(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端に鋭利な針先を有する針体と該針体の基端部に固定された針ハブとを有する穿刺針と、該穿刺針をその軸方向に沿って移動可能に収納し、前記針先が突出可能な開口を有し、外周面の周方向に沿って設けられた3つ以上の凸部を有する筒状のケーシングとを備える穿刺針チップを先端部に着脱自在に装着して用いられる穿刺装置であって、
前記ケーシングが着脱自在に装着される装着部を先端部に有する中空のハウジングと、
前記装着部の内側に周方向に沿って設けられ、前記ケーシングを前記装着部に装着すると、前記ケーシングの前記3つ以上の凸部が当接することにより弾性変形して前記3つ以上の凸部にそれぞれ圧接し、弾性定数の異なる複数の圧接片を有する圧接手段とを備え、
前記ケーシングが前記装着部に装着された状態で、前記各凸部のうちの2つには、弾性定数の異なる前記圧接片が圧接するよう構成されていることを特徴とする穿刺装置。
先端に鋭利な針先を有する針体と該針体の基端部に固定された針ハブとを有する穿刺針と、該穿刺針をその軸方向に沿って移動可能に収納し、前記針先が突出可能な開口を有し、外周面の周方向に沿って設けられた3つ以上の凸部を有する筒状のケーシングとを備える穿刺針チップを先端部に着脱自在に装着して用いられる穿刺装置であって、
前記ケーシングが着脱自在に装着される装着部を先端部に有する中空のハウジングと、
前記装着部の内側に周方向に沿って設けられ、前記ケーシングを前記装着部に装着すると、前記ケーシングの前記3つ以上の凸部が当接することにより弾性変形して前記3つ以上の凸部にそれぞれ圧接し、弾性定数の異なる複数の圧接片を有する圧接手段とを備え、
前記ケーシングが前記装着部に装着される際、前記各圧接片に対する前記ケーシングの回転方向の位置にかかわらず、前記各凸部に圧接する前記各圧接片の合力により、前記ケーシングの軸が傾斜するよう構成されていることを特徴とする穿刺装置。
前記ケーシングが前記装着部に装着された状態で、前記各圧接片のうちの弾性定数が最大のものは、前記各凸部のうちの1つのみに圧接するよう構成されている請求項1または2に記載の穿刺装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、装着された穿刺針チップのケーシングが装着部から離脱する方向へ移動するのを防止するとともに穿刺針チップの着脱に過大な力を必要としない穿刺装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 先端に鋭利な針先を有する針体と該針体の基端部に固定された針ハブとを有する穿刺針と、該穿刺針をその軸方向に沿って移動可能に収納し、前記針先が突出可能な開口を有し、外周面の周方向に沿って設けられた3つ以上の凸部を有する筒状のケーシングとを備える穿刺針チップを先端部に着脱自在に装着して用いられる穿刺装置であって、
前記ケーシングが着脱自在に装着される装着部を先端部に有する中空のハウジングと、
前記装着部の内側に周方向に沿って設けられ、前記ケーシングを前記装着部に装着すると、前記ケーシングの前記3つ以上の凸部が当接することにより弾性変形して前記3つ以上の凸部にそれぞれ圧接し、弾性定数の異なる複数の圧接片を有する圧接手段とを備え、
前記ケーシングが前記装着部に装着された状態で、前記各凸部のうちの2つには、弾性定数の異なる前記圧接片が圧接するよう構成されていることを特徴とする穿刺装置。
【0010】
(2) 先端に鋭利な針先を有する針体と該針体の基端部に固定された針ハブとを有する穿刺針と、該穿刺針をその軸方向に沿って移動可能に収納し、前記針先が突出可能な開口を有し、外周面の周方向に沿って設けられた3つ以上の凸部を有する筒状のケーシングとを備える穿刺針チップを先端部に着脱自在に装着して用いられる穿刺装置であって、
前記ケーシングが着脱自在に装着される装着部を先端部に有する中空のハウジングと、
前記装着部の内側に周方向に沿って設けられ、前記ケーシングを前記装着部に装着すると、前記ケーシングの前記3つ以上の凸部が当接することにより弾性変形して前記3つ以上の凸部にそれぞれ圧接し、弾性定数の異なる複数の圧接片を有する圧接手段とを備え、
前記ケーシングが前記装着部に装着される際、前記各圧接片に対する前記ケーシングの回転方向の位置にかかわらず、前記各凸部に圧接する前記各圧接片の合力により、前記ケーシングの軸が傾斜するよう構成されていることを特徴とする穿刺装置。
【0011】
(3) 前記ケーシングが前記装着部に装着された状態で、前記各圧接片のうちの弾性定数が最大のものは、前記各凸部のうちの1つのみに圧接するよう構成されている上記(1)または(2)に記載の穿刺装置。
【0012】
(4) 前記各圧接片の弾性定数は、3段階以上に設定されており、
前記ケーシングが前記装着部に装着された状態で、前記各凸部に、それぞれ、異なる弾性定数の前記圧接片が圧接するよう構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の穿刺装置。
【0013】
(5) 前記圧接手段は、筒状をなし、前記ケーシングを前記装着部に装着すると、前記ケーシングが挿入される圧接部材を有し、
前記圧接部材には、前記圧接部材の基端から途中まで前記圧接部材の軸方向に延びる複数の第1スリットが、前記圧接部材の周方向に沿って設けられており、前記圧接部材の隣り合う前記第1スリットの間の部位が前記圧接片を構成している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の穿刺装置。
【0014】
本発明の穿刺装置では、前記圧接部材には、前記圧接部材の先端から途中まで前記圧接部材の軸方向に延びる複数の第2スリットが、前記圧接部材の周方向に沿って、前記第1スリットと交互に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の穿刺装置では、前記圧接部材は、先端側に設けられた大径部と、基端側に設けられ、前記大径部よりも内径の小さい小径部と、前記大径部と前記小径部との間に設けられ、前記大径部側から前記小径部側に向かって内径が漸減するテーパ部とを有することが好ましい。
