特許第5903096号(P5903096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロイド オルソンの特許一覧 ▶ エリザベス オルソンの特許一覧

特許5903096呼吸抑制に対するモニタリングおよび応答を行う装置および方法
<>
  • 特許5903096-呼吸抑制に対するモニタリングおよび応答を行う装置および方法 図000002
  • 特許5903096-呼吸抑制に対するモニタリングおよび応答を行う装置および方法 図000003
  • 特許5903096-呼吸抑制に対するモニタリングおよび応答を行う装置および方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903096
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】呼吸抑制に対するモニタリングおよび応答を行う装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   A61M16/00 370Z
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-512614(P2013-512614)
(86)(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公表番号】特表2013-526982(P2013-526982A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011024977
(87)【国際公開番号】WO2011149570
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年1月27日
(31)【優先権主張番号】61/372,404
(32)【優先日】2010年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/352,480
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/348,354
(32)【優先日】2010年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/946,698
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512089298
【氏名又は名称】ロイド オルソン
【氏名又は名称原語表記】Lloyd OLSON
(73)【特許権者】
【識別番号】512089302
【氏名又は名称】エリザベス オルソン
【氏名又は名称原語表記】Elizabeth OLSON
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】ロイド オルソン
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス オルソン
【審査官】 倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−518471(JP,A)
【文献】 特表2009−523566(JP,A)
【文献】 特表2010−504171(JP,A)
【文献】 特表2009−539574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸抑制のモニタリングおよび治療のために構築されたシステムであって、
少なくとも一つの患者の状態をモニタし、信号を出力するよう構築された患者モニタリングユニットと;
マイクロプロセッサを含み、少なくとも一のユーザーとのインターフェースを提供するよう構築されたユーザーインタフェースを含むインターフェースユニットであって、患者モニタリングユニットと通信可能であるインターフェースユニットと;
麻薬を投与するための第1の装置と、
少なくとも前記患者モニタリングユニットからの、少なくとも一つの患者の状態が事前に設定された状態値の範囲を外れていることを示す信号に応答して、麻薬拮抗剤の少なくとも一の用量の自動投与を行うよう構築された第2の装置とを備え、
前記インターフェイスユニットは、麻薬拮抗剤の少なくとも一の用量の投与が行われた後、患者モニタリングユニットからの情報を継続的に受信するよう構成され、
前記インターフェイスユニットは、適切な患者状態が検出されると、第1の装置に対し、前記少なくとも麻薬の投与を停止すべきとする信号を与えるよう構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、前記少なくとも一つの患者の状態は、呼吸数、二酸化炭素含有量、酸素およびpH値、血圧、呼吸音、心拍数、生理反応、可聴信号に対する反応から選択されたものであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムにおいて、前記インターフェイスユニットは、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレット、モバイル装置、携帯電話、ページャー、可搬性ディスクトップアクセサリーから選択されたものであることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムにおいて、前記麻薬拮抗剤は、ナロキソンを含み、静脈内投与によって患者に提供されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1のシステムにおいて、前記麻薬拮抗剤を自動投与するよう構築された第2の装置は、ポンプおよび鼻カニューラを備え、前記麻薬拮抗剤は、酸素気流中に分散された霧状のナロキソンを備え、患者の鼻腔内に与えられることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1のシステムにおいて、前記麻薬拮抗剤を自動投与するよう構築された第2の装置は、
前記麻薬拮抗剤は、酸素気流中に分散された霧状のナロキソンを備え、患者の鼻腔内に与えられるものであって、第1のポンプおよび鼻カニューラと、
前記麻薬拮抗剤は、液状のナロキソンを備え、静脈ラインから患者に与えられるものであって、第2のポンプと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記第1のポンプは、前記麻薬拮抗剤を供給するためのものであり、患者モニタリングユニットからの信号を受信して、少なくとも1の用量の麻薬拮抗剤を放出するものであり、用量制御は少なくとも前記信号に基づくものであることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1のシステムにおいて、
前記第2の装置は、患者モニタリングユニットからの信号およびインターフェイスユニットからの信号を受信して、前記麻薬拮抗剤を放出することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6のシステムにおいて、
前記第1のポンプは、少なくとも麻薬を患者に投与する第1装置から独立していることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1のシステムにおいて、
