特許第5902836号(P5902836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902836
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】搬送装置、部品実装装置および把持具
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20160331BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
   B25J15/08 C
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-559351(P2014-559351)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2013000509
(87)【国際公開番号】WO2014118820
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】片井 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】内海 智仁
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−024797(JP,A)
【文献】 特開2000−176326(JP,A)
【文献】 特開2005−219161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なヘッド本体と、
このヘッド本体に装着される把持具本体と、特定方向に相対的に接離可能な第1把持爪および第2把持爪とを含み、作動圧の供給を受けることにより作動する把持具と、
この把持具に繋がる圧力通路を含み、当該把持具に対して前記作動圧を供給する圧力供給機構と、を含み、
前記把持具本体は、前記圧力通路に連通しかつ前記特定方向に延びるシリンダと、このシリンダの内部を大気開放するためのリーク通路と、を備え、
前記第1把持爪は、前記シリンダ内に収容されるピストン部を含み、前記シリンダに供給される前記作動圧を受けることで当該シリンダに沿って前記第2把持爪に接近する第1方向に変位するとともに、両把持爪の間隔が被搬送物を把持する第1間隔よりも狭い第2間隔となる状態まで変位可能なように当該第1把持爪の最大変位量が設定されており、
前記ピストン部は、両把持爪の間隔が前記第2間隔になった状態で、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させて前記シリンダ内の圧力をリークさせる通路開閉部を備える、ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記把持具本体は、前記ピストン部を前記第1方向とは逆の第2方向に付勢する付勢部材をさらに備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記第1把持爪を前記第1方向に変位させる力であって前記ピストン部が前記作動圧を受けることにより生じる前記第1把持爪の作動力が、前記リーク通路と前記シリンダとの連通状態に拘わらず前記付勢部材の付勢力よりも大きい、ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記通路開閉部は、両把持爪の間隔が前記第1間隔から狭まるに伴い前記シリンダ内の圧力が連続的に変化するように、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させる、ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記圧力通路内の圧力又はエア流量を検出する検出部と、この検出部による検出データと前記圧力供給機構による前記作動圧の供給状態とに基づき、前記把持具による被搬送物の把持状態を判定する判定部と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
基板上に部品を実装するための部品実装装置であって、
前記部品、又は当該部品の実装作業に用いられる作業用部材を被搬送物として搬送する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の搬送装置を備えることを特徴とする部品実装装置。
【請求項7】
請求項6に記載の部品実装装置において、
前記作業用部材であって前記基板を支持するバックアップピンと、当該バックアップピンが抜き差し可能に装着されるバックアッププレートと、を含むバックアップ装置を備え、
前記搬送装置は、前記バックアップピンの配列変更のために前記バックアップピンを搬送することを特徴とする部品実装装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の部品実装装置において、
前記搬送装置は、部品を吸着することにより保持するノズルと前記把持具とが選択的に前記ヘッド本体に対して装着されるものであり、
前記圧力供給機構は、前記ノズルに部品吸着用の負圧を供給するとともに、当該負圧を前記作動圧として前記把持具に供給することを特徴とする部品実装装置。
【請求項9】
搬送装置に設けられる移動可能なヘッド本体に装着され、所定の圧力通路を通じて作動圧の供給を受けることにより作動する把持具であって、
前記ヘッド本体に装着される把持具本体と、特定方向に相対的に接離可能な第1把持爪および第2把持爪と、を備え、
前記把持具本体は、前記圧力通路に連通しかつ前記特定方向に延びるシリンダと、このシリンダの内部を大気開放するためのリーク通路と、を備え、
前記第1把持爪は、前記シリンダ内に収容されるピストン部を含み、前記シリンダに供給される前記作動圧を受けることで当該シリンダに沿って前記第2把持爪に接近する方向に変位するとともに、両把持爪の間隔が被搬送物を把持する第1間隔よりも狭い第2間隔となる状態まで変位可能なように当該第1把持爪の最大変位量が設定されており、
前記ピストン部は、両把持爪の間隔が前記第1間隔よりも狭くなった状態で、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させて前記シリンダ内の圧力をリークさせる通路開閉部を備える、ことを特徴とする把持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などの被搬送物を把持した状態で搬送する搬送装置、この搬送装置を含む部品実装装置、および前記搬送装置に適した把持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、部品実装用のヘッドにより部品供給部から部品(被搬送物)を取り出して基板上の搭載位置に実装する部品実装装置が知られている。前記ヘッドは、ヘッド本体とこのヘッド本体に装着される部品保持部材とから構成される。部品保持部材は、部品を吸着するノズルや、部品を把持するメカチャック(把持具)があり、これらノズルやメカチャックが部品の種類に応じて使い分けられる。例えば、IC等の小型の電子部品はノズルで吸着され、コネクタ等の大型部品はメカチャックで把持されてそれぞれ搬送される。
