎖された切開部の長さまで短くすることができる。一部の実施形態では、システムは、皮膚外傷の閉鎖された部分の長さにカットすることができる。このような実施形態では、収集チャンバのカットされた端部は、収集チャンバに圧力がかかったときに自己密封することができる。一部の実施形態では、収集チャンバは、カットされた後に密封することができる。一部の実施形態では、収集チャンバは、端部キャップ、プラグ、閉塞密封シート、一方向弁を備えた端部キャップ、定荷重ばね、減圧システム、または収集チャンバの端部を密封するのに適したあらゆる手段で密封することができる。一実施形態では、皮膚外傷部の長さに適合するように調整された収集チャンバの端部を密封するために使用される構造は、収集チャンバに取り付けられると剥がれにくいように構成されている。別法では、皮膚外傷部の長さに適合するように調整された収集チャンバの端部を密封するために使用される構造は、取り外し可能な構造とすることができる。一部の実施形態では、システムは、互いに平行または連続的に配置された一連の収集チャンバを備えている。このような実施形態では、1つ以上の収集チャンバを一連の収集チャンバから除去して、皮膚外傷の閉鎖された切開部の幅に合わせることができる。他の実施形態では、1つ以上の収集チャンバを、満杯または目詰まり時に交換することができる。
【0033】
一部の実施形態では、接触層を調整して、外科的に閉鎖された皮膚外傷部の長さに適合させることができる。例えば、接触層は、閉鎖された切開部または創傷部の長さに基づいて長くする、または短くすることができる。一部の実施形態では、接触層は、閉鎖された切開部の長さにカットすることができる。一部の実施形態では、収集チャンバ、接触層、および/または密封層を調整して、外科的に閉鎖された切開部の長さに適合させることができる。一部の実施形態では、システムが患者に配置される前に、収集チャンバのみを切開部の長さに適合するように調整し、他の実施形態では、システムが患者に配置される前に、接触層または密封層のみを外科的切開部の長さに適合するように調整する。一部の実施形態では、患者に配置される前に、収集チャンバと、接触層と、密封層とをそれぞれ、切開部または創傷部の長さに適合するように個々に調整することができる。一部の実施形態では、収集チャンバと、接触層と、密封層とを互いに一体にして、システムを、単一体として外科的に閉鎖された切開部または創傷部の長さに適合するように調整する。
【0034】
本明細書において提供されるシステムは、患者の体表面とシールを形成するための密封層を備えている。一部の実施形態では、このシールは気密である。一部の実施形態では、密封層は、可撓性の不透過性材料を含む。一部の実施形態では、密封層は、半硬質材料である。密封層が半硬質材料である実施形態では、密封層は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部に対する引っ張り支持体となり得る。半硬質密封層は、外傷が治癒するときに外科的に閉鎖された皮膚外傷部に対する機械的な張力をさらに緩和するであろう。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書において提供されるシステムは、吸収性ビーズをさらに備えている。吸収性ビーズは、切開部または創傷部、および/または収集チャンバに配置される。一部の実施形態では、システムは、抗菌剤を含むことができる。抗菌剤は、限定されるものではないが、銀、ヨウ素、クロルヘキシジン、またはあらゆる他の適切な抗菌剤を含む。
【0036】
本明細書において提供される一部の例は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部を包囲する密封されたエンクロージャ内を一定の圧力レベルにするように構成されている。一部の実施形態では、この圧力レベルは、約0.001〜約1気圧である。密封層の下側の密封された空間に流体連通すると、密封層の下側の大気圧のレベルは、約0.001気圧、約0.005気圧、約0.01気圧、約0.05気圧、約0.1気圧、約0.2気圧、約0.5気圧、約0.7気圧、または約0.9気圧以上に下がり得る。他の実施形態では、密封層の下側の大気圧は、約0.8気圧以下に下がり得、他の実施形態では、約0.7気圧、約0.6気圧、約0.4気圧、約0.3気圧、約0.2気圧、約0.1気圧、約0.07気圧、約0.03気圧、約0.007気圧、または約0.003気圧未満、またはそれ以下に下がり得る。
【0037】
一部の実施形態では、接触層、密封層、および/または収集チャンバは、透明な材料から形成することができる。材料の透明性は、医師がより正確にシステムを配置することによって外科切開部または創傷部に対するより正確なシステムの配置を容易にすることができ、かつ/またはシールを破って切開部または創傷部の視覚化を可能にすることができる。
【0038】
また、減圧治療システムを外科的に閉鎖された皮膚外傷部に取り付ける方法も本明細書において提供される。この方法は、(a)収集チャンバと、保護層と、密封層とを外科的に閉鎖された皮膚外傷部の大きさにするステップと、(b)外科的に閉鎖された皮膚外傷部の周囲にシールを形成するステップと、(c)収集チャンバを作動させて外科的に閉鎖された皮膚外傷部に減圧を均等に分配するステップと、(d)外科的に閉鎖された皮膚外傷部の再上皮化の後にシステムを取り外すステップと、を含む。創傷の再上皮化は、皮膚外傷部が外科的に閉鎖されてから2日〜5日の間に起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、閉鎖の3日後に起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、閉鎖の4日後に起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、閉鎖の5日後に起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、創傷閉鎖の5日後よりも早く起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、創傷閉鎖の4日後よりも早く起こる。一部の実施形態では、創傷の再上皮化は、創傷閉鎖の3日後よりも早く起こる。
【0039】
減圧治療システムを用いて皮膚外傷部を処置する方法であって、(a)皮膚外傷部の形状に保護層をカットするステップと、(b)皮膚外傷部の周囲の無傷の皮膚部分にカットした保護層を取り付けるステップと、(c)発泡体の一体の層を備えた可撓性接着包帯を望ましい大きさにカットするステップであって、この可撓性接着包帯が、可撓管と流体連通した前記発泡体の層と一体である、ステップと、(d)この包帯を前記外科的に閉鎖された皮膚外傷部の上に配置して密封されたエンクロージャを形成するステップと、(e)末端部で管を形成するステップと、(f)装置に負荷をかけるステップと、(g)必要に応じて装置に再び負荷をかけて滲出物を除去して前記エンクロージャ内の減圧を回復させるステップと、(h)創傷の再上皮化の後に装置を取り外すステップと、を含む、方法をさらに提供する。一部の実施形態では、皮膚外傷は、切り傷、刺し傷、外科的に形成された切開部、または外科的に閉鎖するのに適したあらゆる他の創傷から選択される。
【0040】
装置
図1Aおよび
図1Bは、静的陰圧装置100の一実施形態を例示している。装置100は、密封層110(本明細書では時には密封構造とも呼ぶ)と、組織外傷の外科部位、例えば、外科切開部の長さに沿って圧力を分配するように構成された収集チャンバ120(本明細書では時には収集構造とも呼ぶ)とを備えている。この装置は、本明細書では皮膚である組織に関連して説明されているが、皮膚以外の生物学的組織にも使用できることを理解されたい。一部の実施形態では、陰圧治療装置は、接触層130を備えることができる。接触層130は、収集チャンバ120と皮膚外傷部との間を流体連通させる。接触層130は、例えば、発泡体、メッシュ、ガーゼ、スポンジ、粒状物質、積層メッシュマトリックス、またはあらゆる他の適切な多孔質生体適合性材料を含み得る。接触層130は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部の表面に接触するように配置することができる。場合によっては、接触増130は、外科部位を通る空気/流体空間の連続性を維持するように構成することができ、これにより、外科部位および密封層110によって形成された閉鎖された空間における流体の隔離または空気小嚢の発生を低減することができる。一部の実施形態では、接触層は、皮膚外傷部の表面の境界内とすることができ、皮膚外傷部を取り囲んでいる近接組織部分に接触しない、重ならない、または覆わないようにすることができる。他の実施形態では、接触層は、皮膚外傷部自体に加えて、皮膚外傷部を取り囲んでいる近接組織に接触して配置することができる。
