特許第5903060号(P5903060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903060
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】内窓および内窓施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   E06B1/56 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-38811(P2013-38811)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167212(P2014-167212A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】板東 誠二
(72)【発明者】
【氏名】小俣 貴寛
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−63184(JP,U)
【文献】 特開平7−301050(JP,A)
【文献】 実開昭59−150875(JP,U)
【文献】 実公昭54−3002(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内側に既設開口部を有する既設窓に取り付けられる内窓であって、
前記既設開口部に取り付けられる内窓枠と、この内窓枠に支持される内窓面材と、前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間に設けられるスペーサと、前記隙間を隠蔽するカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記隙間の室内側を覆う被覆片部と前記既設開口部に固着具で取り付けられる取付片部と、を有し、
前記内窓枠には、前記取付片部を前記固着具で前記既設開口部に取り付けるために前記固着具が挿通する固着具取付用挿通孔が形成されている内窓。
【請求項2】
前記被覆片部を前記内窓枠の室内側に保持する保持部材を備えた請求項1に記載の内窓。
【請求項3】
前記保持部材は両面テープである請求項2に記載の内窓。
【請求項4】
前記内窓枠は、前記内窓面材を開閉自在に支持するレール部を備え、このレール部より屋内側に前記固着具取付用挿通孔が形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の内窓。
【請求項5】
前記内窓枠は樹脂製である請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の内窓。
【請求項6】
屋内側に既設開口部を有する既設窓に、内窓枠を有する内窓を取り付ける内窓施工方法であって、
前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間にスペーサを介して前記内窓枠を前記既設開口部に取り付け、
被覆片部および取付片部を有するカバー部材の前記被覆片部を前記内窓枠の室内側に保持し、前記内窓枠に予め形成された固着具取付用挿通孔に固着具を挿通させて前記取付片部を前記既設開口部に前記固着具で取り付ける内窓施工方法。
【請求項7】
前記既設開口部は上額縁材および下額縁材を含み、
前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間への前記スペーサの挿入は、前記下額縁材に前記内窓枠を載置した後、前記上額縁材と前記内窓枠との間の隙間に前記スペーサを挿入する請求項6に記載の内窓施工方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設窓の屋内側に設けられる内窓、および内窓を既設窓に取り付ける内窓施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓部の屋内側に内窓を取り付けた二重窓が提案されている。二重窓では、窓部の枠と内窓枠との間に生じる隙間が屋内側から隠されている。
この二重窓の従来例として、建屋の開口枠材の内周面に内窓サッシを取り付け、この内窓サッシの屋外側に外窓サッシを取り付け、内窓サッシの屋内側に化粧額縁を取り付けたものがある(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1の従来例では、内窓サッシのサッシ下枠の屋内側面と化粧額縁の屋外側面とに当接部がそれぞれ設けられ、これらの当接部がコ字状のクリップで互いに連結されている。