【0003】
特許文献1には、上記のようなノズルおよびメカチャックを備えた部品実装装置の一例が開示されている。この部品実装装置は、ヘッド本体に対してノズルおよびメカチャックが選択的に装着される。ヘッド本体に対してノズルが装着された状態では、ヘッド内の通路を通じてノズルに負圧(作動圧)が供給され、これにより部品がノズル先端に吸着される。
【0004】
メカチャックは、ピストンの上下動に伴い一対のクランプ爪が開閉する構成である。つまり、ヘッド本体にメカチャックが装着され、前記ヘッド内の通路を通じてメカチャックに負圧が供給されると、前記ピストンが吸引されて上昇し、これにより前記クランプ爪が閉じる。一方、前記ヘッド内の通路を通じてメカチャックにエアブロー(正圧)が供給されると、前記ピストンが下降して前記クランプ爪が開く。従って、メカチャックは、クランプ爪が閉じることにより部品を把持する。
【0005】
この種の部品実装装置では、基板への部品の実装に先立ち、前記ヘッドが取り出した部品を当該ヘッドと共に固定カメラ上に移動させて撮像し、部品の有無や保持状態を事前に確認した上で基板上に実装することが行われる。しかし、メカチャックにより把持されるような大型部品を認識しようとすると、大型のカメラが必要となるため部品実装装置の大型化や高コスト化を伴う。また、大型部品が不完全な状態で保持されている場合には、例えば、固定カメラ上への移動途中に当該大型部品が基板上を引き摺られて、実装済み部品が位置ずれを起こすといった不都合が生じることも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−124679号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、メカチャックなどの把持具により被搬送物を把持して搬送する場合に、被搬送物の把持状態を、固定カメラなど、特定の位置に移動させることなく検知することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0008】
そして、本発明の一の局面にかかる搬送装置は、移動可能なヘッド本体と、このヘッド本体に装着される把持具本体と特定方向に相対的に接離可能な第1把持爪および第2把持爪とを含み、作動圧の供給を受けることにより作動する把持具と、この把持具に繋がる圧力通路を含み、当該把持具に対して前記作動圧を供給する圧力供給機構と、を含み、前記把持具本体は、前記圧力通路に連通しかつ前記特定方向に延びるシリンダと、このシリンダの内部を大気開放するためのリーク通路と、を備え、前記第1把持爪は、前記シリンダ内に収容されるピストン部を含み、前記シリンダに供給される前記作動圧を受けることで当該シリンダに沿って前記第2把持爪に接近する第1方向に変位するとともに、両把持爪の間隔が被搬送物を把持する第1間隔よりも狭い第2間隔となる状態まで変位可能なように当該第1把持爪の最大変位量が設定されており、前記ピストン部は、両把持爪の間隔が前記第2間隔になった状態でのみ、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させて前記シリンダ内の圧力を大気圧にリークさせる通路開閉部を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる部品実装装置(本発明にかかる搬送装置を含む部品実装装置)を概略的に示す平面図である。
図2】部品実装装置を概略的に示す正面図である。
図3】各ヘッド及び負圧/正圧供給回路を示すヘッドユニットの正面図である。
図4】把持具(gripper)を示す正面図である。
図5】把持具を示す側面図である。
図6】(a)は、開放状態(把持爪が開いた状態)の把持具を示す縦断面図(図4のVI(a)−VI(a)線断面図)であり、(b)は、開放状態(把持爪が開いた状態)の把持具を示す水平断面図(図4のVI(b)−VI(b)線断面図)である。
図7】(a)は、閉止状態(把持爪が最も閉じた状態)を示す把持具の縦断面図であり、(b)は、(a)の水平断面図である。
図8】把持具を示す、図6(b)のVII−VII線断面図である。
図9】バックアップピン(被搬送物)を把持した把持具を示す側面図である。
図10】バックアップピンの搬送動作制御の一例を示すフローチャートである。
図11】リーク面積(リーク通路と第2開口部との重複部分の面積)とシリンダ内圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0011】
図1及び図2は、本発明に係る部品実装装置M(本発明にかかる搬送装置を含む部品実装装置)を概略的に示している。図1は平面図で、図2は正面図で、それぞれ部品実装装置Mを概略的に示している。なお、図1図2及び後に説明する図面には、方向関係を明確にするためにXYZ直角座標軸が示されている。
【0012】
部品実装装置Mは、基台1と、この基台1上に配置されてプリント配線板(PWB;Printed Wiring Board)等の基板PをX方向に搬送する基板搬送機構2と、基板Pを位置決めするためのバックアップ装置3と、部品供給部4、5と、部品実装用のヘッドユニット6と、このヘッドユニット6を駆動するヘッドユニット駆動機構と、ヘッドユニット6に保持された部品を認識するための部品撮像ユニット(図示省略)等とを備える。
【0013】
前記基板搬送機構2は、基台1上において基板Pを搬送する一対のコンベア2a、2aを含む。これらコンベア2a、2aは、同図の右側から基板Pを受け入れて所定の実装作業位置(同図に示す位置)に搬送し、実装作業後、この基板Pを同図の左側に搬出する。
【0014】
前記バックアップ装置3は、前記実装作業位置において基板Pをコンベア2a、2bから持ち上げることにより、当該基板Pを前記実装作業位置に位置決めする。このバックアップ装置3は、図2に示すように、部品の実装作業に用いられる作業用部材であって前記基板Pを支持するバックアップピン21と、当該バックアップピン21が抜き差し可能に装着されるバックアッププレート22と、バックアッププレート22を昇降させるための昇降装置23とを含む。バックアップピン21は、バックアッププレート22に対して上下方向に抜き差し可能であり、基板Pの種類に応じて配置の変更が可能である。
【0015】