図1Aに示されているように、接触層130と、密封層110と、収集チャンバ120とは、互いに結合する、または一体にすることができる。一部の例では、予め結合または一体にされたデザインにより、1つの工程で、装置100を皮膚外傷部の表面に接触させて配置することができる。一部の実施形態では、接触層は、皮膚外傷部の表面に接触させて配置することができる。配置されたら、接触層を、収集チャンバと一体になった密封層で覆って密封されたエンクロージャまたは空間を形成する。一部の実施形態では、密封層は、限定されるものではないが、テープ、糊、または適切な生体適合性接着製品を含め、あらゆる適切な材料または当技術分野で周知の機構によって外傷部を取り囲んでいる皮膚の部分に取り付けることができる。
【0041】
吸引装置140の一例が、
図1Aにさらに示されている。吸引装置140は、収集チャンバ120の内部を一定のレベルに減圧するように構成することができる。一部の実施形態では、収集チャンバ120は、皮膚外傷部の表面に配置される前に予め真空化された状態にすることができ、他の実施形態では、収集チャンバ120は、吸引装置140を配置した後、または吸引装置に結合した後に真空化することができる。収集チャンバ120は、使用時または製造時に予め真空化することができる。一部の実施形態では、吸引装置は、皮膚外傷部の表面に配置される前に収集チャンバに結合することができ、なお他の実施形態では、吸引装置と収集チャンバを一体に形成することができる。一部の実施形態では、収集チャンバは、収集チャンバをカットして、または収集チャンバの1つ以上の部分を分離して皮膚外傷部の外科的に閉鎖された部分の長さに大きさを合わせることができる。一部の構成では、収集チャンバは、長さの短縮を容易にする1つ以上の予め画定された薄めの分離ゾーンを有することができる。次いで、吸引装置を取り付ける、または他の方法で使用して、収集チャンバのカットまたは分離された端部を閉鎖することができる。
図1Aは、収集チャンバ120を備えた装置100を示し、定荷重ばね機構142を備えた吸引装置140が、収集チャンバ120と一体になっている。吸引装置140の定荷重ばね機構142が係合したら、滑動シールまたは往復運動機構144を引き戻して、密封されたエンクロージャ内を一定の圧力レベルにし、その圧力レベルを維持することができる。
図1Aでは、装置100は、収集チャンバ120の一端122をカットすることによって創傷部の長さに合わせられている。
図1Aは、端部プラグ124によって塞がれている非吸引装置側端部122をさらに示している。装置は、
図1Aでは、端部密閉構造126を用いてさらに密封されている。非吸引装置側端部122および/または端部プラグ124は、着脱可能または着脱不可能に構成することができる。例えば、糊を用いて、端部プラグを装置端部122に取り外しできないように取り付けることができる。
【0042】
一部の実施形態では、収集チャンバの長さは、外科切開部または創傷部の長さに基づいて調整することができる。外科切開部または創傷部の長さは、全体的に線形であっても非線形であっても良い。一部の例では、収集チャンバの長さは、ほぼ外科創傷部の長さであり、他の例では、収集チャンバの長さは、外科創傷部の長さに対して約+10%、約+20%、または約+30%以上、約−10%、約−20%、または約−30%以下とすることができる。全体的に細長い外科創傷部も考えられるが、他の例では、細長くない構造の外科創傷部も処置することができる。一部のさらなる例では、分岐または星形の外科創傷部を、1つ以上の装置を用いて処置することができる。他の例では、外科創傷部または切開部は、部分的に裂開した外科創傷部の傷害長さとして特徴付けることができる。外科創傷部が部分的に裂開した外科切開部を含む例では、密封層および/または接触層は、裂開セグメントまたは創傷部もしくは切開部を密封または覆うように構成することができる。細長くない創傷部を処置する例示的な方法を後に説明する。一部の例では、収集チャンバは長さ1cm当たり、約100mm
3〜約10,000mm
3以上、時には約500mm
3〜約7,000mm
3、またある時には約1,000mm
3〜約5,000mm
3の容積を有することができる。
【0043】
収集チャンバ120は、装置100の接触層130を介して皮膚外傷部に流体連通することができる。一部の例では、収集チャンバ120と密封装置110とは、一体に形成されている。
図1Bに示されているように、収集チャンバ120は、接触層130と密封層110とを介して皮膚外傷部と収集チャンバ120との間を流体連通させるために、密封層110における複数の開口部150’に整合または一致させることができる複数の開口部150を備えることができる。一連の開口部150および150’は、皮膚外傷部の長さまたは領域に亘って皮膚外傷部にかかる圧力変化の分配を可能にすることができる。収集チャンバ120および/または密封層110に沿った開口部150および150’の間隔、大きさ、または形状は、均一であっても不均一であっても良い。他の実施形態では、収集チャンバ120と密封層110とは、結合できるように構成された別個の構造を有することができる。収集チャンバの開口部150と密封層110の開口部との整合を容易にするために、収集チャンバ150および/または密封層110の近接した表面は、接着または滑り止め表面を有することができる。他の実施形態では、収集チャンバの開口部150および/または密封層120の開口部は、整合を容易にする相補的な嵌合を形成することができる。例えば、収集チャンバの開口部150および/または密封層の開口部150’は、対応する構造の開口部内に突出することができる。なお他の実施形態では、収集チャンバの開口部150と密封層の開口部150’とは、相補的かつ密封可能な締り嵌めを構成することができる。
【0044】
一部の例では、収集チャンバは、弾性変形もしくは塑性変形材料、または曲げられる構造を含むことができる。これにより、収集チャンバが外科的に閉鎖された皮膚外傷部の外形に適合することができ、かつ収集チャンバが、体の動きに応じて少なくとも部分的に構造的に変化することができる。
図1Aおよび
図1Bに示されている一例では、収集チャンバ120は、その長さに沿って可撓性リブ128の部分またはゾーンを備えている。リブ128により、使用者が収集チャンバ120を整形および成形することができ、使用者が画定した構造がさらに維持される。可撓性リブ128間の収集チャンバ120の部分は、硬質、半硬質、または可撓性とすることができる。一部のさらなる例では、収集チャンバは、曲げに加えて、少なくとも部分的に回転するように構成することもできる。特定の例では、異なる大きさまたは構造の開口部を、収集チャンバの周囲に設けることができ、使用の際に回転によって選択することができる。使用されない開口部は、その上に密封層を被せて密封することができる。別法では、開口部を予め密封することができ、選択されたシールから予め取り付けられたシール(複数可)を除去して、選択されたシールを利用することができる。
【0045】
