(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
==システムの全体構成==
以下、本発明の一実施形態に係る電力システムについて説明する。
図1は本実施形態の電力システムの全体構成の一例を示す図である。本実施形態の電力システムは、蓄電装置10およびサーバ20を含んで構成される。蓄電装置10およびサーバ20はそれぞれ通信機能を有しており、通信ネットワーク30を介して互いに通信可能に接続されている。通信ネットワーク30は、たとえばインターネットであり、たとえば公衆電話回線、携帯電話回線、無線通信路、専用電話回線、電力線、シリアルケーブル、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0017】
蓄電装置10は電力価格に応じて蓄電池に対して充電または放電を行う装置である。
【0018】
サーバ20は、需給バランスをとる適正な電力価格(以下、適正価格という。)を決定する、たとえばパーソナルコンピュータおよびワークステーションなどのコンピュータである。サーバ20は決定した適正価格を示す情報(以下、価格シグナルという。)を負荷システム10に送信する。これにより、本実施形態の電力システムでは、負荷システム10による充電または放電の自律制御を行わせつつ、電力系統における需給バランスがとれるように適正な価格を設定しようとするものである。本実施形態では、サーバ20は電力系ごとに変電所に設置されるものとし、同一エリア(同一電力系統)内の蓄電装置10を制御する。
【0019】
==蓄電装置10の構成==
図2は、蓄電装置10のハードウェア構成例を示す図である。蓄電装置10は、蓄電エージェント11および蓄電池12を備える。蓄電池12は外部からの制御により充電および放電を行う一般的な蓄電池を想定している。蓄電エージェント11は、蓄電池12を制御するコンピュータである。蓄電エージェント11は、後述するように価格シグナルに応じて蓄電池12が充電または放電を行うように蓄電池12を制御する。
【0020】
蓄電エージェント11は、CPU101、メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース104、制御インタフェース105を備える。記憶装置103は、各種のデータやプログラムを記憶する、たとえばフラッシュメモリ、ソリッドステートドライブおよびハードディスクドライブなどである。CPU101は記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。通信インタフェース104は、通信ネットワーク30に接続するためのインタフェースであり、例えば、電力線に接続して電力線通信(PLC;Power Line Communications)を行うためのPLCモデム、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信網に接続するための無線通信機、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタなどである。制御インタフェース105は、蓄電池12と接続するためのインタフェースである。制御インタフェース105は、たとえば、シリアル通信を行うためのインタフェースであってもよいし、電気信号を出力するための端子であってもよいし、蓄電池12と情報通信を行うための通信インタフェースであってもよい。蓄電エージェント11は、制御インタフェース105を介して命令信号を負荷12に送信することにより蓄電池12を制御することができる。
【0021】
図3は、蓄電エージェント11のソフトウェア構成例を示す図である。蓄電エージェント11は、蓄電情報取得部111、買電価格決定部112、需要情報送信部113、価格シグナル受信部114、充放電制御部115、蓄電情報記憶部131および価格シグナル記憶部132を備える。
【0022】
なお、蓄電情報取得部111、買電価格決定部112、需要情報送信部113、価格シグナル受信部114および充放電制御部115は、負荷システム10の負荷エージェント11が備えるCPU101が記憶装置103に記憶されているプログラムをメモリ102に読み出して実行することにより実現され、負荷情報記憶部131および価格シグナル記憶部132は、メモリ102および記憶装置103が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0023】
蓄電情報記憶部131は、蓄電池12に関する情報(以下、蓄電情報という。)を記憶する。蓄電情報には、蓄電池12の単位時間あたりの消費電力(単位はkWである。以下、Qと表記する。)、蓄電池12の容量(単位はkWhである。以下、Wsと表記する。)、蓄電池12の現在の蓄電量(単位はkWhである。以下、Wと表記する。)、使用開始時刻、電力価格の最高価格(以下、Pmaxと記載する。)などが含まれる。蓄電池12は使用開始時刻までに容量Ws分だけ満充電されるものとし、電力価格が買電価格以下であれば蓄電池12への充電を行い、電力価格がPmaxを超えている場合には充電を行わないものとする。
【0024】
