特許第5902826号(P5902826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902826
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20160331BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160331BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B01J35/04 301P
   B01J37/08ZAB
   B01D53/86 222
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-545498(P2014-545498)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2012078943
(87)【国際公開番号】WO2014073065
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】深沢 康文
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−038206(JP,A)
【文献】 特開2006−255641(JP,A)
【文献】 特開平05−000244(JP,A)
【文献】 特開平02−290250(JP,A)
【文献】 特開2004−000943(JP,A)
【文献】 特開2003−053147(JP,A)
【文献】 特開2000−189756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、
チタン酸化物、バナジウム原料、タングステン原料及び無機バインダを含む材料をハニカム状に成形し、ハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450〜650℃とすることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程における酸素濃度を30〜50%とすることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記バナジウム原料がメタバナジン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記バナジウム原料中のバナジウム原子、及び前記タングステン原料中のタングステン原子のモル比(W/V)が0.8〜1.2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程において、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む材料を用いて成形することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝触媒たるハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス中のNOxを浄化するためのシステムとして、アンモニアを用いてNOxを窒素と水に還元するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。このSCRシステムに用いられる触媒として、五酸化バナジウム(V)が高い脱硝性能を有することが知られており、二酸化チタン(TiO)にVや三酸化タングステン(WO)を担持した材料が用いられている。そして、このような、チタン酸化物にV,WOを担持した触媒(以下、「TiO/V/WO触媒」とも呼ぶ。)としては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−21780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなTiO/V/WO触媒を用いたSCRシステムでは以下の問題を有する。
TiO/V/WO触媒におけるNOx浄化性能は触媒種であるVとWの添加量に依存し変化するが、VとWの添加量・割合が適当でない場合、活性点となるVが均一に分散できず、バルク体を形成し有効に使用することが出来ない。さらに熱によってもVがバルク体を形成し失活する等の問題がある。また、VおよびWの添加量を多くする場合には触媒のコスト面も問題となる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TiO/V/WO触媒を用いたハニカム構造体であって、NOx浄化率及び熱耐久性に優れたハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、
チタン酸化物、バナジウム原料、タングステン原料及び無機バインダを含む材料をハニカム状に成形し、ハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450〜650℃とすることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【0007】
(2)前記焼成工程における酸素濃度を30〜50%とすることを特徴とする前記(1)に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0008】
(3)前記バナジウム原料がメタバナジン酸アンモニウムであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0009】
(4)前記バナジウム原料中のバナジウム原子、及び前記タングステン原料中のタングステン原子のモル比(W/V)が0.8〜1.2であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0010】
(5)前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0011】
(6)前記成形工程において、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む材料を用いて成形することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0012】
(7)前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする前記(6)に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0013】
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム構造体であって、
水素−昇温還元法(H−TPR)によるハニカム構造体1gあたりのVによる水素消費量が0.6mmol以上であり、W/V添加量モル比が0.8〜1.2であることを特徴とするハニカム構造体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、TiO/V/WO触媒を用いたハニカム構造体であって、NOx浄化率及び熱耐久性に優れたハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】TiO/V/WO触媒のNOx浄化サイクルを示す図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一例を示す斜視図である。
