(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の異種配列を含むアデノウイルスベクターを含むワクチンであって、該アデノウイルスベクターが、複製能力を有し、かつE3の部分欠失を有し、該第1の異種配列が、該E3の部分欠失を含有する位置に組み込まれており、ここで、該アデノウイルスベクターは、Ad4に由来し、該E3の部分欠失が、E3 24.8k、E3 6.3k、およびE3 29.7kの欠失である、前記ワクチン。
前記第1の異種配列が、感染性病原体の免疫原性タンパク質をコードし、該感染性病原体が、ウイルス、細菌、原生生物、および真菌からなる群から選択される、請求項1に記載のワクチン。
前記第1の異種配列が、インフルエンザヘマグルチニン、インフルエンザノイラミニダーゼ、インフルエンザM2、M2eの多量体、HTLエピトープの多量体、またはCTLエピトープの多量体をコードする、請求項1に記載のワクチン。
前記感染性病原体が、インフルエンザ、HIV、HPV、バチルス、マラリア原虫、マイコバクテリア、または赤痢菌である、請求項10に記載の方法において使用するためのワクチン。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本明細書で用いられる場合、以下の用語は以下の意味を有するものとする。
【0021】
「アデノウイルスベクター」という用語は、野生型、変異体、および/または組換えアデノウイルスゲノム、ならびにそのようなゲノムを含むアデノウイルスを指す。アデノウイルスベクターは、いかなるアデノウイルス血清型、およびそれらの組み合わせ(すなわち、ハイブリッドゲノム)のゲノムの全てまたは一部も含むことができる。
【0022】
「感染性病原体」という用語は、ヒトに感染することが可能であり、健康の悪化を引き起こす、および/または免疫応答の引き金となる、あらゆる作用物質を指す。特定の実施形態において、感染性病原体は、インフルエンザウイルス、レトロウイルス(例えば、HIV、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ヒト内因性レトロウイルスK(HERV−K))、ヒト内因性レトロウイルスK(HERV−K)、パピローマウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、A型肝炎、ポリオウイルス)、ヘパドナウイル(例えば、B型肝炎)、フラビウイルス(例えば、C型肝炎、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス)、トガウイルス(例えば、チクングニアウイルス、東部ウマ脳炎(EEE)ウイルス、西部ウマ脳炎(WEE)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス)、ヘルペスウイルス(例えば、サイトメガロウイルス)、パラミクソウイルス(パラインフルエンザウイルス、肺炎ウイルス、細気管支炎ウイルス、風邪ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス)、ブニヤウイルス(例えば、ハンタウイルス、リフトバレー熱ウイルス)、カリシウイルス(例えば、ノロウイルス)、またはレオウイルス(例えば、ロタウイルス、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2型)等のウイルスである。
【0023】
他の実施形態において、感染性病原体は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、または他の種類の細菌等の原核生物である。そのような原核生物は、限定されないが、バチルス(例えば、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis))、マイコバクテリウム(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium Leprae))、赤痢菌(例えば、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri))、ヘリコバクター(Helicobacter)(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、サルモネラ(Salmonella)(例えば、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium))、ナイセリア(Neisseria)(例えば、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis))、モラクセラ(Moraxella)(例えば、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis))、ヘモフィルス(Haemophilus)(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae))、クレブシエラ(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae))、レジオネラ(Legionella)(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、アシネトバクター(Acinetobacter)(例えば、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii))、リステリア(Listeria)(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、ブドウ球菌(Staphylococcus)(例えば、メチシリン耐性、多剤耐性、またはオキサシリン耐性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、連鎖球菌(例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)(例えば、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria))、クロストリジウム(Clostridium)(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、破傷風菌(Clostridium tetani)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))、クラミジア(Chlamydia)(例えば、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumonia)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis))、カンピロバクター(Camphylobacter)(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Camphylobacter jejuni))、ボルデテラ(Bordetella)(例えば、百日咳菌(Bordetella pertussis))、腸球菌(Enterococcus)(例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecum)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、ビブリオ(Vibrio)(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae))、エルシニア(Yersinia)(例えば、ペスト菌(Yersinia pestis))、バークホルデリア(Burkholderia)(例えば、セパシア菌群(Burkholderia cepacia complex))、コクシエラ(Coxiella)(例えば、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetti))、フランシセラ(Francisella)(例えば、野兎病菌(Francisella tularensis))、ならびに大腸菌(Escherichia)(例えば、ETEC、EHEC、EPEC、EIEC、およびEAEC等の毒素原性、腸管出血性、または志賀毒素産生大腸菌(E. coli)))を含む。
【0024】
さらに他の実施形態において、感染性病原体は真核生物である。真核生物の例として、限定されないが、マラリア原虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、下痢性マラリア原虫(Plasmodium diarrhea)等の原生生物、ならびにカンジダ(Candida)(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、アスペルギルス(Aspergillus)(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))、クリプトコッカス(Cryptococcus)(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans))、ヒストプラズマ(Histoplasma)(例えば、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum))、ニューモシスチス(Pneumocystis)(例えば、ニューモシスチス肺炎菌(Pneumocystis jirovecii))、およびコクシジオイデス(Coccidioides)(例えば、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis))等の真菌が挙げられる。
【0025】
「癌」という用語は、特定の細胞集団の増殖における異常な増加によって特徴付けられる医学的状態を指す。癌性細胞は、例えば、皮膚、筋肉、肺、心臓、肝臓、腎臓、神経組織等を含む、いかなる組織または器官にも由来し得る。特定の実施形態において、癌は良性(例えば、良性腫瘍)である。他の実施形態において、癌は悪性(例えば、悪性腫瘍)である。特定の実施形態において、癌は転移性である(すなわち、癌細胞が、それらの元の場所から別の組織または器官へと移動することができる)。
【0026】
本明細書全体にわたり、必要に応じて、さらなる用語が定義されるものとする。
【0027】
本発明は、組換えアデノウイルスワクチンを対象とする。本発明は、異種配列を高レベルで発現する新規組換えアデノウイルスベクターの開発に一部基づいている。本発明はまた、宿主の免疫応答を向上させ、かつ既存の中和抗体を回避するように設計される新規組換えアデノウイルスベクターの開発にも一部基づいている。本発明はまた、抗原特異的および/または普遍的なインフルエンザワクチンとして使用される新規組換えアデノウイルスベクターの開発にも一部基づいている。
【0028】
したがって、一態様において、本発明は、第1の異種配列を含むアデノウイルスベクターを提供する。本明細書で用いられる場合、「異種配列」は、アデノウイルスベクターに組み込まれると、アデノウイルス配列と核酸配列との非自然発生型の並置を作製する核酸配列である。典型的には、異種配列は、非アデノウイルスを起源とする核酸配列を含む。例えば、異種配列は、完全に、ほとんど、または部分的に非アデノウイルス(例えば、アデノウイルスおよび非アデノウイルス配列のモザイク)起源であってもよい。しかしながら、いくつかの場合において、異種配列は、完全にアデノウイルス起源であってもよく、例えば、ある種類のアデノウイルスに由来するアデノウイルス配列が、異なる種類のアデノウイルスから作製されたアデノウイルスベクターに組み込まれてもよい。例えば、ある種類のアデノウイルスに由来するヘキソンまたはファイバータンパク質をコードするアデノウイルス配列は、異なる血清型に由来するファイバータンパク質を有する組換えアデノウイルスならびに/またはキメラヘキソンおよびファイバータンパク質を有するアデノウイルスを生成するために、異なる種類のアデノウイルスから作製されたアデノウイルスベクターに組み込まれてもよい。第1の異種配列を含むアデノウイルスベクターは、例えば、感染性病原体または癌性細胞に対するワクチンとして有用であり得る。したがって、第1の異種配列は、感染性病原体由来の抗原をコードすることができる。代替として、第1の異種配列は、癌性細胞と関連する抗原をコードすることができる。
【0029】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、感染性病原体によって生成されるタンパク質の全てまたは一部をコードする。タンパク質またはその断片(例えば、切断生成物、構造ドメイン、二次構造の単位(複数可)、B細胞エピトープ、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープ、ヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープ等)は、感染性病原体の表面上に位置していてもよい。例えば、タンパク質またはその断片は、高度に抗原性であってもよく、細胞標的に関与してもよく、かつ/または細胞内移行に関与してもよい。代替として、タンパク質またはその断片(例えば、切断生成物、構造ドメイン、二次構造の単位(複数可)、HTLまたはCTLエピトープ等)は、感染性病原体の内部に位置していてもよい。例えば、タンパク質またはその断片は、細胞内タンパク質、エンベロープウイルスのカプシドまたはコアタンパク質、非エンベロープウイルスのコアタンパク質等であってもよい。
【0030】
特定の実施形態において、エピトープ、構造ドメイン、二次構造の単位は、進化的に保存される。本明細書で用いられる場合、「進化的に保存される」という用語は、多様な一連の特定の感染性病原体株の間で、配列が少なくとも約50%保存されることを意味する。ウイルスに関して、多様な一連の株は、感染することが可能であり、それによってワクチンの標的集団において疾患もしくは疾病を引き起こす、同定された各細分類(例えば、血清型)に由来する少なくとも1つの分離株か、またはそのような株における既知の多様性を包含する代表的な数の感染性分離株を含む。例えば、特定の実施形態において、多様な一連のインフルエンザ株は、H1N1株(例えば、A/Wilson−Smith/33、A/New Caledonia/20/99、A/Swine Korea/S10/2004、A/Brevig Mission/1/1918、A/Pureto Rico/8/34/Mount Sinai、A/California/7/2009、A/California/05/2009、A/California/08/2009、A/Texas/04/2009、A/swine/Saskatchewan/18789/02、A/mallard/Alberta/130/2003、A/mallard/Alberta/2001、A/swine/Cotes d'Armor/1482/99、A/swine/Betzig/2/2001、および/またはA/turkey/Germany/3/91)、H3N2株(例えば、A/Perth/16/2009)、H2N2株(例えば、A/Japan/305/57、A/Ann Arbor/6/60、A/Canada/720/05、A/mallard/NY/6750/78、A/mallard/Potsdam/177−4/83、および/またはA/duck/Hokkaido/95/2001)、N3N2株(例えば、A/Hong Kong/1/66、A/Charlottesville/03/2004、A/Canterbury/129/2005、A/Fujian/411/01−like、A/duck/Korea/S9/2003、A/swine/Texas/4199−2/98、A/turkey/Ohio/313053/2004、および/またはA/turkey/North Carolina/12344/03)、H5N1株(例えば、A/swine/Shandong/2/03、A/goose/Guangdong/1/96、A/duck/Hunan/114/05、A/Viet Nam/1203/2004、A/Viet Nam/DT−036/2005、A/Vietnam/1194/2004、A/Vietnam/1203/2004、A/Anhui/1/2005、A/Egypt/2321/2007、A/Egypt/3300−NAMRU3/2008、A/grebe/Novosibirsk/29/2005、A/Bar−headed goose/Mondolia/1/05、A/cat/Thailand/KU−02/04、A/Hong Kong/213/03、A/chicken/Guangdong/174/04、および/またはA/HK/159/97)、H6N1株(例えば、A/teal/Hong Kong/1073/99)、H6N2株(例えば、A/chicken/California/0139/2001、および/またはA/guillemot/Sweden/3/2000)、H6N9株(例えば、A/goose/Hong Kong/W217/97)、H7N1株(例えば、A/FPV/Rostock/34)、H7N3株(例えば、A/chicken/British Columbia/04、および/またはA/turkey/Italy/220158/2002)、H7N7株(例えば、A/chicken/Netherlands/1/2003、A/Netherlands/219/03、A/FPV/Dobson/27、および/またはA/chicken/FPV/Weybridge)、H9N2株(例えば、A/shorebird/Delaware/9/96、A/swine/Korea/S452/2004、A/duck/Hong Kong/Y439/97、A/Hong Kong/1073/99、A/HK/2108/2003、A/quail/Hong Kong/G1/97、A/duck/Hong Kong/Y280/97、A/chicken HK/FY23/03、および/またはA/chicken HK/G9/97)、ならびにインフルエンザB型株(例えば、B/Brisbane/60/2008)を含む、ヒト、ブタ、および/またはトリの疾患と関連する代表的な株を含む。特定の実施形態において、多様な一連のインフルエンザ株は、前述の株の全て、ならびにヒト、ブタ、またはトリにおける疾患と関連していることが分かっているさらなるインフルエンザ株を含む。細菌、原生生物、真菌等の細胞の病原体については、多様な一連の株は、感染することが可能であり、それによってワクチンの標的集団において疾患もしくは疾病を引き起こす、各種からの少なくとも1つの分離株か、またはそのような株における既知の多様性を包含する代表的な数の感染性分離株を含む。特定の実施形態において、エピトープおよび/または構造モチーフは、少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上保存される。
【0031】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、感染性病原体によって生成されるタンパク質に存在する複数のエピトープ(例えば、B細胞、CTL、もしくはHTLエピトープ)および/または構造モチーフ(例えば、タンパク質ドメイン、もしくは二次構造の単位)をコードする。特定の実施形態において、複数のエピトープおよび/または構造モチーフのうちの1つまたは複数が進化的に保存される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、またはそれ以上のエピトープおよび/または構造モチーフをコードする。複数のエピトープおよび/または構造モチーフは、単一のタンパク質または複数のタンパク質に由来してもよい。特定の実施形態において、複数のエピトープおよび/または構造モチーフは、単一のエピトープまたは構造モチーフの多量体からなるか、またはそれを含む。他の実施形態において、複数のエピトープおよび/または構造モチーフは、異なるエピトープおよび/または構造モチーフの多量体を含む。例えば、多量体は、単一のタンパク質からの2つ以上のエピトープおよび/もしくは構造モチーフ、または2つ以上のタンパク質の各々からの1つもしくは複数のエピトープおよび/もしくは構造モチーフを含むことができる。本明細書で用いられる場合、「多量体」は、単一のより大きなポリペプチドを形成するように一緒に結合された一連の別々のポリペプチドを含むタンパク質配列である。特定の実施形態において、リンカー配列が、多量体の隣接した別々のポリペプチドを接続するために使用される。当業者は、多量体におけるリンカーとして作用することができる短いペプチド配列を容易に同定することができる。
【0032】
特定の実施形態において、複数のエピトープは複数のHTLエピトープを含み、各HTLエピトープはHLAクラスII結合ペプチドを含む。本明細書で用いられる場合、「HLAクラスII結合ペプチド」は、HLAクラスII分子にIC
50<1000nMで結合するペプチドである。一般的に、HLAクラスII結合ペプチドは、約6〜約25アミノ酸長、または約13〜約21アミノ酸長である。特定の実施形態において、上記複数のHTLエピトープのうちの1つまたは複数は、以下からなる群から選択されるHLAクラスII分子に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む:HLA−DRB1*0101、HLA−DRB1*0301、HLA−DRB1*0401、HLA−DRB1*0402、HLA−DRB1*0404、HLA−DRB1*0405、HLA−DRB1*0701、HLA−DRB1*0801、HLA−DRB1*0802、HLA−DRB1*0901、HLA−DRB1*1001、HLA−DRB1*1101、HLA−DRB1*1107、HLA−DRB1*1201、HLA−DRB1*1301、HLA−DRB1*1302、HLA−DRB1*1333、HLA−DRB1*1401、HLA−DRB1*1403、HLA−DRB1*1447、HLA−DRB1*1501、HLA−DRB1*1601、HLA−DRB3*0101、HLA−DRB3*0201、HLA−DRB3*0215、HLA−DRB3*0301、HLA−DRB4*0101およびHLA−DRB5*0101、HLA−DRB5−0202。特定の実施形態において、上記複数のHTLエピトープのうちの1つまたは複数は、例えば、Doytchinova and Flower(2005)J Immunol 174:7085および/またはSouthwood et al.(1998)J Immunol 160:3363に記載されるように、HLA−DR1、HLA−DR3、HLA−DR4、HLA−DR5、HLA−DR9スーパータイプ変異体からなる群から選択されるHLAクラスII分子に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む。特定の実施形態において、上記複数のHTLエピトープのうちの1つまたは複数は、複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)のHLAクラスII分子に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む。複数のHLAクラスII分子は、例えば、以下からなる群から選択されてもよい:HLA−DRB1*0101、HLA−DRB1*0301、HLA−DRB1*0401、HLA−DRB1*0402、HLA−DRB1*0404、HLA−DRB1*0405、HLA−DRB1*0701、HLA−DRB1*0801、HLA−DRB1*0802、HLA−DRB1*0901、HLA−DRB1*1001、HLA−DRB1*1101、HLA−DRB1*1107、HLA−DRB1*1201、HLA−DRB1*1301、HLA−DRB1*1302、HLA−DRB1*1333、HLA−DRB1*1401、HLA−DRB1*1403、HLA−DRB1*1447、HLA−DRB1*1501、HLA−DRB1*1601、HLA−DRB3*0101、HLA−DRB3*0201、HLA−DRB3*0215、HLA−DRB3*0301、HLA−DRB4*0101およびHLA−DRB5*0101、HLA−DRB5−0202。特定の実施形態において、上記複数のHTLエピトープのうちの1つまたは複数は、例えば、Doytchinova and Flower(2005)J Immunol 174:7085および/またはSouthwood et al.(1998)J Immunol 160:3363に記載されるように、HLA−DR1、HLA−DR3、HLA−DR4、HLA−DR5、HLA−DR9スーパータイプ変異体からなる群から選択されるHLAクラスII分子に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む。特定の実施形態において、複数のHTLエピトープは、以下からなる群の各HLAクラスII分子に集団的に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む:HLA−DRB1*0101、HLA−DRB1*0301、HLA−DRB1*0401、HLA−DRB1*0402、HLA−DRB1*0404、HLA−DRB1*0405、HLA−DRB1*0701、HLA−DRB1*0801、HLA−DRB1*0802、HLA−DRB1*0901、HLA−DRB1*1001、HLA−DRB1*1101、HLA−DRB1*1107、HLA−DRB1*1201、HLA−DRB1*1301、HLA−DRB1*1302、HLA−DRB1*1333、HLA−DRB1*1401、HLA−DRB1*1403、HLA−DRB1*1447、HLA−DRB1*1501、HLA−DRB1*1601、HLA−DRB3*0101、HLA−DRB3*0201、HLA−DRB3*0215、HLA−DRB3*0301、HLA−DRB4*0101およびHLA−DRB5*0101、HLA−DRB5−0202。特定の実施形態において、上記複数のHTLエピトープのうちの1つまたは複数は、例えば、Doytchinova and Flower(2005)J Immunol 174:7085および/またはSouthwood et al.(1998)J Immunol 160:3363に記載されるように、HLA−DR1、HLA−DR3、HLA−DR4、HLA−DR5、HLA−DR9スーパータイプ変異体からなる群から選択されるHLAクラスII分子に結合するHLAクラスII結合ペプチドを含む。
