(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度制御手段は、冷房制御機能を有する場合、前記負荷率演算手段に演算された負荷率が低くなるに従って、前記直焚き機の設定温度を高くし、暖房制御機能を有する場合、前記負荷率演算手段に演算された負荷率が低くなるに従って、前記直焚き機の設定温度を低くする
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷温水システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では冷房運転を例に説明するが、本発明は冷房運転に限らず暖房運転においても適用可能である。
【0022】
図1は、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1を示すブロック図である。
図1に示すように、吸収式冷温水システム1は、優先機2と、直焚き機3と、遠隔制御盤6とを有し、優先機2及び直焚き機3からの冷水を室内機5に供給するものである。室内機5は、供給された冷水を利用して冷房効果を得るものである。
【0023】
このような吸収式冷温水システム1において優先機2及び直焚き機3から出力された冷水は混合されたうえで室内機5に供給される。室内機5では冷水が冷房に利用されて昇温し、昇温した冷水が再度優先機2及び直焚き機3に供給されて冷却される。その後冷水は、室内機5と、優先機2及び直焚き機3とを循環することとなる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る優先機2となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。なお、本実施形態では、いわゆる二重効用吸収冷温水機を一例として説明するが、これに限られるものではなく、優先機2は、単効用や三重効用の吸収冷温水機であってもよい。
【0025】
優先機2は、
図2に示すように、高温再生器10、分離器12、低温再生器14、凝縮器16、蒸発器18、吸収器20、溶液循環ポンプ22、高温及び低温溶液熱交換器24,26を備え、これらを配管接続することにより吸収冷凍サイクルを構成したものである。また、
図2に示すように優先機2は、優先機2の全体を制御する制御装置4aが設けられている。
【0026】
高温再生器10は、例えば冷媒となる水(以下、冷媒が蒸気化したものを冷媒蒸気と称し、冷媒が液化したものを液冷媒と称する)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された希溶液(吸収液の濃度が薄い溶液)を加熱するものである。この高温再生器10には加熱装置10aが設けられている。加熱装置10aは、排熱や太陽熱などの再生可能エネルギーにより希溶液を加熱する構成となっている。また、高温再生器10は、希溶液を加熱して希溶液から蒸気を放出させることにより、冷媒蒸気と中間濃溶液(吸収液の濃度が中程度の溶液)とを生成する。高温再生器10は、これら冷媒蒸気と中間濃溶液とを分離器12に供給する。
【0027】
分離器12は、冷媒蒸気と中間濃溶液とを分離するものである。また、分離器12は、分離した中間濃溶液を高温溶液熱交換器24に供給し、分離した冷媒蒸気を低温再生器14に供給する。
【0028】
高温溶液熱交換器24は、分離器12から供給された中間濃溶液と、吸収器20から溶液循環ポンプ22により送られてきた希溶液とを熱交換するものである。また、高温溶液熱交換器24は、熱交換により温度が低下した中間濃溶液を低温再生器14に供給する。
【0029】
低温再生器14は、熱交換により温度が低下した中間濃溶液と、分離器12から供給された冷媒蒸気と熱交換するものである。この低温再生器14において、中間濃溶液は再加熱されることとなり、再び蒸気を放出して濃度の高い濃溶液となる。また、低温再生器14は、濃溶液を低温溶液熱交換器26に供給し、冷媒蒸気を凝縮器16に供給する。
【0030】
凝縮器16は、低温再生器14から供給された冷媒蒸気を液化させるものである。この凝縮器16内には、冷水伝熱管16aが挿通されている。冷水伝熱管16aには冷却水が供給されており、蒸発した冷媒蒸気は冷水伝熱管16a内の冷却水によって液化する。さらに、凝縮器16は液冷媒貯蔵室16bを有しており、液化した冷媒は液冷媒貯蔵室16bにて貯蔵される。また、液冷媒貯蔵室16bは、貯蔵した液冷媒を蒸発器18に供給する。
【0031】
