特許第5902918号(P5902918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902918
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ドアヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/12 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   E05F1/12
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-244153(P2011-244153)
(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公開番号】特開2013-100656(P2013-100656A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 正志
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−163279(JP,U)
【文献】 実公昭52−034841(JP,Y1)
【文献】 実開昭54−061446(JP,U)
【文献】 特開2003−155862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に第1自由端部、他端に第1接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の一方に取り付けられる第1羽根を有する第1筒体と、
一端に第2自由端部、他端に第2接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の他方に取り付けられる第2羽根を有する第2筒体であって、前記第2接続用端部を前記第1接続用端部に隣接し前記第1筒体に対して長手軸線方向で整合して、該第1筒体に対して相対的に回転可能に接続される第2筒体と、
該第2筒体の前記第2接続用端部に固定された軸受部材と、
前記第1筒体の前記第1自由端部に固定された第1端部と、前記第2筒体内で前記第2接続用端部に隣接した第2端部と、前記第1端部から前記第1筒体内を同心状に延びて前記軸受部材を通り前記第2接続用端部に至る軸本体とを有し、前記軸受部材によって回転可能に支持されている軸と、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第1筒体内で前記軸本体の周りに同心状に設けられた第1コイルスプリングであって、前記軸の第1端部に連結される第1端部と前記軸受部材に連結される第2端部とを有する第1コイルスプリングと、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第2筒体内に同心状に設けられた第2コイルスプリングであって、前記軸の第2端部に連結される第1端部と前記第2筒体の第2自由端部に連結される第2端部とを有する第2コイルスプリングと、
を備え、
前記第1及び第2筒体が、開扉動作によって相対的に回転されたときに、前記第1及び第2コイルバネが巻き締められて閉扉力を畜勢するようにされており、
前記軸は前記第1自由端部に隣接した位置に前記軸本体よりも大径とされた第1カラーを有し、
前記軸受部材は、前記第1筒体内の前記第1接続用端部に隣接した位置に前記軸本体の周りに配置された第2カラーを有し、
前記第1コイルスプリングが、該第1コイルスプリングの前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記第1カラーの周りに近接して配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第1フック部を有し、該第1フック部が前記第1カラーに係止されており、該第1コイルスプリングの前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記第2カラーの周りに近接して配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第2フック部を有し、該第2フック部が前記第2カラーに係止されていることを特徴とする、ドアヒンジ。
【請求項2】
前記第1及び第2コイルスプリングは、横断面が円形のバネ材で作られることを特徴とする、請求項1に記載のドアヒンジ。
【請求項3】
前記第1カラーが前記軸本体と別体として形成された筒状部材とされ、前記軸本体に固定されている、請求項1又は2に記載のドアヒンジ。
【請求項4】
前記第1カラーが、前記長手軸線方向で延びる凹部を有する筒状部材とされ、前記第1コイルスプリングの前記第1フック部が該凹部に係合するようにされている、請求項3に記載のドアヒンジ。
【請求項5】
前記第1カラーが、前記長手軸線方向で延びるスリットを有する筒状部材とされ、該スリットの少なくとも一部が半径方向内側に折り曲げられて形成された係止用折り曲げ部を有し、前記軸の前記第1端部には第1長手方向溝が設けられ、前記係止用折り曲げ部が該第1長手方向溝に係合して、当該第1カラーが周方向で回転しないように固定されている、請求項4に記載のドアヒンジ。