蓄電情報取得部111は、蓄電情報を取得し、取得した蓄電情報を蓄電情報記憶部131に登録する。蓄電情報取得部111は、ユーザから蓄電情報の入力を受け付けるようにすることができる。また、たとえば蓄電池12の容量については、蓄電情報取得部111は制御インタフェース105を介して蓄電池12から取得するようにすることもできる。また、蓄電情報取得部111は、たとえば蓄電池12の現在の蓄電量を取得することもできる。蓄電情報取得部111は、ユーザから現在の蓄電量の入力を受け付けるようにしてもよいし、制御インタフェース105を介して蓄電池12から現在の蓄電量を取得するようにしてもよい。
【0025】
買電価格決定部112は、蓄電池12に充電を行う価格(以下、買電価格という。以下、Pと表記する。)を決定する。買電価格決定部112は、蓄電池12の現在の蓄電量に応じて買電価格Pを決定する。買電価格決定部112はたとえば、蓄電池12の容量と現在の蓄電量との差が大きいほど安くなるように買電価格を決定する。本実施形態では、使用開始時刻までの時間をTとし、蓄電量0から満充電までにかかる時間をTf0とし、現在の蓄電量Wから満充電までにかかる時間をTfとして、次の式(1)および(2)により買電価格Pを算出する。
【0026】
Tf=(Ws−W)÷Q=Tf0−W÷Q ・・・(1)
P=Pmax×T÷Tf ・・・(2)
【0027】
需要情報送信部113は、蓄電装置10による電力需要に関する情報(以下、需要情報という。)をサーバ20に送信する。需要情報には、蓄電エージェント11を特定するための情報(以下、エージェントIDという。)、買電価格および消費電力が含まれる。需要情報送信部113は、当該蓄電エージェント11のエージェントIDと、蓄電情報記憶部131に記憶されている買電価格および消費電力とを含めた需要情報をサーバ20に送信する。
【0028】
価格シグナル受信部114は、サーバ20から送信される価格シグナル(以下、Psと表記する。)を受信する。価格シグナル受信部114は、サーバ20から受信した価格シグナルPsを価格シグナル記憶部132に登録する。
【0029】
充放電制御部115は、価格シグナルに応じて蓄電池12を制御する。充放電制御部115は、価格シグナル記憶部に132に記憶されている価格シグナルが、蓄電情報記憶部131に記憶されている買電価格以下(Ps≦P)である場合に、蓄電池12への充電を行い、蓄電池12が満充電になった(W=Wsになった)場合、または、価格シグナルが買電価格を超えた(Ps>P)場合には、蓄電池12への充電を停止する。なお、蓄電池12への充電の制御は一般的な制御であるものとして、ここでは説明を省略する。
【0030】
==蓄電装置10の処理==
図4は、蓄電エージェント11による処理の流れを示す図である。
【0031】
買電価格決定部112は、蓄電情報記憶部131に記憶されている使用開始時刻をt0とし(S401)、蓄電情報記憶部131に記憶されている容量Wsを、単位時間あたりの消費電力Qで割ってTf0を算出する(S402)。蓄電エージェント11は以下の処理を繰り返す。
【0032】
蓄電エージェント11は、
図5に示す需要情報送信処理を実行する(S403)。買電価格決定部112は、t0から現在時刻tを引いて、使用開始時刻までの時間Tを算出する(S421)。蓄電情報取得部111は、蓄電池12の現在の蓄電量Wを取得する(S422)。買電価格決定部112は、WをQで割った値をTf0から引いて、満充電までにかかる時間Tfを算出する(S423)。買電価格決定部112は、使用開始時刻までの時間Tを、満充電までにかかる時間Tfで割った値をPmaxに乗じて買電価格Pを算出する(S424)。需要情報送信部113は、買電価格Pと消費電力Qとを含む需要情報をサーバ20に送信する(S425)。
【0033】
価格シグナル受信部114が価格シグナルPsを受信していた場合(S404:YES)、充放電制御部115は、価格シグナルPsが買電価格P以下であれば(S405:YES)、充電池12への充電を行い(S406)、価格シグナルPsが買電価格Pより大きければ(S405:NO)、充電池12への充電を停止する(S407)。
【0034】
以上の処理を繰り返し実行することにより、蓄電エージェント11からは、充電までにかかる時間と現在の蓄電量とに応じて買電価格を決定し、これをサーバ20に通知するとともに、価格シグナルに応じて蓄電池12への充電制御を行うことができる。
【0035】
==サーバ20の構成==
図6は、サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。サーバ20は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。CPU201は記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。通信インタフェース204は、通信ネットワーク30に接続するためのインタフェースであり、たとえば、電力線に接続して電力線通信(PLC;Power Line Communications)を行うためのPLCモデム、公衆電話回線網に接続するためのモデム、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、無線通信網に接続するための無線通信機などである。入力装置205は、データの入力を受け付ける、例えばキーボードやマウス、トラックボール、タッチパネル、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