前記部品供給部4、5は、前記基板搬送機構2の両側(Y方向の両側)に配置されている。これら部品供給部4、5のうち、装置後側(図1では上側;以下、単に後側という)の部品供給部4には、基板搬送機構2に沿ってX方向に並ぶ複数のテープフィーダ4aが配置されている。これらテープフィーダ4aは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ部品を収納、保持したテープが巻回されたリールを備え、このリールから間欠的にテープを繰り出しながら基板搬送機構2近傍の所定の部品供給位置に部品を供給する。一方、装置前側(図1では下側;以下、単に前側という)の部品供給部5には、X方向に所定の間隔を隔ててトレイ5a、5bがセットされている。各トレイ5a、5bには、後述するヘッドユニット6による取出しが可能となるように、各々、QFP(Quad Flat Package)やBGA(Ball Grid Array)等のパッケージ型の部品が整列して載置されている。
【0016】
なお、基台1上であって前記部品供給部5とバックアップ装置3との間の位置には、ピンステーション7が設けられている。ピンステーション7は、前記バックアッププレート22上に配置されない予備のバックアップピン21が保管される場所である。バックアップピン21は当該ピンステーション7に対して上下方向に抜き差し可能に保管される。
【0017】
前記ヘッドユニット6は、部品供給部4、5から部品を取り出して基板P上に実装するとともに、バックアッププレート22上のバックアップピン21の配置を変更するものである。このヘッドユニット6は、基板搬送機構2および部品供給部4,5等の上方に配置されている。
【0018】
前記ヘッドユニット6は、前記ヘッドユニット駆動機構により一定の領域内でX方向およびY方向に移動可能とされている。このヘッドユニット駆動機構は、基台1上に設けられる一対の高架フレーム10に各々固定されかつY方向に互いに平行に延びる一対の固定レール11と、これら固定レール11に支持されてX方向に延びるユニット支持部材12と、このユニット支持部材12に螺合、挿入されてY軸サーボモータ14により駆動されるボールねじ軸13とを含む。また、ヘッドユニット駆動機構は、前記ユニット支持部材12に固定されて前記ヘッドユニット6をX方向に移動可能に支持する固定レール15と、ヘッドユニット6に螺合、挿入されてX軸サーボモータ17により駆動されるボールねじ軸16とを含む。つまり、ヘッドユニット駆動機構は、X軸サーボモータ17によりボールねじ軸16を介してヘッドユニット6をX方向に駆動する共に、Y軸サーボモータ14によりボールねじ軸13を介してユニット支持部材12をY方向に駆動することにより、ヘッドユニット6を一定の領域内でX方向およびY方向に移動させる。
【0019】
前記ヘッドユニット6は、IC等の部品やバックアップピン21を保持するための複数のヘッド25と、これらヘッド25をヘッドユニット6に対して昇降(Z方向の移動)および回転(図2中のR方向の回転)させるための、サーボモータ等を駆動源とするヘッド駆動機構とを備える。
【0020】
当実施形態では、前記ヘッド25は合計6個であり、これらヘッド25が前後2列に振り分けられ(図1参照)、列毎に、X方向に所定のピッチで一列に配列されている。なお、前側の各ヘッド25と後側の各ヘッド25とはX方向にオフセットされている。これにより6個のヘッド25は、全体として略千鳥状の配列となっている。
【0021】
図3に示すように、前記ヘッド25は、ヘッドユニット6に対して昇降および回転可能に支持される中空軸状のヘッド本体26と、このヘッド本体26の先端(下端)に各々装着されるノズル27a又は把持具(gripper)27bとを備える。
【0022】
ノズル27aは、IC等の部品を吸着することにより、当該部品を搬送可能に保持するものである。一方、把持具27bは、前記バックアップピン21を把持することにより、当該バックアップピン21を搬送可能に保持するものである。ノズル27aおよび把持具27bは、ヘッドユニット6の任意のヘッド本体26に対して着脱が可能である。図3の例では、右側から1番目および5番目の各ヘッド25のヘッド本体26には把持具27aが装着され、それ以外のヘッド25のヘッド本体26にはノズル27aが装着されている。
【0023】
前記ノズル27aおよび把持具27bは、ヘッド本体26の内部通路を介して負圧/正圧供給回路30に接続されており、選択的に負圧および正圧の供給を受ける。つまり、ノズル27aは、その先端に負圧が供給されることで部品を吸着し、その後、正圧が供給されることで当該部品の吸着状態が解除される。一方、把持具27bは、作動圧として前記負圧が供給されることでバックアップピン21を把持し、その後、負圧の供給が停止されることで当該バックアップピン21の把持状態を解除する。この把持具27bの構成については後に詳述する。
【0024】
前記負圧/正圧供給回路30は、圧縮機からなるエア供給源31と、このエア供給源31と各ヘッド本体26とを各々接続する接続通路32と、各接続通路32の途中に各々介設される負圧/正圧切換器33とを含む。前記エア供給源31は、基台1又は当該部品実装装置Mの外部に設けられる図外の基台上に設置され、また、各負圧/正圧切換器33はヘッドユニット6に搭載されている。
【0025】
前記負圧/正圧切換器33は、エア供給源31からのエアを用いて負圧を生成し、当該負圧をヘッド25に供給する負圧供給状態と、エア供給源31からのエア(正圧)をそのままヘッド25に供給するエア供給状態と、負圧およびエア(正圧)の供給を停止する停止状態とに切換え可能に構成されている。
【0026】
具体的には、図3に示すように、負圧/正圧切換器33は、エア供給源31からのエアをヘッド25に案内する第1流路34aと、この第1流路34aに介設される第1開閉バルブ35と、この第1開閉バルブ35の上流側(エアの供給方向を基準として上流側)において第1流路34aから分岐し、消音器37を介して外部開放される第2流路34bと、消音器37よりも上流側の位置で第2流路34bに介設される第2開閉バルブ36と、この第2開閉バルブ36と消音器37との間の位置で第2流路34bに介設される拡散室38と、前記第1開閉バルブ35の下流側の位置で前記第1流路34aと拡散室38とを繋ぐ吸引流路34cとを備えている。つまり、負圧/正圧切換器33において、第1開閉バルブ35が閉止されかつ第2開閉バルブ36が開放された状態では、第2流路34bを通じてエアが排気される。これにより、アスピレータの原理により吸引流路34cを通じて第1流路34a内が吸引され、ヘッド25に負圧が供給される。逆に、第1開閉バルブ35が開放されかつ第2開閉バルブ36が閉止された状態では、第1流路34aを通じてヘッド25にエアブロー(正圧)が供給される。そして、両バルブ35、36が閉止された状態では、ヘッド25に対する負圧およびエアブロー(正圧)双方の供給が停止されることとなる。なお、各バルブ35、36は、後記制御装置70により切り換え制御される。
【0027】
前記負圧/正圧切換器33は、さらに流量センサ39(本発明の検出部に相当する)を含む。流量センサ39は、第1流路34aのうち、前記吸引流路34cの分岐位置よりも下流側に設けられおり、当該第1流路34a内のエアの流量を検出して、そのデータ信号を制御装置70に出力する。
【0028】
