(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有するトレッド部を具えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部に、最も前記外側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる第1主溝、前記第1主溝と前記内側トレッド端側で隣り合いかつタイヤ周方向に連続してのびる第2主溝、及び、最も前記内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる第3主溝が設けられることにより、
前記第1主溝と前記第2主溝とで区分される外側ミドル陸部と、前記第2主溝と前記第3主溝とで区分される内側ミドル陸部とが形成され、
前記外側ミドル陸部には、前記第1主溝及び前記第2主溝のいずれにも直接連通していない複数本のミドル傾斜溝と、前記第1主溝と前記ミドル傾斜溝とを継ぐ複数本の外側ミドルラグ溝と、前記ミドル傾斜溝と前記第2主溝との間を継ぐ内側ミドルラグ溝とが設けられ、
前記内側ミドル陸部は、前記第2主溝と前記第3主溝との間を継ぐ横溝が設けられていないリブからなり、
前記第3主溝は、前記外側トレッド端側をジグザグ状にのびる外側溝縁を含み、
前記外側溝縁は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1縁部と、第1縁部とは逆向きに傾斜しかつ第1縁部よりもタイヤ周方向の長さが小さい第2縁部とがタイヤ周方向に交互に形成され、
前記内側ミドル陸部は、前記内側ミドル陸部を横断する内側ミドルサイピングと、前記第3主溝からタイヤ軸方向内側にのびかつ前記内側ミドル陸部内で終端する複数本のミドル横ラグ溝とが設けられ、
前記ミドル横ラグ溝は、前記第1縁部に設けられ、
前記内側ミドルサイピングは、前記ミドル横ラグ溝と前記第2主溝とを継ぐ第1サイピングと、前記第3主溝と前記第2主溝とを継ぎかつ前記第2縁部に滑らかに接続されている第2サイピングとを含むことを特徴とする空気入りタイヤ。
前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅は、前記内側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅の1.5〜4.5倍である請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1のトレッド部2の展開図が示される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1は、例えば乗用車用のスタッドレスタイヤとして好適に利用される。
【0020】
タイヤ1のトレッド部2は、車両への装着の向きが指定された非対称のトレッドパターンを具える。トレッド部2は、タイヤの車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えばサイドウォール部(図示せず)に、文字等で表示される。
【0021】
前記各「トレッド端」To、Tiは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、各トレッド端To、Ti間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。
【0024】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0025】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝が設けられている。本実施形態の主溝は、第1主溝3、第2主溝4、及び、第3主溝5を含んでいる。
【0026】
第1主溝3は、最も外側トレッド端To側に配されている。本実施形態の第1主溝3は、第1溝部6と、第1溝部6よりもタイヤ軸方向の溝幅の大きい第2溝部7とを含んでいる。第1溝部6と第2溝部7とは交互に設けられている。第2溝部7は、第1溝部6からタイヤ軸方向内側に張り出した部分を有する。この張り出した部分は、雪を押し固め、かつ、せん断することで、雪柱せん断力を発揮し、雪路性能を向上する。
【0027】
第1溝部6及び第2溝部7は、第1主溝3のタイヤ軸方向外側の溝縁3eの最もタイヤ赤道C側の点3aを通るタイヤ軸方向線と、第1主溝3のタイヤ軸方向内側の溝縁3iの最も外側トレッド端To側の点3bを通るタイヤ軸方向線とで区分される。
図1には、第1溝部6と第2溝部7とが仮想線で区分されている。
【0028】
第2主溝4は、第1主溝3と、内側トレッド端Ti側で隣り合っている。本実施形態の第2主溝4は、タイヤ周方向に沿った直線状である。このような第2主溝4は、第2主溝4近傍の陸部剛性を高める。
【0029】
第3主溝5は、最も内側トレッド端Ti側に配されている。本実施形態の第3主溝5は、鋸歯波状にのびている。このような第3主溝5も、その溝縁が軸方向成分を有するため、雪柱せん断力を発揮し、雪路性能を向上する。
