(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングの一部を構成するモータケースと、前記モータケースの内部に設けられたステータと、前記ステータ内に回転自在に軸支されるロータ軸を備えたロータとからなるモータ部と、
前記モータケースの前記ロータ軸の軸方向の一端側に一体的に連結するポンプ部と、を備えた電動ポンプであって、
前記モータケースは、前記ロータ軸の軸方向の一端側に底部を有した有底筒状に形成され、
前記底部には前記ポンプ部に連通する吸入孔と吐出孔とが設けられるとともに、該底部の中央部には前記モータケースの前記ロータ軸の軸方向に沿って貫通孔が形成され、
前記貫通孔には、前記ロータ軸が挿通され、
前記ロータ軸と前記モータケースの前記底部との間には、前記ポンプ部からの流体の浸入を防止するシール部材が設けられ、
前記吸入孔と前記吐出孔とは、それぞれ、前記シール部材と前記モータケースの径方向で一部重なるように、前記ロータ軸と平行に前記ポンプ部から前記シール部に向けて延出形成された第一流路と、前記シール部材より前記モータケースの径方向外側に配置されて、前記ロータ軸と直交する方向に向けて延出形成された第二流路と、からなり、
前記第一流路に対して前記第二流路が、前記モータケースの径方向外側にずれた状態となるようにオフセットして連通していることを特徴とする電動ポンプ。
前記吸入孔と前記吐出孔とは、それぞれ、前記第一流路と前記第二流路との間の連通孔の開口面積が、前記第二流路の断面積より大となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動ポンプ。
前記ポンプ部は、ポンプケースと、該ポンプケースに設けられた円筒空間に配設され、内部に内歯ギヤを有するアウタロータと、前記内歯ギヤに噛合する外歯ギヤを有するインナロータと、を備える内接ギヤ式ポンプからなり、
前記吸入孔と前記吐出孔とは、それぞれ、前記アウタロータと前記インナロータとの間に容積変化によって生じる部屋に連通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動ポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る電動ポンプを詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動ポンプ1の斜視図であり、
図2は、電動ポンプ1の中心軸Oを含む側面断面図である。
【0020】
図1に示す電動ポンプ1は、例えばハイブリッド車両の駆動用モータや、この駆動用モータと連結されるギヤボックス等にオイルを圧送するためのもので、ハウジング10と、
図2に示すようにハウジング10の内部に収納されたブラシレスモータ(モータ部)20と、このブラシレスモータ20を制御する制御装置50を備えた電動モータ70と、ハウジング10の外部に設けられて電動モータ70により駆動されるポンプ部90と、を備えて構成されている。電動モータ70およびポンプ部90は、電動ポンプ1の中心軸Oと共通の中心軸を有している。以下の説明では、中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oと直交する方向を径方向といい、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
ハウジング10は、例えば鉄(炭素鋼)やアルミニウム等の金属材料によって形成されており、軸方向の一方側に開口部12を有し軸方向の他方側(一端側)に底部13を有する有底筒状のモータケース11と、モータケース11の開口部12側に取り付けられたカバー部材46と、によって構成されている。モータケース11の内部にはブラシレスモータ20が配置され、モータケース11の開口部12側には制御装置50が配置されている。モータケース11の底部13側、すなわちモータケース11の軸方向の他方側(一端側)には、ポンプ部90が配設されている。
【0022】
モータケース11は略円筒状の筒部11aを有しており、筒部11aの内周面にステータ21が接着等の固定手段により固定されている。ステータ21は、略円筒状のステータコア21aにより形成されている。ステータコア21aは、例えばプレス加工によって周方向に所定数(例えば、本実施形態では9個)に分割された状態で略環状に打ち抜かれた金属板(電磁鋼板)を軸方向に複数枚積層したもので、コイル26を巻装するためのティース23が放射状に複数(例えば、本実施形態では9本)形成されている。各ティース23間には、不図示のスロットが形成さている。スロットは、周方向に沿って等間隔に9スロット形成されている。各ティース23には、全周に渡って絶縁材であるインシュレータ25がそれぞれ装着され、このインシュレータ25上にU相、V相、W相の三相に対応したコイル26が巻装されている。すなわち、本実施形態のブラシレスモータ20は、U相、V相、W相の三相のコイル26を備えた三相ブラシレスモータとなっている。