前記少なくとも麻薬を投与する第1装置は、静脈ラインを介して少なくとも麻薬を供給するポンプを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1のシステムにおいて、
皮膚に対する低電圧電気刺激、可聴アラーム、気付け薬の供給手段、横隔神経の経皮刺激手段、またはこれらの組合せの少なくとも一つを備えた、少なくとも1の刺激を患者に与えるための刺激装置を備えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1のシステムにおいて、
患者モニタリングユニットは、少なくとも一つの患者の状態が設定された条件から外れるとアラームを起動するものであり、前記設定された条件は、約60秒以上の呼吸数が4未満、呼吸終期CO2絶対レベルが10未満で30秒を超えて無呼吸、パルス酸素濃度85パーセント未満が15秒を超える、またはこれらの組合せの少なくとも一つであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1のシステムにおいて、
インターフェイスユニットは、少なくとも一つの患者の状態が設定された条件から外れるとアラームを起動するものであり、当該アラームは、ページングシステムを介して、介護者に対して伝えられることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1のシステムにおいて、
インターフェイスユニットは、患者の状態、麻薬拮抗剤の投与レート、アラーム状態、またはこれらの組合せの少なくとも一つを備える情報を、医療記録装置、ナースステーションまたはこれらの組合せの少なくとも一つに伝えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14のシステムにおいて、
伝えられた情報は、電気医療記録器、またはナースステーション、またはその双方において、記録され、または表示され、またはその双方がなされることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14のシステムにおいて、
伝えられた情報は、無線にて伝送されることを特徴とするシステム。





【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2010年5月26日に出願された米国仮特許出願第61/348,354号、および2010年6月8日に出願された米国仮特許出願第61/352,480号、および2010年8月10日に出願された米国仮特許出願第61/372,404号の利益を主張し、全ての開示は参照として本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、鎮静状態の患者、特に正常な呼吸を抑制または危うくする麻薬系/オピオイド系鎮痛剤を服用した患者の呼吸のモニタリングのためのシステムに関し、特に正常な呼吸を回復させるために麻薬拮抗剤を自動的に供給する装置に関する。この装置は、アラーム状態の異常がモニタリングされている患者を、死亡リスク、不可逆的脳損傷または他の回避可能な転帰から救出する際の遅れを最小限にする。本明細書において開示される別の実施形態によれば、患者で起こる呼吸抑制に応答する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
世界中で患者の手術の数および頻度は特に過去25年にわたって増加している。今日、米国だけで年間約2500万人の術後患者が存在する。平均的な術後患者が病院に2日半滞在することを想定すると、これは、約6250万日の術後日数、ならびに麻薬供給を制御およびモニタリングのための約18万台の独立した機器の需要と相関する。したがって、術後患者の状態および術後患者に対する麻薬の効果のモニタリングおよび制御のための機器、方法およびシステムに対する需要が増加し広がっている。加えて、睡眠時無呼吸の診断が増加しており、この増えている患者グループは麻薬に対してより敏感なため、さらなるリスクを生じ、呼吸が危うい場合に適時に治療できることが要求される。
【0004】
患者(通常術後患者)において使用される一般的な麻薬供給機器は、患者管理疼痛管理ポンプ(「PCAポンプ」)として公知である。患者がポンプを起動し一定量の麻薬を供給するボタンを押すことによって、麻薬の投薬量(典型的には疼痛の増加に応じて)を制御することが、PCAポンプにより可能になる。複数の製造業者からのPCAポンプは、麻薬が安全でない用量で一定時間の間に供給されてしまう、故障、不正使用、および不明の過失のためにFDAによってリコールされた。患者に対するさらなる損害を防止する取り組みにおいて、様々な会社、機関などは、過剰用量、ユーザーの過失、および/または意図的な不正使用の可能性を取り除くように取り組んでPCAポンプの有効性を改良するという試みに注力してきた。これらの取り組みにもかかわらず、PCAポンプおよび関連したユーザーの過失は、若く(年齢21〜35歳)健康な患者においてでさえ過剰用量による死に関わっていた。これらの取り組みにもかかわらず、ユーザーの過失および予測不能の患者要因は致命的な過失および深刻な合併症を今もなおもたらすこと、および現在の麻薬供給システムはPCAポンプに関連した患者の健康被害に対する深刻なリスクを今もなお生ずることが明らかになった。
【0005】
術後患者および他の脆弱な患者に、麻薬による治療の有無に関わらず、呼吸抑制および睡眠時無呼吸を含む呼吸器関連問題のリスクがあることも知られている。大部分のPCAポンプおよび他の自動化病床患者モニタリング装置は、これらのタイプの問題の対処に十分な制御または信号を供給しない。最適な患者のケアについては、術後患者および他の脆弱な患者において起こる生命を脅かす呼吸器系の事象を最も適時に検出するために、患者のモニタリングの向上を義務付けるべきである。
【0006】
自動化供給機器(PCA)の使用の有無にかかわらず、過剰用量はすべての患者にとって深刻なリスクである。麻酔科患者の安全性のための財団(Anesthesia Patient Safety Foundation)、医療安全研究所(Institute for Safe Medical Practices)、米国外科学会(American College of Surgeons)および病院認定合同委員会(Joint Commission of Accreditation for Hospitals)は、外科手術後に麻薬を与えられた患者のモニタリングは不十分であり、リスクがあると断定した。さらに、入院患者は、麻薬への曝露に関係なく概して様々な合併症に対するリスクがより高い。ポンプ供給システムまたは人的過失によって引き起こされる麻薬の過剰用量の状況において、最適なモニタリングは、介護士が現在可能であるよりも早く危機に気付くのに役立ち、治療までの待機時間を最小限にする。異なる患者タイプ向けの次善のモニタリングは、疼痛管理のために麻薬を与えられた術後患者の生命を脅かす転帰をもたらし得る。加えて、呼吸抑制は、若く健康な患者においてでさえ、脳卒中、心臓発作、脳外傷および死をもたし得る。患者の呼吸が止まれば、病院スタッフまたは他の介護士が直ちに気付くことが好ましく、一般的なモニタリングシステムは概して遅すぎるかまたは応答性が悪く、呼吸抑制に対して適時に応答するために必要な情報を提供することができない(酸素なしでは約3分で脳死が起こる)。
