特許第5902956号(P5902956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5902956-ガス検出装置 図000002
  • 特許5902956-ガス検出装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902956
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20160331BHJP
   G08B 21/14 20060101ALI20160331BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   G01N27/04 M
   G08B21/14
   G01F3/22 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-28146(P2012-28146)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-164367(P2013-164367A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 勝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 範明
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−318584(JP,A)
【文献】 特開昭62−222395(JP,A)
【文献】 特開2000−074867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G01F 1/00−1/90
G08B 19/00−21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される一定の大きさの基準電流で駆動される第1のセンサおよび当該基準電流より小さい一定の大きさの電流で駆動される第2のセンサを具えており、
当該第1のセンサがガスセンサであり、当該第2のセンサが当該ガスセンサに供給されるガス流量を監視する流量センサであり、
当該第1のセンサおよび当該第2のセンサが前記電源に対してこの順で互いに直列に接続されていると共に、当該電源より供給される基準電流の、当該第2のセンサに供給される駆動用電流に対する余剰電流が供給される負荷が、当該第1のセンサに対して当該第2のセンサと並列に接続されていることを特徴とするガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、監視対象空間の環境雰囲気の状態を当該監視対象空間と離れた位置で監視する環境監視システムにおいて好適に用いられるガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば半導体製造工場、液晶製造工場、石油化学工場などにおいては、環境保安上の観点から、例えば有毒ガス等の漏洩を監視するためにガス検出装置を設置することが必要とされており、例えば、多数のガス検出装置を設備ごとに配置し、遠隔地に配置された監視装置における電源ユニットよりケーブルを介してガス検出装置に給電すると共に、ガス検出装置からの検出信号をケーブルを介して監視装置に伝送して集中管理する環境監視システムが構築されている(特許文献1参照。)。
このような環境監視システムにおいては、監視装置とガス検出装置とは、例えばキロメートルオーダのケーブルにより接続されることもあり、かつその長さが不定であるため、ケーブルの線路抵抗に起因した誤差が測定結果に含まれることを回避するために、監視装置によるガス検出装置に対する給電が定電流制御により行われている。
【0003】
一方、図2に示すように、このような環境監視システムを構成するガス検出装置50としては、例えば、監視対象空間Bの空気を被検ガスとして積極的にガスセンサ11に取り込むためのサンプリングポンプなどのガス供給手段(図示せず)と、ガスセンサ11に供給される被検ガスのガス流量を監視する流量センサ15とを具えた構成のものが用いられている。図2において、58A(実線)は給電用ライン、58B(破線)は、ガス検出装置50からの信号伝送用出力ラインである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−290529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような環境監視システムにおいては、通常、例えばガスセンサ11を駆動するために必要とされるガスセンサ駆動用電流(定格電流)I0 と、流量センサ15を駆動するために必要とされる流量センサ駆動用電流(定格電流)I1 とが互いに異なる大きさであることから、外部電源35に接続された監視装置30Aにおける電源ユニットによりガスセンサ駆動用電流I0 をガスセンサ11に供給すると共に、例えばポンプ駆動用電源55に接続されたガス検出装置50における別途専用の電源ユニット60によって流量センサ駆動用電流I1 を流量センサ15に供給する必要があった。ここに、流量センサ駆動用の電源ユニット60は、ポンプ駆動用電源55から供給される電圧を適正な電圧に変換して流量センサ15に供給するAC−DCコンバータ61を具えている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、例えば環境監視システムを構成するガス検出装置において、省電力化を図ることができると共に省配線化および低コスト化を図ることができ、しかも、装置自体を小型のものとして構成することができるガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス検出装置は、電源から供給される一定の大きさの基準電流で駆動される第1のセンサおよび当該基準電流より小さい一定の大きさの電流で駆動される第2のセンサを具えており、