図2は、再び真空化される、または再び負荷がかけられるように構成された陰圧治療装置200の別の実施形態を示している。装置200は、一体にされた接触層230と、密封層210と、収集チャンバ220とを備えている。接触層230は、皮膚外傷部の表面に接触して配置することができ、密封層210を用いて皮膚外傷部を取り囲んでいる皮膚間にシールを形成することができる。収集チャンバ220は、密封層210と一体にすることができ、収集チャンバ220と接触層230とにおける一連の開口部250によって接触層と閉鎖された外科部位とに流体連通しているが、他の例では、収集チャンバと密封層とは、接着剤または機械機構を用いて取り付けることができる別個の構成要素とすることができる。別個の収集チャンバと密封層とでは、収集チャンバの開口部と密封層の開口部との整合は、収集チャンバの開口部および/または密封層の開口部のいずれかを相補的な嵌合デザインに構成することによって容易にすることができる。代替の一実施形態では、ベース密封層は、予め形成された開口部を備えていなくても良いが、収集チャンバの開口部は、2つの構成要素が互いに結合されたときに密封層に開口部が形成されるように鋭いまたは突き通す構造を備えることができる。
【0046】
収集チャンバ220は、内部が一定レベルに減圧されている予め真空化された状態にすることができる。別法では、収集チャンバ220は、患者に配置されるときに大気圧にすることができ、耐久性医療用吸引装置などの外部吸引装置270を用いて収集チャンバを一定レベルに減圧することができる。外部吸引装置270は、収集チャンバ220の吸引装置取り付け部278の開口部276に配置することができる。吸引装置取り付け部276は、収集チャンバ220と流体連通している。吸引装置取り付け部276は、空気分子または他の物質を収集チャンバ220から除去することは許容するが、空気分子または他の物質の収集チャンバ内への進入を防止する一方向弁として構成することができる。
図2に例示されている特定の例では、収集チャンバ220は、リブを有する可撓性部分228を備えるが、他の例では、収集チャンバの実質的な長さが、可撓性材料を含む。
【0047】
図2は、端部プラグ224で塞がれた一端222を有する収集チャンバ220も示している。収集チャンバの他端222’は、一方向弁260に取り付けることができる。したがって、装置200は、収集チャンバ220が滲出物または他の物質で満たされたときに収集チャンバ220の真空化を容易にする別個の一方向弁260を備えることができる。収集チャンバ220が真空になったら、収集チャンバは、吸引装置取り付け部278の開口部276を介して導入される外部吸引装置270を用いて再び真空化することができる。一部の実施形態では、一方向弁260と収集チャンバ220を真空化するための手段とが同じ構造である。一部の実施形態では、一方向弁と収集チャンバを真空化するための手段とが、
図2に示されているように2つの異なる構造である。
図2は、成形可能な収集チャンバ220を備えた装置200も示している。
【0048】
陰圧閉鎖療法装置300の別の例が
図3に示されている。この陰圧閉鎖療法装置300は、第1のチャンバ372と第2のチャンバ373とを含む多チャンバ収集システム370を備えることができる。複数のチャンバは、連結しても良いし、別個にしても良い。
図3では、例えば、第1のチャンバ372と第2のチャンバ373とは、相互連結開口部374で互いに流体連通させることができる。デュアルチャンバ型収集チャンバ370の第1のチャンバ373は、装置300の接触層330との流体連通を可能にするように構成された一連の開口部350を有する。デュアルチャンバ型収集チャンバ370の第2のチャンバ372は、圧力を調節する往復運動機構に取り付けることができる。
図3では、第2のチャンバの往復運動機構は、ばね374として示され、このばね374は、端部プラグ324が取り付けられた密封端部の反対側のデュアルチャンバ型収集チャンバ370の端部のばねハウジング378に取り付けられている。このばねは、プランジャ型の装置の使用によって移動シール376を形成する。移動シール376は、デュアルチャンバ型収集チャンバ370の圧力の変化を自己調節し、この変化に応じて移動する。
【0049】
図4は、陰圧閉鎖療法装置400の別の実施形態を例示し、この装置の接触層430と、収集チャンバ420と、密封層410とは一体ではなく、密封層410は、収集チャンバ420と接触層430との上方または上に配置されている。この実施形態では、接触層430は、外科的に閉鎖された皮膚外傷部に接触して配置される。リブ428を備えた成形可能な収集チャンバ420を用いて、接触層430に接触して覆うようにチャンバ420の構造を操作することができる。収集チャンバ420に配置された一連の開口部450により、接触層430と収集チャンバ420との間が流体連通する。収集チャンバ420は、接触層430に接触したら、吸引装置440を用いて真空化することができる。吸引装置は、シリンジ、動力ポンプ、または強制拡張装置とすることができる。吸引装置440は、一方向弁460を介して収集チャンバ420と流体連通するのが好ましい。収集チャンバ420が真空化されたら、密封層410を収集チャンバ420と接触層430との上に配置して、創傷部と密封されたエンクロージャを形成することができる。
【0050】
図5は、装置500の別実施形態を示し、収集チャンバ520は、この収集チャンバ520全体に分散された離散収集チャンバ580を有する波形管セグメント582を備えている。波形管の一端522は、端部プラグ524または他の閉鎖構造で密封されている。装置500の他端522’は、吸引源540、例えば、定荷重ばね、動力吸引ポンプ、耐久性医療用吸引装置、またはあらゆる適切な吸引源などに結合する、または一体にすることができる。装置500の接触層530は、
図5の密封層510と収集チャンバ520とに一体である。患者に配置されると、波形管セグメント582により、収集チャンバが患者の表面トポロジーに適合することができる。装置のこの実施形態は、装置が患者と共に動くことを可能にする。波形管セグメントにより、下側の皮膚の著しい膨張と収縮とが可能となる。収集チャンバが個別収集チャンバを備えた波形管である実施形態では、離散収集チャンバ580は、一連の別個の開口部550によって接触層530と皮膚外傷部の表面とに流体連通するのが好ましい。
【0051】
一部の実施形態では、細長い減圧治療システムは、近置することができる創傷縁を有する細長い創傷部の長さに沿って取り付けることができる。細長い減圧治療システムは、例えば、縫合糸、ステープル、または接着剤によって既に閉鎖されている創傷部にも使用することができる。場合によっては、減圧治療システムを閉鎖された切開部に使用すると、例えば、縫合糸またはステープルに直接は接触していない組織に閉鎖する力をさらに加えることによって、切開部に沿ってより均一な力を分配することができる。陰圧閉鎖療法システムは、場合によっては、創傷縁の分離を防止することもできる。場合によっては、陰圧閉鎖療法システムは、新たに形成された結合組織の伸長を防止することができ、これにより瘢痕の範囲を減少させることができる。一部の例では、密封層を取り付けて圧力を低減して、創傷縁間の生じ得る空間を潰すことによって、創傷縁の近置をさらに促進することができる。一部の特定の実施形態では、創傷処置システムは、切開部または創傷部に対して機械的張力の減少と減圧効果との両方をもたらすように構成された陰圧システムを備えることができる。減圧効果は、創傷縁間の空間の減圧による、および/または密封層が支持体の周囲に収縮されるときの密封層による押圧もしくは引っ張りによる創傷縁の互いに近づく移動を含んでも良いし、含まなくても良い。減圧治療システムは、弾性密封層、または1つ以上の弾性部材で構成された密封層を備えることもできる。使用の際は、密封層は、切開部または創傷部の一側に取り付ける、または接着してから、切開部または創傷部の他側まで伸ばして取り付けることができる。所定の位置に配置されて伸ばす力が解放されると、密封層またはその弾性部材が、創傷部の両側に反対の力を加えて、創傷縁を接近させて切開部または創傷部の縁を互いに引き寄せることができる。一部の例では、弾性部材は、切開部または創傷部の長手方向に対して横断する位置に向けることができるが、他の例では、弾性部材は、複数の方向に向けることができる。密封層または弾性部材は、シリコーンゴム、ポリイソプレン、または伸長された構造の対向する切開縁もしくは創傷縁に取り付けられたときに組織を互いに引き寄せる十分な回復力を有する他の弾性材料などの材料を含むことができる。一部の例では、密封層が切開部または創傷部に配置された後に、1つ以上の弾性部材を密封層に取り付ける、または貼り付けることができる。
【0052】
図6A〜