【0033】
特定の実施形態において、複数のエピトープは複数のCTLエピトープを含み、各CTLエピトープはHLAクラスI結合ペプチドを含む。本明細書で用いられる場合、「HLAクラスI結合ペプチド」は、HLAクラスII分子にIC
50<500nMで結合するペプチドである。一般的に、HLAクラスI結合ペプチドは、約8〜約13アミノ酸長、または約8、9、10、もしくは11アミノ酸長である。特定の実施形態において、上記複数のCTLエピトープのうちの1つまたは複数は、例えば、Sidney et al.(2008) BMC Immunol 9:1に記載されるように、HLA−A01、HLA−A02、HLA−A03、HLA−A24、HLA−B07、HLA−B08、HLA−B27、HLA−B58、HLA−B62およびHLA−B44スーパータイプ変異体からなる群から選択されるHLAクラスI分子に結合するHLAクラスI結合ペプチドを含む。特定の実施形態において、上記複数のCTLエピトープのうちの1つまたは複数は、複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、または6)のHLAクラスI分子に結合するHLAクラスI結合ペプチドを含む。例えば、CTLエピトープは、以下に結合することができる:複数のHLA−A01スーパータイプ変異体(例えば、A*0101、A*2601、A*2602、A*2603、A*2902、A*3001、A*3002、A*3003、A*3004、およびA*3201からなる群から選択される);複数のHLA−A02スーパータイプ変異体(例えば、A*0201、A*0202、A*0203、A*0204、A*0205、A*0206、A*0207、A*0214、A*0217、A*6802、およびA*6901からなる群から選択される);複数のHLA−A03スーパータイプ変異体(例えば、A*0301、A*1101、A*3101、A*3301、A*6601、A*6801、およびA*7401からなる群から選択される);複数のHLA−A24スーパータイプ変異体(例えば、A*2301、A*2402、およびA*2902からなる群から選択される);複数のHLA−B07スーパータイプ変異体(例えば、B*0702、B*0703、B*0705、B*1508、B*3501、B*3503、B*4201、B*5101、B*5102、B*5103、B*5301、B*5401、B*5501、B*5502、B*5601、B*6701、およびB*7801からなる群から選択される);複数のHLA−B08スーパータイプ変異体(例えば、B*0801およびB*0802からなる群から選択される);複数のHLA−B27スーパータイプ変異体(例えば、B*1402、B*1503、B*1509、B*1510、B*1518、B*2702、B*2703、B*2704、B*2705、B*2706、B*2707、B*2709、B*3801、B*3901、B*3902、B*3909、B*4801、およびB*7301からなる群から選択される);複数のHLA−B44スーパータイプ変異体(例えば、B*1801、B*3701、B*4001、B*4002、B*4006、B*4402、B*4403、およびB*4501からなる群から選択される);複数のHLA−B58スーパータイプ変異体(例えば、B*1516、B*1517、B*5701、B*5702、B*5801、およびB*5802からなる群から選択される);または複数のHLA−B62スーパータイプ変異体(例えば、B*1501、B*1502、B*1512、B*1513、B*4601、およびB*5201からなる群から選択される)。特定の実施形態において、複数のCTLエピトープは、HLA−A01、HLA−A02、HLA−A03、HLA−A24、HLA−B07、HLA−B08、HLA−B58、HLA−B62およびHLA−B44スーパータイプのうちの各々に由来する、少なくとも1つのHLAクラスI分子に集団的に結合するHLAクラスI結合ペプチドを含む。
【0034】
ヒト試験は、細胞性免疫応答がインフルエンザ感染の制御に関与することを示している。例えば、McMichael et al.(1983),New England J.Med.309(1):13;Sonoguchi et al.(1985),J Infect.Disease 151(1):81を参照のこと。細胞性免疫応答の防御効果は、高齢者(例えば、Almanzar et al.(2007),Wien.Med.Wochenschr 157/5−6:116,McElhaney et al.(2006),J Immunol.176:6333を参照)、そして小さい子供(例えば、Forest et al.(2008)Clin.Vaccine Immunol.15(7):1042)において特に意義があり得る。特定されたエピトープに特異的な免疫原性を評価するために、ヒトドナー末梢血単核球(PBMC)およびペプチドを用いてリコール反応を行うことができる。エピトープ特異的リコール反応は以前のインフルエンザウイルス感染の結果であり、そのようなT細胞の存在は、エピトープが自然に産生され、したがって、ワクチン組み入れのための優良な選択となることを示唆すると想定することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列によってコードされるCTLまたはHTLエピトープは、例えば、ELISPOTアッセイ分析でバックグラウンド応答の少なくとも2倍は高い、例えば300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、2500、3000、またはそれ以上の、ヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答(具体的には、1×10
6細胞当たりのスポット形成細胞(SFC))を生じる能力を有する。選択されたCTLまたはHTLペプチドは、二通りに検査することができる:(1)エクスビボで直接PBMCを解凍し、培地中で5日間休ませ、IFN−γ ELISPOTアッセイにより応答を測定する、および(2)ペプチドを用いた培養ステップにしたがって感度を増加させる。示されたエピトープからの有意な応答は、バックグラウンド応答の平均+(2.0×標準偏差)を超える応答として定義することができる。この方法のためにはバックグラウンド応答を決定することが非常に重要である。バックグラウンド応答は、ドナーが曝露されていない病原体(HIV、HBV、HCVおよび熱帯熱マラリア原虫等)由来のスーパータイプCTLおよびHTL結合ペプチドを用いて決定することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列によってコードされるCTLまたはHTLエピトープは、進化的に保存され、ELISPOTアッセイ分析でバックグラウンド応答の少なくとも2倍は高い、例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、2500、3000、またはそれ以上の、ヒトIFN−γを生じる能力を有する。特定の実施形態において、第1の異種配列によってコードされるCTLまたはHTLエピトープは、進化的に保存され、ELISPOTアッセイ分析でバックグラウンド応答の少なくとも2倍は高い、例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、2500、3000、またはそれ以上の、ヒトIFN−γを生じる能力を有し、それぞれ、HLAクラスI分子またはクラスII分子に対する縮重結合(degenerate binding)を示す(すなわち、1つより多くに結合する)。CTLまたはHTLエピトープがHLAクラスIおよびクラスII分子に結合してヒトIFN−γ応答を生じる能力を検査するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、2007年5月18日に出願されたWO2008/054540号(Alexander et al.)、2007年7月23日に出願されたWO2008/039267号(Alexander et al.)、およびAssarsson et al.(2008),J Virol 82:12241に記載されており、これら各々の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0035】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザウイルス由来の抗原をコードする。好適なインフルエンザ抗原は、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、M2等の表面抗原、またはその断片(例えば、1つまたは複数のHTLまたはCTLエピトープ)であってもよい。他の好適なインフルエンザ抗原は、M1、NP、NS1、NS2、PA、PB1、およびPB2、またはその断片(例えば、1つまたは複数のHTLまたはCTLエピトープ)を含む。
【0036】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのHAタンパク質、またはその部分、例えば、外側部分(すなわち、インフルエンザウイルスの外部表面上に位置する部分)、HA1断片、HA2断片、または1つまたは複数のエピトープ(例えば、B細胞、HTL、もしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分、断片、またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIもしくはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトドナーPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のHAのHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:1〜12)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表2に示す群から選択される1つまたは複数のHAのCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:62〜67)をコードする。
【0037】
(表1)
a)保存率(%)は、51のインフルエンザ株(H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H9N2等)からの配列分析に基づく。
b)結合した対立遺伝子の数は、ペプチドによって結合されたHLA−DRB1*0101、HLA−DRB1*0301、HLA−DRB1*0401、HLA−DRB1*0404、HLA−DRB1*0405、HLA−DRB1*0701、HLA−DRB1*0802、HLA−DRB1*0901、HLA−DRB1*1101、HLA−DRB1*1302、HLA−DRB1*1501、HLA−DRB4*0101およびHLA−DRB5*0101からなる群からのHLAクラスII分子の数を意味する。
c)リコールは、ELISPOTアッセイ分析でバックグラウンド応答よりも2倍より高いIFN−γ応答を示したヒトドナーの数を意味する。
【0038】
(表2)
a)結合した対立遺伝子の数は、ペプチドによって結合された特定のHLAスーパータイプからのHLAクラスI分子の数を意味する。HLA−A1についてはA*101、A*2601、A*2902、およびA*3002を検査し、HLA−A2についてはA*0201、A*0202、A*0203、A*0206、およびA*6802を検査し、HLA−A3についてはA*0301、A*1101、A*3101、A*3301、およびA*6801を検査し、HLA−A24についてはA*2301、A*2402、A*2902、およびA*3002を検査し、HLA−B7についてはB*0702、B*3501、B*5101、B*5301、およびB*5401を検査し、HLA−B44についてはB*1801、B*4001、B*4002、B*4403、およびB*4501を検査した。
【0039】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのNAタンパク質またはその部分、例えば、外側部分(すなわち、インフルエンザウイルスの外部表面上に位置する部分)、断片、またはエピトープ(例えば、1つもしくは複数のB細胞、HTL、もしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分、断片、またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIもしくはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、SEQ ID NO:19の1つまたは複数のコピーをコードする(表1を参照)。他の実施形態において、第1の異種配列は、表3に示す群から選択される1つまたは複数のNAのCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:86〜109)をコードする。
【0040】
(表3)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0041】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのM2タンパク質、またはその部分、例えば、外側部分(すなわち、M2e、インフルエンザウイルスの外部表面上に位置する部分)、断片、またはエピトープ(例えば、1つもしくは複数のB細胞、HTL、もしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分、断片、またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。例えば、特定の実施形態において、外側のM2部分は、表4に示す配列を有する。第1の異種配列は、2つ以上のM2断片または部分(例えば、表4に示す単一のM2e配列の2つ以上の反復、または表4に示す2つ以上のM2e配列)のコンカテマーをコードすることができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、SEQ ID NO:312、SEQ ID NO:318、SEQ ID NO:321、SEQ ID NO:327、またはそれらの任意の組み合わせを含む反復配列(例えば、4つ全部の配列のうちの少なくとも1つのコピー)をコードする。特定の実施形態において、M2のエピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析のペプチド再刺激でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、SEQ ID NO:18の1つまたは複数のコピーをコードする(表1を参照)。他の実施形態において、第1の異種配列は、表5に示す群から選択される1つまたは複数のM2のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:80〜85)をコードする。
【0043】
(表5)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0044】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのM1タンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のM1のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:13〜17)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表6に示す群から選択される1つまたは複数のM1のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:68〜79)をコードする。
【0045】
(表6)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0046】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのNPタンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のNPのHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:20〜26)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表7に示す群から選択される1つまたは複数のNPのCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:110〜139)をコードする。さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、SEQ ID NO:337(すなわち、LELRSRYWAIRTRSGGNTNQQRAS)のNP配列の1つまたは複数のコピーをコードする。
【0047】
(表7)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0048】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのNS1タンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のNS1のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:27〜29)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表8に示す群から選択される1つまたは複数のNS1のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:140〜152)をコードする。
【0049】
(表8)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0050】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのNS2タンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のNS2のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:30〜33)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表9に示す群から選択される1つまたは複数のNS2のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:153〜163)をコードする。
【0051】
(表9)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0052】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのPAタンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のPAのHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:34〜40)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表10に示す群から選択される1つまたは複数のPAのCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:164〜205)をコードする。
【0053】
(表10)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0054】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのPB1タンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のPB1のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:41〜54)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表11に示す群から選択される1つまたは複数のPB1のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:206〜264)をコードする。
【0055】
(表11)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0056】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長インフルエンザのPB2タンパク質、またはその部分、例えば、エピトープ(例えば、1つもしくは複数のHTLもしくはCTLエピトープ)をコードする。特定の実施形態において、部分またはエピトープは、進化的に保存された配列に由来する。特定の実施形態において、エピトープは、それぞれ、HLAクラスIまたはクラスII分子に対する縮重結合を示す、および/または、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析でヒトインターフェロンガンマ(IFN−γ)応答を生じる能力を有する、HTLまたはCTLエピトープである。上で論じたように、HTLまたはCTLエピトープは、単一のHTLもしくはCTLエピトープが反復している、ならびに/または複数のHTLおよび/もしくはCTLエピトープが一緒に結合している、コンカテマーを形成することができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に示す群から選択される1つまたは複数のPB2のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:55〜61)をコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、表12に示す群から選択される1つまたは複数のPB2のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:265〜309)をコードする。
【0057】
(表12)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
