特許第5902978号(P5902978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5902978-鍛造用金型装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902978
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】鍛造用金型装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/03 20060101AFI20160331BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20160331BHJP
   B21J 1/06 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B21J13/03
   B21J13/02 M
   B21J1/06 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-73850(P2012-73850)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202651(P2013-202651A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通
(74)【代理人】
【識別番号】100146112
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100167335
【弁理士】
【氏名又は名称】武仲 宏典
(74)【代理人】
【識別番号】100164998
【弁理士】
【氏名又は名称】坂谷 亨
(72)【発明者】
【氏名】長田 卓
(72)【発明者】
【氏名】本田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】荒木 重臣
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】小島 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】百田 悠介
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−225139(JP,A)
【文献】 特開平08−206768(JP,A)
【文献】 特表2010−531230(JP,A)
【文献】 特開2009−000694(JP,A)
【文献】 特開2003−103331(JP,A)
【文献】 特開平03−077741(JP,A)
【文献】 特開2011−031285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/00−13/14
B21J 17/00−19/04
B21K 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造用素材の高温鍛造に用いられる鍛造用金型装置において、上金型と下金型とを備え、前記上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部を囲繞し、該金型を保持するダイホルダーと、
前記金型を支持するダイプレートと、
前記金型の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートと、
前記ヒータプレートと前記ダイプレートとの間に配置された断熱プレートと、
前記ダイホルダーの径方向外側に設けられ、前記ダイホルダーを直接的に輻射加熱するダイホルダー加熱手段としての赤外線ヒータと、
前記ダイプレート、前記断熱プレート、前記ヒータプレート及び前記ダイホルダーが一体に取り付けられるとともに、前記赤外線ヒータが支持されるベースプレートと、
を備えたことを特徴とする鍛造用金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン合金やNi基合金などの難加工性金属材料の高温鍛造(熱間型鍛造)に用いられる鍛造用金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金型を用いてチタン合金やNi基合金などの難加工性金属材料の高温鍛造が行われるようになってきている。高温鍛造を行う鍛造プレス装置には、金型を加熱するために、従来は、例えば、上金型及び下金型のそれぞれに、複数個のヒータ挿入穴が形成され、これらの各ヒータ挿入穴に挿入された棒状のシーズヒータ(「カートリッジヒータ」とも呼ばれる)によって上金型及び下金型を加熱するようにした鍛造用金型装置が備えられている。例えば特許文献1,2には、この種の鍛造用金型装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−337935号公報(段落[0032]、図3
