(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2種類のホスファイト系安定剤の合計に占める、前記スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤の配合率が5〜25質量%である、請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
前記導光部材が、前記光源から入射される光を導光する本体部と、前記本体部に一定方向に沿って設けられ、前記本体部中を導光される光を前記本体部の外側に出射させる複数のプリズム部とを備え、
隣り合う前記プリズム部同士間のピッチが前記光源から離れるにしたがって小さくなる、請求項4に記載の照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、自動車用照明装置に用いられる導光部材において、成形の過程における熱劣化により僅かながら黄色味を帯びることがある。また導光部材が黄色味を帯びなくても、導光部材は、ヘッドランプ等からの熱に長時間さらされると、劣化して黄変するおそれがある。従って、上記特許文献1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、導光部材の色相及び黄変抑制の点で改善の余地を有していた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる導光部材を形成することが可能な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合するリン系安定剤および脂肪酸エステルのうちのリン系安定剤に着目して鋭意研究を重ねた結果、主として、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合するリン系安定剤を、2種類のホスファイト系安定剤を含むように構成し、これらの配合量の大小関係を規定するとともに、芳香族ポリカーボネート樹脂に対するリン系安定剤および脂肪酸エステルの配合割合をそれぞれ特定の範囲に限定することで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、粘度平均分子量10,000〜22,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、リン系安定剤(B)が0.05〜0.3質量部の割合で配合され、脂肪酸エステル(C)が0.03〜0.3質量部の割合で配合され、前記リン系安定剤(B)が、2種類のホスファイト系安定剤を含み、前記2種類のホスファイト系安定剤のうちの一方のみが、スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤であり、前記2種類のホスファイト系安定剤のうち前記スピロ環骨格を有する一方のホスファイト系安定剤の配合割合が、他方のホスファイト系安定剤の配合割合よりも少な
く、前記脂肪酸エステル(C)が脂肪酸モノグリセリドである芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0008】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる導光部材を形成することが可能となる。
また上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、前記脂肪酸エステル(C)が脂肪酸モノグリセリドであるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際、押出機内のバレル及びスクリュー表面と樹脂との摩擦を低下させ、加工時のポリカーボネート樹脂の温度上昇を防ぐことができる。このため、上記導光部材は色相に特に優れ且つ黄変をより十分に抑制できる導光部材を形成することが可能となる。
【0009】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が12,000〜18,000であることが好ましい。
【0010】
この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が12,000未満である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に比べて、優れた機械的強度を有することが可能となり、優れた機械的強度を有する上記導光部材を形成することが可能となる。また芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が上記範囲内にあると、粘度平均分子量が18,000を超える場合に比べて、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が小さいため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際のせん断による芳香族ポリカーボネート樹脂の劣化をより十分に低減できる。したがって、特に優れた色相を有する導光部材を形成することが可能になる。
【0011】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、前記2種類のホスファイト系安定剤の合計に占める、前記スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤の配合率が5〜25質量%であることが好ましい。
【0012】
この場合、上記スピロ環骨格を有するホスファイト系安定剤の配合率が上記範囲を外れる場合に比べ、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱による劣化が特に十分に抑制されるため、特に色相に優れ且つ黄変をより十分に抑制できる導光部材を形成することが可能となる。
【0015】
また本発明は、少なくとも1つの光源と、前記光源から入射される光を導光すると共に外側に出射させる導光部材とを備える照明装置であって、前記導光部材が、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる照明装置である。
【0016】
本発明の照明装置によれば、導光部材が上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できるため、導光部材の交換頻度を低減させることができる。
【0017】
上記照明装置においては、前記導光部材が、前記光源から入射される光を導光する本体部と、前記本体部に一定方向に沿って設けられ、前記本体部中を導光される光を前記本体部の外側に出射させる複数のプリズム部とを備え、隣り合う前記プリズム部同士間のピッチが前記光源から離れるにしたがって小さくなることが好ましい。
【0018】