【0036】
図7は、サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。サーバ20は、需要情報受信部211、需要曲線作成部212、負荷電流測定部213、制御量決定部214、上限値設定部215、適正価格決定部216、価格シグナル送信部217、需要供給曲線記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233、上限値記憶部234および適正価格記憶部235を備える。
【0037】
なお、需要情報受信部211、需要曲線作成部212、負荷電流測定部213、制御量決定部214、上限値設定部215、適正価格決定部216および価格シグナル送信部217は、サーバ20が備えるCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、需要供給曲線記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233、上限値記憶部234および適正価格記憶部235は、サーバ20が備えるメモリ202および記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0038】
需要情報受信部211は、蓄電装置10から送信される需要情報を受信する。需要情報受信部211は受信した需要情報を需要情報記憶部231に登録する。需要情報記憶部231に記憶される需要情報の構成例を
図8に示す。上述したように、需要情報には、エージェントID、買電価格および消費電力が含まれる。
【0039】
需要曲線作成部212は、需要情報に基づいてエリア内における需要曲線を求める。需要曲線作成部212は、たとえば需要情報の消費電力を電力価格ごとに合計し、電力価格の順に累積消費電力を計算していき、電力価格と累積消費電力との関係を表す関数を作成することができる。なお、需要曲線は、幾何的に作成するようにしてもよいし、所定の単位円(たとえば1円)ごとの電力価格に対応付けて累積消費電力量を表形式で記憶するようにしてもよい。需要曲線作成部212は、定期的に(たとえば30分ごと、1時間ごとなど、任意の時間ごとに)需要情報に基づいて需要曲線を作成する。需要曲線作成部212は、作成した需要曲線を需要曲線記憶部212に登録する。需要曲線記憶部232は、需要曲線の履歴を記憶していくものとする。
図9は、需要曲線記憶部232に記憶される需要曲線の一例を示す図である。同図の例では、需要曲線作成部212は、最高価格Pmaxから1円単位で、最低価格(たとえば0円とすることができる。)までの電力価格ごとに、買電価格が電力価格に一致する需要情報の消費電力の合計(合計消費電力)と、消費電力の累計値(累積消費電力)とを需要曲線として作成した例を示している。本実施形態では需要曲線記憶部212は、最新の需要曲線と直近に作成した前回の需要曲線との2つの需要曲線を記憶するものとする。
【0040】
負荷電流測定部213は、サーバ20が設置されている電力系統の変電所における負荷電流(以下、PLと表記する。)を測定する。なお、負荷電流測定部213による負荷電流の測定処理には公知の手法を用いるものとしてここでは説明を省略する。負荷電流測定部213は負荷電流を測定する度に、測定した負荷電流の履歴を需要履歴記憶部233に登録していくものとする。負荷電流PLは、価格シグナルにより制御可能な負荷(本実施形態では、蓄電装置10である。)による消費電力の合計(以下、Qsと表記する。)と、価格シグナルにより制御することのできない負荷(本実施形態では、蓄電装置10以外の負荷すべてである。以下、非制御負荷という。)による消費電力の合計(以下、PL0と表記する。)との合計値となる。
【0041】
制御量決定部214は、蓄電装置10による消費電力の合計の目標値(以下、制御量といい、これもQsと表記する。)を決定する。制御量決定部214は、たとえば風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が変動した場合に、その変動に応じて蓄電装置10による需要量を増やすべき量を制御量Qsとして決定する。なお、制御量Qsの決定処理の詳細については後述する。制御量決定部214は、制御量を決定する度に、決定した制御量の履歴を需要履歴記憶部233に登録していくものとする。
【0042】