【0016】
本発明の穿刺装置では、前記第1スリットの先端は、前記大径部または前記テーパ部に位置しており、
前記各圧接片の弾性定数の設定は、前記テーパ部の軸方向の長さの設定によりなされていることが好ましい。
【0017】
本発明の穿刺装置では、前記各圧接片の弾性定数の設定は、前記第2スリットの軸方向の長さまたは幅の設定によりなされていることが好ましい。
【0018】
本発明の穿刺装置では、前記各圧接片の弾性定数の設定は、前記圧接片の厚さの設定によりなされていることが好ましい。
【0019】
本発明の穿刺装置では、前記ケーシングを前記ハウジングに対して先端方向に移動させ、前記穿刺針チップを当該穿刺装置から取り外すイジェクト機構を有することが好ましい。
【0020】
本発明の穿刺装置では、前記穿刺針チップは、前記針先が突出可能な開口を覆うように前記ケーシングに嵌合したキャップを有し、
前記キャップと前記ケーシングの嵌合力よりも、前記各圧接片の前記ケーシングへの圧接力の方が大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、穿刺針チップのケーシングが装着部に装着された状態で、ケーシングの各凸部のうちの2つには、穿刺装置の弾性定数の異なる圧接片が圧接するので、その装着の際の一方の圧接片の凸部への圧接力が他方の圧接片の凸部への圧接力よりも大きくなる。すなわち、他方の圧接片が一方の圧接片よりも大きく弾性変形し、これにより、ケーシングの軸が穿刺装置側の軸に対して傾斜する。
【0022】
これにより、装着された穿刺針チップのケーシングが不本意に装着部から離脱する方向へ移動してしまうことを防止することができる。これによって、装着された未使用の穿刺針チップが、使用前にその使用ができない状態になってしまうことや、使用時に針先が穿刺針チップの先端開口部から突出しないということを防止することができる。また、同時に、穿刺針チップを装着あるいは離脱させる際に要する力が過大とならない様に、圧接力の微妙な設定を可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の穿刺装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の穿刺装置と、穿刺針チップとで構成された穿刺器具セットの実施形態において、穿刺装置に穿刺針チップを装着した状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す穿刺針チップの断面図である。
図3は、
図1に示す穿刺器具セットの分解斜視図である。
図4は、
図1に示す穿刺装置の前端部材およびコレットの分解斜視図である。
図5は、
図1に示す穿刺装置のコレットの背面図、すなわち基端側から見た図である。
図6は、
図5に示すコレットのA−A線での断面図である。
図7は、
図1に示す穿刺装置の前端部材、コレットおよびケース本体を示す断面図である。
図8は、
図7に示す前端部材およびコレットのB−B線での断面図である。
図8は、
図1に示す穿刺器具セットにおける穿刺装置の前端部材の第2部材およびコレットと、穿刺針チップのケーシングとを示す斜視図である。
図10は、
図1に示す穿刺装置の前端部材、コレット、ケース本体および第2接続体を示す断面図である。
図11は、
図1に示す穿刺器具セットにおける穿刺装置の前端部材、コレット、ケース本体および第2接続体と、穿刺針チップのケーシングとを示す断面図である。
図13は、
図9中のC−C線での断面図である。
図13〜
図15は、
図1に示す穿刺器具セットの作用を説明するための断面図である。
図16および
図17は、
図1に示す穿刺装置のコレットの他の構成例を示す斜視図である。なお、
図13では、前端部材は、第1部材および第2部材が図示されている。
【0025】
以下では、各図において、軸方向をX方向とし、X1方向を「先端」、「前端」または前方」とし、X2方向を「基端」、「後端」または「後方」として説明を行う。
【0026】
図1に示すように、穿刺器具セット10は、穿刺針チップ12と、その穿刺針チップ12が先端部に着脱自在に装着される穿刺装置1とを有している。穿刺装置1は、穿刺針チップ12を装着した装着状態、すなわち
図1に示す状態で、生体表面を穿刺するために用いられる。
【0027】
まず、穿刺針チップ12について説明する。
図2及び
図3に示すように、穿刺針チップ12は、チップ本体13と、チップ本体13に着脱自在に装着されるキャップ14とを有する。チップ本体13は、皮膚を穿刺する穿刺針15と、穿刺針15に係合している摺動リング(移動制限手段)16と、穿刺針15を内部に摺動可能に保持する筒状のケーシング18とを有する。
【0028】
穿刺針15は、先端の針(針体)20と、該針20の後方部と一体的に成型され、又は接着されたハブ(針ハブ)22とを有する。ハブ22は、周状に等角度間隔で並ぶ前方に突出した4本の弾性レバー24と、後方の円筒形状の摺動支持部26と、後端に突出した被把持突起28とを有する。摺動支持部26及び摺動リング16の外径は、ケーシング18の内径と略同径であって、ケーシング18内を軸方向に摺動可能である。
【0029】
4本の弾性レバー24は摺動リング16の内部に挿入され、摺動リング16に当接している。摺動リング16はその後端面が、ハブ22に設けられた微小段差24aに当接しており、穿刺針15が前進する際には、同時に押し出されることになる。また、弾性レバー24の摺動リング16との当接部には突起や段差がなく、穿刺針15が後退する際には摺動リング16は抜かれやすい。
【0030】
ケーシング18は、筒形状であって先端の縮径部32と、該縮径部32の後方に設けられた内周段差部34と、中程やや前方における内周面に僅かに突出した3つの前方膨出部36と、後方内周面に僅かに突出した後方環状膨出部40と、中程の外周に設けられたスカート41とを有する。