化粧額縁は、内窓サッシと建屋の開口枠材の内周面との間の隙間を隠すために、建屋の開口枠材の屋内側面とサッシ下枠とにそれぞれ当接する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3179067公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二重窓においては、既設の窓の屋内側に内窓が後付されることがあるが、特許文献1では、既設窓に対して、内窓サッシを新たに取り付けることに関する言及がない。しかも、特許文献1の従来例では、内窓サッシのサッシ下枠の当接部と化粧額縁の当接部とがコ字状のクリップで連結され、このクリップがサッシ下枠および化粧額縁と開口枠材との間に配置されているので、内窓サッシを後付することが容易ではない。
【0006】
さらに、特許文献1で示される化粧額縁は、建屋の開口枠材の屋内側面とサッシ下枠とに当接する構成であるため、設置できる内窓サッシの見込み方向寸法が制限される。つまり、サッシ下枠の見込み方向寸法が開口枠材の見込み方向寸法に対して小さいと、サッシ下枠が化粧額縁から離れることになり、内窓と化粧額縁とを連結することができない。これに対して、サッシ下枠の見込み方向寸法が開口枠材の見込み方向寸法に対して大きいと、内窓と化粧額縁とが連結できるものの、化粧額縁の隙間を隠す部分が開口枠材の屋内側面から離れて隙間が生じることになり、外観が不良となる。
【0007】
本発明の目的は、既設開口部の見込み方向の寸法にかかわらず既設窓の屋内側に容易に後付できる内窓および内窓施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内窓は、屋内側に既設開口部を有する既設窓に取り付けられる内窓であって、前記既設開口部に取り付けられる内窓枠と、この内窓枠に支持される内窓面材と、前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間に設けられるスペーサと、前記隙間を隠蔽するカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記隙間の室内側を覆う被覆片部と前記既設開口部に固着具で取り付けられる取付片部と、を有し、前記内窓枠には、前記取付片部を前記固着具で前記既設開口部に取り付けるために前記固着具が挿通する固着具取付用挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成の内窓では、既設窓に後付するために、既設開口部に内窓枠を挿入する。ここで、既設開口部が経時変化、その他の理由によって、変形していることがあり、内窓枠が既設開口部に挿入された状態では、既設開口部と内窓枠との間に隙間が生じ、内窓枠が既設開口部に対してがたつくことになる。本発明では、既設開口部と内窓枠との間の隙間にスペーサを挿入することで、既設開口部に対して内窓枠ががたつくことを防止できる。
そして、内窓枠と既設開口部との間の隙間の屋内側をカバー部材の被覆片部で覆うとともに、取付片部を既設開口部に固着具で取り付ける。この際、カバー部材は、被覆片部が内窓枠の屋内側に近接するように既設開口部への位置決めをし、その後、固着具を内窓枠の内周側から固着具取付用挿通孔を挿通し、固着具で取付片部を既設開口部に取り付ける。
【0010】
そのため、本発明では、既設開口部に挿入した内窓枠と既設開口部との間の隙間にスペーサを挿入し、隙間の屋内側をカバー部材の被覆片部で覆うので、内窓の既設窓への後付が美しく行える。
カバー部材は既設開口部に固着具で取り付けられる取付片部を有するので、取付片部の既設開口部への取付位置を調整することで、既設開口部の見込み方向の寸法にかかわらず内窓枠を既設開口部に取り付けることができる。
【0011】
本発明の内窓では、前記被覆片部を前記内窓枠の室内側に保持する保持部材を備えた構成が好ましい。
この構成では、カバー部材の内窓枠への取り付けは、被覆片部を内窓枠の屋内側に保持した状態で行えるので、カバー部材が仮保持されているので、カバー部材の内窓枠への取付作業を容易に行うことができる
【0012】
本発明の内窓では、前記保持部材は、両面テープである構成が好ましい。
この構成では、保持部材として両面テープを用いるので、カバー部材の保持作業を容易に行うことができる。