図6Cは、密封層602と細長い支持体604とを備えた創傷処置装置600の別の例を示している。細長い支持体604は、切開部または細長い創傷部に沿ってまたはその上に配置することができる細長い中心通路606を備えた構造にすることができる。一部の構成では、装置600は、細長い創傷部に直接連通した複数の通路を備えることができる。この特定の例では、細長い中心通路606は、その長手方向の長さの全長ではないにしても一部に沿って切開部または創傷部に露出された開口した通路構造を有するが、他の例では、細長い通路606は、そのセグメントまたは全長に沿って長手方向に配置された複数の開口部を備えた全体的に閉じた構造を有することができる。開口した通路または長手方向に配置された複数の開口部は、創傷部の長さに沿って減圧を可能にすると共に、組織表面の妨害または一時的な抵抗が減圧および/または流体吸引の分配に影響を与え得るリスクを軽減する可能性がある。一部の例では、通路、または切開部もしくは創傷部に連通した通路のセグメントは、少なくとも約1cm以上、3cm以上、時には約10cm以上、またある時には約20または約50cm以上の長さを有することができる。一部の例では、装置600は、約70cm、100cm、または150cmもの長さを有することができ、短い長さにカットまたは短縮することができる。可撓性、曲げ可能、および/または成形可能な支持体604を備える一部の実施形態では、支持体604および/または密封層602は、ロールの形態または折り畳まれた形態で提供することができ、必要に応じて広げられてカットされる。装置600(または本明細書に記載されている他の装置)は、あらゆる様々な切開部または創傷部を処置するために用いることができるが、一部の特定の例では、限定されるものではないが、線形または曲線の切開部または創傷部を含め、様々な細長い切開部または創傷部に用いることができる。これらの創傷部は、限定されるものではないが、あらゆる様々な外傷性裂傷または切り傷と、胸骨切開部と、開腹切開部と、会陰前立腺切開部と、静脈採取切開部と、帝王切開部となどを含み得る。
【0053】
使用の際は、細長い中心通路606は、切開部または細長い創傷部に沿って配置してから、切開部と支持体604との上に密封層602を配置することによって固定またはシールすることができる。密封層602と支持体604とは、これらを1つのステップで切開部または創傷部に配置できるように、一体に成形するか、または互いに予め取り付けることができる。一部の例では、密封層602は、切開部と支持体604との全周囲の完全な密封を可能にする大きさおよび構造にすることができるが、他の例では、1つ以上の補助シール608および610を使用することができる。密封層602は、1つ以上の表面に接着剤を備えることができる。
図6Aでは、例えば、接着剤を、密封層602の下面の側部に沿って設けて、密封層602のストリップまたは中間部分に接着剤を設けないようにすることができる。この特定の例では、端部シール608および610を用いて、密封層602の端部612および614の周りの密封を容易にすることができ、他の実施形態では、補助シールをあらゆる部分に用いて追加の密封を行うことができる。
【0054】
一部の例では、密封層、支持体、および/または1つ以上の補助シールは、装置600を減圧源に接続するために用いることができるコネクタまたはポートを備えるように予め構成することができる。
図6Aの特定の例では、端部シール610の一方は、コネクタ616を備えるように予め構成することができ、このコネクタ616を用いて、任意選択のコネクタ管620によって吸引装置618を取り付けることができる。他の例では、吸引源またはコネクタ管は、密封層または補助シールに刺入して貫通孔を形成するように構成することができる。なお他の例では、吸引装置618は、端部シール、密封層、および/または支持体604と一体に形成することができる。
【0055】
図6Bに示されているように、支持体604は、細長い通路606の一側または両側に1つ以上の側部フランジまたはフラップ622を任意選択で備えることができる。側部フラップ622のそれぞれは、約2mm〜約50mm以上、時には約10mm〜約40mm以上、またある時には約20mm〜約30mmの範囲の幅(またはその最も長い寸法に対して横断する寸法)を有することができる。この側部フラップは、約0.5mm〜約5mm以上、時には約0.75mm〜約3mm、またある時には約1mm〜約2mmの範囲の平均厚さを有することができる。側部フラップの厚さは、均一であっても均一でなくても良く、一部の例では、この厚さは、中心から周辺方向、または逆方向にテーパにする、または減少させることができる。側部フラップ622は、細長い通路606の材料と同じまたは異なる材料を含むことができる。一部の実施形態では、支持体604および/または側部フラップ622は、硬質、半硬質、または可撓性とすることができ、シリコーンまたはウレタンなどを含むことができ、被覆を備えても良いし、備えなくても良い。例えば、支持体604の1つ以上の部分が、限定されるものではないが、銀合金またはクロルヘキシジン被覆を含む抗感染薬被覆を備えることができる。側部フラップ622は、その組織接触面624および/またはその密封層接触面626に接着剤を備えても良いし、備えなくても良い。一部の例では、支持体604は、キャップ構造628をさらに備えることができる。キャップ構造628は、細長い通路606の上面に配置することができ、細長い通路606の一側または両側に突き出るように構成することができる。キャップ構造628は、約0mm〜約15mm以上の範囲、時には最大約5mm、またある時には最大約10mm、突き出ることができる。一部の例では、1つ以上の細長い側部通路630を、キャップ構造628と側部フランジまたはフラップ622との間に形成することができる。キャップ構造628は、支持体604に対して収縮するときに密封層を刺入または損傷するリスクを低減することも低減しないこともあり得る丸い縁または表面を備えることができる。一部の例では、補助シールを、または厚い、孔が開きにくい、または他の補強部分を備えた構造の密封層を支持体604の周りに配置することができる。側部フラップ622および/またはキャップ構造628は、細長い通路606に対して対称構造および/または大きさであってもなくても良い。一部の構成では、1つ以上の開口部を中心通路606と側部通路(複数可)630との間の壁部632に設けることができるが、他の構成では、中心通路606と側部通路(複数可)630との間の連通は、密封層602が皮膚に接着しなくても良い共通空間または小嚢を密封層602が画定できる支持体604の端部のみで確立することができる。
【0056】
図6Cに示されているように、装置600に減圧がかけられると、密封層602は、支持体604の周囲または内部に畳み込まれ得る。例えば、密封層602の一部が、細長い側部通路630内に引き込まれる、または押し込まれ得る。他の例では、支持体604は、あらゆる様々な凹部、開口部、溝、通路を備えることができ、これにより、吸引を用いて、あるいはクランプもしくはプッシュロッドなどの機械的構造、引き紐、または密封層602を支持体604に締め付けるために取り付けもしくは結合できるあらゆる他の相補的な構造によって、密封層602の支持体604への収縮が可能となる。場合によっては、密封層602のこの収縮は、創傷縁634を互いに近づけることも近づけないこともあり得る。減圧をかけることにより、創傷縁634間の間隙636の大きさを縮小させる、または間隙636を消滅させることもできる。
【0057】
支持体に加えて、創傷処置システムは、密封層に含められる、または取り付けられる1つ以上の弾性要素も備えることができる。必要に応じて、支持体の弾性特性に加えて、例えば、弾性バンドまたはスレッドを密封層に設けることができる。一部の構成では、弾性バンドまたはスレッドは、均一の向きを有することができるが、他の構成では、弾性バンドは、複数の方向に向けることができる。場合によっては、支持体は、創傷組織または創傷縁を特定の方向にさらに機械的に付勢するように構成することができる弾性材料または構造体(例えば、ばね)も備えることができる。場合によっては、ばねは、取り付け可能なクリップを備えることができ、このクリップは、任意選択で支持体と共に使用して弾性支持体に追加の力を付与する、または硬質支持体に収縮する力を付与することができる。