【0031】
前方膨出部36は、穿刺針15が前進する際に摺動リング16が乗り超えられる程度の低い膨出部である。前方膨出部36は、例えば3つ程度が等間隔に設けられ、後方側がなだらかで前方が比較的急な傾斜となっており、摺動リング16が後方からは乗り越えやすく、前方からは乗り越えられない。摺動支持部26の周面30は、後方環状膨出部40と適度な強度で嵌合して固定されている。この嵌合は、いわゆる圧入状態となっている。後方環状膨出部40と周面30の嵌合により針20の後方部は気密性が保たれる。周面30と後方環状膨出部40との嵌合は、例えば周面30に適度なアンダーカットを設け該アンダーカットに後方環状膨出部40が嵌り込むような構成としてもよい。
【0032】
縮径部32は、外周面及び内周面とも先端に向かって縮径する形状であって、先端には円形の開口部42が設けられている。
【0033】
スカート41は環状体であって、断面視で(
図2参照)ケーシング18の外周から突出して後端側に伸び、ケーシング18との間に嵌合隙間部41aを形成している。
【0034】
また、ケーシング18の基端側の端部の外周部、すなわち、スカート41よりも基端側の外周部には、複数のリブ(チップ側リブ)44が突出形成されている。各リブ44は、軸方向に沿って延存している。また、各リブ44は、ケーシング18の外周部の周方向に沿って、ケーシング18の中心軸回りに等角度間隔に配置されている。
【0035】
本実施形態では、リブ44の数は、6つであり、そのうちの3つは、他の3つよりもその高さが高くなるように設定されている。また、高さが高い方のリブ44と低い方のリブ44とは、ケーシング18の周方向に沿って交互に配置されている。ケーシング18が穿刺装置1の後述する装着部150に装着された状態では、各リブ44のうち、高さが高い方の3つのリブ44に、後述するコレット5の対応する圧接片58が圧接する。したがって、その高さが高い方の3つのリブ44により、ケーシング18が装着部150に装着された状態で対応する圧接片58が圧接する凸部を構成する。なお、ケーシング18が装着部150に装着された状態で対応する圧接片58が圧接するリブ44の数は、3つ以上であれば特に限定されるものではない。
【0036】
図2に示すように、キャップ14は、有底筒状をなしており、ケーシング18の縮径部32に嵌合し、開口部42を塞ぐ。すなわち、キャップ14は、縮径部32に着脱自在に装着され、開口部42を気密的に封止する。
【0037】
次に、穿刺針チップ12が装着される穿刺装置1について説明する。
図3及び
図13(a)に示すように、穿刺装置1はケース本体102をベースに構成されており、穿刺深さの設定を行うダイヤル部104と、軸方向に進退可能なプランジャ106と、該プランジャ106の中段部に同軸配置された駆動用コイルスプリング108と、後端部に同軸配置された戻し用コイルスプリング110とを有する。ケース本体102は、中空で筒状をなしている。
【0038】
穿刺装置1は、さらに、ダイヤル部104をケース本体102の後端側に回転自在に保持する後端部材112と、ケース本体102の先端側の側部に形成された孔114に配置される穿刺ボタン116と、ケース本体102の先端に設けられ穿刺ボタン116を内向きに変位可能に弾性的に保持する前端部材118とを有する。なお、ケース本体102、後端部材112および前端部材118により、穿刺装置1のハウジングの主要部が構成される。
【0039】
また、穿刺装置1は、後端部材112の内腔部においてその後端部材112に対して進退自在のプッシャ120と、ケース本体102内にケース本体102に対してその軸方向に移動可能に設置され、プッシャ120に接続される第1接続体122と、ケース本体102および前端部材118内にその軸方向に移動可能に設置され、第1接続体122に接続される第2接続体124とを有する。
【0040】
プランジャ106は、駆動用コイルスプリング108の一端を支持する中段部の第1ばね座130と、外向きフック形状で後端に設けられた一対の第2ばね座132と、ハブ22の被把持突起28に嵌合する把持バー134と、上方中段部から前方に向けて延在する弾性片136と、やや後方の下部に設けられた小突起138を有する。なお、把持バー134により、穿刺針15が着脱自在に装着される装着部が構成される。
【0041】
後端部材112の先端側内面には、周方向に配列され、軸方向(後端方向)の高さの異なる複数の階段部139を有する。階段部139は、穿刺時にプランジャ106が前方に勢いよく移動するときに該プランジャ106の小突起138が当接することで、針20の開口部42からの突出長さを規定する。つまり、ダイヤル部104を回転することにより階段部139が周方向に移動し、小突起138の当接する階段部139の高さが異なることによって針20の突出長さが調整されて、穿刺深さを調整することができる。
【0042】
後端部材112の前端面112aは、プランジャ106が後方に移動するときに第1ばね座130が当接するのに十分な面積を有し、該プランジャ106の後方への移動を規制するストッパとして作用する。
【0043】
把持バー134は、スリットにより2つに分かれた円筒形状であり、やや弾性変形しながらハブ22の被把持突起28に嵌合して適度な摩擦力により該ハブ22を保持することができる。弾性片136は先端上部の第1突起140と、やや後方の第2突起142とを有する。第1ばね座130は、第1接続体122の一部が挿通する開口144が左右に設けられている。また、第1ばね座130は後方に開口するカップ形状となっている。
【0044】
前端部材118は、先端側に、穿刺針チップ12のケーシング18が着脱自在に装着される装着部150を有する。装着部150は、外面が先端に向かいやや縮径するテーパを有する筒形状であり、ケース本体102からやや突出している。この装着部150の内側には、圧接手段である筒状をなすコレット(圧接部材)5が設置されている。なお、コレット5については、後で詳述する。
