特許第5903090号(P5903090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903090
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】自在電線接続体
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20160331BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H01R11/01 Z
   H02G15/08
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-261355(P2013-261355)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-118795(P2015-118795A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 亀彦
(72)【発明者】
【氏名】難波 秀二
(72)【発明者】
【氏名】東 謙二
(72)【発明者】
【氏名】浅野 敏行
(72)【発明者】
【氏名】杉本 充
(72)【発明者】
【氏名】南條 正憲
(72)【発明者】
【氏名】宮原 進
(72)【発明者】
【氏名】原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】安田 淳一
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−025099(JP,Y1)
【文献】 実公昭44−006920(JP,Y1)
【文献】 実公昭48−015354(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割片からなり、当該複数の分割片を組み合わせることによって、円柱状に形成される円柱部、当該円柱部の一端から縮径して形成される円錐部、及び前記円柱部と前記円錐部の中心軸上に形成される電線が通る孔部を有する第1部材と、
前記円柱部を内部に挿入自在でかつ前記円錐部を覆う円筒部を有する第2部材と、
前記円柱部及び前記円錐部を収納する錐状の凹部が形成された円柱状の収納部を2つ有し、当該収納部に前記円筒部が連結された場合に、前記円錐部が前記凹部の内に配置される第3部材とを備え、
前記第1部材は、
前記円柱部の他端部側に形成され、径方向に突出する突起を有し、
前記第2部材は、
前記円筒部の内面に形成され、前記突起に係合する溝部と、
前記円筒部における前記円錐部の側の端部の内面に形成された雌ねじ部と、を有し、
前記第3部材は、
前記収納部に形成され、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有し、
前記凹部は、前記第1部材の円柱部が挿入され、前記円柱部より軸方向の長さが短くかつ前記円柱部より径が大きい円柱形凹部と、当該円柱形凹部に連続して形成され、前記円錐部における軸方向の長さの変化に対する径の変化の割合と同じ割合で縮径する円錐形凹部とを有し、
前記突起の径方向の長さは、前記第2部材の内部において前記複数の分割片を組み合わせた場合に前記溝部から抜け落ちない長さで、かつ前記複数の分割片を径方向に広げた場合に前記突起の頂上が前記溝部の底面に接触しない長さに設定され、前記溝部の軸方向の幅は、前記突起の軸方向の幅よりも長く設定されていることを特徴とする自在電線接続体。
【請求項2】
前記第1部材における前記孔部の内に、前記複数の分割片を半径方向外側に付勢する板ばねを、軸方向に沿って複数設け、
前記板ばねは、一部に開放部分を有する円環状に形成され、
複数の前記板ばねの前記開放部分は、それぞれ異なる方向を向いていることを特徴とする請求項1記載の自在電線接続体。
【請求項3】
