(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903043
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】電気刺激のための医療用具
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
A61N1/05
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-521134(P2012-521134)
(86)(22)【出願日】2010年7月16日
(65)【公表番号】特表2013-500050(P2013-500050A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】IB2010053250
(87)【国際公開番号】WO2011010257
(87)【国際公開日】20110127
【審査請求日】2013年7月16日
(31)【優先権主張番号】61/228,231
(32)【優先日】2009年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511255465
【氏名又は名称】サピエンス ステアリング ブレイン スティムレーション ベー ヴィ
(73)【特許権者】
【識別番号】512016652
【氏名又は名称】ニューロネクサス テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ウィレム ハーバーツ
(72)【発明者】
【氏名】リオ ベッテル
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−521912(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0149934(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0099555(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0262584(US,A1)
【文献】
国際公開第2009/076169(WO,A2)
【文献】
国際公開第2008/115383(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激のための医療用具(2、3)であって、
前記用具は、遠位端(21)と近位端(22)とを有する植込み型延伸リードシステム(20)を備え、
前記リードシステムは、一つ以上の電極(6、7、24)に連結するための導電体構造(30)を有し、前記導電体構造は共巻きされた複数の導体を備え、
前記導電体構造は、前記リードシステムの長手軸(25)に沿って複数回巻回されており、
前記導電体構造は、前記長手軸に沿って、平行に延びる前記導体を有するホイル(33)として形成されており、
前記巻回の密度は、前記長手軸に沿って不均一に分布し、前記近位端より前記遠位端で高く、
巻回の隣り合う部分の間の間隔によって示される、巻回の長さは、近位端へ向かって大きく、かつ、遠位端へ向かって小さくなり、それにより、植込みとMRIに関連して使用する遠位端においてインピーダンスが高められる、医療用具。
【請求項2】
前記導電体構造は、導体の略全長に沿って巻回されている、請求項1に記載の用具。
【請求項3】
前記導電体構造は、非巻回部分(41)によって分離される一つ以上の離散部分(40)に巻回されている、請求項1に記載の用具。
【請求項4】
前記巻回の回数は、100回より多く、前記リードシステムの長さに沿って分布している、請求項1に記載の用具。
【請求項5】
前記巻回は、多数の集合(42〜49)に分類され、
前記集合密度は、前記近位端(22)より前記遠位端(21)で高くなるように、前記長手軸(25)に沿って変化する、請求項1に記載の用具。
【請求項6】
前記導電体構造は、二つ以上の部分(400、401)に分かれて巻回されており、
少なくとも二つ、又は前記二つ以上の部分は、相互に逆方向の回転方向(403、404)を有する巻回を備える、請求項1に記載の用具。
【請求項7】
前記巻回の密度は、近位端より遠位端で高くなるように、各巻回の隣り合う部分の間の間隔(31、32)に応じて前記長手軸に沿って連続的に変化する、請求項1に記載の用具。
【請求項8】
前記近位端において前記導体に電気的に連結される電源(4、5)をさらに備え、
前記電源が、前記一つ以上の電極の選択された電極において電気パルスを生成するよう動作可能である、請求項1に記載の用具。
【請求項9】
前記用具の応用は、神経刺激、機能的刺激、脊髄刺激、脳刺激、皮質刺激、筋刺激、胃腸管刺激、筋刺激、ペーシングおよび心臓除細動からなる群から選択される、請求項1に記載の用具。
【請求項10】
脳深部刺激療法に適し、
前記用具は、脳の電気刺激に適した電気パルスを生成するように動作可能な電源を備える、請求項1に記載の用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激のための医療用具に関する。より詳細には、本発明は、植込み型の部品を備えるような用具に関する。