【0023】
各ティース23に巻装されているコイル26の端末部は、モータケース11の開口部12側に向かって引き出され、ここに配置されているバスバーリングユニット28に接続されている。
バスバーリングユニット28は、外部からの電力をコイル26に供給するためのもので、絶縁材料からなる略円環状のバスバーリングホルダ28aに金属製の複数(本実施形態では4個)のバスバーリング28bが埋設されて形成されている。各バスバーリング28bには、それぞれ所定のコイル26の端末部が電気的に接続されて、各相用バスバーに割り当てられている。
【0024】
具体的には、各相のコイル26の巻始め端(不図示)と接続されるU相用バスバー、V相用バスバーおよびW相用バスバーと、各相のコイル26の巻終わり端(不図示)と接続される中性点用バスバーと、に割り当てられている。各バスバーリング28bのうち、U〜W相用バスバーは、モータケース11の開口部12側に向かって軸方向に沿うように立設された給電端子29a〜29cをそれぞれ備えている。給電端子29a〜29cは、制御装置50に電気的に接続される。
【0025】
モータケース11の開口部12側の端部には、モータケース11の開口部12を閉塞するために、鋼板材をプレス成形してなるベアリングホルダ4が設けられている。ベアリングホルダ4の中央部には、バスバーリングユニット28の内側に配置される円筒状のベアリング保持部4aが形成されている。ベアリング保持部4aには、ベアリング5が内嵌されている。
【0026】
モータケース11の底部13は、軸方向に沿った断面が略矩形状に形成されており、軸方向に所定の厚さを有して形成されている。このモータケース11の底部13の中央部には、軸方向に沿って底部13を貫通するシャフト挿通孔(貫通孔)13aが形成されている。また、モータケース11の底部13には、筒部11aよりも縮径されたベアリング保持部13bと、ベアリング保持部13bよりも縮径されたシール保持部13cとが、この順番で開口部12側から底部13側に向かって並んで設けられている。ベアリング保持部13bには、ベアリング6が内嵌されている。また、シール保持部13cには、モータケース11内側へのオイルの浸入を防止するためのリング状のオイルシール(シール部材)7が内嵌されている。
【0027】
ステータ21の径方向の内側には、ロータ31が設けられている。ロータ31は、本発明におけるロータ軸となる回転シャフト(ロータ軸)35と、回転シャフト35の外周面に固定されるロータコア32と、ロータコア32の外周面に周方向に沿って配置される複数のマグネット33と、各マグネット33をロータコア32に保持するためのマグネットカバー33aと、マグネットホルダ33bを備えている。ロータコア32は、ステータ21と同様に、例えばプレス加工によって略環状に打ち抜いた金属板(電磁鋼板)を軸方向に複数枚積層して構成されている。各マグネット33は、ロータコア32の径方向外側において、周方向に磁極が交互に変わるように配置されている。
【0028】
回転シャフト35は、ベアリングホルダ4に設けられたベアリング5と、モータケース11の底部13に設けられたベアリング6とによって支持されている。これにより、ロータ31はステータ21の径方向の内側において、中心軸Oと同軸上に回転自在に軸支されている。回転シャフト35の一方の端部35aは、モータケース11の開口部12の端部に配置されている。また、回転シャフト35の他方の端部35bは、ベアリング6、オイルシール7、およびシャフト挿通孔(貫通孔)13aに挿通されて、モータケース11の底部13の外端面14よりも外側に突出している。
【0029】
また、モータケース11の底部13には、底部13における径方向の一側面15a(
図1参照)と、底部13の前記外端面14よりポンプ部90側とを連通させる吸入孔16および吐出孔17が一体的に形成されている。吸入孔16は、外部からポンプ部90にオイル(流体)を流入するための流路を構成するもので、ポンプ部90に連通して該ポンプ部90側から前記オイルシール7に向けて延出して形成された第一流路16aと、該第一流路16aに連通し、かつ前記オイルシール7よりモータケース11の径方向外側に配置されて、回転シャフト35と直交する方向に向けて延出して形成され、前記一側面15a(