蒸発器18は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器18内には、液冷媒分配器18aと冷水伝熱管18bが設けられている。液冷媒分配器18aは、液冷媒貯蔵室16bから供給される液冷媒を導入し、液冷媒を冷水伝熱管18bに向けて散布するものである。
【0032】
冷水伝熱管18bは、室内機と接続されており、室内機による冷却によって暖められた水が流れている。また、蒸発器18内は、真空状態となっている。このため、冷媒である水の蒸発温度は約5℃となる。よって、冷水伝熱管18b上に落ちた液冷媒は冷水伝熱管18bの温度によって蒸発することとなる。また、冷水伝熱管18b内の水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、冷水伝熱管18b内の水は冷水として室内機5に供給され、室内機5は冷水を利用して冷風を室内に供給することとなる。
【0033】
また、蒸発器18は、仕切りを介して吸収器20と隣接して設けられており、蒸発した冷媒は、仕切りを越えて吸収器20に供給される。
【0034】
低温溶液熱交換器26は、低温再生器14において暖められた濃溶液と、吸収器20から溶液循環ポンプ22により送られてきた希溶液とを熱交換するものである。また、低温溶液熱交換器26は、熱交換により温度が低下した濃溶液を吸収器20に供給する。
【0035】
吸収器20は、蒸発器18において蒸発した冷媒を吸収するものである。この吸収器20内には低温溶液熱交換器26から濃溶液が供給され、蒸発した冷媒は濃溶液によって吸収され、希溶液が生成される。また、吸収器20には、冷水伝熱管20aが挿通されている。冷水伝熱管20aには冷却水が流れており、濃溶液の冷媒の吸収により吸収熱は、冷水伝熱管20aの冷却水により除去される。なお、この冷水伝熱管20aは、冷水伝熱管16aと接続されている。
【0036】
また、吸収器20は、冷媒の吸収により濃度が低下した希溶液を溶液循環ポンプ22によって高温再生器10に供給する。なお、希溶液は、上記したように、高温及び低温溶液熱交換器24,26により熱交換されて温度が上昇した状態で高温再生器10に供給される。
【0037】
また、優先機2は、温度センサ28を備えている。温度センサ28は、冷水伝熱管18bの出口側(すなわち室内機5に供給される側)の冷水温度を検出するものである。また、温度センサ28は、検出した冷水温度を制御装置4aに送信する構成となっている。
【0038】
図3は、本実施形態に係る直焚き機3となる吸収式冷温水機の基本構成の一例を示す構成図である。なお、本実施形態では、いわゆる二重効用吸収冷温水機を一例として説明するが、これに限られるものではなく、直焚き機3は、単効用や三重効用の吸収冷温水機であってもよい。また、
図3に示す構成のうち、
図2に示す構成と同一の符号を付したものについては、
図2に示したものと同じであるため、説明を省略する。
【0039】
直焚き機3は、
図3に示すように、高温再生器10に燃焼装置10bを備えている。燃焼装置10bは、ガスなどの化石燃料を燃焼させて希溶液を加熱する構成となっている。また、
図3に示すように直焚き機3は、直焚き機3の全体を制御する制御装置4bが設けられている。
【0040】
また、より詳細に
図2及び
図3に示す制御装置4a,4bは、冷水伝熱管18bの出口側の冷水温度に基づいて、加熱装置10a及び燃焼装置10bを制御する。具体的に制御装置4a,4bは、温度センサ28により検出された冷水伝熱管18bの出口側の冷水温度に基づいて、以下のようにして優先機2及び直焚き機3の運転を制御する。
【0041】
図4は、
図2に示した優先機2及び直焚き機3の制御の様子を示す図である。
図4に示すように、まず優先機2及び直焚き機3の運転が停止しているとする(off)。そして、温度センサ28により検出される冷水温度が第1温度であるT1に達すると、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3の運転を開始させる(Low運転)。ここで、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3を低負荷モードで運転開始させる。低負荷モードとは、冷房負荷の大きさが約50%で足りるときの運転モードである。
【0042】