図3】本発明のハニカム構造体を有する排ガス浄化装置の一例を示す断面図である。
図4】本発明のハニカム構造体の他の例を示す斜視図である。
図5図4のハニカム構造体を構成するハニカムユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、チタン酸化物、バナジウム原料、タングステン原料及び無機バインダを含む材料をハニカム状に成形し、ハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含み、前記焼成工程において、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450〜650℃とすることを特徴としている。
また、本発明のハニカム構造体は、上記本発明のハニカム構造体の製造方法により得られるハニカム構造体であって、水素−昇温還元法(H−TPR)によるハニカム構造体1gあたりのVによる水素消費量が0.6mmol以上であることを特徴としている。
【0017】
TiO/V/WO触媒に於けるSCR反応は、図1に示すようにTiO上でのV(5価⇔4価)の酸化還元反応により進行することから、TiO上のV(5価)の量を増加させることにより反応性は向上する。TiO上のV(5価)の量を増加させるためには、TiO上でWをVと結合させV−O−Wとすればよく、これによりVの分散状態を維持し、且つ熱によってVがバルク化し失活するのを防ぐことが出来る。すなわち、TiO上でWをVと結合させV−O−Wとすることで、TiO上の5価のVイオンの量を常に多い状態に保つことが出来る。そして、TiO上でVを5価のイオンとして全て有効に使用するためには、TiO上におけるVとWを少なくともモル比1:1となるように結合させる必要があると考えられる。
【0018】
本発明者は、自動車排ガスの一般的な条件である250℃、SV(空間速度)60000hr−1、NO/NOx=0の時に、Vの分散状態、すなわち反応に寄与するV(5価)の量(以下、「有効V量」と呼ぶ。)を定量した結果、W添加量の増加に伴い向上すること、さらに有効V量の増加に伴いNOx浄化率は向上し0.3mmol/g以上で飽和することを見出した。
ここで、有効V量導出の手法としては、水素−昇温還元法(H−TPR)を用いる。そして、ハニカム構造体1gあたりの有効V量0.3mmol以上を満たすためには、5価バナジウム還元由来ピーク(350〜580℃)から計算される水素消費量と、それに伴うバナジウム価数変化の関係より、本測定における水素消費量は0.6mmol/g以上でなければならない。
以上のことから、水素−昇温還元法におけるバナジウム還元由来の水素消費量をハニカム構造体1gあたり0.6mmol以上(有効V量0.3mmol/g以上)、W/V添加量モル比0.8〜1.2とすることで、初期のNOx浄化性能と熱耐久性を向上させることができる。
【0019】
以上の通り、TiO/V/WO触媒において有効V量を向上させることで、初期のNOx浄化性能と熱耐久性を向上させることができる。つまり、Vを均一に分散し、バルク体が存在しないようにすればよいが、本発明者は、成形体を焼成する時に酸素濃度を高濃度とすると、未反応のVの原料が減少し、Vが均一に分散することを見出した。つまり、焼成工程における酸素濃度を21%以上、温度を450〜600℃とすることでVを均一に分散させることができ、ひいてはNOx浄化性能と熱耐久性を向上させることができる。
【0020】
以下に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明するに当たり、まず当該ハニカム構造体の一例を図2を参照して説明し、次いで本発明の製造方法の各工程について順次説明する。
図2に示すハニカム構造体10は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、及び無機バインダとを含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されている単一のハニカムユニット11を有する。また、ハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層12が形成されている。
このようなハニカム構造体を製造する本発明の製造方法の各工程について以下に説明する。
【0021】
[成形工程]
本工程においては、チタン酸化物、バナジウム原料、タングステン原料及び無機バインダを含み、必要に応じて、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含む原料ペーストを用いて押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されている円柱状のハニカム成形体を作製する。
【0022】
チタン酸化物としては、比表面積が高いアナターゼ型の二酸化チタンを用いることが好ましい。
【0023】
バナジウム原料としては、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、 メタバナジン酸カリウム、シュウ酸バナジル、酢酸バナジル等が挙げられ、中でも、取り扱いが容易であることから、メタバナジン酸アンモニウムであることが好ましい。メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、NHVO→V+2NH+HOといった分解反応によって、Vを生成し、SCRシステムにおける触媒としての役割を果たす。
【0024】
タングステン原料としては、メタタングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、パラタングステン酸アンモニウム等が挙げられ、中でも、メタタングステン酸アンモニウムが好ましい。
【0025】
原料ペースト中、前記バナジウム原料中のバナジウム原子、及び前記タングステン原料中のタングステン原子のモル比(W/V)は0.8〜1.2とすることが好ましい。上述したとおり、ハニカム構造体におけるW/V添加量モル比0.8〜1.2とすることで、初期のNOx浄化性能と熱耐久性を向上させることができるためである。当該モル比は、より好ましくは0.9〜1.1であり、さらに好ましくは0.95〜1.05である。
また、チタン原子に対するタングステン原子及びバナジウム原子の合計のモル比((W+V)/Ti)は、0.02〜0.2が好ましく、0.05〜0.1がより好ましい。
【0026】
強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上を原料ペースト中に添加することが好ましい。
【0027】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることが好ましい。
いずれも耐熱性が高く、SCRシステムにおける触媒担体として使用した時でも、溶損などがなく、補強材としての効果を持続することができるためである。
【0028】
前記無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がより好ましく、10〜500がさらに好ましい。ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりする。