前記第3部材は、前記収納部ごとに分離接続自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の自在電線接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が切断された場合の事故復旧に用いられ、2本の電線を接続する自在電線接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線張替時の緊急復旧やジャンパー切断時の事故復旧では、圧縮形ジャンパースリーブやPGクランプ・S型クランプ等を使用して復旧作業が行われる。ここで、事故復旧を行うにあたり、同種の電線の在庫を確認し、同種の電線があればそれを採用することによって本復旧を行うことができる。しかし、同種の電線の在庫がない場合には、送電容量を確保するため、大きいサイズの電線を用いて仮復旧を行うことになる。このため、仮復旧を行う際に、異径のサイズの電線に対応可能な電線接続体が必要になる。
【0003】
そこで、従来、特許文献1に記載されている技術が提案されている。特許文献1によれば、ケーブル導体を挿入する導体挿入孔を有する接続杆と、外周面がテーパ状にされ、周囲数ヶ所に端縁から中間部まで長さ方向に延びる割りを有し更に1ヶ所に長さ方向全長に亙る割りを有し、導体挿入孔及びこの中に挿入されたケーブル導体との間に配置された当てリングと、接続杆に着脱自在に装着され、当てリングを導体挿入孔の内方に押圧する締付金具と、を備えたケーブル導体接続部について提案されている。
【0004】
このように構成された特許文献1のケーブル導体接続部によれば、ケーブル導体外径の寸法にあまりこだわることなく適当な当てリングを使用することができ、当てリングの内周全面がケーブル導体に密着するようになる。その結果、電気的に良好な接触状態が得られ機械的にも安定する、という効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51−32931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、仮復旧用として用いられる電線接続体は、本復旧の際には取り外されるために、異径の電線に対応可能である他に、電線の取付け、取外しにかかる作業性を向上させることを可能にし、しかも、取外した電線接続体が再利用可能であることが望まれる。
【0007】
特許文献1のケーブル導体接続部においては、締付金具を、中央部にケーブル導体を通した状態で接続杆の導体挿入孔の内側にねじ込むものであり、締付金具の取付作業が比較的困難である。また、取外作業においては、締付金具を開放して接続杆から当てリングを取り出すことができれば、ケーブル導体接続部の再利用が可能である。しかし、当てリングは導体挿入孔の内部に押し込まれており、簡単には取り出しにくい。このため、ケーブル導体接続部を再利用することは困難である。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決し、異径の電線の接続に対応可能であるとともに、電線の取付け、取外しにかかる作業性を向上させ、しかも再利用可能な自在電線接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0010】
(1) 複数の分割片からなり、当該複数の分割片を組み合わせることによって、円柱状に形成される円柱部、当該円柱部の一端から縮径して形成される円錐部、及び前記円柱部と前記円錐部の中心軸上に形成される電線が通る孔部を有する第1部材と、前記円柱部を内部に挿入自在でかつ前記円錐部を覆う円筒部を有する第2部材と、前記円柱部及び前記円錐部を収納する錐状の凹部が形成された円柱状の収納部を2つ有し、当該収納部に前記円筒部が連結された場合に、前記円錐部が前記凹部内に配置される第3部材とを備え、前記第1部材は、前記円柱部の他端部側に形成され、径方向に突出する突起を有し、前記第2部材は、前記円筒部の内面に形成され、前記突起に係合する溝部と、前記円筒部における前記円錐部側の端部の内面に形成された雌ねじ部と、を有し、前記第3部材は、前記収納部に形成され、前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有し、前記凹部は、前記第1部材の円柱部が挿入され、前記円柱部より軸方向の長さが短くかつ前記円柱部より径が大きい円柱形凹部と、当該円柱形凹部に連続して形成され、前記円錐部における軸方向の長さの変化に対する径の変化の割合と同じ割合で縮径する円錐形凹部とを有することを特徴とする自在電線接続体。
【0011】