上限値記憶部234は、適正価格の上限値(以下、Pmと表記する。)を記憶する。上限値設定部215は、需要情報に応じて上限値を設定する。上限値設定部215は、需要情報に基づいて、所定の最高値から1単位(たとえば1円、0.5円など任意の価格とすることができる。)ごとの買電価格に対応する消費電力を合計して、買電価格ごとの合計消費電力の分布であるヒストグラムを作成する。ヒストグラムは、たとえば横軸に降順の買電価格、縦軸に合計消費電力量をとったグラフとすることができる。上限値設定部215は、作成したヒストグラムの上位30(任意の値とすることができる。)%の買電価格を上限値の初期値として設定する。なお、ヒストグラムの上位からの割合を示す値(初期値「30」である。以下、Xと表記する。)も上限値記憶部234に設定する。また、上限値設定部215は、需要曲線が更新されたことを契機として、需要曲線に応じて上限値を更新する。上限値設定部215は、前回の需要曲線における上限値Pmに対応する消費電力Qmを求め、最新の需要曲線における消費電力Qmに対応する電力価格Pm’を求め、Pm’>Pmであれば割合Xを増加させて上限値Pmを引き下げる。上限値設定部215は、たとえば、Xに10(たとえば1、5など任意のステップ値とすることができる。)を加算し、ヒストグラムの上位X%値を上限値Pmとして上限値記憶部234を更新する。一方、上限値設定部215は、Pm’≦Pmである場合に、Xが30よりも大きい場合には、Xから10(上記任意のステップ値)を減算し、ヒストグラムの上位X%値を上限値Pmとして上限値を引き上げる。
【0043】
適正価格決定部216は、上限値記憶部234に記憶されているPmを上限として適正価格Psを決定する。
図10に示すように、適正価格決定部216は、需要曲線における制御量Qsに対応する電力価格を適正価格Psとして決定する。適正価格決定部215は決定した適正価格を適正価格記憶部235に登録する。
【0044】
価格シグナル送信部217は、適正価格記憶部334に記憶されている適正価格を示す価格シグナルを蓄電装置10に送信する。これにより蓄電装置10において、適正価格に応じた充電の制御が行われる。
【0045】
==サーバ20の処理==
図11は、サーバ20による処理の流れを示す図である。
【0046】
需要情報受信部211が蓄電装置10から送信される需要情報を受信した場合(S501:YES)、受信した需要情報を需要情報記憶部231に登録する(S502)。需要曲線作成部212は、需要情報記憶部231から買電価格ごとに消費電力を集計し、エリア内の需要曲線を作成する(S503)。上限値設定部215は、
図12に示す上限値の設定処理を実行する(S504)。
【0047】
上限値設定部215は、需要情報記憶部231に記憶されている需要情報に基づいて、所定の最高値から1単位(たとえば1円)の買電価格ごとに消費電力を合計し、買電価格のヒストグラムを作成する(S521)。上限値設定部215は、需要曲線記憶部232から新しく作成された今回の需要曲線とともに前回の需要曲線を読み出し(S522)、上限値記憶部234から上限値Pmおよび割合Xを読み出す(S523)。上限値設定部215は、前回の需要曲線においてPmに対応する消費電力をQmとし(S524)、今回の需要曲線においてQmに対応する電力価格をPm’とする(S525)。
【0048】
上限値設定部215は、Pm’がPmよりも大きく(S526:YES)、Xが50(任意の最高値とすることができる。)未満である場合には(S527:YES)、Xに10(任意のステップ値とすることができる。)を加算する(S527)。これにより上限値が引き下げられることになる。
【0049】
一方、上限値設定部215は、Pm’がPm以上である場合に(S526:NO)、Xが30(任意の値とすることができる。)より大きければ(S529:YES)、Xから10を減算し(S530)、Xが30であれば(S529:NO)、処理を終了する。
【0050】
上限値設定部215は、ヒストグラムの上位X%値を上限値Pmとして上限値記憶部234を更新する(S531)。
【0051】
図11に戻り、制御量決定部214は
図13に示す制御量の算出処理により制御量Qsを算出する(S505)。
【0052】
制御量決定部214は、消費電力の最低値(以下、最低負荷電力という。)Qminを設定する(S541)。最低負荷電力はたとえばオペレータからの入力を受け付けるようにしてもよいし、発電機からの最小発電電力量に応じて決定するようにしてもよい。制御量決定部214は、制御量Qsを0とする(S542)。その後以下の処理が繰り返される。
【0053】
負荷電流測定部213は、変電所における負荷電流PLを計測する(S543)。負荷電流測定部213は、計測した負荷電流PLを需要履歴記憶部233に登録する(S544)。制御量決定部214は、負荷電流PLから制御量Qsを引いた値が最低負荷電力Qmin以下であれば(S545:YES)、負荷電流PLから制御量Qsを引いた値を最低負荷電力から引いて制御量Qsとする(S546)。
【0054】
一方、負荷電流PLから制御量Qsを引いた値が最低負荷電力Qminよりも大きい場合には(S545:NO)、
図14に示す需要の平準化処理を行う(S547)。
【0055】
制御量決定部214は、需要制御量の最大値Qmaxを2で割った商をQs0とする(S561)。なお、Qs0には任意の値を設定するようにしてもよい。制御量決定部214は、需要履歴記憶部233から現在から所定期間(たとえば1日など任意の期間とすることができる。)前の期間について負荷電流PLから制御量Qsを引いた差L0の移動平均を算出してPL’とし(S562)、PLからQsを引いた値を、Qs0にPL’を加算した値から減じてQsとする(S563)。