【背景技術】
【0002】
電気刺激療法は、さまざまな応用を対象にした植込み型電気刺激用具の成功利用に大きく結び付いて、急成長を遂げている分野である。一つの主要な応用は、脳深部刺激療法(DBS)である。DBSシステムは、2つの構成部品:植込み型パルス発生器(IPG)とプローブ(probe)を備える。IPGは、標的部位における神経活動を妨げるために脳へ電気パルスを送信する電池式神経刺激装置である。プローブは、通常、長さが約10〜15cmのワイヤと複数の電極とから成る。ワイヤは、プローブの遠位端に配置される電極に、IPGを連結する。IPGは、症状の抑制を最適化しかつ副作用をコントロールするために、神経科医、看護師や熟練した技術者による調整が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般に、植込み型導電性構造には問題がある。植込み型用具をつけた人に対して磁気共鳴画像法(MRI)による検査を実施することができることが望ましい。しかし、MRIに関連した磁場の大きな変化が原因で、結果的に強い電界が生じ、関連電流の流れが導体周囲の組織を加熱し、これにより組織が損傷するおそれがある。この問題は、導体の両端において顕著に見られる。例えば、脳組織内の20cmの絶縁直線ワイヤの場合、1.5T MRシステムの通常の動作モードにおいて、48℃まで温度が上昇する可能性があることが示されている。通常、1℃未満の温度上昇が安全であると考えられている。
【0004】
電極における誘導電流密度とこれによって発生する不要な加熱は、高インピーダンスの電極を使用することによって、低減することができる。しかしながら、高インピーダンスの適用は、高インピーダンスが高いDC(直流)抵抗として成立される限り、長いバッテリ寿命を確保することと相反する。
【0005】
公開された米国特許出願番号2008/243218は、導体の構成によって、MRスキャンから誘導される電界との不要な連結を低減することができる一つ以上の導体を有する植込み型リード(lead)を開示している。相互に対向する近位部と遠位部とを有する少なくとも一つの導体を含むようにリードを構成し、導体は、少なくとも2回、自力で逆方向に向って巻回されることが開示されている。しかしながら、導体を逆方向に経路付けするには導体をより伸長する必要があった。
【0006】
本発明の発明者らは、植込み型用具に対して技術的改良の必要性があることを理解し、本発明を発明するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
MRI検査に対応可能な植込み型用具を実現することは有益である。そのために、急速に変化する電磁場への曝露中に導電性部品において付随する温度上昇を最小限にするかまたは低下させる導電性部品を備える植込み型用具を実現することは有益である。一般に、本発明は、好ましくは、上述した欠点の一つ以上を単独または任意の組み合わせにおいて緩和、軽減または除外しようとするものである。具体的には、本発明の目的が、先行技術の上記の問題または他の問題を解決する方法を提供することであることが理解されよう。
【0008】
これらの問題により良く取り組むために、本発明の第1の態様において、電気刺激のための医療用具が提供されており、用具は、遠位端と近位端とを有する植込み型延伸リードシステム(lead system)を備え、リードシステムは、一つ以上の電極に連結するための一つ以上の導電体を備え、一つ以上の導電体には、リードシステムの長手軸に沿って複数の巻線が巻回され、
巻回の密度は、長手軸に沿って不均一に分布している。
【0009】
一つ以上の導電体を巻回することによって、一般に、プローブのインピーダンスは、巻線からの自己インダクタンスによって高周波数(MRIの周波数)で上昇することができ、一方、低周波数(刺激の周波数)における直流抵抗は、関連電池式パルス発生器の長い電池寿命を確保するほど十分に低く保持することができる。MRIの周波数は、通常、1−テスラシステムの場合の42MHz〜3−テスラシステムの場合の128MHzであり、神経刺激−刺激パルスは、通常、0.001〜10kHzの周波数を含む。したがって、本発明の発明者らは、MRI周波数でインピーダンスを十分に抑制するためには、相当に数多くの巻線が必要とされることを発見した。このため、巻回される導体に必要とされる電気コネクタの長さが、非常に長くなることがありえる。電気コネクタは、さまざまな方法で作製してもよい。一つには、薄膜技術を用いた作製方法があるが、長い巻回構造の場合、薄膜技術によって電気コネクタを作製することは難しい場合がある。さらに、ワイヤの長さが長くなるにつれて直流抵抗が高くなり、これは、電池寿命の条件に関連して望ましくない。本発明の発明者らは、植込み型医療用具をつけた人をMRIスキャンすることによって生じる加熱が用具に沿って不均一に分布することをさらに発見した。したがって、導電体の巻線を
巻回の密度が長手軸に沿って不均一に分布するように構成することによって、低密度の巻線は加熱にかかわる問題の影響をあまり受けない領域で使用されるのに対して、高密度の巻線はそれが必要とされる領域で使用される。同一の高密度の巻線が巻回領域の全体にわたって使用されないので、