【0007】
この問題をさらに複雑にしているのは、大部分の患者は継続的にモニタリングされずに、単に患者室を定期的に訪れて患者の呼吸をカウントする看護師がいるだけであることである。概して、手術室の患者のみが、立ち会っている気道確保の専門家(麻酔科医)により継続的にモニタリングされる。したがって、こうした状態では、スタッフまたは他の介護士が、手術室の外部での最悪の事態を防止するように患者を十分にモニタリングすることは不可能である。術後状況および他の多くの患者のケア状況において、数秒以内の対応を要する合併症が生じるという実質的なリスクがあるが、適切なケアおよび介入は通常数分遅れとなる。
【0008】
異常呼吸およびそのモニタリングは、有益な指標(深刻な事象が、起こるところか、今起こったばかりか、または起こっている)を提供することができる。適時の警報は、障害または死のリスクを最小限にするように、これらの事象に対するできるだけ早い応答および治療を支援することができる。患者のモニタリングが向上すれば、呼吸器系の問題または呼吸関連の問題の早期の検出のお蔭でよい転帰をもたらす。
【0009】
手術室の外部では、最も一般に使用される呼吸モニターは、呼吸をカウントするスタッフが時々訪ずれること以外では、20年以上存在し患者の安全性を大幅に改良した「パルス酸素濃度計」である。パルス酸素濃度装置は、概して患者の血流の酸素の量を検出するクリップ留めのモニター(典型的には指または耳たぶ上の)からなる。残念なことに、患者の呼吸が止まる場合、患者の血流中の酸素レベルが、パルス酸素濃度計により検出される危険なまでに低いレベルまで低下するには数分かかる。それゆえ、パルス酸素濃度計は、呼吸危機の検出という点では比較的感度が悪く遅いので、不可逆的損傷が起こり始める前に、その問題を修正する時間は殆ど残らない。
【0010】
近年、肺内外への空気の移動を検出する音響モニター(呼吸音を測定する)は患者で使用され、成功している。音響モニターは、呼吸の停止または減速の早期発見という点ではパルス酸素濃度計の代替案であり得る。しかしながら、現在の技術は環境雑音により限定され、12歳未満の患者または増大した脂肪組織を持つより大きな患者には推奨されない。
【0011】
呼吸終期COモニター(カプノグラフ)は、麻薬の過剰用量による呼吸抑制および引き続いて起こる最悪の事態の最も早期の検出を提供するための最も感度の高い手段(感度100%)を提供する。「呼吸終期」二酸化炭素とは、呼吸周期の終了時に吐き出された二酸化炭素の量を指す。呼吸終期モニターは、十分な二酸化炭素が吐き出されていないならば、同様に十分な酸素が吸い込まれていない(病院環境および退院後環境で適切なモニタリングを必要とする、明らかに生命の危機的状況)という原理に基づいて作動する。これらのタイプのCOモニターは、外科手術の間の麻酔モニタリングのために使用され、さらに集中治療モニタリング、救急診療部、および救急車内での使用が増えている。
【発明の概要】
【0012】
(1)この発明の一実施形態に係る呼吸抑制のモニタリングおよび治療のシステムは、呼吸数、二酸化炭素含量、血圧および心拍数のうちの少なくとも1つを含む患者状態のモニタリングのための患者モニタリングユニットと;マイクロプロセッサおよびユーザーとのインターフェースを提供するようなされたユーザーインタフェースを含むインターフェースユニットであって、患者モニタリングユニットと通信可能であるインターフェースユニットと;酸素の供給源と;患者管理疼痛管理ポンプと;前記インターフェースユニットと通信可能な少なくとも1回分の投薬量を投与するための装置であって、少なくとも1つの患者状態を示すための前記インターフェースユニットからの信号を受信するようになされ、状態が事前に設定された状態値の範囲を越えれば、続いて前記信号に基づいてナロキソンを含む物質を患者に提供する装置とを含む。
【0013】
(2)この発明の一実施形態に係るシステムは、酸素の供給源が、酸素の含有量が少なくとも90%の気体を含むことを特徴としている。
【0014】
(3)この発明の一実施形態に係るシステムは、酸素の供給源が、少なくとも1つの壁コンセントを介して患者に提供されることを特徴としている。
【0015】
(4)この発明の一実施形態に係るシステムは、インターフェースユニットがラップトップコンピュータを含むことを特徴としている。
【0016】
(5)この発明の一実施形態に係るシステムは、ナロキソンを含む物質が静脈内投与で前記患者に提供されることを特徴としている。
【0017】
(6)この発明の一実施形態に係る呼吸抑制のモニタリングおよび治療のための方法は、酸素の供給に患者を接続することと;ある量の麻薬に前記患者を接続し、前記麻薬の制御のために前記患者に患者管理疼痛管理ポンプを提供することと;前記患者に患者モニタリングユニットを接続することにより患者状態をモニタリングすることであって、前記モニタリングユニットは前記患者の患者状態をモニタリングする能力がある、患者状態をモニタリングすることと;前記モニタリングユニットをマイクロプロセッサおよびユーザーにインターフェースを提供するようなされたユーザーインタフェースを含むインターフェースユニットに接続することと;前記患者状態の少なくとも1つについての患者状態の限界を設けることと;モニタリングされた患者状態を該インターフェースにおける患者状態の限界に対して継続的に比較し、該比較を表す信号を生成することと;少なくとも1つのモニタリングされた患者状態を代表するインターフェースからの信号が対応する患者状態の限界より下であることに応じて:(1)患者に聞き取り可能な信号を提供することと;(2)患者が支援を必要とすることを伝達するようになされたしるし(合図)を提供することと;(3)前記聞き取り可能な信号に対する応答が検出できない場合、ナロキソンを含む物質を前記患者に提供することとを含むことを特徴としている。
【0018】
(7)この発明の一実施形態に係る方法は、聞き取り可能な信号が提供された後10秒以内に、前記ナロキソンを含む物質が前記患者に提供されることを特徴としている。
【0019】
(8)この発明の一実施形態に係る方法は、聞き取り可能な信号が呼吸活動を開始させる録音済みの指導を含むことを特徴としている。
【0020】
(9)この発明の一実施形態に係る方法は、酸素の供給が、酸素の含有量が100%の気体を含むことを特徴としている。
【0021】
(10)この発明の一実施形態に係る方法は、酸素の供給が少なくとも1つの壁コンセントを介して患者に提供されることを特徴としている。
【0022】
(11)この発明の一実施形態に係る方法は、患者状態の限界が毎分約8周期の呼吸数の限界値を含むことを特徴としている。
【0023】
(12)この発明の一実施形態に係る方法は、患者状態の限界が毎分約5周期の呼吸数を含むことを特徴としている。
【0024】
(13)この発明の一実施形態に係る方法は、ナロキソンを含む物質が静脈内投与で前記患者に提供されることを特徴としている。
【0025】
(14)この発明の一実施形態に係る方法は、ナロキソンを含む物質が鼻カニューレを介して前記患者に提供されることを特徴としている。