当該第1のセンサがガスセンサであり、当該第2のセンサが当該ガスセンサに供給されるガス流量を監視する流量センサであり、
当該第1のセンサおよび当該第2のセンサが前記電源に対してこの順で互いに直列に接続されていると共に、当該電源より供給される基準電流の、当該第2のセンサに供給される駆動用電流に対する余剰電流が供給される負荷が、当該第1のセンサに対して当該第2のセンサと並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス検出装置によれば、電源から供給される一定の大きさの基準電流で駆動される第1のセンサおよび当該基準電流より小さい電流で駆動される第2のセンサが電源に対してこの順で互いに直列に接続されていると共に、当該電源より供給される基準電流の、当該第2のセンサに供給される駆動用電流に対する余剰電流が供給される負荷が、当該第1のセンサに対して当該第2のセンサと並列に接続された構成とされていることにより、電源から供給される一定の大きさの基準電流は、第1のセンサにはそのまま供給されると共に、第2のセンサには第2のセンサの駆動に必要な大きさの駆動電流が供給されて余剰電流が負荷に供給されるので、各々互いに異なる大きさの駆動電流で定電流駆動される2つのセンサを一の電源で駆動(単電源駆動)することができる。その結果、例えば駆動電流の小さい第2のセンサを駆動するための大型のコンバート部品や専用の電源回路は不要となるため、省電力化を図ることができると共に省配線化および低コスト化を図ることができ、しかも、装置自体を小型のものとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のガス検出装置が用いられて構築された環境監視システムの一例における構成の概略を示すブロック図である。
図2】従来の環境監視システムの一例における構成の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のガス検出装置が用いられて構築された環境監視システムの一例における構成の概略を示すブロック図である。
この環境監視システムは、監視対象空間Bに設置されたガス検出装置10と、監視対象空間Bと離れた監視室Aに設置された指示警報ユニット30とを具え、ガス検出装置10が適宜の給電用・信号伝送用のケーブル(図1における40A(実線)は給電用ライン、40B(破線)は、ガス検出装置10からの信号伝送用出力ラインを示す。)によって指示警報ユニット30に接続されて、構成されている。ここに、ケーブルの長さは、実際上、例えば2000m以下であり、指示警報ユニット30がガス検出装置と同一の空間内においてガス検出装置10と近接した位置に設置された構成とされていてもよい。
【0012】
指示警報ユニット30は、外部電源35よりの電力供給を受けてガス検出装置10に対して適正な一定の大きさの基準電流、具体的には、後述するガスセンサ11の定格電流をガスセンサ駆動用電流I0 として供給する定電流供給手段を有する電源ユニット(図示せず)と、ガス検出装置10からのガス濃度信号に応じたガス濃度を表示する表示手段(図示せず)と、ガス濃度が一定の大きさを超えていることが検出された場合、あるいは、ガス流量が一定の大きさ以下に低下していることが検出された場合に警報を発する警報手段(図示せず)とを具えている。
【0013】
ガス検出装置10は、定電流駆動されるガスセンサ11と、監視対象空間Bの空気を被検ガスとしてガスセンサ11に供給するガス吸引手段(図示せず)と、ガスセンサ11に供給される被検ガスのガス流量を監視する、ガスセンサ駆動用電流I0 より小さい一定の大きさの電流例えば定格電流で、定電流駆動される流量センサ15と、流量センサ15のセンサ出力信号に基づいてガス流量を算出するAMPを含む信号処理回路21を有する制御部とを具えている。
【0014】
ガスセンサ11としては、特に限定されるものではないが、例えば、通電により加熱された状態において検知対象ガスに感応するガス感応素子を有する固体センサ、具体的には例えば、接触燃焼式ガスセンサ、ニューセラミック式ガスセンサ、半導体式ガスセンサ、熱線型半導体式ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサなどを例示することができる。
また、ガスセンサ11としては、定格電流が例えば100〜400mAの範囲内であるものを用いることができる。
【0015】
流量センサ15としては、特に限定されるものではないが、例えば通電により加熱された抵抗発熱体の温度がガスが流れることにより低下するその温度変化に基づいてガス流量を検出する熱式流量センサを例示することができる。
また、流量センサ15としては、上述したように、定格電流がガスセンサ11の定格電流より小さいものであって、例えば100〜400mAの範囲内であるものを用いることができる。
【0016】
上記のガス検出装置10においては、ガスセンサ11および流量センサ15が指示警報ユニット30における電源ユニットに対してこの順で互いに直列に接続されると共に、電源ユニットより供給されるガスセンサ駆動用電流(基準電流)I0 の、流量センサ15に供給される流量センサ駆動用電流I1 に対する余剰電流I2 が供給される負荷20が、ガスセンサ11に対して流量センサ15と並列に接続されて、給電回路が構成されている。