なお、この実施形態では、上記負圧/正圧供給回路30および各ヘッド本体26の内部通路が、前記把持具27bに対して作動圧を供給する本発明の圧力供給機構に相当し、前記接続通路32、各負圧/正圧切換器33の第1流路34aおよび各ヘッド本体26の内部通路が本発明の圧力通路に相当する。
【0029】
次に、上記把持具27bの具体的な構成について説明する。
【0030】
図4図6に示すように、把持具27bは、ヘッド本体26に装着される把持具本体40と、X方向(本発明の特定方向に相当する)に相対的に接離可能となる状態で前記把持具本体40に各々支持される第1把持爪60Aおよび第2把持爪60Bとを含む。
【0031】
前記把持具本体40は、内部通路を備えた筒状の連結部42を上部に備えており、把持具27bは、当該連結部42と前記ヘッド本体26とが、互いの内部通路同士を連通させた状態で連結されることにより、ヘッド本体26に装着される。なお、図示を省略しているが、前記連結部42はその外周面上に径方向外側に膨出する膨出部を有しており、この膨出部にヘッド本体26に設けられる板ばね状の一対の係止片が係合することで、当該ヘッド本体26への装着状態が保持される。前記ノズル27aについても同様である。
【0032】
第1把持爪60Aは、上下方向(Z方向)に延びるアーム部62と、このアーム部62の上端部に固定されるピストン部66と、アーム部62の側面に固定される上下一対の爪部64とを含む。ピストン部66は、Y方向に延びる円柱状をなし、アーム部62の上端部に形成された横孔に挿入された状態で当該アーム部62にボルト67で固定されている。
【0033】
第2把持爪60Bも、基本構成は第1把持爪60Aと同じであり、アーム部62、ピストン部66および爪部64を含む。但し、第2把持爪60Bのアーム部62は、第1把持爪60Aのアーム部62よりも短く、かつ爪部64はアーム部62の下端部にのみ固定されている。
【0034】
各把持爪60A、60Bは、図4に示すようにアーム部62同士がX方向にオフセットされる状態で把持具本体40に支持されている。なお、各把持爪60A、60Bの爪部64は、両アーム部62の内側の側面(図4において内側の側面)に固定されている。これにより、ノズル27aをY方向から見た状態(図4参照)で、各把持爪60A、60Bの爪部64が上下方向に一列に並んでいる。詳しくは、第2把持爪60Bの爪部64を挟んでその上下両側に第1把持爪60Aの爪部64が並んでいる。また、第1把持爪60Aの爪部64の前側面(図5では左側の側面)、および第2把持爪60Bの後側面(図5では右側の側面)は、各々バックアップピン21の外周面に対応した円弧状に形成されている。この構成により、両把持爪60A、60Bは、Y方向に互いに接近することで、前記バックアップピン21をY方向両側から爪部64により把持可能となっている(図9参照)。
【0035】
前記各把持爪60A、60Bはそれぞれ、前記ピストン部66が把持具本体40内に形成されたシリンダ内に収容されることにより、当該把持具本体40に垂下姿勢で支持されている。詳しく説明すると、前記把持具本体40の内部には、図6(a)、(b)に示すように、X方向に並び、かつY方向に互いに平行に延びる断面円形の第1シリンダ46Aおよび第2シリンダ46Bと、第1シリンダ46Aを貫通して上下方向に延びる第1ガイド孔48Aと、第2シリンダ46Bを貫通して上下方向に延びる第2ガイド孔48Bとが形成されている。そして、第1ガイド孔48Aに前記アーム部62の上端部が挿入され、かつ第1シリンダ46Aに前記ピストン部66が収容された状態で、前記第1把持爪60Aが把持具本体40に支持されている。同様に、第2ガイド孔48Bに前記アーム部62の上端部が挿入され、かつ第2シリンダ46Bに前記ピストン部66が収容された状態で、前記第2把持爪60Bが把持具本体40に支持されている。
【0036】
各ガイド孔48A、48Bは、アーム部62をX方向に拘束しつつY方向に所定ストロークだけ変位させることが可能な断面形状を有している。つまり、このアーム部62のY方向の変位により、各把持爪60A、60Bが、図6(a)、(b)に示すように、互いに離反する位置と、図7(a)、(b)に示すように、互いに接近した位置とに亘って変位可能となっている。
【0037】
各ピストン部66の先端面にはバネ収納用凹部66aが形成されおり、このバネ収納用凹部66aに、コイルばね68(本発明の付勢部材に相当する)が圧縮状態で収容されている。詳しくは、コイルばね68が、バネ収納用凹部66aの内底部とシリンダ46A、46Bの端面との間に圧縮された状態で当該バネ収納用凹部66aに収納されている。これにより、各把持爪60A、60Bが、コイルばね68の弾発力(付勢力)により互いに離反する方向に付勢されている。
【0038】
各シリンダ46A、46Bは、上記ヘッド本体26の内部通路に連通しており、前記負圧/正圧切換器33で生成される負圧が各シリンダ46A、46Bに供給可能となっている。具体的には、図8に示すように、把持具本体40には、前記連結部42の内部通路を含む縦通路43と、この縦通路43に繋がってY方向に延び、第1シリンダ46Aの先端近傍の位置で当該第1シリンダ46Aに連通する横通路44とが形成されている。また、図6(a)に示すように、第1把持爪60Aのピストン部66のうち、横通路44に対向する位置には、当該横通路44とバネ収納用凹部66aとを連通する第1開口部66bが形成されている。この構成により、前記負圧/正圧切換器33で生成される負圧が、ヘッド本体26の内部通路、前記縦通路43、横通路44および第1開口部66bを介して第1シリンダ46A内に供給される。なお、第1開口部66bは、ピストン部66の位置に拘わらず上記横通路44と連通可能なようにその大きさが設定されている。図8中の符号45は、横通路44を外側から閉止している栓部材である。
【0039】
図示を省略しているが、把持具本体40には、さらに前記縦通路43に繋がってY方向に延び、第2シリンダ46Bの先端近傍の位置で当該第2シリンダ46Bに連通する横通路44が形成されている。また、第2把持爪60Bのピストン部66には、横通路44とバネ収納用凹部66aとを連通する第1開口部66bが形成されている。従って、第2シリンダ46Bについても第1シリンダ46Aと同様に、ヘッド本体26の内部通路、縦通路43、横通路44および第1開口部66bを介して負圧が供給される。
【0040】
このように各シリンダ46A、46Bに負圧が供給されると、ピストン部66に当該負圧が作用し(ピストン部66が吸引され)、前記コイルばね68の弾発力に抗して各把持爪60A、60Bが接近方向に変位する。つまり、上記把持具27bは、上記負圧/正圧切換器33からの負圧供給が停止されているときには、前記コイルばね68の付勢力により各把持爪60A、60Bが互いに離反した開放状態(図6の状態)に保持される。他方、負圧/正圧切換器33から各シリンダ46A、46Bに負圧が供給されると、前記コイルばね68の付勢力に抗して各把持爪60A、60Bが互いに接近した閉止状態(図7の状態)に保持される。そして、このように把持具27bが閉止状態とされることで、前記バックアップピン21が両把持爪60A、60Bにより両側(Y方向両側)から挟み込まれ、当該把持具27bに把持される。
