特許第5902885号(P5902885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902885
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】芳香族ヨード化化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/156 20060101AFI20160331BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20160331BHJP
   C07C 17/358 20060101ALI20160331BHJP
   C07C 25/02 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C07C17/156
   C07B61/00 300
   C07C17/358
   C07C25/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-537874(P2010-537874)
(86)(22)【出願日】2008年12月17日
(65)【公表番号】特表2011-506431(P2011-506431A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】KR2008007483
(87)【国際公開番号】WO2009078667
(87)【国際公開日】20090625
【審査請求日】2011年11月17日
【審判番号】不服2014-9902(P2014-9902/J1)
【審判請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】10-2007-0132303
(32)【優先日】2007年12月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510061575
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェ−ボン
(72)【発明者】
【氏名】チャ,イル−フン
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特表平3−503412(JP,A)
【文献】 特開昭63−44538(JP,A)
【文献】 特表平2−500273(JP,A)
【文献】 特表平1−502824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C1/00-409/44
C07B61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト触媒および酸素の存在下で、芳香族化合物、水、およびヨウ素(I2)を含む気体状の混合物をヨード化反応させる工程を含み
記水を、芳香族化合物に対して5モル%〜30モル%のモル比で使用するヨード化芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記芳香族化合物が、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライト触媒が、Na−13Xゼオライト、Y−typeゼオライト、ZSM5ゼオライト、およびK−13Xゼオライトからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライト触媒が、Na−13Xゼオライトである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ヨード化反応を、230℃〜350℃の温度、および常圧〜5気圧の圧力で行う、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ヨード化化合物の製造方法に関する。より詳しくは、ゼオライト触媒および酸素の存在下で、芳香族化合物、ジ−ヨード芳香族化合物または水、及びヨウ素(I2)を含む混合物をヨード化反応することを含む、芳香族ヨード化化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンまたはナフタレンなどの芳香族化合物にハロゲン(臭素、塩素、ヨウ素など)を反応させて芳香族ハロゲン化化合物を製造する技術は、多様な商業的分野でその価値が認められてきた。特に、芳香族ハロゲン化化合物のうちのパラ−ジ−ヨードベンゼン(P−DIB)は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)の原料として使用されるものであって、商業的価値が高いため、その生産性を高めるための製造方法に関する研究が多様な方向で進められている。
【0003】
一例として、図1のように、米国特許第4,778,938号および第4,746,758号などでは、ゼオライト触媒を使用して酸素雰囲気下でベンゼンとヨウ素を反応させることによってパラ−ジ−ヨードベンゼンを製造する方法を記述している。前記方法によれば、反応物の転換率が高く、商業的に好まれる芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物の選択度が高いだけでなく、反応物質であるベンゼンまたはナフタレンの酸化反応を最少化することができる。