【0056】
図11に戻り、制御量決定部214は決定したQsを需要履歴記憶部233に登録し(S506)、適正価格決定部216は需要曲線からQsに対応する価格を求めて適正価格Psとする(S507)。
図10の需要曲線21において制御量Qsに対応する価格Pが適正価格Psとなる。価格シグナル送信部217は、適正価格Psを価格シグナルとして全ての蓄電装置10(蓄電エージェント11)に送信する(S508)。
【0057】
==本電力システムによる効果==
以上のようにして、本実施形態の電力システムによれば、サーバ20は価格シグナルを蓄電装置10に与えるのみで蓄電装置10を制御することができる。したがって、分散した蓄電装置10の制御を容易に実現することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態の電力システムによれば、蓄電装置10から取得した需要情報に基づいてサーバ20が需要曲線を求め、この需要曲線において制御量Qsに対応する価格を適正価格として決定することができる。したがって、需要曲線に基づいていることから、適正価格を容易かつ適切に決定することができる。
【0059】
また、たとえば、満充電までにかかる時間Tfが長い蓄電装置10が多い場合などには、適正価格Psが高価格となることがあり、このような場合、買電価格がPsをなかなか上回らず、Tfが短くなったところで一斉に買電価格がPsを上回ってしまい、合計消費電力が大きくなりすぎるという状況(この状況のことを需要曲線が飽和するとも呼ばれる。)が起こりうるところ、本実施形態の電力システムによれば、適正価格Psを上限値Pm以下に抑えることができるので、需要曲線の飽和を回避することができる。
【0060】
また、本実施形態の電力システムによれば、前回の需要曲線で上限値Pmに対応していた消費電力量Qmと同じ消費電力量に対応する今回の需要曲線での電力価格Pm’が上限値Pmよりも値上がりし、買電価格が高止まりする(すなわち、需要曲線が飽和する)傾向がみられた場合には、割合Xを上げて上限価格Pmを引き下げることができる。これにより需要曲線の飽和を回避することができる。
【0061】
また、本実施形態の電力システムによれば、割合Xは50以下とすることができる。買電価格のヒストグラムの上位50%値を上限値とすることにより、需要曲線が飽和することはない。したがって、必要以上に適正価格が引き下げられるのを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態の電力システムによれば、割合Xは30以上とすることができる。あまり小さい割合Xを設定して上限値Pmが引き上げられると需要曲線が飽和してしまうことから、上位30%値を上限値とすることが望ましい。
【0063】
また、本実施形態の電力システムによれば、PLとQsとの差が最低負荷電力Qminよりも低い場合には、この差をQminから引いて制御量Qsとしているため、需要がQminとなるように制御することができる。すなわち、
図12に示すように、たとえば風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が変動し、みかけの需要PL0が減少して最低負荷電力を下回った期間61および期間62がある場合には、これらの期間について電力需要が最低負荷電力Qminとなるように制御量Qsを決定することができる。これにより、風力発電や太陽光発電などにより電力供給量が変動する場合であっても、需給バランスを維持することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の電力システムによれば、非制御負荷の需要PL0(PLとQsとの差)の移動平均PL’を目標として、制御可能な蓄電装置10の需要Qsを調整することができる。これにより、全体の電力需要PLを平滑化することができるので、需要のピークを抑え安定的な電力系統の運営を行うことが可能となる。
【0065】
また、本実施形態の電力システムによれば、蓄電装置10は価格シグナルが示す電力価格Psと買電価格Pとの比較に応じて蓄電池12への充電を行うかどうかを決定すればよく、蓄電装置10の充電制御を簡単に行うことができる。
【0066】
==変形例==
本実施形態では、サーバ20からの制御対象となる負荷は蓄電池12への充電を制御する蓄電装置10であるものとしたが、これに限らず、電力を消費するものであればその種類を問わない。たとえば負荷は温水器などの蓄熱装置であってもよい。この場合、蓄熱装置も蓄電エージェント11と同様のエージェントを備えるようにし、
図5のステップS422では現在の蓄熱量を取得してWとし、
図4のステップS406およびS407では、温水器への加熱の開始(S406)または終了(S407)を行うものとする。
【0067】