【0058】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、表1に列挙される複数のHTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:1〜61)をコードし、複数のHTLエピトープは、複数のインフルエンザタンパク質由来のエピトープを含む。コードされた配列は、例えば、異なるインフルエンザタンパク質由来のHTLエピトープの多量体をコードすることができる。特定の実施形態において、複数のHTLエピトープは、配列の保存率、結合したHLAクラスII対立遺伝子の数および種類(例えば、幅広いHLAクラスII対立遺伝子に対する結合を確実にするため)、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析のIFN−γ応答、またはそれらの組み合わせに一部基づいて選択される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表13に列挙される群から選択される1つまたは複数のHTLエピトープをコードする。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表13に列挙される全てのHTLエピトープの多量体をコードする。
【0059】
(表13)
a)表1の脚注(a)を参照のこと。
b)表1の脚注(b)を参照のこと。
c)表1の脚注(c)を参照のこと。
【0060】
他の実施形態において、第1の異種配列は、表2〜3および5〜12に列挙される複数のCTLエピトープ(すなわち、SEQ ID NO:62〜309)をコードし、複数のCTLエピトープは、複数のインフルエンザタンパク質由来のエピトープを含む。コードされた配列は、例えば、異なるインフルエンザタンパク質由来のCTLエピトープの多量体をコードすることができる。特定の実施形態において、複数のCTLエピトープは、配列の保存率、結合したHLAクラスI対立遺伝子の数および種類(例えば、幅広いHLAクラスI対立遺伝子に対する結合を確実にするため)、ヒトPBMCを用いたELISPOTアッセイ分析のIFN−γ応答、またはそれらの組み合わせに一部基づいて選択される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表14に列挙される群から選択される1つまたは複数のCTLエピトープをコードする。特定の実施形態において、第1の異種配列は、表14に列挙される全てのCTLエピトープの多量体をコードする。
【0061】
(表14)
a)表2の脚注(a)を参照のこと。
b)Assarsson et al.(2008),J Virol 82:12241
【0062】
第1の異種配列は、本明細書に開示されるいかなる感染性病原体由来の免疫原性タンパク質または抗原もコードすることができる。例えば、いくつかの実施形態において、第1の異種配列は、ウイルス、細菌、原生生物、および/または真菌由来の免疫原性タンパク質をコードする。一実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、チクングニアウイルス、および/またはデング熱ウイルス由来の免疫原性タンパク質をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、バチルス(例えば、バチルス・アントラシス)、マイコバクテリウム(例えば、結核菌、らい菌)、赤痢菌(例えば、ソンネ菌、志賀赤痢菌、シゲラ・フレックスネリ)、連鎖球菌、および/または大腸菌(例えば、毒素原性、腸管出血性、または志賀毒素産生大腸菌)由来の免疫原性タンパク質をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管侵入性大腸菌(EIEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)、および/または腸管凝集性大腸菌(EAEC)由来の免疫原性タンパク質をコードする。さらに別の実施形態において、第1の異種配列は、バークホルデリア(例えば、セパシア菌群)、シュードモナス(例えば、緑膿菌)、クロストリジウム(例えば、ボツリヌス菌、破傷風菌、クロストリジウム・ディフィシル)、ブドウ球菌(例えば、メチシリン耐性、多剤耐性、またはオキサシリン耐性の黄色ブドウ球菌)、腸球菌(例えば、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・フェシウム、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE))、連鎖球菌(例えば、肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア)、および/またはビブリオ(例えば、コレラ菌)由来の免疫原性タンパク質をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、カンピロバクター(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ)、ボルデテラ(例えば、百日咳菌)、クラミジア(例えば、クラミジア・ニューモニエ、クラミジア・トラコマティス)、コリネバクテリウム(例えば、ジフテリア菌)、レジオネラ(例えば、レジオネラ・ニューモフィラ)、リステリア(例えば、リステリア・モノサイトゲネス)、ナイセリア(例えば、ナイセリア・ゴノレア、ナイセリア・メニンギティディス)、サルモネラ(例えば、サルモネラ・エンテリカ、サルモネラ・チフィ、サルモネラ・チフィムリウム)、エルシニア(例えば、ペスト菌)、ヘモフィルス(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ)、ヘリコバクター(例えば、ヘリコバクター・ピロリ)、コクシエラ(例えば、Q熱コクシエラ)、および/またはフランシセラ(例えば、野兎病菌)由来の免疫原性タンパク質をコードする。特定の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ、HIV、HPV、バチルス・アントラシス、マラリア原虫、および/または赤痢菌由来の免疫原性タンパク質をコードする。さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ、HIV、および/またはバチルス・アントラシス由来の免疫原性タンパク質をコードする。
【0063】
第1の異種配列によってコードされるインフルエンザ抗原は、現在存在するかまたは後に単離されるいかなるインフルエンザ株、例えば、1918年のスペイン風邪(H1N1)、1957年のアジア風邪(H2N2)、1968年のホンコン風邪(H3N2)、1997年のホンコン風邪(H5N1)、2004年のベトナム風邪(H5N1)、2009年のブタインフルエンザ(H1N1)に関連する株に由来してもよい。したがって、例えば、HA抗原は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、またはBのHA抗原であってもよく、NA抗原は、例えば、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、またはN9のNA抗原であってもよい。いくつかの実施形態において、HA抗原は、H1、H3、H5、またはBのHA抗原であってもよい。本発明の異種配列の基礎となり得るインフルエンザ株の非限定的な例として、A/goose/Guangdong/1/96(H5N1)、A/Brevig Mission/1/1918(H1N1)、A/Wilson−Smith/33(H1N1)、A/Puerto Rico/8/34/Mount Sinai(H1N1)、A/Fort Monmouth/1/47(H1N1)、A/USSR/90/1977(H1N1)、A/New Caledonia/20/1999(H1N1)、A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)、A/Brisbane/59/2007(H1N1)、A/California/7/2009(H1N1)、A/California/14/2009(H1N1)、A/California/08/2009(H1N1)、A/California/05/2009(H1N1)、A/Texas/04/2009(H1N1)、A/Mexico/InDRE4114/2009(H1N1)、A/New York/1669/2009(H1N1)、A/Canada−AB/RV1532/2009(H1N1)、A/Leningrad/134/47/57(H2N2)、A/Ann Arbor/6/60(H2N2)、A/Berlin/3/64(H2N2)、A/Tokyo/3/67(H2N2)、A/Singapore/1/57(H2N2)、A/Hong Kong/1/68(H3N2)、A/Albany/1/76(H3N2)、A/Panama/2007/99(H3N2)、A/Wisconsin/67/05(H3N2)、A/Hong Kong/1774/99(H3N2)、A/Moscow/10/99(H3N2)、A/Hiroshima/52/2005(H3N2)、A/California/7/2004(H3N2)、A/New York/55/2004(H3N2)、A/Brisbane/10/2007(H3N2)、A/Perth/16/2009(H3N2)、A/goose/Guiyang/337/2006(H5N1)クレード4、A/HK/156/97(H5N1)、A/HK/483/97(H5N1)、A/Viet Nam/1194/2004(H5N1)クレード1、A/Viet Nam/1203/2004(H5N1)クレード1、A/duck/NCVD1/07(H5N1)、A/chicken/Viet Nam/NCVD−21/07(H5N1)、A/Indonesia/5/05(H5N1)クレード2.1、A/Turkey/65−596/06(H5N1)クレード2.2、A/chicken/India/NIV33487/2006(H5N1)クレード2.2、A/turkey/Turkey/1/2005(H5N1)クレード2.2、A/Egypt/902782/2006(H5N1)、A/Egypt/2321/2007(H5N1)、A/Egypt/3300−NAMRU3/2008(H5N1)、A/Anhui/1/2005(H5N1)、A/China/GD01/2006(H5N1)、A/common magpie/Hong Kong/50525/07(H5N1)クレード2.3.2、A/Japanese white−eye/Hong Kong/1038/2006(H5N1)クレード2.3.4、A/chicken/Viet Nam/NCVD−15/2007(H5N1)、A/chicken/Italy/2335/2000(H7N1)、A/turkey/Italy/3675/99(H7N1)、A/chicken/New York/21211−2/05(H7N2)、A/New York/107/03(H7N2)、A/chicken/British Columbia/GSCヒトB/04(H7N3)、A/Canada/rv504/04(H7N3)、A/chicken/British Columbia/CN−6/04(H7N3)、A/equine/San Paulo/4/76(H7N7)、A/seal/Mass/1/1980(H7N7)、A/chicken/Victoria/1/1985(H7N7)、A/chicken/Netherlands/2586/2003(H7N7)、A/mallard/California/HKWF1971/2007(H7N7)、A/chicken/Beijing/1/94(H9N2)、A/quail/Hong Kong/G1/1997(H9N2)、A/Korea/KBNP−0028/2000(H9N2)、A/chicken/Hong Kong/G9/97(H9N2)、A/chicken/Hong Kong/CSW153/2003(H9N2)、A/chicken/Shantou/6781/2005(H9N2)、A/chicken/Jiangsu/L1/2004(H9N2)、A/Hong Kong/1073/99(H9N2)、A/Hong Kong/2108/2003(H9N2)、A/chicken/Shiraz/AIV−IR004/2007(H9N2)、A/chicken/Zibo/L2/2008(H9N2)、A/chicken/Henan/L1/2008(H9N2)、A/avian/Israel/313/2008(H9N2)およびB/Brisbane/60/2008が挙げられる。さらなるインフルエンザ株は、当業者によって容易に同定され得る。例えば、WO2008/054540号の表1は、これまでに単離された異なるインフルエンザ株の大規模なリストを提供しており、また国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトも同様である。
【0064】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザウイルスH1、H3、H5、またはBから選択されるインフルエンザHA抗原をコードする。HA抗原は、いくつかの実施形態において、A/Vietnam/1194/2004、A/Vietnam/1203/2004、A/Anhui/1/2005、A/Egypt/2321/2007、A/Egypt/3300−NAMRU3/2008、A/Perth/16/2009、A/California/05/2009、またはB/Brisbane/60/2008からなる群から選択される株のうちの1つまたは複数に由来してもよい。いくつかの実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザのNPまたはM1抗原をコードする。一実施形態において、NPまたはM1抗原は、インフルエンザ株A/Texas/04/2009またはA/California/08/2009に由来する。
【0065】
他の実施形態において、第1の異種配列は、ヒトパピローマウイルス(HPV)由来の抗原をコードする。HPVは、いかなる既知のまたは後に発見される株であってもよい(例えば、HPV−1、HPV−2、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−45等)。一実施形態において、第1の異種配列は、HPV−16またはHPV−18株由来の抗原をコードする。特定の実施形態において、HPV抗原は、全長L1タンパク質またはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープおよび/もしくはHTLもしくはCTLエピトープ)。一実施形態において、第1の異種配列は、完全にまたは部分的にコドン最適化された全長L1タンパク質をコードする。他の実施形態において、HPV抗原は、全長L2またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープおよび/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、HPV抗原は、L1ハイブリッドポリペプチドまたはL1/L2ハイブリッドポリペプチドである。例えば、ある特定の実施形態において、HPV抗原は、L2ポリペプチドの断片を含むL1ポリペプチドである(例えば、L2の断片がL1ポリペプチドのループに挿入されてもよい)。さらに他の実施形態において、HPV抗原は、全長E6もしくはE7タンパク質、またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープおよび/もしくはHTLもしくはCTLエピトープ)。さらに他の実施形態において、HPV抗原は、L1、L2および/またはE6ならびにE7タンパク質を含む融合タンパク質である。例えば、いくつかの実施形態において、HPV抗原は、E7タンパク質に融合されたL1/L2ハイブリッドポリペプチドを含む融合タンパク質である。他の実施形態において、HPV抗原は、E6タンパク質に融合されたL1/L2ハイブリッドポリペプチドを含む融合タンパク質である。
【0066】
他の実施形態において、第1の異種配列は、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)由来の抗原をコードする。HIVは、いかなる既知のまたは後に発見される株であってもよい(例えば、HIV−1、HIV−2等)。特定の実施形態において、HIV抗原は、全長Envタンパク質(例えば、gp160)あるいはその断片またはオリゴマー(例えば、gp140、gp120、gp41、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)等の表面抗原である。他の実施形態において、HIV抗原は、全長カプシドタンパク質(p24)、マトリックスタンパク質(p17)、またはその断片であるである(例えば、進化的に保存されたエピトープおよび/もしくはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、HIV抗原はTat(例えば、p16もしくはp14)、Rev(p19)、Vif(p23)、Vpr(p14)、Nef(p27)、Vpu(p16)、またはGagタンパク質である。HIV抗原は、全長のまたはそうでなければ、HTLまたはCTLエピトープ等のいかなるHIVタンパク質であってもよく、いかなる進化的に保存された配列であってもよい。いくつかの実施形態において、HIV抗原配列は、異種の三量体形成ドメイン(例えば、GCN4等の酵母のGCN、およびバクテリオファージT4のフィブリチンFTモチーフ由来)または翻訳後修飾のための特定のシグナル配列、例えば、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー部位を含有するように遺伝子操作されてもよい。例えば、一実施形態において、gp140またはgp120等のHIVエンベロープタンパク質は、GPIアンカー部位を含有するように修飾されてもよい。別の実施形態において、HIVのgp140配列は、異種のGCN三量体形成ドメインおよび/またはGPIアンカー部位を含有するように修飾されてもよい。いくつかの実施形態において、GCN三量体形成ドメインまたはGPIアンカー部位は、HIVエンベロープタンパク質配列のカルボキシル末端(例えば、HIVのgp140配列)に融合される。
【0067】
他の実施形態において、第1の異種配列は、バチルス菌の抗原をコードする。バチルスは、多数の病原体種のうちのいずれでもあってもよく(例えば、バチルス・アントラシス、バチルス・セレウス(B.cereus)等)、そのような種のいかなる既知のまたは後に発見される分離株であってもよい。特定の実施形態において、バチルス抗原は、細胞膜に存在するタンパク質またはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/もしくはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、バチルス抗原は、細胞内タンパク質またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。特定の実施形態において、バチルス抗原は、宿主細胞内移行と関連する。例えば、抗原は、標的細胞結合タンパク質(例えば、防御抗原(PrAgもしくはPA))、メタロペプチダーゼ(例えば、致死因子(LF))、アデニル酸シクラーゼ(例えば、浮腫因子(EF))、またはその断片(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/もしくはHTLもしくはCTLエピトープ)であってもよい。いくつかの実施形態において、バチルス抗原は、サーモリシン切断部位を欠失するように、またはGPIアンカーを含有するように修飾されてもよい。一実施形態において、第1の異種配列は、防御抗原、または、サーモリシン切断部位を除去するように、もしくはGPIアンカーを含有するように修飾された防御抗原をコードする。
【0068】
他の実施形態において、第1の異種配列は、赤痢菌由来の抗原をコードする。赤痢菌は、多数の病原体種のうちのいずれでもあってもよく(例えば、ソンネ菌、志賀赤痢菌、シゲラ・フレックスネリ等)、そのような種のいかなる既知のまたは後に発見される分離株であってもよい。特定の実施形態において、赤痢菌抗原は、細胞膜に存在するかまたは関連するタンパク質(例えば、膜内在性タンパク質もしくは表在性膜タンパク質)、あるいはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。例えば、抗原は、Karp株p56等の外膜タンパク質であってもよい。他の実施形態において、赤痢菌抗原は、細胞内タンパク質またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。特定の実施形態において、赤痢菌抗原は、侵入タンパク質であるIpaB、IpaC、またはIpaDタンパク質等の宿主細胞内移行と関連する。別の実施形態において、赤痢菌抗原は、IcsPおよび/またはSigAポリペプチドを含む汎用抗原である。
【0069】
他の実施形態において、第1の異種配列は、マイコバクテリウム由来の抗原をコードする。マイコバクテリウムは、多数の病原体種のうちのいずれでもあってもよく(例えば、結核菌、らい菌、M.レプロマトーシス(M.lepromatosis)等)、そのような種のいかなる既知のまたは後に発見される分離株であってもよい。特定の実施形態において、マイコバクテリウム抗原は、細胞膜に存在するかまたは関連するタンパク質(例えば、膜内在性タンパク質もしくは表在性膜タンパク質)、あるいはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、マイコバクテリウム抗原は、細胞内タンパク質またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。特定の実施形態において、マイコバクテリウム抗原は、Ag85A、Ag85B、Ag85C、ESAT−6、CFP−10、HspX、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
他の実施形態において、第1の異種配列は、マラリア原虫由来の抗原をコードする。マラリア原虫は、多数の病原体種のうちのいずれでもあってもよく(例えば、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫)、そのような種のいかなる既知のまたは後に発見される分離株であってもよい。特定の実施形態において、マラリア原虫抗原は、細胞膜に存在するかまたは関連するタンパク質(例えば、膜内在性タンパク質もしくは表在性膜タンパク質)、あるいはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、マラリア原虫抗原は、細胞内タンパク質またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。特定の実施形態において、マラリア原虫抗原は、CS、CSP(未切断)、MSP1、MSP2(C末端p42)、LSA1、EBA−175、AMA1、FMP1、Pfs48/45、およびMSP3からなる群から選択される。
【0071】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、肺炎連鎖球菌(例えば、肺炎球菌(Pneumococcus))由来の抗原をコードする。特定の実施形態において、肺炎連鎖球菌抗原は、細胞膜に存在するかまたは関連するタンパク質(例えば、膜内在性タンパク質もしくは表在性膜タンパク質)、あるいはその断片等の表面抗原である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。他の実施形態において、肺炎連鎖球菌抗原は、細胞内タンパク質またはその断片である(例えば、進化的に保存されたエピトープ、および/またはHTLもしくはCTLエピトープ)。特定の実施形態において、肺炎連鎖球菌抗原は、肺炎球菌表面タンパク質(例えば、PspA、PspC)、ニューモリシン(Ply)、ノイラミニダーゼ酵素(例えば、NanA、NanB)、自己溶菌酵素A(LytA)、肺炎球菌−ヒスチジン三連構造タンパク質、PiaA、PiuA、フルクトース二リン酸アルドラーゼ(FBA)、アドヘシンA、ニューモリソイド(pneumolysoid)からなる群から選択される。
【0072】
さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、表面抗原、内部タンパク質、毒素、侵入関連タンパク質、プロテアーゼもしくは他の酵素、熱ショックタンパク質、またはいかなる他の感染性病原体由来の他の抗原もコードする。例えば、表面抗原は、百日咳菌、クラミジア・ニューモニエ(例えば、膜タンパク質D、外膜タンパク質)、クラミジア・トラコマティス(例えば、膜タンパク質D、外膜タンパク質)、レジオネラ・ニューモフィラ、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性、多剤耐性、およびオキサシリン耐性株を含む)(例えば、IsdA、IsdB、SdrD、SdrE)、肺炎連鎖球菌(例えば、PsPA)、ストレプトコッカス・エルジノーサ(Streptococcus aeruginosa)(例えば、鞭毛Ag、ポリン)、化膿性連鎖球菌(例えば、Mタンパク質、フィブロネクチン結合タンパク質Sfb1)、ストレプトコッカス・アガラクチア、腸管出血性大腸菌(例えば、インチミン、FimHアドへシン)、ヘモフィルス・インフルエンザ(例えば、Pili、P1、P2、P4、P6)、カンジダ(例えば、Als1p、Als3p)、コクシジオイデス・イミチス(例えば、Ag2)、緑膿菌(例えば、鞭毛抗原、ポリン)、ラウス肉腫ウイルス(例えば、Fタンパク質、Gタンパク質)、ヒト内因性レトロウイルスK(例えば、メラノーマ抗原HERV−K−MEL)、ヘルペスウイルス(例えば、糖タンパク質D2)、デング熱ウイルス(例えば、DEN1、DEN2、DEN3、DEN4エンベロープタンパク質、四価4xEDIIIドメインタンパク質)等からなる群から選択される感染性病原体に由来してもよい。毒素は、カンピロバクター・ジェジュニの不安定毒素、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンAおよびB、化膿性連鎖球菌由来の発熱性外毒素および外毒素、コレラ菌のトキシンB、腸管出血性大腸菌の志賀毒素(例えば、Stx−1、Stx−2)、緑膿菌由来の外毒素A等からなる群から選択されてもよい。プロテアーゼおよび他の酵素は、クラミジアの分泌プロテアーゼ因子、肺炎連鎖球菌のニューモリシン、自己溶菌酵素、またはノイラミニダーゼ、化膿性連鎖球菌由来のシステインプロテアーゼまたはC5aペプチダーゼ、ヘリコバクター・ピロリ由来のウレアーゼ、コクシジオイデス・イミチスのウレアーゼ、ヒストプラズマ・カプスラーツムのHis−62、H抗原、およびhsp70等からなる群から選択されてもよい。
【0073】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、癌細胞によって生成されるタンパク質の全部または一部をコードする。タンパク質またはその断片(例えば、切断生成物、構造ドメイン、二次構造の単位(複数可)、B細胞エピトープ、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープ、ヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープ等)は、癌細胞の表面上に位置していてもよい。例えば、タンパク質またはその断片は、高度に抗原性であってもよく、かつ/または癌細胞のためのマーカー(例えば、癌細胞特異的マーカーまたは癌細胞上で高度に濃縮された抗原)であってもよい。代替として、タンパク質またはその断片(例えば、切断生成物、構造ドメイン、二次構造の単位(複数可)、HTLもしくはCTLエピトープ等)は、癌細胞の内部に位置していてもよい。例えば、タンパク質またはその断片は、細胞質タンパク質、核タンパク質等であってもよい。
【0074】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、少なくとも1つの完全なオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、少なくとも1つの完全なORFは、アデノウイルスベクターによって感染された宿主細胞中で発現されることができる個別のポリペプチドをコードする。特定の実施形態において、第1の異種配列は2つ以上の完全なORFを含み、それらの各々が、アデノウイルスベクターによって感染された宿主細胞中で発現されることができる個別のポリペプチドをコードする。上述のように、個別のポリペプチドのうちの1つまたは複数は、全長タンパク質またはその断片であってもよい。同様に、上述のように、個別のポリペプチドのうちの1つまたは複数は、タンパク質ドメインの多量体、構造モチーフ、またはエピトープ(例えば、B細胞、HTLもしくはCTLエピトープ)であってもよい。例えば、特定の実施形態において、第1の異種配列は、全長タンパク質(例えば、インフルエンザHA)をコードする第1のORFと、タンパク質ドメインの多量体、構造モチーフ、またはエピトープ(例えば、表4から選択される1つもしくは複数のインフルエンザM2配列の多量体、1つもしくは複数のインフルエンザB細胞エピトープの多量体、表1もしくは表13から選択される1つもしくは複数のインフルエンザHTLエピトープの多量体、または表2〜3および5〜12もしくは表14から選択される1つもしくは複数のインフルエンザCTLエピトープの多量体等)をコードする第2のORFとを含む。
【0075】
したがって、いくつかの実施形態において、第1の異種配列は、融合タンパク質をコードする。融合タンパク質は、同じ感染性病原体または異なる感染性病原体由来の抗原性タンパク質または全長タンパク質の1つまたは複数のエピトープまたはその断片を含むことができる。例えば、一実施形態において、融合タンパク質は、HPVのE6またはE7タンパク質に融合された上述のようなHPVのL1/L2ハイブリッドポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、E7タンパク質に融合されたHPV−16(例えば、HPV−16のL2断片がL1ループに挿入された全長HPV−16のL1タンパク質)に由来するL1/L2ハイブリッドポリペプチドを含む。他の実施形態において、融合タンパク質は、E6タンパク質に融合されたHPV−18(例えば、HPV−18のL2断片がL1ループに挿入された全長HPV−18のL1タンパク質)に由来するL1/L2ハイブリッドポリペプチドを含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、一緒に融合されたインフルエンザHAおよびNAタンパク質(例えば、本明細書に記載されるようなインフルエンザHAまたはNAタンパク質の中和エピトープ)に由来する免疫原性断片を含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、全長インフルエンザのNAタンパク質に融合された本明細書に記載されるようなインフルエンザHAタンパク質の1つまたは複数の中和エピトープを含む。さらに別の実施形態において、融合タンパク質は、本明細書に記載されるような種々のエピトープの多量体であってもよい。例えば、融合タンパク質は、各エピトープがリンカー配列によって接続された、HTLエピトープの多量体であってもよい(代表的な多量体については実施例13を参照のこと)。いくつかの実施形態において、第1の異種配列によってコードされる融合タンパク質は、感染性病原体の2つ以上の種または血清型由来の抗原を含む。例えば、融合タンパク質は、デング熱ウイルスの4つの血清型1〜4のうちの各々に由来するエンベロープタンパク質のEDIIIドメインを含んでもよい。
【0076】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、2つの完全なORFを含み、第1および第2のORFは並列に配向される(例えば、頭−尾結合)。特定の関連実施形態において、第1の異種配列は、第1のORFの終止コドンの3'および第2のORFの開始コドンの5'に位置する内部リボソーム侵入部位配列(IRES)をさらに含み、それによって、第1および第2のORFによってコードされたポリペプチドが単一のmRNA転写物から翻訳されることを可能にする。当業者は、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞において機能的である好適なIRES配列、そして、第2のORFの十分な翻訳を確実にするためには、そのような配列がどのように配置されるべきかを容易に特定することができる。
【0077】
特定の関連実施形態において、第1の異種配列は、2つの完全なORFを含み、第1および第2のORFは並列に配向され(例えば、頭−尾結合)、第1のORFの終止コドンの3'および第2のORFの開始コドンの5'に位置するスプライスアクセプターをさらに含み、それによって第1および第2のORFによってコードされたポリペプチドが、単一のmRNA転写物から、または2つの別個のmRNA転写物として、翻訳されることを可能にする。当業者は、スプライシング要素を特定し、それらを正しい様式で組み込むことができる。スプライシングアクセプターは、所望の結果に応じて、コンセンサス配列(SV40スプライシング部位等)または非コンセンサス配列(Ad5のADPスプライスアクセプター等)のいずれかであってもよい。例えば、アデノウイルス主要後期転写単位において、感染後期に非定型ポリピリミジントラクトを有する3'スプライシング部位が好ましい。例えば、Muhlemann et al.(1995),J.Virology 69(11):7324を参照のこと。
【0078】
特定の関連実施形態において、第1の異種配列は、2つの完全なORFを含み、第1および第2のORFは並列に配向され(例えば、頭−尾結合)、第1のORFの3'末端(終止コドンが除去された)と第2のORFの開始コドンのフレームの5'との間のフレームに位置する2Aスキッピング要素(リボソーム内自己プロセシング)をさらに含み、それによって第1および第2のORFによってコードされたポリペプチドが、A2要素の位置で結合するペプチドを「スキップする」単一のペプチドとして単一のmRNA転写物から翻訳されることを可能にし、そうすることで2つのポリペプチドを産生する。当業者は、口蹄疫ウイルス(FMDV)およびピコルナウイルスに由来するような2Aスキッピング要素を特定し、2つのORFが単一の連続したペプチドを形成するようにそれらを整列させることができる。
【0079】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、2つの完全なORFを含み、第1および第2のORFは末端同士の結合で配向される。例えば、第1のORFの3'末端が、第2のORFの3'末端と隣接していてもよい。代替として、第1のORFの5'末端が、第2のORFの5'末端と隣接していてもよい。
【0080】
一般的に、第1の異種配列は、転写エンハンサーおよび/またはプロモーターならびにポリアデニル化配列を最小限含有する転写単位の一部である。特定の実施形態において、転写単位は、1つもしくは複数のイントロン、1つもしくは複数のスプライシングエンハンサー、リーダー配列、コンセンサスKozak配列、RNAの安定性および/もしくはプロセシングを増加させる1つもしくは複数の要素、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0081】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、アデノウイルスの転写および/もしくは翻訳制御配列の制御下にあるか、またはそれに機能的に結合している。この文脈で用いられる場合、「制御下にある」および「機能的に結合している」とは、異種配列に含有されるORFの転写および/または翻訳が制御配列によって影響を受けることを意味する。したがって、例えば、ORFの転写および/または翻訳が、アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列の結果として増加され得る。特定の実施形態において、「機能的に結合している」とは、制御配列と異種配列とが互いに極めて近接していることを意味する。例えば、特定の実施形態において、異種配列に機能的に結合しているアデノウイルスの制御配列は、異種配列の一方の末端から約100bp以内、約100〜約200bp、約200〜約300bp、約300〜約400bp、または約400〜約500bpに位置する。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列」は、アデノウイルスに由来する転写および/または翻訳の調節に関与する核酸配列である。そのような配列は、これらに限定されないが、アデノウイルスプロモーター(例えば、主要後期プロモーター(MLP)または主要後期転写単位(MLTU)内のプロモーター)、アデノウイルス転写エンハンサー、アデノウイルススプライスアクセプター部位(例えば、Ad4のE3 24.8k ORFのMLP駆動転写のための天然スプライスアクセプター部位、またはAd5のADPスプライスアクセプター配列)、アデノウイルスのスプライシングエンハンサー、アデノウイルスのリーダー配列(例えば、トリパータイトリーダー(TPL)配列)、RNAの安定性および/またはプロセシングを増加させるアデノウイルスの要素(例えば、シス作用性のRNA核外輸送要素)、ならびにアデノウイルスポリAシグナル配列(例えば、Ad5 E3Aポリアデニル化シグナル配列)を含む。アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列は、いかなるアデノウイルス株に由来してもよい。したがって、本発明のアデノウイルスベクター(例えば、Ad4ベクター)は、異なるアデノウイルス株(すなわち、Ad4以外の株)に由来するアデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列を含むことができる。アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列は、野生型配列(すなわち、自然発生型アデノウイルスに見られる配列)またはその変異配列を有することができる。アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列は、当該技術分野において記載されている。例えば、アデノウイルスTPL配列は米国特許出願第2006/0115456号に記載され、エンハンサーはMassie et al.(1995),Biotechnology 13(6):602に記載され、ポリアデニル化配列はBhatおよびWold(1986),J.Virology 57(3):1155において考察されている。さらなるアデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列は、当業者によって同定され得る。
【0083】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、アデノウイルスMLPの下にある(すなわち、その制御下にある)。本明細書で用いられる場合、「主要後期プロモーター(MLP)」は、主要後期転写単位(MLTU)プロモーターと交換可能に使用される。他の実施形態において、第1の異種配列はアデノウイルスMLPおよびアデノウイルスTPLの下にある。他の実施形態において、第1の異種配列は、アデノウイルスMLPの下にあり、アデノウイルススプライスアクセプター配列に機能的に結合している。さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、アデノウイルスMLPおよびアデノウイルスTLPの下にあり、アデノウイルススプライスアクセプター配列に機能的に結合している。特定の実施形態において、アデノウイルススプライスアクセプター配列は、非コンセンサス配列である。理論に束縛されることを意図するわけではないが、非コンセンサスのスプライスアクセプターは、アデノウイルスMLPと合わせて用いられると、コンセンサスのスプライスアクセプターよりも良好に作用すると考えられる。上述した実施形態のいずれにおいても、第1の異種配列は、アデノウイルスポリAシグナル配列にさらに機能的に結合していてもよい。
【0084】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、内因性アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列の下にある(すなわち、その制御下にある)。本明細書で用いられる場合、「内因性」アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列は、アデノウイルスベクター本来の、組換え技術によって新しい位置に導入または移動されていない、転写および/または翻訳の調節に関与する核酸配列である。例えば、その配列の位置が組換え技術によって修飾されていない限り、Ad4アデノウイルスベクターに存在するいかなるAd4転写および/または翻訳制御配列も、Ad4アデノウイルスベクターに対して内因性である。
【0085】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、外因性の転写および/または翻訳制御配列を含む。本明細書で用いられる場合、「外因性の」転写および/または翻訳制御配列は、その野生型構成から取り出され、異種配列内の新しい構成内に配置された、非アデノウイルスの転写および/もしくは翻訳制御配列、またはアデノウイルスの転写および/もしくは翻訳制御配列のいずれかを指す。外因性の転写および/または翻訳制御配列の例として、これらに限定されないが、哺乳動物細胞において機能的なプロモーター(例えば、恒常的プロモーター、例えば、CMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)プロモーター、βアクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、EF1αプロモーター(Invitrogen)等)、哺乳動物細胞において機能的なエンハンサー配列(例えば、CMVまたはRSVエンハンサー配列)、スプライシングシグナル、スプライシングエンハンサー、リーダー配列、Kozak配列、RNAの安定性および/またはプロセシングを増加させる配列(例えば、シス作用性のRNA核外輸送要素、ウッドチャック肝炎ウイルス翻訳後調節要素(WPRE))、ポリAシグナル配列(例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)またはSV40ポリAシグナル配列)等が挙げられる。種々の好適な転写および/または翻訳制御配列が、従来技術において記載されている。好適なCMVプロモーターは、例えば、米国特許出願第2006/0115456号に記載されている。WPRE要素は、例えば、Donello et al.(1998),J.Virology 72(6):5085に記載されている。WPRE要素は、ORFメッセージ内、典型的には、遺伝子の3'末端と5'ポリアデニル化配列の間に位置しなければならない。理論に束縛されることを意図するわけではないが、WPREは、核からのmRNAの移行の効率を増加することによって、また、RNAの翻訳および安定性を増加させることによって機能すると考えられる。Kozak配列もまた、例えば、Kozak,Nucleic Acid Res 15(20),8125−48(1987)に記載されている。
【0086】
好適な転写および/または翻訳制御配列は、アデノウイルスであろうとまたはそうでなかろうと、自然発生配列およびそのような配列の修飾形態を含む。そのような修飾形態は、転写および/もしくは翻訳制御配列と関連する望ましい活性を増強するように、または内因性アデノウイルスの転写および/もしくは翻訳制御配列と関連する望ましくない活性を減少させるかまたは排除するように設計された、1つまたは複数の塩基の変化(例えば、欠失、挿入、置換)を含むことができる。
【0087】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、複数の転写または翻訳制御配列を含む。例えば、第1の異種配列は、適切な細胞(例えば、ヒト細胞)がアデノウイルスベクターに感染したときに、第1の異種配列におけるORFの発現を確実にするのに十分な転写または翻訳制御配列を含むことができる。特定の実施形態において、第1の異種配列は、プロモーター(例えば、CMVプロモーター)およびアデノウイルスTPL配列を含む。他の実施形態において、第1の異種配列は、プロモーター(例えば、CMVプロモーター)、アデノウイルスTPL、およびアデノウイルスポリAシグナル配列(例えば、Ad5 E3AポリAシグナル配列)を含む。上述した実施形態のうちのいずれに関しても、第1の異種配列は、Kozak配列をさらに含むことができる。
【0088】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、2つ以上のORFの各々のための1つまたは複数の転写または翻訳制御配列を含む。例えば、第1の異種配列は、2つ以上のORFの各々の発現を確実にするのに十分な転写または翻訳制御配列を含むことができる。したがって、特定の実施形態において、第1の異種配列は、2つのORFの各々のためのプロモーターおよびポリAシグナル配列を含む。第1の異種配列は、ORFの各々のためのアデノウイルスTPLおよび/またはKozak配列をさらに含むことができる。代替として、特定の実施形態において、第1の異種配列は、1つのORFの発現を確実にするのに十分な転写または翻訳制御配列(例えば、プロモーターおよび/もしくはエンハンサーおよびポリAシグナル配列)を含むことができ、内因性アデノウイルスの転写または翻訳制御配列の制御下にあるか、あるいはそれに機能的に結合している第2のORFを含む。
【0089】
特定の実施形態において、第1の異種配列は、少なくとも1つのORFの発現および/または翻訳を増加させるかまたは最大化するように最適化されている。例えば、特定の実施形態において、第1の異種配列の1つのORFは、(例えば、ヒト細胞等の哺乳動物細胞における発現のために)コドン最適化されている。一実施形態において、第1の異種配列は、コドン最適化されており、CMVプロモーター等の非アデノウイルスプロモーターの制御下にある。他の実施形態において、ORFに機能的に結合したKozak配列は、例えば、コンセンサスKozak配列を作製するように最適化された第1の異種配列である。さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、エキソンのスプライシングサイレンサーまたはインスレーター配列等の可能性のある阻害配列(例えば、クロマチンを整列させ、プロモーターおよび/またはエンハンサーの長期にわたる影響を阻止するよう機能する配列)を除去するように最適化されている。コドン最適化および他の種類の配列最適化は、当該技術分野においてルーチンであり、当業者は、そのような最適化をどのように行うかを容易に理解するであろう。
【0090】
第1の異種配列がMLPプロモーターの制御下にあるいくつかの実施形態において、第1の異種配列はコドン最適化されていない、すなわち、第1の異種配列は感染性病原体からの天然配列である。例えば、一実施形態において、アデノウイルスベクターは、アデノウイルスMLPプロモーターの制御下でコドン最適化されていない第1の異種配列を含み、アデノウイルスベクターは、複製能力を有し、かつE3の部分欠失を有する。別の実施形態において、アデノウイルスベクターはAd4に由来する。
【0091】
第1の異種配列は、E1、E2、E3、E4、L3、およびL5領域、またはE4−ITR境界を含む、アデノウイルスベクターの様々な異なる位置に挿入されてもよい。特定の実施形態において、第1の異種配列は、E1、E2B、E3、L3、もしくはL5領域、またはE4−ITR境界に挿入される。他の実施形態において、第1の異種配列は、E3領域、L3領域、またはE4−ITR境界に挿入される。さらに他の実施形態において、第1の異種配列はE3領域に挿入される。特定の実施形態において、好適なE3領域の挿入部位は、E3BポリAシグナル配列の下流に位置する。特定の実施形態において、好適なL3領域の挿入部位は、L3 23kプロテアーゼ遺伝子(例えば、Ad5ベクターの23kプロテアーゼ遺伝子、またはいずれか他のアデノウイルスベクターの同等の配列)の下流に位置する。アデノウイルスの領域または境界における正確な挿入部位は、第1の異種配列が1つまたは複数の内因性アデノウイルスの転写および/または翻訳制御配列の制御下にあるか、またはそれに機能的に結合するように選択することができる。代替として、またはそれに加えて、正確な挿入部位は、結果として生じる組換えアデノウイルスベクターが哺乳動物(例えばヒト)細胞において複製する能力に与えるいかなる影響も最小限に抑えるように選択され得る。
【0092】