この場合、上記光源から上記導光部材の本体部に入射され、本体部中を導光される光は、プリズム部により本体部の外側に出射される。この際、導光部材中の光量は、光源から離れるにしたがって減少する。導光部材中の光量が減少すると、導光部材の劣化による黄色味が目立ちやすくなる。その点、隣り合うプリズム部間のピッチが光源から離れるにしたがって小さくなると、プリズム部に入射される光量に対してプリズム部により本体部の外側に出射される光量の割合は、光源から近い部分では小さく、光源から離れるに従い大きくなる。この結果、導光部材から出射される光量が不均一になることをより十分に抑制できる。
【0019】
上記照明装置においては、前記導光部材を支持する支持部材をさらに備え、前記支持部材が、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびABS樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂組成物で構成されることが好ましい。
【0020】
この場合、上記支持部材は耐衝撃性などの機械的強度に優れる。このため、上記支持部材を備えた照明装置は耐衝撃性などの機械的強度に優れるものになる。
【0021】
前記支持部材は、厚さ3mmの板について反射法により測定した明度L値が70以上である材料からなることが好ましい。
【0022】
この場合、上記支持部材は、明度が70未満である材料からなる場合と比べて、より高い光反射率を有することが可能となる。このため、上記導光部材からの光の漏れによるロスがより十分に低減され、導光部材の輝度が特に高いものになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる導光部材を形成することが可能な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および照明装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の照明装置について
図1〜3を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の照明装置の一実施形態を適用した車両を概略的に示す正面図、
図2は、本発明の照明装置の一実施形態を概略的に示す平面図、
図3は、
図2の導光部材を示す平面図である。
図1に示すように、車両としての自動車100はヘッドランプ部10を備えており、ヘッドランプ部10は、メインライト20と、メインライト20の近傍に設けられる照明装置30とを備えている。
【0027】
メインライト20は、例えばハロゲンランプ等の白熱灯で構成されている。
【0028】
図2に示すように、照明装置30は、光源40と、光源40から入射された光を導光し、自動車100の前方に光を出射させる導光部材31と、導光部材31を支持する支持部材50とを備えている。
【0029】
導光部材31は、直線状に延びる棒状の本体部32と、本体部32の延び方向に沿って設けられる複数のプリズム部33とで構成されている。導光部材31の本体部32の端面32aには、光源40からの光が入射されるようになっている。プリズム部33は、本体部32中を導光される光を、自動車100の前方に向けられる光出射面32bを通して本体部32外に出射させるためのものである。
【0030】
導光部材31は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量10,000〜22,000の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、リン系安定剤(B)が0.05〜0.3質量部の割合で含まれ、脂肪酸エステル(C)が0.03〜0.3質量部の割合で含まれている。ここで、リン系安定剤(B)は、2種類のホスファイト系安定剤を含んでおり、2種類のホスファイト系安定剤のうち一方のみが、スピロ環骨格を有する第1ホスファイト系安定剤(以下、「第1ホスファイト系安定剤」と呼ぶ)であり、第1ホスファイト系安定剤の配合量は、2種類のホスファイト系安定剤のうち他方のホスファイト系安定剤(以下、「第2ホスファイト系安定剤」と呼ぶ)の配合量よりも少ない。
【0031】
この照明装置30においては、導光部材31が上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる。そして、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる導光部材31を形成することが可能である。従って、導光部材31は、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる。このため、導光部材31の交換頻度を十分に低減することができる。
【0032】
次に、光源40、支持部材50および導光部材31について詳細に説明する。
【0033】
(光源)
光源40は特に限定されるものではなく、光源40としては、例えば蛍光ランプ、冷陰極管、LED、レーザーダイオード、有機EL等を用いることができる。
【0034】
(支持部材)
支持部材50は、導光部材31を支持し、端面32a及び光出射面32bを露出させるものであればよく、特に限定されるものではない。支持部材50は、端面32aおよび光出射面32bを除いて、導光部材31を包囲することが好ましい。この場合、導光部材31に衝撃が加わろうとしても、その衝撃が支持部材50によって緩和されることなる。
【0035】
支持部材50は、導光部材31より高い機械強度を有する材料で構成されていればよいが、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂又はこれらのうち2種類以上の樹脂を含む樹脂組成物であることが好ましい。
【0036】
この場合、支持部材50は耐衝撃性などの機械的強度により優れる。このため、上記支持部材50を備えた照明装置30は耐衝撃性などの機械的強度に優れるものになる。
【0037】
支持部材50は、厚さ3mmの板について反射法により測定した明度L値が70以上である材料からなることが好ましい。
【0038】
この場合、上記支持部材50は、より高い光反射率を有することが可能となる。このため、上記導光部材31の光出射面32b以外の部位からの光の漏れによるロスが低減され、光出射面32bから見た導光部材31の輝度がより高くなる。
【0039】
明度L値は70以上であることがより好ましく、85〜100であることが特に好ましい。
【0040】
明度L値を70以上とするためには、酸化チタンや硫化亜鉛、蛍光増泊剤等の白色系色材、又は例えばアルミフレーク(メタリック)等の光揮性顔料を含むように支持部材50を構成すればよい。
【0041】
なお、支持部材50自体は、明度L値が70以上である材料からなるものでなくてもよい。この場合、例えば支持部材50の表面に金属膜を設けても、光を十分に反射させることができる。
【0042】
(導光部材)
導光部材31は上述したように複数のプリズム部33を有している。ここで、隣り合うプリズム部33同士間のピッチは同一であっても異なっていてもよいが、
図3に示すように、隣り合うプリズム部33同士間のピッチが光源40から離れるにつれて小さくなることが好ましい。すなわち、
図3において、P1>P2>P3>P4>P5となることが好ましい。