【請求項6】
前記スリットが、周方向で幅の狭い部分と、幅の広い部分とを有し、前記幅の狭い部分は半径方向内側に折り曲げられて前記係止用折り曲げ部を形成し、前記凹部が該係止用折り曲げ部により構成され、該係止用折り曲げ部に前記第1フック部が係止されるようにした、請求項5に記載のドアヒンジ。
【請求項7】
前記第1コイルスプリングの前記第1端部における複数の巻回部が前記第1カラーの周りに設定され、前記第2端部における複数の巻回部が前記第2カラーの周りに設定されている、請求項1乃至6の何れかに記載のドアヒンジ。
【請求項8】
前記第2コイルスプリングが前記第1コイルスプリングと同径同サイズとされ、
前記軸の前記第2端部が前記第1カラーと同じ外径を有し、且つ、その表面に第2長手方向溝を有し、前記第2筒体の前記第2自由端部が該第2自由端部を閉じるようにして固定された円柱状のスプリング座を有し、
前記第2コイルスプリングが、前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記軸の第2端部の周りに配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第1フック部を有し、該第1フック部が前記第2長手方向溝に係止され、前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記スプリング座の周りに配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第2フック部を有し、該第2フック部が前記スプリング座に係止されるようになされた、請求項1乃至7の何れかに記載のドアヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵されたコイルスプリングの弾性力によってドアに回転付勢力を与えるドアヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドアヒンジは、通常、筒体と、該筒体内に同軸状に設定されるコイルスプリングと、筒体の一端を閉じるように該筒体に対して同軸状にして相対的に回転可能に取り付けられた端部壁部材とを有するドアクローザを備える。コイルスプリングは、その一端が筒体に取り付けられ、他端が端部壁部材に取り付けられており、ドアが開くことに伴って端部壁部材と筒体とが相対的に回転することにより、コイルスプリングが捻り巻かれて閉扉力を生じるようになっている(特許文献1、2、3)。
【0003】
出願人は、2つの筒体を同軸状にして上下に重ねて相対的に回転可能に接続し、両筒体内にそれぞれコイルスプリングを設定し、一方の筒体をドア枠側に、他方の筒体をドア側に固定して、ドアが開かれるときに、これら2つの筒体間に相対的回転が生じることにより、2つのコイルスプリングに閉扉のための弾性力が畜勢されるようにしたドアヒンジを製造している。このドアヒンジでは、2つのコイルスプリングを用いることにより、一個毎のコイルスプリングの直径を小さくすることができ、ドアヒンジとしての外径を小さくすることが出来る。また、このドアヒンジでは、ドア側に固定される筒体の回転をドア枠側に固定される筒体内のコイルスプリングに伝えるため、ドア側に固定される筒体の自由端から該筒体内を延びてドア枠側に固定される筒体との接続部分を越えてドア枠側の筒体内のコイルスプリングの端部に連結された軸が設けられている。従って、ドア側に固定される筒体内のコイルスプリングは、この筒体の内周面と上記軸の外周面との間の限られた筒状空間に設定されることになるため、そのサイズを小さくする必要があり、一方、小さくても所要の弾性力を生じることが出来るようにする必要がある。このため、このコイルスプリングは、通常使用される断面が円形のバネ材ではなく、小さなサイズでも大きな弾性力を生じることが出来る横断面が四角形のバネ材で作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−151664号
【特許文献2】実公昭58-17108号
【特許文献3】特開平9−158605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアヒンジには、通常は10万回以上の開閉動作を可能とする耐久性が求められるが、実際にはそれ以下の開閉動作回数でコイルスプリング(特に、コイルスプリングの端部を折り曲げて形成されるフック部)が破断してしまう場合がある。上述の特許文献に開示されているドアヒンジでは、断面が円形のバネ材を用いたコイルスプリングを使用しており、その両端を当該コイルスプリングの軸線方向でそれぞれ外側に折り曲げ、所要の部位に接続するようにしているが、この折り曲げ部分が破断してしまうことが多い。これは、コイルスプリングの巻き締め巻き戻しにより当該コイルスプリングの軸線方向長さが変化するため、フック部をある程度長くしなければならず折り曲げ部に大きな曲げモーメントがかかること、ドアの開閉に際して上記軸方向に延びるフック部から折り曲げ部分にかかる曲げ応力は当該コイルスプリングの軸線方向及び周方向の複合した方向でかけられること等が原因として考えられている。
【0006】