【0026】
(15)この発明の一実施形態に係る方法は、患者用量要請作動装置を用いて患者が鎮痛を自己管理して患者管理疼痛管理ポンプを作動させるシステムにおいて、呼吸抑制について患者をモニタリングする方法であって、呼吸終期二酸化炭素飽和および呼吸数を含む患者呼吸状態を継続的にモニタリングすることと;少なくとも1つの患者呼吸状態を、所定の許容し得るレベルの範囲を越えたと見極めることと;聞き取り可能なしるし(合図)を自動的に提供し、ナロキソンを含む物質を患者に自動的に提供することとを含むことを特徴としている。
【0027】
(16)この発明の一実施形態に係る方法は、ナロキソンを含む物質が鼻カニューレを介して前記患者に提供されることを特徴としている。
【0028】
(17)この発明の一実施形態に係る方法は、ナロキソンを含む物質が静脈内投与で前記患者に提供されることを特徴としている。
【0029】
(18)この発明の一実施形態に係る方法は、聞き取り可能なしるし(合図)が遠隔ステーションに設置されたアラームを含むことを特徴としている。
【0030】
(19)この発明の一実施形態に係る方法は、聞き取り可能な指示が、所定の許容し得るレベルの範囲を越えた患者呼吸状態を改正することを自発的に試みるようにする患者対象の命令を含み;患者呼吸状態が改正されない場合、前記ナロキソンを含む物質の供与が約5秒および約10秒以内で生じることを特徴としている。
【0031】
(20)この発明の一実施形態に係る方法は、少なくとも1つの患者呼吸状態が所定の許容し得るレベルの範囲を越えたと見極められた場合、患者に高流量酸素を投与し、患者に対していかなる麻薬の投与も防止することを特徴としている。
【0032】
本開示は、患者、より具体的には麻薬を投与される術後患者をモニタリングするためのシステム、ならびに、麻薬の過剰投薬量により引き起こされた呼吸抑制または他の所望されない結果等の危険な呼吸状態に応じて、ナロキソンとして一般に公知の薬剤を含むが、これらに限定されない麻薬拮抗剤を自動的に供給するための新規装置を含む。本開示のさらなるサポートとして、以下の参照文献の全体は参照として本明細書に援用される。Bollish et al.の米国特許第5,957,885号、Hickleの第7,565,905号、Martucci et al.の第7,668,731号、Lynnの第7,398,115号およびLynnの第7,081,095号。
【0033】
麻薬の効果を打ち消すための1つの物質は、1971年から存在するナロキソンと称される公知の薬剤である。呼吸停止を起こす恐れがある、または現に起こしつつある、麻薬の過剰用量が原因であるまたは疑いがある症例の治療/拮抗のために、ナロキソンは、例えば、緊急状況および初期対応において頻繁に使用される。ナロキソンは1分以内で効果を現わすことが知られており、低価格であること、および麻薬効果に拮抗すること、最も重要なこととして患者の正常な呼吸を回復させること有効であることでさらに知られている。概して拮抗剤による過剰用量の実質的なリスク、副作用、および報告されたアレルギーはない。一般的に言えば、ナロキソンは市場に出ている最も安全な薬物の1つである。患者に対して最も重要なリスクは、治療された疼痛が戻ることである。しかしながら、死または脳損傷の可能性と比較検討した場合、ナロキソンによって提供される人命を救うという重大な利益に比して、相対的には疼痛はあまり重要ではない。
【0034】
一実施の形態によれば、ナロキソンは、例示としては呼吸終期COモニター等であるがこれに限定されないモニタリング装置による検出後のアラーム状態に応じて、患者の既存の静脈ラインを介して、装置による適切な投薬量で自動的に提供される。患者からの情報の継続的な受信に適合した1つまたは複数のモニターにより、供給装置を起動することができる。したがって、本発明の供給システムは、例えば、立ち会っている介護士への依存性、様々なしるし(合図)または刺激に対する人間の応答、および投薬装置と人間との関わり等の予測不能な様々なレベルでの人の関わりの必要性を取り除く。人間の介入への依存は、かかる遅れを許容することができない状況および環境において遅れを起こし、明白に周知のとおりの患者の死および脳損傷をもたらす。
【0035】
本発明の実施形態は、PCAポンプの重大な欠点にも対処する。本発明のシステムおよび方法は、ユーザーインタフェースの再設計、病院の操作手順の改良、プログラミングエラーの最小限化、および患者が害を受ける前の検出の促進の形態で多数の利益を提供する。
【0036】
好ましい実施形態において備えられる代表的な3つの構成要素は以下からなる。(1)鼻の隣に配置されて、鼻の内部に酸素を供給する鼻カニューレに沿う小チューブを通して排出されたCO2をサンプリングする呼吸終期CO2モニターであって、サンプリングされたCO2により波形と呼吸数が生成され、表示および記録されて、伝達先である、
(2)アラーム状態を検出するソフトウェアを実行するコンピューターまたは同等の構造体に送られ、該コンピューターまたは同等の構造体は、信号の送信先である、
(3)1つ以上の既存のシリンジポンプに信号を送信し、該シリンジポンプは信号に応じて、患者の静脈ライン中に、および/または鼻カニューレを介して人命を救うナロキソンまたは他の薬物拮抗剤を注入し、鼻カニューレ供給モードは、実際は独自のものであり別の実施形態そのものである。
【0037】
本発明の適用は、術後患者または特定の種類の患者に限定されないことは明白である。実際、いかなる入院した患者に対しても、および様々な在宅の患者状況においても、本装置を使用できると考えられる。本装置および関連する構成要素の経済的な費用は比較的低くなると考えられるのに対し、呼吸抑制に伴うリスクを考えた場合、こうした装置に対して考えられ得るどんな費用と比較しても、広範囲に普遍的に使用される方向に傾くと思われる。
【0038】
様々な実施形態において、本発明はPCAポンプを用いた麻薬により静脈内治療を行っていない患者の人命でさえ救うことができる。例えば、経口でオピエート/麻薬を投薬される患者は、標準的なPCAまたはポンプに一切接続されないかも知れない。かかる状況において、本発明の特徴は、これらの経口投薬による過剰用量に対しての患者のモニタリングおよび/または従事する介護士への警告に使用することができる。
【0039】
一実施の形態において、静脈内または鼻腔内に投与されたナロキソンの供給は、概して無害であるが効果の際立った応答誘発性鼻腔内興奮剤と共に行われる。かかる物質は、公知の「気付け薬」、炭酸アンモニウム、および患者からの応答を誘発するかまたは概して意識を覚醒するとして知られる様々な他の類似物質を含むが、これらに限定されない。例えば、これらのベンゾジアゼピンにより引き起こされた鎮静作用に拮抗するために、特にフルマゼニル/ロマジコンと称される、ベンゾジアゼピン類(例えばヴァリウム、ロラゼパム、ベルセド)の効果に拮抗する薬物を、本発明により供給することができる。
【0040】