【0041】
前記バックアップピン21は、図8に示すように、下端部近傍につば部21aを備えた軸状部材であり、つば部21aより下側の部分がバックアッププレート22又はピンステーション7の穴部に差し込まれることで、当該バックアッププレート22等に装着される。
【0042】
前記バックアップピン21は、円錐台状の先端部21b(上端部)を有している。他方、前記把持具27bの把持具本体40の下面には、同図に示すように、当該先端部21bに合致する円錐台状の位置決め穴52が形成されている。つまり、把持具27bによるバックアップピン21の把持時には、バックアップピン21の先端部21bが前記位置決め穴52に挿入されることで、両把持爪60A、60Bに対してバックアップピン21がセンタリングされる(図9参照)。
【0043】
なお、図5図6及び図8に示すように、把持具本体40には、さらに各シリンダ46A、46Bの内部をそれぞれ外部(大気)に開放するためのリーク通路50が形成されている。リーク通路50は、把持具本体40のうち、横通路44の下側であって、かつ把持具27bが前記開放状態にあるときの各ピストン部66の先端外周面に対向する位置に形成されている。また、各シリンダ46A、46B内に収容される前記ピストン部66のバネ収納用凹部66aの周壁には、当該バネ収納用凹部66aの内部(すなわち、各シリンダ46A、46Bの内部)と前記リーク通路50とを連通させるための第2開口部66c(本発明の通路開閉部に相当する)が形成されている。
【0044】
各ピストン部66の第2開口部66cは、バックアップピン21を把持することなく各把持爪60A、60Bが最も接近した状態でのみ、リーク通路50と重なる位置、つまりバネ収納用凹部66aの内部(各シリンダ46A、46Bの内部)とリーク通路50とを連通させる位置に形成されている。従って、各リーク通路50は、前記第2開口部66cと重なるとき以外は、各ピストン部66の外周面により塞がれ、これにより各シリンダ46A、46Bと外部(大気)とが非連通状態に保たれる。
【0045】
これら第2開口部66c及びリーク通路50は、把持具27bがバックアップピン21を把持しているか否かを、上記流量センサ39を用いて判別するためのものである。すなわち、この把持具27bは、両把持爪60A、60Bの間隔がバックアップピン21を把持する間隔(図6(a)中の一点鎖線(符号P1)および図9に示す間隔/本発明の第1間隔)よりも狭い間隔(図6(a)中の破線(符号P2)および図7(a)に示す間隔/本発明の第2間隔)となる状態まで変位可能なように各把持爪60A、60Bの最大変位量が設定されている。換言すれば、把持具27bは、前記開放状態のときの各把持爪60A、60Bの位置を基準位置として、当該基準位置からバックアップピン21を把持する位置までの各把持爪60A、60Bの変位量が、前記基準位置から各把持爪60A、60Bが最も接近する位置までの変位量(最大変位量)より小さくなるように、各把持爪60A、60Bの当該最大変位量が設定されている。この構成により、バックアップピン21を各把持爪60A、60Bにより両側から確実に挟み込んだ状態で把持することが可能となっている。
【0046】
そのため、把持具27bがバックアップピン21を把持している場合には、両把持爪60A、60Bが最も接近する位置まで変位することがなく、第2開口部66cとリーク通路50とは非連通状態となる。これにより、負圧/正圧切換器33からヘッド25への負圧の供給開始後、流量センサ39の検出値が経時的に低下することとなる。他方、把持具27bがバックアップピン21を把持していない場合には、各把持爪60A、60Bは最も接近する位置まで変位する。これにより、第2開口部66cとリーク通路50とが部分的に重なって連通状態となり、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが連通し、前記流量センサ39の検出値が一定レベルまで上昇することとなる。従って、負圧/正圧切換器33から把持具27bに負圧が供給されている状態で、流量センサ39の検出値を調べることで、把持具27bがバックアップピン21を把持しているか否かの判別が可能となる。この部品実装装置Mでは、このような判別を後述する制御装置70(図3に示す)が行う。
【0047】
この部品実装装置Mは、前記ヘッドユニット駆動機構、ヘッド駆動機構および負圧/正圧切換器33等を介して部品実装装置Mの動作を統括的に制御するとともに、当該動作に関する各種判定処理などを行うものである。この制御装置70は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばROMやRAM等、プログラム及び各種データを格納するメモリと、電気信号の入出力を行うための入出力(I/O)バスとを含む。なお、当実施形態では、ヘッド25(把持具27b)、負圧/正圧供給回路30および制御装置70等が本発明の搬送装置に相当し、そのうち、制御装置70が本発明の判定部に相当する。
【0048】
次に、この制御装置70によるバックアップピン21の搬送動作制御の一例について図10を用いて説明する。このような搬送動作制御は、例えば、基板Pの種類の変更に伴いバックアッププレート22上のバックアップピン21の配列を変更する場合に実行される。
【0049】
制御装置70は、まず、バックアッププレート22上のバックアップピン21のうち、位置の変更が必要なバックアップピン21を特定し、ヘッドユニット6の複数のヘッド25のうち、把持具27bを備えたものが当該バックアップピン21の上方に位置するようにヘッドユニット6を移動させる(ステップS1)。この際、制御装置70は、把持具27bを開放状態に保つ。
【0050】
制御装置70は、次に、ヘッド25を所定高さ位置まで下降させ、前記負圧/正圧切換器33の開閉バルブ35、36を切換え制御することにより、前記把持具27bを開放状態から閉止状態に切り替えた後、ヘッド25を所定高さ位置まで上昇させる(ステップS2〜S7)。これによりバックアップピン21が把持具27bにより把持された状態でバックアッププレート22から引き抜かれる。
【0051】
ヘッド25が上昇すると、制御装置70は、バックアップピン21を把持しているか否かをその場で判別する(ステップS9)。具体的には、前記流量センサ39からの入力データ(検出流量Q)と、予めROM等に記憶されている閾値Qとを比較し、検出流量Qが閾値Qを超えるか否かを判断する。この閾値Qは、把持具27bがバックアップピン21を把持した状態の前記負圧/正圧切換器33の第1流路34aのエア流量に基づき、当該エア流量と同等又は若干高い値に設定されている。つまり、把持具27bがバックアップピン21を把持していない場合には、上記の通り、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが各ピストン部66の第2開口部66cおよびリーク通路50を介して連通状態となり、流量センサ39の検出値が上昇する。従って、流量センサ39による検出流量Qと前記閾値Qとを比較することで、把持具27bがバックアップピン21を把持しているか否かの判別が可能となる。