【0004】
しかしながら、前記方法によるパラ−ジ−ヨードベンゼンの製造技術は、局部的であり、急激な発熱反応により反応温度を安定的に制御するのが難しいという短所がある。つまり、ゼオライト触媒を使用して酸素雰囲気下で芳香族化合物がヨード化反応を経る過程において生成されるヨウ化水素酸の酸化反応を必須的に随伴する。このようなヨウ化水素酸の酸化反応は、急激な発熱反応であり、反応器中央部でこのような発熱反応が集中的に起きて、反応温度を上昇させる。このように上昇した反応温度条件では、反応がより促進され、ヨウ化水素酸の酸化反応だけでなく原料の燃焼反応をもたらして、暴走反応を起こす原因になることもある。さらに、商用化工程では、反応器の直径(内径)が大きくなければならないため、このような問題はより深刻化し、重要な設計変数となる。
【0005】
また、このようにして上昇した反応温度条件では、反応物質の燃焼反応が起こり、それによって触媒の活性を失わせる炭素堆積物のような不純物の生成が増加し、このような不純物は触媒の活性を失わせて触媒の交換周期を短縮させることがある。また、このように反応温度の制御が難しくて投入される原料の流量を十分に高めることができなくなるが、これは生成物であるジ−ヨード化合物の生産性の低下をもたらすこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,778,938号
【特許文献2】米国特許第4,746,758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の問題点を解決するために、本発明は、反応器の温度を安定的に制御して、ヨード化反応の生産性を高めると同時に、副反応を抑制することができる芳香族ヨード化化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の実施例による芳香族ヨード化化合物の製造方法は、 酸素雰囲気およびゼオライト触媒存在下で、芳香族化合物、芳香族化合物のジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素(I2)を含む混合物をヨード化反応させる段階を含む。
【0009】
芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルからなる群から選択される。
【0010】
ジ−ヨード化合物は、ジ−ヨードベンゼン、ジ−ヨードナフタレン、およびジ−ヨードビフェニルからなる群から選択される。
【0011】
反応温度を安定的に制御するために、ジ−ヨード化合物は芳香族化合物に対して2モル%乃至10モル%で使用し、水は芳香族化合物に対して5モル%乃至30モル%で使用することができる。
【0012】
ヨード化反応は、Na−13X、Y−type、ZSM5、およびK−13Xからなる群から選択されるゼオライト触媒を使用することができる。
【0013】
ゼオライト触媒は、Na−13Xであるのが好ましい。
【0014】
ヨード化反応は、230℃乃至350℃の温度、常圧乃至5気圧の圧力で反応が行われる。
【0015】
また、本発明の芳香族ヨード化化合物の製造方法は、芳香族化合物、ジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素の反応生成物を蒸留し、結晶化および固液分離して得られた芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物、オルト−ジ−ヨード化合物、およびメタ−ジ−ヨード化合物からなるジ−ヨード化合物を再使用する段階を更に含むことができる。
【0016】
芳香族ヨード化化合物の製造方法は、ヨード化反応器から第1蒸留塔に移送された芳香族化合物、ジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素の反応生成物のうちの芳香族化合物および水を第1蒸留塔の上部に分離/回収する段階と、前記第1蒸留塔の下部流出物を第2蒸留塔に移送して、モノ−ヨード化合物およびヨウ素を第2蒸留塔の上部に分離する段階と、前記第2蒸留塔の下部流出物を第3蒸留塔に移送して、前記パラ−ジ−ヨード化合物、オルト−ジ−ヨード化合物、およびメタ−ジ−ヨード化合物からなるジヨード混合物を第3蒸留塔の上部に分離した後、結晶化および固液分離器に移送する段階と、前記結晶化および固液分離器でジヨード混合物から固体芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物および液状芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物、オルト−ジ−ヨード化合物、およびメタ−ジ−ヨード化合物を含む母液を収得する段階と、前記母液中の一部をヨード化反応器に再投入して、ジ−ヨード化合物を再使用する段階とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】比較例1ないし2による芳香族ヨード化化合物の製造工程を示した概略図である。