様々な実施形態において、本発明は、本発明の追加要素(例えばカプノグラフ構成要素)と通信可能になされた自動体外式除細動器(「AED」)的特徴を含む。AED機器がますます一般的になっていることが知られており、単純化されたAED機器は、トレーニング施設、オフィスビル、老人ホームに加えて病院において現在行き渡っている。様々なAED(ポータブルであるなしに関わらず)と本発明のシステムおよび方法との一体化が予期される。例えば、一実施の形態において、システムは、AED機器と通信可能になされたモニタリング機器(例えばカプノグラフ機器、呼吸終期CO、パルス酸素濃度計など)を含んで提供される。1つの特定の実施形態において、モニタリング機器および/またはコンピューターもしくはモニタリング機器からの情報を受信するようなされた類似した機器は、検出された呼吸停止が実際は心停止により引き起こされ、評価およびAEDによる除細動が必要であるとAEDに警告する信号を送る。モニタリング機器、コンピューター、および/または信号プロセッシング機器からの信号の受信と同時に、AEDは、そのサービスが必要であるという指示を伝える。例えば、AEDは、光、および/または音声信号を生ずる能力を備え、それにより注意を引きつけ、第一応答者または介護士に対して機器が必要であると直ちに伝え、したがって緊急事態において貴重な時間を節約することができる。
【0041】
代替の実施形態において、電極等のAEDの特徴的要素は、特定の心臓状態についてのリスクがあることが知られている患者に接続される。AEDは、モニタリング機器および/または信号プロセッシング機器からの信号の受信、および、特定の所定の条件下で、さらに患者に対する矯正的電気刺激を提供するようになされる。したがって、この実施形態において、特定の人間の介入の必要性なしにAED治療を必要とする患者に提供することができる。
【0042】
装置のさらに別の実施形態は、家庭に戻ったが麻薬/オピエート級の鎮痛剤を投与し続ける必要がある術後患者、または慢性痛のある術後患者、もしくは疼痛管理のため高用量の麻薬投与を必要とする癌患者など、家庭での使用法に展開できる。家庭でモニタリングする患者は、鼻カニューレを介して麻薬拮抗剤を投与することができ、静脈ラインの確保は必要としない。さらに、睡眠時無呼吸の患者、または麻薬やベンゾジアゼピンの拮抗剤を用いる治療が適さない患者には別の刺激方法を使用することができる。すなわち、鼻カニューレを介する気付け薬、聞き取り可能な刺激や弱い電気的刺激、または、完全に無応答な患者において人工的な吸入および吐き出しを起こさせる横隔膜を活性化する首の横隔神経の経皮的刺激などである。
【0043】
発明の概要は、本開示の全範囲を代表することを意図していないし、またそのように解釈されるべきでない。本開示は、発明の要約の様々なレベルの詳細に加えて、添付の図面および本発明の詳細な説明においてに説明され、本開示の範囲に関する限定は、発明の概要の中の要素、構成要素などの包括または非包括は、いずれも本開示の範囲の限定を意図しない。特に図面と共に利用することで、本開示のさらなる態様は詳細な説明からより容易に明らかになるだろう。
【0044】
上記の利益、実施形態、および/または特性記述は、特に本明細書において開示された特許性の主題に関して、必ずしも完全でなく網羅的ではない。本開示の他の利益、実施形態、および/または特性記述は、単独でまたは組み合わせで、添付の図において上記で説明および/または記載されるように、ならびに/または本明細書において以下に記載されるように、利用することが可能である。さらなる詳細および他の特徴は、以下の詳細な説明および添付の図面の精査後に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
当業者は、以下の記載が開示の本質の単に例示であり、様々な代替の実施形態を提供する様々な方法において適用できることを認識するであろう。この記載は、この開示された発明の教示の一般原則の図示のために行われ、本明細書において開示された発明概念を限定することを意味しない。
【0046】
明細書中で援用され、その一部を構成する添付の図面は、開示の実施形態を図示し、上記の開示の概要および下記の図面の詳細な説明と共に、開示の原則の説明に役立つ。
【0047】
図面が必ずしも一定の比率の縮尺ではないことを理解すべきである。特定の事例において、本開示の理解に必要でないか、または他の詳細を認識することを難しくする詳細は、省いてもよい。本開示は、当然必ずしも本明細書において説明される特定の実施形態に限定されていないことを理解すべきである。図面は以下の通りである。
図1図1は、CO/SaO2モニター、不正開封防止シリンジポンプ、ならびに患者の呼吸に関連するCO/SaOのモニタリングのため、および1つまたは複数の麻薬拮抗剤の供給の開始のために、CO/SaOモニターおよびシリンジポンプに接続されたノートブックコンピュータまたはラップトップコンピュータを含む、本開示の一実施の形態に記載のシステムである。
図2図2は、本開示の1つの特定の実施形態に記載の患者をモニタリングするためのシステムの模式図である
図3図3は、本開示の1つの特定の実施形態に記載の患者をモニタリングする方法のフローチャートである。
【詳細な説明】
【0048】
本発明は広範囲の分野にわたり利益を提供する。本明細書とそれに付帯する特許請求の範囲は、開示された特定の実施例への参照のために課される文言の限定にかかわらず、開示されている発明の範囲と精神に沿って幅を持たせることが出願者の意図である。本発明に最も密接に関連する技術の当業者に対して、最良の形態を表すこの方法の好ましい実施形態は、本発明の実践を考慮して、明細書の一部を形成する添付された図面によって、およびそれらを参照して、本明細書において記載される。本発明が具体化され得る様々な形態および修飾をすべて記載する試みをせずに、例示的な方法が詳細に記載される。それゆえ、本明細書において記載された実施形態は例示的であり、当該技術分野の当業者に明らかであるように、本発明の範囲および趣旨内で多数の方法で変更することができ、本発明は本明細書の詳細によってではなく添付の請求項によって評価される。
【0049】
以下のテキストは多数の異なる実施形態の詳細な説明を記述するが、この開示の末尾で記述された請求項の単語によって記述の法的な範囲が定義されることを理解すべきである。この詳細な説明は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、不可能ではないにしても、すべての実施形態の記載は実際的ではないので、すべての可能な実施形態を記載するとは限らない。現在の技術またはこの特許の出願日後に開発された技術のいずれかを使用して、多数の代替の実施形態を実施することができるが、それらはなお特許請求の範囲内に入ることになる。
【0050】
ある用語が、本特許において「本明細書において使用される「 」という用語は、本明細書において〜を意味するものと定義される」という文章または類似の文章を使用して明示的に定義されない限り、その用語の意味を、明示的または暗示的のいずれかであろうと、明白なまたは通常の意味を越えて限定する意図はないこと、および、かかる用語は、本特許のいかなるセクション(請求項の文言以外)において行なわれたいかなる記述においても意味が限定されると解釈するべきでないことも理解されたい。本特許の末尾の請求項において列挙される任意の用語が単一の意味で一貫して本特許において参照される範囲において、それは読み手を混乱させないように明瞭にするためになされるのであって、かかる請求項の用語は、暗示または他の方法によってその単一の意味へ限定されることを意図するものではない。最後に、請求項の要素が、「手段」という単語、および構造の詳述のない任意の機能によって定義されない限り、いかなる請求項の要素の範囲も米国特許法第112条第6項の適用に基づいて解釈されることは意図されない。
