【文献】
Panasonic,UE-specific Power headroom report,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #70bis,3GPP,2010年 7月 3日,R2-103602
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設定がされているコンポーネントキャリアそれぞれの、前記電力ヘッドルーム報告および前記コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力が、複数の電力ヘッドルームを報告するために使用される1つのメディアアクセス制御(MAC)制御要素、の中に含められ、前記MAC制御要素がビットマップを有し、
前記ビットマップの特定の位置における設定されたビットが、関連付けられるコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告が前記MAC制御要素に含まれていることを示す、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
前記設定がされているコンポーネントキャリアそれぞれの、前記電力ヘッドルーム報告および前記コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力が、複数の電力ヘッドルームを報告するために使用される1つのメディアアクセス制御(MAC)制御要素、の中に含められ、前記MAC制御要素がビットマップを有し、
前記ビットマップの特定の位置における設定されたビットが、関連付けられるコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告が前記MAC制御要素に含まれていることを示す、
請求項5から請求項7のいずれかに記載の基地局。
【背景技術】
【0002】
<ロングタームエボリューション(LTE)>
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化あるいは発展・進化させるうえでの最初のステップとして、高速下りリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンスト上りリンク(高速上りリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
【0003】
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートに要求されるキャリアを提供するように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
【0004】
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS terrestrial Radio Access Network:進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される(LTEリリース8)。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの機能を低待ち時間および低コストにおいて完全に提供する。LTEにおいては、与えられたスペクトルを使用してフレキシブルなシステム配備を達成する目的で、複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。下りリンクには、OFDM(直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されており、その理由として、そのような無線アクセスは、シンボルレートが低いため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくいこと、サイクリックプレフィックス(CP)を使用していること、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能であること、が挙げられる。上りリンクには、SC−FDMA(シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されており、なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるためである。LTEリリース8/9では、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用されており、効率の高い制御シグナリング構造が達成されている。
【0005】
<LTEのアーキテクチャ>
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示しており、
図2は、E−UTRANのアーキテクチャをさらに詳しく示している。E−UTRANは、基地局装置から構成されており、基地局装置は、ユーザ機器(UE)に向かうE−UTRAのユーザプレーンプロトコル(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーンプロトコル(RRC)を終端させる。基地局装置(eNodeB/eNB)は、物理層(PHY)、メディアアクセス制御(MAC)層、無線リンク制御(RLC)層、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)層(ユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含んでいる)をホストする。基地局装置は、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能も提供する。基地局装置は、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉された上りリンクQoSの実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、下りリンク/上りリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。複数の基地局装置は、X2インタフェースによって互いに接続されている。
【0006】
さらに、基地局装置は、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化したパケットコア)に接続されており、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)に接続されており、S1−Uによってサービングゲートウェイ(SGW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイと基地局装置との間の多対多関係をサポートする。サービングゲートウェイは、ユーザデータパケットのルーティングおよび転送を行う一方で、基地局装置間のハンドオーバー時にユーザプレーンのモビリティアンカー(mobility anchor)としての役割と、LTEとそれ以外の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカーとしての役割も果たす(S4インタフェースを終端させ、2G/3Gシステムとパケットデータネットワークゲートウェイ(PDN GW)との間でトラフィックを中継する)。サービングゲートウェイは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、そのユーザ機器への下りリンクデータが到着したとき下りリンク(DL)データ経路を終端させ、ページングをトリガーする。サービングゲートウェイは、ユーザ機器のコンテキスト(例えば、IPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、サービングゲートウェイは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
【0007】
MMEは、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラの有効化/無効化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のサービングゲートウェイを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証を確認し、ユーザ機器のローミング制限を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/完全性保護におけるネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
【0008】
<QoS制御>
サービス品質(QoS)の効率的なサポートは、LTEの事業者から求められる基本的な要件と考えられる。QoSクラス最良の性能をユーザに提供する一方で、ネットワークリソースの使用を最適化する目的で、強化されたQoSサポートは新しいシステムにおいて不可欠である。
【0009】
QoSサポートの側面は、3GPP作業部会において現在検討されている。システムアーキテクチャエボリューション(SAE)/LTEのためのQoS設計は、本質的には現在のUMTSシステムのQoS設計(非特許文献1に記載されている)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)に基づいている。
図5は、合意されたSAEベアラサービスのアーキテクチャを示している。非特許文献1に記載されている以下のベアラサービスの定義は、現在も有効である。
【0010】
「ベアラサービスは、規約されたQoSの提供を実現するための側面すべてを含む。これらの側面は、特に、制御シグナリング、ユーザプレーン伝送、およびQoS管理機能である。」
【0011】
新しいSAE/LTEアーキテクチャにおいては、新しいベアラとして、移動端末(ユーザ機器:UE)とサービングゲートウェイとの間のSAEベアラサービスと、移動端末と基地局装置との間の無線アクセスネットワークインタフェース上のSAE無線ベアラと、基地局装置とサービングゲートウェイとの間のSAEアクセスベアラとが定義されている。
【0012】
SAEベアラサービスは、以下を提供する。
− IPエンドツーエンドサービスフローのQoSごとのアグリゲーション(集合化)
− IPヘッダ圧縮(および関連情報をユーザ機器に提供)
− ユーザプレーン(UP)暗号化(および関連情報をユーザ機器に提供)
− エンドツーエンドサービスのシグナリングパケットを優先順位に基づいて処理することが要求される場合、デフォルトのIPサービスに追加のSAEベアラサービスを加えることができる。
− マッピング/多重化の情報をユーザ機器に提供する
− 受け入れられたQoS情報をユーザ機器に提供する
【0013】
SAE無線ベアラサービスは、以下を提供する。
− 要求されるQoSに従って、基地局装置とユーザ機器との間でSAEベアラサービスのデータユニットを伝送する
− SAE無線ベアラサービスを各SAEベアラサービスにリンクする
【0014】
SAEアクセスベアラサービスは、以下を提供する。
− 要求されるQoSに従って、サービングゲートウェイと基地局装置との間でSAEベアラサービスのデータユニットを伝送する
− SAEベアラサービスの集合QoS記述(aggregate QoS description)を基地局装置に提供する
− SAEアクセスベアラサービスを各SAEベアラサービスにリンクする
【0015】
非特許文献1においては、SAEベアラとSAE無線ベアラが1対1の対応関係にある。さらには、無線ベアラ(RB)と論理チャネルが1対1の対応関係にある。この定義の結果として、SAEベアラ(すなわち、対応するSAE無線ベアラおよびSAEアクセスベアラ)は、SAE/LTEアクセスシステムにおけるQoS制御の粒度(細かさ)のレベルである。同じSAEベアラにマッピングされたパケットフローは、同じ処理を受ける。
【0016】
LTEにおいては、2つのタイプのSAEベアラがある。すなわち、最初のアクセス時に設定されるデフォルトのQoSプロファイルを有するデフォルトのSAEベアラと、デフォルトのQoSプロファイルとは異なるQoSプロファイルが要求されるサービスに対して確立される専用SAEベアラ(SAEベアラはSAEベアラサービスとも称される)である。
【0017】
デフォルトのSAEベアラは、「つねにオンの」SAEベアラであり、LTE_IDLEからLTE_ACTIVEへの状態遷移の後ただちに使用することができる。このベアラは、トラフィックフローテンプレート(TFT)がシグナリングされなかったフローすべてを伝える。トラフィックフローテンプレートは、サービングゲートウェイが複数の異なるユーザペイロードを区別する目的に使用する。トラフィックフローテンプレートには、パケットフィルタ(例えばQoS)が組み込まれる。サービングゲートウェイは、パケットフィルタを使用して、入ってくるデータを正しいPDPコンテキスト(パケットデータプロトコルコンテキスト)にマッピングする。デフォルトのSAEベアラでは、いくつかのサービスデータフローを多重化することができる。専用SAEベアラは、デフォルトのSAEベアラとは異なり、一般には保証されたビットレートを提供するため、特定のサービスのみを専用にサポートすることを目的としている。専用SAEベアラは、新しいサービスが要求されたとき、サービングゲートウェイによって、進化型パケットコアからのポリシーおよび課金制御(PCC:Policy and Charging Control)規則の中で受け取るQoS情報に基づいて確立される。専用SAEベアラは、特定のパケットのみに合致するパケットフィルタに関連付けられている。デフォルトのSAEベアラは、上りリンクおよび下りリンク用の「すべてに合致する」パケットフィルタに関連付けられる。サービングゲートウェイは、上りリンク処理において、専用SAEベアラのためのトラフィックフローテンプレートフィルタを構築する。ユーザ機器は、ベアラの確立時にシグナリングされたトラフィックフローテンプレートに基づいて、サービスのデータフローを正しいベアラにマッピングする。デフォルトのSAEベアラと同様に、専用SAEベアラにおいても、いくつかのサービスデータフローを多重化することができる。
【0018】
SAEベアラ設定手順において、SAEベアラのQoSプロファイルがサービングゲートウェイから基地局装置にシグナリングされる。基地局装置は、このプロファイルを使用して一連の第2層QoSパラメータ(エアインタフェースにおけるQoS処理を決定する)を導く。第2層QoSパラメータは、スケジューリング機能に入力される。サービングゲートウェイからS1インタフェース上で基地局装置にシグナリングされるQoSプロファイルに含まれるパラメータについては、現在検討中である。おそらくは、QoSプロファイルパラメータとして、トラフィック処理優先順位、最大ビットレート、および保証ビットレートが、SAEベアラごとにシグナリングされる。これらに加えて、サービングゲートウェイは、最初のアクセス時に各ユーザの割当・保持優先順位(Allocation and Retention Priority)を基地局装置にシグナリングする。
【0019】
<LTEにおける上りリンクアクセス方式>
上りリンク送信においては、カバレッジを最大にするため、ユーザ端末による電力効率の高い送信が必要である。E−UTRAの上りリンク送信方式としては、シングルキャリア伝送と、FDMA(周波数分割多元接続)および動的な帯域幅割当てとを組み合わせた方式が選択されている。シングルキャリア伝送が選択された主たる理由は、マルチキャリア信号(OFDMA:直交周波数分割多元接続)と比較して、ピーク対平均電力比(PARR)が低く、これに対応して電力増幅器の効率が改善され、カバレッジの向上が見込まれるためである(与えられる端末ピーク電力に対してデータレートが高い)。基地局装置は、各時間間隔において、ユーザデータを送信するための固有の時間/周波数リソースをユーザに割り当て、これによってセル内の直交性が確保される。上りリンクにおける直交多元接続によって、セル内干渉が排除されることでスペクトル効率が高まる。マルチパス伝搬に起因する干渉については、送信信号にサイクリックプレフィックスを挿入することにより基地局(eNode B)において対処する。
【0020】
データ送信に使用される基本的な物理リソースは、1つの時間間隔(例えば、0.5msのサブフレーム)にわたるサイズBW
grantの周波数リソースから構成される(符号化された情報ビットはこのリソースにマッピングされる)。なお、サブフレーム(送信時間間隔(TTI)とも称する)は、ユーザデータを送信するための最小の時間間隔である。しかしながら、サブフレームを連結することにより、1TTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBW
grantをユーザに割り当てることも可能である。
【0021】
周波数リソースは、
図3および
図4に示したように、局在型スペクトル(localized spectrum)、または分散型スペクトル(distributed spectrum)のいずれかとすることができる。
図3に示したように、局在型のシングルキャリアは、送信信号が、利用可能な全スペクトルの一部分を占める連続的なスペクトルを有することを特徴とする。送信信号のシンボルレートが異なる(つまりデータレートが異なる)ことは、局在型のシングルキャリア信号の帯域幅が異なることを意味する。
【0022】
これに対して、
図4に示したように分散型のシングルキャリアは、送信信号が、システム帯域幅の全体にわたり分散する不連続な(「くし状の」)スペクトルを有することを特徴とする。ただし、分散型のシングルキャリア信号はシステム帯域幅の全体にわたり分散しているが、占有するスペクトルの合計量は、本質的には、局在型のシングルキャリアのスペクトル量と同じである。さらには、シンボルレートを上げる/下げるには、「くしの歯」それぞれの「帯域幅」をそのままにして「くしの歯」の数を増やす/減らす。
【0023】
図4のスペクトルは、一見すると、くしの歯のそれぞれが「サブキャリア」に対応するマルチキャリア信号のような印象を与える。しかしながら、分散型のシングルキャリア信号の時間領域の信号生成では、対応するピーク対平均電力比の低いまさにシングルキャリア信号が生成されることが明らかである。分散型のシングルキャリア信号とマルチキャリア信号(例えばOFDM:直交周波数分割多重)との間の重要な違いとして、シングルキャリア信号では、「サブキャリア」または「くしの歯」のそれぞれが1個の変調シンボルを伝えるのではない。そうではなく、「くしの歯」それぞれは、すべての変調シンボルに関する情報を伝える。これにより、くしの歯の間に依存性が生じ、結果としてピーク対平均電力比(PAPR)特性が低くなる。さらに、「くしの歯」の間のこの依存性の結果として、送信帯域幅全体にわたりチャネルが周波数非選択性でない限りは、等化の必要性が生じる。これに対して、OFDMの場合、サブキャリアの帯域幅全体にわたりチャネルが周波数非選択性である限りは等化は必要ない。
【0024】
分散型送信では、局在型送信よりも大きな周波数ダイバーシチゲインを提供することができ、一方で、局在型送信では、チャネルに応じたスケジューリングをより容易に行うことができる。なお、多くの場合、スケジューリングの決定では、高いデータレートを達成するため1つのユーザ機器に帯域幅全体を与えるように決定することができる。
【0025】
<LTEにおける上りリンクのスケジューリング方式>
上りリンクの方式として、スケジューリング制御式の(すなわち基地局装置によって制御される)アクセスと、コンテンションベースのアクセスの両方を使用することができる。
【0026】
スケジューリング制御式アクセスの場合、上りリンクデータ送信用として、特定の時間長の特定の周波数リソース(すなわち時間/周波数リソース)が、ユーザ機器に割り当てられる。しかしながら、コンテンションベースのアクセス用に、いくらかの時間/周波数リソースを割り当てることができる。コンテンションベースの時間/周波数リソースの範囲内では、ユーザ機器は、最初にスケジューリングされることなく送信することができる。ユーザ機器がコンテンションベースのアクセスを行う1つのシナリオは、ユーザ機器があるセルへ、または上りリンクリソースを要求するため、最初のアクセスを行うときの、例えばランダムアクセスである。
【0027】
スケジューリング制御式アクセスの場合、基地局装置のスケジューラが、上りリンクデータ送信のための固有の周波数/時間リソースをユーザに割り当てる。より具体的には、スケジューラは以下を決定する。
− 送信を許可する(1つまたは複数の)ユーザ機器
− 物理チャネルリソース(周波数)
− 移動端末が送信に使用するべきトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ(TBS)および変調・符号化方式(MCS))
【0028】
割当て情報は、いわゆる第1層/第2層制御チャネルで送られるスケジューリンググラントを通じてユーザ機器にシグナリングされる。以下では、説明を簡潔にするため、この下りリンクチャネルを「上りリンクグラントチャネル」と称する。
【0029】
スケジューリンググラントメッセージ(本明細書ではリソース割当てとも称する)は、情報として、ユーザ機器に使用を許可する周波数帯域と、グラントの有効期間と、これから行う上りリンク送信にユーザ機器が使用しなければならないトランスポートフォーマットとを、少なくとも含んでいる。最も短い有効期間は、1サブフレームである。グラントメッセージには、選択される方式に応じて追加の情報も含めることができる。上りリンク共有チャネルUL−SCHで送信する権利を許可するグラントとしては、「各ユーザ機器に対する」グラントのみが使用される(すなわち、「各ユーザ機器における各無線ベアラに対する」グラントは存在しない)。したがってユーザ機器は、割り当てられたリソースを何らかの規則に従って無線ベアラの間で配分する必要があり、この規則については次節において詳しく説明する。
【0030】
トランスポートフォーマットは、HSUPAの場合とは異なり、ユーザ機器側では選択しない。基地局(eNode B)が、いくつかの情報(例えば、報告されたスケジューリング情報およびQoS情報)に基づいてトランスポートフォーマットを決定し、ユーザ機器は、選択されたトランスポートフォーマットに従わなければならない。HSUPAでは、基地局装置が最大限の上りリンクリソースを割り当てて、ユーザ機器は、それに応じてデータ送信用の実際のトランスポートフォーマットを選択する。
【0031】
上りリンクのデータ送信では、スケジューリンググラントを通じてユーザ機器に割り当てられる時間/周波数リソースを必ず使用しなければならない。ユーザ機器が有効なグラントを持たない場合、上りリンクデータを送信することは許可されない。各ユーザ機器に専用チャネルが必ず割り当てられるHSUPAの場合とは異なり、データ送信用には、複数のユーザによって共有される1つの上りリンクデータチャネル(UL SCH)のみが存在する。
【0032】
リソースを要求するため、ユーザ機器はリソース要求メッセージを基地局装置に送信する。このリソース要求メッセージには、例えば、バッファ状態、ユーザ機器の電力状態、サービス品質(QoS)に関連する情報を含めることができる。これらの情報(以下ではスケジューリング情報と称する)により、基地局装置は適切なリソース割当てを行うことができる。本文書全体を通じて、無線ベアラグループごとにバッファ状態が報告されるものと想定する。当然ながら、バッファ状態報告についての別の設定も可能である。無線リソースのスケジューリングは、サービス品質を決定するうえで、共有チャネルアクセスネットワークにおいて最も重要な機能であるため、効率的なQoS管理を可能にする目的で、LTEにおける上りリンクスケジューリング方式が満たしているべき要件がいくつかある(非特許文献2を参照)(http://www.3gpp.org/において入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0033】
− 優先順位の低いサービスのリソース不足を避けるべきである。
− 個々の無線ベアラ/サービスにおいてQoSが明確に区別されるべきである。
− どの無線ベアラ/サービスのデータが送信されるのかを基地局装置のスケジューラが識別できるように、上りリンク報告において、きめ細かいバッファ報告(例えば、無線ベアラごとの報告、または無線ベアラグループごとの報告)を可能にするべきである。
− 異なるユーザのサービスの間でQoSを明確に区別できるようにするべきである。
− 無線ベアラごとに最小限のビットレートを提供できるようにするべきである。
【0034】
上に挙げた条件から理解できるように、LTEのスケジューリング方式の1つの重要な側面は、事業者が、自身の総セル容量を、異なるQoSクラスの個々の無線ベアラの間で分配することを制御できるメカニズムを提供することである。無線ベアラのQoSクラスは、前述したようにサービングゲートウェイから基地局装置にシグナリングされる対応するSAEベアラのQoSプロファイルによって識別される。事業者は、自身の総セル容量のうちの特定の量を、特定のQoSクラスの無線ベアラに関連付けられる総トラフィックに割り当てることができる。
【0035】
クラスに基づくこの方法を採用する主たる目的は、パケットの処理を、パケットが属するQoSクラスに応じて区別できるようにすることである。例えば、セル内の負荷が増加したとき、優先順位の低いQoSクラスに属するトラフィックを抑制することによって、事業者がこれに対処できるようにするべきである。この段階では、優先順位の高いトラフィックに割り当てられた総リソースは、トラフィックを処理するのに十分であるため、優先順位の高いトラフィックを依然として低負荷状態で処理することができる。このことは、上りリンク方向および下りリンク方向の両方で可能とするべきである。
【0036】
この方法を採用する1つの恩恵は、事業者が、帯域幅の分配を決めるポリシーを完全に制御することができることである。例えば、事業者の1つのポリシーとして、負荷が極めて高いときでも、優先順位が最低のQoSクラスに属するトラフィックのリソース不足を避けるようにすることができる。優先順位の低いトラフィックのリソース不足を避けることは、LTEにおける上りリンクスケジューリング方式に求められる主たる要件の1つである。現在のUMTSリリース6(HSUPA)のスケジューリングメカニズムでは、絶対的な優先順位方式の結果として、優先順位の低いアプリケーションのリソース不足が生じることがある。E−TFC(Enhanced Transport Format Combination:拡張トランスポートフォーマット組合せ)の選択は、論理チャネルの絶対的な優先順位のみに従って行われ(すなわち優先順位の高いデータの送信が最大限に行われる)、このことは、優先順位の低いデータが、優先順位の高いデータによってリソース不足となりうることを意味する。リソース不足を避けるためには、基地局装置のスケジューラは、ユーザ機器がどの無線ベアラのデータを送信するかを制御する手段を備えていなければならない。このことは、主として、下りリンクにおいて第1層/第2層制御チャネルで送信されるスケジューリンググラントの設計および使用に影響を与える。以下では、LTEにおける上りリンク伝送速度の制御手順について詳しく説明する。
【0037】
<メディアアクセス制御(MAC)およびMAC制御要素>
MAC層は、LTEの無線プロトコルスタックの第2層アーキテクチャにおける下側の副層である(非特許文献3、特に4.2節、4.3節、5.4.3節、および6節を参照)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。MAC層は、下の物理層とはトランスポートチャネルを通じて接続されており、上のRLC層とは論理チャネルを通じて接続されている。MAC層は、論理チャネルとトランスポートチャネルとの間の多重化および逆多重化を実行する。送信側におけるMAC層(以下の例ではユーザ機器)は、論理チャネルを通じて受け取るMAC SDUからMAC PDU(トランスポートブロックとも称する)を構築し、受信側におけるMAC層は、トランスポートチャネルを通じて受け取るMAC PDUからMAC SDUを復元する。
【0038】
多重化エンティティおよび逆多重化エンティティにおいて、いくつかの論理チャネルからのデータを1つのトランスポートチャネルに多重化する、および1つのトランスポートチャネルから逆多重化することができる。多重化エンティティは、新しい送信のための無線リソースが利用可能であるとき、MAC SDUからMAC PDUを生成する。このプロセスには、論理チャネルからのデータの優先順位付け手順が含まれ、各MAC PDUにどの論理チャネルからのデータをどれくらい含めるべきかを決定する。なお、ユーザ機器においてMAC PDUを生成するプロセスは、3GPPの術語では論理チャネル優先順位付け(LCP)とも称される。
【0039】
逆多重化エンティティは、MAC PDUからMAC SDUを再構築し、それらを適切なRLCエンティティに渡す。さらに、MAC層の間のピアツーピア通信のため、「MAC制御要素」と称される制御メッセージをMAC PDUに含めることができる。
【0040】