【0029】
前記鱗片状物質は、平たい物質を意味し、厚さが0.2〜5.0μmであることが好ましく、最大長さが10〜160μmであることが好ましく、厚さに対する最大長さの比が3〜250であることが好ましい。
【0030】
前記テトラポット状物質は、針状部が三次元に延びている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0031】
前記三次元針状物質は、針状部同士がそれぞれの針状部の中央付近でガラス等の無機化合物により結合されている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0032】
また、三次元針状物質は、複数の針状部が三次元に連なっていてもよく、針状部の直径が0.1〜5.0μmであることが好ましく、長さが0.3〜30.0μmであることが好ましく、直径に対する長さの比が1.4〜50.0であることが好ましい。
【0033】
無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量は、ハニカムユニット11中、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。ハニカム構造体中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が3質量%未満であると、ハニカム構造体の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカム構造体中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が50質量%を超えると、ハニカム構造体中のTiO/V/WO触媒の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0034】
前記無機バインダとしては、特に限定されないが、ハニカム構造体としての強度を保つという観点から、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト、ベーマイト等に含まれる固形分が好適なものとして挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0035】
無機バインダの含有量は、ハニカムユニット11中、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が5質量%未満であると、ハニカム構造体の強度が低下する。一方、ハニカム構造体中の無機バインダの含有量が30質量%を超えると、ハニカム成形体を押出成形することが困難になる。
【0036】
また、原料ペーストには、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0037】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の総質量に対して、1〜10%であることが好ましい。
【0038】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0039】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0040】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0041】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥する。
【0042】
[焼成工程]
焼成工程においては、以上のようにして得られたハニカム成形体を焼成する。焼成工程においては、上述の通り、酸素濃度を21%以上とし、かつ温度を450〜650℃とする。当該酸素濃度は、Vをより均一に分散させることができ、NOx浄化性能と熱耐久性を向上させることができるという観点から30〜50%とすることが好ましく、35〜45%がより好ましい。焼成工程において酸素濃度を上記範囲内として焼成するには、上記濃度の酸素ガスを含む混合ガスを任意の流量で焼成炉内に導入すればよい。当該混合ガス中の酸素以外の成分は特に限定はなく、例えば、窒素が挙げられる。
また、焼成温度は、上述の通り450〜650℃であるが、500〜600℃であることが好ましい。焼成温度が450℃未満であると、焼結が進行せず、ハニカムユニット11の強度が低くなる。一方、焼成温度が650℃を超えると、焼結の進行によりTiO/V/WOのNOx浄化性能が低下する。上記焼成温度に到達するまでの昇温速度としては、0.1〜10℃/分とすることが好ましい。
焼成時間は、焼成が完結するまでの時間を適宜設定すればよく、例えば、1〜5時間とすることができる。
【0043】
[その他の工程]
以上の焼成工程の後に、外周コート層を形成する工程など、その他の工程を設けることができる。
外周コート層を形成する工程においては、円柱状のハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0044】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0045】
外周コート層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0046】
外周コート層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0047】
外周コート層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0048】
外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0049】
外周コート層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0050】
外周コート層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0051】
外周コート層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0052】
外周コート層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0053】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化し、円柱状のハニカム構造体10を作製する。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができる。
【0054】
