(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902816
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ロック可能なスナップクリップファスナ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/20 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
F16B2/20 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-529918(P2014-529918)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公表番号】特表2015-503063(P2015-503063A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】US2012054303
(87)【国際公開番号】WO2013036864
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】61/533,104
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/439,034
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514059172
【氏名又は名称】マグプル インダストリーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MAGPUL INDUSTRIES CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】メイベリー、ミカエル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ベネット、ブラッド
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−241004(JP,A)
【文献】
特開平09−301032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00−2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップファスナであって、
a.ヒンジ式で対置できる2つのジョー部であって、両ジョー部は閉位置に付勢されている、ジョー部と、
b.ロッキングバーであって、前記ジョー部の一方のチャネル内に配置されて、その中で横方向にスライド可能に動くことが可能であり、該ロッキングバーは、さらに、
i.該ロッキングバーにおいて偏心した位置にあって前記横方向に対して垂直な垂直切欠部と、
ii.前記垂直切欠部の反対側で偏心した位置にあって前記横方向の一部分を切り欠いた水平切欠部と、
iii.前記水平切欠部の範囲内にあるリッジであって、該リッジと前記水平切欠部の内側とによって2つのデテントが形成されている、リッジと、を有するロッキングバーと、
c.一方のジョー部から前記ロッキングバーに近接した位置に延出するストップタブと、
d.少なくとも1つの端部を有するバネと、を備え、
前記ジョー部の開閉によって、前記ストップタブの移動経路が規定され、前記ストップタブは前記移動経路の範囲内にあり、前記バネの前記少なくとも1つの端部は、前記ロッキングバーの前記水平切欠部の範囲内にあって、前記ロッキングバーが開位置および閉位置に移動すると、前記ロッキングバーの前記リッジが、前記バネの前記端部のいずれかの側に選択可能に配置され得るようになっており、これによって、前記ロッキングバーが開位置にあるときに、前記垂直切欠部を前記移動経路に選択的に位置決めして、前記ストップタブの通過と、それに伴う前記ジョー部の相対的な枢動と、を可能にする、クリップファスナ。
【請求項2】
ファスナ用のロック機構であって、前記ファスナは、2つの枢動可能なジョー部と、前記ジョー部の枢動用の付勢を提供する捩りバネと、を備え、当該ロック機構は、
a.前記枢動可能なジョー部の一方の中を通って、開位置および閉位置に選択的にスライド可能な横断バーと、
b.前記捩りバネのアームと適合するように、前記横断バーの上面において偏心した位置にあるリッジと、
c.前記横断バー上で、前記リッジと反対側の偏心した位置にある垂直切欠部と、
d.前記横断バーが閉位置にあるときには前記横断バーと向き合い、前記横断バーが開位置にあるときには前記切欠部と向き合うように、前記ジョー部の一方に配置されたストップタブと、を含むロック機構。
【請求項3】