【0051】
図面、特に図1〜3がここで参照される。本発明の一実施の形態によれば、ソフトウェア応用システムは、シリンジポンプを操作する意思決定能力を提供することができ、それは長年利用可能である。好ましい実施形態において、これらのすべての機器(図1〜3中で示される)を1つの機器内に組み合わせて、これらの患者により安全な代替物を提供することができる。一実施の形態において、システムはPCAポンプ装置と連動して作動する。代替の実施形態において、本システムは旧式のPCAポンプ装置に置き換わる。
【0052】
図1を参照すれば、好ましい実施形態において提供される3つの構成要素による図は以下を含む。(1)鼻の隣に配置されて、鼻の内部に酸素を供給する鼻カニューレに沿う小チューブを通して排出されたCOをサンプリングする呼吸終期COモニター2であって、サンプリングされたCOにより波形と呼吸数が生成され、表示および記録されて、伝達先である、
(2)アラーム状態を検出するソフトウェアを実行するコンピューター4または同等の構造体に送られ、該コンピューターまたは同等の構造体は、信号の送信先である、
(3)1つ以上の既存のシリンジポンプ6に信号を送信し、該シリンジポンプは信号に応じて、患者の静脈ライン中に、および/または鼻カニューレを介して人命を救うナロキソンまたは他の薬物拮抗剤を注入する。
【0053】
別の実施形態において、同じナロキソン拮抗剤は、解毒剤を供給する唯一の方法、または静脈ラインが存在しないかもしくは不完全である状態における二重安全バックアップモードのいずれかにおいて、酸素を供給する鼻カニューレチューブを介して、吸収される鼻内スプレーとして、別におよび/または同時に供給される。これらのすべての構成要素をさらに接続し、例えば、周知のRS−232インターフェースと共に機能するようにできる。
【0054】
図2は上で検討したシステム構成要素の模式図であり、好ましい実施形態に記載のシステムで典型的に生じる、一連のステップが提供される。この実施形態によれば、ナロキソンは、シリンジポンプ14または鼻カニューレ20によって、もしくは両者を経由して供給される。鼻カニューレ20(患者に酸素を供給する)に対しても、患者から吐き出されたCOのモニタリングのために、患者の鼻の近くの別のチューブを介してわずかな吸引が行われる。PCAポンプは図4中で示されるが、本システムは、かかる装置と連動しても、またはかかる装置が全くなくても作動できることは言うまでもない。
【0055】
図示されるように、患者モニタリングユニット2は、患者26と様々なシステム構成要素と通信可能に提供される。患者モニタリングユニット2は、鼻カニューレ20を介して患者26に酸素を送るために酸素源8に接続することができる。患者モニタリングユニット2を、ラップトップコンピュータ等のインターフェースユニット4にさらに接続し、患者に関連するデータを送信することもできる。様々な実施形態において、1つまたは複数のインターフェースユニット4は公知のRS−232ケーブルを介して追加のシステム構成要素と通信可能に接続される。インターフェースユニット4は、例えば無線信号および/またはナースステーションへのデータの送信のためのUSBポート等の出力10を含むことができる。当業者は、出力10を介して送信できる情報のタイプは、特定の患者情報または救急信号に限定されていないことを認識するだろう。むしろ、出力10は、患者モニタリングユニット2から得られ得るあらゆる所望の情報を伝えるようになされる。
【0056】
一実施の形態において、インターフェースユニット4は、患者インターフェースユニット2から受信したデータを解析して呼吸抑制が生じているかどうかを判定する検出ステップ12を実行する。様々な実施形態において、ステップ12は継続的に実行される。1つの特定の実施形態において、ステップ12は、呼吸抑制状態を迅速に認識することができる適切に短い所定の間隔(例えば少なくとも約15秒ごと)で実行することができる。
【0057】
インターフェースユニット4は、さらに自動シリンジ14またはポンプと通信可能に接続される。一実施の形態において、この接続/通信は、例えば、無線装置を含むRS−232ケーブルまたは類似の機器を介して遂行される。呼吸抑制等の処置を必要とする患者の状態を判定すると、自動シリンジポンプは、鼻カニューレ20および/または静脈ライン22を介してナロキソンの所定の量を、患者に自動的に投与する。患者26には、さらに、PCAポンプ24が提供されるか、または接続されてもよい。
【0058】
様々な実施形態において、インターフェースユニット4は、さらに追加の刺激手段との通信、および刺激手段の起動に供される。例えば、一実施の形態において、インターフェースユニット4は、患者26への音声による命令および/または録音済みの命令を生成するようなされた受話口等の、聞き取り可能な信号を患者へ提供するための機器16と通信可能に構成される。さらに、インターフェースユニット4は、指クリップ電極18、および/または気付け薬の投与、または類似の刺激手段の起動を含むが、これらに限定されない追加の患者刺激の誘発または開始にさらに供することができる。
【0059】
一実施の形態において、本明細書において記載されるような本発明の特徴および装置は単一の一体型の装置に集約される。代替の実施形態において、構成要素が個々に提供されて、本発明の特徴により既存の患者のケアのための設備を変更または更新することができる。
【0060】
図2は、単独で、または互いに組み合わせて使用することができる、様々な実施形態、システムおよび特徴を図示する。したがって、本発明は、図2中で示されるように、いかなる特定の構成(複数可)にも限定されない。例えば、図2が自動シリンジポンプ14、聞き取り可能な出力機構16、オプションの患者刺激器18、鼻カニューレ20および患者への投薬のための静脈ライン22を図示する場合、これらおよび様々な他の特徴は、本発明の様々な実施形態において単独で、または互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
図3において示されるフローチャートは、本開示の一実施の形態において、「無呼吸救助ボット」と名付けられたボットは、1つまたは複数の入力装置によって接続され、その結果、アラーム状態28、30、32を検出するために、麻薬を投与される術後患者からの入力を受信できるようになることを示す。アラーム状態は、例えば、60秒間を超えて4未満の呼吸数(28)、呼吸終期CO絶対レベルが10未満(正常は25)で30秒間を超えて無呼吸(呼吸なし)(30)、またはパルス酸素濃度85パーセント未満が15秒を超える(32)である。これらまたは類似したアラーム状態は、最初にコンピューターに、音声によって患者に深呼吸するように要請させてもよい(34)。一実施の形態において、応答検出ステップ36が設けられる。第一応答がアラーム状態を改善または変化させなかった場合、ステップ40が起動され、そこでは病院スタッフは、「無呼吸救助ボット」によって処置が開始されるアラーム状態に応じて、様々な方法のいずれかまたはすべてで患者をチェックするように通知される。呼吸を促す聞き取り可能な命令の試みと同時、またはその後のいずれかで、弱い電気的な刺激も、例えば通常の粘着性心電計パッドに接続されたワイヤーを介して独立した9ボルトのバッテリーによって送ることができる。患者が聞き取り可能な刺激または電気的刺激に応答して正常に呼吸しなかった場合、コンピューターはアラーム状態の重症度を引き上げ、シリンジポンプにナロキソンの注入を命令して心肺停止、脳外傷または死の前に呼吸抑制システムを反転させる。