以上のようにして作製されるハニカムユニット11は、気孔率が30〜60%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が30%未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、TiO/V/WO触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が60%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0055】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0056】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、TiO/V/WO触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0057】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜155個/cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm未満であると、TiO/V/WO触媒と排ガスが接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が155個/cmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0058】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.4mmを超えると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、TiO/V/WO触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0059】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2.0mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層12の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりのTiO/V/WO触媒の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0060】
ハニカム構造体10の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0061】
貫通孔11aの形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0062】
図3に、本発明のハニカム構造体を有する排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属容器(シェル)30にキャニングすることにより作製することができる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスが流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側の配管(不図示)内に、アンモニア又は分解してアンモニアを発生させる化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、配管を流れる排ガス中にアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれるTiO/V/WO触媒により、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0063】
分解してアンモニアを発生させる化合物としては、配管内で排ガスにより加熱されて、アンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性に優れるため、尿素水が好ましい。
【0064】
尿素水は、配管内で排ガスにより加熱されて、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0065】
図4に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10'は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11'(図5参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0066】
ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積が10〜200cmであることが好ましい。ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が10cm未満であると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が200cmを超えると、ハニカムユニット11'に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0067】
なお、ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0068】
接着層13は、厚さが0.5〜2.0mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11'の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。
【0069】
次に、ハニカム構造体10'の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11'を作製する。次に、ハニカムユニット11'の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0070】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0071】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0072】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0073】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0074】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
【0075】
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0076】
接着層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0077】
接着層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0078】
接着層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0079】
次に、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工した後、必要に応じて、研磨することにより、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0080】