巻回回数とこれに応じた導電体の長さが縮小され、それと同時に、巻線の存在により、適正な領域においてはインピーダンスが十分に高められ、植込みとMRIに関連して使用するために用具を適切に調整することができる。
【0010】
具体的には、この用具は、脳組織が局所的な加熱に対して特に敏感に反応し、更に、脳組織に発生するいかなる損傷もきわめて深刻な事態を招く結果になることから、脳深部刺激療法(DBS)に関連して有利に用いることができる。しかしながら、一般に、実施形態による用具は、多数の身体の部位の電気刺激のために使用されるプローブに関連して適用することができる。例えば、用具は、これらに限定されないが、神経刺激、機能的刺激、脊髄刺激、脳刺激、皮質刺激、筋刺激、胃腸管刺激、筋刺激、ペーシングおよび心臓除細動などの応用に関連して使用することができる。脳への応用の場合、用具は、頭蓋から目標体積だけ脳内へ延在するプローブの形状をとっている。心臓への応用の場合、用具は、血管、例えば、鼠径部に挿入され、血管を通して心臓の所望の位置へ延在するカテーテルの形状をとっている。
【0011】
組織の加熱に関する問題は、リードシステムの中心部及び/又は近位端よりも、リードシステムの先端または遠位端でその影響が大きい。有利となる実施形態において、
巻回の密度は、近位端より遠位端で高くなるように構成される。
【0012】
本発明の実施形態の利点は、具体的な使用状況に応じて調整可能なさまざまな用具を提供するために、巻線のさまざまな具体的な形態が使用可能である点にある。例示する実施形態は、一つ以上の導電体が、導体の略全長に沿って巻回されること、および、一つ以上の導電体が、非巻回部分によって分離される一つ以上の離散部分に巻回されること、を含む。
【0013】
有利となるために、100本という低い
巻回回数の巻線が、リードシステムの長さに沿って不均一に分布される。しかしながら、実施形態では、より多くの巻線、例えば、125より多い、150、200、または250もの
巻回回数が使用され、及び/又は、必要とされる。これらの
回数は、長さが10cm、直径が1mmのプローブを用いた研究において見出されたものであるが、例えば、長さが5〜20cm、直径が0.5〜2mmのプローブなどの、同程度の大きさのプローブに対しても同様の
回数が適用されると予想される。重要なことは、プローブの長さにかかわらず、一般に必要とされる
巻回の回数が、均一に分布された巻線を有する同様のプローブを用いた場合より、少なくて済むということである。
【0014】
実施形態において、巻線は、均一な巻線密度を有するグループ(集合)に分かれて分布され、かつ、集合密度は、長手軸に沿って変化する。他の実施形態において、巻線密度は、各巻線の可変長に応じて長手軸に沿って連続的に変化してもよい。
【0015】
実施形態において、一つ以上の導電体は、二つ以上のセクション(部分)に分かれて巻回され、少なくとも二つまたは二つ以上の部分は、逆向きの回転方向を有する巻線を備える。回転方向を一回以上変えることによって、構成は、交流磁場に対してあまり敏感に反応しなくなる。
【0016】
実施形態において、医療用具は複数の導電体を備える。有利とするために、複数の導電体は金属ホイルの上を長手軸に沿って平行に延びるトラックとして共巻きされる。このような構成は薄膜技術を用いて有利に提供される。他の実施形態において、これらの導電体は束ねられて一つの複合ワイヤを形成する。
【0017】
有利となる実施形態において、用具は、近位端において導電体に電気的に連結される電源であって、一つ以上の電極の選択された電極において電気パルスを生成するように動作可能である電源をさらに備えていてもよい。電源は、共通の筐体内で場合によって電源とともに配置されるIC(集積回路)などのコントローラによって動作可能に制御されていてもよい。コントローラは、医療用具の動作を設定するためのユーザインターフェース、または、医療用具の動作を設定するための別体のコンピュータシステムに連結するためのインターフェースを備えていてもよい。一つの実施形態において、電源(および場合によりコントローラ)は、例えば、頭蓋(や他の身体の部位)内の植込み型又は部分的植込み型用具として、電極に近接して位置決めされる。他の実施形態において、電源(および場合によりコントローラ)は、延長リードを介して、胸部の植込み型用具などの所定位置に連結されていてもよい。
【0018】
一般に、本発明のさまざまな態様は、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて実行可能なあらゆる方法によって組合せることができかつ連結されることができる。以上記載した本発明の態様、特徴及び/又は利点およびその他の態様、特徴及び/又は利点は、以下に記載される実施形態を参照することによって、より明確に理解されるであろう。
【0019】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照することによって、例示目的のためのみに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】人の頭部内で位置決めされたDBS用具を概略的に示す図である。