(1)によれば、第1部材の孔部に電線に通し、第2部材を回転させて第3部材の収納部に螺合させていくことによって、第2部材が第3部材の凹部側に移動する。この際、第2部材の溝部に第1部材の突起が当接して第2部材ともに第1部材が移動することにより、第1部材の円柱部が第3部材の円柱形凹部に沿って移動し、第1部材の円錐部が第3部材の円錐形凹部に向かって移動する。そして、円錐部の外面が円錐形凹部に向かって内面に当接すると、第1部材を構成する複数の分割片が中心軸側に移動し、孔部が小さくなることによって電線を押圧する。これにより、第1部材が第2部材によって第3部材に固定されるとともに、電線が第1部材によって確実に挟持される。更に、第2部材を第3部材にねじ込む長さに応じて第1部材の孔部の大きさを変えることができるため、異径の電線に対応した自在電線接続体を提供することができる。更に、第2部材を逆回転させることにより、第2部材と一緒に第1部材を第3部材から外すことができるため、電線に対する取り付け取り外しにかかる作業性を向上させ、しかも再利用可能な自在電線接続を提供することができる。
【0012】
また、第2部材の円筒部の内側に第1部材の円柱部が配置されるため、第1部材と第2部材とを組み合わせた際に、第1部材が円柱部の内側に整列した状態で維持される。また、第3部材の円柱形凹部の軸方向の長さが、第1部材の円柱部より短いため、第2部材が第3部材側に移動している間に第1部材の円錐部が円錐形凹部に当接し、複数の分割片が中心軸側に移動して第1部材の孔部が徐々に狭くなる。これにより、第1部材を構成する複数の分割片を電線側に円滑に移動させるとともに、第1部材に電線を確実に挟持させることが可能になる。
【0013】
(2) (1)において、前記第1部材における前記孔部内に、前記複数の分割片を半径方向外側に付勢する板ばねを、軸方向に沿って複数設け、前記板ばねは、一部に開放部分を有する円環状に形成され、複数の前記板ばねの前記開放部分は、それぞれ異なる方向を向いていることを特徴とする自在電線接続体。
【0014】
(2)によれば、孔部を大きくした状態で維持することが可能になり、電線を挿入し易くすることができる。また、複数の板ばねの開放部分はそれぞれ異なる方向を向いていることにより、分割片に対して複数の板ばねのいずれかの付勢力を与えることができるようになり、複数の分割片を均等に付勢することができる。
【0015】
(3) (1)、(2)において、前記第3部材は、前記収納部毎に分離接続自在であることを特徴とする自在電線接続体。
【0016】
(3)によれば、各収納部毎に分離した後に収納部から電線を取り外したり、分離状態の各収納部に電線を接続した後に収納部同士を連結したり、といった作業によって、電線の取付け、取外しを行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異径の電線の接続に対応可能であるとともに、電線の取付け、取外しにかかる作業性を向上させ、しかも再利用可能な自在電線接続体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における自在電線接続体1の外観を示す斜視図ある。
図2】自在電線接続体1の内部構成を示す断面図である。
図3】保持部材10の構成を示す斜視図である。
図4】板ばね40の構成を示す断面図である。
図5】本実施形態の変形例を示す断面図ある。
図6】本実施形態の変形例を示す断面図ある。
図7図6の自在電線接続体1の要部構成を示す説明図である。
図8図6の自在電線接続体1の要部構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における自在電線接続体1の外観を示す斜視図であり、図2は、自在電線接続体1の内部構成を示す断面図である。自在電線接続体1は、第1部材に相当する保持部材10と、第2部材に相当する連結部材20と、第3部材に相当する固定部材30と、板ばね40(図2参照)と、を備えている。
【0020】
図3は、保持部材10の構成を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、保持部材10は、中央部に形成された円柱部10aと、円柱部10aの一端部から縮径しながら円錐状に突出する円錐部に相当する第1円錐部10bと、円柱部の他端部から縮径しながら突出する第2円錐部10cと、円柱部10a、第1円錐部10b及び第2円錐部10cの中心軸上に形成された円柱状の孔部10dと、を備える。