図2】実施例1ないし2による芳香族ヨード化化合物の製造工程を示した概略図である。
図3】芳香族ヨード化化合物の全体的な製造工程と共融状態で存在するジ−ヨード化合物を再使用する方法を示した概略図である。
図4】ヨード化反応器(R01)を詳しく示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
その他の実施例および比較例の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【0019】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述されている実施例および比較例を参照すれば明確になる。
【0020】
しかしながら、本発明は以下に開示される実施例に限られず、互いに異なる多様な形態で実現され、本実施例は単に本発明の開示が完全になるようにして、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に提示するために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、酸素雰囲気下でゼオライト触媒を利用するヨード化反応により芳香族化合物、ジ−ヨード芳香族化合物または水、およびヨウ素を含む混合物から芳香族ヨード化化合物を製造することによって、反応温度を安定的に制御して、ジ−ヨード化合物の生産性を高めると同時に、副反応を抑制して、炭素堆積物のような不純物の生成量を低減させることができる。
【0023】
また、本発明は、前記製造方法により製造された反応生成物を多段階の蒸留、結晶化、および固液分離工程を経て、ジ−ヨード化合物を再使用することができる。
【0024】
本発明で「芳香族化合物」とは、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルなど芳香族化合物の水素が一つもハロゲンに置換されていないものを指称し、「芳香族化合物のモノ−ヨード化合物」または「モノ−ヨード化合物」とは、前記で定義した「芳香族化合物」で一つの水素がヨウ素に置換されたものを指称し、その例として「モノ−ヨードベンゼン」などがある。
【0025】
また、「芳香族化合物のジ−ヨード化合物」または「ジ−ヨード化合物」とは、前記で定義した「芳香族化合物」で二つの水素がヨウ素に置換されたものを指称し、その例として「ジ−ヨードベンゼン」などがあり、前記ジヨード化合物は、パラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−)の3種の異性体が存在する。また、本発明で製造しようとする「芳香族ヨード化化合物」は、芳香族化合物の一つ以上の水素がヨード化されたものを通称するものであり、モノ−ヨード化合物、ジ−ヨード化合物、およびトリ−ヨード化合物を含む概念である。
【0026】
一方、本発明で「ヨード化反応」とは、ベンゼン、ナフタレンのような芳香族化合物と分子状のヨウ素を反応させて芳香族化合物に含まれた水素をヨウ素に置換する反応を含む。したがって、モノ−ヨード化合物および多価ヨード化合物(ジ−、トリ−ヨード化合物)を製造することを目的とする。
【0027】
このような本発明の方法は、図2のように、酸素雰囲気およびゼオライト触媒存在下で、芳香族化合物、ジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素を反応物質として使用することによって、ヨード化反応器R01での反応温度を安定的に制御することができるようになり、ヨード化化合物の生産性を高めることができる。
【0028】
本発明の一実現例による芳香族ヨード化化合物の製造方法は、酸素雰囲気およびゼオライト触媒存在下で、芳香族化合物、芳香族化合物のジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素をヨード化反応させる段階を含む。
【0029】
つまり、このような実現例により、芳香族化合物およびヨウ素の反応に芳香族化合物のジ−ヨード化合物を共に添加する場合、ヨード化反応により生成されたモノ−ヨード化合物およびジ−ヨード化合物などの芳香族ヨード化化合物の副反応を抑制して、反応器の温度を安定的に制御することができる。また、ヨード化反応により生成された芳香族ヨード化化合物の副反応が抑制されることによって、生成物中のジ−ヨード化合物の生産比率が高く、特に経済的価値が高いパラ−ジ−ヨード芳香族化合物の選択度が高い。
【0030】
一方、前記実現例中の一実施例により、芳香族化合物およびヨウ素の反応に水を共に添加する場合、工程中に生成されたヨウ化水素酸の酸化反応(強い発熱反応)を抑制することができ、温度の制御が有利な長所がある。
【0031】