前記リッジは、前記横断バーの水平切欠部の中にある、請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記リッジは、前記捩りバネのアームと適合しており、これによって、前記横断バーが開位置にあるときには、前記リッジは前記捩りバネの前記アームの一方の側にあり、前記横断バーが閉位置にあるときには、前記リッジは、前記捩りバネの前記アームのもう一方の側にある、請求項3に記載のロック機構。
【請求項5】
前記リッジは、前記捩りバネのアームと適合しており、これによって、前記横断バーが開位置にあるときには、前記リッジは前記捩りバネの前記アームの一方の側にあり、前記横断バーが閉位置にあるときには、前記リッジは、前記捩りバネの前記アームのもう一方の側にある、請求項2に記載のロック機構。
【請求項6】
クリップファスナであって、
a.下ジョー部であって、該下ジョー部は、さらに、
i.後端レバー部と、
ii.該下ジョー部の両側に1つずつの2つの末端タブであって、それぞれが孔を有し、それらの孔は同軸状である、末端タブと、
iii.前記末端タブの一方と、前記後端レバー部との間に配置されたストップタブと、
iv.前方鉤形歯部と、を有する、下ジョー部と、
b.上ジョー部であって、該上ジョー部は、さらに、
i.ジョー本体から延出する後方横断バーと、
ii.前記横断バーの前方にある後部リッジと、
iii.上部が開いた横断ロックチャネルであって、前記後部リッジの前方にあるロックチャネルと、
iv.フロアと2つの側壁とを含む前部クレードルであって、前記側壁のそれぞれは、前記フロアから離間した歯部と1つのオリフィスとを含み、それらのオリフィスは、互いに対向している、前部クレードルと、を有する上ジョー部と、
c.前記上ジョー部の前記オリフィスと、前記下ジョー部の前記末端タブの前記孔とに挿入されたピボットバーと、
d.前記ピボットバーの周りに配置されたバネであって、前記後部リッジ上で支えられて、前記ジョー部を閉じた関係に付勢するように位置決めされたバネと、
e.前記上ジョー部の前記ロックチャネルの範囲内に配置されて、その中で横方向にスライド可能に動くことが可能なロッキングバーであって、該ロッキングバーは、さらに、
i.該ロッキングバーにおいて偏心した位置にあって前記横方向に対して垂直な垂直切欠部と、
ii.該ロッキングバーの上半分に配置された水平切欠部であって、前記垂直切欠部と反対側の偏心した位置にあって前記横方向の一部分を切り欠いた水平切欠部と、
iii.前記水平切欠部の範囲内にあるリッジであって、該リッジと前記水平切欠部の内側とによって2つのデテントが形成されている、リッジと、を有するロッキングバーと、を備え、
前記ロッキングバーの水平切欠部は、前記上ジョー部の前記後部リッジ上で支えられた前記バネの端部の下にあって、前記ロッキングバーを開位置および閉位置に動かすと、前記ロッキングバーの前記リッジは、前記バネの前記端部のいずれかの側に選択可能に配置されることができ、前記ロッキングバーが閉位置にあるときには、前記ストップタブは前記ロッキングバーの上方にあり、前記ロッキングバーが開位置にあるときには、前記ストップタブは前記垂直切欠部の上方に位置決めされて、これにより、前記ストップタブの通過と、それに伴う前記ジョー部の相対的な枢動と、が可能である、クリップファスナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスナの分野に関し、より具体的には、ロック可能なスナップクリップファスナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年9月9日に出願された先の出願である米国仮特許出願第61/533,104号の優先権、および2012年4月4日に出願された先の出願である米国非仮特許出願第13/439,034号の継続的な出願としての優先権を主張するものであり、これら両方の先の出願は、それらの全体が参照により援用される。
【0003】
本発明は、従来技術によるスナップクリップよりも少数の部品を含み、それらを簡単な構成で用いるロック可能なスナップクリップであり、これにより、本発明のスナップクリップは、従来技術に比して優れたものになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のスナップクリップでは、簡単かつ直観的に使用できるロック可能なスナップクリップが可能であり、ユーザが一方から他方に切り替えることを望むまで、ロックまたはロック解除された設定のいずれかに維持されるという点において、本発明は、従来技術からの脱却を示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
周知のタイプのスナップクリップファスナに固有の上記欠点に鑑み、本発明は、ロック可能なスナップクリップファスナを提供する。従って、本発明の全体的な目的は、簡単かつ直観的に使用することができ、また、少数の構成部品を用いて、経済的に製造される、新規の改良されたロック可能なスナップクリップファスナを提供することである。