【0045】
また、前端部材118は、複数の部材、本実施形態では、第1部材118aおよび第2部材118bで構成されている(
図4参照)。これにより、装着部150の内側にコレット5を容易に設置することができる。なお、第1部材118aと、第2部材118bとは、例えば、接着剤による接着、融着等により接合される。
【0046】
装着部150の先端部の外径は、前記のスカート41の嵌合隙間部41a及びケース本体102の先端の筒先端部151の内径部にちょうど嵌合するように設定されている。
【0047】
ケース本体102の先端の筒先端部151の板厚は適度に厚く、スカート41の後端部41bが当接する受け座として作用する。以下、筒先端部151を受け座151とも呼ぶ。装着部150の内腔部は、穿刺針チップ12が装着される装着穴153となっている。初期状態では、装着穴153にはプランジャ106の把持バー134が配置されている。
【0048】
また、装着部150の内周部には、複数のリブ(装着部側リブ)162が突出形成されている。各リブ162は、軸方向に沿って延在している。また、各リブ162は、装着部150の内周部の周方向に沿って、すなわち後述するコレット5の周方向に沿って、装着部150の中心軸回りに等角度間隔に配置されている。
【0049】
なお、リブ162の数は、複数であれば特に限定されないが、本実施形態では、12である。そして本実施形態では、装着部150に穿刺針チップ12のケーシング18を挿入する際、ケーシング18の隣り合う2つのリブ44の間に装着部150の2つのリブ162が位置し、すなわち、隣り合う2つのリブ162の間であって、ひとつおきに、1つのリブ44が位置するように構成されている。このようなリブ162および44を設けることにより、穿刺針チップ12のその径方向への移動が規制され、穿刺針15をプランジャ106に確実に装着することができる。また、リブ162とリブ44とが係合することにより、装着部150に対するケーシング18のその軸回りの回転が所定量以内に規制される。
【0050】
前端部材118における装着部150以外の箇所はケース本体102内に挿入されており、穿刺ボタン116を保持する保持部152と、プランジャ106が駆動用コイルスプリング108を圧縮して後端側に移動したときに該プランジャ106の第1突起140に係合するトリガストッパ154とを有する。
【0051】
第1接続体122は、後方が筒体で、前方に2本のアーム156を有する。2本のアーム156は、プランジャ106の各開口144に挿通している。第2接続体124は上面が開口した筒体であり、後端に各アーム156のスリットに係合する係合片158を有する。つまり、第1接続体122と第2接続体124とは係合片158を介して一体的に接続されており、プッシャ120を押し込むことにより第1接続体122と第2接続体124は一体的に移動する。
【0052】
また、第2接続体124の外周部の軸方向の途中には、ケース本体102の内周部等に形成された図示しない3つの溝に挿入される3つの突起159が形成されており、各突起159が各溝に沿って移動するように構成されている。各突起159は、第2接続体124が最も先端側に移動したとき、コレット5よりも基端側に位置するように配置されている。これらの突起159により、第2接続体124がケース本体102に対して移動する際、第2接続体124がケース本体102に対してその軸回りに回転してしまうことを防止することができる。
【0053】
なお、添付の縦断面図、例えば、
図13(a)、
図13(b)、
図13(c)等では、その断面位置により、第1接続体122と第2接続体124は一部しか表れていないが、該第1接続体122及び第2接続体124がプッシャ120と一体的な構成となっていることは
図3から容易に理解されよう。
【0054】
第1接続体122の後方の筒状部はプランジャ106の後方側を覆うように配置され、第2接続体124はプランジャ106の前方側を覆うように配置され、プランジャ106は、第1接続体122及び第2接続体124の内側で軸方向に進退可能である。
【0055】
なお、プッシャ120、第1接続体122および第2接続体124により、穿刺針チップ12のケーシング18を前端部材118に対して先端方向に移動させて穿刺針チップ12を穿刺装置1から取り外すイジェクト機構の主要部が構成される。また、第2接続体124は、ケーシング18の基端部を押圧してそのケーシング18を先端方向に移動させるイジェクト部材を構成する。
【0056】
また、軸方向に移動可能に設置され、穿刺針15が着脱自在に装着される装着部である把持バー134を有するプランジャ106と、プランジャ106を先端方向に付勢する付勢部材である駆動用コイルスプリング108と、駆動用コイルスプリング108により先端方向に付勢されたプランジャ106の係合部である第1突起140に係合し、プランジャ106の移動を阻止するトリガストッパ154とにより、穿刺針15を少なくとも発射準備位置から穿刺位置まで移動させる穿刺機構の主要部が構成される。
【0057】
また、穿刺ボタン116は、前記穿刺機構を発動させ、穿刺動作を開始させる操作を行うものである。すなわち、穿刺ボタン116を押下することにより、プランジャ106の第1突起140とトリガストッパ154との係合状態が解除され、穿刺動作が開始される。
【0058】
次に、コレット5について説明する。
図3〜
図12に示すように、前端部材118の装着部150の内側には、筒状をなすコレット5が設置されている。コレット5は、装着部150の軸方向において、リブ162よりも基端側に配置されている。
【0059】
コレット5は、筒状をなす基部50と、基部50の基端部から基端方向に突出するように形成された複数の圧接片58とを有している。圧接片58の数は、複数であれば特に限定されないが、本実施形態では、圧接片58の数は、6つに設定されている。また、6つの圧接片58a、58b、58c、58d、58e、58fは、