本発明は上述の2つの筒体及び2つのコイルスプリングを備えたドアヒンジにおいて、コイルスプリングのフック部に過大な応力集中が発生しないようにして、50万回以上の開閉動作を十分に可能とするようなドアヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、一端に第1自由端部、他端に第1接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の一方に取り付けられる第1羽根を有する第1筒体と、
一端に第2自由端部、他端に第2接続用端部を有し、外側面にドア及びドア枠の他方に取り付けられる第2羽根を有する第2筒体であって、前記第2接続用端部を前記第1接続用端部に隣接し前記第1筒体に対して長手軸線方向で整合して、該第1筒体に対して相対的に回転可能に接続される第2筒体と、
該第2筒体の前記第2接続用端部に固定された軸受部材と、
前記第1筒体の前記第1自由端部に固定された第1端部と、前記第2筒体内で前記第2接続用端部に隣接した第2端部と、前記第1端部から前記第1筒体内を同心状に延びて前記軸受部材を通り前記第2接続用端部に至る軸本体とを有し、前記軸受部材によって回転可能に支持されている軸と、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第1筒体内で前記軸本体の周りに同心状に設けられた第1コイルスプリングであって、前記軸の第1端部に連結される第1端部と前記軸受部材に連結される第2端部とを有する第1コイルスプリングと、
複数の巻回部を有し、全長にわたり略同径とされ、前記第2筒体内に同心状に設けられた第2コイルスプリングであって、前記軸の第2端部に連結される第1端部と前記第2筒体の第2自由端部に連結される第2端部とを有する第2コイルスプリングと、
を備え、
前記第1及び第2筒体が、開扉動作によって相対的に回転されたときに、前記第1及び第2コイルバネが巻き締められて閉扉力を畜勢するようにされており、
前記軸は前記第1自由端部に隣接した位置に前記軸本体よりも大径とされた第1カラーを有し、
前記軸受部材は、前記第1筒体内の前記第1接続用端部に隣接した位置に前記軸本体の周りに配置された第2カラーを有し、
前記第1コイルスプリングが、該第1コイルスプリングの前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記第1カラーの周りに近接して配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第1フック部を有し、該第1フック部が前記第1カラーに係止されており、該第1コイルスプリングの前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記第2カラーの周りに近接して配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げられて形成された第2フック部を有し、該第2フック部が前記第2カラーに係止されていることを特徴とする、ドアヒンジを提供する。
【0008】
このドアヒンジでは、第1コイルスプリングは、その両端に形成された第1及び第2フック部が、第1コイルスプリングの半径方向内側に向かって延びているので、第1コイルスプリングが閉扉動作に伴って巻き締められる際に第1コイルスプリングの両端のフック部に係る荷重の向きは、第1コイルスプリングの長手軸線方向に対して概ね垂直な平面内での方向(カラーの接線方向)となる。また、第1コイルスプリングはその両端部において、巻回部の一部が前記第1カラー及び第2カラーの周りに近接して配置され(すなわち、巻回部が第1カラー及び第2カラーの周囲に巻かれ)ているので、これら両端部から当該第1コイルスプリングに対してかけられる巻き締めのトルクは、該第1コイルスプリングの両端部が中心軸線を中心に安定した状態でかけられる。これらのことのため、第1コイルスプリングは全体的に安定した状態で巻き締められることが可能となり、当該第1コイルスプリングがその長手中心軸線が湾曲するように変形することは抑制され、従って、第1筒体の内周面や第1筒体内に同心状に設けられた前記軸の外周面に係合するのを抑制することが可能となる。更に、このドアヒンジでは、第1コイルスプリングの両端部が、軸本体より大径とされた第1及び第2カラーの周りに巻かれるように配置され、従って、前記軸本体との間隔は大きくなっている。このため、第1コイルスプリングが軸の外周面と係合するのを大幅に抑制することができる。本願発明者は、本発明のドアヒンジを開発する中で、以下のようなことに気付いた。すなわち、前述した従来の第1及び第2筒体からなるドアヒンジにおいて、第1コイルスプリングが破断したものを分解して調べてみると、第1筒体の内周面及び第1筒体内を通る軸の外周面に大きな擦過傷が残されているということである。これは、開扉動作に伴って第1コイルスプリングが巻き締められるときに、その長手中心軸線が湾曲したり蛇行したりするような変形が第1コイルスプリングに生じ、その為に第1筒体の内周面や第1筒体内を通る軸の外周面と強く摩擦係合したためと考えられる。このような摩擦係合が例えばコイルスプリングの中央部分で生じれば、当該コイルスプリングの巻き締めは、極端な場合、その半分の長さの部分でのみ行われる(負担する)ことになり、その端部にあるフック部には全体で巻き締められた場合に較べて極めて過大な曲げ応力が掛かることになる。本発明に係る上記ドアヒンジでは、開扉に伴い第1コイルスプリングが巻き締められるときに、第1筒体の内周面や軸の外周面への係合を上述のように抑制することができ、その分、従来のドアヒンジにおいて生じていたであろう、フック部への過大な曲げ応力を回避することができる。