本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムに欠失を含むことができる。そのような欠失は、例えば、異種配列(例えば、第1の異種配列)の挿入のための空間を提供することが可能であり、結果として生じる組換えアデノウイルスベクターが哺乳動物(例えばヒト)細胞において複製する能力に対して挿入が与えるいかなる影響も最小限に抑えるのに役立ち得る。アデノウイルスベクターは、E1、E2、E3、E4、L3、およびL5領域、またはE4−ITR境界を含む様々な異なる位置で欠失させることができる。特定の実施形態において、アデノウイルスベクターは、E1、E2B、E3、L3、もしくはL5領域、またはE4−ITR境界を欠失している。他の実施形態において、アデノウイルスベクターは、E3領域、L3領域、またはE4−ITR境界を欠失している。さらに他の実施形態において、アデノウイルスベクターは、E3領域を欠失している。特定の実施形態において、第1の異種配列は、上述した欠失のうちのいずれかに挿入されるか、またはその近位にある。例えば、第1の異種配列は、E3の部分欠失に挿入されてもよいか、またはE3の全欠失の近位にあってもよい。
【0093】
特定の実施形態において、アデノウイルスベクターにおける欠失は、1つまたは複数のオープンリーディングフレームを欠失させる。例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のオープンリーディングフレームを欠失させてもよい。オープンリーディングフレームは、既知または未知のいずれかの機能を有する。特定の実施形態において、欠失はE3領域にあり、E3領域における1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のORF(例えば、未知の機能を有するE3のORF)の欠失を含む。E3領域における欠失は、部分欠失であってもよい。代替として、E3領域における欠失は、全欠失であってもよい。
図2は、Ad4のE3領域における例示的な部分欠失または全欠失を示す。例示的なAd4のE3の部分欠失は、24.8k、6.3k、および29.7k ORF(これらは全て現在既知の機能を有さない)を除去し、Ad4のE3の全欠失は、23.3k、19k、24.8k、6.3k、29.7k、10.4k、14.5k、および14.7k ORFを除去する。ある代替のE3の部分欠失は、24.8k、6.3k、29.7k、10.4k、14.5k、および14.7k ORFを除去する。
【0094】
したがって、特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、E3 24.8k、6.3k、および29.7k ORFのうちの1つまたは複数(例えば、全部)の欠失を含むAd4ベクターである。関連実施形態において、アデノウイルスベクターは、GenBank配列AY594254の約28,446〜約30,226のヌクレオチドに対応する欠失を含むAd4ベクターである。他の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、E3領域に欠失を含むが、23.3k、19k、24.8k、6.3k、29.7k、10.4k、14.5k、および14.7kからなる群から選択される1つまたは複数のE3のORFを保持するAd4ベクターである(例えば、23.3kおよび19k ORFが保持されてもよいか、10.4k、14.5k、および14.7k ORFが保持されてもよいか、または23.3k、19k、10.4k、14.5k、および14.7k ORFが保持されてもよい)。関連実施形態において、アデノウイルスベクターは、GenBank配列AY594254の約28,446〜約31,282、または約17,356〜約30,226のヌクレオチドに対応する欠失を含むAd4ベクターである。さらに他の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、23.3k、19k、24.8k、6.3k、29.7k、10.4k、14.5k、および14.7kからなる群のE3 ORFを1つも保持しないAd4ベクターである。特定の関連実施形態において、アデノウイルスベクターは、GenBank配列AY594254の約27,356〜約31,282のヌクレオチドに対応する欠失を含むAd4ベクターである。
【0095】
特定の実施形態において、たとえORFを含む核酸配列の一部がアデノウイルスベクター中に存在し続ける場合であっても(すなわち、たとえORFが部分的にのみ欠失している場合であっても)、ORFは欠失していると考えられる。特定の実施形態において、部分的に欠失したORFからの発現は、ORFの配列をさらに操作することによって排除することができる。例えば、特定の実施形態において、ORFの開始コドンが排除されてもよい。特定の実施形態において、Ad4のE3領域の部分欠失または全欠失は、E3 23.3k ORFの部分欠失をもたらす。特定の実施形態において、部分的に欠失したE3 23.3k ORFを有するAd4ベクターは、E3 23.3k ORFの開始コドンを除去する変異(例えば、GenBank配列AY594254の27279位置に存在するATGコドンにおける変異)をさらに含む。
【0096】
さらに他の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、Ad5ゲノムのADP領域(例えば、Ad5のE3 pg19k ORFとAd5のE3 RID−α ORFの間の領域)に対応するE3領域に部分欠失を含むことができる。例えば、
図2に示すAd4のE3の部分欠失は、Ad5のE3領域からのADP領域の欠失に対応する。同様に、Ad7のE3 18.3k ORFとAd7のE3 10.3k ORFの間の領域(すなわち、Ad7のE3 20.1k、20.6k、および7.7k ORFを包含する領域)は、Ad5のE3領域からのADP領域に対応する。当業者は、Ad4またはAd7以外の血清型から、アデノウイルスベクターのどの領域がAd5のADP領域に対応するかを容易に決定することができる。
【0097】
第1の異種配列は、アデノウイルスベクターにおける欠失(例えば、上述したような欠失)に挿入され得る。代替として、第1の異種配列は、欠失(例えば、上述したような欠失)に近位の位置でアデノウイルスベクターに挿入され得る。例えば、特定の実施形態において、第1の異種配列は、E3の部分欠失(例えば、Ad4ベクターにおけるE3の部分欠失)に挿入される。他の実施形態において、第1の異種配列は、E3の全欠失(例えば、Ad4ベクターにおけるE3の全欠失)に挿入される。さらに他の実施形態において、第1の異種配列は、E3の部分欠失または全欠失に近位の領域(例えば、E3BポリAシグナル配列とL5ファイバー遺伝子またはUエキソン等の下流配列との間)に挿入される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、内因性プロモーター(例えば、LTP)の制御下となるようにE3の部分欠失に挿入される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、外因性プロモーターと、任意で他の転写または翻訳制御配列とを含み、かつE3の部分欠失または全欠失に挿入される。特定の実施形態において、第1の異種配列は、アデノウイルスタンパク質をコードするORFに組み込まれない。この文脈で用いられる場合、「組み込まれる」という用語は、結果として生じる配列がキメラタンパク質をコードし、キメラタンパク質の一部がアデノウイルスのORFによってコードされ、キメラタンパク質の一部が異種配列によってコードされるように、異種配列がアデノウイルスのORFに組み込まれることを意味する。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスプロモーター(例えば、主要後期プロモーター)の制御下で第1の異種配列を含み、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、HIV、HPV、トガウイルス(例えば、デング熱ウイルス)、赤痢菌、マイコバクテリウム、連鎖球菌、またはマラリア原虫由来の抗原をコードする。一実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ由来のH1 HA、H3 HA、H5 HA、またはB HA抗原をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、バチルス・アントラシス由来の防御抗原または修飾された防御抗原をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、HIV由来のエンベロープタンパク質(例えば、gp160、gp140、gp120)、修飾されたエンベロープタンパク質、またはgagタンパク質をコードする。さらに別の実施形態において、第1の異種配列は、HPV(HPV16およびHPV18を含む)由来のL1タンパク質、L2タンパク質、E6タンパク質、E7タンパク質、またはそれらの融合体をコードする。さらに別の実施形態において、第1の異種配列は、マラリア原虫由来のCSP、Pfs48/45、MSP1、MSP(C末端、p42)、またはLSA1をコードする。いくつかの実施形態において、第1の異種配列は、マイコバクテリウム由来のAg85、ESAT、HspX、またはそれらの組み合わせをコードする。他の実施形態において、第1の異種配列は、赤痢菌由来のPSSP、r56Karpタンパク質、または侵入タンパク質(例えば、IpaB、IpaC、またはIpaDタンパク質)をコードする。さらなる実施形態において、アデノウイルスベクターは、アデノウイルストリパータイトリーダー配列をさらに含むことができる。例えば、第1の異種配列は、アデノウイルスMLPおよびトリパータイトリーダーの制御下にあってもよく、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、HIV、HPV、トガウイルス(例えば、デング熱ウイルス)、赤痢菌、マイコバクテリウム、連鎖球菌、またはマラリア原虫由来の抗原をコードする。
【0099】
他の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、非アデノウイルスプロモーター(例えば、CMVプロモーター、RSV LTRプロモーター、SV40プロモーター、DHFRプロモーター、βアクチンプロモーター、PGKプロモーター、EF1αプロモーター)の制御下で第1の異種配列を含み、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、HIV、HPV、トガウイルス(例えば、デング熱ウイルス)、赤痢菌、マイコバクテリウム、連鎖球菌、またはマラリア原虫由来の抗原をコードする。例えば、一実施形態において、第1の異種配列は、CMVプロモーターの制御下にあり、インフルエンザ、バチルス、またはHIV由来の抗原をコードする。ある特定の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、またはHIV由来のコドン最適化配列である。別の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、またはHIV由来の天然配列である。別の実施形態において、第1の異種配列は、インフルエンザ由来のH1 HA、H3 HA、H5 HA、B HA、NP、またはM1抗原をコードする。別の実施形態において、第1の異種配列は、バチルス・アントラシス由来の防御抗原または修飾された防御抗原をコードする。さらに別の実施形態において、第1の異種配列は、HIV由来のエンベロープタンパク質(例えば、gp160、gp140、gp120)、修飾されたエンベロープタンパク質、またはgagタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、アデノウイルストリパータイトリーダー配列をさらに含むことができる。例えば、第1の異種配列は、CMVプロモーターおよびアデノウイルストリパータイトリーダーの制御下にあってもよく、第1の異種配列は、インフルエンザ、バチルス、HIV、HPV、トガウイルス(例えば、デング熱ウイルス)、赤痢菌、マイコバクテリウム、連鎖球菌、またはマラリア原虫由来の抗原をコードする。
【0100】
特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、第2の異種配列を含む。したがって、特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、第1の異種配列および第2の異種配列の両方を含む。代替として、本発明のアデノウイルスベクターは、第1の異種配列の代わりに第2の異種配列を含むことができる。
【0101】
第2の異種配列は、第1の異種配列について上述したような構造を有することができ、上述のいかなる様式でアデノウイルスゲノムに挿入されてもよい。したがって、特定の実施形態において、第2の異種配列は、全長抗原またはその断片(例えば、ドメイン、二次構造の単位(複数可)、保存されたエピトープ、B細胞、HTLもしくはCTLエピトープ、またはそれらの組み合わせ)をコードすることができる。いくつかの実施形態において、第2の異種配列は、サイトカイン、または成長因子、または免疫系を刺激する他のタンパク質等の治療タンパク質をコードする。例えば、一実施形態において、第2の異種配列は、白血球を刺激する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)等のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、第1の異種配列は、感染性病原体由来の抗原をコードし、第2の異種配列は治療タンパク質をコードする。ある特定の実施形態において、第1の異種配列はインフルエンザ抗原(例えば、H1 HA, H3 HA, H5 HA、またはB HA抗原)をコードし、第2の異種配列は白血球を刺激するタンパク質(例えば、GM−CSF)をコードする。特定の実施形態において、第2の異種配列は、(例えば、第1および第2の異種配列が互いに近位に位置するように)第1の異種配列と同じアデノウイルスベクターの領域に挿入される。他の実施形態において、第1および第2の異種配列は、アデノウイルスベクターの異なる領域に挿入される。
【0102】
第2の異種配列はまた、アデノウイルスのORFに組み込まれてもよい。特定の実施形態において、アデノウイルスのORFは、アデノウイルスの構造タンパク質(例えば、ヘキソンタンパク質またはファイバータンパク質等のカプシドタンパク質)をコードする。したがって、特定の実施形態において、第2の異種配列はアデノウイルスのヘキソンORFに組み込まれ、結果として生じるヘキソンORFと異種配列との融合物が、キメラヘキソンタンパク質をコードする。他の実施形態において、第2の異種配列はアデノウイルスのファイバーORFに組み込まれ、結果として生じるファイバーORFと異種配列との融合物が、キメラファイバータンパク質をコードする。一般的に、本発明のキメラヘキソンまたはキメラファイバータンパク質は、ヘキソンまたはファイバー機能を保持する(例えば、ヘキソンカプソメアまたはファイバーを形成し、カプシドの形成に寄与する)一方で、得られたアデノウイルスの表面の新しい抗原を提示する。本発明の組換えアデノウイルスの表面の新しい抗原の提示は、アデノウイルスに基づくワクチンの有効性を減少させ得る、一般的な集団における既存のアデノウイルスの免疫に伴う問題を回避するのに役立つため、有利である。また、組換えアデノウイルスの表面上の感染性病原体に由来する抗原の提示は、ワクチンを接種する対象の免疫系に対して非常に多様な感染性病原体抗原を提示することにより、本発明のアデノウイルスに基づくワクチンによって刺激される免疫応答を拡大することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、第2の異種配列は、異なるアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質をコードし、第2の異種配列は、アデノウイルスの天然ファイバータンパク質をコードする配列に取って代わる。したがって、結果として生じる組換えアデノウイルスは、別のアデノウイルス血清型に由来するファイバーを発現する。例えば、一実施形態において、Ad5アデノウイルスは、Ad4、Ad7、Ad2等のアデノウイルスに由来するファイバータンパク質を発現する。
【0104】
したがって、特定の実施形態において、第2の異種配列は、アデノウイルスの構造タンパク質(例えば、ヘキソンまたはタンパク質等のカプシドタンパク質)のORFに組み込まれ、第2の異種配列は、感染性病原体由来の抗原をコードする。感染性病原体およびその抗原は、上述の通りであり得る。特定の実施形態において、抗原は、M2等のインフルエンザ表面タンパク質に由来する(例えば、M2の外部ドメイン、断片、またはエピトープ)。特定の実施形態において、M2抗原は、表4に列挙されるM2ペプチド配列のセット(例えば、SEQ ID NO:312、318、321、または327)から選択される。特定の実施形態において、第2の異種配列は、表4に列挙されるM2ペプチド配列のうちの1つより多くをコードする。例えば、第2の異種配列は、H1、H2、および/またはH3インフルエンザ株由来の少なくとも2つのM2配列(例えば、SEQ ID NO:312〜317からなる群から選択される少なくとも2つの配列)、H5インフルエンザ株(例えば、SEQ ID NO:318〜320からなる群から選択される少なくとも2つの配列)、H7インフルエンザ株(例えば、SEQ ID NO:321〜326からなる群から選択される少なくとも2つの配列)、またはH9インフルエンザ株(例えば、SEQ ID NO:327〜335からなる群から選択される少なくとも2つの配列)をコードすることができる。代替として、第2の異種配列は、複数の異なるインフルエンザ血清型由来のM2配列(例えば、SEQ ID NO:318〜320からなる群から選択される少なくとも1つの配列、SEQ ID NO:321〜326からなる群から選択される少なくとも1つの配列、SEQ ID NO:327〜335からなる群から選択される少なくとも1つの配列、またはそれらの任意の組み合わせと組み合わせた、SEQ ID NO:312〜317からなる群から選択される少なくとも1つの配列)をコードすることができる。他の実施形態において、第2の異種配列は、インフルエンザマトリックス配列(例えば、GAAAGILGFVFTLNAA−SEQ ID NO:336)またはインフルエンザNP配列(例えば、LELRSRYWAIRTRSGGNTNQQRAS−SEQ ID NO:337)の1つまたは複数のコピーをコードすることができる。さらに他の実施形態において、インフルエンザ抗原は、HTLまたはCTLエピトープである。例えば、第2の異種配列は、表1もしくは13から選択される1つもしくは複数のHTLエピトープ、または、表2〜3および5〜12もしくは表14から選択される1つもしくは複数のCTLエピトープをコードすることができる。
【0105】
他の実施形態において、第2の異種配列は、(例えば、ヒト集団における)既存の免疫が有意ではないアデノウイルス血清型に由来するアデノウイルスのヘキソンタンパク質の1つまたは複数の部分をコードする。例えば、ヒト集団において、アデノウイルス血清型Ad35に対する既存の免疫はほとんど存在しない。例えば、Vogels et al.(2003),J.Virology 77(15):8263を参照のこと。既存の免疫がほとんど存在しない他のアデノウイルス血清型は、例えば、Ad11、Ad34、Ad43、Ad48、Ad50、Ad26、Ad28、Ad45、およびAd49を含む。やや高めではあるが、それでも低いレベルの既存の免疫を有するアデノウイルス血清型は、例えば、Ad22、Ad24、Ad36、Ad37、Ad38、Ad46、Ad47、およびAd10を含む。したがって、本発明のアデノウイルスに基づくワクチンは、例えば、組換えアデノウイルスがAd4およびAd35の配列に関してキメラであるヘキソンタンパク質をコードするように、血清型Ad4に由来してもよく、かつAd35ヘキソンタンパク質由来の1つまたは複数の断片をコードする第2の異種配列を含むことができる。代替として、本発明のアデノウイルスに基づくワクチンは、例えば、組換えアデノウイルスがAd25およびAd68の配列に関してキメラであるヘキソンタンパク質をコードするように、血清型Ad25に由来してもよく、かつAd68のヘキソンタンパク質由来の1つまたは複数の断片をコードする第2の異種配列を含むことができる。当然、既存の免疫についての考慮は疾患の標的集団に依存し、特定のアデノウイルス血清型が標的集団における既存の免疫と関連するかどうかは標的集団に依存する。当業者はこの問題を容易に評価し、それに応じて第2の異種配列に対して適切なヘキソン配列を選択することができる。ヘキソン等のアデノウイルス構造タンパク質への異種配列の組み込みは、例えば、米国特許第6,127,525号に記載されている。
【0106】
特定の実施形態において、第2の異種配列は、超可変領域(HVR)をコードするヘキソンのORFの部分に組み込まれる。例えば、第2の異種配列は、挿入物として、またはヘキソンHVRをコードするORFの全部もしくは部分を置換するように、組み込まれてもよい。いかなるヘキソンHVRも、この様式で変更または置換することができる。特定の実施形態において、第2の異種配列は、ヘキソンHVR5コード領域に組み込まれる(および、任意でそれを置換する)。他の実施形態において、第2の異種配列は、ヘキソンHVR1、HVR2、またはHVR4コード領域に組み込まれる(および、任意でそれを置換する)。どのHVRを変更するかの選択は、異なるHVRの相対的な多様性に基づき得る。例えば、Ad5のHVR5は、Ad5のヘキソンHVRについて最も大きな多様性を有する。さらに他の実施形態において、1つより多くのヘキソンHVRが挿入または置換を有することができる。したがって、特定の実施形態において、第2の異種配列はヘキソンコード領域のキメラ断片をコードし、HVRコード領域のうちの少なくとも2つが、挿入を有するか、または置換されている。上述のように、第2の異種配列は、感染性病原体および/または他のアデノウイルス血清型由来の抗原をコードすることができる。したがって、ヘキソンHVRのうちの1つまたは複数が、感染性病原体由来の抗原の挿入を含有していてもよいか、またはそのような抗原もしくは別のアデノウイルス血清型由来のHVRによって置換されてもよい。特定の実施形態において、ヘキソンHVRのうちの1つまたは複数が、挿入もしくは抗原を含有していてもよいか、またはそのような抗原によって置換されてもよく、他のヘキソンHVRのうちの1つまたは複数が、別のアデノウイルス血清型(例えば、標的集団において既存の免疫がほとんど存在しない血清型)由来のHVRによって置換されてもよい。本発明のアデノウイルスベクターに使用することができるキメラのヘキソンコンストラクトの略図を
図13に示す。
【0107】
当業者はヘキソンHVRの境界を容易に特定することができる。ヘキソンHVRは、例えば、Ad5のヘキソンについて特定されている。例えば、米国特許第6,127,525号を参照のこと。したがって、他の血清型に由来するヘキソンタンパク質のAd5のヘキソンとのアラインメントを、そのような他の血清型においてヘキソンHVRを特定するために用いることができる。代替として、多様な一連のアデノウイルス血清型に由来するヘキソンタンパク質のアラインメントを、HVRの境界を特定するために用いることができる。Ad4に関して、例えば、HVRの境界は、GenBank配列AY594254のL5ヘキソン配列の136〜172(HVR1)、192〜208(HVR2)、227〜235(HVR3)、268〜278(HVR4)、300〜305(HVR5)、329〜334(HVR6)、および442〜480(HVR7〜9)アミノ酸残基に対応する。
【0108】
単一のヘキソンHVRに挿入することができる配列の量は、特定のHVR(例えば、HVR1、HVR2等)およびHVRの長さに依存する。一般的に、挿入は、HVRのポリペプチド配列(HVR配列が置換されている場合)と、さらに0〜75、1〜70、2〜65、3〜60、4〜55、または5〜50アミノ酸を足した長さに対応するポリペプチド配列をコードすることができる。ヘキソンHVRの挿入は、例えば、Ad5に関して、Matthews et al.(2008),Virology Journal 5:98に記載されている。
【0109】
感染性病原体由来の抗原をコードする配列は、ヘキソン配列と抗原配列とが互いに隣接するようにヘキソンHVRを置換することができる。この文脈において用いられる場合、「隣接した」という用語は、ヘキソン配列と抗原配列とを接続するリンカー配列が存在しない、ヘキソンコード配列と抗原コード配列との間のインフレーム融合を指す。代替として、リンカー配列を、ヘキソン配列と抗原配列とを接続するために使用してもよい。特定の実施形態において、リンカー配列は、トリペプチド「LGS」をコードする配列である。リンカー配列は、例えば、