【0058】
一部の例では、減圧創傷治療システムを用いて、利用可能な装置の長さよりも長くても良い切開部または細長い創傷部を処置することができる。このような場合、複数の装置と、支持体と、密封層とを、個々にまたは重なる構成で配置して大きめの創傷部を処置することができる。
図7では、例えば、2つの別個の支持体700および702と密封層704および706とが、端と端とが合わせられて配置され、接合部708が、第3の密封層710で覆われている。第3の密封層710の使用は、例えば、支持体と密封層とが一体構造または予め取り付けられた構造で提供または製造される場合に有用であろう。支持体700および702の各端部と密封層704および706との各端部が、接合部708で接触するとして示されているが、他の例では、支持体間および/または密封層間に部分的または完全な間隙を設けることができる。
図7に示されている連続した構造に加えて、支持体および/または密封層は、平行に配置することもできる。他の例では、密封層が関連する支持体の端部を越えて延在するように1つの密封層を別の密封層の上に重ねて配置することができるため、第3の密封層を使用する必要がない。他の例では、複数の密封層または支持体を用意し、それぞれをこれらよりも少数の支持体または密封層と共に使用することができる。また、1つ以上の吸引装置を、長めまたは大きめの支持体または密封層と共に使用することができる。
【0059】
平行および/または連続的に配置することができる複数の支持体に加えて、一部の実施形態では、支持体自体が、互いに結合されて完全な支持体を形成する複数の部分を含むことができる。
図8では、例えば、支持体800は、結合部806で長手方向の長さに沿って全体的に接合されるように構成された2つの細長い支持セグメント802および804を含む。別個の長手方向のセグメント802および804を含む支持体800を用いて、各セグメント802および804のそれぞれを切開部または創傷部の一方の縁に別々に取り付けて(例えば、接着剤または縫合によって)、次いで互いに接合して創傷縁を近置する。場合によっては、別個の接合可能な構成要素の方が、単一体の支持体よりも皮膚への取り付けが容易であろう。長手方向のセグメント802および804は、硬質、半硬質、または可撓性とすることができ、セグメント802および804は、それぞれが構造の約50%を構成するとして示されているが、例えば、場合により結合部を除いて全体的に対称分割である。しかしながら、他の例では、長手方向のセグメントは、非対称の分割としても良い。
図8に示されている結合部806は、各セグメント802および804の長手方向の内面812に沿って配置された溝808とリッジ810との相補的な組を備えているが、他のスナップ嵌めを含め、あらゆる様々な結合部806を用いることができる。他の固定用結合部、機構、または構造は、限定されるものではないが、再シール可能な接着層と、スライドロックと、ヒンジクランプと、クリップと、固定可能な内腔を備えた固定ピンと、ジッパーと、弾性結合バンドなどを含み得る。一部の例では、密封層を単一支持体内に収縮させるために用いることができる構造は、密封層を多セグメント支持体内に収縮させるため、かつ/または多セグメント支持体のセグメントを互いに結合するためにも用いることができる。
【0060】
図9Aは、弾性支持体902と任意選択の吸引システム904とを含む陰圧閉鎖療法システム900の一例を示している。任意選択の接触層906を、弾性支持体902の下側に設けることができる。弾性支持体902は、1つ以上の長手方向の導管908または通路を備えた構造である。導管または通路は、完全に閉鎖されていても良いし、少なくとも部分的に開口していても良い。
図9の導管908は、下側の創傷部または切開部との空気または流体連通を可能にする複数の孔910を備えた閉鎖された構造を有する。この特定の例では、弾性支持体904の横フラップ912は、接着剤を備えることができ、この接着剤を用いて、導管908の一部と、切開部または創傷部と孔910との間に外部空間が存在する場合はこの外部空間とを少なくとも密封することができる。一部の他の例では、横フラップ912は、支持体の一方または両方の端部まで延ばすことができるが、
図9Aに示されている例では、端部シール914および/または916を用いて、支持体902の端部918および920の周りの密封を容易にすることができる。上記したように、少なくとも一方の端部シール916は、吸引システム904の取り付け用のコネクタ922を備えることができるが、他の実施形態では、コネクタは、弾性支持体902上に配置することができる。なお他の例では、大きい密封層を用いて、支持体の全てではないにしても大部分を覆うことができ、この密封層は、保護層を備えても備えなくても良い。例えば、弾性支持体の一部の実施形態は、セグメント化された非密封横フラップを備えることができ、この横フラップは、創傷縁を互いに弾性的に引き寄せるように構成されている。セグメント化は、部分的な弾性支持体の取り付けを容易にすることができるが、密封性が得られる否かが定かでないため、弾性支持体に設けられた密封層を用いて支持体の周りに密封された空間を形成することができる。
【0061】
ここで、
図9B〜
図9Dを参照されたい。使用の際に、弾性支持体902のフラップ912は、各フラップ912が、皮膚表面922の切開部または創傷部のそれぞれの縁に取り付けられるように、互いに弾性的に伸長する、または引き離して、その伸長された状態で切開部または創傷部に取り付けることができる。ある方法では、支持体902を、フラップ912の実質的な長手方向の長さを伸ばすことができるように十分な硬さにする、または硬質にすることができるが、他の構成では、フラップ912の小部分を引き離し、これにより、支持体の部分ごとの接着または取り付けを可能にすることによって支持体の非線形切開部または創傷部への取り付けを容易にすることができる。皮膚表面920に取り付けられたら、伸ばす力または変形の力を解放することができ、支持体904における弾性または付勢力が、創傷縁922を互いに向かって押すことができる。完全に密封されたら、吸引源904を作動させて導管906の圧力を低下させ、かつ/または切開部または創傷部から空気または流体を除去することができ、これにより、減圧をかけて治癒を促進し、かつ/または潜在的な流体小嚢を真空化するのに加えて、創傷縁922間に間隙924が存在する場合はこの間隙924をさらに縮小することも縮小しないこともあり得る。
図9Eは、フラップ912を備えた2つの弾性支持体902を連続してまたは端と端とを合わせて配置して、接合部958を補助シール960で覆うことにより長めの切開部または創傷部を治療できる方法を示している。上記したように、支持体902の各端部とそれらのフラップ912との各端部は、接合部958で接触するとして示されているが、他の例では、支持体間および/またはそれらのフラップ間に部分的または完全な間隙を設けることができる。
【0062】
弾性支持体は、あらゆる様々な構造を有することができる。
図9B〜
図9Dに示されているように、弾性支持体902は、フラップ912および/または導管908の壁部928が存在する場合はこれらの弾性特性を強めることができる弾性部材926を備えることができる。さらに例示されているように、弾性支持体902の孔910を、弾性部材926に直接設けることができ、一部の構成では、孔910は、フラップ912に力が加えられたときに変形することもできる。
図10A〜
図10Cは、フラップ952を備えた弾性支持体950の別の実施形態を示し、孔954が、非弾性構造体956に設けられている。したがって、弾性部材958が伸長されても、孔954は同じ構造を維持する。非弾性構造体956は、リングまたはフレームを含め、あらゆる様々な構造を有することができ、孔954の部分的または完全な周囲を形成することができる。非弾性構造体956は、各孔954に別々にしても良いし、互いに連結しても良い。
図11A〜
図11Cは、フラップ972を備えた弾性支持体970のなお別の実施形態を示し、弾性支持体970は、弾性材料を含むため特定の弾性部材を使用していない。この特定の実施形態では、弾性支持体970は、開口した通路974を備え、この通路974は、個々の孔を備えていないが、代わりに通路974の長さに沿って、下側の切開部または創傷部の縁922および空間924に対して全体的に開口している。