また、低負荷モードにおいて温度センサ28により検出される冷水温度が第2温度であるT2に達すると、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3の運転を停止させる(off)。一方、制御装置4a,4bは、低負荷モードにおいて温度センサ28により検出される冷水温度が第3温度であるT3に達すると、運転モードを高負荷モードに移行させる(Hi運転)。ここで、高負荷モードとは、冷房負荷の大きさが約100%であるときなどに開始される運転モードである。
【0043】
また、高負荷モードにおいて温度センサ28により検出される冷水温度が第4温度であるT4まで低下すると、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3を高負荷モードのままLow運転させる(Low運転)。さらに、この状態において、温度センサ28により検出される冷水温度が第5温度であるT5まで上昇すると、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3を高負荷モードのままHi運転させる(Hi運転)。また、高負荷モードのLow運転において温度センサ28により検出される冷水温度が第7温度T7まで低下すると、制御装置4a,4bは優先機2及び直焚き機3の運転を停止させる(off)。
【0044】
加えて、本実施形態に係る制御装置4a,4bは、時間積分を行って優先機2及び直焚き機3の運転を制御するようになっている。すなわち、低負荷モードのLow運転において温度センサ28により検出される冷水温度が第1温度T1〜第6温度T6の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4a,4bは、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第1所定値に達すると、運転モードを高負荷モードに切り替える(Hi運転)。なお、制御装置4a,4bは、(冷水温度−第1温度T1℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に第1温度T1℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0045】
同様に、高負荷モードのLow運転において温度センサ28により検出される冷水温度が第7温度T7〜第2温度T2の範囲内に収まっているとする。このとき、制御装置4a,4bは、冷水温度を時間積分し、時間積分された値が第2所定値に達すると、運転を停止させる(off)。なお、制御装置4a,4bは、(冷水温度−第2温度T2℃)により得られた値を時間積分するようになっているが、特に第2温度T2℃に限らず、他の温度であってもよい。
【0046】
以上のように、制御装置4a,4bは、優先機2及び直焚き機3を制御する。ここで、設定温度が標準温度(具体的には、例えば定格運転における出口冷水温度であって本実施形態では7℃)である場合、優先機2及び直焚き機3は、第1温度T1が10℃(標準温度+3℃)であり、第2温度T2が7℃(標準温度)である。また、第3温度T3は15℃(標準温度+8℃)であり、第4温度T4は6.5℃(標準温度−0.5℃)であり、第5温度T5は10.5℃(標準温度+3.5℃)である。さらに、第6温度T6は12℃(標準温度+5℃)であり、第7温度T7は5℃(標準温度−2℃)である。なお、以下では標準温度が7℃であるとして説明するが、標準温度は特に7℃に限られるものではない。
【0047】
再度、
図1を参照する。遠隔操作盤6は、負荷率演算部(負荷率演算手段)6aと、温度制御部(温度制御手段)6bとを備えている。負荷率演算部6aは、優先機2及び直焚き機3からの情報に基づいて室内機5の負荷率を演算(推定演算)するものである。具体的に負荷率演算部6aは、優先機2及び直焚き機3の検出された燃焼量をもとに負荷率を推定する。温度制御部6bは、負荷率演算部6aにより演算(推定)された負荷率に基づいて、優先機2及び直焚き機3の設定温度を制御するものである。この際、温度制御部6bは、負荷率演算部6aにより演算された負荷率情報、並びに、優先機2及び直焚き機3の運転/停止命令の信号を生成して制御装置4a,4bに送信する。制御装置4a,4bは、送信された信号に基づき、
図5に示す図表に従って、優先機2の設定温度と、直焚き機3の設定温度とを制御することとなる。
【0048】
図5は、本実施形態に係る優先機2及び直焚き機3の制御温度を示す図表である。具体的に説明すると、
図5に示すように、室内機5の負荷率が1%〜20%である場合、直焚き機3は設定温度を標準温度+t1℃(例えば2℃)とする。すなわち、直焚き機3の設定温度は9℃となる。この場合、