したがって、前記のような実現例により、ジ−ヨード化合物または水を芳香族化合物およびヨウ素の反応に添加する場合、ジ−ヨード化合物の生成比率が高く、芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物の選択度を高めることができる。また、反応器の温度の制御が可能であるため、供給原料の流量を増加させることができ、経済的価値が高い芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化化合物の生産性を高めることができるという点で有利である。
【0032】
ゼオライト触媒存在下での芳香族化合物のヨード化反応は、吸/脱着工程と並行されるが、反応原料は触媒に吸着された後にヨード化反応を進め、ヨード化化合物の形態で触媒から脱着される。一般に、反応器の上部でこのような吸/脱着工程が集中的に進められるため、反応熱が局部的に発生するようになり、その結果、反応温度がその部位で大幅に上昇するようになる。しかしながら、本発明で提示した方法によれば、吸/脱着工程が反応器全体で均等に行なわれることによって、反応温度の制御を容易にすることができ、これによって、上昇した反応温度に起因した副反応を抑制することができるようになる。
【0033】
また、本発明で提示した方法によれば、二酸化炭素および炭素堆積物の生成を最少化することができ、触媒の交換周期を画期的に延長することができ、良質のヨード化化合物を収得することができる。
【0034】
ここで、反応中の酸素の存在は必須である。ヨード化反応中に生成されるヨウ化水素酸は、再びヨウ素分子に酸化させて反応に参加することができるようにしなければならない。したがって、酸素が存在しなかったり、その量がヨウ化水素酸に比べて少ない場合、ヨウ化水素酸が酸化反応中に発生する水と共沸を形成して反応後の精製工程に悪影響を及ぼすだけでなく、強力な酸化作用により装備の腐食を深刻にもたらすこととなる。したがって、反応に使用されるヨウ素分子のモル数だけ、またはそれ以上の酸素が要求される。
【0035】
ここで、図2に示された背圧調節器(back pressure regulator)は、ヨード化反応の圧力を調節して加圧反応を可能にし、サンプル処理システム(sample handling system)は、後工程の分析器の保護のために気体中に含まれている蒸気を除去し、ガス分析器は、気体に含まれている二酸化炭素を測定する役割を果たす。
【0036】
本発明で、ヨード化反応のための触媒としては、商業的に最も幅広く使用されるY−type、ZSM5、K−13Xなどの多様な触媒を使用することができ、最も好ましくは、Na−13X触媒が最も有用に使用される。
【0037】
前記芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、およびビフェニルからなる群から選択されるものが好ましく、前記ジ−ヨード化合物は、ジ−ヨードベンゼン、ジ−ヨードナフタレン、およびジ−ヨードビフェニルからなる群から選択されるものが好ましいが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0038】
この時、反応物質として使用される芳香族化合物とヨウ素のモル比は多様に使用される。ヨウ素の量が高いほど、多価のヨード化芳香族(multi−iodinated aromatic)の生成比率が高まる反面、ヨウ素の転換率は低下する。しかしながら、ヨウ素の転換率を高めるために、ヨード化合物対比芳香族化合物の比率を高める場合、ヨウ素の転換率は高めることができるが、ジ−ヨード化合物の生産性が低下するため、目的に応じて適切にその比率を調節して反応を実施するのが好ましい。したがって、このような点を考慮して、芳香族化合物とヨウ素のモル比(芳香族化合物/ヨウ素)は0.3ないし3.0であるのが好ましい。
【0039】
ここで、前記ジ−ヨード化合物は芳香族化合物に対して2モル%乃至10モル%で使用し、前記水は芳香族化合物に対して5モル%乃至30モル%で使用するのが好ましい。
【0040】
また、ここで使用される水の種類は特に限定されず、商業用水、蒸溜水の中から必要に応じて選択して使用することができる。
【0041】
本発明で、反応温度による芳香族化合物のヨード化反応特性を考察した結果、反応温度が高いほど、反応物質(芳香族化合物およびヨウ素)の転換率は高まるが、商業的に最も価値が高く評価される芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物の選択度が低下する結果が得られた。反応圧力も、多様な領域で実施することができ、反応圧力が高まるほど、ヨード化反応の効率は増大することが分かった。このような点を考慮して、前記ヨード化反応は、230℃乃至350℃の温度、常圧乃至5気圧の圧力で反応が行われるのが好ましい。
【0042】
また、前記ジ−ヨード化合物は、製造または購入して単一物質で使用することもできるが、芳香族化合物、そのジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素の反応生成物を多段階の蒸留、結晶化、および固液分離して得られた3種の異性体(パラ(p−)、オルト(o−)、メタ(m−))からなるジ−ヨード化合物に分離/精製して再使用する方法がより効率的である。
【0043】