図11A〜
図11Cに示されているように、弾性支持体970は、縫合糸978または他の種類の切開部閉鎖装置、例えば、ステープルなどによって閉鎖された切開部976に取り付けることができる。縫合糸978は、あらゆる種類の縫合糸とすることができ、連続縫合と結節縫合とを含め、あらゆる様々な縫合技術を用いて使用することができる。一部の変更形態では、縫合糸978は、創傷縁980の近置を通常は維持することができるが、縫合糸978に作用する分離の力が、組織の局所的な張力部分を形成することがある。弾性支持体970を切開部に取り付けて、切開部976の実質的な長さに沿ってさらなる連続的な力を加えることができ、これにより局所的な組織の張力を軽減して、場合により切開部の治癒を促進することも促進しないこともあり得る。
【0063】
他の実施形態では、本明細書に記載されている装置を用いて、細長くない切開部または創傷部を処置することもできる。
図12〜
図15は、細長い陰圧閉鎖療法システムを用いた細長くない創傷部の処置の様々な例を示している。
図12では、例えば、細長い陰圧閉鎖療法装置1000と密封層1002とが、創傷部1004の周囲に配置されている。この例でさらに例示されているように、装置1000は、様々な大きさの孔1006、1008、および1010を備えることができる。場合によっては、小さめの孔1004を吸引源または結合部1012からより近い距離で使用することができ、大きめの孔1008を、比較的遠い距離で使用することができる。なお他の例では、孔の大きさを均一にすることができるが、孔の数および/または間隔を装置の長手方向の長さに沿って変更することもできる。
【0064】
図13は、創傷部1022に対して螺旋状に配置された陰圧閉鎖療法装置1020の別の例を示している。場合によっては、螺旋状の配置は、
図12に示されているように配置された装置よりも、創傷部1022の中心の圧力または吸引を強めることができる。
図14は、細長くない創傷部1036に沿って前後またはジグザグに配置された交互する硬質部分1032と可撓性部分1034とを備える装置1030のなお別の例である。上記したように、一部の例では、硬質部分1032は、装置の可撓性部分1034または他の関節部に対して回動することもできる。
図13に示されているように、装置は、創傷部1036の境界内に完全に配置する必要はないが、装置の孔1038の全てが創傷部の境界内に配置されており、他の例では、1つ以上の孔を創傷部の境界の外部に配置することができる。
【0065】
図15は、複数の装置1040と密封層1042とを用いて非線形の外科切開部を閉鎖する別の例を示している。この特定の実施形態では、外科切開部は、横断方向切開部1044と中心線切開部1046とを備えたT字型切開部を構成し、密封層1042が重なるように各切開部1044および1046に取り付けられた、2つの開口した通路を備えた装置1040を用いて処置される。他の例では、2つ以上の装置と2つ以上の密封層とを使用することができ、例えば、1つの長めの装置を、中心線切開部1046の全長に沿って使用することができ、2つの小さめの装置を、横断方向切開部1044の残りの各部分に沿って使用することができる。場合によっては、開口した通路を備えた装置1040は、外科的な閉鎖がステープル1048またはあらゆる他の突出閉鎖要素で行われるときに使用することができる。
【0066】
場合によっては、外科的に閉鎖された切開部の対向する縁は、組織に存在する下側の機械的負荷のために引き離される傾向にあり得る。この張力は、例えば、自然に起こる皮膚の張力による、組織の切開後に誘発される、または通常の体の運動によるものであり得る。組織の張力の緩和は、閉鎖された切開部の治癒を促進し、かつ/または瘢痕もしくは他の望ましくない美容上の影響を軽減することができる。本明細書に記載されている装置は、組織に力を加えて皮膚に対する張力を解放して、閉鎖された切開部が分離する可能性を低減するように構成されている。装置は、使用者による組織に加えられる力の制御を可能にする1つ以上の構造を備えることができる。
【0067】
本明細書に記載されている装置はまた、体に加えられ得る外部応力から皮膚外傷部を保護する。装置は、皮膚自体に起因する内部応力(例えば、角質層、表皮組織、または真皮組織によって創傷部に移動する応力)および/または外部応力(例えば、体の運動または筋動作によって創傷部に移動する応力)から皮膚外傷部を保護することができる。一部の変更形態では、装置は、皮膚外傷部への外部応力に影響を及ぼさずに内部応力から皮膚外傷部を保護する、例えば、皮膚の弾性特性などを変更する装置である。他の変更形態では、装置は、皮膚外傷部への内部応力に影響を及ぼさずに外部応力から皮膚外傷部を保護する。このような変更形態は、筋肉組織と周囲創傷組織とが、例えば、ボツリヌス毒素などの使用によって麻痺した状態を含み得る。なお他の変更形態では、装置は、内部応力と外部応力との両方から皮膚外傷部を保護する。
【0068】
一部の例では、創傷部に陰圧をかけると、密封層が収縮して、創傷部を取り囲んでいる組織に付着し、これにより創傷縁の分離または離開を引き起こし得るあらゆる創傷張力の少なくとも一部が相殺され得る。さらなる例では、密封層は、閉鎖された切開部に亘って機械的張力を解放するように構成することができる。密封層は、閉鎖された切開部に対して実質的に横断方向において密封層の残留張力が存在する状態で皮膚に付着するように構成することができる。密封層が皮膚に付着されると、密封層の残留張力が皮膚に移動し、これにより密封層が残留張力の方向に沿って収縮しやすくなり得る。これは、閉鎖された切開部に対して横断方向の圧縮応力を加えることがあり、この圧縮応力は、閉鎖された切開部の対向した縁が分離する動きを防止し得る。これらの加えられる応力は、引っ張り応力を部分的に減少させることができ、正味の応力をゼロにする、または創傷部に亘る圧縮応力を誘発する。
【0069】
密封層は、取り付けの前に密封層における残留張力を増加させる1つ以上の機械要素を備えることができる。例えば、密封層は、閉鎖された切開部に加えられる圧縮力を制限する機構を備えることができる。密封層は、使用者が取り付けの前および最中に密封層を保持して広げて密封層に張力を加えることができる操作タブを密封層の縁または他の部分に備えることもできる。密封層はまた、閉鎖された切開部の両側の皮膚を互いに機械的に引き寄せる、または接触させる組織の圧縮が第2の段階で起こるように取り付けることもできる。一部の構成では、密封層における張力は、取り付けの前または最中に密封層を広げる取り外し可能な要素を用いて加えることができる。取り付けた後、取り外し可能な要素を取り外して、密封層による取り付け部位への応力の付与を可能にする。これらの実施形態では、密封層は、使用者が密封層を過度に伸長するのを軽減または防止することができる伸長制限要素または構造をさらに備えることができる。場合によっては、特定のレベルの応力は、密封層の完全性を低下させ、過度のせん断応力を皮膚表面に加え、かつ/または過度の圧縮応力を皮膚に加え得る。一例では、密封層の伸長制限要素は、密封層に亘って横断方向に配置された細長い要素または繊維紐を備えることができる。細長い要素は、密封層が伸長されていないときはたるんだ状態または非伸長状態であり得る。密封層が特定の大きさまたは所定の限界まで伸長されると、細長い要素におけるたるみが減少または消失して、繊維紐がさらなる伸長を防止する。代替の例では、伸長制限要素は、密封層の伸長時にぴんと張られる当初はたるんだ実質的に非弾性の膜を備え、これにより密封層または構造を構成する他の構造または材料の過度の伸長を軽減または防止することができる。
【0070】