図4に示した第1温度T1は+2℃分だけオフセットして12℃となり、第2温度T2についてもオフセットして9℃となる。同様に、各温度T3〜T7についてもオフセットし、第3温度T3は17℃となり、第4温度T4は8.5℃となり、第5温度T5は12.5℃となる。さらに、第6温度T6は14℃となり、第7温度T7は7℃となる。
【0049】
これに対して、優先機2は、
図5に示すように、室内機5の負荷率が1%〜20%であり、直焚き機3が燃焼停止中である場合、設定温度が標準温度とされる。従って、第1温度T1は10℃となり、第2温度T2は7℃となる。また、第3温度T3は15℃となり、第4温度T4は6.5℃となり、第5温度T5は10.5℃となる。さらに、第6温度T6は12℃となり、第7温度T7は5℃となる。
【0050】
また、優先機2は、
図5に示すように、室内機5の負荷率が1%〜20%であり、直焚き機3が燃焼中である場合、設定温度が標準温度−t2℃(例えば1℃)とされる。従って、第1温度T1は9℃となり、第2温度T2は6℃となる。また、第3温度T3は14℃となり、第4温度T4は5.5℃となり、第5温度T5は9.5℃となる。さらに、第6温度T6は11℃となり、第7温度T7は4℃となる。
【0051】
さらに、詳細に説明すると、直焚き機3は、負荷率が21%〜40%である場合、設定温度が標準温度+t1℃であり、負荷率が41%〜60%である場合、設定温度が標準温度+t3℃(t3はt1よりも小さい数であって、例えば1℃)であり、負荷率が61%〜80%である場合、設定温度が標準温度であり、負荷率が81%〜100%である場合、設定温度が標準温度となる。
【0052】
これに対して、優先機2は、負荷率が1%〜20%である場合と同様に、負荷率が21%以上であっても、直焚き機3が燃焼停止中である場合、設定温度が標準温度であり、直焚き機3が燃焼中である場合、設定温度が標準温度−t2℃である。
【0053】
このように、温度制御部6bは、優先機2の設定温度を直焚き機3の設定温度以下とすると共に、負荷率演算部6aに演算された負荷率が大きくなるに従って、優先機2及び直焚き機3の設定温度の差を小さくする。そして、優先機2の設定温度を直焚き機3の設定温度以下とすることで、直焚き機3よりも優先機2を優先的に運転させることとなる。
【0054】
また、負荷率が大きくなるに従って、優先機2及び直焚き機3の設定温度の差を小さくするため、負荷率が小さい場合には、両者の設定温度差が広がって優先機2のみが運転し易くなるが、負荷率が大きい場合には、優先機2と直焚き機3とが近い温度で運転して適切な冷水を室内機5に供給し易くなる。故に、負荷率が小さい場合には排熱等を有効的に利用でき、負荷率が大きい場合には適切な冷水を室内機5に供給することとなり快適性を維持することができる。
【0055】
より具体的に温度制御部6bは、
図5に示すように、負荷率演算部6aに演算された負荷率が低くなるに従って、直焚き機3の設定温度を高くする。このため、排熱等を利用した優先機2を効率良く運転させることができる。すなわち、負荷率が低くなるに従って優先機2の設定温度を低くし、設定温度差を大きくしていくことも考えられるが、この場合には、優先機2が効率良い運転を実現できなくなり有効な運転とはいえない。
【0056】
また、
図5から明らかなように、温度制御部6bは、直焚き機3の燃焼中において直焚き機3の停止中よりも優先機2の設定温度を低くする。これにより、優先機2及び直焚き機3双方が運転する状況においても、排熱等を利用した優先機2をより優先的に運転させることができる。
【0057】
さらには、温度制御部6bは、直焚き機3の停止中において優先機2の設定温度を予め定められた標準温度にする。これにより、直焚き機3の停止中において優先機2を効率が良い状態で運転させることができる。
【0058】
なお、
図5に示した内容は、一例を示すに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なものである。すなわち、負荷率の区切りや、設定温度については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0059】
次に、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の動作(簡易シミュレーション結果)を説明するが、これに先立って比較例となる吸収式冷温水システムの動作(簡易シミュレーション結果)を説明する。なお、以下に示すシミュレーション結果は、周囲温度環境等によって変化するものであり、周囲温度環境等が変化した場合、その変化に応じて温度等が多少異なってくるものである。