図12に示すように、抗原配列の最初および末端に含まれてもよい。理論に束縛されることを意図するわけではないが、LGSリンカー配列は、構造上の柔軟性を提供し、結果として生じるヘキソン融合タンパク質の安定性を向上させ、かつ/またはヘキソンタンパク質配列と異種配列によってコードされたタンパク質配列との間の接合部の免疫原性を減少させると考えられる。他の実施形態において、リンカー配列は、ペプチド配列「GAAA」(SEQ ID NO:352)または「NAA」をコードする。そのようなリンカー配列は、例えば、異種配列によってコードされるタンパク質のN末端上のGAAA配列およびC末端上の「NAA」配列と組み合わせて使用されてもよい。他の適切なリンカー配列が、当業者によって特定され得る。
【0110】
特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、第3の異種配列を含む。したがって、特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、第1、第2、および第3の異種配列を含む。代替として、本発明のアデノウイルスベクターは、第2および第3の異種配列を含むことができる。第3の異種配列は、第1の異種配列または第2の異種配列について上述したような構造を有することができ、上述のいかなる様式でアデノウイルスゲノムに挿入されてもよい。
【0111】
本発明のアデノウイルスベクターは、現在既知であるかまたは後に発見されるいかなるアデノウイルス血清型または分離株に由来してもよい。例えば、特定の実施形態において、アデノウイルスベクターは、血清型Ad4に由来する。他の実施形態において、アデノウイルスベクターは、血清型Ad7に由来する。さらに他の実施形態において、アデノウイルスベクターは、血清型Ad2、Ad3、Ad4、Ad5、Ad6、Ad7、Ad11、Ad20、Ad21、Ad22、Ad23、Ad24、Ad25、Ad26、Ad28、Ad34、Ad35、Ad40、Ad41、Ad48、Ad49、またはAd50に由来する。特定の実施形態において、アデノウイルスベクターは、チンパンジーアデノウイルスに由来する。例えば、いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターは、Ad C1、Ad C3、Ad C6、Ad C7、またはAd68に由来する。
【0112】
本発明のアデノウイルスベクターは、ベクターが由来する野生型アデノウイルスの対応するサイズ(すなわち、ゲノムサイズ)とは異なるサイズであってもよい。しかしながら、一般的に、サイズにおける大幅な変動は、欠損したアデノウイルス複製と関連する。例えば、アデノウイルスゲノムの大部分を欠失させることは、適切なウイルスの複製および機能に必要なゲノム領域の除去につながる可能性がある。それに替えて、大きな挿入を加えることは、アデノウイルスのカプシドに効率的に収容されるには大き過ぎるゲノムをもたらすため、同様に適切なウイルスの複製および機能の妨げとなる。したがって、特定の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、ベクターが由来する野生型アデノウイルスゲノムの長さの約95%〜約110%、約97%〜約105%、約99%〜約103%、約99.5%〜約102%、または約100%〜約101%の長さを有する。他の実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、約34,000bp〜約38,000bp、約34,500bp〜約37,500bp、約35,000bp〜約37,000bp、約35,500bp〜約36,500bp、約35,750bp〜約36,250bp、または約36,000bpの長さを有する。
【0113】
導入された特定の変更(例えば、異種配列の数および種類、欠失の数および種類等)にかかわらず、本発明のアデノウイルスベクターは典型的には複製能力を有する。「複製能力を有する」という用語は、アデノウイルスベクターが対象内で複製する能力を指す。特定の実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターは、ヒト対象において複製することができる。他の実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターは、哺乳動物対象(例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜、ライオン、トラ、ゾウ、サイ、カバ、キリン、シマウマ、サル、類人猿等の動物園の動物、またはイヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ラット、マウス等のペット)において複製することができる。特定の実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターのインビトロでの(例えば、細胞培養において測定される)バーストサイズは、少なくとも1000、2000、3000、4000、5000、7500、10k、15k、20k、25k、30k、35k、40k、45k、50k、75k、100k、150k、200k、300k、400k、またはそれ以上である。他の実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターのインビボでの(例えば、対象における)バーストサイズは、少なくとも1000、2000、3000、4000、5000、7500、10k、15k、20k、25k、30k、35k、40k、45k、50k、75k、100k、150k、200k、300k、400k、またはそれ以上である。特定の実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターは、対象において免疫応答(例えば、体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または両方)を刺激することができる。特定の実施形態において、免疫応答は、アデノウイルスベクターに挿入されたかまたは組み込まれた異種配列によってコードされるエピトープに対する測定可能な応答(例えば、測定可能な体液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの組み合わせ)を含む。本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターは、標的対象におけるアデノウイルスに対する既存の免疫と関連する問題を克服するのに特に有用である。例えば、特定の実施形態において、同じ抗原を発現する複製不全アデノウイルスベクターの用量と比較してより低い用量の本明細書に記載されるような異種の抗原を発現する複製能力を有するアデノウイルスベクターを用いて、アデノウイルスに対する既存の免疫を有する対象において異種の抗原に対する効果的な免疫応答を誘発することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターの有効量は、複製不全アデノウイルスベクターの有効量よりも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍低い。
【0114】
組換えアデノウイルスベクターを構築、遺伝的操作、および増殖するための技術を、以下に記載する実施例に開示する。また、例えば、WO2008/010864号、米国特許出願第2006/0115456号、および米国特許第6,127,525を参照のこと(それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0115】
別の態様において、本発明は、1つまたは複数の本発明のアデノウイルスベクターを含むワクチンを提供する。本明細書で用いられる場合、「ワクチン」という用語は、本発明のアデノウイルスベクターおよび担体を含む組成物を指す。特定の実施形態において、アデノウイルスベクターはウイルスである。他の実施形態において、アデノウイルスベクターはゲノム単独であり、アデノウイルスカプシドを含まない。特定の実施形態において、担体はアジュバントである。そのようなアジュバントの例として、限定されないが、塩、例えば、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、水酸化カルシウム、および水酸化アルミニウム;天然ポリマー、例えば、藻類グルカン(例えば、βグルカン)、キトサン、またはイヌリン結晶;合成ポリマー、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、またはメチルアクリレートポリマー;ミセル形成カチオン性もしくは非イオン性のブロックコポリマーまたは界面活性物質、例えば、Pluronic、L121、122もしくは123、Tween80、またはNP−40;脂肪酸、脂質、または脂質およびタンパク質に基づく小胞、例えば、リポソーム、プロテオリポソーム、ISCOM、およびコクリエート構造;ならびに合成油または天然油および水溶液からなる界面活性物質で安定化させたエマルションが挙げられる。特定の実施形態において、本発明のワクチンは、対象に投与されると、対象において免疫応答(例えば、体液性免疫応答、細胞性免疫応答、または両方)を刺激することができる。特定の実施形態において、免疫応答は、ワクチンのアデノウイルスベクターに挿入されるかまたは組み込まれる異種配列によってコードされたエピトープに対する測定可能な応答(例えば、測定可能な体液性もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの組み合わせ)を含む。特定の実施形態において、本発明のワクチンは、感染性病原体または癌に対する防御を提供することが可能である。例えば、特定の実施形態において、ワクチンは、(例えば、異種配列によってコードされた)1つまたは複数の抗原に対する免疫応答を刺激することができ、ワクチンを投与されている対象が、後にそのような抗原に遭遇したときに、それまでにワクチンを投与されていなかった場合の免疫応答よりも強い免疫応答を有する。いくつかの実施形態において、本発明のワクチンは、アデノウイルスに対する既存の免疫を有する対象において、感染性病原体または癌に対する防御を提供することができる。他の実施形態において、本発明のワクチンは、病原体感染もしくは癌を寛解させること、および/または病原体感染もしくは癌の少なくも1つの症状を軽減させることができる。例えば、一実施形態において、本発明のワクチンは、病原体感染もしくは癌の症状および/または合併症が、そのような感染または癌に罹患している対象において緩和、軽減、または改善されるように、異種配列によってコードされる1つまたは複数の抗原に対する治療的免疫応答を誘発する。
【0116】
ワクチンのために使用されるアデノウイルスベクターは、当該技術分野で周知の技術に従って哺乳動物に投与するために調製および製剤化することができる。経口投与のための製剤は、所定量の本発明の組換えアデノウイルスベクターを含有するカプセルまたは錠剤;溶液、例えば、水、生理食塩水、オレンジジュース等の摂取可能な希釈物に溶解された有効量の薬物;適切な液体中の懸濁液;および好適なエマルションからなってもよい。
【0117】
本発明のアデノウイルスベクターは、上気道を迂回して腸におけるウイルス複製を可能にするために、前述のように、例えば、経口投与のための腸溶コーティングされたカプセルとして製剤化されてもよい。例えば、Tacket et al.,Vaccine 10:673−676,1992、Horwitz,in Fields et al.,eds.,Fields Virology,third edition,vol.2,pp.2149−2171,1996、Takafuji et al.,J.Infec.Dis.140:48−53,1979、およびTop et al.,J.Infec.Dis.124:155−160,1971を参照のこと。代替として、アデノウイルスベクターは、滅菌食塩水等の従来の溶液中に製剤化されてもよく、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を組み込むことができる。医薬組成物は、他の活性物質をさらに含むことができる。
【0118】
特定の実施形態において、本発明の製剤は、薬学的に許容される担体中にアデノウイルスベクター(例えば、ウイルス)を含む緩衝液を含む。緩衝食塩水、水等の様々な担体を使用することができる。そのような溶液は、一般的に滅菌されており、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌できるか、または滅菌濾過することができる。組成物は、生理的条件に近づくために必要とされる、pH調整剤および緩衝剤、浸透圧調整剤等の薬学的に許容される補助物質(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等)を含有してもよい。
【0119】
薬学的に許容される担体は、例えば、組成物を安定させるように、あるいはウイルスおよび/もしくは医薬組成物の吸収を増加または減少させるように作用する、生理学的に許容される化合物を含有することができる。生理学的に許容される化合物には、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストラン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート化剤、低分子量タンパク質、同時投与される任意の物質のクリアランスもしくは加水分解を減少させる組成物、または賦形剤、または他の安定剤および/もしくは緩衝剤が含まれ得る。組成物を安定させるため、または吸収を増加もしくは減少させるために、界面活性剤も使用することができる。当業者は、生理学的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば、アデノウイルス調製物の投与経路、および同時投与される任意の物質の特定の生理化学的特徴に依存することを認識するであろう。
【0120】
アデノウイルスベクターはまた、脂質製剤中で投与されてもよく、より具体的には、リポソームとともに複合化されるか、または脂質/核酸複合体に複合化されるか、またはリポソーム中にカプセル化されるかのいずれかであってもよい。本発明のベクターはまた、吸入によって投与されるように、単独で、または他の好適な構成成分と組み合わされて、エアロゾル製剤中に作製されてもよい。ワクチンはまた、鼻腔を介した投与のために製剤化されてもよい。担体が個体である経鼻投与に好適な製剤は、例えば、約10〜約500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗粉末を含み、鼻から吸い込む様式で、すなわち、鼻に近づけて保持した粉末の容器から鼻腔を通して急速に吸入することによって投与される。担体が液体である好適な製剤は、例えば、経鼻スプレー、点鼻薬として、またはネブライザーによるエアロゾル投与によって投与するための液体であり、活性成分の水性溶液または油性溶液を含む。いくつかの実施形態において、本発明のアデノウイルスベクターは、例えば、直腸内または膣内投与のための座剤として製剤化されてもよい。
【0121】
ワクチンは、単回用量中に約10
3〜約10
13(例えば、約10
3〜約10
4、約10
4〜約10
5、約10
5〜約10
6、約10
6〜約10
7、約10
7〜約10
8、約10
8〜約10
9、約10
9〜約10
10、約10
10〜約10
11、約10
11〜約10
12、約10
12〜約10
13)の組換えアデノウイルスを含む単位投与量を有することができる。投与量は、投与経路に基づいて変化し得る。例えば、舌下または鼻腔内投与のために製剤化されるワクチンは、経口投与のために製剤化されるワクチンよりも低い単回投与当たりの投与量のアデノウイルスを含有し得る。当業者は、過度の実験を行わずして、感染または癌の種類、および使用される投与経路に応じて、特定の患者のために適切な投与量を決定することができる。
【0122】
別の態様において、対象に本発明のワクチンを投与することを含む、対象において本明細書に記載されるいずれかの感染性病原体に対する免疫応答を誘発する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、感染性病原体に感染する危険性のある対象に十分な量の本発明のワクチンを投与することを含む、対象に感染性病原体に対するワクチンを接種する方法を提供する。別の実施形態において、対象は、感染性病原体によって誘発された感染を有する。したがって、例えば、一実施形態において、本発明は、感染性病原体によって誘発された感染を経験している対象において治療的免疫応答を誘発する方法を提供する。いくつかの実施形態において、ワクチンの投与後に、対象において感染の1つまたは複数の症状または合併症が軽減されるかまたは緩和される。本発明のワクチンは、ヒトまたは動物対象にワクチン接種をするために使用されてもよい。
【0123】
本発明のワクチンは、単独で投与され得るか、または他の免疫学的な抗原性のワクチンもしくは治療的組成物と同時投与もしくは順次投与されてもよい。そのような組成物は、免疫応答を増強または拡大するための他の物質、例えば、所定の時間間隔で投与されてもよいか、または持続的に投与されてもよいIL−2もしくは他のサイトカインを含むことができる(例えば、Smith et al.,N Engl J Med 1997 Apr.24;336(17):1260−1;およびSmith,Cancer J Sci Am.1997 December;3 Suppl 1:S137−40を参照)。ワクチンまたはベクターはまた、他のワクチンまたはベクターとともに投与されてもよい。例えば、本発明のアデノウイルスは、異なる血清型のアデノウイルスの投与の前または後のいずれかに投与されてもよい。アデノウイルス調製物はまた、例えば、さらなるワクチン剤を用いるワクチンレジメンにおける初回刺激のために使用されてもよい。
【0124】
アデノウイルス製剤は、全身的に、領域的に、または局所的に送達することができる。領域的投与は、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜下等の特定の解剖学的空間内、または特定の器官への投与を指す。局所的投与は、腫瘤への腫瘍内注射、皮下注射、筋肉内注射等の、限られた、または取り囲まれた解剖学的空間内への組成物の投与を指す。当業者は、局所的投与または領域的投与が、ウイルス調製物を循環器系に進入させ得ることも理解するであろう。典型的な送達経路は、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、または皮下経路を含む。他の経路は、口腔粘膜(例えば、扁桃腺)への投与を含む経口投与、鼻腔内、舌下、膀胱内(例えば、膀胱の内側)、直腸内、および膣内経路を含む。アデノウイルスの送達のために、しばしば吸入による投与を行うことができる。エアロゾル製剤は、例えば、ジクロロジフルオロ−メタン、窒素等の、加圧された薬学的に許容される噴霧剤中に入れられてもよい。それらはまた、ネブライザーまたは噴霧器等の非加圧調製物のための薬物として製剤化されてもよい。典型的には、そのような投与は、上述のような水性の薬理学的に許容される緩衝剤中でなされる。肺への投与は、例えば気管支鏡を用いて行うこともできる。
【0125】
本発明のワクチンは、例えば、予防ワクチンまたは治療レジメン、および投与経路等、目的の用途に応じて様々な単位剤形で投与することができる。治療的使用に関しては、各患者の特定の状態または疾患、および一般的な健康状態が投与レジメンに影響する。薬学的に許容される賦形剤中のアデノウイルスの濃度は、例えば、1用量当たり約10
3〜約10
13ウイルス粒子、1用量当たり約10
4〜約10
11ウイルス粒子、1用量当たり約10
6〜約10
10ウイルス粒子、1用量当たり約10
7〜約10
9ウイルス粒子、または1用量当たり約10
9〜約10
11ウイルス粒子であってもよい。他の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤中のアデノウイルスの濃度は、例えば、1用量当たり約10
3〜約10
9、約10
4〜約10
8、または約10
5〜約10
7感染単位であってもよい。
【0126】
本発明の複製能力を有するアデノウイルスベクターは、典型的には、インビボで投与される複製欠損アデノウイルス組換え体によってコードされた導入遺伝子の同等の発現レベルを達成するために必要とされるであろう用量よりも大分低い用量で投与される。複製能力を有するアデノウイルスベクターは、様々な投与量で投与することができる(例えば、米国特許第4,920,209号;Smith et al.,J.Infec.Dis.122:239−248,1970;Top et al.,J.Infect.Dis.124:155−160,1971;Takafuji et al.,J.Infec.Dis.140:48−53,1979;Tacket et al.,Vaccine10:673−676,1992を参照)。例えば、10
4〜10
9の50%組織培養感染量(またはプラーク形成単位)が投与されてもよい。典型的には、複製能力を有するアデノウイルスの経口投与量は、約10
7の50%組織培養感染量または10
7プラーク形成単位である。いくつかの実施形態において、複製能力を有するアデノウイルスの経口投与量は、約10
11プラーク形成単位である。アデノウイルス組換え体の典型的な鼻腔内投与は、約10
3〜約10
5プラーク形成単位の投与量であることが多い。ウイルスの正確な濃度、製剤の量、および投与頻度は、インビボのレベル、例えば、初回投与後のインサイツでの導入遺伝子発現およびベクターの保持率等に応じて、調節することもできる。
【0127】
ウイルスの量および濃度、ならびに所与の用量の処方、または「治療的に有効な」用量は、臨床医によって決定されてもよい。ワクチンの治療的に有効な用量は、ウイルスベクターに含まれる異種の核酸によってコードされるタンパク質(複数可)に対する免疫応答を刺激するアデノウイルスの量である。投薬スケジュール、すなわち投与レジメンは、例えば、患者の一般的な健康状態、身体的状態、年齢等の様々な要因に依存する。最新技術により、臨床医が、それぞれ個別の患者のための投薬レジメンを決定することが可能である。アデノウイルスは、ヒトワクチンのために何年も安全に使用されている。例えば、Franklin et al.,supra;Jag−Ahmade et al.,J. Virol.,57:267,1986;Ballay et al.,EMBO J.4:3861,1985;PCT公報WO94/17832を参照のこと。これらの具体例はまた、本発明の方法を実践する際に投薬レジメンを決定するための指標として用いられ得る。
【0128】
単回または複数回投与のアデノウイルス製剤が、予防用または治療用のワクチンとして投与されてもよい。一実施形態において、防御的または治療的免疫応答を誘発または増強するために、複数回用量(例えば、2回以上、3回以上、4回以上、または5回以上の用量)が対象に投与される。2回以上の用量は、例えば、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月間隔等の定期的な間隔で間を開けられてもよい。
【0129】
さらに別の態様において、本発明はまた、本発明のベクター、ベクターシステム、またはワクチンを含むキットを提供する。キットはまた、例えば、本発明のアデノウイルスを増殖させるための細胞を含んでもよい。キットはまた、そのキットを使用してアデノウイルスを作製するための方法を教示する説明書を含んでもよく、またワクチンのために、投与の適応症、投与の経路および方法等のための指示を含んでもよい。
【0130】
以下の実施例は、本発明の種々の態様を具体的に示すものである。当然、実施例は、本発明の特定の実施形態のみを例示しているに過ぎず、本明細書の最後に添付する特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0131】
実施例1:組換えアデノウイルスベクターの構築
大腸菌の相同組換えを用いて組換えアデノウイルスベクターを迅速かつ確実に生成した。一例として、軍隊用のAd4錠剤(ロット番号4958221、Wyeth Labs、米国政府認可番号3)から野生型Ad4ウイルスのDNAを単離し、相同組換えにより大腸菌での複製が可能な細菌プラスミドにクローニングした。得られたベクターをpPV−Ad4vaxと名付けた。
【0132】
野生型Ad4の左アームの合成遺伝子を合成し、合成断片を細菌プラスミドに挿入することによって、pPV−Ad4vaxベクターのための出発コンストラクトを作製した。得られたプラスミドをpPV−Ad4 Left Arm TMと名付けた。Ad4合成遺伝子断片の3'末端に付加されたXbaI/EcoRIポリリンカーは、後のAd4の右アーム断片の挿入を可能にするように提供された。
