【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、一端に第1自由端部、他端に第1接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の一方に取り付けられる第1羽根を有する第1筒体と、
一端に第2自由端部、他端に第2接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の他方に取り付けられる第2羽根を有する第2筒体であって、前記第2接続用端部を前記第1接続用端部に隣接し前記第1筒体に対して長手軸線方向で整合して、該第1筒体に対して相対的に回転可能に接続される第2筒体と、
該第2筒体の前記第2接続用端部に固定された軸受部材と、
前記第1筒体の前記第1自由端部に固定された第1端部と、前記第2筒体内で前記第2接続用端部に隣接した第2端部と、前記第1端部から前記第1筒体内を同心状に延びて前記軸受部材を通り前記第2接続用端部に至る軸本体とを有し、前記軸受部材によって回転可能に支持されている軸と、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第1筒体内で前記軸本体の周りに同心状に設けられた第1コイルスプリングであって、前記軸の第1端部に連結される第1端部と前記軸受部材に連結される第2端部とを有する第1コイルスプリングと、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第2筒体内に同心状に設けられた第2コイルスプリングであって、前記軸の第2端部に連結される第1端部と前記第2筒体の第2自由端部に連結される第2端部とを有する第2コイルスプリングと、
を備え、
前記第1及び第2筒体が、開扉動作によって相対的に回転されたときに、前記第1及び第2コイルバネが巻き締められて閉扉力を畜勢するようにされており、
前記軸は前記第1自由端部に隣接した位置に前記軸本体よりも大径とされた第1カラーを有し、
前記軸受部材は、前記第1筒体内の前記第1接続用端部に隣接した位置に前記軸本体の周りに配置された第2カラーを有し、
前記第1コイルスプリングが、該第1コイルスプリングの前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記第1カラーの周りに近接して配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第1フック部を有し、該第1フック部が前記第1カラーに係止されており、該第1コイルスプリングの前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記第2カラーの周りに近接して配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第2フック部を有し、該第2フック部が前記第2カラーに係止されていることを特徴とする、ドアヒンジを提供する。
【0008】
このドアヒンジでは、第1コイルスプリングは、その両端に形成された第1及び第2フック部が、第1コイルスプリングの半径方向内側に向かって延びているので、第1コイルスプリングが閉扉動作に伴って巻き締められる際に第1コイルスプリングの両端のフック部に係る荷重の向きは、第1コイルスプリングの長手軸線方向に対して概ね垂直な平面内での方向(カラーの接線方向)となる。また、第1コイルスプリングはその両端部において、巻回部の一部が前記第1カラー及び第2カラーの周りに近接して配置され(すなわち、巻回部が第1カラー及び第2カラーの周囲に巻かれ)ているので、これら両端部から当該第1コイルスプリングに対してかけられる巻き締めのトルクは、該第1コイルスプリングの両端部が中心軸線を中心に安定した状態でかけられる。これらのことのため、第1コイルスプリングは全体的に安定した状態で巻き締められることが可能となり、当該第1コイルスプリングがその長手中心軸線が湾曲するように変形することは抑制され、従って、第1筒体の内周面や第1筒体内に同心状に設けられた前記軸の外周面に係合するのを抑制することが可能となる。更に、このドアヒンジでは、第1コイルスプリングの両端部が、軸本体より大径とされた第1及び第2カラーの周りに巻かれるように配置され、従って、前記軸本体との間隔は大きくなっている。このため、第1コイルスプリングが軸の外周面と係合するのを大幅に抑制することができる。本願発明者は、本発明のドアヒンジを開発する中で、以下のようなことに気付いた。すなわち、前述した従来の第1及び第2筒体からなるドアヒンジにおいて、第1コイルスプリングが破断したものを分解して調べてみると、第1筒体の内周面及び第1筒体内を通る軸の外周面に大きな擦過傷が残されているということである。これは、開扉動作に伴って第1コイルスプリングが巻き締められるときに、その長手中心軸線が湾曲したり蛇行したりするような変形が第1コイルスプリングに生じ、その為に第1筒体の内周面や第1筒体内を通る軸の外周面と強く摩擦係合したためと考えられる。このような摩擦係合が例えばコイルスプリングの中央部分で生じれば、当該コイルスプリングの巻き締めは、極端な場合、その半分の長さの部分でのみ行われる(負担する)ことになり、その端部にあるフック部には全体で巻き締められた場合に較べて極めて過大な曲げ応力が掛かることになる。本発明に係る上記ドアヒンジでは、開扉に伴い第1コイルスプリングが巻き締められるときに、第1筒体の内周面や軸の外周面への係合を上述のように抑制することができ、その分、従来のドアヒンジにおいて生じていたであろう、フック部への過大な曲げ応力を回避することができる。