また、本実施形態では、サーバ20は電力系統の変電所に設置して電力系統ごとの需要を制御するものとしたが、複数の電力系統からの需要情報を1台のサーバ20が受信し、1台のサーバ20が複数の電力系統の需要を調整するように価格シグナルを送信するようにしてもよい。この場合、サーバ20の需要情報記憶部231、需要曲線記憶部232、需要履歴記憶部233および適正価格記憶部235はそれぞれ、電力系統ごとに需要情報、需要曲線、負荷電流および制御量、ならびに適正価格を記憶するようにし、需要曲線作成部212は電力系統ごとの需要曲線を作成し、負荷電流測定部213は電力系統ごとの負荷電流を測定し、制御量決定部214は電力系統ごとに制御量Qsを決定し、適正価格決定部216は電力系統ごとの需要曲線から、当該電力系統についての制御量に対応する電力価格を適正価格として決定し、価格シグナル送信部217は、電力系統ごとの適正価格を、当該電力系統に対応する蓄電装置10にのみ価格シグナルとして送信する。
【0068】
また、本実施形態では適正価格が価格シグナルであるものとしたが、価格シグナルは適正価格に応じた値であればよい。たとえば、適正価格を0〜1の間の値に正規化したものを価格シグナルとしてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、需要情報は買電価格と単位時間あたりの消費電力とが含まれるものとしたが、これに限らず、たとえば買電価格に応じて消費電力を求めるための関数など、買電価格と負荷における消費電力との関係を表すものであり、これに基づいてエリア内における需要曲線が作成できるものであればよい。
【0070】
また、本実施形態では、定期的に需要情報をサーバ20に送信するものとしたが、任意のタイミングで送信するようにしてもよい。たとえば、サーバ20からのリクエストに応じて需要情報を応答するようにしてもよいし、オペレータからの指示に応じて送信するようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、サーバ20から価格シグナルが送信されて蓄電装置10はこれを待つものとしたが、これに限らず、たとえば価格シグナル受信部114が、任意のタイミングで(たとえば、蓄電情報が登録されたときや、オペレータから指示のあったときなどに)サーバ20にリクエストを送信し、サーバ20がリクエストに応じて応答した価格シグナルを受信するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、価格シグナルの示す価格Psが買電価格以下であれば無条件で充電を行うものとしたが、満充電であれば充電を行わないようにしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、容量Wsを消費電力Qで割って充電にかかる時間Tf0を求めるものとしたが、これに限らず、充電に用いる消費電力量を変動させることができる場合には、買電価格よりもより安い価格シグナルの場合により多くの消費電力量となるように充電を行うようにしてもよい。この場合、需要情報として、価格ごとの消費電力量をサーバ20に送信するようにする。
【0074】
また、本実施形態では、供給関数および蓄電関数(充電関数および放電関数を含む。)は、電力価格を代入して発電量または充放電量を算出する関数であるものとしたが、これに限らず、電力価格と発電量または充放電量との関係を示す情報であればよい。たとえば、所定の単位金額(たとえば1円、5円、10円など任意の金額とすることができる。)ごとの電力価格に対応付けて発電量または充放電量を管理する表としてもよい。
【0075】
また、供給関数および蓄電関数(充電関数および放電関数を含む。)は、電力価格と発電量および充放電量との関係を示す情報であり、電力価格の変化と発電量または充放電量の変化との関係、すなわち発電量または充放電量の価格弾力性を示す情報も含むものとする。
【0076】
また、本実施形態では、電力価格ごとの総供給量および総充電量を表として記録し、これに基づいて供給曲線および需要曲線を決定するものとしたが、たとえば、発電関数および蓄電関数が方程式により表されているものである場合には、供給関数および需要関数も方程式により表すようにすることも可能であり、この場合、供給関数と需要関数との交点を、方程式を用いて計算により算出するようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、発電装置10が発電エージェント11および発電機12を含んでいるものとしたが、発電エージェント11および発電機12を別の装置として設けるようにしてもよい。同様に、蓄電エージェント21と蓄電池22とを別の装置として設けるようにしてもよい。また、1台の発電エージェント11が複数の発電機12を制御し、1台の蓄電エージェント21が複数の蓄電池22を制御するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、サーバ30は1台のコンピュータであるものとしたが、複数台のコンピュータにより実現することもできる。この場合、たとえば、複数台のコンピュータで仮想的な1台のコンピュータを実現するようにしてもよいし、記憶部と機能部とを複数のコンピュータに分散させるようにしてもよい。
【0079】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。