さらなる実施形態では、密封層は、密封層に加えられる張力の量に関するフィードバックまたは指示を使用者に示す視覚的なガイドを備えることができる。例えば、密封層は、複数の実質的に平行な長手方向のマークを備えることができる。使用者が密封層を伸長すると、マーク間の距離が増大し、この増大は使用者に視覚的に明らかである。使用者が目視比較に使用することができる所定の張力レベルでマークの間隔を示す目盛りまたはガイドも備えることができる。この目盛りまたはガイドは、密封層と一体に形成しても良いし、別個の装置としてまたは密封層のパッケージ上に設けても良い。別の実施形態では、視覚的なガイドは、実質的に透明または半透明である、1つまたは複数の色素沈着もしくは着色部分を密封層に備えることができる。張力が密封層に加えられると、密封層の厚さが、着色または色素沈着部分の見える透明性または半透明性を低下または増加させる。別の実施形態では、視覚的なガイドは、張力の増大で色が変化する1つまたは複数の着色部分を備えることができる。
【0071】
一部の実施形態では、圧縮を制限する機構は、移動制限装置を備えることができる。例えば、密封層の収縮を、組織の収縮または移動の程度を制限できる機械干渉を生じさせる少なくとも2つの構造または複数組の構造の存在によって制限することができる。一部のさらなる例では、構造は、インターロック式に嵌合することができる。例えば、1つの構造を密封層の中心線に近接して配置することができ、もう1つの対応する、または相補的な構造を密封層の中心線から離して配置することができる。装置が取り付けられたら、密封層の残留張力が密封層を収縮させ、これにより相補的な構造が、インターロック、嵌合、または他の方法で接触する位置まで互いに接近する。前記対向する構造同士が接触すると、密封層のさらなる収縮が限定されるため、閉鎖された切開部に加わる圧縮力の程度が制限される。
【0072】
他の実施形態では、密封層は、保持構造、例えば、接着剤を備えた密封層の面とは反対側の密封層の面に取り外し可能に取り付けられる保持膜などを備えることができる。保持構造は、取り付けられると、密封層の張力を維持して密封層の収縮を防止する。使用の際は、装置は、保持構造が密封層に取り付けられた状態で皮膚に取り付けられる。皮膚に取り付けられたら、保持構造を取り外して、密封層の張力が少なくとも部分的に解放されて皮膚に伝達されるようにする。一部の実施形態では、保持構造は、非等方性に可撓性であり、密封層の横断方向の張力を維持するように横断方向において実質的に硬くて曲がらないが、装置が患者の体に適合することができるように長手方向において実質的に可撓性である。さらなる実施形態では、保持構造は、この非等方性の可撓性をもたらす横断方向のリブを備えている。さらなる実施形態では、保持構造は、構造が広げられて張力が密封層に加えられる取り付けのために張力が必要となるまで弛緩した状態で装置が保存されるように折り畳み可能に構成されている。
【0073】
一部の実施形態では、装置は、1つ以上の治療薬を送達するように構成することができる。これらの治療薬は、限定されるものではないが、例えば、閉鎖された切開部の治癒を改善できる抗生物質と抗炎症薬とを含み得る。一部の実施形態では、装置は、主収集チャンバに加えて、追加のチャンバまたは管状構造を備えることができる。追加のチャンバまたは管状構造は、治療薬供給源に流体連通するように構成することができ、治療薬供給源は、外部ポンプまたは重力送り式液滴供給源を含み得る。一部の実施形態では、追加のチャンバまたは管状構造は、主収集チャンバと直接は流体連通していない。一部の実施形態では、追加のチャンバまたは管状構造は、治療薬の閉鎖された切開部への送達を可能にする別個の通路または複数の通路をさらに備えている。
【0074】
図16Aおよび
図16Bは、反作用圧縮応力を加えることによって閉鎖された切開部に亘る張力を軽減するように構成された装置の一例を示している。装置1600は、収集チャンバ1601と密封層1602とを備えている。装置は、その横断方向周辺縁に配置されたプルタブ1603をさらに備えている。使用者は、プルタブ1603を把持する、または他の方法を使用して引っ張る力(矢印1604によって示されている)を加えて、取り付けの前に装置を伸長することができる。密封層1602は、例えば、密封層1602の1つの軸に沿って配向された、または切開部に対して実質的に横断方向にある1つ以上の伸長制限要素1605をさらに備えることができる。伸長制限要素の大きさと、形状と、構造とは、使用者の要求を満たすように様々にすることができる。例示的な実施形態では、それぞれの伸長制限要素1605は、細長い要素の長手方向軸に沿って最大長さまで伸長できる1つ以上の細長い要素を備えることができる。一例における細長い要素は、繊維要素である。
図16Aでは、装置1600は、取り付け前の伸長していない状態で示されており、伸長制限要素1605は弛緩している。
図16Bでは、使用者が、プルタブ1603に引っ張る運動1604を加えると、伸長制限要素1605がぴんと張って、その最大長さまで伸びる。したがって、伸長制限要素は、第1の大きさおよび/または形状の第1の状態と第2の大きさおよび/または形状の第2の状態との間の他、これらの間の様々な状態の間で変化することができる。この状態では、細長い伸長制限要素1605は、ぴんと張った細長い伸長制限要素1605の長さに一致する距離制限を越えた装置の伸長を実質的に防止する。
【0075】
図17Aおよび
図17Bは、反作用圧縮応力を加えることによって閉鎖された切開部に亘る張力を軽減するように構成された別の装置1700を例示している。装置1700は、収集チャンバ1701と密封層1702とを備えている。
図17Aは、密封層1702が、例えば、取り付けの前に使用者によって伸長されている、または取り付けの前に他の方法で伸長されてこの伸長が維持されている状態を示している。装置は、近位制限要素1703と遠位制限要素1704との2つ以上の組を備え、これらの組は、収集チャンバ1701の両側の密封層1702に長手方向に取り付けられている。制限要素1703および1704は、一定の間隔で配置された細長い構造である。近位制限要素1703は、遠位制限要素1704の相補的な形状と噛合する形状を有するため、これらの制限要素が接触すると互いに噛合することができる。近位制限要素1703と遠位制限要素1704とは、伸長された状態でこれらの間に距離1705を有するように構成されている。制限要素間の距離は、許容される制限要素間での変位の最大量を画定し、この変位の最大量は、密封構造の変位および/または取り付けられた皮膚に加えられる圧縮力に一致し得る。装置が患者に取り付けられると、伸長による装置の残留張力が、
図17Bに示されている状態のような中立状態に向かって装置を収縮させる。装置は、距離1705が実質的にほぼゼロになるまで減少して制限要素1703および1704が互いに物理的に直接接触する、または他の方法で密封層1702のさらなる収縮が制限される状態まで収縮することができる。しかしながら、装置は、距離1705がゼロに減少した状態まで収縮する必要はなない。
図17Bに示されている状態では、装置1700は、密封層1702に残った残留張力を有するように構成しても良いし、しなくても良い。制限要素1703および1704が存在しない一部の例では、さらなる収縮が起こり得るが、近位制限要素1703と遠位制限要素1704との相互作用が、密封層1702のさらなる収縮を制限または防止するように構成し、これにより装置が閉鎖された切開部に加える圧縮応力を制限することができる。
【0076】
図18Aは、収集チャンバ1801と密封層1802と備え、送達装置としても機能し得る保持構造1803をさらに備えた装置1800の別の例を示している。密封層1802は、保持構造1803の存在による残留張力で伸長した状態に維持することができる。保持構造1803は、横断方向の剛性を保持構造1803に付与する一連の横断方向の要素またはリブ1804を備えることができ、これにより保持構造1803が密封層1802を伸長した状態に維持することができる。横断方向のリブ1804は、連続した横断方向のリブ1804間の間隔で分離されている。この空間により、横断方向のリブ1804が互いに対して移動することができ、これにより保持構造1803が、長手方向に撓むことができ、かつ長手方向に撓んだ状態の装置を示す
図18Aに示されているように曲線切開部に適合することができる。装置が患者に取り付けられる、または接着されたら、保持構造1803を取り外すことができ、これにより密封層1802の残留張力が閉鎖された切開部に作用して圧縮応力を加えることができる。装置はまた、