【0013】
本発明の内窓では、前記内窓枠は、前記内窓面材を開閉自在に支持するレール部を備え、このレール部より屋内側に前記固着具取付用挿通孔が形成されている構成が好ましい。
この構成では、レール部より屋内側に固着具取付用挿通孔が形成されているから、固着具でカバー部材を既設開口部に取り付ける作業を屋内側から行うにあたり、レール部が邪魔になりにくいので、カバー部材の取付作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の内窓では、前記内窓枠は樹脂製である構成が好ましい。
この構成では、樹脂製の内窓枠は金属製に比べて軽量であるので、窓部への内窓への後付作業を容易に行うことができるとともに、内窓の取り付けによって、窓の断熱性を向上することができる。
【0015】
本発明の内窓施工方法は、屋内側に既設開口部を有する既設窓に、内窓枠を有する内窓を取り付ける内窓施工方法であって、前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間にスペーサを介して前記内窓枠を前記既設開口部に取り付け、被覆片部および取付片部を有するカバー部材の前記被覆片部を前記内窓枠の室内側に保持し、前記内窓枠に予め形成された固着具取付用挿通孔に固着具を挿通させて前記取付片部を前記既設開口部に前記固着具で取り付けることを特徴とする。
この構成では前述と同様の効果を奏する内窓施工方法を提供することができる。
【0016】
本発明の内窓施工方法では、前記既設開口部は上額縁材および下額縁材を含み、前記既設開口部と前記内窓枠との間の隙間への前記スペーサの挿入は、前記下額縁材に前記内窓枠を載置した後、前記上額縁材と前記内窓枠との間の隙間に前記スペーサを挿入する構成が好ましい。
この構成では、まず、既設開口部の下額縁材に内窓枠を載置した後、上額縁材と内窓枠との隙間にスペーサを挿入する作業を行うので、内窓枠は作業員などで保持された内窓枠と既設開口部との隙間にスペーサを挿入する場合に比べて、スペーサの挿入作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、既設開口部の見込み方向の寸法にかかわらず既設窓の屋内側に容易に後付できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る二重窓を示す縦断面図。
図2】前記二重窓を示す横断面図。
図3】前記実施形態の要部を示す縦断面図。
図4】前記実施形態の要部を示す横断面図。
図5】(A)〜(C)は本発明の一実施形態に係る内窓施工方法を説明する図。
図6】(D)〜(F)は前記実施形態に係る内窓施工方法を説明する図。
図7】(G)(H)は前記実施形態に係る内窓施工方法を説明する図。
図8】本発明の変形例を示す図1に相当する図。
図9】前記変形例を示す図2に相当する図。
図10】本発明の異なる変形例を示す図1に相当する図。
図11】前記異なる変形例を示す図3に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、本実施形態の二重窓1は、建物開口部Aに設置される既設窓である外窓2と、この外窓2の屋内側に設けられる内窓10とを備えて構成され、これらの外窓2と内窓10との間に中間空間Sが形成されている。
外窓2は、建物開口部Aに固定される外窓枠3と、この外窓枠3に支持される面材としての一対の外障子4と、外窓枠3の屋内側に配置された既設開口部としての額縁5とを備えている。
【0020】
外窓枠3は、それぞれアルミ形材製の上枠31、下枠32および左右の縦枠33を四周枠組みして構成され、一対の外障子4は、それぞれアルミ形材製の上框41、下框42および左右の縦框43を四周框組みした内部にガラスパネル44を嵌め込んで構成されている。この外窓2は、外窓枠3の内部に一対の外障子4が左右引違い形式に開閉可能に支持された引違い窓である。
上枠31、下枠32および左右の縦枠33は、それぞれ一対の外障子4および図示しない網戸を支持する枠本体部311,321,331を有する。これらの枠本体部311,321,331は、ビス30で建物開口部Aに固定されている。
額縁5は、上額縁材5A、下額縁材5Bおよび左右の縦額縁材5Cを備え、かつ、建物開口部Aに取り付けられている。
【0021】
内窓10は、額縁5の内周部に取り付けられる内窓枠12と、この内窓枠12に支持される一対の内窓面材13と、額縁5と内窓枠12との間の隙間Dに設けられるスペーサ6と、隙間Dを隠蔽するカバー部材7A,7Bと、カバー部材7A,7Bを内窓枠12に保持する保持部材8A,8Bとを備えている。