【0060】
まず、比較例1となる吸収式冷温水システムにおいて優先機及び直焚き機は、以下のように制御されていた。比較例1において優先機及び直焚き機は、室内機に供給する冷水の温度が7℃となるように制御される。すなわち、優先機及び直焚き機の双方が標準温度である7℃を設定温度としており、設定温度に差を設けていない。
【0061】
図6は、比較例1に係る優先機及び直焚き機の運転状態を示すグラフであり、負荷率が20%であるときの例を示している。
図6に示すように、まず、冷水出口温度(室内機に供給する冷水の温度)が13℃であり、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転しているとする。
【0062】
そして、時刻が約4min弱に達すると、冷水出口温度が低下して第4温度T4である6.5℃に達する。このため、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードのLow運転となる。その後も冷水出口温度は低下し、時刻が約4min強となると第7温度T7である5℃に達するため、優先機及び直焚き機の双方が運転を停止する。以後、優先機及び直焚き機の双方が運転を停止したことにより、冷水出口温度が上昇することとなる。
【0063】
そして、冷水出口温度が上昇していき、時刻約13minにおいて冷水出口温度が第1温度T1である10℃に達すると、優先機及び直焚き機の双方が低負荷モードでLow運転を開始する。また、優先機及び直焚き機の双方が低負荷モードでLow運転を開始するため、時刻約15minにおいて冷水出口温度が低下し始める。
【0064】
次いで、時刻が約18minになると冷水出口温度が第2温度T2である7℃に達するため、優先機及び直焚き機の双方が運転を停止する。以後、優先機及び直焚き機の双方は低負荷モードにおける運転の開始と停止を繰り返すこととなる。なお、冷水入口温度(室内機から供給される冷水の温度)は、冷水出口温度よりも常時高い状態で推移することとなる。
【0065】
このように、優先機と直焚き機との設定温度を同じとしてしまうと、優先機と直焚き機とが同時に運転開始及び停止してしまい、優先機を優先的に運転させることができない。
【0066】
図7は、比較例1に係る優先機及び直焚き機の運転状態を示すグラフであり、負荷率が80%であるときの例を示している。
図7に示すように、まず、冷水出口温度が13℃であり、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転しているとする。特に
図7に示す例においては室内機の負荷率が高いことから、時刻0min以降において冷水入口温度が上昇していく。
【0067】
そして、時刻が約4min弱に達すると、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転していることから、冷水入口温度が低下していくと共に、冷水出口温度についても低下していく。次いで、時刻10min強となると、冷水出口温度が低下して第4温度T4である6.5℃に達するため、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードのLow運転となる。
【0068】
そして、冷水出口温度が上昇していき、時刻が約14minにおいて冷水出口温度が第5温度T5である10.5℃に達すると、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転を開始する。これにより、冷水出口温度が低下していくこととなる。
【0069】
次いで、時刻が20minになると冷水出口温度が第4温度T4である6.5℃に達するため、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードのLow運転となる。以後、優先機及び直焚き機の双方は高負荷モードにおけるHi運転とLow運転とを繰り返すこととなる。なお、冷水入口温度は、冷水出口温度よりも常時高い状態で推移することとなる。
【0070】
このように、室内機の負荷率が高い場合においても、優先機と直焚き機との設定温度を同じとしてしまうと、優先機と直焚き機とが同時にHi運転及びLow運転を切り替えてしまい、優先機を優先的に運転させることができない。
【0071】
よって、優先機を優先的に運転させるべく、優先機の設定温度を直焚き機の設定温度よりも低くする。
【0072】