【
図1B】人の頭部内で位置決めされたDBS用具を概略的に示す図である。
【
図1C】人の頭部内で位置決めされたDBS用具を概略的に示す図である。
【
図2】DBSのプローブ状の医療用具を概略的に示す図である。
【
図3】導電体構造の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4A】導電体構造の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4B】導電体構造の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4C】導電体構造の実施形態を概略的に示す図である。
【
図4D】導電体構造の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】さまざまな導体構成の測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
このセクションでは、本発明は、主として、脳深部刺激療法(DBS)のための用具の形をとった電気刺激のための医療用具に関連して開示されている。DBS用具は、本発明の実施形態に係る用具の重要な応用である一方、この用具は、金属線が身体の部位の電気刺激または電気検出に対して使用される多数の応用に関連して使用することができる。
【0022】
図1A及び
図1Bは、人の頭部内で位置決めされたDBS用具(DBSプローブともいう)を概略的に示している。
図1Aは、脳の左側と右側を刺激するために頭部内に部分的に植込まれた二本のDBSプローブ2、3を挿入した人1を概略的に示しているが、一方、
図1Bは、
図1Aに示された人を概略的に示す断面図である。DBSプローブの配置および本数は、対処すべき症状の種類に応じて決定される。図示されている例は、具体的な配置の一例として図示する目的のためのみに提供されている。DBS用具は、3つの主要構成部品:コントローラ、導電体、および電極を備える。コントローラは、電源と制御電子回路とを備え、通常、植込み型パルス生成器(IPG)4、5と呼ばれる。IPGは、電池式である。IPGは、通常、例えば、チタン製筺体内に収容される。IPGは、導電体(または配線)8、9を介して脳組織と接触する電極6、7に連結される。IPGは、電極6、7によって脳へ送信される電気パルスを生成する。DBS用具は、数多くの電極を備える。例えば、64個の電極が使用されていてもよい。電極は、個別にアドレス可能かまたはグループ(集合)ごとにアドレス可能であるものであってもよい。一般的に、電極の副集合は、電気パルスを標的部位へ向ける治療中に作動される。図において、IPGが頭蓋内に植込まれるかまたは部分的に植込まれることが示されている。この図は、有利となるための実施形態を示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、IPGは、人の胸部に植込まれ、拡張リードを介して、プローブ2、3に連結されることも可能である。
【0023】
図1Cは、MRI実施中にDBSプローブが植込まれた人体の頭部で発生するシミュレートされた電界強度を示すスクリーン・ダンプ(screen dump)を示している。この図は、二つのプローブ2、3および電界強度をグレースケールで示している。スケールは、150V/mでクリッピング(clipped)されている。この図示は、等電位線が外部電界において導電性プローブの外形に追従するので、参照番号10によって指し示すように、プローブの先端(遠位端)近傍において高い電界強度を確保できることを強調することを目的としている。オームの法則によれば、電流密度は電界に比例するので、人間の脳のような弱導電性媒体では高い電流密度につながることになる。先端領域10において脳組織の電流密度は最大になる。局所的温度上昇は、局所的電力損失に比例し、これによって局所的電界強度の2乗に比例する。組織の抵抗は、ワイヤよりもはるかに高い抵抗を示し、かつ、ワイヤの直近の外側の電流密度は、ワイヤ内部の電流密度と略同じであるので、脳組織の局所的加熱温度は、きわめて高くなる。先端に近くなればなるほど、電流密度が高くなり、これに応じて加熱温度も高くなる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係る医療用具を概略的に示しており、この用具はDBSプローブ2の形態をとっている。DBS用具は、植込み型延伸リードシステム20を備える。リードシステムは、遠位端21と近位端22とを有する。リードシステムは、一つ以上の電極24に連結するための一つ以上の導電体23を備える。しかしながら、電極は、単一のチューブとして概略的に示されているが、当業者に知られているように、一定数の電極が、さまざまな構成のリードシステムの遠位端において脳組織に接触するために分布されて配置されていてもよい。チューブは、単に図示目的のために示されている。プローブは、上記の一つ以上の電極の選択された電極で電気パルスを生成するためのIPG4を備える。本発明の重要な態様は、一つ以上の導電体23にはリードシステムの長手軸25に沿って複数の巻線が巻回され、全体がらせん状または渦巻き状の導電体を提供することである。巻線の分布は、巻線密度が長手軸に沿って不均一に分布するようになっている。さらに、リードシステムは、導体と電極とを担持または支持するための管状構造のようなホルダー構造を備えていてもよい。ホルダー構造は、図示されていない。