【0009】
より具体的には、前記第1及び第2コイルスプリングは、横断面が円形のバネ材で作られるようにすることができる。
【0010】
前記背景技術で述べたような横断面が四角形のバネ材により作られたコイルスプリング(段落0003の最下行参照)と同等の弾性力を有するコイルスプリングを横断面が円形のバネ材により作るには、比較的に大径のバネ材を使用する必要があるが、本発明のドアヒンジにおいては、上述のように巻き締め時のコイルスプリングの長手中心軸線の湾曲や蛇行が抑えられることにより、コイルスプリングと第1筒体の内周面との隙間を小さく設定することができるので、大径のバネ材を用いることにより当該コイルスプリングの直径が大きくなっても第1筒体の内周面との接触が生じにくくすることができる。従って、必要な弾性力を得るために、比較的に大径とはなるが製造が容易である円形のバネ材のコイルスプリングを使用することができるようになるので、従来の四角形のバネ材を使用するのに比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
より具体的には、前記第1カラーが前記軸本体と別体として形成された筒状部材とされ、前記軸本体に固定されているようにすることができる。
【0012】
より具体的には、前記第1カラーが、前記長手軸線方向で延びる凹部を有する筒状部材とされ、前記第1コイルスプリングの前記第1フック部が該凹部に係合するようにされているようにすることができる。
【0013】
第1コイルスプリングの第1フック部が、長手軸線方向に延びる凹部に係合されているので、第1コイルスプリングが巻き締められ又巻き戻されることにより軸方向に伸縮した際に第1フック部の係合位置が凹部内でその長手軸線方向で変位可能となる。それによって、第1コイルスプリングの無理がない巻き締め、巻き戻しが行われ、フック部への過大な負荷を抑制することが出来る。
【0014】
さらに具体的には、前記第1カラーが、前記長手軸線方向で延びるスリットを有する筒状部材とされ、該スリットの少なくともとも一部が半径方向内側に折り曲げられて形成された係止用折り曲げ部を有し、前記軸の前記第1端部には第1長手方向溝が設けられ、前記係止用折り曲げ部が該第1長手方向溝に係合して、当該第1カラーが周方向で回転しないように固定されているようにすることができる。
【0015】
このような構成とすることで、軸の第1端部を第1カラーに挿入するだけで、容易に第1カラーを軸に対して周方向には回転しないように固定することができ、ドアヒンジの組み付け性が向上する。
【0016】
より具体的には、前記スリットが、周方向で幅の狭い部分と、幅の広い部分とを有し、前記幅の狭い部分は半径方向内側に折り曲げられて前記係止用折り曲げ部を形成し、前記凹部が該係止用折り曲げ部により構成され、該係止用折り曲げ部に前記第1フック部が係止されるようにすることができる。
【0017】
さらに具体的には、前記第1コイルスプリングの前記第1端部における複数の巻回部が前記第1カラーの周りに設定され、前記第2端部における複数の巻回部が前記第2カラーの周りに設定されているようにすることができる。
【0018】
このように第1コイルスプリングの両端において、複数の巻回部をカラーの周りに設定することにより、当該第1コイルスプリングがより安定した状態で、巻き締められることを可能とする。
【0019】
好ましくは、前記第2コイルスプリングが前記第1コイルスプリングと同径同サイズとされ、
前記軸の前記第2端部が前記第1カラーと同じ外径を有し、且つ、その表面に第2長手方向溝を有し、前記第2筒体の前記第2自由端部が該第2自由端部を閉じるようにして固定された円柱状のスプリング座を有し、
前記第2コイルスプリングが、前記第1端部において、前記巻回部の一部が前記軸の第2端部の周りに配置され、該第1端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第1フック部を有し、該第1フック部が前記第2長手方向溝に係止され、前記第2端部において、前記巻回部の一部が前記スプリング座の周りに配置され、該第2端部の先端から半径方向内側に折り曲げて形成した第2フック部を有し、該第2フック部が前記スプリング座に係止されるようにすることができる。
【0020】
このようにすることにより、本ドアヒンジで使用されるコイルスプリングを全て単一サイズ、単一形状とすることができ、製作コストを抑えることが出来る。
【0021】
以下、添付図面に基づき本発明に係るドアヒンジの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るドアヒンジの正面部分断面図である。
図2図1のドアヒンジのII−II線に沿う側面断面図である。
図3図1のドアヒンジのIII−III線に沿う側面断面図である。
図4図1のドアヒンジの第1カラーの正面図である。
図5図4の第1カラーの側面図である。