【0062】
一実施の形態において、追加のモニタリングステップ42が設けられ、そこで満足な患者状態が検出できない場合、病院の呼び出しシステムに接続された有線接続、USB、または無線接続によって「緊急事態」向け館内放送(44)が実行される。直ちに応答して確認を行う看護師は、ナロキソンが呼吸および意識に対する麻薬効果に短時間で拮抗するので、しばしば患者が再び覚醒し呼吸していることに気付くであろう。あるいは、看護師が患者に達する時間までに患者が応答していなかった場合、「緊急事態発生」は既に通報されており、患者を蘇生させるのに利用可能な支援がすべて招集される。
【0063】
一実施の形態において、患者がステップ34で企図された刺激に対して順調に応答する場合、システムは、患者のステータスを確認し、任意の適切な処置を講ずるために看護師、スタッフまたは介護士に対して通知38を提供する。一実施の形態において、適切な患者状態がステップ42で検出される場合、麻薬供給はステップ46で保留され、介護士はその事象の通知を受ける。特定の実施形態において、通知はインターフェースまたはコンピューターによって生成された文書による報告を介して提供される。文書による報告は、事象の発生した時間、処置を始動させた患者状態、とられた処置、後続する患者のモニタリングおよび/または治療に関するアドバイス等の様々な生命に関する情報を含み得る。
【0064】
上で記載された本発明は、多数の様々な形態を取り得る。麻薬供給それ自体の「ブレーキ」すなわち停止の有無に関わらず、自動修正的な「拮抗能力」または麻薬効果拮抗性を持つような、精巧なPCA注入ポンプとして、本発明を理解することができる。本発明が呼吸器系の危機的兆候を検出するのに利用可能な最も優れたモニタリング能力を含むだけでなく、処置の緊急管理を提供する最初で唯一の自動化救助供給システムも含むので、これらの便益により、麻薬拮抗能力を持たない単機能型麻薬注入ポンプ技術は廃れてしまうだろう。
【0065】
本発明は、血圧、心電計モニタリング等の複数のモニタリング形式を含むことができるか、または、救急診療部、もしくは、それらに限定されないが例えば、結腸内視鏡検査、放射線医学手順、心臓カテーテル室、ならびに麻酔科医、高度な専門家および集中治療医学の考案者によって患者が継続的に監視される手術室以外の任意の場所など、患者に鎮静薬を与えるどんな場所でも、本発明を使用することができると考えられる。
【0066】
たとえ、本発明使用の用法の1つが麻薬を投与される患者に関する問題に対処する場合であっても、麻薬を与えられていない睡眠時無呼吸患者において本発明を使用できることは言うまでもない。様々な実施形態において、本発明は、患者の対処すべき状態を検出し次第、呼吸を促す聞き取り可能な刺激または電気的な刺激を提供し、同時に、改善に有効で覚せい作用があるとされる高流量酸素を用いる。一実施の形態において、本発明は、病院の壁上の供給口またはポータブル酸素ボンベから高流量酸素を直接受け取り、その内部に調節可能な弁を備える。したがって、少なくとも一実施の形態において、本発明は、アラーム状態に応答して、呼吸に対する刺激として、および鼻の酸素供給カニューレを介するスプレー形態で拮抗性のナロキソンを供給する方法としての両方の目的で、高流量酸素を直ちに投与する。
【0067】
一実施の形態によれば、本発明は、重篤な心停止状況または非常に不安定な患者における使用のために、多重コンパートメントカセット中に約6〜10の異なる蘇生薬物をともに含む。特定の実施形態において、カセットは、ナロキソン、D50グルコース、エピネフリン、アトロピン、フェニレフリン、バソプレッシン、エスモロール、カルディゼムおよびアデノシンを含む。かかる多重コンパートメントカセットは、ER、および看護師がこれらの薬物を捜し出すのに混乱している場所で起こる混沌とした状況(患者が必要とされる薬物を実際に得る前に、これらの薬物をカートの端から端までかき回して捜し、箱を開けるために引き裂き、シリンジカートリッジ/注射器を組み立て、バイアルから薬物を吸引する針およびシリンジを探すなどが想定される)に対処することができる。
【0068】
1つの特定の実施形態によれば、薬剤は手動または自動の複数薬剤注入器に予め装填され、医師が薬剤を組み換えし直したり、蘇生訓練を受けた上級職の到着するまでの間使用することができる。
【0069】
蘇生術において一般に使用される複数の薬物があり、かかる薬物をあらかじめ一揃えすることによって多くの時間および労力を節約することができ、その結果スタッフは1つのボタンを単純に押し、機器(それは患者の静脈IV内へと既に差し込まれている)により意図した蘇生薬物を供給することができる。考えられる薬物としては、ナロキソン(麻薬に拮抗する)、D 50(インスリン過剰用量に拮抗する糖)、NaHCO/重炭酸ソーダ(高カリウムおよびアシドーシスに拮抗する)、ロマジコン/フルマゼニル(ベルセドおよびヴァリウムに拮抗する)、グリコピロレート(ロビヌル)またはアトロピン(遅い心拍数を上昇させる、フェニレフリン(心拍数の増加なしに血圧を安全に上昇させる)、エピネフリン/アドレナリン(血圧を上昇させ、心拍数を上げ、除細動を促進し、ショックおよび重篤なアレルギー反応とショックを治療する)、エスモロール(心拍数を遅くする短時間作用する安全な薬物)、バソプレッシン(重篤なショックのための効き目の強い薬物)、ならびにカルディゼムおよびアデノシン(速い心臓リズムを遅くする)が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
静脈内投与に支障があるか利用不可能な場合、本装置は、薬物のいくつかまたはすべてを鼻腔内に供給することもできる。例えば、様々な実施形態において、ナロキソンおよび他の薬物は、静脈内供給に加えてまたは静脈内供給の代わりに、鼻カニューレを介して提供される。ナロキソンの有害作用または過剰用量のリスクは皆無かそれに近いことが知られているので、特定の実施形態は、ナロキソンまたは類似薬剤を静脈内および鼻腔内を介して投与することを企図する。
【0071】
好ましい実施形態によれば、ナロキソンは専用の不正開封防止カセットまたはシリンジ注射器中にあらかじめ充填される。注射器を使用する好ましい方法は、専用のナロキソン充填量を用いて、他の目的に使用されることを回避する(ナロキソンは急速に注入されても無害であるが、他の投薬はユーザーがアクセス可能な非専用の機器で急速に供給されれば有害となり得る)。注射器は、無呼吸状態に応じて、静脈内に、および/または無呼吸救助ボットに差し込まれた鼻の酸素カニューレを介して鼻腔内に供給することができる。
【0072】
