特許第5902829号(P5902829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5902829フィルムを含有する色変わりオーラル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902829
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】フィルムを含有する色変わりオーラル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20160331BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20160331BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/73
   A61Q11/00
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-547161(P2014-547161)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2015-500339(P2015-500339A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】US2011065311
(87)【国際公開番号】WO2013089762
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】590002611
【氏名又は名称】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001874
【氏名又は名称】特許業務法人IPyS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グイシュヨン・パン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・シェブチック
(72)【発明者】
【氏名】ノラ・リン
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/114551(WO,A1)
【文献】 特表2008−539729(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0150968(US,A1)
【文献】 特開昭60−016913(JP,A)
【文献】 特開昭63−250314(JP,A)
【文献】 特表2006−515598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 11/00〜90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスを含む、経口的に許容される粉末被覆溶解性単層フィルムであって、
マトリックスがそのマトリックスの溶解に際して放出される顔料を含み、粉末の被覆が顔料を含み、該マトリックスが可塑剤を含む、フィルム。
【請求項2】
該マトリックスが、ヒドロキシアルキルセルロースを含む請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
該ヒドロキシアルキルセルロースがヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
該マトリックスがさらに澱粉を含む請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
可塑剤がソルビトール、プロピレングリコール、グリセロールまたはPEG200である、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
可塑剤がプロピレングリコールを含む請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
該マトリックスが非イオン性界面活性剤または乳化剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
該非イオン性界面活性剤または乳化剤がポリソルベートである請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
該粉末被覆が二酸化チタン、Ca、赤色酸化鉄およびD&Cレッド30から選択される請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
該粉末被覆が、トリクロサンおよび酸化亜鉛から選択される水不溶性抗微生物剤をさらに含む請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム。