【0021】
第1円錐部10b及び第2円錐部10cは、円錐の頂部が除かれた側面視等角台形の錐体であり、第2円錐部10cは、第1円錐部10bよりも長く形成されている。
【0022】
また、保持部材10は、突起10eを備えている。この突起10eは、円柱部10aの側面の他端部に円環状に形成され、半径方向外側に突出している。
【0023】
保持部材10における孔部10dの壁面には、環状の溝部10fが長手方向に複数並ぶように形成されている。本実施形態においては、2つの溝部10fが、孔部10dの壁面における円柱部10aの一端部付近の部位と、第2円錐部10cの中央部付近の部位とに形成されている。
【0024】
更に、保持部材10は、図3に示すように、3つの分割片12の組み合わせによって構成される。これら3つの分割片12は、全て同形であり、保持部材10を中心軸方向視した場合、中心軸から120°間隔で径方向に延びる3つの仮想切断面によって分割された部材である。
【0025】
なお、分割片12は、円柱部10a、第1円錐部10b、第2円錐部10c、突起10e及び溝部10fを3分割してなる円柱部12a、第1円錐部12b、第2円錐部12c、突起12e及び溝部12fからなる。言い換えれば、円柱部10a、第1円錐部10b、第2円錐部10c、突起10e及び溝部10fは、3つの円柱部12a、第1円錐部12b、第2円錐部12c、突起12e及び溝部12f(図4参照)の組み合わせによって構成される。
【0026】
図2に示すように、連結部材20は、円筒部20aと、円錐形筒部20bとを備えた筒状部材である。
【0027】
円筒部20aは、円柱部10aよりも長く、内径が円柱部10aの外径よりも大きく形成されている。この円筒部20aにおける一端側の内面には雌ねじ部20cが形成されている。また、円筒部20aの内面の他端部は段状に形成されており、円筒部20aの他端側の内径は、円柱部10aの外径よりも大きく形成されている。この段状部分の内周面に環状の溝部20dが形成されており、この溝部20dに、保持部材10の突起10eが係合する。また、雌ねじ部20cは、円筒部20aにおける段状部分以外の内面全体に形成されている。
【0028】
円錐形筒部20bは、円筒部20aにおける溝部20d側の端部から縮径しながら中心軸に沿って外側に延びている、側面視等脚台形の錐体である。円錐形筒部20bの軸方向の長さは、第2円錐部10cの軸方向の長さの約半分であり、円錐形筒部20bの内側は、円錐形筒部20bの頂部に向かって縮径している。円錐形筒部20bの内側は、第2円錐部10cが外側に向かって縮径していく割合(軸方向の長さに対する半径の変化の割合)と同じ割合で縮径している。
【0029】
このように構成された連結部材20に保持部材10が取り付けられる。具体的に、保持部材10は、連結部材20の円筒部20aの開口に、分割片12を1つずつ第2円錐部12c側から挿入し、円錐形筒部20bの頂部から第2円錐部12cを突出させるともに、溝部20dに突起12eを係合させ、連結部材20の内部に3つの分割片12を環状に配置することによって、連結部材20に取り付けられる。
【0030】
突起12eの径方向の長さは、連結部材20の内部において3つの分割片12を組み合わせた場合に、溝部20dから抜け落ちない長さで、かつ3つの分割片12を径方向に広げた場合に突起12eの頂上が溝部20dの底面に接触しない長さに設定されている。また、溝部20dの軸方向の幅は、突起12eの軸方向の幅よりも長く設定されている。
【0031】
このため、保持部材10を連結部材20に取り付けた場合、3つの分割片12は、連結部材20の内部において、第2円錐部12cが円錐形筒部20bの内部壁面に面接触するまで径方向に広げることが可能であり、3つの分割片12同士が接触するまで径方向に狭めることが可能である。すなわち、保持部材10の孔部10dは、第2円錐部12cが円錐形筒部20bの内部壁面に面接触している状態で最大径となり、3つの分割片12同士が接触している状態で最小径となる。したがって、外径が、この最小径から最大径までの範囲の電線であれば、孔部10dに挿入することが可能である。