【0052】
制御装置70は、バックアップピン21を把持していないと判断した場合(ステップS9でYES)には、ステップS1にリターンし、バックアップピン21の把持動作を再度実行する。なお、図示を省略しているが、例えばステップS1〜S9の処理が連続して所定回数だけ繰り返された場合には、制御装置70は、バックアップピン21の把持動作にエラーが発生したものとして、図外の報知装置を作動させてオペレータに報知する。
【0053】
一方、バックアップピン21を把持していると判断した場合には、制御装置70は、上記と逆の手順に従って、バックアッププレート22上の穴部に当該バックアップピン21を装着する。具体的には、制御装置70は、目標とする穴部の上方にバックアップピン21が位置するようにヘッドユニット6を移動させ、ヘッド25を下降させて把持具27bを閉止状態から開放状態に切り換えた後、ヘッド25を上昇させる(ステップS11〜ステップS17)。
【0054】
ヘッド25が上昇すると、制御装置70は、再度、把持具27bを開放状態から閉止状態に切り換えた後、把持具27bがバックアップピン21を把持しているか否かをその場で判別する(ステップS19、S21)。具体的には、ステップS9の処理と同様に、制御装置70は、流量センサ39による検出流量Qと前記閾値Qとを比較し、検出流量Qが閾値Qを超えるか否かを判断する。
【0055】
ここで、バックアップピン21を把持していると判断した場合(ステップS21でNO)には、制御装置70は、バックアップピン21の装着エラーが発生したものとして、図外の報知装置を作動させてオペレータに報知する(ステップS23)。一方、バックアップピン21を把持していないと判断した場合(ステップS21でYES)には、バックアップピン21の一連の搬送動作制御を終了する。
【0056】
ここでは、バックアップピン21の搬送動作制御の説明を簡単にするために、バックアッププレート22上の一つのバックアップピン21を搬送する場合の制御例について説明したが、複数のバックアップピン21の位置を変更する場合には、上述したようなステップS1〜S23の処理が繰り返し実行される。バックアッププレート22とピンステーション7との間でのバックアップピン21の搬送も上記と同様である。
【0057】
なお、この部品実装装置Mでは、バックアップピン21を把持しているか否かの制御装置70による判断(ステップS9、S21の処理)がより正確に行われるように、前記把持具27bが次の構成を有する。すなわち、シリンダ46A、46Bに供給される負圧(真空圧)を「P」、シリンダ46A、46Bの断面積を「A」、コイルばね68のばね定数を「K」、コイルばね68の変位量(圧縮量)を「x」としたとき、負圧/正圧切換器33からヘッド25(把持具27b)に負圧が供給されている状態では、常に(つまり、バックアップピン21を把持しているか否かに拘わらず)、PA>Kxの関係が成立するように、各ピストン部66の第2開口部66c及びリーク通路50等が形成されている。PA>Kxの関係が成立するように、例えば両把持爪60A、60Bが最も接近したときの前記第2開口部66cと前記リーク通路50との重なり部分の面積(開口面積)が設定されている。
【0058】
上記の通り、バックアップピン21の把持動作にエラーが発生すると、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが第2開口部66cおよびリーク通路50を介して連通状態となる。これにより、各シリンダ46A、46B内の圧力が上昇する(大気圧に近づく)が、この場合、仮にPA≦Kxになるとすると、コイルばね68の弾発力で各把持爪60A、60Bが押し戻されて各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが一時的に非連通状態となった後、各シリンダ46A、46B内の圧力が低下してPA>Kxとなることで、再び両把持爪60A、60Bが接近方向に変位するとう動作が生じる。つまり、把持具27bが短時間に繰り返し開閉するという現象が生じ、その結果、前記流量センサ39の検出流量が不安定になって、制御装置70による上記判断(ステップS9、S21の処理)が正確に行われないおそれがある。
【0059】
このような不都合を回避するために、上記部品実装装置Mでは、負圧/正圧切換器33からヘッド25(把持具27b)に負圧が供給されている状態では、常に、PA>Kxの関係が成立するように、各ピストン部66の第2開口部66c及びリーク通路50等が形成されている。この構成によれば、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とがリーク通路50等を介して連通状態となったときに、コイルばね68の弾発力で各把持爪60A、60Bが押し戻されることが防止される。従って、把持具27bが短時間に繰り返し開閉するという現象の発生が防止され、制御装置70による上記判断(ステップS9、S21の処理)の信頼性が向上する。
【0060】
また、上記把持具27bは、図11に示すように、両把持爪60A、60Bが互いに接近するに伴い、すなわちリーク通路50と第2開口部66cとの重なり部分の面積であるリーク面積が増大する伴い、前記シリンダ46A、46内の圧力が二次曲線的に連続して変化(上昇)するように、当該リーク通路50および第2開口部66cが形成されている。例えば当実施形態では、図9に示すように、前記リーク通路50は上下方向に細長い断面小判型の長孔であり、前記第2開口部66cは断面円形の孔である。このように、両把持爪60A、60Bが互いに接近するに伴い、前記シリンダ46A、46内の圧力が二次曲線的に変化(上昇)する構成によれば、前記流量センサ39の検出値も顕著に変化することとなり、制御装置70による上記判断(ステップS9、S21の処理)の信頼性が向上する。
【0061】
また、当実施形態では、上記の通り、把持具27bによりバックアップピン21が把持される際には、バックアップピン21の先端部21bが把持具本体40の位置決め穴52に挿入され、当該バックアップピン21が両把持爪60A、60Bに対してセンタリングされる。そのため、両把持爪60A、60Bのうち何れか一方側が他方側に偏った状態でバックアップピン21が把持されることにより、制御装置70による上記判断(ステップS9、S21の処理)が不正確になることが回避される。従って、この点でも制御装置70による上記判断(ステップS9、S21の処理)の信頼性が向上する。
【0062】