【請求項11】
該マトリックスが、水の存在下で、30秒よりも長く180秒よりも短い時間のブラッシング後に実質的に溶解される請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
溶解性ポリマーマトリックスを形成すること、粉末を該マトリックスの表面に散布すること、および、該粉末が該マトリックスに吸着されるまで粉末被覆フィルムを加熱することを含む請求項1〜11のいずれかに記載のフィルムを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
子供は少なくとも45〜60秒の間、成人は少なくとも90〜120秒の間、自分の歯を磨くべきことが推奨される。ほとんどの人々は、特に、子供は、最大の恩恵を得るのに十分な時間、自分の歯を磨かず、さらに、歯を磨くのに必要な時間を正確に見積もる困難性を有する。
【0002】
子供が十分な時間、自分の歯を磨くのを促進するための、改良された、消費者に優しい製品および方法に対する要望が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明のいくつかの実施形態は、粉末被覆溶解性フィルム断片を提供し、例えば、ここで、フィルムマトリックスは該フィルムの溶解に際して放出される顔料を含み、あるいはここで、粉末被覆は水−不溶性活性剤を含む。いくつかの実施形態は、さらに、そのような粉末被覆溶解性フィルム断片を含む歯磨剤を提供し、例えば、ここで、該フィルムは十分なブラッシングの後に溶解し、顔料を放出する。
【0004】
他の実施形態は、さらに、顔料が放出されるまでそのような歯磨剤で磨くことを含む歯を洗浄する方法を提供する。なお他の実施形態において、本発明は、粉末をフィルム表面に散布し、粉末被覆フィルムを十分に加熱して、該粉末を該フィルムにアニールまたは吸着させることを含む、溶解性フィルムを着色し、または被覆する新規な方法を提供する。
【0005】
本発明の利用性のさらなる分野は、以下に提供する詳細な記載から明らかとなるであろう。詳細な記載および具体的な実施例は、発明の好ましい実施形態を示しつつ、説明のみを目的とすることが意図され、発明の範囲を限定することを意図しない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
好ましい実施形態の以下の記載は、性質上、単に実例であって、断じて、発明、その適用、または使用を制限する意図ではない。
【0007】
本発明は、かくして、第一の実施形態において、経口的に許容される粉末被覆溶解性フィルム(フィルム1);例えば、
1.1 フィルムマトリックスが、該フィルムの溶解に際して放出される顔料を含むフィルム1;
1.2 フィルムマトリックスが、例えば、
(i)アルキルセルロース、例えば、メチルセルロース;
(ii)例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物から選択されるヒドロキシアルキルセルロース;
および(iii)それらの混合物
から選択されるセルロースエーテルを含むフィルム1または1.1;
1.3 フィルムマトリックスが澱粉、例えば、α化澱粉を含む前記フィルムのいずれか;
1.4 フィルムマトリックスが可塑剤、例えば、ポリアルコール、例えば、ソルビトール、プロピレングリコール、グリセロール、または低分子量ポリエチレングリコール、例えば、PEG200を含む前記フィルムのいずれか;
1.5 フィルムマトリックスがプロピレングリコールを、例えば、該フィルムに可塑性を供するのに十分な量、例えば、該フィルムの約20〜30乾燥重量%で含む前記フィルムのいずれか;
1.6 フィルムマトリックスが非イオン性界面活性剤または乳化剤、例えば、ポリソルベート、例えば、(例えば、Tween(登録商標)80として商業的に入手可能なポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートとしても知られた)ポリソルベート80を、例えば、該フィルムの約1〜5乾燥重量%の量で含む前記フィルムのいずれか;
1.7 フィルムマトリックスが、例えば、赤色顔料、例えば、D&Cレッド30、緑色顔料、例えば、ピグメントグリーン7、黄色顔料、例えば、(Sensient Co.からのNatpure LC128イエロー)、青色顔料、例えば、フタロシアニン、例えば、ピグメントブルー15:
【化1】
から選択される顔料または顔料の組合せを含む前記フィルムのいずれか;
1.8 該粉末被覆が顔料を含む前記フィルムのいずれか;
1.9 該粉末被覆が、例えば、二酸化チタンまたはCaの粒子を含む白色粉末顔料を含む前記フィルムのいずれか;