図12中の反時計回りに、この順序で、基部50の周方向に沿って、等角度間隔に配置されている。すなわち圧接片58a〜58fは、装着部150の内側に周方向に沿って並設されている。また、圧接片58a〜58fの幅は、同一に設定されている。
【0060】
なお、以下では、各圧接片58を区別する場合は、「圧接片58a」、「圧接片58b」、「圧接片58c」、「圧接片58d」、「圧接片58e」、「圧接片58f」と言い、区別しない場合は、「圧接片58」と言う。
【0061】
また、ケーシング18の6つのリブ44のうち、高さが高い方の3つのリブ44を高さが低い方の3つのリブ44と区別する場合は、「リブ44a」と言い、区別しない場合は、「リブ44」と言う。なお、「44a」の符号は、
図9および
図12のみに付す。
【0062】
このコレット5は、穿刺針チップ12のケーシング18を装着部150に装着すると、ケーシング18が挿入されることにより、ケーシング18の3つのリブ44aに当接する3つの圧接片58が弾性変形し、ケーシング18の各リブ44aに圧接するよう構成されている。そして、コレット5、すなわち、各圧接片58のケーシング18への圧接力は、キャップ14とケーシング18の嵌合力よりも十分に大きくなるように設定されている。
【0063】
ここで、圧接片58a〜58fは、その弾性定数が異なっている。本実施形態では、圧接片58a〜58fの弾性定数は、3段階に設定されている。以下では、その3段階の弾性定数について、最大のものを「大」、最小のものを「小」、その間のものを「中」と言う。
【0064】
まず、圧接片58a〜58fの弾性定数は、それぞれ、大、中、小、小、中、大に設定されている。すなわち、
図12中の反時計回りに、大、中、小、小、中、大の圧接片58が、この順序で等角度間隔に配置されている。
【0065】
これにより、穿刺針チップ12のケーシング18をその軸周りにどのような角度で、装着部150に装着しても、すなわち、圧接片58a〜58fに対するケーシング18の回転方向の位置にかかわらず、各リブ44aに、それぞれ、大、中、小の圧接片58が圧接する。
【0066】
これにより、圧接片58と小径部53とケーシング18の各リブ44aとの間に大きな摩擦力が生じ、前端部材118に対するケーシング18の先端方向への移動を確実に阻止することができる。
【0067】
そして、ケーシング18が装着部150に装着される際、各リブ44aに圧接する圧接片58a〜58fの合力により、ケーシング18の軸が装着部150の軸に対して傾斜する。
【0068】
すなわち、ケーシング18が装着部150に装着された状態では、小の圧接片58が最も大きく弾性変形し、大の圧接片58が最も小さく弾性変形し、中の圧接片58がその間の大きさに弾性変形し、これにより、ケーシング18の軸が装着部150の軸に対して傾斜する。これによって、装着された穿刺針チップ12のケーシング18が不本意に装着部150から離脱する方向へ移動してしまうことを防止することができる。
【0069】
従って、キャップ14をケーシング18から取り外す際、キャップ14をケーシング18の中心軸から傾いた方向に引っ張って過大な力がかかる場合でも、前端部材118に対するケーシング18の先端方向への移動を防止することができ、装着された穿刺針チップ12が、使用前にその使用ができない状態や針先が先端開口から十分に突出しない状態になってしまうことを防止することができる。
【0070】
なお、「大、中、小、小、中、大」の並びの圧接片58を1単位とした場合、1単位に限らず、例えば、2単位、4単位、5単位、7単位等、3の倍数以外の単位数であればよい。
【0071】
また、1単位は、「大、中、小、小、中、大」の順番に限らず、例えば、「大、中、小、大、中、小」、「大、大、中、中、小、小」等、他の順番にしてもよい。
【0072】
また、圧接片58の弾性定数の段階数は、3段階に限らず、2段階でもよく、また、4段階以上でもよい。
また、ケーシング18を支持する点数は、3点に限らず、4点以上でもよい。
【0073】
なお、ケーシング18を3点で支持する場合は、コレット5の中心角の1/3のみを「大」の圧接片58に設定することで、その他をどのように設定しても、3つのリブ44aのうちの1つのみに「大」の圧接片58が当接し、他の2つには、「大」の圧接片58は、当接せず、「中」または「小」の圧接片58が当接する。すなわち、N(Nは、3以上の整数)点支持の場合は、コレット5の中心角の1/Nのみを「大」に設置することで、その他をどのように設定しても、1つのリブ44aのみに「大」の圧接片58が当接する。これにより、ケーシング18の軸を装着部150の軸に対して傾斜させることができる。なお、「大」の圧接片58以外は、例えば、「中」のみの圧接片58に設定してもよく、また、「小」のみの圧接片58に設定してもよく、また、「中」および「小」の圧接片58に設定してもよい。
【0074】
圧接片58a〜58fの弾性定数は、本実施形態では、第2スリット55の長さを調整することにより設定する。
【0075】
すなわち、「大」の圧接片58a、58fの場合が、第2スリット55の長さが最小となり、「小」の圧接片58c、58dの場合が、第2スリット55の長さが最大となり、「中」の圧接片58b、58e場合が、第2スリット55の長さがその最大と最小の間となる。
【0076】
また、コレット5は、下記の構成を有している。
図4〜
図6に示すように、コレット5は、先端側に設けられた大径部51と、基端側に設けられ、大径部51よりも外径および内径の小さい小径部53と、大径部51と小径部53との間に設けられ、大径部51側から小径部53側に向かって外径および内径がそれぞれ漸減するテーパ部52とを有しており、小径部53がケーシング18の外周部のリブ44に圧接するようになっている。なお、コレット5の肉厚は、本実施形態では、一定であるが、これに限らず、例えば、軸方向に変化していてもよい。
【0077】