【特許文献2】特開平11−77214号公報(段落[0010]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の鍛造用金型装置では、複数のヒータ挿入穴を設けた構造において金型自体の強度を確保する必要上、材料費が高価である耐熱合金等からなる金型自体の小形化が難しかった。また、大きさ等の異なる種々の鍛造品に対して、それぞれ、シーズヒータが組み込まれた金型を用意することが必要であった。その結果、これらのことから、鍛造用金型装置の低価格化を図ることがむずかしかった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、鍛造用素材の高温鍛造に使用される鍛造用金型装置において、金型の小形化を図ることができ、また、大きさ等の異なる複数種の鍛造製品に対してダイホルダーの共用を図ることができる、鍛造用金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
請求項1の発明は、鍛造用素材の高温鍛造に用いられる鍛造用金型装置において、上金型と下金型とを備え、前記上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部を囲繞し、該金型を保持するダイホルダーと、
前記金型を支持するダイプレートと、
前記金型の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータが組み込まれたヒータプレートと、
前記ヒータプレートと前記ダイプレートとの間に配置された断熱プレートと、
前記ダイホルダーの径方向外側に設けられ、前記ダイホルダーを直接的に輻射加熱するダイホルダー加熱手段としての赤外線ヒータと、
前記ダイプレート、前記断熱プレート、前記ヒータプレート及び前記ダイホルダーが一体に取り付けられるとともに、前記赤外線ヒータが支持されるベースプレートと、を備えたことを特徴とする鍛造用金型装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鍛造用金型装置は、上下の少なくとも一方の金型について、金型の外周部を囲繞し、該金型を保持するダイホルダーを備え、鍛造時に金型が受ける径方向の引張り応力(引張り力)を前記ダイホルダーによって受け持つようにしているので、金型の小形化を図ることができる。これにより、高価な例えばNi基耐熱合金からなる金型の低価格化を図ることができる。また、前記ダイホルダーが金型の外周部を囲繞する構造であるので、前記ダイホルダーを共用することで、大きさ、厚み等の異なる複数種の鍛造製品に対して金型を交換するだけですみ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による鍛造用金型装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0015】
図1において、10は上金型、20は下金型であり、この上金型10と下金型20とにより金型1が構成されている。
【0016】
まず、上金型10側について説明する。この鍛造用金型装置の上金型側は、図1に示すように、上金型10と、上金型10を支持するダイプレート14と、上金型10の外周部を囲繞し、該上金型10を保持するダイホルダー12と、ダイホルダー12に保持された上金型10を加熱する金型加熱手段としての、上金型10の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータ11aが組み込まれたヒータプレート11と、ヒータプレート11とダイプレート14との間に配置された断熱プレート13と、ダイホルダー12を加熱(輻射加熱)するダイホルダー加熱手段としての赤外線ヒータ15と、を備えている。鍛造に際して、加熱炉で予熱された上金型10が前記ダイホルダー12の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダー12に固定されるという「入れ子構造」になっている。
【0017】
50は、図示しないプレス機の昇降側部材(スライダ)に固定されたベースプレートである。予熱が施された上金型10の装着に先立ち、ベースプレート50には、タイロッド16a、ナット16b、座金16c及び皿ばね16dを用いて、ダイプレート14、断熱プレート13、ヒータプレート11及びダイホルダー12が一体に取り付けられている。また、前記赤外線ヒータ15はベースプレート50に支持されている。
【0018】
つぎに、下金型20側について説明する。この鍛造用金型装置の下金型側は、図1に示すように、下金型20と、下金型20を支持するダイプレート24と、下金型20の外周部を囲繞し、該下金型20を保持するダイホルダー22と、ダイホルダー22に保持された下金型20を加熱する金型加熱手段としての、下金型20の製品成形面と反対側の面が当接するように配置され、複数のシーズヒータ21aが組み込まれたヒータプレート21と、ヒータプレート21とダイプレート24との間に配置された断熱プレート23と、ダイホルダー22を加熱(輻射加熱)するダイホルダー加熱手段としての赤外線ヒータ25と、を備えている。鍛造に際して、加熱炉で予熱された下金型20が前記ダイホルダー22の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダー22に固定されるという「入れ子構造」になっている。
【0019】
60は、前記プレス機の固定側部材(ボルスタ)に固定されたベースプレートである。予熱が施された下金型20の装着に先立ち、このベースプレート60には、タイロッド26a、ナット26b、座金26c及び皿ばね26dを用いて、ダイプレート24、断熱プレート23、ヒータプレート21及びダイホルダー22が一体に取り付けられている。また、前記赤外線ヒータ25はベースプレート60に支持されている。なお、図1では、鍛造製品を取り出すためのノックアウト機構などは図示省略している。