【0043】
この場合、光源40から導光部材31に入射した光は、プリズム部33により光出射面32bを経て本体部32外へ出射される。この際、導光部材31中の光量は、光源40から離れるにしたがって減少する。導光部材31中の光量が減少すると、導光部材31の劣化による黄色味が目立ちやすくなる。その点、隣り合うプリズム部33間のピッチが光源40から離れるにしたがって小さくなると、プリズム部33により本体部32外に出射される光量は、光源40から近い部分では小さく、光源40から離れるに従い大きくなる。この結果、導光部材31から出射される光量が不均一になることをより十分に抑制できる。
【0044】
図3に示す導光部材31において、dに対するlの比(以下、「アスペクト比」と呼ぶ)は特に限定されるものではないが、照明装置30は、アスペクト比l/dが20以上である場合に特に有用である。これは、アスペクト比l/dが20以上であると、光源40から最も離れた部分で本体部32から出射される光の量が減少しやすく、本体部32において劣化が見られる場合には黄色味を帯びやすくなるからである。ここで、lは、導光部材31の本体部32の延び方向に沿った長さを言う。またdは、本体部32を平面に垂直投影したときの端面32aに対応する線の長さの最小値を言う。
【0045】
アスペクト比l/dは通常、20〜60であり、好ましくは30〜50である。
【0046】
上記導光部材31は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系安定剤(B)と、脂肪酸エステル(C)とを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる。
【0047】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0048】
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0049】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は分岐を有するものになる。
【0051】
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン(THPE)又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
【0052】
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート(DPC)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0053】
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニルおよびイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0054】
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
【0055】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
【0056】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は上述したように、10,000〜22,000である。粘度平均分子量が10,000未満である場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は十分な機械的強度を有することができない。このため、上記導光部材31は、十分な機械的強度を有することができない。また、粘度平均分子量が22,000を超える場合、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が大きくなる。このため、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型などの方法で成形して導光部材31を製造する際に、樹脂のせん断による発熱量が大きくなり、熱分解により樹脂が劣化する。したがって上記導光部材31は優れた色相を有することができない。
【0057】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は好ましくは12,000〜18,000であり、さらに好ましくは14,000〜16,000である。ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合し上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
【0058】
(B)リン系安定剤
リン系安定剤(B)は、2種類のホスファイト系安定剤を含み、そのうちの一方のみが、スピロ環骨格を有する第1ホスファイト系安定剤となっている。
【0059】
第1ホスファイト系安定剤は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
上記一般式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
上記一般式(1)中、炭素原子数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0061】
上記スピロ環骨格を有する第1ホスファイト系安定剤の具体例としては、例えばジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。この中ではジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが特に好ましく用いられる。
【0062】
第2ホスファイト系安定剤は、スピロ環骨格を有さないホスファイト系安定剤であればよい。
【0063】
上記スピロ環骨格を有さない第2ホスファイト系安定剤の具体例としては、例えばトリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のトリアリールフォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス (4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等の二価フェノール類を含み環状構造を有するトリアリールフォスファイト等が挙げられる。
【0064】
上記スピロ環骨格を有さない第2ホスファイト系安定剤の中でも、下記一般式(2)で表されるホスファイト系安定剤が好ましい。
【化2】
【0065】
上記一般式(2)中、R
3〜R
7は、水素原子、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
上記の一般式(2)中、R
3〜R
7で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基などが挙げられる。R
3〜R
7で表されるアルキル基としては、例えばフェニル基およびナフチル基が挙げられる。