図18Bに示されているように構成し、密封層1802が、保持構造1803に接続されているが伸長されずに、または殆ど伸長されずに維持される弛緩状態で配置することもできる。
図18Cに示されているように保持構造1803が変形されると、密封層1802は、閉鎖された切開部への取り付けの前の実質的に伸長された状態となる。
【0077】
図19は、装置1900が作用物質送達の担体として機能するように構成されている実施の下方からの斜視図である。この装置は、接着タブ1902を有する密封面1901を備え、この接着タブ1902は、タブ1902間に可撓性を高める間隔で密封面1901から外側に延出している。装置1900は、収集チャンバ1903の他、送達チャンバ1904も備えている。収集チャンバ1903は、複数の収集通路1905と送達チャンバ1904とを備え、送達チャンバ1904は、複数の送達通路1906を備えている。収集チャンバ1903は、減圧源に接続して閉鎖された切開部を減圧することができる。送達チャンバ1904は、送達すべき作用物質の供給源に接続され、収集チャンバ1905には直接は流体連通していない。使用の際は、送達すべき作用物質を送達チャンバ1904に直接導入して、送達通路1906を介して閉鎖された切開部に送達することができる。収集チャンバ1903を介して減圧し、収集通路1905を介して閉鎖された切開部に連通することができる。一部の例では、送達すべき作用物質は、閉鎖された切開部に導入されるが、減圧源によって即座に除去されない。これは、送達通路と収集通路との間の距離によって達成することができる。
【0078】
ここで、装置を皮膚に取り付ける前に、装置に取り付けることができる予備伸長要素について説明する。予備伸長要素は、装置の予備伸長を可能にし、装置を皮膚に取り付ける前に予備伸長状態に装置を維持する。予備伸長要素は、皮膚に取り付けた後に装置から取り外すことができる。予備伸長要素が取り外されると、密封層の残留張力が解放される。密封層の残留張力が、皮膚に伝達され、密封層を残留張力の方向に沿って収縮しやすくし得る。これは、閉鎖された切開部に横断方向の圧縮応力を加え、これにより閉鎖された切開部の対向する縁が分離する傾向を防止することができる。
【0079】
図20A〜
図20Gを参照されたい。使用の際は、中心の予備伸長要素990を用いて、減圧治療システムの弾性支持体902のフラップ912間の空間を拡大することができる(例えば、
図9に示されている弾性支持体902の実施形態のように)。予備伸長要素990は、送達装置としても用いることもできる。予備伸長要素990の存在により、各フラップ912が切開部または創傷部のそれぞれの縁の皮膚表面920に接着されるように弾性支持体902を伸長した状態で切開部または創傷部に取り付けることができる。
図20Aでは、弾性支持体は、予備伸長された状態で示され、予備伸長要素990は、拡張状態であり、弾性部材926を伸長した構造に維持している。導管壁928も、
図20Aに伸長された構造で示されている。
【0080】
図20E〜
図20Fは、拡張された状態の予備伸長要素990の例示的な実施形態の拡大図を示している。拡張されていない状態の予備伸長要素990が
図20Gに示されている。予備伸長要素は、ヒンジストラット992によって中心バー992に接続された1組の拡張レール991を備えている。一実施形態では、拡張レール991は、予備伸長要素992の長手方向軸に沿って延在し、ヒンジストラットが、拡張レール991に対して横断方向に配置され、拡張レール991にヒンジ連結されている。中心バー992は、1組の指孔993、994に結合されている。使用者は、拡張レールと中心バーとを相対運動させて、予備伸長要素990を拡張されていない状態と拡張された状態との間で変化させることができる。レール991の中心バー992に対する相対運動は、指孔993と指孔994の互いに対する運動で生じる。ラッチタブ995を用いて、
図20Eおよび
図20Fに示されているように、ヒンジストラット992がレール991間の距離を広げる近位位置に指孔993、994を固定またはロックすることができる。ラッチタブ995を解除して、
図20Gに示されている拡張されていない状態に予備伸長要素を戻すこともできる。
【0081】
図20Bを再び参照されたい。次いで、治療システムの予備伸長弾性支持体902を、閉鎖された切開部の周囲の皮膚表面920に取り付けることができる。弾性支持体902は、縫合糸978または他の種類の切開部閉鎖装置、例えば、ステープルまたは糊などで閉鎖された切開部976に取り付けることができる。縫合糸978は、あらゆる種類の縫合糸とすることができ、連続縫合と結節縫合とを含め、あらゆる様々な縫合技術を用いて使用することができる。一部の変更形態では、縫合糸978は、閉鎖された切開縁980の近置を通常は維持することができるが、創傷閉鎖部に沿って作用する分離の力が、組織の局所的な張力部分を形成することがある。弾性支持体902を切開部に取り付けて、切開部976の実質的な長さに沿って追加の連続した力を加えることができ、これにより組織の局所的な張力が軽減され、場合によっては切開部の治癒が促進され得る。
図20Cでは、予備伸長要素990は、装置が皮膚組織920に力を加えることができる拡張されていない状態に変化している。包帯が取り付けられて減圧源に接続できるようになったら、
図20Dに示されているように予備伸長要素990を取り外すことができる。陰圧閉鎖療法システム900は、予備伸長要素990が拡張された構造もしくは拡張されていない構造の予備伸長された状態に構成するか、または当初は予備伸長要素が導管908に挿入されていない構成にすることができる。
【0082】
図21A〜
図21Dを参照されたい。使用の際は、
図9の弾性支持体902の各フラップ912が、皮膚表面920の切開部または創傷部のそれぞれの縁に貼り付けられるように、フラップ912を互いに弾性的に伸長する、または引き離して、その伸長された状態で切開部または創傷部に取り付けることができる。フラップ912とその弾性部材926の伸長は、
図21Bに示されているように、その範囲を非弾性部材996によって限定することができる。非弾性部材996は、フラップ912の一方に取り付けられた第1の端部と、創傷部の反対側のフラップ912の他方に取り付けられた第2の端部とを有する。非弾性部材996は、弾性支持体902の上に配置されている。すなわち、非弾性部材996は、
図21A〜
図21Dに示されている向きに弾性部材902の上部に少なくとも部分的に配置されるが、必ずしも弾性部材902に接触する必要はない。
【0083】
皮膚表面920に貼り付けられたら、伸長または変形力を解放することができ、そして支持体902と弾性部材926とにおける弾性または付勢力が、閉鎖された切開縁980を互いに向かって押すことができる。弾性支持体902は、縫合糸978または他の種類の切開部閉鎖装置、例えば、ステープルで閉鎖された切開部976に取り付けることができる。縫合糸978は、あらゆる種類の縫合糸とすることができ、連続縫合と結節縫合とを含め、あらゆる様々な縫合技術を用いて使用することができる。一部の変更形態では、縫合糸978は、閉鎖された切開縁980の近置を通常は維持することができるが、創傷閉鎖部に沿って作用する分離の力が、組織の局所的な張力部分を形成することがある。弾性支持体902を切開部に取り付けて、切開部976の実質的な長さに沿ってさらなる連続的な力を加えることができ、これにより局所的な組織の張力を軽減して、場合により切開部の治癒を促進することもできる。
図21Cに示されているように皮膚表面920に取り付けられたら、必要に応じて、
図21Dに示されているように非弾性部材を取り外すことができる。
【0084】
多数の実施形態を図示し、本明細書で説明してきたが、当業者であれば、これらの実施形態がほんの一例として示されていることを理解できよう。様々な変更形態と、変形形態と、置換形態とが、本発明から逸脱することなく当業者によって実施可能であろう。本明細書に開示された実施形態の様々な代替も利用できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法と、構造と、それらの等価とが、本発明の範囲に包含されるものとする。本明細書に記載された全ての実施形態では、方法の各ステップは、順番に行う必要はない。