更に、連結部材20は、保持部材10に対して独立して軸周りに回転可能である。
【0032】
固定部材30は、導電性を有する円柱部材30aの両端の円形平面中央に凹部30bを形成し、更に、円柱部材30aの両端部に雄ねじ部30cを形成したものである。すなわち、凹部30b及び雄ねじ部30cは、円柱部材30aの中央に対して軸方向の一端側と他端側とにそれぞれ形成されている。
【0033】
固定部材30の外径は、連結部材20の円筒部20aの一端側の内径より若干小さく、雌ねじ部20cと雄ねじ部30cとが螺合可能になるように設定されている。
【0034】
凹部30bは、円柱部材30aの両端の円形平面中央から円柱部材30aの軸方向に延びる円柱形凹部32と、円柱形凹部32に連続して縮径しながら軸方向に延びる円錐形凹部33とによって構成されている。
【0035】
円柱形凹部32の内径は、保持部材10の円柱部10aの外径よりも若干大きく設定されている。具体的には、保持部材10が連結部材20に取り付けられかつ保持部材10を構成する分割片12の第2円錐部12cが連結部材20の円錐形筒部20bに当接している状態、言い換えれば3つの分割片12が最大に開いている状態における円柱部10aの外径よりも円柱形凹部32の内径が大きくなるように設定されている。
円錐形凹部33は、第1円錐部10bにおける縮径の割合と同じ割合で縮径しており、円錐形凹部33の軸方向の長さは、第1円錐部10bよりも長く設定されている。すなわち、円錐形凹部33に第1円錐部10bが適合された場合に、第1円錐部10bの先端側に閉空間が形成される。
【0036】
雄ねじ部30cは、円柱部材30aの両端部に形成されている。雄ねじ部30cのピッチ数は、雌ねじ部20cと同じに設定されている。なお、以下の説明において、円柱部材30aにおける凹部30b及び雄ねじ部30cが形成されている部位を収納部30dと称することにする。すなわち、固定部材30は、2つの収納部30dを有している。
【0037】
板ばね40は、矩形の平板部材を、図4に示すようにC字形の円環状に加工したものであり、保持部材10の溝部10f内に配置される。本実施形態によれば保持部材10に2つの板ばね40が配置される。このとき、2つの板ばね40は、板ばね40の両端の間に形成された開放部分がそれぞれ異なる方向を向くように配置される。
【0038】
板ばね40は、半径方向外側すなわち広がる方向に弾性変形する。このため、連結部材20に取り付けられた保持部材10に板ばね40を取り付けた場合、保持部材10を構成する3つの分割片12の円柱部12a、第2円錐部12cの外面が連結部材20の円筒部20a、円錐形筒部20bの内面に当接した状態で維持される。
【0039】
そして、自在電線接続体1は、図1及び図2に示すように、2つの保持部材10と、2つの連結部材20と、1つの固定部材30と、4つの板ばね40とによって構成されている。まず、連結部材20に保持部材10を取り付け、更に保持部材10に2つの板ばね40を取り付けた組立体を2組用意する。そして、保持部材10の第1円錐部10bを固定部材30の凹部30bに遊挿した状態で連結部材20を回転させ、雌ねじ部20cと雄ねじ部30cとを螺合させる。これにより、1組の組立体が収納部30dに取り付けられる。そして、固定部材30の2つの収納部30dにそれぞれ組立体が取り付けられることによって、自在電線接続体1が構成される。
【0040】
次に、本実施形態の自在電線接続体1による電線の接続手順及び自在電線接続体1の動作について説明する。
【0041】
まず、連結部材20を逆回転させて、連結部材20を固定部材30から離れる方向に移動させ、連結部材20の円筒部20aの開口縁部が螺合している状態とする。この時、第1円錐部10bが円錐形凹部33から離間するとともに、3つの分割片12が、板ばね40の付勢によって円錐形筒部20bの内面に当接した状態になる。すなわち保持部材10の孔部10dが最大に開いた状態になる。
【0042】
この状態から、保持部材10の孔部10dに電線の先端を、第2円錐部10c側から挿入する。電線を保持部材10の孔部10dに挿入すると、先端が凹部30bの底面に当接するためそれ以上の挿入が規制される。この時、保持部材10の孔部10dは電線の外径より大きいため、電線は保持部材10の孔部10dに遊挿された状態にある。