図8は、比較例2に係る優先機及び直焚き機の運転状態を示すグラフであり、負荷率が20%であるときの例を示している。比較例2において優先機の設定温度は標準温度−1℃(6℃)であり、直焚き機の設定温度は標準温度+2℃(9℃)であり、設定温度に3℃の差が設けられている。
【0073】
図8に示すように、まず、冷水出口温度が13℃であり、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転しているとする。そして、時刻が約3minに達すると、直焚き機の冷水出口温度が低下して第4温度T4である8.5℃に達する。このため、直焚き機は高負荷モードのLow運転となる。さらに、その後も冷水出口温度は低下し、時刻が約4minになると第7温度T7である7℃に達するため、直焚き機の運転が停止する。以後、直焚き機は、冷水出口温度が第1温度T1である12℃に達することがなく、運転を停止したままとなる。
【0074】
一方、優先機については、時刻約4minにおいて冷水出口温度が第4温度T4である5.5℃に達するため、高負荷モードのLow運転となる。その後、優先機は、冷水出口温度が第5温度T5である9.5℃に達することがなく、Low運転を継続することとなる。
【0075】
以上のように、
図8に示すように、優先機の設定温度を直焚き機の設定温度以下とすることで、直焚き機が停止した状態で優先機がLow運転を行うこととなり、優先機を優先的に運転させることができる。よって、排熱等を効率よく利用して燃料の消費を抑えることができる。しかし、
図8に示す例は負荷率20%程度の低負荷時であり、高負荷時には冷房の快適性について問題がある。
【0076】
図9は、比較例2に係る優先機及び直焚き機の運転状態を示すグラフであり、負荷率が80%であるときの例を示している。
図9に示すように、まず、冷水出口温度が13℃であり、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転しているとする。特に
図9に示す例においては室内機の負荷率が高いことから、時刻0min以降において冷水入口温度が上昇していく。
【0077】
そして、時刻が約4minに達すると、優先機及び直焚き機の双方が高負荷モードでHi運転していることから、冷水入口温度が低下していくと共に、冷水出口温度についても低下していく。次いで、時刻8min弱となると、直焚き機の冷水出口温度が低下して第4温度T4である8.5℃に達する。このため、直焚き機は高負荷モードのLow運転となる。これにより、直焚き機の冷水出口温度が上昇し、時刻が約22min弱になると、直焚き機の冷水出口温度が第5温度T5である12.5℃に達する。このため、直焚き機は高負荷モードのHi運転に移行する。以後、直焚き機は、高負荷モードのHi運転とLow運転とを繰り返すこととなる。
【0078】
一方、優先機の冷水出口温度は、直焚き機のLow運転及びHi運転に応じて上昇及び下降を繰り返すが、第4温度T4である5.5℃に達することがないため、高負荷モードのHi運転を維持し続ける。
【0079】
このように、高負荷である場合、優先機はHi運転をし続ける一方、直焚き機はHi運転とLow運転とを繰り返すため、優先機を優先的に運転させる観点では問題がない。しかし、
図9から明らかなように、高負荷時における冷水出口温度(混合)は、最大温度が11.2℃であり平均温度が9.8℃となってしまう。比較例1の場合、
図7に示すように高負荷時における冷水出口温度(混合)は、最大温度が10.5℃であり平均温度が8.6℃である。故に、優先機の設定温度と直焚き機の設定温度との差が大き過ぎると、室内機に充分に冷却した冷水を供給できなくなり、室内機における冷房性能を低下させ、快適性の面で問題がある。
【0080】
そこで、本実施形態では
図5に示したように室内機5の負荷率に応じて設定温度を変化させている。具体的には負荷率が1%〜40%の場合、優先機の設定温度を標準温度−1℃(6℃)とし、直焚き機の設定温度は標準温度+2℃(9℃)とし、設定温度に3℃の差を設ける。これにより、
図8に示すように、優先機2を優先的に運転させる。
【0081】
一方、高負荷時(負荷率60%以上)には優先機の設定温度を標準温度−1℃(6℃)とし、直焚き機の設定温度は標準温度(7℃)とし、設定温度に1℃の差しか設けない。これにより、快適性を維持することとしている。なお、中負荷時(負荷率41〜60%)には優先機の設定温度を標準温度−1℃(6℃)とし、直焚き機の設定温度は標準温度+1℃(8℃)とし、設定温度に2℃の差を設ける。
【0082】