1.10 該粉末被覆が、例えば、酸化鉄またはD&Cレッド30の粒子を含む赤色粉末顔料を含む前記フィルムのいずれか;
1.11 フィルムマトリックスが極性顔料を含む前記フィルムのいずれか;
1.12 該粉末被覆が極性化合物を含む前記フィルムのいずれか;
1.13 該粉末被覆が水不溶性材料を含む前記フィルムのいずれか;
1.14 該粉末被覆が、例えば、トリクロサンおよび酸化亜鉛から選択される水不溶性抗微生物剤を含む前記フィルムのいずれか;
1.15 フィルムマトリックスが、水の存在下で、30秒よりも長く180秒よりも短い時間のブラッシングの後に実質的に溶解する前記フィルムのいずれか;
1.16 該フィルムの平均厚みが1〜3ミルである前記フィルムのいずれか;
1.17 溶解性フィルムマトリックスを形成し、該フィルムマトリックスの表面に粉末を散布し、該粉末が該フィルムに吸着されるまで該粉末被覆フィルムを加熱する方法によって製造される前記フィルムのいずれか;
1.18 フィルムマトリックスが、該マトリックスの乾燥重量で表して、(i)20〜60%の、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの混合物から選択されるセルロースエーテル、(ii)10〜30%のプロピレングリコール;1〜5%のポリソルベート80、および15〜55%の顔料を含む前記フィルムのいずれか;
を提供する。
【0008】
本発明は、さらに、経口的に許容される粉末被覆溶解性フィルム、例えば、フィルム1等のいずれかを含むオーラルケア製品、例えば、歯磨剤、例えば、練り歯磨き、例えば、透明なジェル練り歯磨きを提供し、例えば、
a. ここで、該粉末被覆溶解性フィルムは、フィルムマトリックス中に顔料を含み、例えば、
b. ここで、使用に際して、該フィルムマトリックスは、少なくとも30秒であって約180秒以内後に、例えば、子供によって用いられる練り歯磨きでは約45〜60秒、および成人によって用いられる練り歯磨きでは約90〜120秒後に溶解し、それにより、顔料を放出し、色シグナルを適切なブラッシングの利用者に供する。
例えば、1つの実施形態において、練り歯磨きは透明ジェルであり、そこでは、フィルム粒子は明瞭に見ることができる。フィルム粒子は、例えば、小さな2〜4平方mmの断面であってよい。それらは全て1つの色または雑色であってよく、該色は粉末被覆によって付与され、フィルムマトリックスは高濃度の顔料を含有することができる。一定時間のブラッシング、例えば、少なくとも30秒の後に、フィルムマトリックスは破壊され、透明なジェル練り歯磨きは顔料によって突然着色し、利用者に、自己が適切な時間ブラッシングしたことをシグナルで伝える。
【0009】
本発明は、さらに、例えば、先の段落に記載された経口的に許容される粉末被覆溶解性フィルムを含む練り歯磨きでブラッシングすることを含む歯を洗浄する方法、例えば、
a. 該粉末被覆溶解性フィルムが該フィルムマトリックス中に顔料を含み、該フィルムマトリックスが溶解し、該顔料が適切なブラッシングの利用者に色のシグナルを供するまでブラッシングを続ける該方法、例えば、
b.該フィルムマトリックスが溶解する前のブラッシング時間が、30および180秒の間、例えば、子供によって用いられる練り歯磨きでは約45〜60秒、および成人によって用いられる練り歯磨きでは約90〜120秒である前記方法;
を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、溶解性フィルムマトリックスを形成し、粉末を該フィルムマトリックスの表面に散布し、該粉末が該フィルムに吸着されるまで該粉末被覆フィルムを加熱することを含む、粉末被覆溶解性フィルム、例えば、フィルム1等のいずれかを製造する方法を提供する。
【0011】
経口的に許容される:本発明の組成物は、口の中での局所的使用が意図され、かくして、本発明で用いる成分は、供給される量および濃度にて、経口的に許容される、すなわち、口の中での局所的使用で安全とすべきである。
【0012】
全体を通じて用いられるように、範囲は、該範囲内にある各々のおよびあらゆる値を記載するための簡易表記法として用いられる。該範囲内にあるいずれの値も、該範囲の目標として選択することができる。加えて、本明細書中において引用された全ての文献は、ここに引用してその全体を援用する。本開示における定義と引用された文献の定義とがコンフリクトする場合、本開示が優先する。
【0013】
特記しない限り、明細書中のここでおよび他の箇所で表された全てのパーセンテージおよび量は重量によるパーセンテージを指すことが理解されるべきである。
【実施例】
【0014】
実施例1