図1を参照のこと。軍隊用のAd4錠剤から単離したAd4ゲノムDNAから高正確性PCRによりAd4の右アーム断片を作製し、次いでXbaI/EcoRIポリリンカー部位にクローニングした。pPV−Ad4 RHT&LFT Arm TMと名付けた得られたプラスミドは、独特なXbaI、ClaI、およびSpeI制限部位によって分離したAd4の左アームおよび右アームの断片を含む。
図1を参照のこと。XbaIおよびSpeIによる直線化、ならびに脱リン酸化後、野生型Ad4ゲノムDNAとともに、直線化したpPV−Ad4 RHT&LFT arm TMベクターを組換え能力を有する細菌BJ1583に同時導入した。クローンは、TOP10細胞を再形質転換する前に、制限酵素の消化によりスクリーニングした。配列決定により、pPV−Ad4paxの最終確認を行った。
【0133】
シャトルプラスミドを用いて、Ad4ゲノムの異種配列および修飾をpPV−Ad4paxベクターに導入した。シャトルプラスミドは、シャトルベクターとpPV−Ad4vaxとの間の相同組換えを可能にするために、野生型Ad4の十分なDNAに接した異種配列を含有するように遺伝子操作した。異種配列は、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびインフルエンザヘマグルチニン(HA)をコードする遺伝子を含んでいた。HA Bbn(GenBank配列EU199366−「インフルエンザAウイルス(A/Brisbane/10/2007(H3N2))セグメント4ヘマグルチニン(HA)遺伝子、完全cds」)、HA VT/1203(GenBank配列EF541403−A/Vietnam/1203/2004(H5N1))およびHA VT/1194(GenBank配列EF541402−A/Vietnam/1194/2004(H5N1))から別個の全長HA遺伝子を人工的に合成した。シャトルプラスミドとpPV−Ad4paxとの間の相同組換えにより、所望の修飾を含有する組換えアデノウイルスベクターを生成した。複数酵素による制限分析およびDNA配列決定により、組換えアデノウイルスベクターが何であるかを確認した。
【0134】
実施例2:アデノウイルスMLTUの制御下で異種配列を発現する組換えアデノウイルスベクター
異種配列に対応し、アデノウイルス主要後期転写単位(MLTU)を介してそれらの発現を支持するために、Ad4ゲノムのE3領域の部分欠失を生じさせた。部分欠失は、1780塩基対からなり、GenBank配列AY594254のヌクレオチド位置28446〜30226に位置していた。部分欠失は、E3領域の既知の機能を保存する一方で、未知の機能を持つ3つのオープンリーディングフレーム(E3 24.8k、E3 6.3k、およびE3 29.7k)を除去するように設計した。
図2を参照のこと。欠失した領域はAd5のADP領域に類似するが、Ad4はADP様遺伝子をコードしない。
【0135】
異種配列が、MLPによって駆動される発現のための天然E3 24.8kスプライスアクセプターに機能的に結合するように、異種配列をE3の部分欠失にクローニングすることにより、種々の異種配列(例えば、HA Bbn、HA VT/1194、またはGFP)の発現を内因性アデノウイルスMLTUに関連付けた。天然E3 24.8kスプライスアクセプターはコンセンサスに近いため、配列は修飾を必要としない。翻訳の開始を最も強く促進するために、異種配列のATG開始コドン直前の配列をコンセンサスKozak配列に最適化した。得られた組換えウイルスベクターにおいて、ウイルス複製の初期段階で、内因性E3プロモーターによる初期の低レベル発現がいくらか起こり得るが、感染細胞内でDNA複製が開始してMLPが活性化すると、発現は著しく増強される。初期と後期のE3遺伝子産物の境界をより良く画定するために、29bpのAd5 E3AポリAシグナル配列を含むDNAの小片を異種配列の下流に組み込んだ。Ad5 E3AポリA配列と潜在的に類似する配列は、Ad4のさらに下流に見ることができ、初期段階の転写を制御し、異種配列の発現を最大化するのに役立つ可能性がある。
【0136】
MTLUによって駆動される異種配列の発現を特徴とする異なる組換えアデノウイルスベクターを表15に列挙する。Ad4−HA−Bbnベクターに関しては、以下に示すように、ゲノムサイズが野生型Ad4の軍隊用株よりも22塩基対だけ小さい。
a)−1780bp E3領域の部分欠失(AY594254のnt28446〜30226)
b)+10bp コンセンサスKozak配列の5'付加
c)+1701bp 全長HA遺伝子(A/Brisbane/10/2007(H3N2))
d)+18bp 残りのポリリンカー
e)+29bp Ad5 E3AポリAシグナル配列
【0137】
(表15)インフルエンザ抗原を発現する組換えアデノウイルスベクター
1天然配列またはコドン最適化配列のいずれかを示す遺伝子に関する記述。
【0138】
実施例3:外因性プロモーターの制御下で異種配列を発現する組換えアデノウイルスベクター
CMVプロモーター、Ad4トリパータイトリーダー配列、ポリリンカー、およびウシ成長ホルモン(BGH)ポリAシグナル配列からなる発現カセットのポリリンカーに目的の異種配列を組み込んだ、別の一連の組換えアデノウイルスベクターを作製した。得られた発現カセットをE3の全欠失または部分欠失のいずれかを含有するAd4ベクターに組み込んだ。E3の部分欠失については、実施例2で説明した通りである。3926塩基対からなるE3の全欠失は、GenBank配列AY594254のヌクレオチド位置27,356〜31,282に位置し、部分的にのみ欠失した変異を23.3k ORFのATG開始コドンにさらに含んでいた。
図2を参照のこと。E3欠失の種類にかかわらず、E3ポリAシグナル配列とL5ファイバー遺伝子の間のAd4ベクターに発現カセットを挿入した。
図2を参照のこと。
【0139】
CMVによって駆動される異種配列の発現を特徴とする異なる組換えアデノウイルスベクターを表15に列挙する。「最適化」とは、抗原配列のコドン最適化を意味する。
【0140】
実施例4:組換えアデノウイルスの生成
組換えアデノウイルスゲノムに対応する直鎖DNA断片を用いてA549(MCB)細胞をトランスフェクトすることにより、組換えアデノウイルスを作製した。外来性細菌のプラスミド配列を全て除去するために、直鎖DNA断片を切断した。A549細胞に細胞変性効果が観察されてから(典型的には7〜10日後)ウイルスを回収し、より高い収率のために連続継代を行った。ウイルスの本質が正確であることを確実にするために、改良したHirtプロトコルを用いてウイルスのDNAを単離し、PCR、制限消化、ならびに異種挿入断片およびフランキング領域の配列決定によって分析した。配列は、異種挿入断片およびフランキング領域がヌクレオチドレベルで正確であることが確認された。
【0141】
実施例5:組換えアデノウイルスからの異種配列の発現
組換えアデノウイルスに感染させたA549細胞を異種配列の発現について分析した。
図4は、4つの異なる組換えAd4H5HAアデノウイルスからのHAの発現を示す:内因性MLPプロモーターの制御下にあるA/Vietnam/1194/2004(PVXV0103)からのH5HA;CMVプロモーターの制御下にあるA/Vietnam/1194/2004(PVXV0113)からのH5HA;E3を全て欠失した、CMVプロモーターの制御下にあるA/Vietnam/1203/2004(PVXV0114)からのH5HA;E3の部分的に欠失した、CMVプロモーターの制御下にあるA/Vietnam/1203/2004(PVXV0124)からのH5HA。
図5は、アデノウイルスベクターPXVX0101の内因性MLPおよびアデノウイルスベクターPXVX0111のCMVプロモーターからのHAの発現を示す。リアルタイムPCR分析により、アデノウイルスベクターPXVX0101からのH3 HAの発現レベルが、遠位にあるアデノウイルスのファイバータンパク質と同様であることが確認された。
図6を参照のこと。
図7のFACSの結果に示すように、これらのコンストラクトを用いた感染から2日後、A549細胞の表面にHA抗原が提示された。これらの結果と一致して、PVXV0101に感染させたA549細胞は赤血球とともに凝集することが示された。
図9Aおよび9Bを参照のこと。ワンステップ増殖アッセイ(
図8A)を用いたところ、PXVX0101およびPXVX0111は、A549、HepG2、およびHuTu80細胞において野生型に近い増殖を示した(
図8B)。
【0142】
実施例6:Ad4ヘキソンのHVRへのインフルエンザ由来抗原の組み込み
図10は、ヘキソン修飾ベクターを作製するための1つのストラテジーを表す。このストラテジーは、Ad4ヘキソン配列へのサイレント変異の組み込みに依存して、HVR領域1〜6を含有するDNA断片を単一ステップで置換することができる。このストラテジーは、XbaIおよびXhoIクローニング部位の両方をAd4ヘキソンコード領域に組み込む。次いで、合成遺伝子の合成によって各XbaI/XhoI断片が産生される。
図11は、HVR領域に対する制限部位の位置を示す。また、必要に応じて、XhoI部位および内因性BstXI部位を用いてHVR7またはHVR7−9を置換することができる。異なるインフルエンザウイルスのM2e配列の周囲に一連のエピトープを設計した(
図12)。配列は、インフルエンザのH5、H7、およびH9株由来のM2タンパク質にコンセンサスを提供する。ヒトM2Eは、H1およびH3 M2eのコンセンサス配列を表す。スペーサー配列は、組み込まれた配列を最適な免疫応答の様式で配置するために含まれる。配列は、抗体がエピトープ間の境界まで産生されるのを防ぐように設計される。
図13は、作製することのできる一連の17ヘキソン修飾を示す。
【0143】
実施例7:A549細胞由来のAd4−H5−Vtn精製ウイルスは、マウスにおいてHA特異的抗体を誘導する
表16に示すように、精製したAd4−H5−Vtn PXVX0103およびPXVX0116ウイルスの免疫原性をマウスにおいて検査した。野生型Ad4ウイルス(陰性対照)およびH5 HAタンパク質(陽性対照)を対照とした。
【0144】
A549細胞をAd4−H5−Vtn PXVX0103(MLTUプロモーター)およびPXVX0116(CMVプロモーター)ウイルスに感染させた。その後、ウイルスを単離し、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。免疫原性試験の各グループにつき、6〜8週齢の雌C57Bl/6×Balb/c F1マウス6匹を使用した。1×10
10、1×10
9、1×10
8vp/マウスの用量漸増法を用いて、筋肉内(i.m.)投与経路でマウスを0日目に1回免疫し(初回刺激)、次いで14日目に再び免疫した(追加免疫)。10日後および27日後に、後眼窩から出血させて0.2mLの血液を採取し、HAエンドポイントELISAおよび血球凝集抑制(HAI)により血清抗体力価を決定した。
【0145】
簡潔に述べると、ELISAアッセイのために、高結合能96ウェルELISAプレートを1.5μg/ml(5×10
9粒子/ml)のアデノウイルスまたは5μg/mlの精製したHAタンパク質(Immune Technologies)のいずれかでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、ELISAプレートを洗浄し、PBS+3%BSAで2時間ブロックした。プレートに血清の段階希釈液を加えて2時間インキュベートした。徹底的に洗浄した後、HRP結合二次抗体を用いて抗原特異的血清抗体を検出した。HRP基質試薬でプレートを発色させ、酸で停止し、PolarStarプレートリーダー上で吸光度を450nmで測定した。エンドポイントELISA力価を、平均バックグラウンドを3標準偏差上回る読み取り値が得られる最大希釈率の逆数として表す。HAI力価の場合、血清の段階希釈液を一定用量(4HAU)のインフルエンザウイルスまたはHAタンパク質と反応させ、続いてニワトリ赤血球を加えた。中和抗体の存在下では、ウイルスが赤血球を凝集させる能力が阻害される。抗体のHAI力価は、凝集を阻害することができる血清の最終希釈率の逆数である。
【0146】
(表16)免疫原、用量、経路
a)H5−Vtn(A/Viet Nam/1194/2004株由来のヘマグルチニン(HA))
b)MLTUプロモーターによって駆動されるHA導入遺伝子を含むPXVX0103−Ad4
c)CMVプロモーターによって駆動されるHA導入遺伝子を含むPXVX0116−Ad4ベクター
【0147】
図14A、BおよびCに示すように、1回および2回の免疫後、それぞれ、約2.5×10
4および7×10
4のELISAにより測定したときに、高用量(1×10
10vp)の精製したAd4−H5−Vtn(PXVX0103)ウイルスで免疫したマウスが、強いHA特異的抗体力価を示した。より低い用量のウイルス(1×10
9vp)を用いた1回および2回の免疫接種後に、それぞれ、約2.5×10
3および2×10
4という、低めではあるものの有意なHA特異的反応も誘発された。使用した最も低いウイルス用量(1×10
8vp)では、2回の免疫後に抗体エンドポイント力価8×10
3という有意な反応が観察された。CMVによってH5導入遺伝子が駆動されると(PXVX0116)、約3倍高い抗体応答が誘発された。予想した通り、HA導入遺伝子を含有しない野生型Ad4精製ウイルス(1×10
10vp)で免疫したマウスは、検出可能なHA特異的抗体応答を誘発しなかった。2回の免疫後、H5タンパク質は、約7×10
4というHA抗体エンドポイント反応を誘発した。HAI力価に関しては、1×10
10vpの精製したAd4−H5−Vtn(PXVX0103)ウイルスで免疫したマウスが、1回および2回の免疫後、それぞれ、1:20および1:40という有意なHAI抗体力価を示した。2回の免疫後、Ad4−H5−Vtn(PXVX0103)が、1×10
9vpというより低い用量で1:20の有意なHAI反応を誘発した。野生型Ad4ウイルスにはHA特異的反応は検出されなかった。この場合も同様に、Ad4−H5−Vtn(PXVX0116)が約4倍高いHAI力価を誘導した。精製したH5タンパク質は、2回目の免疫後、1:40の有意な反応を誘発した。これらの結果は、測定可能なHAI抗体力価を誘導するために、精製したH5タンパク質の免疫を2回必要とした、感染細胞を用いた試験と一致するものであった。
【0148】
精製したAd4−H5−Vtnウイルスを用いたこれらの免疫原性試験は、マウスにおけるウイルス複製がないにもかかわらず、ウイルスがインビボで細胞に進入し、H5特異的抗体応答を誘発するのに十分な導入遺伝子が発現されることを示す。
【0149】
実施例8:マウスにおけるアデノウイルス血清型4インフルエンザH5ヘマグルチニンワクチンの評価
アデノウイルス血清型4H5HAワクチンの設計
実施例7に記載したAd4−H5−Vtn(PXVX0103)組換えアデノウイルスを、マウスモデルにおけるワクチンとしての安全性、免疫原性、および有効性について評価した。
図15に表すように、A/VietNam/1194/2004 H5N1インフルエンザウイルス由来のHA遺伝子を収容するように欠失させたAd4ウイルスのE3 24.8K、6.8K、および29.7K遺伝子を用いてAd4H5HAワクチンを構築した。HA導入遺伝子の発現を駆動するために、E3 24.8K遺伝子のスプライスアクセプター部位を保持した。多塩基切断部位を除去してHAの天然コード配列を用いた。Ad5に由来するE3Aポリアデニル化シグナル配列をHAコード配列の下流に配置した。DNAの直接配列決定により、HA導入遺伝子および接しているベクター配列の完全性を確認した。正しい組換えを特定し、単離してから、適切な制限酵素で消化して外来性細菌のプラスミド配列を除去したが、HA導入遺伝子をコードする完全な組換えAd4ゲノムDNAは保持した。
【0150】
性質決定のためのウイルスを生成するために、この直鎖Ad4H5HAのDNA配列による哺乳動物A549細胞(ATCC、Manassas,VA)のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの1日前に、DMEM(Hyclone、Logan,UT)/10%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone)中、6ウェルプレート(BD Biosciences、San Jose,CA)の各ウェルに3×10
5のA549細胞を播種し、5%CO
2の加湿雰囲気中37℃でプレートをインキュベートした。翌日、細胞は50〜90%コンフルエントとなり、その後、製造者(Roche、Indianapolis,IN)の指示通りに、1ウェル当たり8μLのFugene HDトランスフェクション試薬を用いて、1ウェル当たり2μgの直線化したAd4H5HAのDNAでトランスフェクトした。細胞変性効果(CPE)が観察されてから(通常はトランスフェクションから7〜10日後)、16cmの細胞スクレーパー(VWR、West Chester,PA)を用いて感染細胞を取り出すことによって、6つのウェルのうち少なくとも3つからウイルスを回収し、その後、3回の凍結融解サイクルで細胞を破壊した(液体窒素および37℃の水浴)。4℃、1,800gで10分間遠心分離にかけてライセートを清澄化し、ツーステップウイルス拡張手順のために約6mLの上清を収集した。最終容量15mLのDMEM/10%FCSを含む75cm
2フラスコ(BD Biosciences)中で、上清3mLを用いて懸濁液中1.5×10
6のA549細胞を感染させた。CPEが観察されてから3〜7日以内に、16cmの細胞スクレーパーを用いて細胞を除去し、凍結融解および清澄化手順に供してウイルス上清を得た。
【0151】
Ad4H5HA組換えウイルスからのHAの発現を評価するために、インビトロのフローサイトメトリーによりHAタンパク質の発現を評価した。Ad4H5HAウイルス粒子(vp)の用量漸増法を用いてA549細胞を感染させ、48時間後に一次H5特異的抗体および二次PE標識抗体を用いて分析した。
図16Aに示すように、Ad4H5HAワクチンに感染させたA549細胞は、用量依存的な様式でHAタンパク質を発現した。使用した最も高いワクチン用量に対応する検出されたHAタンパク質の平均蛍光強度(MFI)は約34.0であり、それと比較して、陰性対照として用いたAd4野生型に感染した細胞では約2.0のMFIが検出された。
【0152】
Ad4H5HA組換えウイルスによるHAタンパク質の誘導をインビトロで確認し、A549細胞における15回の連続継代後の安定した発現を確実にするために、ウエスタンブロット分析を用いた。Ad4H5HA組換えウイルスに感染したA549細胞を収集し、全細胞抽出物を調製した。種々の量の感染細胞抽出物をSDS−PAGEゲルで分離し、ニトロセルロースに移した。H5HA特異的抗血清でHAタンパク質を検出する一方で、抗βアクチン抗体をタンパク質のローディング対照として使用した。
図16Bに示すように、Ad4H5HA組換えウイルスに感染した細胞ライセート(2.5および5%)に由来するHAタンパク質は、精製した組換え(r)H5タンパク質陽性対照(100および200ng)と比較して、適切なサイズである80kDaで検出された。陰性対照である未感染A549細胞(2.5および5%)に由来するタンパク質を用いたところ、HA特異的タンパク質は検出されなかった。Ad4H5HAに感染したA549細胞ライセートにおいて、切断されたHA0に対応するHA1およびHA2断片のわずかなバンドも観察された。ウエスタン分析により、A549細胞における15継代後であっても、Ad4H5HA組換えウイルスがH5HAを安定して発現したことも確認された。これらの結果と一致して、PVXV0103に感染させたA549細胞は、赤血球とともに凝集することが示された。
図17を参照のこと。
【0153】
ワクチンとしてのAd4H5HA組換えアデノウイルスの有効性
組換えウイルスの安全性を検討するために、A549、H1299、HepG2、HuTu 80、およびMRC−5のいくつかのヒト細胞株において、Ad4H5HAウイルスの増殖をAd4野生型ウイルスと比較した。Ad5ウイルスは拡散アッセイ法によって評価することができるが、Ad4は同様の様式では挙動せず、またインビトロでは容易に溶解しない。したがって、増殖動態を評価するために従来のワンステップ増殖アッセイを用いた(
図8Aを参照)。Ad4H5HAウイルスの増殖は、Ad4野生型ウイルスと比べて同様かまたは減弱であった。
図18を参照のこと。具体的には、感染後48および72時間の時点で評価したとき、細胞溶解後に測定した感染粒子は、検査した5つの細胞株のうち4つにおいてAd4野生型ウイルスがAd4H5HAウイルスよりも1.1〜2.3倍多かった(
図18)。5つめの細胞株H1299に関しては、測定したAd4野生型の感染粒子は、Ad4H5HAと比べて、48および72時間の時点で、それぞれ7〜6.5倍高かった。いかなる場合においても、Ad4H5HAベクターの増殖はAd4野生型ウイルスよりも高くなかった。
【0154】
免疫原性および有効性評価プロセスの最初の段階は、ワクチンの効力に与える影響を評価するためにAd4野生型ウイルスに対する既存の免疫を確立することであった。したがって、1×10
9vpのAd4野生型ウイルスでマウスを鼻腔内免疫し、1ヵ月後にAd4特異的中和抗体力価および細胞性免疫を決定した。免疫した10匹のマウスから抗血清を採取したところ、測定されたAd4特異的中和抗体力価は、それぞれ866および569の算術幾何平均で、133〜3140の範囲であった(
図19A)。有意なAd4特異的細胞性免疫もまた誘発された。2匹のマウスからの未精製脾細胞をプールし、ELISPOTアッセイに用いた。熱処理により不活性化したAd4野生型ウイルスを用いてインキュベーションしたところ、Ad4野生型で免疫したマウスからは1×10
6の脾細胞当たり140個のIFN−γスポット形成細胞(SFC)が検出されたのに対し、非免疫マウスからの脾細胞を用いた場合、18個のIFN−γSFCが検出された(
図19B)。これらのマウスおよび既存のAd4野生型免疫を持たない未処理マウスを、Ad4H5HAワクチンによる免疫のためにその後使用した。
【0155】
Ad4H5HAワクチンの単回免疫から6週後、有意な血球凝集抑制(HAI)抗体力価が測定された。
図20Aに示すように、用量反応が観察された:10
9vp(40HAI)、10
8vp(20HAI)、および10
7vp(10HAI)。最も低いワクチン用量である10
6vpは免疫原性ではなかった。Ad4野生型の既存の免疫がワクチンの効力に与える影響が見られ、それによって10
9vpの用量ではHAI抗体力価20が測定されたが、より低い用量は免疫原性ではなかった。H5N1リアソータントウイルスによるチャレンジ後、HA1反応は典型的には1回の希釈で高くなり、例えば、10
9vpのワクチン用量で40〜80および20〜40であった。この場合も同様に、最も低いワクチン用量である10
6vpは免疫原性ではなかった。比較のための陰性および陽性対照として、それぞれ、1×10
10vpのAd4野生型ウイルスおよび15μgの組換えH5HAタンパク質でマウスを免疫した。予想した通り、Ad4野生型ウイルスは、検出可能なHAI抗体力価反応を誘発しなかった。組換えタンパク質は、10および20HAI抗体力価のインフルエンザによるチャレンジの前および後に、それぞれHAI抗体力価反応を誘発した。
【0156】
ワクチンによるH5HA特異的細胞性免疫の誘発を、A/Vietnam/1194/2004HAタンパク質に由来する4つの15merペプチドのプールに特異的に評価した(
図20B)。プール中のペプチドは、HA.156、配列KSSFFRNVVWLIKKN(SEQ ID NO:2);HA.241、配列RMEFFWTILKPNDAI(SEQ ID NO:5);HA.325、配列NRLVLATGLRNSPQR(SEQ ID NO:8)、およびHA.529、配列IYQILSIYSTVASSLALAI(SEQ ID NO:338)からなっていた。10
7、10
8、および10
9vpの用量のAd4H5HAワクチンでマウスを免疫すると、80個を超えるSFCのIFN−γ応答が測定された。既存のAd4野生型免疫もまたワクチンによる細胞性免疫の誘発に影響を与え、用量10
9vpのAd4H5HAワクチンのみが免疫原性であり、約100個のIFN−γSFCを誘導した。H5N1リアソータントウイルスによるチャレンジから5日後に細胞応答が増強された。既存のAd4野生型免疫の存在下または非存在下において、10
7、10
8および10
9vpの用量のAd4H5HAワクチンが、300〜600個のIFN−γSFCを誘導した。既存のAd4野生型免疫ならびに10