【0020】
この実施形態では、前記の上下の金型10,20は、製品成形面を有して円盤状をなしており、その材質が、例えばNi基耐熱合金からなるものである。また、前記ヒータプレート11,21は、円盤状をなしており、その材質が、例えばNi基耐熱合金からなるものである。前記ダイホルダー12,22は、円環状をなし、その材質が、例えば熱間工具鋼からなるものである。前記断熱プレート13,23は、円盤状をなし、例えば耐火れんがからなるものである。また、前記ダイプレート14,24は、円盤状をなし、その材質が、例えば炭素鋼からなるものである。
【0021】
前記のように構成される鍛造用金型装置において、上金型10は、加熱炉で所定温度に予熱されてから図示しないプレス機まで導かれて、その製品成形面と反対側の面(金型裏面)がヒータプレート11に当接するようにしてダイホルダー12の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダー12に固定される。なお、この上金型10の装着に先立ち、ヒータプレート11(シーズヒータ11aによって加熱)、及びダイホルダー12(赤外線ヒータ15によって加熱)は、所定の温度(例えば、上金型10の最終目標温度よりも数百度程度低い温度)に加熱されている。
【0022】
同様に、下金型20は、加熱炉で所定温度に予熱されてから図示しないプレス機まで導かれて、その製品成形面と反対側の面(金型裏面)がヒータプレート21に当接するようにしてダイホルダー22の内側に嵌め入れられ、例えば図示しないピンなどを用いてダイホルダー22に固定される。なお、この下金型20の装着に先立ち、ヒータプレート21(シーズヒータ21aによって加熱)、及びダイホルダー22(赤外線ヒータ25によって加熱)は、所定の温度(例えば、下金型20の最終目標温度よりも数百度程度低い温度)に加熱されている。
【0023】
そして、シーズヒータ11a及び赤外線ヒータ15の出力を調整することにより、上金型10の温度(上金型10の製品成形面温度)が最終目標温度に保持されるように温度調整するとともに、シーズヒータ21a及び赤外線ヒータ25の出力を調整することにより、下金型20の温度(下金型20の製品成形面温度)が最終目標温度に保持されるように温度調整を行う。金型10,20は、加熱により弾性変形範囲内で熱膨張し、ダイホルダー12,22とクリアランスがゼロの状態で接している。なお、赤外線ヒータ15,25を用いることで、ダイホルダー12,22を非接触にて精度良く温度調整することができる。
【0024】
そして、難加工性金属材料であるチタン合金、Ni基合金などからなる鍛造用素材が、加熱炉で所定温度に加熱されてから、下金型20の製品成形面に載置され、この鍛造用素材の高温鍛造が行なわれる。なお、断熱プレート13により、ヒータプレート11などの高温側からダイプレート14及びベースプレート50側への熱移動が防がれ、同様に、断熱プレート23により、ヒータプレート21などの高温側からダイプレート24及びベースプレート60側への熱移動が防がれる。
【0025】
このように、本実施形態による鍛造用金型装置は、上下の金型10,20の各々について、金型10,20とは別にヒータプレート11,12を備えているので、ヒータ挿入穴を有する構造の金型を備える必要がないこと、及び、金型10,20の外周部を囲繞し、該金型10,20を保持するダイホルダー12,22を備え、鍛造時に金型10,20が受ける径方向の引張り応力(引張り力)を前記ダイホルダー12,22によって受け持つようにしていること、により金型10,20の小形化を図ることができる。これにより、高価な例えばNi基耐熱合金からなる金型10,20の低価格化を図ることができる。
【0026】
また、金型10,20の小形化によってヒータプレート11,12による金型10,20の昇温時間を短縮できること、及び、ダイホルダー12,22が金型10,20の外周部を囲繞する構造であるので、前記ダイホルダー12,22を共用することで、大きさ、厚み等の異なる複数種の鍛造製品に対して金型10,20を交換するだけで済むこと、により生産性の向上を図ることができる。
【0027】
なお、前記の実施形態では、図1図2に示すように、上下の金型10,20をその一例として同一の形状、大きさのものとして図示し、これに伴い、ダイホルダー12,22、赤外線ヒータ15,25、ヒータプレート11,21などについても、それぞれ、同一の形状、大きさのものとして図示したが、本発明は、これに限定されるものでなく、形状、大きさが互いに異なる上下の金型を備えたものについても、当然ながら、適用可能である。
【0028】
また、前記の実施形態では、上金型10について、該金型10の外周部を囲繞し、該金型10を保持するダイホルダー12を備えるとともに、下金型20について、該金型20の外周部を囲繞し、該金型20を保持するダイホルダー22を備えた構成の鍛造用金型装置について説明したが、本発明による鍛造用金型装置は、上金型10又は下金型20について、該金型の外周部を囲繞し、該金型を保持するダイホルダーを備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…金型 10…上金型 20…下金型
11,21…ヒータプレート 11a,21a…シーズヒータ
12,22…ダイホルダー
13,23…断熱プレート
14,24…ダイプレート
15,25…赤外線ヒータ
50,60…ベースプレート
図1