ジ−ヨード化合物を再使用する方法の好ましい一例を挙げると、図3に示した通りである。図3はベンゼンを芳香族化合物とした場合であり、ヨード化反応器R01から第1蒸留塔C10に移送された芳香族化合物、そのジ−ヨード化合物または水、およびヨウ素の反応生成物のうちの芳香族化合物および水を第1蒸留塔C10の上部に分離/回収する段階と、前記第1蒸留塔C10の下部流出物を第2蒸留塔C20に移送して、モノ−ヨード化合物およびヨウ素を第2蒸留塔の上部に分離する段階と、前記第2蒸留塔C20の下部流出物を第3蒸留塔C30に移送して、前記パラ−ジ−ヨード化合物、オルト−ジ−ヨード化合物、およびメタ−ジ−ヨード化合物からなるジヨード混合物を第3蒸留塔C30の上部に分離した後、結晶化および固液分離器D10に移送する段階と、前記結晶化および固液分離器D10でジヨード混合物から固体芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物および液状芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物、オルト−ジ−ヨード化合物、およびメタ−ジ−ヨード化合物を含む母液を収得する段階と、前記母液中の一部をヨード化反応器R01に再投入して、ジ−ヨード化合物を再使用する段階とを含むことができる。
【0044】
パラ、メタ、オルトジ−ヨードベンゼンの溶融温度は、それぞれ131℃、36℃、27℃である。したがって、ジ−ヨードベンゼンは全て常温25℃で固体で存在すると考えることができるが、前記好ましい一例により実際に第3蒸留塔C30から収得したジ−ヨードベンゼンは、固体と液体が共存していた。これに対して結晶化および固液分離を実施した結果、純粋な固体パラ−ジ−ヨードベンゼンをパラ−ジ−ヨードベンゼン15.4%、メタ−ジ−ヨードベンゼン71.5%、オルト−ジ−ヨードベンゼン15.4%の組成で構成された母液から分離することができた。これによって、3種(パラ、メタ、オルト)の異性体がそれぞれの溶融温度よりも低い温度で共融を形成して、常温で液体で存在することができるという事実も確認することができた。このように母液から得られるジ−ヨードベンゼン化合物(共融)のうちの一部は反応器R01に再投入することによって、本発明の方法を効率的に実現することができる。
【0045】
この時、図4図2および図3に使用されたヨード化反応器R01をより詳細に示した図面であり、ヨード化反応器R01の内部の触媒層と温度検出手段などがより詳細に示されている。ゼオライト触媒は、固体で触媒層支持台およびオイルジャケットにより囲まれてヨード化反応器R01内に満たされており、内部に温度検出端が位置している。反応温度を所定の温度範囲に維持するためのオイルは、オイルジャケットの下部から供給され、ヨード化反応により上昇した反応熱を一部吸収して温度が上昇すれば、オイルジャケットの上部に循環されて回収される過程によって反応温度を維持することができる。
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明が以下の実施例により限定されるのではない。
【0047】
本発明の有用性を立証するために、後述する比較例および実施例で使用される用語の概念について説明する。
【0048】
まず、反応条件で、芳香族/ヨウ素(aromatic/I)の比率は使用された芳香族化合物およびヨウ素のモル比を示すものであり、ジ−ヨードベンゼン化合物を製造しようとする時、ベンゼンはヨウ素分子(ヨウ素原子2個)1モルと反応しなければならない。したがって、芳香族/ヨウ素の比率は下記の数式1のように定義する。
【0049】
(数式1)
芳香族/ヨウ素=[(ベンゼンのモル数×2)+(モノ−ヨードベンゼンのモル数)]/ヨウ素分子のモル数×2
【0050】
次に、反応生成物および反応工程の効率性を考察するための用語の概念を定義する。まず、パラ−ジ−ヨードベンゼンの生産性は、単位時間当り、触媒の単位体積当り生産されるパラ−ジ−ヨードベンゼンの生成速度で定義し、単位はg/L・hrで示す。ヨウ素およびベンゼンの転換率(conversion)は、反応して生成物に転換されたヨウ素およびベンゼンの量を投入されたヨウ素およびベンゼンの量で割った後、その比率を百分率(%)で示したものである。
【0051】
ヨード化反応により生成されるヨード化ベンゼンの種類は、ヨウ素原子1個と反応したモノ−ヨードベンゼン(MIB)、ヨウ素原子2個と反応したジ−ヨードベンゼン(DIB)、ヨウ素原子3個と反応したトリ−ヨードベンゼン(TIB)に分けることができるが、このうちのジ−ヨードベンゼンとトリ−ヨードベンゼンは、それぞれ3種の異性体を有することができる。つまり、ジ−ヨードベンゼンとしては、パラ、オルト、メタジ−ヨードベンゼンの3種の異性体がヨード化反応により生成される。ここで、ジ−ヨードベンゼンの生成量の合計(Total DIB)とは、生成物に含まれているパラ、オルト、メタジ−ヨードベンゼンの重量百分率の合計を示したもので、これを下記の数式2で示した。
【0052】
(数式2)
Total DIB=(p−DIB+m−DIB+o−DIB)/(生成物)×100
【0053】