図1参照)に開口する第二流路16bと、によって形成されている。吐出孔17は、ポンプ部90からオイル(流体)を流出するための流路を構成するもので、ポンプ部90に連通して該ポンプ部90側から前記オイルシール7に向けて延出して形成された第一流路17aと、該第一流路17aに連通し、かつ前記オイルシール7よりモータケース11の径方向外側に配置されて、回転シャフト35と直交する方向に向けて延出して形成され、前記一側面15a(
図1参照)に開口する第二流路17bと、によって形成されている。
【0030】
これら吸入孔16と吐出孔17とは、回転シャフト35を挟んでその両側にそれぞれ配置されている。また、これら吸入孔16と吐出孔17とは、
図2に示すように、それぞれの第二流路16b、第二流路17bがオイルシール7と、モータケース11の径方向で一部重なるように(オイルシール7の径方向外側に、第二流路16b、第二流路17bの一部が重なるように)配置されている。すなわち、吸入孔16と吐出孔17とは、モータケース11の径方向外方から中心側を見て、オイルシール7と一部が重なるように配置されている。これにより、吸入孔16および吐出孔17とオイルシール7との軸方向での距離が、実質的に零未満となっている。したがって、本実施形態ではブラシレスモータ20とポンプ部90との間の軸方向の長さを短くし、モータケース11の底部13の軸方向寸法が小さくされている。すなわち、短軸化されている。
【0031】
また、第一流路16a、第一流路17aは、本実施形態ではポンプ部90に対応して、オイルシール7と、モータケース11の軸方向で一部重なるように配置されている。すなわち、第一流路16aと第一流路17aとは、モータケース11の軸方向外方から中心側を見て、オイルシール7と一部が重なるように配置されている。これにより、第一流路16a、第一流路17aは、前記したようにポンプ部90に対応した位置に形成配置されている。したがって、モータケース11の底部13が外側に膨らむことにより、小型化が損なわれることが回避されている。
【0032】
すなわち、第二流路16b、第二流路17bをオイルシール7よりモータケース11の径方向外側に配置すべく、第一流路16a、第一流路17aもモータケース11の径方向外側に移動させると、後述するように、第一流路16a、第一流路17aはポンプ部90のポンプ室95と連通する位置関係になっているため、このポンプ室95を径方向外側に移動させることにもなって、ポンプ部90も従来のものに比べてその外径を大きくしなくてはならない。しかし、その場合にはモータケース11の底部13が外側に膨むことで拡径し、電動ポンプ自体が大型化してしまう。しかし、本実施形態では、前記したように第二流路16b、17bのみをモータケース11の径方向外側にオフセットし、第一流路16a、第一流路17aはオイルシール7と、モータケース11の軸方向で一部重なるように配置しているので、このような大型化が回避されている。
【0033】
吸入孔16の第一流路16aと吐出孔17の第一流路17aとは、
図2のA−A線に沿った矢視断面図である
図3に示すように、共に、モータケース11の軸方向から見た開口形状が略三日月状に形成されており、かつ、
図2に示したように共に、モータケース11の径方向から見た開口形状が矩形状に形成されている。また、これら第一流路16aと第一流路17aとは、
図3に示すようにシャフト挿通孔13aを挟んでほぼ線対称に配置されている。
【0034】
一方、吸入孔16の第二流路16bと吐出孔17の第二流路17bとは、
図2に示したように共に、その横断面が円形に形成されている。また、これら第二流路16b、第二流路17bは、第一流路16a、第一流路17aに対して、それぞれモータケース11の径方向外側にずれた状態となるようにオフセットして連通している。すなわち、
図3に示す第一流路16a、第一流路17aと第二流路16b、第二流路17bとの間の連通孔16c、17cでは、軸方向から見たときの略三日月状の第一流路16a、第一流路17aの中心線C1に対して、第二流路16b、第二流路17bの中心軸C2が径方向外側にずれて配置されている。
【0035】
したがって、これら第一流路16a、第一流路17aと第二流路16b、第二流路17bとの間の連通孔16c、17cは、
図3に対応する箇所の斜視図である
図4に示すように、横断面円形状の孔からなる第二流路16b、第二流路17bの長さ方向の一部が、略三日月状の第一流路16a、第一流路17aの外側の一部に斜め方向で連通することにより、略楕円形状に形成される。(
図4は
図2のA−A線に沿った矢視断面の斜視図であるため、各連通孔16c、17cは楕円形状の半分のみが示されている。)
【0036】