また、大径部51の内径は、ケーシング18の6つのリブ44のうち高さが高い方の3つのリブ44を含む外径よりも若干大きく設定されており、小径部53の内径は、前記ケーシング18の高さが高い方の3つのリブ44を含む外径よりも若干小さく設定されている。
【0078】
また、コレット5には、複数の第1スリット54と、複数の第2スリット55とが形成されている。第1スリット54および第2スリット55の数は、それぞれ、複数であれば特に限定されないが、本実施形態では、第1スリット54および第2スリット55の数は、それぞれ、6つに設定されている。また、第1スリット54と第2スリット55とは、コレット5の周方向に沿って交互に配置されている。
【0079】
第1スリット54は、コレット5の基端から途中まで軸方向に延びるスリットである。すなわち、第1スリット54は、コレット5の基端側に開放している。各第1スリット54は、コレット5の周方向に沿って、コレット5の中心軸回りに等角度間隔に配置されている。この隣り合う第1スリット54の間の部位が前記圧接片58を構成している。
【0080】
また、第2スリット55は、コレット5の先端から途中まで軸方向に延びるスリットである。すなわち、第2スリット55は、コレット5の先端側に開放している。各第2スリット55は、コレット5の周方向に沿って、コレット5の中心軸回りに等角度間隔に配置されている。この第2スリット55により、ケーシング18がコレット5内に挿入され小径部53を押し広げたとき、それに応じてコレット5の大径部51が若干狭まることで、小径部53が容易に広がることができる。この第2スリット55の数や寸法等の設定を調整することにより、コレット5の弾性力を最適の所定値に調整することができる。なお、第1スリット54のみで最適の弾性力を設定できるのであれば、第2スリット55を設けることは必ずしも必要ではない。
【0081】
また、第1スリット54の先端は、第2スリット55の基端よりも先端側に位置している。すなわち、第1スリット54と第2スリット55とは、コレット5の軸線に対して垂直な方向から見て、大径部51およびテーパ部52において互いに重なっている。これにより、小径部53がより確実に広がることができる。
【0082】
なお、第1スリット54の先端は、第2スリット55の基端よりも基端側に位置していてもよく、また、第1スリット54の先端と第2スリット55の基端の位置はコレット5の軸方向で一致していてもよい。
【0083】
また、第1スリット54の先端は、大径部51、テーパ部52、小径部53のうちのいずれに位置していてもよいが、大径部51またはテーパ部52に位置していることが好ましい。本実施形態では、第1スリット54の先端は、大径部51に位置している。すなわち、第1スリット54は、小径部53およびテーパ部52をコレット5の軸方向に貫通している。これにより、小径部53がより確実に広がることができる。
【0084】
また、第2スリット55の基端は、大径部51、テーパ部52、小径部53のうちのいずれに位置していてもよいが、大径部51またはテーパ部52に位置していることが好ましい。本実施形態では、第2スリット55の基端は、大径部51またはテーパ部52に位置している。
【0085】
この穿刺装置1では、
図10に示す状態から、
図9および
図11に示すように、ケーシング18がコレット5内に挿入されると、6つのリブ44のうち高さが高い方の3つのリブ44aにより、小径部53が広がる方向に押圧される。これによって、第1スリット54により小径部53が広がり、その小径部53の内径が増大し、コレット5の弾性力により小径部53がケーシング18の外周部、すなわち前記高い方の3つのリブ44に圧接する。この場合、小径部53、すなわち、各圧接片58は、ケーシング18をその外周の3箇所において、外周から中心に向けて締め付ける。
【0086】
また、
図7に示すように、コレット5の各第1スリット54および各第2スリット55と、前述した前端部材118の各リブ162とは、それぞれ、コレット5の周方向における位置が一致している。
【0087】
一方、装着部150に穿刺針チップ12のケーシング18を装着する際、そのケーシング18の各リブ44は、それぞれ、装着部150の隣り合う2つのリブ162の間に位置するので、
図9に示すように、ケーシング18がコレット5内に挿入されたとき、リブ44が第1スリット54に嵌ってしまうことを防止することができる。これにより、ケーシング18がコレット5内に挿入されたとき、6つのリブ44のうち高さが高い方の3つのリブ44aが各圧接片58を確実に押圧することができ、小径部53が確実に広がることができる。
【0088】
また、
図5〜
図8に示すように、コレット5の大径部51の先端の外周面には、コレット5の径方向に突出するフランジ56が形成されている。なお、前記各第2スリット55は、このフランジ56にも形成されている。すなわち、フランジ56は、各第2スリット55により、複数に分割されている。
【0089】
また、大径部51の先端の外周面の所定位置には、コレット5の径方向に突出する突出部57が形成されている。この突出部57の高さ、すなわち、コレット5の径方向における突出部57の長さは、径方向におけるフランジ56の長さよりも長く設定されている。
【0090】
コレット5のフランジ56は、装着部150に形成された溝164内に挿入され、装着部150に対するコレット5のその軸方向の移動が阻止される。したがって、コレット5のフランジ56および装着部150の溝164により、装着部150に対するコレット5の軸方向の移動を阻止する移動阻止手段が構成される。
【0091】
また、コレット5の突出部57は、装着部150に形成された溝166内に挿入され、装着部150に対するコレット5のその軸回りの回転が阻止される。したがって、コレット5の突出部57および装着部150の溝166により、装着部150に対するコレット5の軸回りの回転を阻止する回転阻止手段が構成される。なお、装着部150には、溝166に代えて、突出部57が挿入される貫通孔を形成してもよい。