以上説明した部品実装装置Mによれば、上記の通り、把持具27bによりバックアップピン21が把持されて搬送されるが、この場合、負圧/正圧切換器33の第1流路34a内のエア流量の検出に基づき、把持具27bがバックアップピン21を把持しているか否かが制御装置70により判断される。そのため、把持具27bによるバックアップピン21の把持状態(バックアップピン21の有無)を、固定カメラなど基台1上の特定の位置に移動させることなく、当該バックアップピン21の引き抜き位置、又はバックアップピン21の装着位置で直ちに行うことができる。従って、当該部品実装装置Mによれば、把持具27bによるバックアップピン21の把持状態を固定カメラなどの上方に移動させて画像認識する場合と比べると、当該移動が不要となる分、バックアップピン21の配列変更作業を効率良く行うことができる。
【0063】
しかも、この部品実装装置Mによれば、両把持爪60A、60Bが最も接近した状態でのみ、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが連通するように把持具27bにリーク通路50等を設け、負圧の供給通路(負圧/正圧切換器33の第1流路34a)のエア流量を流量センサ39で検出する、という比較的簡単な構成で上記の作用効果を奏することができる。従って、部品実装装置Mの大型化や著しいコストアップ等を伴うことなく、バックアップピン21の配列変更作業を効率良く行うことができる。
【0064】
ところで、以上説明した部品実装装置Mは、本発明にかかる部品実装装置の好ましい実施形態の例示であって、部品実装装置Mの全体構成や、当該部品実装装置Mに適用される把持具27bの具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0065】
(1)上記実施形態では、バックアップピン21を搬送する手段として本発明の把持具(27b)や搬送装置が適用されているが、勿論、部品を搬送する手段として本発明の把持具や搬送装置を用いることもできる。特に、コネクタ等の大型部品をノズル27aにより安定的に吸着、保持することは困難であり、このような大型部品については把持具を用いて保持するのが好適である。その場合には、把持具として、上記把持具27bの把持爪の数や、アーム部および爪部の形状等を対象部品に応じて変更したものを用いればよい。
【0066】
(2)本発明の把持具や搬送装置は、上記のような部品実装装置Mに限らず、所定の部品供給位置から試験用ソケットに部品を搬送して当該部品の性能試験を実施する、いわゆる部品試験装置等における部品の把持具や搬送装置として適用することも可能である。
【0067】
(3)上記実施形態の把持具27bは、両方の把持爪60A、60Bを均等に変位させることにより、把持具27bが開閉するものであるが、把持具27bは、例えば把持具本体40に第2把持爪60Bが固定され、第1把持爪60Aのみが、第2把持爪60Bに対して変位する構成であってもよい。逆に、第1把持爪60Aに対して第2把持爪60Bのみが変位する構成であってもよい。
【0068】
(4)上記実施形態の把持具27bは、コイルばね68の付勢力により開放状態に保持され、負圧(作動圧)の供給により閉止状態に切換えられる、いわゆる単動式の把持具であるが、例えば当該把持具27bにおいて上記コイルばね68を省略することで、いわゆる複動式の把持具として用いてもよい。つまり、負圧の供給により把持具を閉止状態に保持し、正圧(エアブロー)の供給により把持具を開放状態に保持するようにしてもよい。
【0069】
(5)上記実施形態の把持具27bは、作動圧として負圧が供給されることにより作動する(開放状態から閉止状態に切り換えられる)ものであるが、作動圧として正圧(エアブロー)が供給されることにより作動するものであってもよい。つまり、負圧/正圧切換器33からの正圧供給が停止されているときには、コイルばねの付勢力により各把持爪60A、60Bが互いに離反した開放状態に保たれる一方、負圧/正圧切換器33から各シリンダ46A、46Bに正圧(エアブロー)が供給されると、コイルばねの付勢力に抗して各把持爪60A、60Bが互いに接近した閉止状態に保たれる構成であってもよい。この場合には、各把持爪60A、60Bが最も接近する位置まで変位すると、各シリンダ46A、46Bの内部と外部(大気)とが連通して、流量センサ39の検出値が一定レベルまで低下するようにピストン部66の第2開口部66cやリーク通路50を設ければよい。
【0070】
(6)上記実施形態の部品実装装置Mでは、本発明の検出部として流量センサ39が適用され、バックアップピン21を把持しているか否かの判断が、負圧/正圧切換器33の第1流路34aのエア流量の検出に基づき行われるが、例えば、本発明の検出部として圧力センサを適用し、前記第1流路34aの圧力検出に基づき上記判断が行われるように構成してもよい。なお、上記検出部によるエア流量や圧力の検出位置は、必ずしも前記第1流路34aである必要はなく、ヘッド本体26の内部通路など、その他の位置であってもよい。
【0071】
以上説明した本発明をまとめると以下の通りである。
【0072】
すなわち、本発明の一の局面にかかる搬送装置は、移動可能なヘッド本体と、このヘッド本体に装着される把持具本体と特定方向に相対的に接離可能な第1把持爪および第2把持爪とを含み、作動圧の供給を受けることにより作動する把持具と、この把持具に繋がる圧力通路を含み、当該把持具に対して前記作動圧を供給する圧力供給機構と、を含み、前記把持具本体は、前記圧力通路に連通しかつ前記特定方向に延びるシリンダと、このシリンダの内部を大気開放するためのリーク通路と、を備え、前記第1把持爪は、前記シリンダ内に収容されるピストン部を含み、前記シリンダに供給される前記作動圧を受けることで当該シリンダに沿って前記第2把持爪に接近する第1方向に変位するとともに、両把持爪の間隔が被搬送物を把持する第1間隔よりも狭い第2間隔となる状態まで変位可能なように当該第1把持爪の最大変位量が設定されており、前記ピストン部は、両把持爪の間隔が前記第2間隔になった状態で、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させて前記シリンダ内の圧力をリークさせる通路開閉部を備えるものである。
【0073】
この搬送装置では、前記シリンダ内に作動圧(把持爪作動用の圧力)が供給されることにより第1把持爪が第2把持爪に接近し、これにより両把持爪により被搬送物が把持される。この際、両把持爪により被搬送物が適正に把持された場合には、両把持爪の間隔が前記第1間隔となるため、シリンダとリーク通路とは遮断される。一方、両把持爪により被搬送物が把持されていない場合には、両把持爪の間隔が前記第1間隔よりも狭くなるため、シリンダとリーク通路とが通路開閉部を介して連通することとなる。つまり、この搬送装置では、把持具が被搬送物を把持しているか否かによってシリンダとリーク通路との連通状態が切り換えられる。このようなシリンダとリーク通路との連通状態の変化は、前記圧力通路内の圧力やエア流量にも変化をもたらす。従って、前記圧力供給機構により作動圧が供給されている状態で圧力通路内の圧力又はエア流量を検出すれば、当該検出データに基づき、前記把持具による被搬送物の把持状態、すなわち把持具が被搬送物を把持しているか否かを判定することが可能となる。よって、この搬送装置によれば、把持具が被搬送物を把持しているか否かを、当該把持部を固定カメラ上に移動させて撮像等することなく判定することが可能となる。