一方、選択度は、生成物に含まれている3種のジ−ヨードベンゼンのうちのパラ異性体の濃度を重量百分率で示したもので、これを下記の数式3で示した。
【0054】
(数式3)
選択度=(p−DIB)/(p−DIB+m−DIB+o−DIB)×100
【0055】
本発明によれば、商業的価値が高い芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物を高い効率で製造することができるが、これはジ−ヨード化合物の生成量の合計とパラ−ジ−ヨード化合物の選択度が高い時に可能である。
【0056】
比較例1
図1に示された装置を使用して、反応器にジ−ヨードベンゼンを添加せずに、ベンゼン(時間当り176.4g)とヨウ素(時間当り275.0g)、そして空気のみを原料として使用した。ヨウ素および空気は共に予熱器を経て約200℃まで予熱して反応器に投入し、ベンゼンは他の投入ラインを通じてから蒸発器を経て蒸気状態に転換した後、同様に約200℃まで予熱して反応器に投入した。反応温度は、反応器のジャケットに入るオイルの温度を調節して制御し、反応器中央部の温度が280℃に維持されるようにした。一方、反応器内の温度は全ての部分で一定に維持されなかった。反応器の上部の温度は所望の実験温度よりも高く、流体の流れる方向に下がるほど反応温度が低くなった。そこで、反応器内の温度分布を調べるために、反応器の中央部に温度感知装置(ThermowellおよびThermocouple)を設置して、反応器の上/中/下部の温度を固定的に観察し、上/下に移動可能な熱電対を使用いて反応器内で最も高い温度を示す地点を周期的に観察した。反応は、常圧の条件で連続工程で実施し、反応条件に到達して24時間が経過した後に、試料採取および分析を実施した。各実験条件および結果を下記表1に記載した。
【0057】
比較例2
図1に示された装置を使用して、比較例1と同一な条件でヨード化反応を実施することに当り、ベンゼン(時間当り265.2g)およびヨウ素(時間当り412.5g)を投入した。この条件では、反応温度の安定的な制御に失敗した。つまり、反応器の上部の温度が約380℃以上に上がって反応を中断した。反応温度がこれより高くなれば、原料であるベンゼンの燃焼反応をもたらして、暴走反応および炭素堆積物の生成を促進することとなる。
【0058】
実施例1
図2に示された装置を使用して、比較例1と同一な条件でヨード化反応を実施することに当り、ベンゼン(時間当り565.2g)、ジ−ヨードベンゼン(時間当り83.4g)、およびヨウ素(時間当り900.1g)を投入した。各実験条件および結果を下記の表1に記載した。ここで使用したジ−ヨードベンゼンは、単一物質でなく、3種(パラ、オルト、メタ)の異性体からなるジ−ヨードベンゼンを結晶化させた後、固液分離して、液体で存在するジ−ヨードベンゼン混合物(パラ、オルト、メタ)を使用した。
【0059】
実施例2
図2に示された装置を使用して、比較例1と同一な条件でヨード化反応を実施することに当り、ベンゼン(時間当り550.0g)、水(時間当り35g)、およびヨウ素(時間当り744.1g)を投入した。各実験条件および結果を下記の表1に記載した。
【表1】
【0060】
前記表1から分かるように、ジ−ヨードベンゼンの生成量の合計(Total DIB)、パラ−ジ−ヨードベンゼンの選択度、原料の転換率など、大部分の反応特性側面で、ベンゼンのみを反応物質として使用した比較例1と、ベンゼンにジ−ヨードベンゼンを反応物質として添加して共に反応させた実施例1またはベンゼンに水を反応物質として添加して共に反応させた実施例2とを比較すると、類似した結果が得られた。しかしながら、パラ−ジ−ヨードベンゼンの生産性では大きな差を示した。つまり、実施例1および実施例2では比較例1より3倍以上の生産性が得られた。これは、反応器の温度の制御による問題と分析される。パラ−ジ−ヨードベンゼンの生産性を高めるためには、原料の投入流量を増加させなければならない。しかしながら、比較例2から分かるように、ベンゼンのみを有機物反応物質として使用した時、反応物質の投入流量を増加させると、反応器の上部の温度が過剰に上がって、反応を継続することができなかった。比較例1でも、温度調節地点である反応器中央部の温度よりも上部の温度が約40℃以上高く維持された。また、原料の燃焼反応により生成される二酸化炭素の量と他の副反応により生成される炭素堆積物の生成量を比較した時、実施例1および実施例2の結果が比較例1より遥かに優れていることが分かった。これも、反応器の過剰な温度による問題と分析される。
【0061】
したがって、本発明の製造方法によれば、所望の反応物質として芳香族化合物およびそのジ−ヨード化合物または水を使用してヨード化反応させることによって、反応器の温度を安定的に制御することができ、それによって単位触媒当りの生産性を向上させることができ、所望のジ−ヨード芳香族化合物および特に芳香族化合物のパラ−ジ−ヨード化合物の生産性を高めることができ、芳香族ヨード化化合物の製造に幅広く使用されることができる。
【符号の説明】
【0062】
R01:ヨード化反応器
C10:第1蒸留塔
C20:第2蒸留塔
C30:第3蒸留塔
D10:結晶化および固液分離器
図1
図2
図3
図4