【0043】
次に、固定部材30をスパナ等の工具を用いて定位置に固定し、第1円錐部10bを固定部材30の凹部30bに遊挿した状態で連結部材20を回転させ、雌ねじ部20cと雄ねじ部30cとを更に螺合させる。この時、連結部材20が、1回転する毎に雄ねじ部30cの1ピッチ分だけ固定部材30側に移動する。更に、連結部材20を回転させると、保持部材10の突起10eが溝部20dの壁面に当接することによって保持部材10が連結部材20とともに移動し、やがて第1円錐部10bが凹部30bの円錐形凹部33に当接する。
【0044】
この時点で、保持部材10の孔部10dは最大に開いた状態にある。この状態から更に連結部材20を回転させると、保持部材10を構成する3つの分割片12が円錐形凹部33のテーパ面に沿って中心軸側に移動し、やがて3つの分割片12が電線に当接する。そして、この状態から更に連結部材20を回転させると、電線が保持部材10に強く挟持され、電線の先端部が収納部30dに固定される。もう片方の収納部30dについても同様の作業手順によって、電線の先端部を収納部30dに固定することができる。これにより、2本の電線が自在電線接続体1によって接続される。
【0045】
自在電線接続体1から電線を取り外す際には、連結部材20を逆回転させることにより、溝部20dが突起10e側に移動して溝部20dの壁面に突起10eが当接する。これにより、保持部材10が連結部材20ともに移動して、第1円錐部10bが円錐形凹部33から離間していく。第1円錐部10bが円錐形凹部33から離間すると板ばね40がそして、3つの分割片12を外側に付勢することにより、3つの分割片12が円錐形筒部20bの内面に当接し、孔部10dの径が大きくなる。その結果、電線を自在電線接続体1から引き抜くことが可能な状態となる。
【0046】
図2は、固定部材30の一方の収納部30dに、比較的太い電線100を接続し、他方の収納部30dに、比較的細い電線110を接続した状態を示している。図2に示すように、細い電線110の場合には、太い電線100の場合に比較して、連結部材20が収納部30dにおける凹部30bの底面寄りに配置され、その分、孔部10dの径が小さくなり、分割片12の円柱部12aが円筒部20aの内面から大きく離間している。このように、連結部材20を固定部材30の収納部30dにねじ込むことにより、孔部10dを電線に適した径に調整され、保持部材10によって電線を締め付けることが可能になる。
【0047】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、保持部材10の孔部10dに電線に通し、連結部材20を回転させて固定部材30の収納部30dに螺合させていくことによって、連結部材20が固定部材30の凹部30b側に移動する。この際、連結部材20の溝部20dに保持部材10の突起12eが当接して連結部材20ともに保持部材10が移動することにより、第1円錐部10bが凹部30b側に移動する。そして、第1円錐部10bが凹部30bにおける円錐形凹部33に当接すると、保持部材10を構成する複数の分割片12が中心軸側に移動して電線を押圧する。これにより、保持部材10が連結部材20によって固定部材30の収納部30dに固定されるとともに、電線が保持部材10によって確実に支持される。更に、連結部材20を固定部材30の収納部30dに螺合させる長さに応じて保持部材10の孔部10dの大きさを変えることができるため、異径の電線に対応した自在電線接続体1を提供することができる。更に、連結部材20を逆回転させることにより、複数の分割片12による電線の押圧を緩めたり、連結部材20と一緒に保持部材10を固定部材30の収納部30dから外したりすることができるため、電線に対する取付け取外しにかかる作業性を向上させ、しかも再利用可能な自在電線接続体を提供することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、連結部材20の円筒部20aの内側に保持部材10の円柱部10aが配置されるため、保持部材10と連結部材20とが組み合わされた際に、円柱部10aが円筒部20aの内側で整列した状態に維持される。また、固定部材30の円柱形凹部の軸方向の長さが、保持部材10の円柱部10aより短いため、連結部材20が固定部材30側に移動している間に保持部材10の第1円錐部10bが円錐形凹部33に当接し、3つの分割片12が中心軸側に移動して孔部10dが狭くなる。これにより、保持部材10を構成する3つの分割片12を、電線側に円滑に移動させるとともに、保持部材10に電線を確実に挟持させることが可能になる。