MAC PDUは、主として、MACヘッダとMACペイロードとからなる(非特許文献3の6節を参照)。MACヘッダは、さらにMACサブヘッダからなり、MACペイロードは、MAC制御要素と、MAC SDUと、パディングとからなる。各MACサブヘッダは、論理チャネルID(LCID)と長さ(L)フィールドとからなる。LCIDは、MACペイロードの対応する部分がMAC制御要素であるかを示し、MAC制御要素ではない場合、関連するMAC SDUが属している論理チャネルを示す。Lフィールドは、関連するMAC SDUまたはMAC制御要素のサイズを示す。MAC制御要素は、上述したようにMACレベルのピアツーピアシグナリングに使用され、上りリンクではバッファ状態報告(BSR)情報の提供およびユーザ機器の利用可能な電力の報告、下りリンクでは間欠受信(DRX)コマンドおよびタイミングアドバンスコマンドを含んでいる。MAC制御要素のタイプごとに1つの専用LCIDが割り当てられている。
図6は、MAC PDUの例を示している。
【0041】
<電力制御>
移動通信システムにおける上りリンク送信電力の制御は、要求されるQoSが達成されるようにビットあたり十分な送信エネルギを確保する必要性と、システムの別のユーザとの干渉を最小限にし、かつユーザ機器のバッテリ寿命を最大にする必要性との間で、調整をはかる役割を果たす。これを達成するため、上りリンク電力制御は、無線伝搬チャネルの特性(例えば、経路損失(パスロス)、シャドウイング、高速フェージング)を考慮するとともに、同じセルおよび隣接セル内の別のユーザからの干渉に打ち勝つように、電力を調整しなければならない。電力制御(PC)の役割は、要求されるSINR(信号対干渉雑音比)を提供すると同時に、隣接セルに引き起こされる干渉を制御するうえで極めて重要となる。上りリンクにおける古典的な電力制御方式の発想では、すべてのユーザが同じSINRで受信することであり、これは完全な補償(full compensation)として知られている。3GPPは、これに代えて、LTEリリース8/9において部分電力制御(FPC:Fractional Power Control)の使用を採用した。この新しい機能では、経路損失の大きいユーザは低いSINR要件で動作し、したがって多くの場合、隣接セルに引き起こされる干渉が小さい。
【0042】
LTEリリース8/9において提供される電力制御方式は、開ループ制御と閉ループ制御の組合せを採用する。1つの動作モードでは、経路損失推定に基づく開ループ手段によって、送信電力密度スペクトルのおよその動作点を設定する。次に、開ループによる動作点付近において、閉ループ電力制御によって、より高速の動作を適用することができる。これにより、干渉が制御され、高速フェージングなどのチャネル条件に適合するように電力設定が微調整される。
【0043】
このようなメカニズムの組合せによって、LTEリリース8/9における電力制御方式では、複数の動作モードがサポートされる。これによって、配備のシナリオ、システムの負荷、および事業者の好みに応じて、電力制御の複数の異なる動作特性を達成することができる。
【0044】
LTEリリース8/9においては、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)、およびサウンディング参照信号(SRS)に対して、詳細な電力制御式が指定されている(非特許文献4の5.1節を参照)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。これらの上りリンク信号それぞれの電力制御式は、同じ基本原理に従う。いずれの場合も、電力制御式は、2つの主項、すなわち基地局装置によってシグナリングされる静的パラメータまたは半静的パラメータから導かれる、開ループの基本動作点と、サブフレームごとに更新される動的オフセット(補正)、の合計と考えることができる。
【0045】
リソースブロックあたりの送信電力に関する、開ループの基本動作点は、セル間干渉やセル負荷など複数の要因に依存する。開ループの基本動作点は、さらに2つの要素として、半静的な基本レベルP
0(セル内のすべてのユーザ機器の共通電力レベル(測定単位:dBm)とユーザ機器に固有なオフセットとからなる)と、開ループの経路損失補償の要素とに、分解することができる。リソースブロックあたりの電力の動的オフセットの部分は、さらに2つの要素として、変調・符号化方式(MCS)に依存する要素と、明示的な送信電力制御(TPC:Transmitter Power Control)コマンドとに、分解することができる。
【0046】
変調・符号化方式に依存する要素(LTE仕様ではΔ
TFと称し、TFは「トランスポートフォーマット」を表す)は、リソースブロックあたりの送信電力を、送信される情報のデータレートに従って適合させることができる。
【0047】
動的オフセットのもう1つの要素は、ユーザ機器に固有な送信電力制御(TPC)コマンドである。このコマンドは、2種類のモード、すなわち、累積TPC(accumulative TPC)コマンド(PUSCH、PUCCH、およびSRSに対して利用できる)と、絶対TPCコマンド(PUSCHに対してのみ利用できる)とにおいて、動作することができる。PUSCHに対する、これら2つのモードの間の切り替えは、ユーザ機器ごとにRRCシグナリングによって半静的に設定される(すなわち、モードを動的に変更することはできない)。累積TPCコマンドの場合、各TPCコマンドは、前のレベルを基準としたときの電力ステップをシグナリングする。移動通信システムにおいて、上りリンク送信電力制御は、要求されるQoSが達成されるようにビットあたり十分な送信エネルギを確保する必要性と、システムの別のユーザとの干渉を最小限にし、かつユーザ機器のバッテリ寿命を最大にする必要性との間で、調整をはかる役割を果たす。
【0048】
これを達成するため、上りリンク電力制御は、無線伝搬チャネルの特性(例えば、経路損失(パスロス)、シャドウイング、高速フェージング)を考慮するとともに、同じセルおよび隣接セル内の別のユーザからの干渉に打ち勝つように、電力を調整しなければならない。
【0049】
基準サブフレームにおけるPUSCH送信のためのUE(ユーザ機器)送信電力P
PUSCH[dBm]の設定は、次式によって定義されている(非特許文献4の5.1.1.1節を参照)。
【数1】
【0050】
− P
CMAXは、与えられた範囲内(後述する)でユーザ機器によって選択される最大UE送信電力である。M
PUSCHは、割り当てられている物理リソースブロック(PRB)の数である。割り当てられている物理リソースブロックが多いほど、多くの上りリンク送信電力が割り当てられる。
− P
0_PUSCH(j)は、RRCによってシグナリングされる基本送信電力を示す。セミパーシステントスケジューリング(SPS)および動的スケジューリングの場合、この値は、セルに固有な公称成分P
0_NOMINAL_PUSCH(j)∈[−126,...,24]と、ユーザ機器に固有な成分P
0_UE_PUSCH(j)∈[−127,...,−96]との合計である。RACHメッセージ3の場合、プリアンブル送信電力からのオフセットである。
− αは、セルに固有なパラメータ(システム情報の中でブロードキャストされる)である。このパラメータは、経路損失PLが補償される程度を示す。α=1は、基地局装置において受信される信号レベルが、ユーザ機器の位置に関係なく同じであることを意味する。セミパーシステントスケジューリングおよび動的スケジューリングの場合、α∈{0,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1}であり、RACHメッセージ3の場合、α(j)=1である。
− PLは、ユーザ機器の経路損失であり、RSRP(基準信号受信電力:Reference Signal Received Power)の測定値と、シグナリングされたRS(基準信号:Reference Signal)の送信電力とに基づいて、ユーザ機器側で導かれる。PLは、PL=(基準信号の電力)−(上位層によってフィルタリングされたRSRP)、として定義することができる。
− Δ
TFは、変調・符号化方式(トランスポートフォーマット)に依存する電力オフセットである。
− f(i)は、基地局装置からユーザ機器にシグナリングされる閉ループ電力制御コマンドの関数である。f()は、累積TPCコマンドの場合には累積を表す。閉ループコマンドが相対的な累積であるか絶対値であるかは、上位層によって設定される。累積TPCコマンドの場合、2セットの電力ステップ値、すなわち、DCIフォーマット3Aの場合の(−1,1)dBと、DCIフォーマット3の場合の(−1,0,+1,+3)dBが提供される。絶対TPCコマンドによってシグナリングできる値のセットは、DCIフォーマット3によって示される(−4,−1,1,4)dBである。
【0051】
<電力ヘッドルームの報告>
基地局装置が複数のユーザ機器に対して上りリンク送信リソースを適切にスケジューリングすることを支援するためには、ユーザ機器が、利用可能な電力ヘッドルームを基地局装置に報告できることが重要である。
【0052】
基地局装置は、ユーザ機器が使用することのできる、サブフレームあたりの上りリンク帯域幅を、電力ヘッドルーム報告を使用して求めることができる。これは、リソースの無駄を回避する目的で、上りリンク送信リソースを使用することができないユーザ機器にリソースが割り当てられることを避ける役割を果たす。
【0053】
電力ヘッドルーム報告の範囲は、+40〜−23dBである(非特許文献5の9.1.8.4節を参照)(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)。範囲の負の部分は、ユーザ機器が受信した上りリンクグラントによって、自身が利用できるよりも多くの送信電力が要求される場合に、電力の不足の程度を基地局装置にシグナリングすることができる。これにより基地局は、次のグラントのサイズを小さくすることができ、送信リソースが解放されて別のユーザ機器に割り当てられる。
【0054】
電力ヘッドルーム報告は、ユーザ機器が上りリンクグラントを有するサブフレームにおいてのみ送ることができる。報告は、送られるサブフレームに関連する。電力ヘッドルーム報告をトリガーするための複数の基準として、以下が定義されている。
− 前回の電力ヘッドルーム報告以降に、推定された経路損失が大きく変化した。
− 前回の電力ヘッドルーム報告から、設定されている時間が経過した。
− 設定されている数を超える閉ループTPCコマンドがユーザ機器によって実行された。
【0055】
基地局装置は、これらのトリガーそれぞれを制御するパラメータを、システムの負荷状況と、スケジューリングアルゴリズムの要件とに応じて、設定することができる。具体的には、RRCが、2つのタイマー(電力ヘッドルーム報告の周期タイマー(periodicPHR-Timer)および電力ヘッドルーム報告の禁止タイマー(prohibitPHR-Timer))を設定し、測定された下りリンク経路損失の変化を示すdl−PathlossChangeをシグナリングして電力ヘッドルーム報告をトリガーすることによって、電力ヘッドルーム報告を制御する。
【0056】
電力ヘッドルーム報告は、MAC制御要素として送られる。MAC制御要素は1オクテットからなり、上位の2ビットが予約されており、下位の6ビットが、上述したdB値(1dB間隔)を表す。
図7は、MAC制御要素の構造を示している。
【0057】
サブフレームiに関する、ユーザ機器の有効な電力ヘッドルームPH[dB]は、次式によって定義される(非特許文献4の5.1.1.2節を参照)。
【数2】
【0058】
電力ヘッドルームは、範囲[40:−23]dB(1dB間隔)の中の最も近い値に丸められる。P
CMAXは、最大総UE送信電力(total maximum UE transmit power)(またはユーザ機器の最大総送信電力)であり、P
CMAX_L〜P
CMAX_Hの所定の範囲内で、以下の制約に基づいてユーザ機器によって選択される値である。
− P
CMAX_L≦P
CMAX≦P
CMAX_H
− P
CMAX_L=min(P
EMAX−ΔT
C,P
PowerClass−MPR−AMPR−ΔT
C)
− P
CMAX_H=min(P
EMAX,P
PowerClass)
【0059】
P
EMAXはネットワークによってシグナリングされる値であり、ΔT
C、MPR、およびAMPR(追加最大電力低減:Additional Maximum Power Reduction、A−MPRとも表される)は、非特許文献6(http://www.3gpp.orgにおいて入手可能であり、参照によって本明細書に組み込まれている)の6.2節に定義されている。
【0060】
MPRは電力低減値(いわゆる最大電力低減)であり、さまざまな変調方式および送信帯域幅に関連付けられるACLR(Adjacent Channel Leakage Power Ratio:隣接チャネル漏洩電力比)を制御するために使用される。隣接チャネルとは、例えば、別のE−UTRA(進化型ユニバーサル地上無線アクセス)チャネルまたはUTRAチャネルである。この最大許容電力低減(MPR)も、非特許文献6に定義されている。MPRは、チャネル帯域幅および変調方式に依存して異なる。ユーザ機器の低減量は、最大許容電力低減(MPR)値よりも小さい。3GPPでは、ユーザ機器の最大送信電力が、公称最大総送信電力からMPRを減じた値に等しいかそれより大きく、かつACLR要件を満たしているかを確認するMPR試験が指定されている。
【0061】
AMPRは、上述したように、追加最大電力低減量である。この値は帯域に固有であり、ネットワークによって設定されるときに適用される。
【0062】
上の説明から理解できるように、P
CMAXは、ユーザ機器の実装に固有であり、したがって基地局装置には認識されていない。
【0063】
図25は、ユーザ機器の送信電力状態および対応する電力ヘッドルームの例示的なシナリオを示している。
図25の左側では、ユーザ機器は電力が制限されていない(正のPHR)のに対して、
図25の右側における負の電力ヘッドルームは、ユーザ機器の電力が制限されていることを暗黙的に示している。なお、P
CMAX_L≦P
CMAX≦min(P
EMAX,P
PowerClass)において、下側限界P
CMAX_Lは、一般には主として最大電力低減MPRおよび追加最大電力低減AMPRに依存する(すなわちP
CMAX_L?P
PowerClass−MPR−AMPR)。
【0064】
<LTEのさらなる発展(LTE−A)>
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域または国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPP TSG RAN #39会合では、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。以下では、LTE−Aに関連して現在検討されている2つの主要な技術要素について説明する。
【0065】
<より広い帯域幅をサポートするためのLTE−Aでのキャリアアグリゲーション>
キャリアアグリゲーションにおいては、最大100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリアがアグリゲートされる。少なくとも、アグリゲートされるコンポーネントキャリアの数が上りリンクと下りリンクとで同じであるとき、すべてのコンポーネントキャリアをLTEリリース8/9互換として設定することができる。ユーザ機器によってアグリゲートされるすべてのコンポーネントキャリアが必ずしもLTEリリース8/9互換でなくてよい。
【0066】
ユーザ機器は、自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリアを同時に受信または送信することができる。キャリアアグリゲーションのための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、LTE−Aリリース10のユーザ機器は、複数のコンポーネントキャリア上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができ、これに対して、LTEリリース8/9のユーザ機器は、コンポーネントキャリアの構造がリリース8/9の仕様に従う場合、1つのみのコンポーネントキャリア上で受信および送信を行うことができる。
【0067】
キャリアアグリゲーションは、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方においてサポートされ、この場合、コンポーネントキャリアそれぞれは、LTEリリース8/9の計算方式を使用するとき周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。上りリンクと下りリンクとで、同じ基地局装置から送信される異なる数の(場合によっては異なる帯域幅の)コンポーネントキャリアがアグリゲートされるように、ユーザ機器を設定することが可能である。
− 設定することのできる下りリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器の下りリンクのアグリゲーション能力に依存する。
− 設定することのできる上りリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器の上りリンクのアグリゲーション能力に依存する。
− 下りリンクコンポーネントキャリアよりも上りリンクコンポーネントキャリアが多くなるようにユーザ機器を設定することはできない。
− 一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、上りリンクと下りリンクとで同じである。
【0068】
同じ基地局装置から送信されるコンポーネントキャリアが、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
【0069】
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、LTEリリース8/9の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
【0070】
複数のキャリアがアグリゲートされる影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、上りリンクおよび下りリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(上りリンクにおいてSU−MIMO(シングルユーザ−多入力多出力)を使用しない場合)。トランスポートブロックとそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
図19および
図20は、それぞれ、下りリンクおよび上りリンクにおける、キャリアアグリゲーションが有効になっている第2層構造を示している。
【0071】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、ユーザ機器はネットワークとの1つのRRC接続を有するのみである。RRC接続の確立/再確立時、1つのセル(Cell)が、LTEリリース8/9と同様に、セキュリティ入力(1つのECGI、1つのPCI、および1つのARFCN)と、非アクセス階層モビリティ情報(例:トラッキングエリア識別子(TAI))とを提供する。RRC接続の確立/再確立の後、そのセルに対応するコンポーネントキャリアは、下りリンクプライマリセル(PCell)と称される。接続モードでは、ユーザ機器あたりつねにただ1つの下りリンクPCell(DL PCell)および1つの上りリンクPCell(UL PCell)が設定される。設定されている一連のコンポーネントキャリアのうち、PCell以外のセルはセカンダリセル(SCell)と称される。下りリンクPCellおよび上りリンクPCellの特徴は以下のとおりである。
− 上りリンクPCellは、第1層上りリンク制御情報を送信するのに使用される。
− 下りリンクPCellを非アクティブ化することはできない。
− 下りリンクPCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、下りリンクSCellにレイリーフェージングが発生しても再確立はトリガーされない。
− 下りリンクPCellは、ハンドオーバーに伴って変更され得る。
− 非アクセス階層情報は下りリンクPCellから取得される。
【0072】
コンポーネントキャリアの再設定、追加、および削除は、RRCによって行うことができる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのコンポーネントキャリアを追加、削除、または再設定することもできる。新しいコンポーネントキャリアを追加するときには、コンポーネントキャリアでの送信/受信に必要であるコンポーネントキャリアのシステム情報を送るため、専用RRCシグナリングが使用される(LTEリリース8/9におけるハンドオーバー時と同様)。
【0073】
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うランダムアクセス手順は最大で1つとするべきである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCH(物理下りリンク制御チャネル)によって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、下りリンク制御情報(DCI)フォーマットそれぞれにコンポーネントキャリア識別フィールド(CIF)が導入されている。クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、上りリンクのコンポーネントキャリアと下りリンクのコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用される上りリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。下りリンクコンポーネントキャリアから上りリンクコンポーネントキャリアへのリンクは、1対1である必要はない。言い換えれば、同じ上りリンクコンポーネントキャリアに複数の下りリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つの下りリンクコンポーネントキャリアにリンクできる上りリンクコンポーネントキャリアは1つのみである。
【0074】
<コンポーネントキャリアの(非)アクティブ化とDRX動作>
キャリアアグリゲーションにおいては、ユーザ機器に設定されているコンポーネントキャリアが1つのみである場合、LTEリリース8/9の間欠受信(DRX)が適用される。それ以外の場合、設定されてアクティブになっているすべてのセルに同じDRX動作が適用される(すなわち、PDCCHの監視のアクティブ時間が同じである)。アクティブ時間中には、どのコンポーネントキャリアも、設定されてアクティブになっている任意の別のコンポーネントキャリアのPDSCH(物理下りリンク制御チャネル)をスケジューリングすることができる(さらなる制約は未決定)。
【0075】
キャリアアグリゲーションが設定されているときにユーザ機器のバッテリ消費量が大幅に増大しないように、下りリンクSCellに対するコンポーネントキャリアアクティブ化/非アクティブ化メカニズムが導入されている(すなわちアクティブ化/非アクティブ化はPCellには適用されない)。下りリンクSCellがアクティブでないときには、ユーザ機器は対応するPDCCHまたはPDSCHを受信する必要はなく、CQI測定を行う必要もない(CQIはチャネル品質インジケータの略)。逆に、下りリンクSCellがアクティブであるときには、ユーザ機器はPDSCHおよびPDCCH(存在時)を受信し、CQI測定を実行できるものとみなされる。しかしながら、上りリンクにおいては、ユーザ機器は、対応するPDCCHでスケジューリングされるとき、設定されている任意の上りリンクコンポーネントキャリアのPUSCHで送信できることがつねに要求される(すなわち、上りリンクコンポーネントキャリアの明示的なアクティブ化は行われない)。
【0076】
SCellのアクティブ化/非アクティブ化メカニズムのその他の詳細は以下のとおりである。
− 下りリンクSCellの明示的なアクティブ化は、MACシグナリングによって行われる。
− 下りリンクSCellの明示的な非アクティブ化は、MACシグナリングによって行われる。
− 下りリンクSCellの暗黙的な非アクティブ化も可能である。
− 下りリンクSCellは、個々にアクティブ化/非アクティブ化することができ、1つのアクティブ化/非アクティブ化コマンドが、設定されている下りリンクSCellのサブセットをアクティブ化/非アクティブ化することもできる。
− 設定されているコンポーネントキャリアのセットに追加されるSCellは、最初は「非アクティブ化」されている。
【0077】
<キャリアアグリゲーションにおける上りリンク電力制御>
キャリアアグリゲーションの場合における上りリンク電力制御アルゴリズムの細部のほとんどは、公開されている、または3GPPの作業部会において検討中であるが、基本的な合意として、LTE−Aリリース10では、コンポーネントキャリアに固有な上りリンク電力制御がサポートされ、すなわち、ユーザ機器に設定される上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれに1つの独立した電力制御ループが存在する。さらには、コンポーネントキャリアごとに電力ヘッドルームを報告するべきことが決定された。電力が制限される、すなわちユーザ機器の送信電力が最大総UE送信電力を超える場合、以下の電力スケーリングが適用される。
【0078】
電力スケーリングにおいては、PUCCHの電力を優先させるべきであり、残った電力をPUSCHによって使用することができる(すなわちPUSCHの電力を最初に(場合によっては)0までスケールダウンする)。さらには、上りリンク制御情報(UCI)が含まれるPUSCHを、UCIが含まれないPUSCHよりも優先させ、さらに、UCIが含まれないPUSCHの送信については電力スケーリングを等しくしようとする。
【0079】
コンポーネントキャリアそれぞれが自身の電力制御ループを有し、コンポーネントキャリアそれぞれにおける各トランスポートブロックが、コンポーネントキャリアに対して個々に設定された電力で送信されるものと想定できるため、電力ヘッドルーム報告は、コンポーネントキャリアごとに実行するべきである。キャリアアグリゲーションは、LTEリリース8/9の(コンポーネント)キャリアをいくつかまとめたものと考えることができるため、個々のコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告においても、LTEリリース8/9の電力ヘッドルーム報告手順を再利用できる。
【0080】
したがって、各ユーザ機器は、コンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告をそのコンポーネントキャリア上で送信する。すなわち、あるサブフレームにおいて上りリンク送信を有するコンポーネントキャリアそれぞれは、電力ヘッドルーム報告を送るための条件が満たされている場合、電力ヘッドルーム報告も送信できることを意味する。
【0081】
LTEリリース8/9において公知である電力ヘッドルーム報告は、(複数の異なるタイマーを採用することによって)コンポーネントキャリア単位で制御、またはトリガーされる。このコンセプトを、キャリアアグリゲーションを利用するシステムの個々のコンポーネントキャリアに適用する場合、1つのサブフレームの中で、上りリンク送信を有するコンポーネントキャリアそれぞれが電力ヘッドルーム報告を送信することはほとんど起こらない。したがって、電力ヘッドルーム報告に関連するタイマー(PHR周期タイマーおよびPHR禁止タイマー)がすべてのコンポーネントキャリアに対してたとえ同じ値に設定されている場合でも、サブフレームの中ですべてのコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告が同期することは、偶然に起こるのみである。
【0082】
図10は、LTE−Aシステムにおける例示的な電力ヘッドルーム報告を示しており、例示的な3つのコンポーネントキャリア(CoCa1〜CoCa3)それぞれに、LTEリリース8/9の電力ヘッドルーム報告が適用されるものと想定する。T
1では、3つのコンポーネントキャリアすべてに上りリンク割当てが存在しており、コンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告が含まれている上りリンクトランスポートブロック(またはMAC PDU)が、それぞれのコンポーネントキャリア上で送られる。コンポーネントキャリアそれぞれの、コンポーネントキャリアあたりの(CCあたりの)電力ヘッドルーム報告が存在するため、基地局装置はユーザ機器の電力状態を認識する。さらには、コンポーネントキャリアそれぞれに対して、PHR周期タイマーおよびPHR禁止タイマーがリスタートされる。コンポーネントキャリアCoCa2およびCoCa3については、PHR周期タイマーが切れた後、次のサブフレーム内に上りリンク割当てが存在しないものと想定し、したがって、周期的な電力ヘッドルーム報告をすぐには送ることができない。したがって、T