7および10
8vpのワクチン用量の場合、SFC50個未満という最小のIFN−γ応答がSFC500個を超えて増強されることから、たとえより低いワクチン用量であっても細胞応答を刺激したことが示唆されることに留意されたい。全ての場合において、10
6vpの用量は免疫原性ではなかった。比較対照として、15μgの組換えH5HAタンパク質で免疫したマウスが、H5N1リアソータントウイルスによるチャレンジの前および後に、80および680個のIFN−γSFCを誘導した。Ad4野生型ウイルスのみで免疫し、その後にH5N1リアソータントウイルスをチャレンジしたマウスには、ウイルスチャレンジから5日後に有意なHA特異的細胞応答は検出されなかった。
【0157】
致死的なH5N1リアソータントウイルスによるチャレンジ後の体重減少、生存率、および肺のインフルエンザウイルス力価の減少は、ワクチン用量依存性であった。H5N1リアソータントによるチャレンジから14日間、動物の体重を測定した(
図21A)。動物が2日連続して元の体重の20%以上の減少を記録した場合、それらを安楽死させた。典型的には、チャレンジから6〜12日後に動物を屠殺する必要があった。Ad4野生型ウイルスによる前処理を行わなかった動物には、10
7、10
8、および10
9vpのワクチン用量で、体重減少は全く観察されないか、またはほとんど観察されなかった。Ad4野生型で前処理した場合は、10
9vpの高いワクチン用量のみが体重減少を阻止した。10
8vpのワクチン用量(最大平均6%の体重減少)および10
7vpのクチン用量(最大平均17%の体重減少)のAd4野生型で動物を前処理した場合には、より低いワクチン用量でより深刻な体重減少が記録された。10
6vpのワクチン用量を投与された動物では、深刻な体重減少は阻止されなかった。組換えH5HAタンパク質で免疫したマウスには体重の減少が見られなかったのに対し、Ad4野生型で免疫したマウスは疾患に陥った。
【0158】
致死的なH5N1リアソータントウイルスによるチャレンジ後のマウスの生存を
図21Bに示す。10
8および10
9vpのワクチンを投与されたマウスのグループは完全に防御され、マウス10匹のうち10匹が生き残った。ベクターに対する既存の免疫を確立するためのAd4野生型を用いたマウスの前処理は、これらの用量では動物の生存に影響を及ぼさなかった。しかしながら、10
7および10
6vpというより低いワクチン用量では、ワクチンはそれ程効果的ではなかった。Ad4野生型ウイルスに対する既存の免疫は10
7vpのワクチン用量に影響を及ぼし、Ad4野生型特異的免疫の存在下において10匹のマウスのうち3匹のみが生き残ったのに対し、Ad4野生型ウイルスでマウスを前処理しなかった場合は、10匹のマウスのうち10匹が生き残った。最も低いワクチン用量である10
6vpは、防御性ではなかった。Ad4野生型ウイルスによる免疫は動物を防御せず、10匹のうち生き残ったのは0匹であった。組換えH5HAタンパク質を用いたマウスの免疫は、マウスを完全に防御し、10匹のうち10匹が生き残った。
【0159】
最後に、有効性の尺度として、H5N1リアソータントウイルスによるチャレンジから5日後に、各グループを代表する2匹のマウスから肺を採取し、インフルエンザウイルス力価を評価した(
図21C)。10
7、10
8、および10
9vpのより高いAd4H5HAワクチン用量で、85%を超えるインフルエンザウイルス力価の減少が観察された。例外として、動物グループをAd4野生型で前処理した場合、10
7vpのワクチン用量がインフルエンザウイルス力価を約40%減少させたことから、既存のAd4野生型免疫がワクチンの効力に与える影響が示唆される。10
6vpのワクチン用量または10
10vpのAd4野生型陰性対照で免疫した場合、インフルエンザウイルス力価の減少は観察されなかった。組換えH5HAタンパク質で免疫したマウスもまた、肺において85%を超えるチャレンジウイルスの減少を示した。
【0160】
要約すると、Ad4H5HAワクチンによるH5HA特異的な体液性免疫および細胞性免疫の誘発は、ワクチンの有効性を一般的に予測した。Ad4野生型ベクターに対する既存の免疫は、免疫原性および有効性のどちらにも影響を及ぼさなかったが、より低いワクチン用量で影響がより顕著であったことから、Adベクターに対する既存の免疫は、より高いワクチン用量を使用することによって克服され得ることが示唆される。
【0161】
実施例9:Ad4−H5−Vtn(PXVX0103)は、複数経路で送達されたときに、哺乳動物のH5 HA導入遺伝子に対する免疫応答を誘発した
組換えAd4−H5アデノウイルスが種々の投与経路で送達されたときに免疫応答を誘発する際の有効性を評価するために、4つの投与経路のうちの1つを用いて、Ad4−H5−Vtn(PXVX0103)ウイルス粒子を含む異なる製剤でウサギを免疫した。Ad4−H5−VtnウイルスワクチンをMRC−5細胞中で増殖させ、動物試験において使用するために陰イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過によって精製した。原薬(BDS)および腸溶コーティングされたカプセルをPaxVaxで生成し、さらなるBDSをNiro(Copenhagen,Denmark)での噴霧乾燥粉末の生成に使用した。種々の製剤の構成成分を以下に記載する。
液状BDS: 5×10
10のAd4−H5−Vtnウイルス粒子、ショ糖、塩化マグネシウム六水和物、リン酸カリウム、グリセリン
噴霧乾燥粉末: 5×10
10のAd4−H5−Vtnウイルス粒子、マルトデキストリン、βシクロデキストリン、ショ糖、塩化マグネシウム六水和物、リン酸カリウム、グリセリン、tween 80
腸溶コーティングされた噴霧乾燥粉末: 5×10
10のAd4−H5−Vtnウイルス粒子、Eudragit L30D55、マルトデキストリン、βシクロデキストリン、ショ糖、塩化マグネシウム六水和物、リン酸カリウム、グリセリン、tween 80
腸溶コーティングされたカプセル: 1×10
10のAd4−H5−Vtn ウイルス粒子(1カプセル当たり)、AcrylEZE White、HPMCカプセル、マルトデキストリン、βシクロデキストリン、ショ糖、塩化マグネシウム六水和物、リン酸カリウム、グリセリン、tween 80
【0162】
上記の異なるAd4−H5−Vtnワクチン製剤を用いて、ニュージーランド白ウサギの成獣オスを5×10
10vpで免疫した(1グループ当たり3匹):原薬(BDS)、腸溶コーティングされた(E.C.)および腸溶コーティングされていない(非E.C.)粉末、ならびに腸溶コーティングされたカプセル(1×10
10vp/カプセルを5カプセル)。動物は、30日開けて2回免疫した。以下の複数の投与経路を使用した:筋肉内(I.M.)、鼻腔内(I.N.)、舌下(S.L.)、または経口経管栄養(O.G.)。2回目の免疫から2週間後、ELISA免疫アッセイのためにウサギを出血させた。例外として、I.N.で送達されたBDSについて示されるデータは、1回のみの免疫から2週間後に採取した抗血清からのものである。
【0163】
ELISAプレートを2μg/mLの精製したrHAタンパク質(eEnzyme)でコーティングし、4℃で一晩インキュベーションしてから、洗浄し、10%ヤギ血清を含むPBSで2時間ブロックした。プールした各血清から3倍段階希釈シリーズを作製し、2時間のインキュベーションの前にプレートに加えた。徹底的に洗浄した後、HRP結合二次抗体を用いて抗原特異的血清抗体を検出した。HRP基質試薬でプレートを発色させ、酸で停止し、450nmで吸光度を測定した。エンドポイント力価を、平均バックグラウンドを3標準偏差上回る読み取り値が得られる最大希釈率の逆数として表す。結果は、Ad4−H5−Vtnワクチンが種々の経路で送達されたときに、ウサギにおいて免疫原性であったことを示す(
図22)。
【0164】
別の一連の実験において、組換えAd4−H5アデノウイルスが舌下、膣内、および直腸内投与経路で送達されたときに免疫応答を誘発する際の有効性を調べた。舌下、膣内、または直腸内投与により、マウスをAd4−H5−Vtn(PXVX0103)ウイルス粒子で免疫した。舌下投与のために、原薬(BDS)製剤緩衝液7μL中の1×10
10のAd4−H5−Vtnウイルス粒子を舌下に配置し、典型的には1分の回復時間の間容量を維持し、麻酔下のマウスを0日目に免疫し(初回刺激)、43日目に増強した(追加免疫)。膣内投与のために、免疫の5日前に2.5mgのDepo−Proveraを皮下投与して膣壁を薄くした。最初に綿棒で粘液を除去し、次いでBDS製剤緩衝液(容量20μL)中の1×10
10vpのAd4−H5−Vtnを膣内に投与することにより、麻酔下のマウスを0日目に膣内免疫し(初回刺激)、14日目に増強した(追加免疫)。マウスを麻酔下で10分間仰臥位のまま維持した。直腸内投与のために、BDS製剤緩衝液20μL中の1×10
10vpのAd4−H5−Vtnを直腸内に投与することにより、麻酔下のマウスを0日目に直腸内免疫し(初回刺激)、14日目に増強した(追加免疫)。マウスを麻酔下で10分間仰臥位のまま維持した。全てのマウスはイソフルランを用いて麻酔し、免疫の前夜に食餌を除くことにより絶食させた。
【0165】
2回目の免疫(例えば、追加免疫)から2〜4週間後にマウスを出血させ、組換えH5(A/VN/1203/04)を用いて上述のようにELISAを行った。結果は、Ad4−H5−Vtnインフルエンザワクチン(PXVX0103)は、舌下、膣内、および直腸内投与経路で送達されると、マウスにおいて有意なH5HA特異的抗体応答を誘発することを示す。
図23を参照のこと。
【0166】
実施例10:Ad4−H5−Vtnワクチンの第I相臨床安全性試験
第I相二重盲検プラセボ対照用量漸増試験を開始した。10
7、10
8、10
9、および10
10ウイルス粒子(vp)の4つの投与量のコホートを連続的に登録した。各コホートは、約24人のワクチンレシピエントおよび8人のプラセボレシピエント、ならびに全員の家庭内接触者(HHC)から構成される。各投与量のコホートにおいて、ワクチンまたはプラセボのレシピエントは、56日開けて(0日目、56日目、および112日目)3回のワクチン接種を受ける。免疫機能の測定は、HAIおよびマイクロ中和試験によるH5 HAに対する抗体;Ad4中和抗体;鼻腔、直腸、および膣内分泌物におけるHAおよびAd4に対するIgGおよびIgAの評価;ならびにHAおよびAd4に対するCMI応答を含む。PCR、そして直腸および咽頭スワブならびに血液の培養から、Ad4−H5−Vtnワクチンウイルスの複製および排泄を評価する。ベースラインのAd4中和抗体力価による層別化によって免疫学的およびウイルス学的パラメータを分析する。現在、132人のワクチン/プラセボレシピエントおよび67人のHHCが登録されている。コホート1〜3には3つ全ての用量を投与し、コホート4には最初の用量を投与した。現在、コホート4は用量2を投与されており、コホート5(10
11vp)の登録が進行中である。
【0167】
主要な安全性パラメータは、反応源性、深刻なまたは重度の有害事象、および臨床安全性検査の異常値である。これらはDMCによる5回のレビューの前に毎回正式に評価されており、また「リアルタイム」で継続的に評価される。最も最近のDMCによるレビューでは、コホート1、2、および3からの3回全ての投薬後、そして、コホート4からの最初の投与後の安全性データが検討された。安全性についての懸念または用量制限毒性は認められなかった。有意な検査異常値または深刻なもしくは重度の有害事象は見られなかった。反応源性は、概ね軽度から中程度のままであった。ワクチン接種から7日後および/または14日後に、PCRによって監視したワクチンウイルスの排出が直腸スワブに検出された。ワクチンウイルスの全身または呼吸器への伝播の証拠は見られなかった。ワクチン接種を受けた1人の対象(直腸スワブおよび血液はPCR陰性であった)からのPCR陽性咽頭スワブの例を除いて、全ての咽頭スワブおよび血液検体はAd4−H5−Vtnウイルスについて陰性であった。このワクチン接種を受けた対象は、完全に無症状のままであった。これらのデータに基づいて、DMCは、コホート4に用量2を投与すること、およびコホート5を登録することを承認した。試験中の異なる時点におけるコホートの各々についてのベースラインAd4抗体の状態を表17に示す。
【0168】
(表17)Ad4−H5−Vtnワクチンの第I相臨床安全性試験
*コホート1には統計的異常があったため、Ad4陽性患者数が少ない。
【0169】
実施例11:炭疽菌抗原を発現する組換えアデノウイルスの構築および評価
実施例1〜3に記載したのと同様の方法を用いて、バチルス・アントラシス由来の防御抗原(PA)を発現するE3領域の全欠失または部分欠失を含む組換えAd4ウイルスを作製した。PA導入遺伝子の修飾は、ヒト細胞における発現の最適化のためのコドン修飾、細胞表面発現のためのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの付加、およびサーモリシン切断部位を除去するための2つのフェニルアラニンの欠失を含んだ。ヒトCMVまたは天然MLTUプロモーターによって導入遺伝子の発現を駆動した。MTLUによって駆動されるかまたはCMVによって駆動される異種配列の発現を特色とする異なる組換えアデノウイルスベクターを表18に列挙する。
【0170】
(表18)炭疽菌抗原を発現する組換えアデノウイルスベクター
FDE3=E3 12.1kを除くE3領域の全欠失、PDE=E3領域の部分欠失
【0171】
2.5×10
7の組換えAd4−PAアデノウイルスに感染させたA549細胞(5×10
5)を防御抗原の発現について分析した。収集する前に細胞を37℃で48時間インキュベートした。各試料からの全細胞ライセート(
図24、左パネル)または細胞培養上清(
図24、右パネル)のいずれかをウエスタンブロットで分析し、その後SDS−PAGEゲル上で分離した。抗PAマウスモノクローナル抗体でニトロセルロース膜をプローブした。陽性対照として並行して使用した市販の組換えPAを参照して組換えタンパク質の発現の確認を行った。A549およびAd4野生型に感染したA549は陰性対照を意味し、rPAに対する特異性を示す。総タンパク質レベルでの相対的な量としてタンパク質レベルを表す。
図24を参照のこと。
【0172】
図25に示したFACS分析によって示されるように、これらのコンストラクトを用いた感染から1日後、A549細胞の表面にPA抗原が提示された。1細胞当たりの発現レベルの指標である蛍光強度の測定値を表す平均蛍光強度(MFI)を、グループの各々について示す。ワンステップ増殖アッセイを用いて、A549(肺癌)およびMRC−5(胚性肺線維芽細胞、二倍体)細胞中のPXVX0212およびPXVX0214組換えアデノウイルスの増殖動態を評価した(
図8Aを参照)。A549またはMRC−5細胞のいずれかのrAd4−PAウイルス感染後、rAd4レベルの経時変化をTCID
50により測定した。最小感染価レベルを参照として細胞バーストサイズを計算し(A549は1時間、MRC−5は24時間)、感染における相違を補正した。バーストサイズから、PXVX0212およびPXVX0214の両方がAd4野生型と比較して増殖率の減少を示すこと、そして1細胞当たりのより低い収率をもたらすことが確認された。
図26を参照のこと。
【0173】
実施例12:炭疽菌によるチャレンジに対する防御ワクチンとしてのAd4−PA組換えアデノウイルスの有効性
バチルス・アントラシス由来の防御抗原(PA)を発現する組換えアデノウイルスが、炭疽菌によるチャレンジに対して防御免疫応答を誘発することができるかどうかを決定するために、実施例11に記載した組換えアデノウイルスベクターのうちの1つに感染させた細胞の全細胞ライセートでマウスを免疫した。具体的には、5×10
8ウイルス粒子のAd4野生型(Ad4 WT)、Ad4−PA(PXVX0212)、またはAd4−PA−GPI(PXVX0214)に感染させた5×10
6のA549細胞と同等の全細胞ライセートの腹腔内注射により、マウス(動物6匹/グループ)を免疫した。陽性対照として、10μgの組換え防御抗原(rPA)を皮下投与(S.C.)した。免疫から5週間後、マウスの静脈内に致死毒素(120μgのPAと60μgの致死因子(LF)の組み合わせ)をチャレンジし、毎日監視した。実験の結果を
図27に示す。Ad4−PA−GPI細胞ライセートは、致死毒素によるチャレンジからマウスを完全に防御した。
【0174】
IP免疫から21日後に採取した血清から、免疫したマウスにおける抗体応答を測定した。ELISA(
図28、左パネル)およびインビトロでのマクロファージに基づく毒素中和アッセイ(
図28、右パネル)の両方により抗体応答を分析した。動物6匹/グループからEC
50を計算した。組換えアデノウイルスに感染させたA549細胞の全細胞ライセートによる免疫から3週間後に、PA特異的IgG反応が検出可能であった。
【0175】
別の一連の実験において、精製した組換えアデノウイルスが防御免疫応答を誘発する際の有効性を調べた。
図29の略図に示すように、0日目に5つの異なる抗原(Ad4野生型、Ad4−CMV−PA(PXVX0212)、Ad4−CMV−PA−GPI(PXVX0214)、rPAおよびrPA+アラム)のうちの1つでマウス(n=25/グループ)を免疫した。動物1匹当たり50〜62.5μLのPBS中1×10
10ウイルス粒子(vp)としてrAd4ウイルスを鼻腔内投与(I.N.)した。野生型Ad4ウイルスを陰性対照とした。最終容量100μLのPBS中にて皮下注射された陽性対照は、10μgの組換え防御抗原(rPA)を単独で、または水酸化アルミニウムゲル(Rehydragel HPA)1mgに吸収させたrPA10μgのいずれかを含有していた。免疫から27日後に、マウス2匹/グループからプールした脾細胞において細胞媒介性免疫応答(IFN−γ ELISPOTおよびIL−4 ELISPOT)を測定した。毒素による1回目のチャレンジ(免疫から20日後、n=10/グループ)で生き残ったマウスを54日目に細胞性免疫応答についてアッセイした。免疫から14日後および40日後に、同じ9匹の動物/グループ(5グループ)をELISAおよび毒素中和アッセイの両方のために出血させた。免疫から46日後に、出血させた9匹のマウスからの7匹のマウスを含む、1グループ当たり合計10匹のマウスにも、致死毒素(120μgのPAと60μgの致死因子(LF)の組み合わせ)をチャレンジした。チャレンジから30日間生存を監視した。
【0176】
精製したAd4−PAおよびAd4−PA−GPIウイルスを用いた鼻腔内免疫から14日後および40日後に、血清中の抗体応答を測定した(
図29を参照)。ELISAにより抗PA IgG反応を分析(
図30、左パネル)する一方で、インビトロでのマウスマクロファージに基づく毒素中和アッセイにより毒素中和抗体(TNA)を測定した(
図30、右パネル)。試料の段階希釈のデータに合致するS字形の用量反応曲線を用いてEC
50を計算した。免疫から14日後、最小の抗PA IgG反応のみが観察され、測定可能なTNA反応は観察されなかった(
図30)。免疫から40日後、rPAまたはアラムを含むrPAと比較して、Ad4−PA(PXVX0212)およびAd4−PA−GPI(PXVX0214)の両方に有意な抗PA IgGおよびTNA反応が観察された(
図30)。両方の組換えPAアデノウイルス(Ad4−PAおよびAd4−PA−GPIウイルス)が同程度の免疫応答を誘発した。
【0177】
0日目に、
図29に示すような5つの異なる免疫原(n=10/グループ)のうちの1つでマウスを免疫し、免疫から20日後および46日後に致死毒素(全容量100μLのPBS中の60μgのPAおよび30μgのLF)をチャレンジした。生存を30日間監視した。結果を
図31に示す。免疫から20日後のチャレンジ後、rPA−アラムで免疫したマウスに80%の生存率が観察されたのに対し、Ad4−PAおよびAd4−PA−GPIで免疫したグループは、それぞれ、50%および20%の生存率であった(
図31、左パネル)。Ad4野生型で免疫したグループでは1匹のマウスが生き残り、rPAで免疫したグループでは1匹も生き残らなかった。免疫から46日後のチャレンジ後、rPA+アラムおよびAd4−PAで免疫したグループで100%の生存率が観察されたのに対し、Ad4−PA−GPIおよびrPAで免疫したグループでは、それぞれ、90%および30%の生存率が観察された(
図31、右パネル)。Ad4野生型で処理したグループでは1匹も生き残らなかった。この結果は、致死毒性によるチャレンジにおいて、2つのAd4−PAベクターウイルスが、免疫から20日後に部分的な防御を付与し、免疫から46日後に完全な防御を付与することを示唆している。Ad4−PAまたはAd4−PA−GPI組換えアデノウイルスによって与えられた防御に統計的相違は見られなかった。
【0178】
図29に示すように、免疫から27日後に、5つの異なる抗原のうちの1つで免疫したマウス(マウス2匹/グループ)からプールした脾細胞において細胞媒介性免疫応答(IFN−γ ELISPOTおよびIL−4 ELISPOT)を測定した。毒素による1回目のチャレンジ(免疫から20日後、n=10/グループ)で生き残ったマウスを54日目(チャレンジから34日後)に細胞性免疫応答についてアッセイした。組換えAd4−PAおよびAd4−PA−GPI両方のアデノウイルスが、IFN−γおよびIL−4応答によって示されるPAに対するTh1およびTh2応答を誘発した(
図32)。
【0179】
要約すると、この実施例に記載した実験の結果は、防御抗原を発現する組換えアデノウイルスが、マウスにおいて体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方を誘発し、致死的な炭疽菌によるチャレンジに対する防御を提供することを示すものである。
【0180】
実施例13:組換えアデノウイルスからの複数のHTLエピトープポリペプチドの発現
各々がGPGPGスペーサー配列(SEQ ID NO:353)によって分離された、24個のインフルエンザヘルパーTリンパ球(HTL)エピトープを含有する合成インフルエンザ抗原配列を設計した。
図33Aを参照のこと。実施例3に記載したのと同様の方法を用いて、CMVプロモーターの制御下でこのHTL24ポリペプチドを発現するE3領域の全欠失を含む組換えAd4ウイルス(PXVX0109)を作製した。トランスフェクション後、A549細胞をPXVX0109に感染させて、2つの同一のプラスミドクローン(15−4および19−1)からウイルスを作製した。90%を超える細胞変性効果(CPE)で感染細胞を収集し、プロテアーゼ阻害剤を含有する1×10
6細胞/100μLのRIPA緩衝液で細胞ライセートを調製した。陽性対照として、A549細胞をA/Uruguay/716/2007(A/Brisbane/10/2007様)インフルエンザ(NYMC X−175Cリアソータント、NIBSC)に感染させた。SDS−PAGEゲル上で分離し、その後ブロッティング膜に移した後、抗HAタグモノクロナール抗体およびHRPヤギ抗マウスIgG二次抗体でタンパク質を検出した。ローディング対照として、抗βアクチンウサギポリクローナル抗体およびHRPヤギ抗ウサギIgG二次抗体を用いて、平行して行う膜をプローブした。化学発光(Supersignal West Femto、Thermoscientific)によりタンパク質のバンドを可視化した。
図33Bのウエスタンブロット分析の結果に示されるように、組換えAd4アデノウイルスは、高レベルのHTL24ポリペプチドを発現した。
【0181】
本明細書で考察および引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。開示される発明は、異なり得るものであって、記載される特定の方法論、プロトコル、および材料に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものであるに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。開示される発明は、異なり得るものであって、記載される特定の方法論、プロトコル、および材料に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものであるに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0182】
当業者は、ルーチン実験を用いるだけで、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解するか、または確認することができるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。