【0017】
余剰電流I2 が供給される負荷20としては、例えば制御部における信号処理回路21(AMP)、電流消費回路22、あるいは、例えばサーミスタなどよりなる温度センサなどにより構成することができる。ここに、電流消費回路22は、例えば固定抵抗器により構成することができる。
【0018】
この環境システムにおいては、監視対象空間Bに設置されたガス検出装置10からのガス濃度検知信号がケーブルの信号伝送用出力ライン40Bを介して指示警報ユニット30に入力され、当該ガス濃度検知信号に応じた検知対象ガスのガス濃度が表示手段によって表示されることにより、監視室Aにおいて、監視対象空間Bにおける環境雰囲気の状態の監視が行われる。また、ガス検出装置10からのガス流量検知信号についても、ケーブルの信号伝送用出力ライン40Cを介して指示警報ユニット30に入力され、当該ガス流量検知信号に基づいてガス流量の監視が行われる。そして、ガス濃度が所定の濃度(当該検知対象ガスについての警報点)を超えていることが検出されることにより、あるいは、ガスセンサ11に供給されるガス流量が一定の大きさ以下であることが検出されることにより、指示警報ユニット30における警報手段が作動される。
【0019】
而して、上記のガス検出装置10によれば、指示警報ユニット30の電源ユニットから供給される一定の大きさのガスセンサ駆動用電流I0 で駆動されるガスセンサ11および当該ガスセンサ駆動用電流I0 より小さい流量センサ駆動用電流I1 で駆動される流量センサ15が電源ユニットに対してこの順で互いに直列に接続されていると共に、当該電源ユニットより供給されるガスセンサ駆動用電流I0 の流量センサ駆動用電流I1 に対する余剰電流I2 が供給される負荷20を構成する電流消費回路22および信号処理回路21がガスセンサ11に対して流量センサ15と並列に接続された構成とされていることにより、指示警報ユニット30における電源ユニットから供給される一定の大きさのガスセンサ駆動用電流I1 は、ガスセンサ11にはそのまま供給されると共に、流量センサ15には当該流量センサ15の駆動に必要な大きさの流量センサ駆動用電流I1 が供給されてその余剰電流I2 が電流消費回路22および信号処理回路21に供給されるので、各々互いに異なる大きさの駆動電流で定電流駆動されるガスセンサ11および流量センサ15を一の電源で駆動(単電源駆動)することができる。その結果、例えば駆動電流の小さい流量センサ15を駆動するための大型のコンバート部品や専用の電源回路は不要となるため、省電力化を図ることができると共に省配線化および低コスト化を図ることができ、しかも、ガス検出装置自体を小型のものとして構成することができる。
【0020】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
図1に示す構成を参照して、本発明に係る給電回路を構成すると共に、図2に示す構成を参照して、比較用の給電回路(1)、(2)を構成した。
本発明に係る給電回路および比較用の給電回路(1)、(2)において、ガスセンサとしては、定格電流が295mA、定格電圧が1.5Vである接触燃焼式ガスセンサを用い、流量センサとしては、定格電流が150mA、定格電圧が1.5Vである熱式流量センサを用いた。また、比較用の給電回路(1)における流量センサ駆動用電源としては、100Vの交流電源(商用電源)を用い、比較用の給電回路(2)における流量センサ駆動用電源としては、24Vの直流電源を用いた。
上記の本発明に係る給電回路および比較用の給電回路(1)、(2)の各々について消費電力を測定したところ、本発明に係る給電回路の消費電力が0.944Wであるのに対して、比較用の給電回路(1)の消費電力が2.342Wであり、比較用の給電回路(2)の消費電力が1.834Wであることが確認された。
【0021】
この結果から明らかなように、ガスセンサおよび流量センサが単電源により駆動される構成とされることにより、流量センサが専用の電源により駆動される構成のものに比して、消費電力が低減されることが確認された。比較用の給電回路(1)、(2)の消費電力が、本発明に係る給電回路の消費電力より大きくなる理由としては、流量センサに対する電源ユニット(AC−DCコンバータ)での変換効率による損失が大きくなるためであると考えられる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、サーミスタなどの温度センサが流量センサの代わりにガスセンサと直列に接続されていてもよく、あるいは、当該温度センサはその駆動用電流との関係において余剰電流を消費する負荷として構成されていてもよい。
また、本発明のガス検出装置においては、ガスセンサ駆動用電源を利用して流量センサに対する電力供給が行わることから、ガス検知装置自体がガス吸引手段および当該ガス吸引手段を駆動するための電源を有さない構成のものであっても、流量センサに対する給電が可能であるので、ガス検出装置自体がガス吸引手段を具えたものである必要はない。
さらにまた、上記の実施例において、流量センサがガスセンサより定格電流が大きいものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 ガス検出装置
11 ガスセンサ
15 流量センサ
20 負荷
21 信号処理回路
22 電流消費回路
30 指示警報ユニット
30A 監視装置
35 外部電源
40A 給電用ライン
40B,40C 信号伝送用出力ライン
50 ガス検出装置
55 ポンプ駆動用電源
58A 給電用ライン
58B 信号伝送用出力ライン
60 電源ユニット
61 AC−DCコンバータ
A 監視室
B 監視対象空間
図1
図2