2において、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアCoCa1のみの電力ヘッドルーム報告を含んだトランスポートブロック/MAC PDUを送信する。リソース割当てが存在するコンポーネントキャリアはこのCoCa1のみであるため、基地局装置は、T
2においても、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告からユーザ機器の電力状態を認識することができる。
【0083】
しかしながら、T
3、T
4、およびT
5においては、サブフレームの中の一部のコンポーネントキャリアのトランスポートブロック/PDUのみが電力ヘッドルーム報告を伝える。T
5におけるコンポーネントキャリアCoCa3の電力ヘッドルーム報告は、コンポーネントキャリアCoCa3において経路損失が変化することによってトリガーされた電力ヘッドルーム報告であるものと想定する。しかしながら、経路損失が変化するこのタイミングにおいて、上りリンク送信を有するコンポーネントキャリア(すなわちコンポーネントキャリアCoCa1およびCoCa2)のいずれにも電力ヘッドルーム報告が含まれていない。したがって、T
3、T
4、およびT
5において、基地局装置は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンク送信に消費された実際の送信電力を認識していない。
【0084】
さらに、LTEリリース10においては、キャリアアグリゲーションの使用時、2種類の最大電力制限値、すなわち最大総UE送信電力P
CNMAXと、コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力P
CMAX,cとが存在する。3GPPのRAN4作業部会によると、シングルキャリア動作モードにおいて、キャリアアグリゲーション能力を有するユーザ機器のリンクバジェットが影響されないようにする目的で、サポートされるキャリアの数には関係なく、ユーザ機器あたりの(公称)最大送信電力P
CNMAXと、コンポーネントキャリアに固有な(公称)最大送信電力P
CMAC,cの両方が同じであるべきことが指定されている。
【0085】
LTE−Aリリース10では、LTEリリース8/9とは異なり、ユーザ機器は、PUSCHとPUCCHの同時送信、マルチクラスタ・スケジューリング(multi-cluster scheduling)、および複数のコンポーネントキャリア上での同時送信にも対応しなければならず、これにより、3GPPリリース8/9と比較して、より大きなMPR値が要求され、適用されるMPR値も大きく変動する。
【0086】
なお、基地局装置は、コンポーネントキャリアそれぞれにユーザ機器によって適用される電力低減量を認識しておらず、なぜなら、実際の電力低減量は、割当てのタイプ、標準化されたMPR値、さらにはユーザ機器の実装に依存するためである。したがって、基地局装置は、ユーザ機器が電力ヘッドルームを計算するときの基準となる、コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力を認識していない。例えばLTEリリース8/9では、ユーザ機器の最大送信電力P
CNMAXは、上述したように何らかの特定の範囲内とすることができる(P
CMAX_L≦P
CMAX≦P
CMAX_H)。
【0087】
コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力P
CMAC,cが低減される(上述したように基地局装置は認識していない)ことにより、基地局装置は、ユーザ機器の動作がその最大総送信電力P
CNMAXにどれくらい近づいているかを、正確に認識することができない。したがって、ユーザ機器が最大総UE送信電力P
CNMAXを超え、このため電力スケーリングが要求される状況が起こり得る。
図26は、例示的なシナリオとして、ユーザ機器の電力が制限されている、すなわち、上りリンクに設定されているコンポーネントキャリアCC#1およびCC#2に電力スケーリングが適用されている状況を示している。ユーザ機器の電力が制限されているにもかかわらず、LTEの定義による、コンポーネントキャリアに固有な電力ヘッドルーム報告は、いずれも十分に大きな電力ヘッドルームを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0090】
本発明の1つの目的は、キャリアアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、基地局装置がユーザ機器の電力使用状態を認識することを可能にする手順を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0091】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0092】
本発明の主たる一態様は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、基地局によって実行される方法であって、ユーザ機器から電力状態報告を受信するステップと、前記受信した電力状態報告に基づき、前記ユーザ機器のスケジューリングを行うステップと、を含み、前記電力状態報告は、キャリアアグリゲーションを用いた通信に使用するための設定がされておりアクティブである上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの、電力ヘッドルーム報告およびコンポーネントキャリアに固有な最大送信電力、を含み、前記電力状態報告は、前記コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力が、前記設定がされておりアクティブである前記それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアにおける電力低減量を考慮しており、前記設定がされておりアクティブである前記上りリンクコンポーネントキャリアのデータ送信のためのリソース割当てを前記ユーザ機器に対して行っている場合に生成され、コンポーネントキャリアの上りリンクの送信リソース割当てを行っていない場合には、事前に定義される上りリンクグラントまたは事前に定義されるPUSCHの電力に基づく電力ヘッドルーム報告が含まれ、前記電力状態報告は、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアについて、前記コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力を含むか否かを示す情報をさらに含み、前記上りリンクの送信割当てが存在しないコンポーネントキャリアについては、電力ヘッドルーム報告のみを含み、前記コンポーネントキャリアに固有な最大送信電力を含まないことを示す前記情報が、前記電力状態報告に含まれる、方法である。
【0093】
本発明の第1の態様は、ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているとき、すなわち、自身の最大総UE送信電力(以下では「ユーザ機器の最大総送信電力」または「ユーザ機器の最大総UE送信電力」とも称する)を使用する状況に近いとき、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総送信電力を超える送信電力の使用が要求されるときに、ユーザ機器がそのことを基地局装置に示すことができるようにすることである。
【0094】
本発明のこの第1の態様に基づく、第1の例示的な実施例によると、ユーザ機器は、各サブフレームにおける(MACプロトコルデータユニットの)送信に電力スケーリングを適用したかを、それぞれのサブフレームのMACプロトコルデータユニット(MAC PDU)の中のインジケータを使用して、基地局装置にシグナリングする。インジケータは、例えば、MAC PDUの1つまたは複数のMACサブヘッダに含めることができる。
【0095】
第1の例示的な実施例の改良形態においては、上りリンクの個々のコンポーネントキャリアについて、電力スケーリングの使用を示すことができるように、上りリンクに設定されている(またはアクティブな)コンポーネントキャリアそれぞれに対するインジケータが提供される。これは例えば、インジケータと、インジケータが送信される設定されている(またはアクティブな)コンポーネントキャリアとを関連付けることができるように、設定されている(またはアクティブな)それぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上でユーザ機器によって送信されるMAC PDUに、それぞれのインジケータを多重化することによって、実現することができる。
【0096】
ユーザ機器がその最大総UE送信電力に実際に達する前に、ユーザ機器の電力状態を示すべきである場合、最大総UE送信電力を基準とするしきい値(例えば、特定の割合)を定義することができ、このしきい値を超えたとき、インジケータを設定するようにユーザ機器をトリガーする。この場合、インジケータは、設定されているとき、ユーザ機器が最大総UE送信電力を使用する状況に近い(すなわちしきい値を超えた)ことを基地局装置に示す。さらには、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれを対象として、このインジケータを個別にシグナリングすることもでき、例えば、MAC PDUの1つまたは複数のMACサブヘッダに含めることができる。
【0097】
第1の態様に基づき、別の第2の例示的な実施例によると、ユーザ機器が、所与のサブフレームにおけるMAC PDUの送信に電力スケーリングを適用する必要がある場合、ユーザ機器は、設定されている(またはアクティブな)上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告(コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告とも称する)と、所与のサブフレームにおいてMAC PDUを送信するのに要求される推定される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示すインジケータとを、このサブフレームにおいて一緒に送信する(あるいはインジケータは、このような電力状況に起因して、所与のサブフレームにおける送信にユーザ機器によって電力スケーリングが適用されたことを示すものと解釈することもできる)。
【0098】
したがって、この第2の例示的な実施例においては、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMAC PDUを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるとき、設定されている(またはアクティブな)上りリンクコンポーネントキャリアすべてを対象とする、非周期的な、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされ、ユーザ機器によって送られる。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報は、例えば、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告をMAC制御要素の中で伝えるMAC PDUのMACサブヘッダに含めることができる。
【0099】
この第2の例示的な実施例は、ユーザ機器がその最大総UE送信電力に実際に達する前に、ユーザ機器の電力状態の指示情報をシグナリングするように、修正することもできる。この場合も、最大総UE送信電力を基準とするしきい値(例えば、特定の割合)を定義することができ、このしきい値を超えたとき、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を送るようにユーザ機器をトリガーする。
【0100】
さらには、オプションとして、設定されている(またはアクティブな)各上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告と、それぞれの電力ヘッドルーム報告が、ユーザ機器の最大総送信電力またはそれを基準とするしきい値を超えることによってトリガーされたことを示す指示情報とを、一緒に送ることができる。このような指示情報は、例えば、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告を伝えるMAC制御要素のMACサブヘッダに含めることができる。
【0101】
本発明の第1の態様に基づく、さらなる第3の例示的な実施例によると、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアの最大送信電力に適用された電力低減量を、基地局装置に示す。あるいは、電力低減量の代わりに、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの最大送信電力(コンポーネントキャリアに固有な電力低減を適用した後)を、基地局にシグナリングすることができる。
【0102】
電力低減量は、例えば、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアごとに、またはアクティブな上りリンクコンポーネントキャリアごとに、シグナリングすることができる。
【0103】
さらなる一例においては、コンポーネントキャリアの最大送信電力に適用された電力低減量を、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告と一緒に、基地局装置にシグナリングする。
【0104】
ユーザ機器の電力状態に関する情報は、所与のサブフレームのMAC PDUの中に含まれている1つまたは複数のMAC制御要素の形で、シグナリングすることができる。さらには、基地局装置は、シグナリングされた電力状態情報によって、電力状態情報をシグナリングした各ユーザ機器の電力状態を導くことができる。基地局装置のスケジューラは、例えば、ユーザ機器への動的なリソース割当て、あるいはセミパーシステントなリソース割当てにおいて、それぞれのユーザ機器の電力状態を考慮することができる。
【0105】
本発明の第1の態様に基づく、別の第4の例示的な実施例によると、ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているときに、対応する指示情報を基地局装置に提供する新規のMAC制御要素を定義することによって、ユーザ機器は、そのような電力状態を基地局装置に示すことができ、この新規のMAC制御要素は、1つのサブフレームにおいて(割り当てられている)それぞれのコンポーネントキャリア上で送信される1つまたは複数のプロトコルデータユニットにユーザ機器によって挿入される。
【0106】
さらに、プロトコルデータユニットに挿入される制御要素は、ユーザ機器がその最大総UE送信電力に近づいていることの指示情報に加えて、ユーザ機器あたりの(UEあたりの)電力ヘッドルームをさらに示すことができる。ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、例えば、サブフレームにおいて(MAC制御要素を含んでいる)プロトコルデータユニットを送信するときにユーザ機器によって使用されない送信電力(ユーザ機器の最大総送信電力を基準とする送信電力)を示す。
【0107】
MAC制御要素は、サブフレームのプロトコルデータユニットに挿入することができる。例えば、MAC制御要素は、サブフレームにおいてユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニットの1つに、または、サブフレームにおいてユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニットすべてに、挿入することができる。
【0108】
本発明の第1の態様に基づく、別の第5の例示的な実施例によると、本発明の目的は、ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているとき、すなわち、最大総UE送信電力を使用する状況に近い、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を超える送信電力の使用が要求されるときに、ユーザ機器が、1つのサブフレームの中の割り当てられているすべてのコンポーネントキャリアについて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を送ることによって、解決される。
【0109】
本発明の別の第2の態様は、上りリンクにおけるキャリアアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて電力ヘッドルームを報告するときの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告の定義を提案することである。例示的な1つの定義によると、設定されている(またはアクティブな)上りリンクコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、使用される上りリンク送信電力との差として定義される。
【0110】
使用される上りリンク送信電力とは、所与のサブフレームにおいてMAC PDUを送信するためにユーザ機器によって使用される(または放射される)電力である。使用される上りリンク送信電力は、送信PUSCH電力(transmitted PUSCH power)と称することもできる。したがって、使用される上りリンク送信電力では、電力スケーリング(もし送信に適用された場合)が考慮されている。したがって、使用される上りリンク送信電力は、推定される送信電力(サブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMAC PDUを送信するのに要求される、電力制御式の結果としての送信電力)とは異なることがある。
【0111】
これに代えて、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、推定PUSCH電力との差として、定義することができる。PUSCH電力は、例えば、それぞれのコンポーネントキャリアの電力制御式によって計算することができる。
【0112】
さらには、(設定されている)上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力では、サブフレームの中の別の1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリア上で同時に送信することに起因する電力低減を考慮することができる。オプションとして、ユーザ機器のアクティブな上りリンクコンポーネントキャリアのみについて、電力ヘッドルーム報告が送られる。
【0113】
本発明の第2の態様による、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告の形で提供することができる。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告は、例えば、MAC PDUの中のMAC制御要素の形でシグナリングされる。上述したように、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を伝えるMAC制御要素と、MAC PDUのヘッダセクション内のMACサブヘッダとを関連付けることができ、このMACサブヘッダは、ユーザ機器の電力が制限されて電力スケーリングが要求されている状況によって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームがトリガーされたことを示す目的で使用することができる。
【0114】
本明細書に記載されている、本発明のすべての態様と、すべての実施形態および例示的な実施例において、オプションとして、ユーザ機器は、設定されているコンポーネントキャリアのうちアクティブなコンポーネントキャリア(アクティブなコンポーネントキャリアと称する)のみについて、報告することができる(すなわち、インジケータや電力ヘッドルーム報告などは、アクティブなコンポーネントキャリアのみについてシグナリングすることができる)。この方式は、例えば、ユーザ機器の上りリンクコンポーネントキャリアの設定および(非)アクティブ化を個別に制御できる場合に、有利であり得る。
【0115】
本発明の一実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知する方法に関する。この方法は、ユーザ機器が上りリンクで送信を行うサブフレームそれぞれに対して、ユーザ機器によって実行される以下のステップを含んでいる。ユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定する。超える場合、ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減し、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信する。送信されるMACプロトコルデータユニットは、それぞれのサブフレームにおいてMACプロトコルデータユニットを送信するためにユーザ機器によって電力スケーリングが実行されたかを基地局装置に示すインジケータ、を備えている。
【0116】
インジケータは、例えば、少なくとも1つのMACプロトコルデータユニットのMACヘッダの中に含めることができる。インジケータは、例えば、少なくとも1つのMACプロトコルデータユニットに含まれているそれぞれのMACヘッダのMACサブヘッダの1つまたは複数の中のフラグとすることができる。
【0117】
さらには、本発明のより高度な例示的な実施形態においては、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれに対して個別に電力スケーリングを実行することができる。MACプロトコルデータユニットが送信される各上りリンクコンポーネントキャリアにおいて、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で送信される少なくとも1つのMACプロトコルデータユニットは、サブフレームにおけるそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上での送信に電力スケーリングが適用されたかを基地局装置に示すインジケータ、を備えている。
【0118】
本発明の別の実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知するさらなる方法、を提供する。この実施形態によると、ユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定する。超える場合、ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減し、さらに、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告の生成をトリガーする。ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告と、上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報と一緒に、それぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信する。
【0119】
さらには、オプションとして、ユーザ機器は、トリガーに応えて、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を求めるが、この場合、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、使用される上りリンク送信電力との差として定義される。したがって、電力ヘッドルームのこの定義では、電力スケーリングが考慮されている。
【0120】
これに代えて、またはこれに加えて、ユーザ機器は、トリガーに応えて、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を求めるが、この場合、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、それぞれのコンポーネントキャリアにおける推定される上りリンク送信電力との差として定義される。したがって、電力ヘッドルームのこの代替の定義では、電力スケーリングが考慮されない。
【0121】
オプションとして、上記の両方の定義による電力ヘッドルームは、ユーザ機器によって、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれについて求めることができ、電力ヘッドルーム報告の中で基地局装置に提供され得る。
【0122】
本方法のさらなる例示的な実施形態においては、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力に適用される電力低減量は、サブフレームの中のユーザ機器の設定されている(1つまたは複数の)別の上りリンクコンポーネントキャリア上での(1つまたは複数の)送信を考慮して、ユーザ機器によって決定される。
【0123】
さらに、別の例示的な実施形態によると、推定される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって、(1つまたは複数の)電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報は、電力ヘッドルーム報告の少なくとも1つを伝えるMAC制御要素のMACサブヘッダの中のフラグを設定することによって、提供される。例えば、電力ヘッドルーム報告を含んでいる各MAC制御要素に対応するMACサブヘッダを、MAC制御要素が多重化されるMACプロトコルデータユニットのヘッダセクションに含めることができる。MACサブヘッダの中のフラグは、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって、MAC制御要素の中の電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す。
【0124】
別の例示的な実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知するさらなる方法、を提供する。オプションとして、この方法は、ユーザ機器が上りリンクで送信を行うサブフレームそれぞれに対して実行することができる。本方法によると、ユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定する。超える場合、ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減し、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信する。送信されるMACプロトコルデータユニットは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアにおけるユーザ機器の最大送信電力、に適用された電力低減量、を示す少なくとも1つのMAC制御要素、を備えている。
【0125】
これに代えて、ユーザ機器は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアにおけるユーザ機器の最大送信電力、をシグナリングすることができるが、この方式では、同じ情報精度において、電力低減量をシグナリングするよりもシグナリングオーバーヘッドが増大する。
【0126】
オプションとして、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超える場合にのみ、すなわち、ユーザ機器が電力スケーリングを適用しなければならない場合にのみ、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアにおける電力低減量を示す(1つまたは複数の)MAC制御要素を、サブフレームの中のMAC PDUに含めることができる。
【0127】
この方法のさらなる詳細な例示的な一実施形態においては、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれに対して個別に電力スケーリングが実行されるものと想定することができる。MACプロトコルデータユニットが送信される各上りリンクコンポーネントキャリアにおいて、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で送信される少なくとも1つのMACプロトコルデータユニットは、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力に適用された電力低減量を示すMAC制御要素、を備えている。
【0128】