図6図1のドアヒンジの軸の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るドアヒンジ100は、ドアに取り付けられる第1羽根118が固定された第1筒体112と、ドア枠に取り付けられる第2羽根128が固定された第2筒体122と、を備えている。該第1及び第2筒体112、122は長手軸線10方向で整合して配置され、第1筒体112の第1接続用端部116と第2筒体122の第2接続用端部126とを隣接して、当該第1及び第2筒体112,122が相対的に回転可能に接続されている。第1筒体112内には軸140が配置されており、該軸140は、その第1端部142が第1筒体112の第1自由端部114に固定され、第2端部144が第1筒体112の第1接続用端部を通り第2筒体122内に至るようにされている。第1筒体112の第1自由端部114には軸140を該第1筒体112に固定するためのリングブッシュ193が圧入されて取り付けられている。すなわち、リングブッシュ193の中心に形成された穴には第1長手方向溝147が形成されている軸140の第1端部142が挿入され、該第1長手方向溝147に図で見て上側からセットピン194を打ち込むことで軸140とリングブッシュ193とを相対的に回転しないように固定している。軸140の第2端部144は、第2筒体122の第2接続用端部126に圧入固定された軸受部材130により回転可能に支持されている。第1筒体112内には軸140の第1及び第2端部間の軸本体146の周りに同軸状にしてねじりコイルスプリングである第1コイルスプリング170が設定されており、その両端はそれぞれ半径方向内側に折り曲げられて第1及び第2フック部172、174とされている。第1フック部172は、軸140の第1端部142の周りに固定された第1カラー150に係止され、第2フック部174は、軸受け部材130に一体的に形成された第2カラー160に係止されている。軸本体146の外径は第1コイルスプリング170の内周面に近接するが接触しない程度とされている。
【0024】
第1カラー150は、図4、5に示すように略筒状の形態を有しており、長手軸線方向に延びるスリット152を有している。該スリット152は幅の狭い部分154と幅の広い部分156とに分れており、幅の狭い部分154の両側を半径方向内側に向かって折り曲げることで係止用折り曲げ部158が形成されている。図2に示すように第1カラー150は、軸140の第1端部142上に同軸状に配置して、第1カラー150の係止用折り曲げ部158の内側面が軸140の第1長手方向溝147に係合するようにすることにより、第1カラー150が軸140に対して回転しないようにされている。係止用折り曲げ部158の幅の広い部分156側の端面159は、図6に示す軸140の第1端部114に設けた第1長手方向溝147の第2端部側の端部148、具体的には、軸140の第2端部144に向かうに従い次第に浅くなって終端するようにした端部148に係合して、第1カラー150が軸140の第2端部144側に移動しないようにもなっている。このような第1カラー150は板金加工により作製できるので、比較的に安価に製造できる。
【0025】
第1コイルスプリング170の第1フック部172及び第2フック部174は、本実施形態では、図2及び図3から分かるように、第2フック部174は第1フック部172よりも短くされているが、これは、第1カラー150を軸140に取り付けた状態で、第1コイルスプリング170を軸140の第1端部142側から入れる際に、第2フック部174が第1カラー150と干渉して円滑に挿入できなくなることを防止するためである。第1フック部172は、図2に示すように、第1カラー150の係止用折り曲げ部158の外側面に係止され、第2フック部174は、図3に示すように、第2カラー160に設けられたフック係止溝162に係止される。このようにして第1コイルスプリング170の第1フック部172は第1筒体112側に実質的に固定され、第2フック部174は第2筒体122側に実質的に固定される。従って、第1筒体112が第2筒体122に対して同軸状に相対的に回転すると、第1コイルスプリング170の第2フック部174は固定された状態で、第1フック部172側が回転され、第1フック部172と第2フック部174との間で第1コイルスプリング170が捻られる。このドアヒンジ100をドアに取り付けるときには、ドアが開かれるときに、第1コイルスプリング170が巻き締められるようにして、該第1コイルスプリング170に閉扉力が畜勢されるようにする。
【0026】
図2から分かるように、第1カラー150の外周面と第1コイルスプリング170の内周面は近接しているので、第1フック部172はその根元の曲げ部173に近接する位置まで係止用折り曲げ部158に係合されている。すなわち、第1フック部172は短くても第1カラー150と必要な係合を行うことができ、従って、この短くした第1フック部から曲げ部173にかかる曲げモーメントは小さく抑えることができる。図3から分かるように、第2フック部174においても同様に第2カラー160の外周面と第1コイルスプリング170の内周面は近接しており、従って、第2フック部174を短くすることが出来、根元の曲げ部175への曲げモーメントを小さく抑えることが出来る。
【0027】