【0092】
また、コレット5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種樹脂材料等が挙げられるが、金属材料が好ましい。コレット5を金属材料で構成することにより、コレット5の肉厚を薄くしつつ、強度を確保することができ、また、十分な弾性力を得ることができる。
【0093】
次に、このように構成される穿刺器具セット10及び穿刺装置1の作用について説明する。
【0094】
図13(a)に示すように、先ず、使用者は、穿刺装置1およびキャップ14が装着された未使用の穿刺針チップ12を把持し、その穿刺針チップ12を穿刺装置1の装着穴153に差し込んで後端側に向かって押し込む。このとき、ハブ22の被把持突起28に対してプランジャ106の把持バー134が係合する。すなわち、穿刺針15がプランジャ106に装着される。
【0095】
図13(b)に示すように、穿刺針チップ12をさらに後端側に向かって押し込むと、ケーシング18からハブ22及びプランジャ106を介して駆動用コイルスプリング108を圧縮し、やがてプランジャ106における第1ばね座130のカップ状の後端部が後端部材112の前端面112aに当接する。これによりプランジャ106の後端側への移動が規制される。また、弾性片136が一旦弾性変形した後に第1突起140がトリガストッパ154に係合しプランジャ106が駆動用コイルスプリング108を圧縮した状態で固定される。
【0096】
なお、ハブ22の周面30とケーシング18の後方環状膨出部40との嵌合力は、駆動用コイルスプリング108の弾性力よりも強く、ハブ22とケーシング18との嵌合が解除されることはない。
【0097】
この段階では、プランジャ106は穿刺をする準備位置まで達してトリガストッパ154によって固定されているが、ハブ22とケーシング18との係合は解除されておらず、スカート41は装着部150を覆っていない。ただし、穿刺針15は発射準備位置に達している。
【0098】
図13(c)に示すように、穿刺針チップ12をさらに後端側に向かって押し込むと、プランジャ106は前端面112aによって後端側への移動が規制されていることから、使用者の加える力はハブ22における摺動支持部26の周面30とケーシング18の後方環状膨出部40との係合部に直接的に加えられることになり、係合部の係合が解除される。つまり、ハブ22及びプランジャ106の位置は変わらないが、ケーシング18は相対的に後方に移動する。装着部150はスカート41の嵌合隙間部41a(
図2参照)に嵌合し、スカート41の後端部41bが受け座151に当接して止まる。装着部150の先端部と嵌合隙間部41aの先端底面とは僅かに隙間があり(
図14(b)参照)、後端部41bは受け座151に確実に当接する。このようにして、ケーシング18は、装着部150に装着される。すなわち、穿刺針チップ12は、規定の位置に確実に装着される。
【0099】
このとき、ケーシング18の後端が第2接続体124の前端面を押圧することにより、該第2接続体124及び第1接続体122を介してプッシャ120は後方に押し出され、後端から突出する。
【0100】
また、この際、ケーシング18の隣り合う2つのリブ44の間に装着部150の2つのリブ162が位置し、すなわち、隣り合う2つのリブ162の間であって、ひとつおきに、1つのリブ44が位置する。その状態で、ケーシング18が移動し、コレット5内に挿入され、6つのリブ44のうち高さが高い方の3つのリブ44aに押圧されて、小径部53が広がり、対応する圧接片58がケーシング18の各リブ44aに圧接する。そして、小の圧接片58が最も大きく弾性変形し、大の圧接片58が最も小さく弾性変形し、中の圧接片58がその間の大きさに弾性変形し、これにより、ケーシング18の軸が装着部150の軸に対して傾斜する。これによって、装着された穿刺針チップ12のケーシング18が不本意に装着部150から離脱する方向へ移動してしまうことを防止することができる。
【0101】
なお、このとき、装着部150はスカート41によって完全に覆われ、外からは視認できなくなっている。
【0102】
次いで、穿刺針チップ12のチップ本体13からキャップ14を先端方向に抜き取る。この際、キャップ14をチップ本体13の軸方向から傾いた方向に引っ張った場合でも、コレット5により、装着部150から離脱する方向へのケーシング18の移動が確実に阻止されている。これにより、未使用の穿刺針チップ12が、使用前にその使用ができない状態や針先が十分突出しない状態になってしまうことを防止することができる。
【0103】
次いで、チップ本体13の先端部を測定者の皮膚、例えば、指、手のひら、腕等に押し当て、穿刺ボタン116を押下する。これにより、
図14(a)に示すように、穿刺ボタン116により第1突起140が押し下げられ、トリガストッパ154と第1突起140の係合状態が解除され、プランジャ106は弾性付勢された駆動用コイルスプリング108によって前方へ駆動され、把持バー134を介して穿刺針15を押し出す。
【0104】
このとき、摺動リング16は、微小段差24aに当接したまま穿刺針15と同時に押し出され、内周段差部34により過度の前進が制限される。
【0105】
穿刺針15に設けられた針20の針先は、開口部42から突出して皮膚を穿刺する。なお、このときの穿刺針15の位置が穿刺位置である(
図14(a))。また、このとき、プランジャ106は戻し用コイルスプリング110を適度に圧縮している。したがって、該戻し用コイルスプリング110が元の長さに復帰する弾性力によってプランジャ106は即時に後方に押し戻される。このような穿刺機構により、穿刺針15を発射準備位置から穿刺位置まで移動させ、その後、基端側に移動させる穿刺動作がなされる。
【0106】
また、プランジャ106に接続された穿刺針15の針先が開口部42から瞬間的に突出する長さは、該プランジャ106の小突起138が階段部139に当接することにより制限及び調整される。