本発明のさらなる例示的な実施形態によると、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超える場合、ユーザ機器は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告をさらに生成し、MACプロトコルデータユニットを、これらの電力ヘッドルーム報告と、電力低減を報告するMAC制御要素と一緒に、基地局装置に送信する。
【0129】
本発明の別の例示的な実施形態によると、ユーザ機器は、上りリンクコンポーネントキャリアが(非)アクティブ化されることに応えて、または上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力に適用される電力低減量の事前に定義された変化に応えて、設定されているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリアの電力低減量および電力ヘッドルーム報告をシグナリングする。
【0130】
本発明の別の実施形態においては、電力低減量をシグナリングするMAC制御要素のフォーマットは、MAC制御要素のMACサブヘッダに含まれている以下の識別子によって識別される。
− 電力低減量をシグナリングするMAC制御要素に対して定義されている所定の論理チャネル識別子、または、
− 電力ヘッドルーム報告および1つまたは複数のフラグをシグナリングするMAC制御要素に対して定義されている所定の論理チャネル識別子
【0131】
ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知する方法のさまざまな例示的な実施形態において、本発明の別の実施形態によると、ユーザ機器によって少なくとも1つの上りリンクリソース割当てを受信する受信ステップであって、上りリンクリソース割当てそれぞれが、複数のコンポーネントキャリアの1つにおいてMACプロトコルデータユニットの少なくとも1つを送信するためのリソースを、ユーザ機器に割り当てる、受信ステップと、受信された各上りリンクリソース割当てに対して、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信する少なくとも1つのMACプロトコルデータユニットを生成するステップと、を含んでいる。各MACプロトコルデータユニットは、受信されたリソース割当ての1つに従って、コンポーネントキャリアの対応する1つを介して送信される(なお、MIMOが使用されている場合、ユーザ機器にリソースが割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアを介して、2つのMAC PDUを送信することができる)。プロトコルデータユニットの生成は、例えば、論理チャネル優先順位付け手順を実施することによって実行することができる。
【0132】
本発明の第2の態様に基づく、本発明の別の例示的な実施形態によると、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器から基地局装置に送信されるMAC制御要素が提供される。この実施形態によると、MAC制御要素は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告であって、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、送信PUSCH電力(または使用される上りリンク送信電力)との差を報告する、電力ヘッドルーム報告、を備えている。
【0133】
一例においては、サブフレームの送信PUSCH電力P
PSPUSCH,c(i)は、次式によって定義される。
【数3】
この式において、PSF
cは、設定されているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリアに対して適用される電力スケーリング係数である。
【0134】
さらには、本発明の別の例示的な実施形態においては、MAC制御要素は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告であって、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、推定PUSCH電力(またはそれぞれのコンポーネントキャリアにおける推定される上りリンク送信電力)との差を報告する、電力ヘッドルーム報告、をさらに備えていることができる。
【0135】
本発明の第2の態様に基づく、本発明の例示的な代替の実施形態によると、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器から基地局装置に送信される別のMAC制御要素が提供される。このMAC制御要素は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告であって、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、推定PUSCH電力との差を報告する、電力ヘッドルーム報告、を備えている。
【0136】
MAC制御要素の両方の実施形態では、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力において、ユーザ機器の設定されている別の(1つまたは複数の)上りリンクコンポーネントキャリア上での送信に起因する電力低減が考慮される。
【0137】
本発明の別の例示的な実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器から基地局装置に送信されるMACプロトコルデータユニット、に関する。このMACプロトコルデータユニットは、本明細書に記載されている複数の異なる実施形態の1つによる、電力ヘッドルーム報告を含んでいるMAC制御要素と、MACサブヘッダとを備えている。MACサブヘッダはインジケータを備えており、このインジケータは、設定されているとき、上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって、電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを、基地局装置に示す。
【0138】
さらには、本発明は、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知する方法を、ハードウェアに実装する、もしくはソフトウェアモジュールによって実施する、またはその両方に関する。したがって、本発明の別の実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知するユーザ機器、に関する。このユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定する判定部、を備えている。さらに、ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減する電力制御部と、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信する送信部と、を備えている。送信されるMACプロトコルデータユニットは、それぞれのサブフレームにおいてMACプロトコルデータユニットを送信するためにユーザ機器によって電力スケーリングが実行されたかを基地局装置に示すインジケータ、を備えている。
【0139】
別の例示的な実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知するユーザ機器、を提供する。このユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定し、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告の生成をトリガーするようにされている判定部と、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減するようにされている電力制御部と、を備えている。さらに、ユーザ機器は、MACプロトコルデータユニットを、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告と、上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報と一緒に、それぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信するようにされている送信部、を含んでいる。
【0140】
本発明のさらなる実施形態においては、ユーザ機器は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定するようにされている判定部と、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減するようにされている電力制御部と、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信するようにされている送信部と、を備えている。送信されるMACプロトコルデータユニットは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアにおけるユーザ機器の最大送信電力、に適用された電力低減量を示す少なくとも1つのMAC制御要素、を備えている。
【0141】
さらには、本発明の別の実施形態によると、ユーザ機器は、本明細書に記載されているさまざまな実施形態の1つによる、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知する方法、のステップを実行するようにされている。
【0142】
本発明の別の実施形態は、命令を格納しているコンピュータ可読媒体であって、命令がユーザ機器のプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、ユーザ機器が、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器が上りリンクで送信を行うサブフレームそれぞれにおけるユーザ機器の送信電力状態、を基地局装置に通知し、この通知は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定するステップと、超える場合、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減するステップと、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信するステップと、によって行われる、コンピュータ可読媒体、を提供する。送信されるMACプロトコルデータユニットは、それぞれのサブフレームにおいてMACプロトコルデータユニットを送信するためにユーザ機器によって電力スケーリングが実行されたかを基地局装置に示すインジケータ、を備えている。
【0143】
本発明の別の実施形態のコンピュータ可読媒体は、命令を格納しており、命令がユーザ機器のプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、ユーザ機器が、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知し、この通知は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定するステップと、超える場合、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減し、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告の生成をトリガーするステップと、MACプロトコルデータユニットを、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告と、上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力がユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報と一緒に、それぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信するステップと、によって行われる。
【0144】
本発明のさらなる実施形態によると、命令を格納しているコンピュータ可読媒体が提供される。この命令がユーザ機器のプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、ユーザ機器が、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器が上りリンクで送信を行うサブフレームそれぞれにおけるユーザ機器の送信電力状態、を基地局装置に通知し、この通知は、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるかを判定するステップと、超える場合、MACプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えないように、送信電力の電力スケーリングを実行して送信電力を低減するステップと、MACプロトコルデータユニットをそれぞれのサブフレームにおいて基地局装置に送信する送信ステップであって、送信されるMACプロトコルデータユニットが、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアにおけるユーザ機器の最大送信電力に適用された電力低減量、を示す少なくとも1つのMAC制御要素、を備えている、送信ステップと、によって行われる。
【0145】
さらには、本発明の別の実施形態によると、コンピュータ可読媒体は、命令をさらに格納しており、命令が実行されたとき、それに起因して、ユーザ機器は、本明細書に記載されているさまざまな実施形態の1つによる、ユーザ機器の送信電力状態を基地局装置に通知する方法、のステップを実行する。
【0146】
本発明の第1の態様に関連する本発明の別の実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の電力状態を基地局装置に通知する方法、を提供する。ユーザ機器は、サブフレームにおいてそれぞれのコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超えるかを判定する。しきい値を超える場合、ユーザ機器は、MAC制御要素をプロトコルデータユニットに多重化し、MAC制御要素を含んだプロトコルデータユニットをサブフレームにおいて基地局装置に送信する。MAC制御要素は、生成されたプロトコルデータユニットを上りリンクで送信するためにユーザ機器によって消費される送信電力がしきい値を超えたことを、基地局装置に示す、すなわち、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを報告する。しきい値は、例えば、ユーザ機器が使用することのできる最大値に対する割合として定義することができる。
【0147】
本発明のさらなる実施形態によると、MAC制御要素は、サブフレームにおいて送信される上りリンクプロトコルデータユニットすべてに関連する、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを、基地局装置に提供する。ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、例えばLTE−Advancedなどの3GPPベースの通信システムでは、サブフレームにおけるPUSCH(物理上りリンク共有チャネル)およびPUCCH(物理上りリンク制御チャネル)での送信すべてをまとめて対象とすることができる。
【0148】
本発明の別の実施形態においては、少なくとも1つの上りリンクリソース割当てが受信され、上りリンクリソース割当てそれぞれは、複数のコンポーネントキャリアの1つにおいてプロトコルデータユニットの1つを送信するためのリソースを、ユーザ機器に割り当てる。受信された上りリンクリソース割当てそれぞれに対して、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信されるプロトコルデータユニットが生成される。プロトコルデータユニットそれぞれは、受信された上りリンクリソース割当ての1つに従って、コンポーネントキャリアの対応する1つを介して送信される。
【0149】
本発明の別の実施形態によると、受信された上りリンクリソース割当てそれぞれに対してプロトコルデータユニットを生成するステップは、MAC制御要素をプロトコルデータユニットの少なくとも1つに多重化するステップ、を含んでいる。本発明のさらなる実施形態においては、MAC制御要素は、プロトコルデータユニットのうちの1つに、またはプロトコルデータユニットのそれぞれに、多重化される。プロトコルデータユニットは、例えば、連結式論理チャネル優先順位付け手順(joint logical channel prioritization procedure)を実施することによって、生成することができる。
【0150】
本発明の有利な実施形態によると、コンポーネントキャリアそれぞれが優先順位を有し、MAC制御要素は、リソース割当てが受信された対象のコンポーネントキャリアのうち優先順位が最も高いコンポーネントキャリア、上で送信されるプロトコルデータユニットに多重化される。
【0151】
本発明の代替実施形態においては、コンポーネントキャリアそれぞれが優先順位を有し、MAC制御要素は、リソース割当てが受信された対象のコンポーネントキャリアのうち、最も低いブロック誤り率を達成しており、最大の電力ヘッドルームを有するかまたはチャネル品質が最良であるコンポーネントキャリア、上で送信されるプロトコルデータユニットに多重化される。
【0152】
本発明のさらなる実施形態においては、推定される送信電力は、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのためのリソース割当てと、送信電力制御機能の状態とに基づいて、推定される。
【0153】
本発明のさらなる実施形態によると、ユーザ機器が使用することのできる最大値に対する割合としてのしきい値を示す無線リソース制御シグナリングが、基地局装置から受信される。示された割合に従ってしきい値が設定される。
【0154】
本発明の別の実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の電力状態を基地局装置に通知する別の代替方法、を提供する。所定の数の連続するサブフレーム(監視期間)のそれぞれにおいて、ユーザ機器から基地局装置にプロトコルデータユニットを送信する。ユーザ機器側では、以下の条件、のうちの1つが満たされている場合、ユーザ機器によって送信される所定の数の連続するサブフレームのうちの最後のサブフレームのプロトコルデータユニットに、MAC制御要素を多重化する。その条件とは、
− 連続するサブフレームのそれぞれにおいて、プロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超える、
− 連続するサブフレームのうちのサブセットのサブフレームにおいて、プロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超える、
− 連続するサブフレームにおいてプロトコルデータユニットを送信するのに要求される平均送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超える、
である。
【0155】
MAC制御要素は、該当する条件が満たされたことを基地局装置に示す。
【0156】
本発明のさらなる実施形態においては、サブセットのサブフレームの数は、ユーザ機器において受信される基地局装置からのRRC制御シグナリングによって設定される、または事前に定義される。
【0157】
本発明の別の実施形態によると、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器から基地局装置に送信されるMAC制御要素、を提供する。このMAC制御要素は、所定の数のビットからなる電力ヘッドルームフィールド、を備えており、この電力ヘッドルームフィールドは、MAC制御要素を含んでいるサブフレームにおける複数のコンポーネントキャリア上でのユーザ機器のすべての上りリンク送信、に関するユーザ機器あたりの電力ヘッドルームであって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とする、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルーム、を格納する。
【0158】
本発明のさらなる有利な実施形態においては、MAC制御要素は、
− ユーザ機器がリソース割当てを受信した対象のコンポーネントキャリアの数、または、
− ユーザ機器がリソース割当てを受信した対象のコンポーネントキャリアを示すビットマップ、
を示すコンポーネントキャリアインジケータフィールド、を備えている。
【0159】
本発明の別の実施形態においては、電力ヘッドルームフィールドは、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルーム、またはコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム、のいずれかを備えている。MAC制御要素は、電力ヘッドルームフィールドがユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを備えているのかコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームを備えているのかを示すコンポーネントキャリアインジケータフィールド、を備えている。
【0160】
本発明のさらなる実施形態は、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器から基地局装置に送信されるMACプロトコルデータユニット、を提供する。このMACプロトコルデータユニットは、本明細書に記載されている本発明の実施形態の1つによるMAC制御要素と、MACサブヘッダとを備えている。MACサブヘッダは、MAC制御要素の内容およびフォーマットを示す論理チャネル識別子(LCID)を備えている。
【0161】
本発明の別の実施形態によると、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の電力状態を基地局装置に通知するユーザ機器、が提供される。ユーザ機器の判定部は、サブフレームにおいてそれぞれのコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超えるかを判定する。ユーザ機器のプロトコルデータユニット生成部は、しきい値を超える場合、MAC制御要素をプロトコルデータユニットに多重化する。ユーザ機器の送信部は、MAC制御要素を含んだプロトコルデータユニットを、サブフレームにおいて基地局装置に送信する。MAC制御要素は、生成されたプロトコルデータユニットを上りリンクで送信するためにユーザ機器によって消費される送信電力がしきい値を超えたことを、基地局装置に示す。
【0162】
本発明の有利な実施形態においては、MAC制御要素は、サブフレームにおいて送信される上りリンクプロトコルデータユニットすべてに関連する、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを、基地局装置に提供する。
【0163】
本発明の別の実施形態においては、ユーザ機器の受信部が、少なくとも1つの上りリンクリソース割当てを受信する。各上りリンクリソース割当ては、複数のコンポーネントキャリアの1つにおいてプロトコルデータユニットの1つを送信するためのリソースを、ユーザ機器に割り当てる。ユーザ機器のプロトコルデータユニット生成部は、受信された上りリンクリソース割当てそれぞれに対して、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信されるプロトコルデータユニットを生成する。送信部は、プロトコルデータユニットそれぞれを、受信されたリソース割当ての1つに従って、対応する1つのコンポーネントキャリアを介して送信する。
【0164】
本発明のさらなる実施形態によると、コンポーネントキャリアそれぞれが優先順位を有し、ユーザ機器のプロトコルデータユニット生成部は、リソース割当てが受信された対象のコンポーネントキャリアのうち優先順位が最も高いコンポーネントキャリア上で送信されるプロトコルデータユニットに、MAC制御要素を多重化する。
【0165】
本発明の別の実施形態においては、コンポーネントキャリアそれぞれが優先順位を有し、ユーザ機器のプロトコルデータユニット生成部は、リソース割当てが受信された対象のコンポーネントキャリアのうち、最も低いブロック誤り率を達成しており、最大の電力ヘッドルームを有するかまたはチャネル品質が最良であるコンポーネントキャリア、上で送信されるプロトコルデータユニットに、MAC制御要素を多重化する。
【0166】
本発明のさらなる実施形態においては、ユーザ機器の電力制御部が電力制御を実行し、判定部は、推定される送信電力を、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのためのリソース割当てと、送信電力制御機能の状態とに基づいて、求める。
【0167】
本発明の有利な実施形態によると、ユーザ機器の受信部は、ユーザ機器が使用することのできる最大値に対する割合としてしきい値を示す無線リソース制御シグナリングを、基地局装置から受信する。ユーザ機器の設定部は、示された割合に従ってしきい値を設定する。
【0168】
本発明のさらなる実施形態は、命令を格納しているコンピュータ可読媒体であって、命令がユーザ機器のプロセッサによって実行されたとき、それに起因して、ユーザ機器が、コンポーネントキャリアのアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて、ユーザ機器の電力状態を基地局装置に通知する。この通知は、次のように行われる。サブフレームにおいてそれぞれのコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総UE送信電力を基準とするしきい値を超えるかを判定する。しきい値を超える場合、MAC制御要素をプロトコルデータユニットに多重化する。MAC制御要素を含んだプロトコルデータユニットを、サブフレームにおいて基地局装置に送信する。MAC制御要素は、生成されたプロトコルデータユニットを上りリンクで送信するためにユーザ機器によって消費される送信電力がしきい値を超えたことを、基地局装置に示す。
【0169】
以下では、本発明について、添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。図面において、類似または対応する細部には同じ参照数字を付してある。
【発明を実施するための形態】
【0171】
以下では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。これら実施形態のほとんどは、[背景技術]において説明したLTE−Advanced(LTE−A)移動通信システムに従った直交シングルキャリア上りリンク無線アクセス方式に関連して概説してあるが、これは例示を目的としているにすぎない。本発明は、例えば前述したLTE−Advanced通信システムなどの移動通信システムと組み合わせたときに有利に使用できるが、本発明は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
【0172】
[背景技術]における説明は、本明細書に記載した主としてLTE−Advancedに関連する特定の例示的な実施形態を深く理解することを目的としており、移動通信ネットワークにおけるプロセスおよび機能の、説明した特定の実施に本発明を制限するものではないことを理解されたい。しかしながら、本文書に提案する改良は、[背景技術]に説明したアーキテクチャ/システムにおいてただちに適用することができ、本発明のいくつかの実施形態においては、これらのアーキテクチャ/システムの標準的な手順および改良された手順を利用することもできる。
【0173】
以下では、本発明の態様および実施形態について例示的に説明するが、ユーザ機器において上りリンク送信に利用可能な送信電力(最大総UE送信電力)は、コンポーネントキャリアごとに設定されるのではなく、ユーザ機器あたりの値であるものと想定する。したがって、1つのコンポーネントキャリアにおける電力設定は、別のコンポーネントキャリアにおける電力設定に影響する。ユーザ機器が、割り当てられているコンポーネントキャリアのうちのいくつかのコンポーネントキャリアのみについて電力ヘッドルーム報告を含めるならば、基地局装置は、そのサブフレームを送信するのにユーザ機器によって実際に消費された電力を求めることができず、その後のサブフレームの1つにおいて送信に要求される以上の電力がユーザ機器に利用可能であるのか(すなわち電力ヘッドルームが存在する)、またはすでに問題が発生してユーザ機器が電力制限状況に達しており、いくつかのコンポーネントキャリアにおいて基地局装置による要求よりも小さい電力ですでに送信しているかを、判定することができない。なお、ユーザ機器が電力制限状況に達するとは、ユーザ機器が使用する電力が、上りリンク送信に利用可能な最大総UE送信電力に等しいかそれより大きいことを意味する。