【0049】
また、本実施形態によれば、保持部材10の孔部10dに板ばね40を設けたことにより、孔部10dを大きくした状態で維持することが可能になり、電線を挿入し易くすることができる。また、2つの板ばね40の開放部分はそれぞれ異なる方向を向いていることにより、分割片12に対して2つの板ばね40のいずれかの付勢力を与えることができるようになり、3つの分割片12を均等に付勢することができる。
【0050】
また、溝部20dの軸方向の幅が、突起10eの軸方向の幅より長いために、連結部材20を収納部30dに螺合させる際に、突起10eが溝部20dの壁面に当接するまで、連結部材20を回転し易くすることが可能になり、連結部材20を収納部30dに連結する作業が容易になる。
【0051】
また、保持部材10が円柱部10aを有し、連結部材20が円柱部10aに当接する円筒部20aを有しているため、保持部材10を連結部材20に取り付けた際に、板ばね40の付勢によって、分割片12の円柱部12aが円柱部10aに押圧された状態で維持される。このため、保持部材10の3つの分割片12が連結部材20に仮固定された状態で維持されようになり、第1円錐部10bを固定部材30の凹部30bに挿入する作業が容易になる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、固定部材30が、1つの円柱部材30aに2つの収納部30dを形成した構成であるが、それに限らず、固定部材30を2つの収納部30dに分離し、収納部30d同士を連結するように構成してもよい。
【0053】
例えば、図5に示すように、固定部材30を2つの収納部30dの分離し、この収納部30dにおける凹部30bの反対側の円形平面に矩形の延在片30eを延在させる。この延在片30eは、一の平面上に固定部材30の中心軸が通るように設けられる。
【0054】
そして、2つの収納部30dの一の平面同士を重ね合わせ、両者をボルトとナットのような締結部材50を用いて連結、固定する。
【0055】
また、固定部材30を2つの収納部30dの分離し、図7(a)、図8(a)に示すように、一方の収納部30dにおける凹部30bの反対側の円形平面に楔形凸部30fを形成する。更に、図7(b)、図8(b)に示すように、他方の収納部30dにおける凹部30bの反対側の円形平面に、楔形凸部30fが適合する楔形凹部30gを形成する。
【0056】
そして、一方の収納部30dの楔形凸部30fを他方の収納部30dの楔形凹部30gに嵌合させることによって、図6に示すように、2つの収納部30dを連結、固定する。
【0057】
このように構成することにより、2本の電線の先端部を収納部30dに接続してから、2つの収納部30d、30dを連結する、という電線の接続方法が可能になる。特に、図5に示す固定部材30の場合、固定部材30を長くすることが可能になり、例えば、事故処理において切断された電線の先端部を整えるために、先端部を所定量だけ更に切断して電線が短くなった場合などに、容易に対応することが可能になる。
【0058】
また、図6図8に示す固定部材30の場合、2つの収納部30dを連結するための部材を用意することなく、容易に連結することが可能になる。
【符号の説明】
【0059】
1 自在電線接続体
10 保持部材
10a 円柱部
10b 第1円錐部
10c 第2円錐部
10d 孔部
10e 突起
10f 溝部
12 分割片
12a 円柱部
12b 第1円錐部
12c 第2円錐部
12e 突起
12f 溝部
20 連結部材
20a 円筒部
20b 円錐形筒部
20c 雌ねじ部
20d 溝部
30 固定部材
30a 円柱部材
30b 凹部
30c 雄ねじ部
30d 収納部
30e 延在片
30f 楔形凸部
30g 楔形凹部
32 円柱形凹部
33 円錐形凹部
40 板ばね
50 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8