【0009】
より具体的には、前記第1及び第2コイルスプリングは、横断面が円形のバネ材で作られるようにすることができる。
【0010】
前記背景技術で述べたような横断面が四角形のバネ材により作られたコイルスプリング(段落0003の最下行参照)と同等の弾性力を有するコイルスプリングを横断面が円形のバネ材により作るには、比較的に大径のバネ材を使用する必要があるが、本発明のドアヒンジにおいては、上述のように巻き締め時のコイルスプリングの長手中心軸線の湾曲や蛇行が抑えられることにより、コイルスプリングと第1筒体の内周面との隙間を小さく設定することができるので、大径のバネ材を用いることにより当該コイルスプリングの直径が大きくなっても第1筒体の内周面との接触が生じにくくすることができる。従って、必要な弾性力を得るために、比較的に大径とはなるが製造が容易である円形のバネ材のコイルスプリングを使用することができるようになるので、従来の四角形のバネ材を使用するのに比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
より具体的には、前記第1カラーが前記軸本体と別体として形成された筒状部材とされ、前記軸本体に固定されているようにすることができる。
【0012】
より具体的には、前記第1カラーが、前記長手
軸線方向で延びる凹部を有する筒状部材とされ、前記第1コイルスプリングの前記第1フック部が該凹部に係合するようにされているようにすることができる。
【0013】
第1コイルスプリングの第1フック部が、長手軸線方向に延びる凹部に係合されているので、第1コイルスプリングが巻き締められ又巻き戻されることにより軸方向に伸縮した際に第1フック部の係合位置が凹部内でその長手
軸線方向で変位可能となる。それによって、第1コイルスプリングの無理がない巻き締め、巻き戻しが行われ、フック部への過大な負荷を抑制することが出来る。
【0014】
さらに具体的には、前記第1カラーが、前記長手
軸線方向で延びるスリットを有する筒状部材とされ、該スリットの少なくともとも一部が半径方向内側に折り曲げられて形成された係止用折り曲げ部を有し、前記軸の前記第1端部には第1長手方向溝が設けられ、前記係止用折り曲げ部が該第1長手方向溝に係合して、当該第1カラーが周方向で回転しないように固定されているようにすることができる。
【0015】
このような構成とすることで、軸の第1端部を第1カラーに挿入するだけで、容易に第1カラーを軸に対して周方向には回転しないように固定することができ、ドアヒンジの組み付け性が向上する。
【0016】
より具体的には、前記スリットが、周方向で幅の狭い部分と、幅の広い部分とを有し、前記幅の狭い部分は半径方向内側に折り曲げられて前記係止用折り曲げ部を形成し、前記凹部が該係止用折り曲げ部により構成され、該係止用折り曲げ部に前記第1フック部が係止されるようにすることができる。
【0017】
さらに具体的には、前記第1コイルスプリングの前記第1端部における複数の巻回部が前記第1カラーの周りに設定され、前記第2端部における複数の巻回部が前記第2カラーの周りに設定されているようにすることができる。
【0018】
このように第1コイルスプリングの両端において、複数の巻回部をカラーの周りに設定することにより、当該第1コイルスプリングがより安定した状態で、巻き締められることを可能とする。
【0019】
好ましくは、前記第2コイルスプリングが前記第1コイルスプリングと同径同サイズとされ、
前記軸の前記第2端部が前記第1カラーと同じ外径を有し、且つ、その表面に第2長手方向溝を有し、前記第2筒体の前記第2自由端部が該第2自由端部を閉じるようにして固定された円柱状のスプリング座を有し、
前記第2コイルスプリングが、前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記軸の第2端部の周りに配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第1フック部を有し、該第1フック部が前記第2長手方向溝に係止され、前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記スプリング座の周りに配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第2フック部を有し、該第2フック部が前記スプリング座に係止されるようにすることができる。
【0020】
このようにすることにより、本ドアヒンジで使用されるコイルスプリングを全て単一サイズ、単一形状とすることができ、製作コストを抑えることが出来る。
【0021】
以下、添付図面に基づき本発明に係るドアヒンジの実施形態を説明する。