【0025】
図3は、近位端22と遠位端21とを有する導電体構造30の一つの実施形態を概略的に示している。図示されている実施形態では、単一の渦巻き状バンドだけが示されている。実施形態において、リードシステムは、複数の導電体(と関連電極)を備える。実施形態において、導電体は共巻きされている。共巻きは、少なくとも二つの方法で具現化される。第1のタイプの共巻きにおいて、複数の導電体は、長手軸に沿って平行なトラックとして延びる導体を含む金属ホイルとして形成されており、これは、平行トラックを概略的に示す拡大部33によって概略的に示されている。第2のタイプの共巻きにおいて、導電体は、単一の絶縁ワイヤとして形成され、これらの絶縁ワイヤは、束ねられて一つの複合ワイヤを形成し、個々のワイヤは、本発明の実施形態によって構成されている。
図3は、一つ以上の導体を適切に改作した、これら二つの形態を含む。
【0026】
一般的な実施形態において、
巻回の密度は、近位端より遠位端で高い。
図3において、
巻回の密度は、各巻線の可変長に応じて長手軸25に沿って連続的に変化する。このように、
巻回の隣り合う部分の間の間隔31、32によって示されるように、
巻回の長さは、一般に近位端22へ向かって大きくなり、一般に遠位端21へ向かって小さくなる。
【0027】
図4は、導電構造の実施形態を概略的に示している。
図2と
図3では、一つ以上の導電体が、導体のほぼ全長に沿って巻回されている。しかしながら、
図4Aにおいて概略的に示されているように、導体構造は、巻回部分40と非巻回部分41,42とを含み、これにより、実施形態において、巻線は、導体システムの部分に沿ってのみ設けられていてもよい。ここで、中心部40に沿った巻線は遠位端へ向かって変位する導体システムとして示されているが、近位部41と遠位端42自体は非巻回部分を含んでいてもよい。しかしながら、他の実施形態では、一般に導体構造の部分は、巻線を備え、この部分は設計上の条件や他の条件に応じて位置決めされることから、単独の非巻回部分のみが存在することもある。巻回部分については、
巻回の密度が長手軸に沿って不均一に分布していると理解されるべきである。
【0028】
図4Bは、一つ以上の導電体が、非巻回部分41によって分離される多数の離散された巻回部分40に巻回されている、一つの実施形態を概略的に示している。左側を近位端22、右側を遠位端21とした場合、巻回部分に関して、巻線の密度が長手軸に沿って不均一に分布していることが理解されよう。一つの実施形態において、
巻回の密度は、一般に近位端より遠位端で高くなるように構成されている。図において、巻回部分40と非巻回部分41の大きさは等しい。しかしながら、一般に、巻回部分と非巻回部分のそれぞれの大きさは、異なっていてもよい。
【0029】
図4Cは、巻線が多数の集合42〜49に分類され、集合内の
巻回の密度、すなわち、集合密度が一定している、一つの実施形態を概略的に示している。しかし、集合密度は、長手軸25に沿って変化し、これにより集合密度は近位端22より遠位端21で高い。したがって、集合密度は、集合42で最大であり、集合43で減少し、以降、集合密度が最小となる集合49に至るまで、同様の減少を続ける。
【0030】
図4Dは、二つの部分400、401が、相互に逆方向の回転方向を有する巻線を備える、一つの実施形態を概略的に示している。この実施形態において、所定の位置402において巻線の方向が、第1の方向403から第2の反対方向404へ変化していることが図示されている。図において、回転方向が途中で変わっていることが分かるが、しかしながら、これは、必ずしもそうではない。また、回転方向は、長手軸25に沿って2回以上変えてもよい。
【0031】
図3と
図4A〜4Dに関して開示されている導電構造の具体的な特徴は、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、いかなる方法においても組合せが可能である。
【0032】
図5は、さまざまな導体構成のシミュレーションを示している。測定は、本発明の植込み導体によってMRI実施中に脳組織に生じる電界強度のシミュレーションである。許容可能なシミュレーション時間において正確なシミュレーション結果を達成するために以下のモデルが考えられる。DBS用具は、人間の脳に代わる電気的特性を有する均質なブロック材料であると考えられる。外部平面波をこのブロック材料へ入射して、金属線を一切使用せずに測定した中央部の電界強度は約900V/mであった。ワイヤがあるところでは電界強度が大きく上昇した。図において、スケールは2000V/mでクリッピングされている。クリッピング値の外形における変化は、ワイヤの巻線の存在による電界強度の大きな減少を明確に示している。シミュレーションは、CST(www.cst.com)の3次元電磁界シミュレーションプログラム「MicroWave Studio(マイクロ波スタジオ)」を使用して実行される。コントローラボックスは、高さ7mm、直径24mmのソリッドシリンダとしてモデリングされる。リードシステムは、長さ10cm、直径1.6mmの薄シリンダとしてモデリングされる。エレクトロニクスのインターフェースは、ワイヤとソリッドボックス(solid box)との間で50Ωの抵抗によってモデリング(modeled)される。プローブ内の平行な導体は、互いに非常に近接してルーティング(routed)されるため、MRI周波数で強力に結合されることに注目されたい。この結合は、平行な導体が単一ワイヤとしてモデリングされるほどに強力である。