【0174】
本明細書において前述したように、本発明の第1の態様は、ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているとき、すなわち、最大総UE送信電力(「ユーザ機器の最大総送信電力」または「ユーザ機器の最大総UE送信電力」とも称する)を使用する状況に近い、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を超える送信電力の使用が要求されるとき、ユーザ機器がそのことを基地局装置に示すことができるようにすることである。
【0175】
なお、本文書では、サブフレームにおいて(MAC)プロトコルデータユニットまたはトランスポートブロックを送信することは、それぞれのコンポーネントキャリアにおけるそれぞれのプロトコルデータユニットに対して、ユーザ機器が使用可能なリソース割当てが存在していたことを意味する。「使用可能な」とは、これらのコンポーネントキャリアそれぞれのリソースをユーザ機器に割り当てることができることを意味する。ただし、ユーザ機器が所与のサブフレームにおいて(プロトコルデータユニットまたはトランスポートブロックの形で)データを送信することのできるコンポーネントキャリアは、(例えば基地局装置に実施されている)スケジューラによって決定され、ユーザ機器へのリソース割当てによって制御される。
【0176】
ユーザ機器の使用可能な(上りリンク)コンポーネントキャリアは、本明細書においては、設定されている(上りリンク)コンポーネントキャリアとも称する。本明細書におけるほとんどの例では、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアはアクティブであるものと想定しており、すなわち、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアとアクティブなコンポーネントキャリアは同義語である。この場合、ユーザ機器は、設定されているコンポーネントキャリアにおいてスケジューリングできるものと想定することができる。したがって、ユーザ機器の電力状態の報告は、ユーザ機器がスケジューラからのリソース割当てを受信することのできるコンポーネントキャリア、すなわち設定されているコンポーネントキャリア(または利用可能なコンポーネントキャリア)について行われる。
【0177】
なお、コンポーネントキャリアの設定/非設定状態に加えて、オプションとして、設定されているコンポーネントキャリアに対して、アクティブ/非アクティブ状態をさらに定義することができる。この場合、ユーザ機器は、設定されておりアクティブであるコンポーネントキャリアについて、リソース割当てを受信することができ、すなわちユーザ機器は、設定されている(すなわちアクティブな)上りリンクコンポーネントキャリアにおける上りリンクリソースを割り当てるリソース割当て(例:PDCCH)を監視する。本発明は、これら2種類の状態が区別されるシステム、例えば、コンポーネントキャリアの状態として、設定されていない、設定されているが非アクティブである(「非アクティブ」)、設定されておりアクティブである(「アクティブ」)、が存在するシステムにおいても、適用することができる。これらのシステムでは、本明細書に記載されている複数の異なる態様の1つによる、ユーザ機器の電力状態の報告は、ユーザ機器のアクティブな上りリンクコンポーネントキャリアについてのみ実行することができる。さらに、このタイプのシステムでは、本発明のさまざまな例示的な実施形態の説明における「設定されているコンポーネントキャリア」は、設定されておりかつアクティブなコンポーネントキャリア(略してアクティブなコンポーネントキャリア)に相当する。
【0178】
さらには、本文書においては、「割り当てられているコンポーネントキャリア」上での送信とは、ユーザ機器がリソース割当て(スケジューリンググラント、(略して)グラント、またはPDCCHとも称する)を受信した対象のコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニット(MAC PDU)を送信することを意味する。
【0179】
本発明の第1の態様の例示的な一実施例においては、ユーザ機器は、サブフレームにおいて送信電力に電力スケーリングを適用したことを示すインジケータによって、自身の上りリンクの電力状態を基地局装置にシグナリングする。このインジケータは、設定されているかまたは割り当てられているコンポーネントキャリアそれぞれに対して個別に提供することができ、すなわちユーザ機器は、割り当てられている各コンポーネントキャリアについて、それぞれのコンポーネントキャリア上で送信するための送信電力をスケールダウンしたかを示すため、複数のインジケータをプロトコルデータユニットに含めることができる。例えば、ユーザ機器は、各サブフレームのプロトコルデータユニット(MAC PDU)の中でインジケータを送信することができる。インジケータは、例えば、MAC PDUの1つまたは複数のMACサブヘッダに含めることができる。
【0180】
割り当てられているコンポーネントキャリアごとに電力状態インジケータを提供するべきである場合、各インジケータを、設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアに関連付けることができるように、例えば、割り当てられているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上でユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニット(MAC PDU)に、それぞれのインジケータを多重化することができる。これは、例えば、あるコンポーネントキャリアの電力状態インジケータが、そのコンポーネントキャリア上で送信されるプロトコルデータユニット(MAC PDU)に多重化されるようにすることで、達成することができる。
【0181】
ユーザ機器がその最大総UE送信電力に実際に達する前に、ユーザ機器の電力状態を示すべきである場合(上りリンク電力状態のプロアクティブ式通知)、最大総UE送信電力を基準とする1つまたは複数のしきい値(例えば、特定の割合)を定義することができ、このしきい値を超えたとき、電力状態インジケータを設定するようにユーザ機器をトリガーする。インジケータは、設定されているとき、ユーザ機器が最大総UE送信電力を使用する状況に近い(すなわちしきい値を超えた)ことを基地局装置に示す。
【0182】
オプションとして、設定されているかまたは割り当てられているコンポーネントキャリアごとに、設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアの最大送信電力に関連する電力状態インジケータおよびしきい値を、個別に定義することができる。したがって、設定されているかまたは割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれに対してインジケータを個別にシグナリングすることができ、インジケータは、例えば、MAC PDUの1つまたは複数のMACサブヘッダに含めることができる。
【0183】
本発明の第1の態様における別の第2の例示的な実施例においては、リソース割当ておよび電力制御コマンドの結果として、ユーザ機器が所与のサブフレームにおけるMAC PDUの送信に電力スケーリングを適用しなければならない場合、ユーザ機器は、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告(コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告とも称する)を送信する。コンポーネントキャリアあたりの(CCあたりの)電力ヘッドルーム報告は、インジケータと一緒に送信され、このインジケータは、所与のサブフレームにおいてプロトコルデータユニットを送信するのに要求される推定される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えることによって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す。これに代えて、インジケータは、このような状況に起因して、所与のサブフレームにおける送信にユーザ機器によって電力スケーリングが適用されたことを示すものと解釈することもできる。
【0184】
したがって、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力が、ユーザ機器の最大総送信電力を超えるとき、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアすべてについての、非周期的な、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされ、ユーザ機器によって送られる。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報は、例えば、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告をMAC制御要素の中で伝えるMAC PDUのMACサブヘッダに含めることができる。
【0185】
この第2の例示的な実施例は、ユーザ機器の電力状態をプロアクティブ式に報告するように修正することもできる。上に説明した例と同様に、最大総UE送信電力を基準とする1つまたは複数のしきい値を定義することができ、しきい値を超えたとき、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を送るようにユーザ機器をトリガーする。コンポーネントキャリアに対して利用可能なグラントが存在しない場合、ユーザ機器は、そのコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームを、例えば何らかの事前に定義される上りリンクグラントまたは事前に定義されるPUSCH電力に基づいて計算することができる。
【0186】
さらには、オプションとして、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を、ユーザ機器の最大総送信電力またはそれを基準とするしきい値を超えたことによって電力ヘッドルーム報告がトリガーされたことを示す指示情報と一緒に送ることができる。このような指示情報は、例えば、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告を伝えるMAC制御要素のMACサブヘッダに含めることができる。
【0187】
本発明の第1の態様におけるさらなる第3の例示的な実施例によると、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアの最大送信電力に適用された電力低減量を、基地局装置に報告する。あるいは、コンポーネントキャリアに対する電力低減量の代わりに、コンポーネントキャリアに固有な電力低減を適用した後の、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの有効な最大送信電力を、基地局にシグナリングすることができる。電力低減量は、例えば、ユーザ機器の設定されている上りリンクコンポーネントキャリアごとにシグナリングすることができる。あるコンポーネントキャリアに対する電力低減において、設定されている別のコンポーネントキャリア上での送信を考慮する場合、これらのコンポーネントキャリアに適用される電力低減量を等しくすることができる(ただし必須ではない)。さらなる一例においては、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれについて、電力低減量と電力ヘッドルーム報告とを一緒に基地局装置にシグナリングすることができる。
【0188】
ユーザ機器の電力状態に関する情報は、所与のサブフレームのMAC PDUの中に含まれる1つまたは複数のMAC制御要素の形でシグナリングすることができる。
【0189】
本発明の別の第4の例示的な実施例においては、ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているとき、そのことを基地局装置に示すことを可能にする新規のMAC制御要素を定義する。この新規のMAC制御要素は、対応する指示情報を基地局装置に提供し、1つのサブフレームにおいて、(割り当てられている)それぞれのコンポーネントキャリア上で送信される1つまたは複数のプロトコルデータユニットに、ユーザ機器によって挿入される。
【0190】
このMAC制御要素は、サブフレームのプロトコルデータユニットに挿入することができる。例えば、このMAC制御要素は、サブフレームにおいてユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニットの1つに、またはサブフレームにおいてユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニットすべてに、挿入することができる。
【0191】
さらには、プロトコルデータユニットに挿入される制御要素は、ユーザ機器がその最大総UE送信電力に近づいていることを示すことに加えて、ユーザ機器あたりの(UEあたりの)電力ヘッドルームをさらに示すことができる。ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、例えば、サブフレームにおいて(MAC制御要素が含まれている)プロトコルデータユニットを送信するときにユーザ機器によって使用されない送信電力であって、ユーザ機器の最大総送信電力を基準とする送信電力、を示す。MAC制御要素の中で示されるこの電力ヘッドルームは、LTEリリース8/9において示される電力ヘッドルームとは異なり、サブフレームの中の割り当てられているかまたは設定されているコンポーネントキャリアすべて(すなわち複数のコンポーネントキャリア)における送信(プロトコルデータユニット)を考慮しており、したがって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームではなく、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームである。
【0192】
本発明の例示的な一実施形態においては、このユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、上りリンクの物理データチャネルを介してプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力のみならず、物理制御チャネルを介して制御シグナリングを送信するのに要求される送信電力も考慮する。したがって、さらに詳細な一実施例においては、物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)および物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)を介して、割り当てられているかまたは設定されているコンポーネントキャリア上でユーザデータおよび制御データ(プロトコルデータユニット)を送信するのに要求される送信電力、を考慮する。
【0193】
本発明の第1の態様における第5の例示的な実施例においては、ユーザ機器は、電力が制限される状態になる可能性があるとき、または電力が制限されているとき、すなわち、自身の最大総UE送信電力を使用する状況に近いとき、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を超える送信電力の使用が要求されるときに、1つのサブフレームの中の割り当てられているコンポーネントキャリアすべてについて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームを送る。したがって、推定される送信電力が、所与のしきい値または最大総UE送信電力(いずれか使用する方)を超えるとき、そのことをトリガーとして、これらのイベントの一方または両方が起きたサブフレームにおいて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を生成して送信する。
【0194】
なお、本発明の例示的な実施形態によると、割り当てられているかまたは設定されているコンポーネントキャリアすべてについての、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告は、電力ヘッドルーム報告の対象である割り当てられているかまたは設定されているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信される。設定されているコンポーネントキャリアすべてを報告するとき、所与のサブフレームの中の設定されているコンポーネントキャリアすべてにリソースが割り当てられていない場合、ユーザ機器は、設定されているコンポーネントキャリアのうち、所与のサブフレームにおいて上りリンクリソース割当てが適用可能ではないコンポーネントキャリアについては、事前に定義されたリソース割当てあるいは事前に定義されたPUSCH電力を想定することができる。
【0195】
この第5の例示的な実施例においては、割り当てられているコンポーネントキャリアそれぞれの電力ヘッドルーム報告を制御する禁止タイマーが使用されている場合、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告をその時点のサブフレームにおいて送ることができるように、このタイマーを上書き/無視することができる。
【0196】
本発明の例示的な代替実施形態においては、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を、割り当てられているコンポーネントキャリアのうちの1つにおいて、1つのプロトコルデータユニットの中で送信することもできる。この例では、例えば、電力ヘッドルーム報告にコンポーネントキャリア識別子を含めることによって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告それぞれが対象とするコンポーネントキャリを識別することができる。これに代えて、割り当てられているかまたは設定されているコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームを、それぞれが対象とするコンポーネントキャリアの優先順位の順序で示す、新規のMAC制御要素を定義することができる(「全コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告」)。
【0197】
さらには、本発明の第1の態様および第2の態様において、ユーザ機器が電力制限状況に近づいている(または電力制限状況にある)かの判定は、さまざまな方法で行うことができる。例示的な一実施例においては、ユーザ機器は、サブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するために消費しなければならない送信電力を求め(より正確には推定し)、求めた(推定した)送信電力をしきい値と比較する。このしきい値は、例えば、最大総UE送信電力に対する特定の割合(例えば80%〜100%の範囲内)とすることができる。上りリンクコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するのに要求される送信電力は、例えば、送信電力制御式を使用して求めることができる。別の例示的な実施例においては、ユーザ機器は、所与の数の連続するサブフレーム(すなわち監視期間)について、サブフレームにおいて割り当てられているコンポーネントキャリア上でプロトコルデータユニットを送信するために消費なければならない送信電力を求め(より正確には推定し)、電力制限状況を示すMAC制御要素を、この監視期間の最後のサブフレームのプロトコルデータユニットに含めるかを、後からさらに説明する基準に基づいて、決定する。
【0198】
本発明の第1の態様のさまざまな実施例のいずれを使用する場合にも、基地局装置は、シグナリングされた電力状態情報によって、電力状態情報をシグナリングしたユーザ機器それぞれの電力状態を導くことが可能である。基地局装置のスケジューラは、例えば、ユーザ機器への動的なリソース割当てもしくはセミパーシステントなリソース割当てまたはその両方において、それぞれのユーザ機器の電力状態を考慮することができる。
【0199】
本発明の別の第2の態様は、上りリンクにおけるキャリアアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて電力ヘッドルームを報告するときの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの定義を提案することである。1つの例示的な定義によると、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、使用される上りリンク送信電力との差として定義される。3GPPシステムでは、使用される上りリンク送信電力は、送信PUSCH電力とも称される。あるいは、使用される上りリンク送信電力が送信PUCCH電力をさらに含んでいることもできる。
【0200】
使用される上りリンク送信電力では、電力スケーリング(適用されている場合)が考慮されるため、それぞれのサブフレームにおいて上りリンクコンポーネントキャリア上でMAC PDUを送信するのに要求される、電力制御式の結果としての推定される送信電力とは異なることがある。したがって、使用される送信電力は、推定される送信電力と電力スケーリング係数の積に等しいと考えることができる。電力スケーリングが適用されていない(スケーリング係数=1)場合、これら2つの送信電力値は等しい。
【0201】
これに代えて、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームは、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力と、推定される送信電力との差として、定義することができる。推定される上りリンク送信電力は、3GPPシステムでは、推定PUSCH電力とも称される。推定される上りリンク送信電力または推定PUSCH電力は、例えば、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアの電力制御式によって計算することができる。
【0202】
さらには、(設定されている)上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力では、サブフレームの中の1つまたは複数の別の上りリンクコンポーネントキャリア上で同時に送信することに起因する電力低減を考慮することができる。したがって、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアの最大送信電力は、最大総UE送信電力と同じではないことがある。
【0203】
本発明の第2の態様による、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告の形で提供することができる。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告は、例えば、MAC PDUの中のMAC制御要素の形でシグナリングされる。上述したように、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を伝えるMAC制御要素と、MAC PDUのヘッダセクション内のMACサブヘッダとを関連付けることができ、このMACサブヘッダは、電力スケーリングが要求されるユーザ機器の電力制限状況によって、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームがトリガーされたことを示す目的で使用することができる。
【0204】
以下では、本発明のさまざまな実施形態について説明する。これらの実施形態における想定として、ユーザ機器は、キャリアアグリゲーションを使用する移動通信システムにおいて動作し、ユーザ機器に複数のコンポーネントキャリアが設定されている、すなわちユーザ機器は、個々のサブフレームにおいて複数のコンポーネントキャリア上で上りリンクデータを同時に送信できる。上りリンク送信は、スケジューラによって、リソース割当てを通じてスケジューリングされるものと想定する。リソースは、セミパーシステントに割り当てる、またはサブフレーム毎/TTI毎ベースで、割り当てることができる。スケジューラは、例えば、基地局装置の中に実装されている。
【0205】
さらには、スケジューラは、所与のサブフレームに対して、設定されている複数のコンポーネントキャリアのうちの1つまたは複数(最大で全数)を割り当てることができ、ユーザ機器は、割り当てられている各コンポーネントキャリア(すなわちリソース割当てが受信された対象の各コンポーネントキャリア)において、それぞれのトランスポートブロック/プロトコルデータユニットを送信する。なお、上りリンクにおいてMIMOを使用するときには、1つのサブフレームにおいて1つのコンポーネントキャリア上で2つ以上のプロトコルデータユニットを送信することができ、コンポーネントキャリアあたりのプロトコルデータユニットの実際の数は、MIMOの方式に依存する。3GPPの術語を使用するとき、リソース割当ては、グラントまたはPDCCHとも称される。さらに、ユーザ機器に設定されているコンポーネントキャリアごとに送信電力ループを実装することができ、すなわち、ユーザ機器および基地局装置に実装されている送信電力制御機能は、コンポーネントキャリアそれぞれに対して個別に送信電力制御を実行する。
【0206】
さらには、本発明のさらなる例示的な実施形態においては、サブフレームにおいて送信するプロトコルデータユニットを生成するときに、連結式論理チャネル優先順位付け手順を使用することができる。このような連結式論理チャネル優先順位付け手順のさまざまな例示的な実施形態は、同時係属中の特許文献1および同時係属中の特許文献2に記載されている。以下では、これら2つの欧州特許出願を出願1および出願2と称する。
【0207】
<ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームのMAC制御要素>
図8は、本発明の第1の態様に基づく本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。ユーザ機器は、所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(801)、割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(802)。本発明の例示的な一実施形態においては、送信電力は、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのための受信したリソース割当てと、ユーザ機器の送信電力制御機能の状態とに基づいて、ユーザ機器によって推定される。例えば、ユーザ機器は、トランスポートブロックそれぞれに必要な送信電力を、トランスポートブロックが配置されているコンポーネントキャリアと、コンポーネントキャリアの送信電力機能の状態とに基づいて、推定することができる。この場合、推定される送信電力は、割り当てられているすべてのトランスポートブロックの個々の送信電力の合計である。
【0208】
次いで、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が特定のしきい値を超えるかを判定する(803)。このしきい値は、
図8の例では、ユーザ機器の最大総UE送信電力(MATP)に対する特定の割合Pとして定義されている。なお、このステップは、推定される送信電力(ETP)と最大総UE送信電力(MATP)の比がしきい値(割合Pに等しい)を超えるか(すなわち(ETP/MATP)>P)を判定することと同等である。
【0209】
しきい値を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがってユーザ機器は、次いで、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成し(804)、それらのプロトコルデータユニット(物理層ではトランスポートブロックと称される)を、割り当てられているコンポーネントキャリアを介して基地局装置に送信する(805)。なお、プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。
【0210】
しきい値を超える場合、ユーザ機器は、すべての送信を対象とするユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを、リソース割当てに従って求める(806)。上に説明したように、このユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、割り当てられているコンポーネントキャリア上で所与のサブフレームにおいて送信されるすべてのプロトコルデータユニットを対象として求められる。ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームは、本質的には、サブフレームにおいてプロトコルデータユニットを送信するのに使用される送信電力(推定される送信電力)のほかに、ユーザ機器の最大総UE送信電力に対してどれくらいの送信電力が残っているかを示す。単純に言えば、電力ヘッドルーム(PH)は、ユーザ機器の最大総UE送信電力と、推定される送信電力との差を示す(すなわちPH=MATP−ETP)。