【0006】
これらの目的を達成するため、本発明によるスナップクリップファスナは、2つのジョー部材を備え、これらは、ピボットで連結されており、バネによって閉位置に付勢されている。ロッキングバーが、一方のジョー部材を貫通して、バネの端部の下でスライドする。バーは、それが貫通するジョー部材のどちらかの側まで貫通させることができ、バネによってその位置に保持される。バーは、一方の位置では、他方のジョー部材の移行を阻止し、もう一方の位置では、移行を許可する。
【0007】
より詳細な以下の説明がより良く理解できるように、また、当該技術への本貢献がより良く理解できるように、本発明のより重要な特徴について、ここまで概説した。本発明のさらなる特徴について以下で記載し、それらは、添付の請求項の主題をなすものである。
【0008】
いくつかの図面において対応する部品を類似の参照記号で示し、本明細書の一部をなす添付の図面を参照して、以下の説明および添付の請求項から、本発明の様々な目的が明らかになるであろう。
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施形態について詳細に説明するに当たり、理解されるべきことは、本発明は、その応用において、以下の説明で記載する、または図面に示す構成の詳細および構成要素の配置に限定されないということである。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施および実現することが可能である。また、本明細書で用いる表現および術語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなされるべきではないということも、理解されるべきである。
【0010】
そこで、本発明の様々な目的を達成するための他の構造、方法、およびシステムを設計するための基礎として、本開示の基本となる概念を容易に利用することができることは、当業者であれば理解できるであろう。よって、重要なことは、請求項は、そのような均等な構成を、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて含むものとみなされるということである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の最良の形態を示すファスナの斜視図である。
【
図5】ロック解除された
図1のファスナの平面図である。
【
図6】
図5のファスナの線A−Aに沿った断面図である。
【
図7】
図5のファスナの線B−Bに沿った断面図である。
【
図8】ロックされた
図1のファスナの平面図である。
【
図9】
図8のファスナの線C−Cに沿った断面図である。
【
図10】
図8のファスナの線D−Dに沿った断面図である。
【
図12】スリングの両端部で使用される
図1のファスナの斜視図である。
【
図13】取り付けループに装着された
図1のファスナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、ロック式スナップクリップファスナの好ましい実施形態について、本明細書で記載する。留意されるべきことは、本明細書で用いられる冠詞“a”、“an”、“the”は、文脈上別段の明確な規定がない限り、複数形の指示対象を含むということである。
【0013】
図1および2を参照して、2つのジョー本体である下ジョー部12と上ジョー部14とで、ファスナ10を形成している。上ジョー部14は、下ジョー部12を受けて支える。下ジョー部12と上ジョー部14とは、互いに対してロールピン15の周りで枢動し、捩りバネ13によって閉位置に付勢されている。ロッキングバー16が、上ジョー部14の中央部分を貫通しており、これに対する下ジョー部12の動きを選択的に妨げることができる。このように妨げることによって、ユーザの意志でファスナ10を動かない位置にロックすることが可能である。
【0014】
図3および4は、より詳細にファスナの構成要素を示している。下ジョー部12は、一端に鉤形歯部26を、他端にレバー28を備えることを特徴とする。2つの末端タブ24が、レバー28の終端から下ジョー部12の長さの約3分の1の位置で、下ジョー部12の両側に配置されている。両方のタブ24は、同軸の貫通孔を備えることを特徴とする。ストップ22が、下ジョー部12の片側で、レバー28の下の一方のタブ24の背後に配置されている。上ジョー部14は、鉤形歯部26と適合したクレードル40を備えることを特徴とする。クレードル40は、フロア43と、それぞれ歯部45で終端している両側部とを備えることを特徴とし、それぞれの歯部45とフロア43との間には空間が画成されている。上ジョー部14は、さらに、クレードルと反対側にアタッチメントバー48を備えることを特徴とする。アタッチメントバー48は、上ジョー部14の後端を定めている。2つのピボット孔42が、上ジョー部14の対向壁に設けられており、適正に位置決めされたときのタブ24の孔と、ピボット孔42とは同軸となるようになっている。これらの中に、ロールピン15または類似の構造体が挿入されて、これにより下ジョー部12と上ジョー部14とを連結し、また、ピボットバーとして機能して、その周りでジョー本体がそれぞれ枢動する。捩りバネ13は、タブ24の間でロールピン15の周りに配置されて、一方のアームが上ジョー部14の後部リッジ46のスロット内に入るようにして(