【0067】
上記リン系安定剤(B)の配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜0.3質量部である。リン系安定剤(B)の配合割合が0.05質量部未満である場合、導光部材31は、優れた色相を有さず、黄変を十分に抑制することもできない。一方、リン系安定剤(B)の配合割合が0.3質量部を超える場合、導光部材31は、黄変を十分に抑制することができない。またリン系安定剤(B)の配合割合が0.3質量部を超える場合、成形時のガスが多くなったり、モールドデポジットによる転写不良が起こったりするため、導光部材31の透過率が低下する。上記リン系安定剤(B)の配合割合は好ましくは0.07〜0.2質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.12質量部である。
【0068】
リン系安定剤(B)100質量%における第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計の含有率は、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0069】
なお、リン系安定剤(B)100質量%における第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計の含有率が100質量%未満である場合、リン系安定剤(B)は、上記ホスファイト系安定剤のほかに、ホスホナイト系安定剤、およびホスフェート系安定剤を含んでいてもよい。
【0070】
ホスホナイト系安定剤としては、例えばテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
【0071】
ホスフェート系安定剤としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0072】
さらに、第1ホスファイト系安定剤及び第2ホスファイト系安定剤の合計に占める第1ホスファイト系安定剤の配合率は、好ましくは3〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜25質量%である。
【0073】
この場合、導光部材31は、第1ホスファイト系安定剤の配合率が上記範囲を外れる場合に比べて、より優れた色相を有し且つ黄変をより十分に抑制することができる。
【0074】
(C)脂肪酸エステル
脂肪酸エステル(C)は脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物である。脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の、脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸が挙げられる。ここで、脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。脂肪族カルボン酸としては、炭素数6〜36のモノカルボン酸又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸およびアゼライン酸などが挙げられる。
【0075】
一方、上記アルコールとしては、飽和または不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらのアルコールの中でも、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコール又は多価アルコールがさらに好ましい。ここで、脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0076】
上記アルコールとしては、例えばオクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0077】
上記脂肪酸エステル(C)としては、例えば蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、硬化油、ブチルステアレート、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0078】
中でも、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸モノグリセリドを用いることが好ましい。この場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際、押出機内のバレル及びスクリュー表面と樹脂との摩擦を低下させ、加工時のポリカーボネート樹脂の温度上昇を防ぐことができるため、導光部材31は色相に特に優れるとともに黄変をより十分に抑制することができる。
【0079】
上記脂肪族カルボン酸エステルは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
上記脂肪酸エステル(C)の配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.03〜0.3質量部である。脂肪酸エステル(C)の配合割合が0.03質量部未満である場合、導光部材31は、優れた色相を有さないか、黄変を十分に抑制することができない。また脂肪酸エステル(C)の配合割合が0.03質量部未満である場合、導光部材31は、優れた色相を有さず、且つ黄変を十分に抑制することができない場合もある。一方、脂肪酸エステル(C)の配合割合が0.3質量部を超える場合は、導光部材31は、優れた色相を有さない。上記脂肪酸エステル(C)の配合割合は好ましくは0.06〜0.3質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.3質量部である。
【0081】
導光部材31を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば最終成形品を成形する直前迄の任意の段階で、各成分を一括または分割して配合し、溶融混練する方法が挙げられる。各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を使用する方法などが挙げられる。
【0082】
導光部材31は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法および射出圧縮成形法などが挙げられるが、好ましくは射出成形法である。
【0083】
導光部材31は窒素雰囲気下で成形されることが好ましい。この場合、導光部材31の成形時における熱劣化を抑制することができる。したがって、導光部材31を備えた照明装置10は、色相に特に優れたものになる。
【0084】
上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で、さらに酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