【0211】
さらに、ユーザ機器は、求めたユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを含んだMAC制御要素(「ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素(MAC CE)」)を生成し(807)、このユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素をプロトコルデータユニット生成部に提供する。プロトコルデータ生成部は、ステップ804と同様に、送信するプロトコルデータユニットを、リソース割当てに従って生成する(808)。ただし、ステップ808における生成プロセスにおいて、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素は、実装に応じて、プロトコルデータユニットのうちの1つ、またはすべてのプロトコルデータユニットに含められる。次いで、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいる、生成されたプロトコルデータユニットを、割り当てられたリソースで基地局装置に送信する(809)。
【0212】
図11は、本発明の実施形態による、LTE−Aシステムにおける電力ヘッドルーム報告を示しており、
図8によるユーザ機器の例示的な動作が採用されている。ユーザ機器の動作は、ほとんどの状況において、
図10に関連して前述したユーザ機器の動作と同じである。
図10とは異なる点として、ユーザ機器は、T
6において、サブフレームの3つのコンポーネントキャリアすべてに対して3つのリソース割当てを受信しているが、送信電力制御機能によって算出されるゲイン係数が高く、そのリソース割当てに従って推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える(
図8のステップ803を参照)ものと想定する。したがって、この場合、ユーザ機器は、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを求め、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素(以下では電力制限MAC制御要素とも称する)を、コンポーネントキャリアCoCa1上で送信されるプロトコルデータユニットに多重化する。基地局装置におけるスケジューラは、この上りリンク送信を受信すると、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素に基づいて、ユーザ機器が電力制限状況にあることを検出し、それに応じてユーザ機器のさらなるスケジューリングもしくは電力制御またはその両方を適切に行うことができる。
【0213】
上の説明から明らかであるように、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素は、基本的には2つの機能を果たす。第1の最も重要な機能として、基地局は、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素を受信することによって、サブフレームにおける上りリンク送信のための送信電力に問題が生じていることを認識する。第2の機能として、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素は、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを報告し、したがって、ユーザ機器における正確な電力状況に関するさらに詳細な情報を基地局装置に提供する。
【0214】
本発明の別の実施形態による、例示的な代替の一実施例においては、ユーザ機器は、推定される送信電力がしきい値を超える場合、電力制限MAC制御要素を、上りリンクで送信されるプロトコルデータユニットにただちには含めない。例えば、しきい値を超える場合、ユーザ機器は、電力制限MAC制御要素をただちに送信する代わりに、特定の数のサブフレーム(すなわちサブフレームの監視期間)について、推定される送信電力の監視を開始する。所与の数のサブフレームを監視した後、ユーザ機器は、次のサブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットに電力制限MAC制御要素を含めるか否かを、特定の基準に従って決定する。電力制限MAC制御要素を挿入することを決定した場合、ユーザ機器は、例えば監視期間中に送信される最後のサブフレームにおいて、電力制限MAC制御要素を送信することができる。
【0215】
この基準は、例えば以下とすることができる。
− 監視期間内のサブフレームそれぞれにおいて、上りリンク送信の推定される送信電力が、しきい値より高かった。
− 監視期間内のいくつかのサブフレームにおいて、上りリンク送信の推定される送信電力が、しきい値より高かった。監視期間の最後に電力制限MAC制御要素を送信するうえで要求されるサブフレームの数は、基地局によってユーザ機器ごとにRRCシグナリングを通じて設定される、あるいは、仕様に定義される固定値に設定することができる。
− 監視期間内のサブフレームにおける上りリンク送信の推定される送信電力の平均値が、しきい値より高かった。
【0216】
所与の期間(すなわち特定の数のサブフレーム)について、推定される送信電力を監視する利点として、しきい値を超えた時点でただちに電力制限MAC制御要素が報告されることがなく、これにより、一時的にしきい値を超えるのみである場合、電力制限状況が不必要に基地局装置に報告されることを回避することができる。しかしながら、電力制限MAC制御要素は緊急的な状況を基地局装置に示すものであり、基地局装置は、電力制限MAC制御要素を受信した後に対策をとる必要があるため、監視期間を導入する欠点として、ユーザ機器の送信電力が実際にしきい値を超えた場合に、電力制限MAC制御要素の送信が遅れる。
【0217】
本発明のさらなる代替実施形態においては、ユーザ機器に対して2つのしきい値が設定される。第2の「さらなる」しきい値は、例えば、同様に基地局装置がRRCシグナリングによって設定することができる。この第2のしきい値も、例えば、ユーザ機器の最大総UE送信電力のうちの一部分とすることができ、ただし、第1のしきい値よりも高いことが好ましい。この場合も、上に説明した例示的な実施形態と同様に、ユーザ機器は、サブフレームそれぞれについて、サブフレームの推定される送信電力が第1のしきい値を超えるかを判定する。YESである場合、すなわち、あるサブフレームにおいて第1のしきい値を超える場合、ユーザ機器は、上に説明したように、例えば所与の監視期間における推定される送信電力の監視を開始する。監視期間内のサブフレームの推定される送信電力が第2のしきい値を超える場合、ユーザ機器は、推定される送信電力が第2のしきい値を超えるサブフレームの中で、電力制限MAC制御要素を送信する。
【0218】
本発明の別の代替実施形態においては、ユーザ機器は、サブフレームにおいて割り当てられているコンポーネントキャリアを介して送られるプロトコルデータユニットのそれぞれに、電力制限MAC制御要素を多重化する。この方式の利点として、基地局装置による制御要素の受信の信頼性が高まる。
【0219】
<ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素の報告フォーマット>
ユーザ機器の電力が制限される状態になる可能性があることを示す、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素(「電力制限MAC制御要素」)のフォーマットは、
図7に例示的に示したように、LTEリリース8/9において電力ヘッドルーム報告に使用されるMAC制御要素をベースとすることができる。電力ヘッドルームMAC制御要素は、8ビット(すなわち1オクテット)からなる。最初の2ビットは予約ビットであり、残りの6ビットが電力ヘッドルームを示している。本発明の一実施形態においては、このフォーマットを維持するが、
図7に示したMAC制御要素のフォーマットの6ビットのPHフィールドには、ユーザ機器によって求められたユーザ機器あたりの電力ヘッドルームが含まれる(例えば
図8のステップ806を参照)。オプションとして、本発明の一実施形態においては、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを計算するとき、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームとして、PUSCHでの送信のみならず、PUCCHでの送信も考慮する。
【0220】
LTEリリース8/9の電力ヘッドルームMAC制御要素と、電力制限MAC制御要素とを区別する目的で、
図7に示したオクテットの2個の予約ビット(R)の一方(例えばオクテットの最上位ビット)を使用して、電力ヘッドルームMAC制御要素と電力制限MAC制御要素(すなわちユーザ機器あたりの電力ヘッドルームの制御要素)とを区別する。例えば、オクテットの最上位ビットが0に設定されている場合、MAC制御要素は、(対応する)コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告(すなわち、特定のコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームを報告するコンポーネントキャリアあたりのMAC制御要素)を示している(したがって電力ヘッドルームを報告するコンポーネントキャリアあたりのMAC制御要素は、コンポーネントキャリアに固有なMAC制御要素である)。このビットが1に設定されている場合、電力制限MAC制御要素であり、報告される電力ヘッドルームはユーザ機器あたりの電力ヘッドルームである。なお、電力制限MAC制御要素(すなわちユーザ機器あたりの電力ヘッドルームの制御要素)はユーザに固有であるものと考えることができ、したがって、電力制限MAC制御要素は、ユーザ機器に固有なMAC制御要素と考えることができる。
【0221】
なお、ユーザ機器に固有なMAC制御要素と、コンポーネントキャリアに固有なMAC制御要素とを区別することで、出願2に説明されているように、MAC制御要素の処理と、トランスポートブロック(MACプロトコルデータユニット)に多重化するときの処理が異なりうる。
【0222】
ユーザ機器が電力制限MAC制御要素を送るとき、基地局装置側のさらなる恩恵として、ユーザ機器がすべての上りリンクグラントに正しく従ったか、あるいは1つまたは複数の上りリンクグラントを受信し損ねたかを認識する目的で、ユーザ機器がどのコンポーネントキャリアのリソース割当て(上りリンクグラント)を実際に受信したかを認識することができる。この情報によって、基地局装置は、ユーザ機器が上りリンクグラントの1つまたは複数を受信し損ねたために割り当てられたリソースのいくつかで送信を行わなかった状況において、電力制限状況がすでに存在しているかを判定することができる。
【0223】
したがって、本発明の別の実施形態においては、電力制限MAC制御要素の別の例示的なフォーマットとして、上りリンクグラントが受信された対象のコンポーネントキャリアに関する情報、または受信した上りリンクグラントの数に関する情報を含んでいるフォーマット、を提案する。
【0224】
図14は、本発明の別の実施形態による、電力制限MAC制御要素の例示的なフォーマットを示している。この電力制限MAC制御要素は2つのフィールドからなり、第1のフィールドがCCI(コンポーネントキャリアインジケータフィールド)であり、第2のフィールドが、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを示すPH(電力ヘッドルーム)である。この場合も、電力制限MAC制御要素の長さは1オクテットである。
【0225】
ユーザ機器に5つのコンポーネントキャリアが設定されていると想定すると、リソース割当ての組合せの総数は、2
5=32とおりである。ユーザ機器が、(電力制限MAC制御要素を含んだ)データを、5つのコンポーネントキャリアのうちの1つを介して送信することによって電力制限状況を示す場合、ユーザ機器がそのコンポーネントキャリアの上りリンクグラントを受信したことは明らかである。したがって、それ以外の4つの設定されているコンポーネントキャリアについて、リソース割当ての2
4=16とおりの組合せが残っており、CCIフィールドは、すべての組合せをシグナリングできるように4ビットからなる(例えば、それ以外の4つのうちどのコンポーネントキャリアの上りリンクグラントを受信したかを、ビットマップを用いて示す)。したがって、MAC制御要素のフォーマットの残りの4つのビットをPHフィールドに使用することができ、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームの16個の値を区別することができる。MAC制御要素がシグナリングされた1つのコンポーネントキャリア以外のコンポーネントキャリアについて、上りリンクグラントが受信された対象のコンポーネントキャリアを、例えばビットマップを用いて示すことができる。ビットマップのどのビットがどのコンポーネントキャリアを表すかの実際のマッピングは、例えば、基地局装置がRRCシグナリングによって設定する、あるいは、例えば出願1および出願2に説明されているように、コンポーネントキャリアの優先順位の順序によって決定することができる。
【0226】
別の実施形態においては、
図15に示した、MAC制御要素の別のフォーマットを提案する。CCIフィールドの大きさは3ビットのみであるのに対して、PHフィールドは5ビットである。このフォーマットは、
図7に示した、LTEリリース8/9における電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素のフォーマットを修正したものと考えることができ、2つの予約ビット(R)と、さらにPHフィールドからの1つのビットを、CCIフィールドとして利用している。当然ながら、これにより、報告することのできるユーザ機器あたりの電力ヘッドルーム値のきめ細かさが、6ビットから5ビットに減少する。
【0227】
図15に示した、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを報告するためのMAC制御要素のフォーマットでは、ユーザ機器が上りリンク割当てを受信した対象のコンポーネントキャリアの数を示すと同時に、そのMAC制御要素がLTEリリース8/9の電力ヘッドルームMAC制御要素であるか、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素であるかを示すことができ、
図16および次の表1は、このことを示している。このとき、この新規のユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素に対して、新規の論理チャネル識別子(LCID)を割り当てる必要がなく、LTEリリース8/9における電力ヘッドルームMAC制御要素と、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素とに、同じLCIDを使用することができる。基地局装置は、制御要素の最初の2ビットを調べることにより、LTEリリース8/9における電力ヘッドルームMAC制御要素であるか、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素であるかを判定することができる。
【表1】
【0228】
最初の2ビットがいずれも0に設定されている、すなわち
図7に示した予約ビットがゼロに設定されている場合、そのMAC制御要素は、
図7に示したLTEリリース8/9の電力ヘッドルーム報告である。
【0229】
それ以外の場合、MAC制御要素はユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素である。ユーザ機器によって受信された上りリンクグラントの数は、最初の3つのビットによって表されるため、最初の2ビットが0に設定されていない場合、基地局装置はオクテットの中の3番目のビットも調べる必要がある。残りの5つのビット(
図15を参照)(PHフィールド)は、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームの値を示す。
【0230】
ユーザ機器が電力制限状況にあるときに、そのことが電力制限MAC制御要素によって報告された場合の対応策の1つは、基地局装置が、ユーザ機器において同時にスケジューリングされるコンポーネントキャリアの数を減らすことである。基地局装置において、どのコンポーネントキャリアのリソースをユーザ機器にスケジューリングするかを選択するプロセスを、ユーザ機器が支援するならば有利である。したがって、本発明の別の実施形態においては、電力制限MAC制御要素を使用することで、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルームをPHフィールドでシグナリングするのみならず、基地局装置がリソース割当てをさらに送るべきコンポーネントキャリアを基地局装置に示唆することができる。このことは、一例においては、
図14に関連して前に説明した方法に類似する方法で実施される。上りリンクグラントが受信された対象のコンポーネントキャリアを示す代わりに、基地局装置が引き続きグラントを与えるべきコンポーネントキャリア(電力制限MAC制御要素を伝えるコンポーネントキャリア以外)を示すビットマップを、CCIフィールドの4つのビットを使用してシグナリングすることができる。これに代えて、ビットマップは、基地局装置がグラントを与えることを停止するべきコンポーネントキャリアを示すことができる。
【0231】
本発明のさらなる実施形態においては、
図7に示したMAC制御要素を、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルーム報告に使用する。2つの予約ビットの一方(例えば
図7に示した最初の予約ビット)を使用して、MAC制御要素がLTEリリース8/9の電力ヘッドルームMAC制御要素であるのか、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素であるのかを識別する。いずれの場合も、PHフィールドは6ビットであり、LTEリリース8/9におけるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム、またはユーザ機器あたりの電力ヘッドルームを示す。さらには、MAC制御要素がユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素である場合、この制御要素が送信されたコンポーネントキャリアは、さらにリソースを割り当てるべきであることをユーザ機器が基地局装置に示唆するコンポーネントキャリアである。
【0232】
上記のように、
図7および
図14〜
図16に関連して上に説明したMAC制御要素のフォーマットの利点として、ユーザ機器あたりの電力ヘッドルーム報告のために(LTEリリース8/9とは異なる)新規の論理チャネル識別子を割り当てる必要がない。
図6に示したように、MAC PDUでは、MAC PDUのペイロードに含まれているMAC制御要素のフォーマットは、各MAC制御要素のサブヘッダの中のそれぞれの論理チャネル識別子によって示される。本発明の別の実施形態においては、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素を示すための新規の論理チャネル識別子(LCID)を定義する。したがって、本発明のこの実施形態では、MAC PDUは、サブヘッダ(「ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素のサブヘッダ」)と、関連するMAC制御要素とを備えている。ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素に対するサブヘッダは、関連するMAC制御要素がユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素であることを識別するLCIDを含んでいる。
【0233】
ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素のフォーマットは、
図7、
図14、または
図15に関連して上述した実施形態のいずれかのフォーマットとすることができる。しかしながら、このフォーマットの定義には、LTEリリース8/9の電力ヘッドルームMAC制御要素であることの指示情報を含める必要はなく、なぜなら、LTEリリース8/9の電力ヘッドルームMAC制御要素と、ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素との区別は、MAC PDUのサブヘッダ内のLCIDによって達成されているためである。
【0234】
<ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素を送信するコンポーネントキャリアの選択>
ユーザ機器が、あるサブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットに電力制限MAC制御要素を含めるとき、上りリンク送信に利用可能な送信電力は、すでに残り少ない。したがって、最も信頼性の高いコンポーネントキャリアのトランスポートブロックを選択して、電力制限MAC制御要素を含める必要がある。
【0235】
最も信頼性の高いコンポーネントキャリアを選択するための基準として、以下の条件に基づくことができる。1つのオプションは、「専用セル」であるコンポーネントキャリア、すなわち、ユーザ機器がキャンプオンして(camps on)システム情報を読み取るコンポーネントキャリア、を選択することである。別のオプションは、上りリンク送信に使用される一連のコンポーネントキャリアのうち、物理パラメータが最良であるコンポーネントキャリアを選択することである。パラメータは、例えば、コンポーネントキャリアの目標ブロック誤り率(BLER)または電力ヘッドルームとすることができる。さらには、ユーザ機器がコンポーネントキャリアの優先順位の順序をすでに認識している場合、優先順位の最も高いコンポーネントキャリアでつねに電力制限MAC制御要素を送ることができる。
【0236】
<しきい値の設定>
ユーザ機器は、サブフレームの中のアグリゲートされている少なくとも1つのコンポーネントキャリア上で上りリンク送信するためのリソースがユーザ機器に割り当てられているとき、サブフレームの中のすべての上りリンクグラント(リソース割当て)に従ううえで必要な送信電力を計算することができ、すなわち、そのサブフレームにおいて要求される推定される送信電力を求める。上に説明したように、最大総UE送信電力を基準とするしきい値を設定することができ、最大総UE送信電力とは、本質的には、所与のサブフレームにおけるコンポーネントキャリア上でのすべての上りリンク送信にユーザ機器が消費することが許可される(消費できる)最大送信電力を示す。
【0237】
しきい値は、例えば、基地局装置が最大総UE送信電力を基準として設定することができる。例えば、しきい値は、基地局装置がユーザ機器それぞれに対して個別に設定することができ、しきい値の値は、例えば、RRCシグナリングを介して各ユーザ機器に伝えることができる。例えば、しきい値は、最大総UE送信電力の一部分の値(または割合P)とすることができる。前に説明したように、ユーザ機器が、上りリンクコンポーネントキャリア上でのすべての上りリンク送信用の電力として、しきい値によって定義される電力または最大総UE送信電力よりも多くの電力を必要とする場合、ユーザ機器の電力状態の指示情報(例えば電力制限MAC制御要素)が、サブフレームの上りリンク送信に含められる。
【0238】
なお、ユーザ機器の推定される送信電力が、設定されているしきい値を超えるだけでなく、ユーザ機器の利用可能な最大総電力を超えることもあることに留意されたい。後者の場合、ユーザ機器は、すでに厳しい電力制限状況にあり、基地局装置によって要求されたように上りリンクリソース割当てすべてに従うことができない。
【0239】
さらには、本発明のすべての態様および実施形態において、ユーザ機器の電力状態の報告は、必ずしもプロアクティブ式に行われる(すなわち推定送信電力ETP>P・MATP)必要はなく、しきい値を使用しないこともできる(P=1)ことに留意されたい。このことは、基本的には、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える(すなわちETP>MATP)ときに、電力状態を報告するようにトリガーされることを意味する。この場合、電力状態情報(インジケータ、電力制限MAC制御要素など)は、所与のサブフレームにおいてユーザ機器が電力スケーリングを適用したかを示すが、しきい値を使用する場合には、ユーザ機器が上りリンクコンポーネントキャリアに対して電力スケーリングを使用しなければならなくなる前に、電力状態情報をシグナリングすることができる。
【0240】
<電力スケーリングのフラグ>
本発明の第1の態様に基づく、本発明の別の例示的な実施形態によると、ユーザ機器は、自身の電力状態に関する詳細情報を基地局装置に送信するのではなく、上りリンクの送信に電力スケーリングを適用したか否かを、各送信において基地局装置に示す。この目的のため、ユーザ機器によって送信されるプロトコルデータユニットに、1つまたは複数のインジケータを含めることができる。このインジケータは、電力スケーリングフラグとも称する。電力スケーリングフラグは、割り当てられているコンポーネントキャリアのうちの1つにおいて、または割り当てられているすべてのコンポーネントキャリアにおいて、提供することができる。例えば、あるコンポーネントキャリア上で送信される電力スケーリングフラグは、その割り当てられているコンポーネントキャリア上で送信されるプロトコルデータユニットに含めることができる。
【0241】
本発明の一実施形態によると、電力スケーリングフラグは、LTEリリース8/9のサブヘッダのフォーマットから公知であるMAC PDUサブヘッダの2つの予約/未使用ビットの一方において定義される。電力スケーリング(PS)フラグが設定されている(例:=1)場合、サブフレームにおいて送信するための推定される送信電力がスケールダウンされた、すなわち、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超えたことを示す。PSフラグが設定されていない(例:=0)場合、ユーザ機器はそのサブフレームにおいて電力スケーリングを適用していない。
【0242】
これに代えて、設定されている各コンポーネントキャリアに対して電力スケーリング(PS)フラグが提供される場合、フラグは、設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアの送信電力(例えばPUSCH電力)がスケールダウンされたかを示す。例えば、割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアに対して、物理層においてトランスポートブロック(MAC PDU)と一緒に上りリンク制御情報(UCI)が多重化される場合、割り当てられているこのコンポーネントキャリア上の送信についてはスケールダウンせずに、それ以外の(1つまたは複数の)上りリンクコンポーネントキャリア上の(上りリンク制御情報を含んでいない)他のPUSCH送信に対しては、電力スケーリングを行うことができる。
【0243】
上りリンクにおけるキャリアアグリゲーションを使用する3GPPベースのシステム(例えばLTE−A)では、PSフラグを設定することで、対応するトランスポートブロック(MAC PDU)のPUSCH電力が、電力制限のためスケールダウンされたことを示すことができる。したがって、0に設定されたビットは、電力スケーリングが適用されなかったことを示す。
【0244】
図29は、本発明の実施形態による、例示的なMAC PDUを示している。MAC PDU内にデータを有する論理チャネル(LCIDによって識別される)のRLC PDUが含まれる各MAC SDU(サービスデータユニット)に対して、MAC PDU内に1つのMAC PDUサブヘッダが存在するため、MAC PDU内のMAC PDUサブヘッダのうちの任意の1つ、すべて、またはサブセットに、PSフラグを設定することができる。原理的には、MAC PDUサブヘッダのうちの1つのみ(例えばMAC PDUの最初のMAC PDUサブヘッダ)が、電力スケーリングフラグ(PSフラグ)を含んでいれば十分である。この方式では、MAC PDUサブヘッダの1つにおいて1ビットを設定する(または基地局装置が調べる)のみでよいため、ユーザ機器および基地局装置におけるMAC PDUの処理が単純である。
【0245】