このような連通孔16c、17cは、その開口面積が、横断面が円形状の第二流路16b、第二流路17bの断面積(開口面積)より大となるように形成されている。これにより、吸入孔16、吐出孔17では、連通孔16c、17cで開口面積が第二流路16b、17bに比べて極端に小さくなることにより、該連通孔16c、17cを通過する際の流路抵抗が大きくなって吸入孔16や吐出孔17を流れるオイル(流体)の流動性が低下することが、防止されている。
【0037】
ポンプ部90は、モータケース11の外端面14に取り付けられたポンプケース91と、ポンプケース91内に設けられたインナロータ92およびアウタロータ93と、軸方向の外側からポンプケース91を覆うポンプカバー94と、によって形成された、内接ギヤ式のトロコイドポンプである。
ポンプケース91は、例えば鉄(炭素鋼)やアルミニウム等の金属材料により枠状に形成されており、内側が円筒空間、すなわち軸方向視で円形状のポンプ収納部91aとなっている。ポンプ収納部91aは、中心軸Oに対して偏心している。ポンプケース91は、モータケース11の外端面14に、複数のボルト96等(
図1参照)を螺合することにより締結されており、モータケース11の外端面14とポンプケース91との間には、周方向の全周にわたってOリング97が配置されている。これにより、モータケース11の外端面14とポンプカバー94との間のシール性が確保される。
【0038】
インナロータ92は、例えば鉄(炭素鋼)やアルミニウム等の金属材料によって形成されており、複数(本実施形態では7個)の外歯ギヤを有している。インナロータ92は、回転シャフト35の他方の端部35bに、その軸方向に相対移動自在、かつ周方向に相対移動不能な状態で支持されている。すなわち、例えば前記他方の端部35bに二方取り加工がなされていることにより、インナロータ92は該他方の端部35bに相対移動自在、かつ周方向に相対移動不能な状態に外挿されている。
【0039】
アウタロータ93は、インナロータ92と同様に、例えば鉄(炭素鋼)やアルミニウム等の金属材料により形成されており、インナロータ92の外歯ギヤと噛合可能であって、インナロータ92の外歯ギヤよりも多い複数(本実施形態では8個)の内歯ギヤを有している。アウタロータ93は、その外径がポンプ収納部91aの内径よりも僅かに小さくなるように形成されている。アウタロータ93は、インナロータ92の回転に伴い、アウタロータ93の外周面の一部がポンプ収納部91aの内周面に支持されて回転する。
【0040】
互いに噛合するインナロータ92の外歯ギヤとアウタロータ93の内歯ギヤとの間には、ポンプ室95が形成される。ポンプ室95は、インナロータ92およびアウタロータ93の回転に伴って容積が増減するように、すなわち容積が変化することで生じる部屋に形成されており、前記吸入孔16の第一流路16aおよび前記吐出孔17の第一流路17aに連通している。このような構成によってポンプ室95は、容積が増大することにより、ポンプ室95外から吸入孔16を介してポンプ室95内にオイルを吸引(流入)し、容積が減少することにより、ポンプ室95内から吐出孔17を介してポンプ室95外にオイルを排出(流出)している。
【0041】
ポンプカバー94は、例えば、鉄(炭素鋼)やアルミニウム等の金属材料により形成されており、軸方向の外側からポンプケース部91(モータケース11)に、ボルト96(
図1参照)によって固定されている。ポンプケース部91とポンプカバー94との間には、周方向の全周にわたってOリング98が配置されている。これにより、ポンプケース部91とポンプカバー94との間のシール性が確保される。
【0042】
図1に示すように、モータケース11の底部13における径方向の一側面15aには、外側に張り出す電動ポンプ取付部15が形成されている。電動ポンプ取付部15には、取付孔15bが複数形成されている。電動ポンプ1は、取付孔15bに挿通された不図示のボルトをギヤボックス等の被取付体に締結することで、被取付体に取り付けられる。これにより、吸入孔16の第二流路16bおよび吐出孔17の第二流路17bは、被取付体の内部と連通するとともに、オイルを被取付体の内部に圧送可能に構成されている。
【0043】
図5は、ハウジング10の分解斜視図である。
図5に示すように、モータケース11の開口部12側の端部であって、ベアリングホルダ4よりも軸方向の外側には、制御装置50を取り付ける(配設する)ための制御装置配設部40が設けられている。制御装置配設部40は、軸方向から見てモータケース11の開口部12と連通する配設用開口41を有する略長方形状をなし、モータケース11と一体的に形成されている。制御装置配設部40の長手方向の一端部は、軸方向から見てモータケース11の径方向の外側に張り出し形成されたフランジ部42となっている。フランジ部42の中央部には、軸方向に貫通する貫通孔43が形成されている。
【0044】