内窓枠12は、それぞれ樹脂製の上枠14、下枠15および左右の縦枠16を有して構成され、一対の内窓面材13は、それぞれ樹脂製の上框13A、下框13Bおよび左右の縦框13Cを四周框組みした内部にガラスパネル13Dを嵌め込んで構成されている。
内窓10は外窓2と同様に、内窓枠12の内部に一対の内窓面材13が左右引違い形式に開閉可能に支持された引違い窓である。
【0022】
図1および図3において、上枠14は、上額縁材5Aの見込み方向に延びるベース部141と、このベース部141から下方に向けて突出し2つの内窓面材13の上端縁をそれぞれ案内する一対の上レール部142と、ベース部141の最も屋内側の端縁から下方に向けて突出した突出片部143とを有する。
ベース部141と上額縁材5Aとの間の所定位置にはスペーサ6が配置されている。
【0023】
このスペーサ6は、上額縁材5Aの下面に対向する板材61と、ベース部141の上面に対向する一対の楔部材62,63とを備えており、その屋外側端部は上枠14の屋外側端部と近接した位置にある。なお、スペーサ6は、樹脂製や木製である。本実施形態では、スペーサ6に板材61を必ずしも含めて構成することを要せず、一対の楔部材62,63からスペーサ6を構成してもよい。板材61を用いる場合であっても1枚の部材から構成することを要せず、一対の楔から構成してもよい。
スペーサ6の見込み方向寸法をL1とし、上枠14の見込み方向寸法をL2とすると、L2はL1より大きい。
【0024】
一対の楔部材62,63は、それぞれ端面が直角三角形の柱状部材であり、その傾斜面同士が当接されている。一対の楔部材62,62の端面は、直角を挟む一辺が上額縁材5Aの見込み方向に延びており、他片が上額縁材5Aの下面と直交する上下方向に延びている。一方の楔部材62の他方の楔部材63に対する前記見込み方向の位置を調整することで、スペーサ6の厚み寸法tが可変とされる。
なお、額縁5と内窓枠12との間における隙間Dが発生しない部分には、特別にスペーサ6を設ける必要はない。また、スペーサは一対の楔部材ではなく隙間Dの間隔に応じた一枚の板材でもよい。このことは、上枠、左右の縦枠、下枠においても同様である。
ベース部141は、ビス140によってスペーサ6ごと上額縁材5Aに固定されている。ビス140は、ベース部141の中心位置である一対の上レール部142の間から上額縁材5Aに打ち込まれる。
ベース部141の上レール部142より屋内側であって突出片部143の屋外側位置には固着具取付用挿通孔14Aが形成されている。この固着具取付用挿通孔14Aは、後述する固着具70が挿通できる程度の大きさを有するものであれば、その平面形状は問われるものではなく、例えば、円形、楕円形などでもよい。
【0025】
カバー部材7Aは、上枠14の長さとほぼ等しい長さを有し、金属、樹脂、その他の材料から押出成型された長尺状のアングル材である。
カバー部材7Aの長手方向と直交する断面は、隙間Dの室内側を覆う被覆片部71と上額縁材5Aに固着具70で取り付けられる取付片部72とを有するL字状である。
被覆片部71は、その先端が上枠14の突出片部143の屋内側面と対向している。
取付片部72は、その上面が上額縁材5Aの下面と当接した状態で、固着具70により、上額縁材5Aに固定されている。
固着具70はビスである。なお、ビスに代えて釘を用いてもよい。
保持部材8Aは、被覆片部71と突出片部143との間に設けられカバー部材7Aの長手方向に沿った1本の両面テープから構成される。なお、本実施形態では、カバー部材7Aの長手方向に沿って互いに所定間隔離して配置された複数本の両面テープから保持部材8Aを構成するものでもよい。
【0026】
図1において、下枠15は、下額縁材5Bの見込み方向に延びるベース部151と、このベース部151から上方に向けて突出し2つの内窓面材13の下端縁をそれぞれ案内する一対の下レール部152と、ベース部151の最も屋内側の端縁から上方に向けて突出した突出片部153とを有する。
ベース部151は、下額縁材5Bに直接配置されており、一対の下レール部152の間においてビス150によって下額縁材5Bに固定されている。
【0027】
図2および図4において、縦枠16は、縦額縁材5Cの見込み方向に延びるベース部161と、このベース部161の屋内側、中間位置、屋外側から突出する3つの突出片部162,163,164とを有する。