【0030】
図2には、第3主溝5の拡大図が示される。
図2に示されるように、第3主溝5は、内側トレッド端Ti側の溝縁5iと、外側トレッド端To側の溝縁5eとを有している。
【0031】
内側トレッド端Ti側の溝縁5iは、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。これにより、内側トレッド端Ti側の溝縁5i近傍の陸部の剛性が高められ、操縦安定性能が向上する。
【0032】
外側トレッド端To側の溝縁5eは、ジグザグ状にのびている。本実施形態の外側トレッド端To側の溝縁5eは、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1縁部5aと、第1縁部5aとは逆向きに傾斜しかつ第1縁部5aよりもタイヤ周方向の長さが小さい第2縁部5bとがタイヤ周方向に交互に形成されている。
【0033】
第1縁部5aのタイヤ周方向に対する角度α1は、好ましくは2〜10度である。これにより、旋回走行時の大きな横力を受け止めることができ、操縦安定性能が向上する。このような作用を効果的に発揮させるため、第1縁部5aのタイヤ周方向の長さL1は、好ましくは、外側トレッド端To側の溝縁5eのジグザグの1ピッチP1の90%〜96%である。
【0034】
第2縁部5bのタイヤ周方向に対する角度α2は、好ましくは60度以上、より好ましくは70度以上である。これにより、第2縁部5bは、雪柱せん断力を生じさせて、雪路性能を向上する。
【0035】
図1に示されるように、第1主溝3乃至第3主溝5のタイヤ軸方向の溝幅W1及び溝深さ(図示省略)については、慣例に従って種々定めることができる。第1主溝3乃至第3主溝5の溝幅W1は、例えば、トレッド接地幅TWの3〜12%が望ましい。第1主溝3乃至第3主溝5の溝深さは、乗用車用タイヤの場合、例えば、3〜10mmが望ましい。
【0036】
トレッド部2には、主溝3乃至5によって、外側ミドル陸部8、内側ミドル陸部9、外側ショルダー陸部10、及び、内側ショルダー陸部11が形成されている。
【0037】
図3は、外側ミドル陸部8の拡大図である。
図3に示されるように、外側ミドル陸部8は、第1主溝3と第2主溝4とで区分されている。本実施形態の外側ミドル陸部8は、ミドル傾斜溝12、外側ミドルラグ溝13及び内側ミドルラグ溝14が、それぞれ複数本設けられている。
【0038】
ミドル傾斜溝12は、第1主溝3及び第2主溝4のいずれにも直接連通していない。即ち、ミドル傾斜溝12は、両端が外側ミドル陸部8内で終端している。このようなミドル傾斜溝12は、外側ミドル陸部8の剛性を高く確保し、操縦安定性能を向上する。また、ミドル傾斜溝12は、タイヤ軸方向成分を有するため、雪柱せん断力を発揮して、雪路性能を向上する。
【0039】
ミドル傾斜溝12は、一方側へ連続して傾斜している。これにより、外側ミドル陸部8の剛性が高く確保される。
【0040】
ミドル傾斜溝12の角度θ1が10度未満の場合、ミドル傾斜溝12のタイヤ軸方向成分が小さくなり、雪路性能が悪化するおそれがある。ミドル傾斜溝12の角度θ1が30度を超える場合、ミドル傾斜溝12の端部が、第1主溝3又は第2主溝4近傍に配されるため、外側ミドル陸部8の端部近傍のタイヤ軸方向の剛性が低下するおそれがある。このため、ミドル傾斜溝12のタイヤ周方向に対する角度θ1が、好ましくは、10〜30度である。本明細書において、溝の角度は、溝中心線で測定される。溝中心線は、両側の溝縁を継ぐタイヤ軸方向線の中点を連続する線分である。
【0041】
ミドル傾斜溝12は、第1ミドル傾斜部15と、第1ミドル傾斜部15の溝幅よりも小さい第2ミドル傾斜部16とを有している。
【0042】
第1ミドル傾斜部15は、タイヤ赤道C上の内端部15iと外側トレッド端To側の外端部15oとを有し、内端部15iから外端部15oまで溝幅が漸増している。このような第1ミドル傾斜部15は、大きな雪柱を形成することができ、雪路性能をさらに向上する。また、第1ミドル傾斜部15は、直進走行時に最も大きな接地圧の作用するタイヤ赤道C上の剛性を大きく確保するため、直進安定性能が向上する。
【0043】
雪路性能と操縦安定性能とをバランス良く高めるため、内端部15iの溝幅W2aは、好ましくは、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の最大幅Waの2%〜8%である。同様の観点より、外端部15oの溝幅W2bは、好ましくは、外側ミドル陸部8の最大幅Waの10%〜30%である。また、第1ミドル傾斜部15の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、主溝の溝深さの70%〜100%である。傾斜溝及び後述するラグ溝の溝幅は、溝中心線と直角方向の溝縁間の距離である。
【0044】