【0085】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、照明装置30の導光部材31の本体部32は直線状に延びたものとなっているが、本体部32は、曲線状であってもよいし、板状であってもよい。
【0086】
また上記実施形態では、導光部材31がプリズム部33を有しているが、プリズム部33は必ずしも必要ではなく、省略が可能である。例えば支持部材50が、光反射性又は光拡散性の素材で構成される場合、具体的には、表面をアルミニウム等の金属で蒸着してなる部材や、酸化チタン又は拡散剤(アクリル樹脂やシリコンの微粒子)を含んだ樹脂部材で構成される場合には、プリズム部33がなくても、導光部材31から光を出射させることができる。
【0087】
さらに上記実施形態では、照明装置30は、自動車100のヘッドランプ10のデイライトとして使用されているが、照明装置30は、自動車100のリアランプのデイライトや自動二輪車等のデイライトとして用いることも可能である。また照明装置30は、液晶ディスプレイのバックライトの導光版などとしても適用可能である。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例および比較例において用いた材料は次のとおりである。
【0090】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(A−1)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)E−2000
粘度平均分子量25,000
(A−2)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)S−3000
粘度平均分子量22,000
(A−3)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)H−4000
粘度平均分子量16,000
(A−4)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ユーピロン(登録商標)H−7000
粘度平均分子量14,000
(A−5)界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製
粘度平均分子量10,000
【0091】
(B)リン系安定剤
(B−1)ADEKA社製、商品名「アデカスタブAS2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、第2ホスファイト系安定剤)
(B−2)ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−36」(ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、第1ホスファイト系安定剤)
(B−3)ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−24G」(ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、第1ホスファイト系安定剤)
【0092】
(C)脂肪酸エステル
(C−1)理研ビタミン(株)製、商品名「リケマールS−100A」(ステアリン酸モノグリセライド)
(C−2)日油(株)製、商品名「ユニスターH476DP」(ペンタエリスリトールジステアレート)
(C−3)コグニス・オレオケミカルズジャパン(株)製、商品名「ロキシオールVPG 861」(ペンタエリスリトールテトラステアレート)
(C−4)日油(株)製、商品名「ユニスターM9676」(ステアリルステアレート)
【0093】
(D)離型剤
(D−1)東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)、商品名「SH−556」(メチルフェニルポリシロキサン)
【0094】
(実施例1〜
3、参考例1、実施例5〜9、参考例2、実施例11〜13、参考例3及び比較例1〜14)
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
表1〜4に示す割合となるように上記(A)〜(D)成分を配合し、タンブラーミキサーで均一に混合し、混合物を得た。その後、この混合物を、フルフライトスクリューとベントとを備えた単軸押出機(製品名:VS−40、いすず化工機社製)に供給し、スクリュー回転数70rpm、吐出量10kg/時間、バレル温度250℃の条件で混練し、押出ノズル先端から、ストランド状に押出した。そして、押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得た。なお、表1〜4において、各成分の配合割合の単位は質量部である。
【0095】
<特性評価>
上記のようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物について、以下のようにして色相および黄変抑制効果を調べた。
(1)色相
色相は、YI値を指標とし、YI値は次のようにして測定した。すなわち、まず、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製「EC100」)により、280℃の温度で成形した300mm長光路成形品(6mm×4mm×300mm、l/d=50)を得た。この成形品について、長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA1」)を使用して300mm長のYI値を測定した。結果を表1〜4に示す。色相についての合格基準は以下の通りとした。
合格:処理前YI値が24以下
(2)黄変抑制効果
黄変抑制効果は、熱エージングによるYI値の変化量であるΔYI値を指標とした。ΔYI値は、次のようにして測定した。まず得られた成形品を120℃に設定した熱風循環乾燥機に入れ、1000時間の熱エージング処理をした後、上記と同様にして熱エージング処理後のYI値を測定した。そして熱エージング処理後のYI値から処理前のYI値を引いた値をΔYIとした。結果を表1〜4に示す。黄変抑制効果の合格基準は以下の通りとした。
合格:ΔYIが40以下
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0096】
以上の結果より、実施例1〜
3、参考例1、実施例5〜9、参考例2、実施例11〜13及び参考例3の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、色相および黄変抑制効果について合格基準を満たした。一方、比較例1〜14の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、色相及び黄変抑制効果の少なくとも一方について合格基準を満たさなかった。
【0097】
よって、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、優れた色相を有し且つ黄変を十分に抑制できる導光部材を形成することが可能であることが確認された。