ベース部161と縦額縁材5Cとの間の所定位置にもスペーサ6が配置されている。
このスペーサ6は、縦額縁材5Cの内面と対向する板材61と、ベース部161の外面に対向する一対の楔部材62,63とを備えており、その屋外側端部は縦枠16の屋外側端部とほぼ同じ位置である。
スペーサ6の見込み方向寸法をL1とし、縦枠16の見込み方向寸法をL3とすると、L3はL1より大きい。
【0028】
ベース部161は、スペーサ6ごと縦額縁材5Cにビス160で固定されている。ビス160は、隣合う突出片部162,163との間、ならびに、隣合う突出片部163,164の間から、それぞれ縦額縁材5Cに向けて打ち込まれる。
ベース部161の屋内側の位置には、固着具70を挿通するのに十分な大きさを有する固着具取付用挿通孔16Aが形成されている。この固着具取付用挿通孔16Aも固着具取付用挿通孔14Aと同様に、その平面形状は限定されるものではない。
【0029】
カバー部材7Bは、縦枠16の長さとほぼ等しい長さを有し、金属、樹脂、その他の材料から押出成型された長尺状のアングル材である。カバー部材7Bの長手方向と直交する断面は、隙間Dの室内側を覆う被覆片部71と縦額縁材5Cに固着具70で取り付けられる取付片部72とを有するL字状である。
被覆片部71は、その先端が縦枠16の突出片部164の屋内側面と対向している。
取付片部72は、その外面が縦額縁材5Cの内面と当接した状態で、固着具70により、縦額縁材5Cに固定されている。
保持部材8Bは、被覆片部71と突出片部164との間に設けられた両面テープである。
【0030】
本実施形態の内窓10を既設開口部5に取り付ける方法について説明する。
まず、図5(A)に示される通り、既設の額縁5に内窓枠12を挿入する。さらに、額縁5の下額縁材5Bの上に内窓枠12を載置した後、上額縁材5Aと内窓枠12の上枠14との間の隙間の大きい部分にスペーサ6を挿入し、縦額縁材5Cと内窓枠12の縦枠16との間の隙間の大きい部分にスペーサ6を挿入する。この際、スペーサ6は、挿入する隙間の寸法に合わせて、予めその厚さ寸法を設定しておく。なお、額縁5と内窓枠12との間における隙間Dが発生しない部分には、特別にスペーサ6を設ける必要はない。
図5(B)に示される通り、スペーサ6は、内窓枠12の屋内側から露出しないようにする。
なお、額縁5への内窓枠12の取り付けは、上記のように予め内窓枠12を四方組みして施工しても良いが、まず左右の縦枠16を縦額縁材5Cに取り付け、次いで、下枠15を下額縁材5Bに取り付け、最後に縦枠16を縦額縁材5Cに取り付けてもよい。
【0031】
図5(C)に示される通り、内窓枠12の突出片部143の屋内側面に両面テープからなる保持部材8Aを貼り付け、図6(D)に示される通り、保持部材8Aにカバー部材7Aの被覆片部71を対向させる。そして、カバー部材7Aの取付片部72を隙間Dに挿入する。さらに、図6(E)に示される通り、保持部材8Aに被覆片部71を貼付する。この状態では、カバー部材7Aが仮保持されていて内窓枠12から落下することがない。固着具70で取付片部72を上額縁材5Aに固定する。この際、固着具70を上枠14に予め形成された固着具取付用挿通孔14Aに挿通し、図示しない工具を用いて上額縁材5Aに固定し、上枠14をスペーサ6ごと縦額縁材5Cにビス160で固定する(図3参照)。
【0032】
さらに、図6(F)に示される通り、縦枠16の突出片部164の屋内側面に両面テープからなる保持部材8Bを貼り付け、図7(G)に示される通り、保持部材8Bにカバー部材7Bの被覆片部71を対向させる。そして、カバー部材7Bの取付片部72を隙間Dに挿入する。さらに、図7(H)に示される通り、保持部材8Bに被覆片部71を貼付する。この状態では、カバー部材7Bが仮保持されていて内窓枠12から落下することがない。固着具70で取付片部72を縦額縁材5Cに固定する。この工程でも、固着具70を固着具取付用挿通孔14Aに挿通し、図示しない工具で縦額縁材5Cに固定し、さらに、縦枠16をスペーサ6ごと縦額縁材5Cにビス160で固定する(図4参照)。
その後、内窓枠12に内窓面材13を取り付けて内窓10の施工が完了する。
【0033】