ブルー15顔料をフィルムに封入して、ブラッシングの間の色変化をトリガーする。単一層のフィルムは作成するのが安価であるが、高顔料負荷はそれらを黒色に見えるようにするので、消費者によっては魅力的でない場合がある。三層白色−黒色−白色フィルムは黒色のフィルムを隠して、白色フィルムとし、これはより魅力的であるが、これらの三重フィルムは非常に高価である。目標は、黒色フィルムを、三層フィルムの製造と比較して単純で安価な粉末被覆方法によって他の色に変換することである。
【0015】
試作品の色変り練り歯磨き製品は、顔料を溶解性ポリマーフィルムに封入することによって開発される。ブラッシングの間に、フィルムは水から膨潤し、崩壊し、顔料を放出し、かくして、色の変化が起こって、いつブラッシングがなされたかを消費者に示す。目標は、色変化のシグナルを用いて、ブラッシング時間を子供では45〜60秒および成人では90〜120秒に制御することによって消費者にとってブラッシング時間を増加させることである。
【0016】
2つのフィルムの選択肢が開発される:(1)安価であって、非常に強い色変化のシグナル(高い色変化コントラスト)を有する単層黒色フィルム、(2)黒色フィルムを中央に隠す三層白色−黒色−白色フィルム。これらの三層フィルムは視覚的に消費者により許容されるが、色変化のコントラストは、外側層からのTiOの非常に高い色被覆力のため減少する。
【0017】
前記選択肢についての利点および不利をバランスさせるために、本発明者らは、他の粉末/色を黒色フィルムの表面に吸着させて、黒色フィルムを他の色のフィルムに変換させる。この方法は、コアフィルムに追加するさらなるフィルム層を作り出すコストおよび複雑性を回避する。
【0018】
試作品のフィルムは、以下の成分を用いて水中のスラリーを作成し、次いで、乾燥して、約1ミルの平均厚みを有するフィルムを得ることで作成される。
【表1】
【0019】
フィルムは、高い顔料濃度のため黒色に見える。顔料のピグメントブルー15は、大きなπ−共役系を有し、かなり極性である。それは、かくして、フィルムを非常に粘着性とする非常に高い極性を有する。フィルムはガラス、金属、およびプラスチック表面から除去するのが困難である。なぜならば、薄いフィルムは非常に粘着性であって、剥離することができないからである。従って、低エネルギー表面のテフロン(TEFLON)(登録商標)シートおよび離型剤を用いて、フィルムを注型して、表面からのフィルムの隔離を容易に行う。この粘着性の黒色フィルムはその表面に湿った粉末を容易に保持する。
【0020】
白色粉末被覆フィルム:Caおよび少量の水を用いて、小さな四角のフィルム薄片を被覆する。少量の水をフィルム用の接着剤として用いる。なぜならば、フィルムは水に可溶性であり;余りにも多くの水はフィルムを溶解させるが、少量の水はフィルムを粘着性とするからである。湿ったCa粉末をフィルム薄片と混合する。それは黒色フィルムに結合し、これは、フィルムを白色に変える被覆を生じさせる。別法として、TiOを白色顔料として用いる。次いで、得られた白色フィルムを加熱して、いずれの残存する水も除去し、透明なジェル練り歯磨きに混入させる。フィルム断片は、使用するまでゲル練り歯磨き中で安定である。使用に際して、透明なジェル練り歯磨きは、フィルム断片が崩壊し、青色顔料を放出すると、約45秒のブラッシングの後に青色に変わる。
【0021】
別法として、20%グリセリン+80%エタノールを用いて、「接着剤」としての水を置き換える。というのは、水はフィルムを溶解させることができるが、グリセリンおよびエタノールはできないからである。グリセリンは溶解性接着剤として用いられる。それは、最初、純粋なエタノールよりも粉末顔料をフィルムに良好に結合させ、次いで、粉末被覆フィルムを練り歯磨きと混合すると、溶けてしまう。
【0022】
赤色粉末被覆フィルム:非常に少量のレッド30顔料粉末(Sensient Co.)を黒色フィルム断片と混合する。黒色フィルムはレッド30顔料粉末に固着し、色を黒色から赤色に変化させる。双方の顔料の強い双極子モーメントは、この場合、相互作用を活発にする。フィルム断片を透明なジェル練り歯磨きに混入させ、それは、使用までジェル練り歯磨き中で安定である。使用に際して、透明なジェル練り歯磨きは、フィルム断片が崩壊し、青色顔料を放出すると、約45秒のブラッシングの後に青色に変わる。
【0023】
もう1つの配合物において、赤色フィルムは単層の黒色フィルム:5.00g、および20%のグリセリン+80%のエタノール:2.50gから作成される。フィルムおよびグリセリン/エタノールを合わせ、5分間振盪し、次いで、レッド30レーキ、29%純度:0.30gを加える。次いで、被覆されたフィルムを75℃で1時間加熱する。得られたフィルムは赤色である。
【0024】
もう1つの配合物において、顔料を含まない白色フィルムを、先の段落と同様に処理し、フィルムを赤色に着色させる。