図5に示すように、制御装置50は、主に本体部分を構成する板状のバスバーユニット本体53と、ブラシレスモータ20(
図2参照)を駆動するモータ駆動ユニット66と、モータ駆動ユニット66を制御するモータ制御ユニット71と、外部電源から供給される電流のノイズを抑制する複数の雑防素子80と、により形成されている。なお、以下の説明では、制御装置50におけるモータケース11の外側を向く面を第一主面51とし、第一主面51とは反対側であって、モータケース11の内側を向く面を第二主面52として説明する。
【0045】
図5に示すように、バスバーユニット本体53は、内部に複数のバスバーが配線された絶縁材料からなるベース部54と、ハウジング10のフランジ部42に対応した部位においてベース部54に一体的に設けられたコネクタ部58と、を有している。
ベース部54は、平面視で略長方形状の板状に形成されており、例えばモールド成形することにより内部に複数のバスバーを設けている。ベース部54には、給電端子29a〜29c(
図3参照)に対応した位置に第一バスバー用開口54aが形成され、第一バスバー用開口54aのコネクタ部58側に第二バスバー用開口54bが形成され、コネクタ部58の第一バスバー用開口54a側に第三バスバー用開口54cが形成されている。第一バスバー用開口54a、第二バスバー用開口54bおよび第三バスバー用開口54cは、それぞれベース部54を軸方向に貫通して形成されている。
【0046】
複数のバスバーは、三相バスバー104a〜104cを備えており、例えば銅等の金属板材を所望の形状に折曲して形成されている。
なお、詳細な説明は省略するが、複数のバスバーを構成する他のバスバーも、ベース部54にモールド成形されている。
【0047】
三相バスバー104a〜104cは、それぞれモータ駆動ユニット66とバスバーリングユニット28の給電端子29a〜29cとを電気的に接続している。
三相バスバー104a〜104cの一端部は、第一バスバー用開口54aから、それぞれ給電端子29a〜29cに沿うようにハウジング10の外側に向かって立設されている。三相バスバー104a〜104cの一端部は、給電端子29a〜29cに対して、例えば溶接により接続される。
【0048】
ベース部54の第一主面51のうち、制御装置配設部40の配設用開口41に対応した領域には、モータ駆動ユニット66が例えばタッピングビス66aにより取り付けられている。モータ駆動ユニット66は、平面視で略矩形状に形成されており、内部に例えば、FET(Field effect Transistor:電界効果トランジスタ)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子が内蔵されている。
【0049】
モータ駆動ユニット66は、パワー端子67d,67eから入力された直流電源を、三相交流に変換するとともに、所望の通電パターンで三相端子67a,67b,67cから出力している。
モータ駆動ユニット66の外側の主面には、例えばシリコーンゴムにより形成された放熱シート68が貼付されている。
【0050】
図2に示すように、ベース部54の第二主面52におけるハウジング10のフランジ部42に対応した部位には、コネクタ部58が第二主面52からハウジング10の底部13側に向かって、軸方向に沿って立設されている。
図1に示すように、コネクタ部58は、略矩形状の開口を有しており、内側に複数のバスバーの一端部が配置されている。
図2、
図5に示すように、コネクタ部58は、制御装置50を制御装置配設部40に取り付けたときに、フランジ部42の貫通孔43を通ってハウジング10の外部に導出される。
【0051】
ここで、
図2に示すようにベース部54の第二主面52側には、コネクタ部58の基端部の周辺にシール面55が形成されている。シール面55は、中心軸O(
図2参照)と直交する平坦面に形成されている。そして、
図5に示すように、ベース部54のシール面55とハウジング10のフランジ部42との間には、コネクタ部58周りに配された環状のシール部材56が挟持されている。シール部材56は、環状のOリングである。シール部材56は、フランジ部42の貫通孔43を囲むように形成されたリング溝44内に嵌め込まれるとともに、ベース部54のシール面55によってわずかに潰される。これにより、シール部材56は、コネクタ部58周りのシール性を確保し、コネクタ部58とフランジ部42の貫通孔43との間隙から浸入した水がシール部材56よりも外側に移動するのを防止している。
【0052】
図5に示すように、制御装置50は、ベース部54の四隅に、金属材料からなるパイプ状のカラー部材57a〜57dがインサート成形されている。そして、制御装置50は、各カラー部材57a〜57dにボルト111をそれぞれ挿通して制御装置配設部40に締結することにより、モータケース11における軸方向の開口部12側の端部に一体的に連結される。