以上の本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)既設の外窓2の額縁5に内窓枠12を取り付け、この内窓枠12に内窓面材13を支持し、額縁5と内窓枠12との間の隙間Dにスペーサ6を設け、隙間Dをカバー部材7A,7Bで閉塞し、カバー部材7A,7Bを、隙間Dの室内側を覆う被覆片部71と額縁5に固着具70で取り付けられる取付片部72とを備えて内窓10を構成し、内窓枠12に取付片部72を固着具70で額縁5に取り付けるための固着具取付用挿通孔14Aを形成したので、額縁5の見込み方向の寸法にかかわらず内窓枠12を額縁5に取り付けることができるから、内窓10を既設の外窓2に対して容易に後付することができる。
【0034】
(2)内窓10は、被覆片部71を内窓枠12の室内側に保持する保持部材8A,8Bを備えているので、カバー部材7A,7Bが内窓枠12に対して静止した状態を維持できるから、カバー部材7A,7Bの内窓枠12への取付作業を容易に行うことができる
【0035】
(3)保持部材8A,8Bは両面テープであるので、カバー部材7A,7Bの内窓枠12への保持作業を容易に行うことができる。
【0036】
(4)固着具取付用挿通孔14Aは内窓枠12の上レール部142より屋内側に形成されているから、固着具70でカバー部材7Aを額縁5の上額縁材5Aに取り付ける作業を屋内側から行うにあたり、上レール部142が邪魔になりにくいので、カバー部材7Aの取付作業を容易に行うことができる。
【0037】
(5)内窓枠12は樹脂製であるから、金属製の内窓枠に比べて軽量であり、外窓2への内窓10の後付作業を容易に行うことができるとともに、内窓の取り付けによって窓の断熱性を向上することができる。
【0038】
(6)額縁5の下額縁材5Bに内窓枠12を直接載置し、額縁5の上額縁材5Aと内窓枠12の上枠14との間の隙間Dにスペーサ6を挿入する構成としたので、作業員などで内窓枠12を保持した状態で、内窓枠12と額縁5との隙間Dにスペーサ6を挿入する場合に比べて、スペーサ6の挿入作業を容易に行うことができる。
【0039】
(7)スペーサ6を、内窓枠12の縦枠16と額縁5の縦額縁材5Cとの間の隙間Dに挿入し、この隙間Dをカバー部材7Bで覆ったので、上枠14と上額縁材5Aとの間の隙間Dだけでなく、縦枠16と縦額縁材5Cとの間の隙間Dを隠すことができる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、内窓10は、カバー部材7A,7Bの被覆片部71を内窓枠12の屋内側に保持するための保持部材8A,8Bを備えた構成としたが、本発明では、図8および図9に示される通り、保持部材8A,8Bを省略するものであってもよい。この場合、上枠14の突出片部143とカバー部材7Aの被覆片部71との間に若干の間隔があり、同様に、縦枠16の突出片部164とカバー部材7Bの被覆片部71との間に若干の間隔がある。なお、図8および図9の例では、カバー部材7A,7Bを作業員が保持しながら、額縁5への取付作業を行う。
仮に、保持部材8A,8Bを用いる場合であっても、保持部材8A,8Bは、両面テープに限定されるものではなく、例えば、接着剤などを用いてもよい。
【0041】
さらに、前記実施形態では、額縁5の下額縁材5Bに内窓枠12を直接載置した構成としたが、本発明では、図10および図11に示される通り、下額縁材5Bと内窓枠12の下枠15との間の隙間Dにスペーサ6を挿入し、この隙間Dの屋内側をカバー部材7Aで閉塞する構成としてもよい。なお、図10および図11の例では、下枠15のベース部151の下レール部145より屋内側であって突出片部153の屋外側位置に固着具取付用挿通孔14Aが形成されている。
【0042】
また、前記実施形態においては、外窓2および内窓10がともに引違い窓である場合を例示したが、本発明の二重窓としては、外窓2および内窓10における面材の開閉形式は特に限定されるものではなく、例えば、外窓が片引き窓や開き窓、外倒し窓、上げ下げ窓、縦または横の辷出し窓などであってもよく、内窓10が片引き窓や引分け窓、内開き窓、内倒し窓、上げ下げ窓などであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…二重窓、2…外窓(既設窓)、3…外窓枠、4…外障子、5…額縁(既設開口部)、5A…上額縁材、5B…下額縁材、5C…縦額縁材、6…スペーサ、D…隙間、7A,7B…カバー部材、8A,8B…保持部材、10…内窓、12…内窓枠、13…内窓面材、14…上枠、15…下枠、16…縦枠、14A,16A…固着具取付用挿通孔、142…上レール部、152…下レール部

図1
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図11