さらには、前に説明したように、電力が制限されているときに電力スケーリングフラグを設定する代わりに、要求される上りリンク送信電力が、事前に定義されるかまたはシグナリングされる、最大許容送信電力のしきい値を超えたときに、フラグが設定されるように定義することができる。
【0246】
本発明の別の例示的な実施形態によると、所与のサブフレームの推定される送信電力が、最大総UE送信電力またはそれを基準とするしきい値を超える場合に、設定されているかまたは割り当てられているコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告をトリガーすることができる。以下ではこの方式についてさらに詳しく説明する。この実施形態においては、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告と、電力状態フラグ(または電力スケーリングフラグとも称する)とを一緒にシグナリングする。したがって、割り当てられているかまたは設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームを含んでいるMAC制御要素に対応するMAC PDUサブヘッダそれぞれにおいて、電力状態フラグが提供される。したがって、この実施形態においては、電力状態フラグは、割り当てられているかまたは設定されている所与のコンポーネントキャリアを対象とする、(MAC PDUのMAC制御要素の中でシグナリングされた)コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告が、その所与のサブフレームの推定される送信電力が最大総UE送信電力またはそれを基準とするしきい値を超えることによってトリガーされたことを示す情報と考えることができる。これに代えて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を含んでいるMAC制御要素自体の中の2つの予約/未使用ビットの一方を使用して、電力状態フラグをシグナリングすることができる。
【0247】
図30は、電力ヘッドルーム報告MAC制御要素に対応するMAC PDUサブヘッダの例示的な実施形態を示しており、このMAC PDUサブヘッダは電力状態フラグを含んでいる。設定されているコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を有するMAC PDUが、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上でシグナリングされる場合、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素に対応するコンポーネントキャリアを識別するさらなる情報は特に存在しない。
【0248】
あるサブフレームの中の設定されているコンポーネントキャリアコンポーネントキャリアのうち、利用可能なリソース割当てが存在しないコンポーネントキャリアを対象とする、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素をシグナリングするとき、ユーザ機器は、そのコンポーネントキャリアの電力ヘッドルームを、例えば、何らかの事前に定義される上りリンクグラントまたは事前に定義されるPUSCH電力に基づいて、計算することができる。設定されているコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を、割り当てられているコンポーネントキャリアにおける1つのMAC PDUの中でシグナリングすることができる。
図31は、ユーザ機器の3つの設定されているコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいる、例示的なMAC PDUを示している。この例示的な実施形態においては、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を、それぞれが報告する対象のコンポーネントキャリアに関連付けることができるように、それぞれのコンポーネントキャリアに対して専用の論理チャネルID(LCID)が定義されている。
【0249】
図21は、本発明の第1の態様に基づく本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。ユーザ機器は、(
図8のステップ801と同様に)所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(2101)、(
図8のステップ802と同様に)割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(2102)。本発明の例示的な一実施形態においては、送信電力は、
図8に関連して上述したように、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのための受信したリソース割当てと、ユーザ機器の送信電力制御機能の状態とに基づいて、ユーザ機器によって推定される。
【0250】
次いで、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が最大総UE送信電力(MATPまたはP
CMAX)を超えるかを判定する(2103)。最大総UE送信電力を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する電力状態報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがってユーザ機器は、次いで、(
図8のステップ804と同様に)割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成する(2104)。なお、プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。例えば、ステップ2104の生成プロセスの一部として、ユーザ機器は、ステップ2104において生成されたMAC PDUの送信に対してユーザ機器が電力スケーリングを適用していないことを示すため、1つまたは複数のインジケータ(すなわち電力スケーリングフラグ)を、MAC PDUの中にさらに設定する(2105)。割り当てられているコンポーネントキャリア上でMAC PDUを送信し(2106)、この場合、各MAC PDUは、それぞれが送信される割り当てられているコンポーネントキャリアに対応する電力スケーリングフラグを、自身のMAC PDUサブヘッダの1つまたは複数の中に含んでいる。
【0251】
ステップ2103において、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える場合、ユーザ機器は、(
図21のステップ2104と同様に)割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成し(2107)、MAC PDUの送信電力(すなわちPUSCH電力)に対してユーザ機器が電力スケーリングを適用したことを示すため、1つまたは複数のインジケータ(すなわち電力スケーリングフラグ)を、MAC PDUの中にさらに設定する(2108)。例えば、各MAC PDUは、割り当てられている対応するコンポーネントキャリアについて、送信において送信電力がスケーリングされたかを示す電力スケーリングフラグを、自身のMAC PDUサブヘッダの1つまたは複数の中に含んでいることができる。
【0252】
さらに、ユーザ機器は、割り当てられている(1つまたは複数の)コンポーネントキャリア上で送信するための合計の送信電力を最大総UE送信電力(に等しいかまたはそれ)以下まで下げる目的で、割り当てられているコンポーネントキャリアの少なくとも1つに電力スケーリングを実行して送信電力を低減する(2109)。上に説明したように、例えば、サブフレームにおいてMAC PDUと一緒に上りリンク制御情報が送信されるコンポーネントキャリア(すなわち上述したようにUCIを有するPUSCHとも称する)については、そのコンポーネントキャリア上での送信に電力スケーリングを適用しないようにすることができる。次いで、MAC PDUを、割り当てられているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で、低減された送信電力を使用して送信する(2110)。
【0253】
なお、
図21におけるステップ2107〜ステップ2110の順序は、時間的に正しい順序ではないことがあり、なぜなら、(上の説明から明らかであるように)いくつかのステップは順序が入れ替わることがあるためである。
【0254】
<1サブフレーム内で同時に送信されるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告>
本発明の第1の態様に基づく、ユーザ機器の電力制限状況を基地局装置に通知する方法の、本発明の別の代替実施例および実施形態においては、ユーザ機器が自身の最大総UE送信電力を使用する状況に近いこと、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を超える送信電力の使用が要求される状況を、基地局装置に通知するため、ユーザ機器は、サブフレームを割り当てられているかまたは設定されているコンポーネントキャリアそれぞれの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を送信する。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、例えば、後からの「コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの定義」セクションに記載されている定義の1つに従って、定義することができる。
【0255】
コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告は、上りリンクの1つのサブフレームにおいて送られる。この方式は、基本的には、電力ヘッドルーム報告を送るための新規のトリガーを定義することと考えることができる。
【0256】
オプションとして、コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告が非周期的な報告である、または電力制限状況によってトリガーされたものであることを識別する目的で、上述した電力状態フラグと同様に、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素(コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素)に対応するMAC PDUサブヘッダの中の1ビットを使用することができる。したがって、この実施形態においても、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素に対応するMAC PDUサブヘッダの中の2つの予約ビットの一方を使用することで、電力が制限されていること、もしくは、それに起因して電力ヘッドルーム報告が送信されたこと、またはその両方を示す。コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素に含まれる、電力制限に起因してトリガーされた電力ヘッドルーム報告、に対応する論理チャネルID(LCID)は、周期的な報告によって、または経路損失の変化によってトリガーされる電力ヘッドルーム報告の場合(例えば
図30に示した11010)と同じとすることができる(電力スケーリング(PS)フラグは、対応するMAC制御要素が、電力制限によってトリガーされた電力ヘッドルーム報告を含んでいることを示す)。これに代えて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を含んでいるMAC制御要素自体の中の2つの予約/未使用ビットの一方を使用して、フラグをシグナリングすることができる。
【0257】
別の実施例においては、フラグを使用する代わりに、設定されているまたは割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告が、電力制限によってトリガーされたことを示す、新規のLCIDを定義することができる。
【0258】
さらなる例示的な実施例においては、設定されている上りリンクコンポーネントキャリアに対して個々のLCIDを定義することができ、したがって、これらのLCIDを使用することで、MAC制御要素(およびその電力ヘッドルーム報告)が、設定されているどの上りリンクコンポーネントキャリアに関連しているかを示すことができる。
図31は、本発明の例示的な実施形態による例示的なMAC PDUを示しており、このMAC PDUは、ユーザ機器に設定されている3つのコンポーネントキャリア(CoCa1、CoCa2、CoCa3)の、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいる。MAC PDUのサブヘッダセクションには3つのMACサブヘッダが提供されており、これらのMACサブヘッダには、ユーザ機器に設定されているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリアに対して定義されている専用LCID(LCID CoCa1、LCID CoCa2、LCID CoCa3)が含まれている。基地局装置は、MAC PDUのサブヘッダ内のLCIDに基づいて、MAC PDUのペイロードセクション内のMAC制御要素の中のコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を、ユーザ機器の設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアに関連付けることができる。
【0259】
なお、この例では、トリガーの理由には無関係に同じLCIDが使用されている。したがって、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素それぞれに対応するサブヘッダは、その最初(または2番目)のビット内にフラグを備えており、このフラグは(電力スケーリングフラグと同様に)、設定されているとき、または設定されていないとき、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素の中の電力ヘッドルーム報告が、電力制限状況によってトリガーされた、イベントトリガーによる電力ヘッドルーム報告であることを示す。コンポーネントキャリアに固有なこれらのLCIDが、電力制限状況に起因する電力ヘッドルーム報告の場合にのみ使用される場合、サブヘッダ内のフラグは必要ない。
【0260】
この例示的な実施形態においては、ユーザ機器は、オプションとして、サブフレームにおいて送信される報告それぞれに対して、LTEリリース8/9から公知である電力ヘッドルーム報告のメカニズム(PHR周期タイマーおよびPHR禁止タイマーの使用を含む)と、
図7に示したそのフォーマットとを利用することができる。ユーザ機器が、自身の最大総UE送信電力を使用する状況に近い、または、基地局装置のリソース割当ておよび電力制御コマンドによって、ユーザ機器の最大総UE送信電力を超える送信電力の使用が要求されるときに、ユーザ機器は、割り当てられている各コンポーネントキャリアにおいて、それぞれのコンポーネントキャリアを対象とする、LTEリリース8/9から公知であるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を送信する。送信時、ユーザ機器は、PHR禁止タイマーを無視する(動作している場合)。コンポーネントキャリアあたりの複数の電力ヘッドルーム報告を送信した後、PHR周期タイマーおよびPHR禁止タイマーをリスタートさせることができる。
【0261】
基地局装置は、サブフレームの中の電力ヘッドルーム報告すべてを受信した時点で、ユーザ機器の全体的な電力状況を完全に把握する。
【0262】
本発明の別の実施形態による、さらなる例示的な実施例においては、設定されているかまたは割り当てられているすべてのコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を、割り当てられているコンポーネントキャリアのうちの1つのコンポーネントキャリアの1つのMAC PDUのみにおいて送信することができる。電力ヘッドルーム報告を送信するコンポーネントキャリアの選択は、前に説明したように実施することができる(特に、「ユーザ機器あたり電力ヘッドルームMAC制御要素を送信するコンポーネントキャリアの選択」を参照)。
【0263】
この実施形態の例示的な一実施例においては、コンポーネントキャリアあたりの複数の電力ヘッドルーム報告を1つのMAC PDUに含めることができる。
図17は、複数の電力ヘッドルーム報告MAC制御要素を含んでいるMAC PDUの例示的なフォーマットを示しており、ここでは、割り当てられているコンポーネントキャリアCoCa1、CoCa3、CoCa4の3つの電力ヘッドルーム報告を報告する状況を例示として示している。
【0264】
このMAC PDUは、各サブヘッダフィールド内に、コンポーネントキャリアに固有の論理チャネル識別子(LCID)を備えており、この識別子は、報告の対象のコンポーネントキャリアを識別することができ、このMAC PDUのペイロードセクションが3つの電力ヘッドルーム報告MAC制御要素を含んでいることを示している。(LCIDを含んでいる)サブヘッダそれぞれは8ビット長(1オクテット)であり、オクテットの最初の2つのビット(R)が予約ビットであり、3番目のビット(E)は、MAC PDUの中の次のオクテットがMAC PDUヘッダのさらなるサブヘッダであるか、このオクテットの後ろにMAC PDUのペイロードセクションが続いているか(すなわち、この例では次のオクテットが電力ヘッドルーム報告MAC制御要素であるか)を示し、最後の5つのビットがLCIDである。
【0265】
例えば、Eビットが設定されている(例:1である)場合、MAC PDUの次のオクテットには別のサブヘッダが存在し、Eビットが設定されていない(例:0である)場合、次のオクテットは、MAC PDUのペイロードセクションの一部であり、ペイロードセクションは、最初の電力ヘッドルーム報告MAC制御要素から始まるものと想定する。
【0266】
別の代替実施例においては、複数のコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告を、単一のMAC制御要素に含めることもできる(「複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素」)。
【0267】
複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素は、最初のオクテットに5ビットのビットマップを備えており、このビットマップは、複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素に電力ヘッドルーム報告フィールドが含まれている対象のコンポーネントキャリアを示す。ビットマップ内の個々のビット位置の意味は、出願1および出願2に記載されているように、コンポーネントキャリアの優先順位の順序によって定義することができる。一般的には、ビットマップの特定の位置において設定されている(例:1である)ビットは、関連付けられるコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告フィールドがMAC制御要素に含まれていることを意味する。コンポーネントキャリアのビットマップを含んでいるオクテットの後ろは、それぞれの電力ヘッドルーム報告フィールドであり、コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム値が含まれている。電力ヘッドルーム報告フィールドは、例えば、
図7に示したフォーマットと同じにすることができ、コンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム(PH)を報告する。
図18は、複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素の例であり、割り当てられているコンポーネントキャリアCoCa1、CoCa3、CoCa4の3つの電力ヘッドルーム報告を報告する状況を例示として示している。
【0268】
なお、この代替実施例においては、LTEリリース8/9の電力ヘッドルーム報告と、複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素は、同じ論理チャネル識別子を使用することができ、2つのフォーマットの区別は、制御要素の最初のオクテットの先頭または2番目の予約ビットを設定する、または設定しないことによって行うことができる。当然ながら、複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素に、MAC PDUヘッダ内の専用の論理チャネル識別子(LCID)を割り当てることもできる。
【0269】
複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素をMAC PDUのヘッダ内の対応するサブヘッダによって識別できるように、このMAC制御要素に専用の論理チャネル識別子(LCID)をさらに割り当てることもできる(
図6を参照)。
【0270】
図9は、本発明の第1の態様に基づく、本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。
図8と同様に、ユーザ機器は、所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(801)、割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(802)。次いで、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が特定のしきい値を超えるかを判定する(803)。しきい値を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがってユーザ機器は、次いで、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成し(804)、それらのプロトコルデータユニット(物理層ではトランスポートブロックと称される)を、割り当てられているコンポーネントキャリアを介して基地局装置に送信する(805)。なお、プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。
【0271】
ステップ803の判定において、ユーザ機器が電力制限状況にある場合、ユーザ機器は、リソース割当てが受信された対象のコンポーネントキャリアそれぞれについて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームを求める(906)。
【0272】
次いで、ユーザ機器は、割り当てられているコンポーネントキャリアそれぞれを対象とする、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの個々のMAC制御要素を(例えば、
図7に示したフォーマットを使用して)生成し(907)、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの対応するMAC制御要素それぞれを含んでいるMAC PDUを、リソース割当てに従ってさらに生成する(908)。次いで、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいるPDUを、割り当てられているコンポーネントキャリア上で基地局装置に送信する。
【0273】
なお、ステップ907およびステップ908に代えて、上述したように複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素を形成し、1つのMAC PDUの中で送信することもできる。
【0274】
図12は、本発明の実施形態による、LTE−Aシステムにおける電力ヘッドルーム報告を示しており、
図9によるユーザ機器の例示的な動作が採用されている。ほとんどの状況において、
図10に関連して前述したユーザ機器の動作と同じである。
図10とは異なる点として、ユーザ機器は、T
6において、サブフレームの3つのコンポーネントキャリアすべてに対して3つのリソース割当てを受信しているが、送信電力制御機能によって生成されるゲイン係数が高く、そのリソース割当てに従って推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える(
図9のステップ803を参照)ものと想定する。したがって、この場合、ユーザ機器は、3つのコンポーネントキャリアすべてについて、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム値を求め、それぞれの上りリンクコンポーネントキャリアの、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告をそれぞれが含んでいるPDUを送信する。
図12から認識できるように、T
6では、コンポーネントキャリアCoCa3に対してPHR禁止タイマーが動作しているが、ユーザ機器はこれを無視する。コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を送信した時点で、コンポーネントキャリアそれぞれに対して各タイマーをリスタートさせる。
【0275】
図13は、本発明の実施形態による、LTE−Aシステムにおける別の例示的な電力ヘッドルーム報告を示しており、
図9によるユーザ機器の例示的な動作が採用されている。この図に示した例は、T
6においてサブフレームのコンポーネントキャリアCoCa1およびCoCa3に対してのみユーザ機器にリソースが割り当てられていることを除いて、
図12における例と同じである。
図12と同様に、ユーザ機器は、このサブフレームにおいては電力制限状況にあるが、コンポーネントキャリアCoCa1およびCoCa3の電力ヘッドルームを報告する、複数の電力ヘッドルーム報告の単一MAC制御要素を、コンポーネントキャリアCoCa1上で送信されるPDUにおいて送信する。次いで、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告が送られた対象のコンポーネントキャリア(この例においてはコンポーネントキャリアCoCa1およびCoCa3)に対して、PHR周期タイマーおよびPHR禁止タイマーをリスタートさせる。
【0276】
図22は、本発明の第1の態様に基づく本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。ユーザ機器は、(
図8のステップ801と同様に)所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(2101)、(
図8のステップ802と同様に)割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(2102)。本発明の例示的な一実施形態においては、送信電力は、
図8に関連して上述したように、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのための受信したリソース割当てと、ユーザ機器の送信電力制御機能の状態とに基づいて、ユーザ機器によって推定される。さらに、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が最大総UE送信電力(MATPまたはP
CMAX)を超えるかを判定する(2103)。
【0277】
最大総UE送信電力を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する電力状態報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがって、ユーザ機器は、次いで、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成する(804)。プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。次いで、ユーザ機器は、MAC PDUを基地局装置に送信する(805)。
【0278】
ステップ2103において、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える場合、ユーザ機器は、設定されている(または割り当てられている)上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれについて、それぞれの電力ヘッドルーム報告(コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告)を生成し(2201)、設定されている各コンポーネントキャリアに対して、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの個々のMAC制御要素を(例えば