【0053】
図5に示すように、カバー部材46は、制御装置配設部40に対して例えばボルト112により締結固定されており、制御装置配設部40および制御装置50を軸方向の外側から覆蓋している。
カバー部材46は、例えばアルミニウムや鉄(炭素鋼)、銅等の金属材料により形成されている。特に、カバー部材46は、熱伝導率が高く、軽量かつ廉価なアルミニウムにより形成されるのが望ましい。カバー部材46は、制御装置配設部40に対応して中心軸O周りに矩形枠状に配置された周壁47と、軸方向に面する底壁48とにより、略バスタブ状に形成されている。カバー部材46の周壁47と制御装置配設部40との間には、周方向の全周にわたってOリング99が配置されている。Oリング99は、カバー部材46の周壁47の先端面に形成されたリング溝47a(
図2参照)に嵌め込まれるとともに、ボルト111によりカバー部材46を締結する際にわずかに潰されることでシール性を発揮する。これにより、制御装置配設部40とカバー部材46との間のシール性が確保される。
【0054】
カバー部材46の底壁48には、ハウジング10の内外を連通する呼吸孔45が設けられている。呼吸孔45は、ハウジング10の内部が、例えば温度上昇に伴う空気の膨張によってハウジング10の外部よりも高圧力となった場合に、圧力をハウジング10の外部に開放するためのものである。
【0055】
カバー部材46の底壁48の外側面には、複数の冷却フィン49が一体形成されている。冷却フィン49は、制御装置50で発生した熱を放熱している。
ここで、
図2に示すように、制御装置50の第一主面51側に取り付けられたモータ駆動ユニット66は、カバー部材46の底壁48の内側面48aに、放熱シート68を介して接触するようになっている。これにより、モータ駆動ユニット66は、放熱シート68を介してカバー部材46に熱を伝達させて、効率よくカバー部材46の冷却フィン49から放熱できる。
【0056】
本実施形態の電動ポンプ1によれば、吸入孔16と吐出孔17とを、それぞれ、オイルシール7と径方向で一部重なるように配置しているので、吸入孔16および吐出孔17とオイルシール7との軸方向での距離が実質的に零未満となる。したがって、ブラシレスモータ20とポンプ部90との間の軸方向の長さを短くすることができ、これによって電動ポンプ1自体の小型化を可能にすることができる。
【0057】
また、吸入孔16、吐出孔17の第二流路16b、17bを、回転シャフト35と直交する方向に向けて延出形成しているので、該第二流路16b、17bはその内径分しかブラシレスモータ20とポンプ部90との間の軸方向の長さに影響しない。したがって、電動ポンプ1の短軸化を損なうことなく、第二流路16b、17bの延出する長さやその開口位置を自由に設定することができる。
【0058】
また、第一流路16a、17aに対して第二流路16b、17bを、モータケース11の径方向外側にずれた状態となるようにオフセットして連通させているので、第一流路16a、17aをポンプ部90に対応する位置に配置した状態で、第二流路16b、17bのみを径方向外側にオフセットすることができる。したがって、モータケース11の底部13が外側に膨らむことで電動ポンプ1の小型化が損なわれることを回避することができる。
【0059】
また、第一流路16a、17aと第二流路16b、17bとの間の連通孔16c、17cの開口面積を、第二流路16b、17bの断面積(開口面積)より大となるようにしているので、第二流路16b、17bに比べて連通孔16c、17cで開口面積が極端に小さくなることにより、流路抵抗が大きくなって吸入孔16や吐出孔17を流れるオイル(流体)の流動性が低下するのを防止することができる。
【0060】
また、ポンプ部90として内接ギヤ式のトロコイドポンプを用いるので、ポンプ部90に連通する吸入孔16と吐出孔17との形成位置がそれぞれ決まり、したがって吸入孔16や吐出孔17の設計がし易くなる。また、トロコイドポンプは特に粘度の高い液体の輸送に優れるため、オイルポンプとして好適となる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は前記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、ポンプ部90としていわゆるトロコイドポンプを用いたが、ポンプの方式はこれに限定されることなく、例えばインペラを有する非容積型の再生式ポンプを用いることもできる。
【0062】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。