本装置は、呼吸数または呼吸終期CO計測値の質に基づいて疼痛管理の評価をさらに提供することができ、患者が呼吸抑制なしにより多くの麻薬を安全に許容できるかに関して助言し、それにより患者の快適さおよび安全性の両方を改良する。例えば、カプノグラフ記録の質が高く呼吸数が20を超える場合、麻薬用量を増加することができ、看護師にそのことを助言することができるか、または、その代わりに、看護職員の助けをあまり借りずに患者が安全に自己投与する機会を増やすことができる。呼吸パラメータが適切であり、アラーム状態が近づいていなければ、本装置によって音声操作型の患者の要請を評価および判断することができる。この実施形態によれば、すべての処置、アラームおよび調整は、記録され、表示され、EMR(電子カルテ)に自動的に入力され、または必要に応じてナースステーションへ無線で中継される。
【0073】
本装置の別の実施形態において、ナロキソン以外の他の治療薬物を静脈内または鼻腔内に投与することができる。例えば、鼻づまりを軽減する血管収縮剤として一般に使用されるフェニレフリンは血圧を上昇させる副作用を有していることが周知である。解毒剤の鼻腔投与により血圧が危険なまでに低下した場合、少なくとも、低血圧に最も適した支援のための静脈ラインを確立できるまで、治療法としてこの副作用を利用することができる。加えて、危険なまでに遅い心拍数をグリコピロレートまたはアトロピンの投薬により安全に上昇させることができ、危険なまでに速い心拍数はエスモロール(数分のうちに代謝される)により遅くすることができ、危険なまでに高い血圧は適切な量で任意の数の鼻腔内投薬により低下させることができる。このように、本発明は「救急救助ボット」として別の実施形態を有し、この実施形態では、必要な投薬量を、静脈内投与または鼻腔内投与(静脈ラインが不調な場合、または通常は静脈ラインの確立前、どちらもよくあること)のいずれかで供給することができる。
【0074】
本明細書において記載された様々な実施形態によれば、上記のシステムおよび装置はすべて、モニタリング入力、事象または状態、病院スタッフまたは他の介護士に対する後続する報告または通知のためのアラームの発生とともに、様々な薬物の実情に即した患者への供給の自動化との間の相関関係を統制する付随のアルゴリズムを用いて、プログラマブル論理制御装置またはリレー制御システム等の制御システムによって、制御することができる。現在公知の、または今後開発されるかかる制御システムは、本開示の範囲により企図され、その範囲内であると見做される。
【0075】
上記された使い道以外の、カプノグラフモニタリング機器およびその救助指向技術のための使い道は、本開示の装置および方法とともに使用されると考えられる。例えば、本装置は在宅医療の現場で容易に使用できる。上記のように、睡眠時無呼吸に罹患する患者のための非常に基礎的な装置になり得る。現在、患者は、マスクを密着させた上CPAP装置(持続性気道陽圧装置)を使用してふさがれ潰れた気道を介して酸素を送り込まれるが、これらの装置にモニタリング能力を持たせて患者を聞き取り可能にまたは電気的に刺激することができることは利点になるだろう。様々な実施形態において、ナロキソン供給を含むが、これらに限定されない本発明の特徴は、公知のCPAP装置を介して提供することができる。
【0076】
様々な実施形態において、あまり重篤でないタイプの睡眠時無呼吸は鼻カニューレによる酸素補給で治療され、内臓モニタリングは現在利用可能なCOモニタリング鼻カニューレに備えられている。この実施形態において、気付け薬は例外となり得るが、概して拮抗性のナロキソンの注入または鼻内スプレー機能の必要性はない。
【0077】
本発明の様々な実施形態において、在宅医療のシステムおよび特徴が提供される。例えば、プライマリーケア設備(例えば病院)からの退院条件を概ね満たしているが、処方された麻薬−オピエート鎮痛剤による過剰な鎮静作用のリスクがまだある患者、および麻薬の投与を必要とする慢性疼痛患者または癌患者を、病院またはプライマリーケアの設備外の状況において、本発明の様々な実施形態によりモニタリングおよび/または治療することができる。例えば、酸素供給源は壁供給口ではなく携帯用酸素ボンベであり、本明細書において示され記載されるような様々な追加のシステム構成要素が家庭での使用に適合したサイズおよび構成で提供される、本発明のスケールダウンしたバージョンが提供され得ること考えられる。
【0078】
様々な実施形態において、システムは、患者に投与される麻薬の量を測定、モニタリング、および/または検出する能力を含んで提供される。一実施の形態において、患者に提供される麻薬または鎮痛薬の量(例えばPCAポンプを介して)に関連するデータは、継続的にモニタリングされ、年齢、体重、性別などの関連する患者情報と自動的に比較される。関連する患者情報は、受付または入院に際して、端末またはインターフェースで手入力によるデータ入力などでシステムへ手動で入力することができる。あるいは、関連する患者情報は、既存の医療記録から自動的に得ることができる。一実施の形態において、システムには、様々な種類の調合薬剤に対して患者情報に関連して所定の限度値が設けられる。この実施形態において、所定の限度値を越える場合、薬物の投与は少なくとも一時的に防止され、および/またはナロキソンまたは他の拮抗剤が患者に投与される。
【0079】
本開示の様々な実施形態は詳細に記載されているが、それらの実施形態の変更および代替を当業者が思い浮かぶであろうことは明らかである。しかしながら、以下の請求項において説明されるように、かかる変更および代替は本開示の範囲および趣旨内であることは明示的に理解される。
【0080】
以上の開示の説明は例証および記載の目的のために行われている。上記説明は、本明細書において開示された形態(複数可)に対して開示を限定することを意図しない。上記の詳細な説明において、例えば、開示の様々な特徴は、開示の簡素化のために1つまたは複数の実施形態中に一まとめにされている。開示したこの方法は、請求された開示が各請求項において明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、上記に開示された単一の実施形態のすべての特徴に存在する訳ではない。したがって、以下の請求項は、ここにおいてこの詳細な説明に組み込まれ、各請求項は本開示の別個の好ましい実施形態として自立している。
【0081】
さらに本開示は、1つまたは複数の実施形態ならびに特定の変形および変更の記載を含んでいるが、他の変形および変更は本開示の範囲内であり、例えば、上記の特定の構成要素を単独で、または他の構成要素と組み合わせて用いてシステムを構成することができるが、他の態様において、システムは、本明細書において記載された構成要素のすべての組み合わせであってもよく、本開示の新規の態様を伝達する目的のために用いられたものとは異なる順序であり得る。本開示を理解した後に、他の変形および変更は当業者の技能および知識内であり得る。開示したこの方法は、特許請求されたものに対して、代替の、交換可能な、および/または、同等の構造、機能、範囲またはステップを含んで、許容される程度まで代替の実施形態を含む権利を得るように意図され、それはかかる代替物の交換可能なおよび/または同等の構造、機能、範囲またはステップが本明細書において開示されているか否かに関わらず、いかなる特許可能な対象も公に供する意図はない。
図1
図2
図3