図7に示したフォーマットを使用して)さらに生成する(2202)。利用可能な上りリンクグラントがないコンポーネントキャリアが存在する場合、ユーザ機器は、サブフレームにおいて上りリンクリソース割当てが適用可能ではない設定されているコンポーネントキャリアについては、例えば、事前に定義されたリソース割当て、または事前に定義されたPUSCH電力を想定することができる。
【0279】
次いで、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいるMAC PDUを形成する(2203)。MAC PDUは、リソース割当てに従って形成される。次いで、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素を含んでいるPDUを、割り当てられているコンポーネントキャリア上で基地局装置に送信する。
【0280】
コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素における電力ヘッドルーム報告の送信が、サブフレームの推定される送信電力が最大総UE送信電力を超えることに起因してトリガーされたことを示す識別情報が提供されていない場合、ユーザ機器は、オプションとして、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告を送信する理由を示す(1つまたは複数の)インジケータ(すなわちフラグ)を、MAC PDUの中に設定することができる(2204)。例えば、電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素のMACサブヘッダそれぞれ、または電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素それぞれに、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超えるかを示すフラグを含めることができる。
【0281】
さらに、ユーザ機器は、割り当てられている1つまたは複数のコンポーネントキャリア上で送信するための送信電力全体を最大総UE送信電力(に等しいかまたはそれ)以下まで下げる目的で、割り当てられているコンポーネントキャリアの少なくとも1つに電力スケーリングを実行して送信電力を低減する(2109)。上に説明したように、例えば、サブフレームにおいてMAC PDUと一緒に上りリンク制御情報が送信されるコンポーネントキャリア(すなわち上述したようにUCIを有するPUSCHとも称する)については、そのコンポーネントキャリア上での送信に電力スケーリングを適用しないようにすることができる。次いで、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素を含んだMAC PDUを、割り当てられているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で、低減された送信電力を使用して送信する(2206)。
【0282】
なお、
図22におけるステップの順序は、時間的に正しい順序ではないことがあり、なぜなら、(上の説明から明らかであるように)いくつかのステップは順序が入れ替わることがあるためである。
【0283】
<コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの定義>
現在のところ、コンポーネントキャリアに固有な電力ヘッドルーム報告の明確な定義は存在していない。例えば、コンポーネントキャリアに固有な(公称)最大送信電力(P
CMAX,c)に電力低減を適用するとき、そのコンポーネントキャリア上での上りリンク送信(リソース割当て)のみを考慮するのか、割り当てられている他の上りリンクコンポーネントキャリア上での送信も考慮するのか、明確ではない。例えば、複数のコンポーネントキャリア上での同時の上りリンク送信がスケジューリングされている場合、望ましくない放射を回避する目的で、電力低減量(電力バックオフとも称される)を増やすことができる。アグリゲートされるコンポーネントキャリアにおいてPUSCHもしくはPUCCHまたはその両方を同時に送信する、またはコンポーネントキャリア内にPUSCHをクラスタ化すると、ユーザ機器の送信機チェーン(UE transmitter chain)に追加の相互変調積が発生することがあり、これにより、ACLR要件を満たすため送信器電力のバックオフが必要となる。
【0284】
電力ヘッドルームの定義1
本発明の例示的な一実施形態においては、
図28に示したように、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームでは、コンポーネントキャリアに対する電力スケーリングを考慮しない。電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアの最大送信電力P
CMAX,c(電力低減後)から、コンポーネントキャリアcの、電力スケーリング前のユーザ機器の推定される送信電力を減じた差として定義される。コンポーネントキャリアcの、ユーザ機器の推定される送信電力は、コンポーネントキャリアcに対するユーザ機器の送信電力制御によって与えることができる。
【0285】
この実施形態に基づく例示的な一実施例においては、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、例えば、本明細書の最初の方で引用した非特許文献4に記載されているように求めることができる。したがって、前出の式2を利用し、割り当てられているかまたは設定されているそれぞれのコンポーネントキャリアに対して、以下のように適用する。
【0286】
コンポーネントキャリアcのコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームPH
c(i)は、例えば、次のように定義することができる。
【数4】
この式において、P
CMAX,cは、(電力低減後の)コンポーネントキャリアcの最大送信電力であり、以下を満たす。
− P
CMAX_L,c≦P
CMAX,c≦P
CMAX_H,c
− P
CMAX_L=min(P
EMAX,c−ΔT
C,P
PowerClass−MPR
c−AMPR
c−ΔT
C)
− P
CMAX_H,c=min(P
EMAX,c,P
PowerClass)
【0287】
いくつかのパラメータの添字cは、コンポーネントキャリアcのパラメータであることを示す。さらには、式中のパラメータのいくつかは、ユーザ機器に固有なパラメータとすることができる。式3のその他のパラメータの意味は、[背景技術]に定義されているとおりである(コンポーネントキャリアcに固有(該当時)またはユーザ機器に固有)。
【0288】
コンポーネントキャリアcに対するユーザ機器の送信電力制御によって与えられる、コンポーネントキャリアcにおけるユーザ機器の推定される送信電力P
PUSCH,c(i)は、次のように定義することができる。
【数5】
【0289】
電力ヘッドルームの定義2
本発明の例示的な一実施形態においては、
図27に示したように、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアに対する電力スケーリングを考慮する(適用される場合)。電力ヘッドルームは、コンポーネントキャリアの最大送信電力P
CMAX,c(電力低減後)から、コンポーネントキャリアcの、電力スケーリング(適用時)後のユーザ機器の使用される送信電力を減じた差として定義される。
【0290】
一例においては、電力スケーリング後の、コンポーネントキャリアcにおけるユーザ機器の使用される送信電力は、サブフレームiの送信PUSCH電力P
PSPUSCH,c(i)であり、次のように定義される。
【数6】
この式において、PSF
cは、設定されているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリアcに対して適用される電力スケーリング係数である。
【0291】
P
PSPUSCH,c(i)は、次のように表すこともできる。
【数7】
この式において、P
PUSCH,c(i)は、サブフレームiの中の適用可能なリソース割当てに従っての、コンポーネントキャリアcの推定される送信電力である。
【数8】
【0292】
定義2によると、電力ヘッドルームは、次のように表すことができる。
【数9】
【0293】
オプションとして、コンポーネントキャリアの(公称)最大送信電力に適用される電力低減は、アグリゲートされている他のコンポーネントキャリア上で同時に行われる上りリンク送信を考慮して、求めることができる。例えば、コンポーネントキャリアの(公称)最大送信電力P
CMAX_H,c)から、所与のサブフレームにおける、アグリゲートされている他のコンポーネントキャリア上での上りリンク送信を考慮する電力低減量PRだけ減らす。電力低減を適用した結果が、コンポーネントキャリアの最大送信電力P
CMAX,cである。
【数10】
【0294】
この式において、PR
c≦MPR
cである。したがって、式3および式8におけるP
CMAX,cは、オプションとして、適用された電力低減量PRを含んでいることができ、この電力低減量PRは、オプションとして、所与のサブフレームにおける、アグリゲートされている他のコンポーネントキャリア上での上りリンク送信を考慮することができる。
【0295】
オプションの改善点
上の式3〜式9において、添字cを有するパラメータは、コンポーネントキャリアに固有なパラメータとすることができる。しかしながら、パラメータの一部またはすべてを、ユーザ機器ごとに設定することができる。例えば、パラメータP
0_PUSCH,c(j)およびα
c(j)を、ユーザ機器ごとに定義することができる。
【0296】
さらには、定義2による電力ヘッドルームは、原理的には負になることはなく、なぜなら、使用される総送信電力、すなわち、割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリア全体にわたる上りリンク送信電力すべての合計は、(電力スケーリングの後の)最大総UE送信電力を超えてはならないためである。一方で、定義1による電力ヘッドルームは、負になることがある。したがって、電力ヘッドルームの両方の定義において電力ヘッドルームの値の範囲を同じにする目的で、定義2による電力ヘッドルームの負の電力ヘッドルーム値を、特殊な意味を持つように定義することができる。例えば、負の値は、使用される送信電力が電力スケーリングの結果である(すなわち最大総UE送信電力を超える)ことを示すものとして、定義することができる。これによって、電力ヘッドルーム報告は、ユーザ機器の電力状態に関する情報を伝えることになる。
【0297】
<電力低減量の報告>
前述したように、基地局装置は最大電力低減量(MPR)を認識していないものと想定することができる。結果として、特定のコンポーネントキャリアの最大送信電力にユーザ機器によって適用される電力低減量も、基地局装置に認識されない。したがって、基地局装置は、本質的には、電力ヘッドルーム計算の基準となる、コンポーネントキャリアの最大送信電力を認識していない。したがって、本発明のさらなる実施形態によると、ユーザ機器は、上りリンクコンポーネントキャリアに適用した電力低減量(電力バックオフとも称される)を基地局装置に通知する。
【0298】
例示的な一実施例においては、ユーザ機器は、電力ヘッドルームを報告するときに電力低減量をシグナリングする。基地局装置は、電力ヘッドルームと、適用された電力低減量とに基づいて、所与のコンポーネントキャリアにおける実際に使用された送信電力を計算することができ、したがってユーザ機器の電力状態を認識する。
【0299】
上の例示的な実施形態のバリエーションとして、設定されているかまたは割り当てられている上りリンクコンポーネントキャリアに対する電力低減量は、必ずしもユーザ機器が電力制限状況にある、またはその状況に近づいているときに報告する必要はなく、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアに適用された電力低減量を、電力ヘッドルームの報告と同様に、周期的に、または所与のしきい値を超える変化に応えて、送信/更新することができる。しかしながらシグナリングオーバーヘッドを低減するためには、前に例示的に示したように、ユーザ機器は、電力制限状況にある、またはその状況に近づいている場合にのみ、電力低減量を報告することができる。
【0300】
図23は、本発明の第1の態様に基づく本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。ユーザ機器は、(
図8のステップ801と同様に)所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(2101)、(
図8のステップ802と同様に)割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(2102)。本発明の例示的な一実施形態においては、送信電力は、
図8に関連して上述したように、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのための受信したリソース割当てと、ユーザ機器の送信電力制御機能の状態とに基づいて、ユーザ機器によって推定される。さらに、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が最大総UE送信電力(MATPまたはP
CMAX)を超えるかを判定する(2103)。
【0301】
最大総UE送信電力を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する電力状態報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがってユーザ機器は、次いで、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成する(804)。プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。次いで、ユーザ機器は、MAC PDUを基地局装置に送信する(805)。
【0302】
ステップ2103において、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える場合、ユーザ機器は、設定されている(または割り当てられている)上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれを対象とする、それぞれの電力ヘッドルーム報告(コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告)を生成し(2201)、設定されているコンポーネントキャリアに対して、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームの個々のMAC制御要素を(例えば
図7に示したフォーマットを使用して)さらに生成する(2202)。利用可能な上りリンクグラントがないコンポーネントキャリアが存在する場合、ユーザ機器は、サブフレームにおいて上りリンクリソース割当てが適用可能ではない設定されているコンポーネントキャリアについては、例えば、事前に定義されたリソース割当て、または事前に定義されたPUSCH電力を想定することができる。電力ヘッドルームは、例えば、上に説明した定義1または定義2を使用して計算することができる。
【0303】
さらに、ユーザ機器は、割り当てられているかまたは設定されている上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれについて、コンポーネントキャリアに適用された電力低減量(例えばdB単位)を示す、コンポーネントキャリアあたりの電力低減量のMAC制御要素を生成する(2301)。次いで、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素と、コンポーネントキャリアあたり電力低減量MAC制御要素を含んだMAC PDUを形成する(2302)。MAC PDUは、リソース割当てに従って形成される。
【0304】
コンポーネントキャリアあたり電力低減量MAC制御要素は、コンポーネントキャリアに適用された電力低減量を含んでおり、
図32に示したように、LTEリリース8における電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素に似た形式として定義することができる。コンポーネントキャリアあたりの電力低減量のMAC制御要素であることを識別する目的に、新規の論理チャネルID(LCID)を予約することができる。
【0305】
ユーザ機器は、割り当てられている1つまたは複数のコンポーネントキャリア上で送信するための送信電力全体を最大総UE送信電力(に等しいかまたはそれ)以下まで下げる目的で、割り当てられているコンポーネントキャリアの少なくとも1つに電力スケーリングを実行して送信電力を低減する(2109)。次いで、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素およびコンポーネントキャリアあたり電力低減量MAC制御要素を含んでいるMAC PDUを、割り当てられているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で、低減された送信電力を使用して送信する(2303)。
【0306】
なお、
図23におけるステップの順序は、時間的に正しい順序ではないことがあり、なぜなら、(上の説明から明らかであるように)いくつかのステップは順序が入れ替わることがあるためである。
【0307】
コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素およびコンポーネントキャリアあたりの電力低減量のMAC制御要素をシグナリングする代わりに、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームと、コンポーネントキャリアに適用されたコンポーネントキャリアあたりの電力低減量とを、1つのMAC制御要素の中でシグナリングすることもできる。この新規のMAC制御要素(電力低減量および電力ヘッドルーム)を識別する目的で、1ビットのフラグを使用して、このMAC制御要素のフォーマットを示すことができる。このフラグは、例えば、MACサブヘッダ内に提供される2つの予約ビット(R)の一方とすることができる。設定されている(例:1)フラグは、例えば、電力低減量と、定義1または定義2による電力ヘッドルーム報告とが、MAC制御要素に含まれていることを示すことができる。設定されていない(例:0)フラグは、定義1または定義2による電力ヘッドルーム報告のみがシグナリングされていることを示す。
【0308】
あるいは、電力低減量をシグナリングする代わりに、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアの最大送信電力に適用された電力低減量が、事前に定義されたしきい値を超えて変化したときに、設定されているかまたは割り当てられているすべてのコンポーネントキャリアの電力ヘッドルーム報告をシグナリングすることができる。このことは、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告の新規のトリガーを導入することになる。
【0309】
<電力スケーリング量のシグナリング>
ユーザ機器の電力制限状況を基地局装置に通知する、本発明の別の代替実施例および実施形態においては、ユーザ機器は、設定されているかまたは割り当てられている1つまたは複数の上りリンクコンポーネントキャリアに適用された電力スケーリングの量をシグナリングする。例えば、ユーザ機器の電力が制限されているとき、すなわち、サブフレームにおける推定される送信電力全体が最大総UE送信電力を超えるときに、上りリンクコンポーネントキャリアそれぞれについて、電力スケーリング量(単位:dB)をシグナリングすることができる。
【0310】
図24は、本発明の第1の態様に基づく本発明の一実施形態による、ユーザ機器の例示的な動作の流れ図を示している。ユーザ機器は、(
図8のステップ801と同様に)所与のサブフレームのための複数のリソース割当てを受信し(2101)、(
図8のステップ802と同様に)割り当てられているコンポーネントキャリア上での上りリンク送信に要求される送信電力(ETP)を、受信したリソース割当てに従って推定する(2102)。本発明の例示的な一実施形態においては、送信電力は、
図8に関連して上述したように、サブフレームにおいて送信されるプロトコルデータユニットのための受信したリソース割当てと、ユーザ機器の送信電力制御機能の状態とに基づいて、ユーザ機器によって推定される。さらに、ユーザ機器は、推定される送信電力(ETP)が最大総UE送信電力(MATPまたはP
CMAX)を超えるかを判定する(2103)。
【0311】
最大総UE送信電力を超えない場合、ユーザ機器は、電力制限状況にはなく、したがって、それに関する電力状態報告を基地局装置にシグナリングする必要はない。したがって、ユーザ機器は、次いで、割り当てられているそれぞれのコンポーネントキャリア上で送信するプロトコルデータユニットを生成する(804)。プロトコルデータユニットの生成は、例えば、出願1または出願2に記載されているように実施することができる。ユーザ機器は、MAC PDUを基地局装置に送信する(805)。
【0312】
ステップ2103において、推定される送信電力が最大総UE送信電力を超える場合、ユーザ機器は、設定されている(または割り当てられている)各上りリンクコンポーネントキャリアについて、それぞれの電力ヘッドルーム報告(コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告)を生成し(2201)、割り当てられている各コンポーネントキャリアを対象とする、コンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームの個々のMAC制御要素を(例えば
図7に示したフォーマットを使用して)さらに生成する(2202)。利用可能な上りリンクグラントがないコンポーネントキャリアが存在する場合、ユーザ機器は、サブフレームにおいて上りリンクリソース割当てが適用可能ではない設定されているコンポーネントキャリアについては、例えば、事前に定義されたリソース割当て、または事前に定義されたPUSCH電力を想定することができる。電力ヘッドルームは、例えば、上に説明した定義1または定義2を使用して計算することができる。
【0313】
さらには、ユーザ機器は、割り当てられている各上りリンクコンポーネントキャリアについて、それぞれのコンポーネントキャリアの送信に適用された電力スケーリングの電力スケーリング係数を示す、コンポーネントキャリアあたりの電力スケーリングのMAC制御要素、を生成する(2401)。次いで、ユーザ機器は、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルームMAC制御要素と、コンポーネントキャリアあたり電力スケーリングMAC制御要素を含んだMAC PDUを形成する(2402)。MAC PDUは、リソース割当てに従って形成される。
【0314】
シグナリング用として、電力スケーリング係数(PSF)が含まれる新規のMAC制御要素を定義することができる。この(コンポーネントキャリアあたりの)電力スケーリングのMAC制御要素は、
図33に示したように、LTEリリース8における電力ヘッドルーム報告のMAC制御要素に似た形式として定義することができる。コンポーネントキャリアあたりの電力スケーリングのMAC制御要素であることを識別する目的に、新規の論理チャネルID(LCID)を予約することができる。
【0315】
ユーザ機器は、割り当てられている1つまたは複数のコンポーネントキャリア上で送信するための送信電力全体を最大総UE送信電力(に等しいかまたはそれ)以下まで下げる目的で、割り当てられているコンポーネントキャリアの少なくとも1つに電力スケーリングを実行して送信電力を低減する(2109)。次いで、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素と、コンポーネントキャリアあたり電力スケーリングMAC制御要素を含んだMAC PDUを、割り当てられているそれぞれの上りリンクコンポーネントキャリア上で、低減された送信電力を使用して送信する(2403)。
【0316】
なお、
図24におけるステップの順序は、時間的に正しい順序ではないことがあり、なぜなら、(上の説明から明らかであるように)いくつかのステップは順序が入れ替わることがあるためである。
【0317】
代替実施形態においては、電力スケーリング量を、電力ヘッドルーム報告によってシグナリングすることができる。ユーザ機器は、電力スケーリングの絶対量を報告する代わりに、1つのコンポーネントキャリアについて、定義1によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームと、定義2によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームとを、同時に報告する。基地局装置は、2つの電力ヘッドルームの差を求めることによって電力スケーリング量を計算することができる。
【0318】
電力スケーリングが適用されていない場合、定義1によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームと、定義2によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームとで同じ値が報告されるため、両方の電力ヘッドルームを報告することが有用であるのは、ユーザ機器の電力が制限されている場合のみである。異なる報告フォーマットを区別する目的で、コンポーネントキャリアあたり電力ヘッドルーム報告MAC制御要素に対応するMAC PDUサブヘッダの1つの予約ビット(R)を使用することができる。例えば、予約ビットが設定されている(例:1)場合、電力スケーリングが適用されており、定義1(または定義2)によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームと、電力スケーリングの絶対量とが一緒に報告されている、あるいは、定義1によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームと定義2によるコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルームとが報告されていることを示す。予約ビットが設定されていない(例:0)場合、電力スケーリングは適用されておらず、通常のコンポーネントキャリアあたりの電力ヘッドルーム報告が報告されていることを示すことができる。
【0319】
<ハードウェアおよびソフトウェアへの本発明の実装>
本発明の別の実施形態は、上述したさまざまな実施形態をハードウェアおよびソフトウェアを使用して実装することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)および基地局装置(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本明細書に記載されている方法を実行するようにされている。さらに、基地局装置は、各ユーザ機器から受信される電力状態情報からユーザ機器の電力状態を判定し、スケジューラがこれらのユーザ機器をスケジューリングするときに、各ユーザ機器の電力状態を考慮することを可能にする手段、を備えている。
【0320】
本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行できることが認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のプログラマブルロジックデバイスとすることができる。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによって実行あるいは具体化することもできる。
【0321】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによって実施することもでき、これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行される、あるいはハードウェアにおいて直接実行される。さらに、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装とを組み合わせることも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納することができる。
【0322】
さらには、本発明のさまざまな実施形態の個々の特徴は、個別に、または任意の組合せとして、別の発明の主題とすることができることに留意されたい。
【0323】
具体的な実施形態において示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく膨大なバリエーションもしくは変更形態を創案できることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示を目的としており、本発明を制限するものではない。