複数の巻回部からなる第1コイルスプリング170は、第1フック部172側のおよそ3巻き分が第1カラー150の周りに配置され、第2フック側のおよそ3巻き分が第2カラー160の周りに配置されている。例えば、コイルスプリングの両端部を、前述した従来のもののように、軸線方向外側に折り曲げてフック部とし、ドアの開く際に、このフック部に相対的に反対方向のトルクが係るようにして当該コイルスプリングを巻き締めようとするときには、該コイルスプリングがその長手中心軸線が湾曲したり蛇行したりするように変形し易いものとなるが、本発明に係るドアヒンジでは、上記のように、複数の巻回部が各カラー150,160の外周面の周りに配置されることで、これらの巻回部が各カラー150,160の周りで(従って、長手中心軸線の周りで)安定して巻き締められることになり、第1コイルスプリング170全体が安定した状態で巻き締められ、このため、上述のような湾曲が抑制される。
【0028】
本実施形態に係るドアヒンジ100は、第2筒体122内に第2コイルスプリング180をさらに備えている。該第2コイルスプリング180は第1筒体112内の第1コイルスプリング170と同様な形態を有するものである。軸140の第2端部144は軸受部材130を越えて第2コイルスプリング180の端部内にまで延在しており、該延在している部分に第1長手方向溝147と同様の第2長手方向溝149を有している。第2長手方向溝149を有する第2端部144は軸本体146よりも大きな外径を有しており、その大きさは第1カラー150の外径とほぼ同じとなっている。また、第2筒体122の第2自由端部124内にはスプリング座190が挿入されており、止めピン196で第2筒体122に固定されている。スプリング座190は、軸140の第2端部144とほぼ同じ外径を有し、第2コイルスプリング180の端部の中に同軸状に延在し、フック係止溝191を有するスプリング係止部192を備えている。第2コイルスプリング180の両端部は、第1コイルスプリング170と同様に、半径方向内側に折り曲げられて第1フック部182及び第2フック部184とされており、それぞれ、軸140の第2長手方向溝149及びスプリング座190のフック係止溝191に係止されている。第2筒体122に対して第1筒体112が同軸状に相対的に回転すると、第1筒体112に固定された軸140も回転するので、軸140の第2端部144にその一端が係止されている第2コイルスプリング180も捻られることになる。つまり、第1筒体112が回転すると、第1コイルスプリング170とともに第2コイルスプリング180も同時に捻られることになるので、第1筒体112に対する回転付勢力(閉扉力)は第1コイルスプリング170と第2コイルスプリング180とがそれぞれ発生する弾性力の合力となる。
【0029】
以上の効果の結果として、本実施形態に係るドアヒンジ100は、第1及び第2筒体112,122の内周と第1及び第2コイルスプリング170、180の外周との各隙間は極めて小さいものとすることが出来、結果として当該ドアヒンジを小径化することができた。このように小型化をしても開閉動作時に各コイルスプリング170、180は各筒体112,122の内周面には接触しないか、または接触したとしても大きな摩擦力は発生しない程度の軽い接触しか起こらない。コイルスプリング170、180と筒体112、122との間の過度の接触を無くしたことにも起因して、コイルスプリング170、180の特にフック部172,174,182,184への過度の応力が発生しなくなったので、本実施形態に係るドアヒンジ100は、100万回の開閉動作においてもコイルスプリング170、180は破損せず、正常に動作することが確認された。
【0030】
以上、本発明に係るドアヒンジの一実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は該実施形態に限定されるものではない。例えば、第1カラーは、軸本体の端部に該軸本体よりも大径の部分を設けるためのものであり、発明概念としては、軸本体146と一体として形成しても良い。また、第2カラー160は軸受部材と別体としても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 長手軸線 100 ドアヒンジ
112 第1筒体 114 第1自由端部
116 第1接続用端部 118 第1羽根
122 第2筒体 124 第2自由端部
126 第2接続用端部 128 第2羽根
130 軸受部材 140 軸
142 第1端部 144 第2端部
146 軸本体 147 第1長手方向溝
148 端部 149 第2長手方向溝
150 第1カラー 152 スリット
154 幅の狭い部分 156 幅の広い部分
158 係止用折り曲げ部 159 端面
160 第2カラー 162 フック係止溝
170 第1コイルスプリング 172 第1フック部
173 曲げ部 174 第2フック部
175 曲げ部 180 第2コイルスプリング
182 第1フック部 184 第2フック部
190 スプリング座 191 フック係止溝
192 スプリング係止部 193 リングブッシュ
194 セットピン 196 止めピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6