【0033】
図5(A)は、長さ10cmのストレートワイヤのシミュレーション結果を示し、
図5(B)は、導電構造の長手軸に沿って均一に分布している250本の巻線を備える導電構造のシミュレーション結果を示している。
図5(A)と
図5(B)は、本発明の実施形態によってかつ特に
図4Cに概略的に示された実施形態に関連して、導電構造の長手軸に沿って分布された不均一な
巻回回数を有するDBSに対して実行されたシミュレーションを示している、
図5(C)〜
図5(F)と比較して示されている。図は、すべて中心に配置されたDBSプローブを含む。これは、DBSプローブに参照番号50が付された
図5(A)においてもっとも明瞭に示されているが、カラースケールによってやや不明瞭であるが、
図5(A)以外の他の図もプローブを含む。
【0034】
図5(A)は、直径1mm、長さ10cmのストレートワイヤに対して得られたシミュレーション結果を示している。かなり大きな面積において電界強度が約2000V/mであることがわかった。この分布を詳細に検査したところ、脳組織には高すぎる温度の上昇につながるため、この電界強度と分布は、MRIに関連して受け入れられないと評価された。
【0035】
図5(B)は、プローブに沿って均一に分布する250本の巻線を有する直径1mm、長さ10cmのワイヤに対して得られたシミュレーション結果を示している。均一に分布する巻線を有するプローブに対して実行されたシミュレーションを検査したところ、それほど厳密に限定しなくても、250本の巻線の使用が適切であると評価された。
【0036】
図5(C)〜
図5(F)は、不均一に分布する巻線を有する直径1mm、長さ10cmのワイヤに対して得られたシミュレーション結果を示している。プローブの各々は、集合密度と呼ばれる集合内で一定の巻線密度を有する1cmの集合に分類される。各図は、3つの構成要素(エンティティ)を示している。左側には具体的なプローブ51の概略図が示されている。中央にはプローブに沿った集合密度が示されている。したがって、
図5(C)のプローブの場合、遠位端は24本の巻線/cmを含み、次の集合は22本の巻線/cmを含み、以降、6本の巻線/cmを含む近位端に至るまで、同様の減少が続く。右側には、具体的なプローブの構成に対するシミュレーション結果53が示されている。不均一に分布している巻線を有するプローブに対して実行されたシミュレーションを検査したところ、
図5(C)におけるプローブは、MRIに対する使用に適していると評価された。しかしながら、他の具体的な巻線の密度の分布を同様に使用することもできる。適切で具体的な巻線の構成を評価することは当業者の能力の範囲に含まれている。具体的には、
図5(C)の構成では、
図5(B)の均一に分布された250本の巻線を有する構成に比べて60%に削減された、150本の巻線しか使用されていない。
【0037】
本発明は、図面および以上の説明において図解されかつ詳細に説明されてきたが、このような図解および記載は、図示および例示目的のためのみになされており、本発明はこれらに限定されるものではない。よって、本発明は開示されている実施形態に限定されるものではない。開示されている実施形態に対して他の変形を加えることは、クレームに記載された本発明の実用化の際、図面、開示内容、および添付クレームの検討に基づいて、当業者によって解釈され実行され得る。クレームにおいて、「comprising(備える)」という単語は他の要素やステップを除外しない。また、不定冠詞「a(一)」または「an(一)」は、複数形を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニット(装置)は、クレームに記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。相互に異なった従属クレームにいくつかの特定の測定値が記載されているという単なる事実によって、これらの測定値を有利とするために組み合わせて使用することができないということを示唆するものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光記録媒体やソリッドステート媒体などの好適な媒体へ記憶され及び/又は送信されてもよいし、例えば、インターネットまたは他の有線又は無線の通信システムを介して、他の形態において送信されてもよい。クレームに記載された参照符号はいずれも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。