【0074】
この搬送装置において、前記把持具本体は、前記ピストンを前記第1方向とは逆の第2方向に付勢する付勢部材をさらに備えている。
【0075】
この構成によれば、把持具の非作動時、つまり圧力供給機構から把持具へ作動圧が供給されていない状態では、付勢部材による付勢力により第1把持爪が第2把持爪に対して離反した状態に保たれる。そして、圧力供給機構から把持具へ作動圧が供給されると、第1把持爪が前記付勢力に抗して第2把持爪に接近する。そのため、前記作動圧の供給とその停止との切り換えに伴い、確実に把持爪を開閉させることができる。
【0076】
この場合、前記第1把持爪を前記第1方向に変位させる力であって前記ピストン部が前記作動圧を受けることにより生じる前記第1把持爪の作動力が、前記リーク通路と前記シリンダとの連通状態に拘わらず前記付勢部材の付勢力よりも大きいのが好適である。
【0077】
この構成によれば、前記把持具が被搬送物を把持しているか否かの判定をより正確に行うことが可能となる。詳しくは、把持具により被搬送物が把持されていない状態では、上記の通りシリンダとリーク通路とが連通状態となり、シリンダ内が大気圧又はこれに近い圧力となる。この場合、仮に、第1把持爪の前記作動力が付勢力以下であるとすると、付勢部材の付勢力で第1把持爪が押し戻されて(第2方向に変位して)シリンダとリーク通路とが非連通状態となり、その後、前記作動圧の供給により第1把持爪の前記作動力が付勢力を越えて、第1把持爪が第1方向に変位するとう動作が生じる。つまり、第1把持爪が短時間に往復移動(把持爪が繰り返し開閉)するという現象が生じ、その結果、圧力通路内の圧力やエア流量が不安定になって上記判定の信頼性が阻害される。この点、上記のように、前記第1把持爪の作動力が、前記リーク通路と前記シリンダとの連通状態に拘わらず常に付勢部材による付勢力よりも大きくなる構成によれば、第1把持爪が短時間に往復移動するという上記現象の発生が抑制され、把持具が被搬送物を把持しているか否かの判定をより正確に行うことが可能となる。
【0078】
上記の各搬送装置において、前記通路開閉部は、両把持爪の間隔が前記第1間隔から狭まるに伴い前記シリンダ内の圧力が連続的に変化するように、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させるものであるのが好適である。
【0079】
この構成によれば、圧力通路内の圧力やエア流量の変化が短時間で顕著に変化することとなるため、把持具が被搬送物を把持しているか否かの上記判定をより簡単に、かつ正確に行うことが可能となる。
【0080】
なお、上記の各搬送装置は、前記圧力通路内の圧力又はエア流量を検出する検出部と、この検出部による検出データと前記圧力供給機構による前記作動圧の供給状態とに基づき、前記把持具による被搬送物の把持状態を判定する判定部と、を備える。
【0081】
この構成によれば、前記圧力通路内の圧力又はエア流量が検出部により検出され、そのデータと前記圧力供給機構による前記圧力の供給状態とに基づき、前記把持具による被搬送物の把持状態、すなわち把持具が被搬送物を把持しているか否かが判定部により判定される。従って、把持具が被搬送物を把持しているか否かの判定を自動化することが可能となる。
【0082】
一方、本発明の一の局面にかかる部品実装装置は、前記部品、又は当該部品の実装作業に用いられる作業用部材を被搬送物として搬送する、上記何れかの搬送装置を備えるものである。
【0083】
この部品実装装置によれば、把持具が被搬送物(部品や作業用部材)を把持しているか否かを、当該把持部を固定カメラ上に移動させて撮像等することなく判定することが可能となる。そのため、被搬送物を把持しているか否かの判定を含む、当該被搬送物の搬送作業を効率良く行うことが可能となる。
【0084】
より具体的に、上記部品実装装置が、前記作業用部材であって前記基板を支持するバックアップピンと、当該バックアップピンが抜き差し可能に装着されるバックアッププレートと、を含むバックアップ装置を備えるものでは、前記搬送装置は、前記バックアップピンの配列変更のために前記バックアップピンを搬送するものであってもよい。
【0085】
この構成によれば、バックアップピンの配列変更作業を効率良く行うことが可能となる。
【0086】
なお、この部品実装装置において、前記搬送装置は、部品を吸着することにより保持するノズルと前記把持具とが選択的に前記ヘッド本体に対して装着されるものであり、前記圧力供給機構は、前記ノズルに部品吸着用の負圧を供給するとともに、当該負圧を前記作動圧として前記把持具に供給するものであるのが好適である。
【0087】
この構成によれば、部品吸着用の負圧を、把持具の作動圧として用いる合理的な構成となる。
【0088】
一方、本発明の一の局面にかかる把持具は、搬送装置に設けられる移動可能なヘッド本体に装着され、所定の圧力通路を通じて作動圧の供給を受けることにより作動する把持具であって、前記ヘッド本体に装着される把持具本体と、特定方向に相対的に接離可能な第1把持爪および第2把持爪と、を備え、前記把持具本体は、前記圧力通路に連通しかつ前記特定方向に延びるシリンダと、このシリンダの内部を大気開放するためのリーク通路と、を備え、前記第1把持爪は、前記シリンダ内に収容されるピストン部を含み、前記シリンダに供給される前記作動圧を受けることで当該シリンダに沿って前記第2把持爪に接近する方向に変位するとともに、両把持爪の間隔が被搬送物を把持する第1間隔よりも狭い第2間隔となる状態まで変位可能なように当該第1把持爪の最大変位量が設定されており、前記ピストン部は、両把持爪の間隔が前記第1間隔よりも狭くなった状態で、前記リーク通路と前記シリンダとを連通させて前記シリンダ内の圧力をリークさせる通路開閉部を備えるものである。
【0089】
このような把持具は、上記搬送装置の把持具として有用なものであり、当該搬送装置に適用されることにより、当該搬送装置による被把持物の搬送をより効率良く行わせることに寄与するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明の搬送装置や部品実装装置は、部品などの被搬送物を把持して搬送する場合に、被搬送物の把持状態を、固定カメラなど、特定の位置に移動させることなく検知することを可能とするものであり、部品実装基板の製造効率を高める上で特に有用なものである。
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