図10は、本実施形態に係る優先機2及び直焚き機3の運転状態を示すグラフであり、負荷率が80%であるときの例を示している。
【0083】
図10に示すように、まず、冷水出口温度が13℃であり、優先機2及び直焚き機3の双方が高負荷モードでHi運転しているとする。また、室内機5の負荷率が高いことから、時刻0min以降において冷水入口温度が上昇していく。
【0084】
そして、時刻が約4minに達すると、優先機2及び直焚き機3の双方が高負荷モードでHi運転していることから、冷水入口温度が低下していくと共に、冷水出口温度についても低下していく。次いで、時刻約10minとなると、直焚き機3の冷水出口温度が低下して第4温度T4である6.5℃に達する。このため、直焚き機3は高負荷モードのLow運転となる。これにより、直焚き機3の冷水出口温度が上昇し、時刻が約18minになると、直焚き機3の冷水出口温度が第5温度T5である10.5℃に達する。このため、直焚き機3は高負荷モードのHi運転に移行する。以後、直焚き機3は、高負荷モードのHi運転とLow運転とを繰り返すこととなる。
【0085】
一方、優先機2の冷水出口温度は、直焚き機のLow運転及びHi運転に応じて上昇及び下降を繰り返すが、第4温度T4である5.5℃に達することがないため、高負荷モードのHi運転を維持し続ける。
【0086】
ここで、
図10から明らかなように、高負荷時における冷水出口温度(混合)は、最大温度が9.1℃であり平均温度が7.9℃となっている。このため、比較例2に示す最大温度及び平均温度よりも低くなっている。故に、本実施形態では、比較例2よりも冷却した冷水を室内機5に供給でき、快適性の面で改善されているといえる。
【0087】
このようにして、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1は、優先機2の設定温度を直焚き機3の設定温度以下とするため、直焚き機3よりも優先機2が優先的に運転することとなる。また、負荷率が高くなるに従って、優先機2及び直焚き機3の設定温度の差を小さくするため、負荷率が小さい場合には、両者の設定温度差が大きくなり優先機2のみが運転し易くなると共に、負荷率が大きい場合には、優先機2と直焚き機3とが近い温度で運転して適切な冷水を室内機5に供給し易くなる。故に、負荷率が小さい場合には排熱等を有効的に利用でき、負荷率が大きい場合には適切な冷水を室内機5に供給することとなり快適性を維持することができる。従って、排熱等を利用した優先機2をより優先的に運転させつつ、負荷率が大きくなった場合における快適性の悪化を防止することができる。
【0088】
また、負荷率が低くなるに従って直焚き機3の設定温度を高くするため、直焚き機3が運転し難くなり、排熱等を利用した優先機を有効的に運転させることができる。
【0089】
また、直焚き機3の燃焼中において直焚き機3の停止中よりも優先機2の設定温度を低くする。このため、優先機2及び直焚き機3の双方が運転する状況において、優先機2をより運転し易くし、排熱等を利用した優先機をより優先的に運転させることができる。
【0090】
また、直焚き機3の停止中において優先機2の設定温度を予め定められた標準温度にするため、優先機2を効率が良い状態で運転させることができる。
【0091】
また、少なくとも冷暖房の切替操作が可能な遠隔操作盤6をさらに備え、遠隔操作盤が負荷率演算部6a及び温度制御部6bを備えるため、遠隔操作盤内のCPU等に負荷率演算部6a及び温度制御部6bに相当するプログラムを組み込んでおくことで、上記システムを実現することができ、構成の増加を抑えることができる。
【0092】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1において各種構成等については図示したものに限られるものではない。また、具体的に記載した温度についても上記したものに限られるものではない。
【0093】
さらに、本実施形態において直焚き機3は1台であるが、これに限らず、複数台であってもよい。加えて、優先機2が複数台であってもよい。
【0094】
また、上記では冷房運転を例に説明したが、本発明は暖房運転にも適用可能である。ここで、暖房運転を行う場合には、図示しない切替弁を切り替えることとなる。そして、切替弁を切り替えた場合には冷水伝熱管18bには温水が流れ、室内機5にて温水をもとに暖房効果が得られ、暖房により冷却した水が再度優先機2及び直焚き機3に供給されることとなる。また、上記した各温度については、高低が逆となり制御されることとなる。