図11)、支えられている。捩りバネ13は、ジョー本体を閉位置に付勢している。
【0015】
ロッキングバー16は、上ジョー部14においてピボット孔42の背後にあるチャネル44に貫通している。ロッキングバーは、両側のテーパ端62、68と、偏心垂直切欠部66と、同様に偏心した水平切欠部にあるリッジ64と、を備えることを特徴とする。リッジ64と水平切欠部とは一緒に、2つのデテントをリッジ64の両側に形成している。所定位置にあるときには、水平切欠部は、後部リッジ46に支えられたバネ13の端部の下にある。これらの部品間の関係は、
図8に、より良く見えるように示されている。
【0016】
図5〜10に示す使用の際には、ロッキングバー16が、どちらか一方の側に押される。
図5〜7に示す開位置では、ストップ22が切欠部66の上に位置決めされて、これにより、下ジョー部12と上ジョー部14とは相互に動くことが可能である。バネ13は、水平切欠部においてリッジ64の外縁デテントの中にある。バネ圧によって、バネ13がロッキングバー16に対して付勢されて、ロッキングバーはその位置に維持される。
図8〜10に示すようにファスナをロックするためには、ユーザは、バネ13がリッジ64を飛び越えて、その他方のデテントに落ち着くのに十分な力がバネ13に加えられるまで、ロッキングバー16の露出したテーパ端部を押圧する。この位置では、ストップ22は、垂直切欠部66の上ではなく、ロッキングバー16の中実部分の上に位置決めされる。これによって、このときの下ジョー部12と上ジョー部14は、枢動してファスナを開くことを阻止される。この場合、ファスナのロッキングバー16を、一方の位置からもう一方の位置に切り替えるためには、ユーザからの積極的な押圧力が必要であり、ユーザが意識的に変更したいと望むまでは、その位置に維持される。
【0017】
本ファスナ10は、
図12に示すスリング18など、多くの異なる機能で用いることができる。いずれの状況においても、ストラップを、周知の通常の手段のいずれかで、または後に発見される任意の手段によって、アタッチメントバー48の周りに固定することができる。
図13に示す使用の際には、ファスナ10は、そのロックを解除し、レバー28を押し下げることで下ジョー部12を上ジョー部14から分離させて、開かれる。リングまたはバーなどの連結金具片8を、上ジョー部14の歯部45とフロア43との間に位置決めして、レバー28を解放すると、これにより、連結金具の周りで鉤形歯部26が閉じる。その後、ファスナ10は、上述のようにロックされる。
【0018】
本発明について、好ましい実施形態を参照して説明したが、種々の変更および変形を実施することが可能であり、その結果は、依然として本発明の範囲内にある。本明細書で開示された具体的な実施形態に関しては、限定を意図するものでは決してない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、産業界で生産されて、物品を運搬もしくは他の物品に締結する必要がある運送および他の分野において補助として使用することが可能である。本出願では、本発明を、スリングと共に使用されるものとして例示しているが、本発明は、2つの物品を一時的ではあるが堅固に締結する必要がある場合であれば、他の物品と共に、中でも特にストラップおよびパックと共に用いることが可能である。アタッチメントバー48は、この場合はスリングである対象物品に本発明を連結する手段の一例である。様々に異なるタイプの物品に対して、様々に異なる目的で、様々に異なるアタッチメント手段を利用することができることは、容易に理解されるに違いない。本発明は、いずれかの適切な材料で製造することができ、耐久性および経済的な構成のために最適なのは、金属およびプラスチックであると考えられる。
【0020】
提示される好ましい実施形態の以下の構成要素を、以下の参照符号を用いて示している。
【符号の説明】
【0021】
8 連結金具
10 ファスナ
12 下ジョー部
13 バネ
14 上ジョー部
15 ロールピン
16 ロッキングバー
18 スリング
22 ストップ
24 末端タブ
26 鉤形歯部
28 レバー
40 クレードル
42 ピボット孔
43 フロア
44 チャネル
45 歯部
46 後部リッジ
48 アタッチメントバー
62 第1のテーパ端部
64 リッジ
66 偏心垂直切欠部
68 第2のテーパ端部