【0107】
プランジャ106が後退する際、摺動リング16は4本の弾性レバー24に係合していることから一体的に後退する。穿刺した皮膚から流出した血液を用いて、所定の血糖測定装置により血糖値の測定を行なってから、穿刺針チップ12を穿刺装置1から取り外す。
【0108】
図15(a)に示すように、プッシャ120を押し込むことによって、第1接続体122及び第2接続体124を介してケーシング18の後端面を押圧して、使用後の穿刺針チップ12を直接手で触れることなく取り外すことができる。取り外した穿刺針チップ12は所定の方法により破棄される。
【0109】
また、
図15(b)に示すように、プッシャ120を先端側に向かって押し込むとき、ハブ22は当初、把持バー134によって保持されていることから動かない。一方、摺動リング16は前方膨出部36に係合してケーシング18とともに前方に移動することから弾性レバー24から外れ、係合が解除される。弾性レバー24は摺動リング16から抜けるとき、一旦弾性的に縮径し、抜けた後に元の径に戻る。この後、ハブ22も後方環状膨出部40に係合してケーシング18と一体的に前方に移動し、穿刺針チップ12が穿刺装置1から取り外される。
【0110】
取り外された穿刺針チップ12では、弾性レバー24は摺動リング16から抜けて摺動リング16の内径より拡径していることから、該摺動リング16が弾性レバー24の前方への移動を規制する。つまり、摺動リング16は、ケーシング18に対するハブ22の前方への相対的な移動を所定位置で制限する移動制限手段となり、針20の針先が先端面から再び突出することはない。これにより、穿刺針チップ12の廃棄に際しても、針20で皮膚等を傷つけることが防止され、感染の危険が低下する。なお、後方には後方環状膨出部40がハブ22の移動を規制し、穿刺針15が後端側から抜けることがない。
【0111】
ところで、使用者によっては、使用後の穿刺針チップ12を間違って穿刺装置1に装着してしまうことも考えられる。
【0112】
この場合、ハブ22の被把持突起28に把持バー134が係合してプランジャ106を後方に押し込むが、ハブ22は後方環状膨出部40との初期の係合が解除されてやや前方に配置されていることからプランジャ106を十分後方まで移動することができない。したがって、第1突起140はトリガストッパ154に係合することがなく、駆動用コイルスプリング108は付勢状態とはならず、穿刺ボタン116を押しても穿刺作業はなされない。
【0113】
また、弾性レバー24の先端が摺動リング16の後端に当接し、ハブ22に対してケーシング18が相対的に後方に移動することを制限するので、これ以上ケーシング18を後方に向かって押し込んでも駆動用コイルスプリング108を少し圧縮するだけであり、手を離すと該駆動用コイルスプリング108の弾性力により前方に押し返されてしまう。これにより、スカート41の後端部41bは受け座151に当接することがなくわずかな隙間が発生し、装着部150が側方から視認される。これにより、使用者は、装着されている穿刺針チップ12が使用済みであることを容易に認識することができる。
【0114】
以上説明したように、この穿刺装置1によれば、穿刺針チップ12のケーシング18が装着部150に装着された状態で、ケーシング18の各リブ44aにコレット5の弾性定数の異なる圧接片58が圧接するので、小の圧接片58が最も大きく弾性変形し、大の圧接片58が最も小さく弾性変形し、中の圧接片58がその間の大きさに弾性変形し、これにより、ケーシング18の軸が装着部150の軸に対して傾斜する。これによって、装着された穿刺針チップ12のケーシング18が不本意に装着部150から離脱する方向へ移動してしまうことを防止することができる。
【0115】
これによって、装着された未使用の穿刺針チップ12が、使用前にその使用ができない状態になってしまうことや、使用時に針20の針先がケーシング18の先端開口部から突出しないということを防止することができる。また、同時に、穿刺針チップ12を装着あるいは離脱させる際に要する力が過大とならない様に、圧接力の微妙な設定を可能とすることができる。
【0116】
なお、本実施形態では、圧接片58a〜58fの弾性定数は、第2スリット55の長さを調整することにより設定したが、これに限らず、例えば、下記(1)〜(3)の方法が挙げられる。
【0117】
(1)
図16に示すように、圧接片58a〜58fの弾性定数は、第2スリット55の幅を調整することにより設定する。
【0118】
すなわち、「大」の圧接片58の場合が、第2スリット55の幅が最小となり、「小」の圧接片58の場合が、第2スリット55の幅が最大となり、「中」の圧接片58の場合が、第2スリット55の幅がその最大と最小の間となる。
【0119】
(2)
図17に示すように、圧接片58a〜58fの弾性定数は、テーパ部52の長さを調整することにより設定する。
【0120】
すなわち、「大」の圧接片58の場合が、テーパ部52の長さが最小となり、「小」の圧接片58の場合が、テーパ部52の長さが最大となり、「中」の圧接片58の場合が、テーパ部52の長さがその最大と最小の間となる。
【0121】
(3) 圧接片58a〜58fの弾性定数は、圧接片58a〜58fの厚さを調整することにより設定する。
【0122】
すなわち、「大」の圧接片58の場合が、圧接片58の厚さが最大となり、「小」の圧接片58の場合が、圧接片58の厚さ最小となり、「中」の圧接片58の場合が、圧接片58の厚さがその最大と最小の間となる。
【0123】
以上、本発明の穿刺装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0124】
また、前記実施形態では、穿刺針チップのケーシングの凸部は、リブであるが、本発明では、これに限らず、例えば、突起のように、軸方向に短い形状のものであってもよい。
【0125】
また、本発明では、圧接手段は、筒状をなしていなくてもよく、例えば、複数の圧接片のみで構成されていてもよい。