なお、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工する代わりに、長手方向に垂直な断面が所定の形状に成形されているハニカムユニット11'を接着させて、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製してもよい。このとき、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の形状は、中心角が90°の扇形であることが好ましい。
【0081】
次に、円柱状のハニカムユニット11'の集合体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0082】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
次に、外周コート層用ペーストが塗布された円柱状のハニカムユニット11'の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10'を作製する。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができる。
【0084】
なお、ハニカム構造体10及び10'は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
酸化チタン3910質量部、バナジウム原料としてメタバナジン酸アンモニウム210質量部、タングステン原料としてメタタングステン酸アンモニウム(50%溶液)670質量部、アルミナバインダー300質量部、ワラストナイトファイバー170質量部、成形助剤としてメチルセルロース300質量部、成形潤滑剤としてソルビタントリオレエート80質量部、pH調整剤としてジエタノールアミン150質量部、イオン交換水1750質量部を混合混練して、原料ペースト1を調製した。バナジウム原料中のバナジウム原子、及びタングステン原料中のタングステン原子のモル比(W/V)は0.80であった。
【0087】
次に、押出成形機を用いて、原料ペースト1を押出成形して、正四角柱状のハニカム成形体を作製した。そして、バッチマイクロ波乾燥機を用いてハニカム成形体を、乾燥圧力86.7kPaにて6分間で乾燥させた。次に、ハニカム成形体をガス流通炉に投入し、昇温速度5℃/分にて550℃まで昇温し、その温度を3時間保持して焼成し、ハニカム焼成体を作製した。なお、焼成時においては、酸素濃度21%、窒素濃度79%の混合ガスをガス流量20L/分にて導入した。
ハニカムユニット11'は、一辺が35mm、長さが150mmの正四角柱状であり、貫通孔11aの密度が62個/cm、隔壁11bの厚さが0.28mmであった。
【0088】
次に、平均繊維径が0.5μm、平均繊維長が15μmのアルミナ繊維を767部、シリカガラスを2500部、カルボキシメチルセルロースを17部、固形分30質量%のシリカゾルを600部、ポリビニルアルコールを167部、界面活性剤を167部及びアルミナバルーンを17部、混合混練して、接着層用ペーストを作製した。
【0089】
ハニカムユニット11'の両端部を除く外周面に、接着層13の厚さが2.0mmになるように接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を16個接着させ、150℃で10分間乾燥固化した。次に、ダイヤモンドカッターを用いて、長手方向に垂直な断面が略点対称になるように円柱状に切削加工して、ハニカムユニット11'の集合体を作製した。
【0090】
さらに、ハニカムユニット11'の集合体の両端部を除く外周面に、外周コート層12の厚さが1.0mmになるように接着層用ペーストを塗布した後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機を用いて、接着層用ペーストを150℃で10分間乾燥固化し、400℃で2時間脱脂して、直径が143.8mm、長さが150mmの円柱状のハニカム構造体10'を作製した。
【0091】
[実施例2]
焼成時に導入する混合ガス中の酸素濃度を40%(窒素濃度:60%)としたこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体10’を作製した。
【0092】
[比較例1]
焼成時に導入する混合ガス中の酸素濃度を0%(窒素濃度:100%)としたこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体10’を作製した。
【0093】
[比較例2]
焼成時に導入する混合ガス中の酸素濃度を20%(空気中)としたこと以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体10’を作製した。
【0094】
[有効V量]
実施例1及び2、比較例1及び2で作製したハニカムユニットを粉砕して粉末状とし、以下の手順にてH−TPR測定を行った。測定結果たる水素消費量の1/2を有効V量とした。結果を表1に示す。
(1)前処理として、Heを50cm/分の流量で炉内に導入して、100℃から昇温速度10℃/分で500℃まで昇温し、その温度を1時間保持した。次いで、100℃まで降温した。
(2)次に、H:5.04%、Ar;94.96%の混合ガスを30cm/分の流量で炉内に導入して、100℃から昇温速度10℃/分で700℃まで昇温し、その温度を20分間保持した。次いで、Heを50cm/分の流量で炉内に導入して100℃まで降温した。
【0095】
[NOxの浄化性能]
実施例1及び2、比較例1及び2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、一辺が30mm、長さが40mmの正四角柱状の試験片を切り出した。これらの試験片に、200℃の模擬ガスを空間速度(SV)80000/hrで流しながら、触媒評価装置(堀場製作所社製、SIGU−2000/MEXA−6000FT)を用いて、試料から流出するNOxの流出量を測定し、式
(NOxの流入量−NOxの流出量)/(NOxの流入量)×100
で表されるNOxの浄化率[%]を算出した。算出結果を表1に示す。なお、模擬ガスの構成成分は、一酸化窒素350ppm、アンモニア350ppm、酸素14%、水10%、窒素(balance)である。
【0096】
[熱耐久性]
実施例1及び2、比較例1及び2で作製したハニカムユニットから、ダイヤモンドカッターを用いて、一辺が30mm、長さが40mmの正四角柱状の試験片を切り出した。これらの試験片に、触媒耐久装置(堀場製作所社製、SIGU−1000)を用いて550℃で100時間熱処理をし、上記NOx浄化率測定条件にて性能評価を実施した。
熱処理時の模擬ガス条件は酸素20%、水10%、窒素(balance)、流量1L/分である。
【0097】
【表1】
【0098】
表1より、実施例1及び2のハニカム構造体は、比較例1及びのハニカム構造体と比較して、有効V量が多く、熱耐久前後のNOx浄化性能がともに満足できる結果が得られたことが分かる。このことからも、本発明の製造方法により、有効V量を増加させることができ、ひいてはNOx浄化性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0099】
10、10' ハニカム構造体
11、11' ハニカムユニット
11a 貫通孔
11b 隔壁
12 外周コート層
13 接着層
20 保持シール材
30 金属容器
100 排ガス浄化装置
図1
図2
図3
図4
図5