第1ミドル傾斜部15の角度θ1aは、タイヤ軸方向外側に向かって漸増している。このような第1ミドル傾斜部15は、旋回走行時の大きな横力が作用する、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向外側部分において、タイヤ軸方向の剛性を大きく確保できる。このため、操縦安定性能がさらに向上する。
【0045】
第2ミドル傾斜部16は、第1ミドル傾斜部15の外端部15oから外側トレッド端To側にのびている。本実施形態の第2ミドル傾斜部16は、タイヤ赤道C側の溝縁16eが、第1ミドル傾斜部15のタイヤ赤道C側の溝縁15eと滑らかに連続している。これにより、外側ミドル陸部8の剛性が、さらに高く確保される。
【0046】
外側ミドル陸部8の剛性を高く確保して、雪を強固に押し固めるために、第2ミドル傾斜部16の溝幅W3は、好ましくは、外側ミドル陸部8の最大幅Waの1%〜7%である。第2ミドル傾斜部16の溝深さは、好ましくは、第1ミドル傾斜部15の溝深さの10%〜60%である。
【0047】
外側ミドルラグ溝13は、本実施形態では、第1主溝3とミドル傾斜溝12とを継いでいる。これにより、ミドル傾斜溝12と外側ミドルラグ溝13とで、タイヤ軸方向に大きな雪柱を形成してせん断することができる。また、ミドル傾斜溝12内の雪が、外側ミドルラグ溝13を介して第1主溝3へ排出される。従って、雪路性能が向上する。
【0048】
外側ミドルラグ溝13は、第1外側ミドルラグ溝13Aと、第1外側ミドルラグ溝13Aよりもタイヤ軸方向の長さが大きい第2外側ミドルラグ溝13Bとを含み、これらがタイヤ周方向に交互に配されている。
【0049】
第1外側ミドルラグ溝13Aの一方の溝縁13aは、第1ミドル傾斜部15の外端部15oの溝縁15aと滑らかに接続されている。これにより、第1ミドル傾斜部15内の雪が、第1外側ミドルラグ溝13Aを介して効果的に第1主溝3へ排出される。
【0050】
第2外側ミドルラグ溝13Bは、第2ミドル傾斜部16が連通している。これにより、第2ミドル傾斜部16内の雪が、第2外側ミドルラグ溝13Bを介して、第1主溝3に排出される。
【0051】
外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向外側部分のタイヤ周方向の剛性を均一にして、操縦安定性能を向上する観点より、第2外側ミドルラグ溝13Bのタイヤ軸方向に対する角度θ2bと、第1外側ミドルラグ溝13Aのタイヤ軸方向に対する角度θ2aとの差の絶対値|θ2a−θ2b|は、好ましくは10度以下、より好ましくは5度以下である。
【0052】
外側ミドルラグ溝13の溝幅W4は、外側ミドル陸部8の剛性を確保しつつ、大きな雪柱を形成するため、好ましくは、4〜9mmである。同様の観点より、外側ミドルラグ溝13の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、主溝の溝深さの80%〜100%である。外側ミドルラグ溝13のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、好ましくは、5〜20度である。
【0053】
内側ミドルラグ溝14は、ミドル傾斜溝12と第2主溝4とを継いでいる。これにより、ミドル傾斜溝12と内側ミドルラグ溝14とで、タイヤ軸方向に大きな雪柱を形成してせん断することができる。また、ミドル傾斜溝12内の雪が、内側ミドルラグ溝14を介して第2主溝4へ排出される。従って、雪路性能が向上する。
【0054】
本実施形態の内側ミドルラグ溝14は、第1内側ミドルラグ溝14Aと、第1内側ミドルラグ溝14Aよりもタイヤ軸方向の長さが大きい第2内側ミドルラグ溝14Bとをタイヤ周方向に交互に含んでいる。
【0055】
内側ミドルラグ溝14は、外側ミドルラグ溝13とタイヤ周方向で異なる位置に設けられている。これにより、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の剛性がタイヤ周方向に亘ってバランス良く確保されるため、操縦安定性能がさらに維持される。
【0056】
外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向内側部分のタイヤ周方向の剛性を均一にして、操縦安定性能を向上する観点より、第2内側ミドルラグ溝14Bのタイヤ軸方向に対する角度θ3bと、第1内側ミドルラグ溝14Aのタイヤ軸方向に対する角度θ3aとの差の絶対値|θ3a−θ3b|は、好ましくは10度以下、より好ましくは5度以下である。
【0057】
内側ミドルラグ溝14のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、本実施形態では、外側ミドルラグ溝13の角度θ2よりも大きい。これにより、タイヤ赤道C側に配された内側ミドルラグ溝14内の雪は、タイヤの転動により、後着側にスムーズに排出される。内側ミドルラグ溝14の角度θ3が、過度に大きい場合、内側ミドルラグ溝14の雪柱せん断力が小さくなるおそれがある。このような観点より、内側ミドルラグ溝14の角度θ3は、好ましくは、10〜30度である。
【0058】
内側ミドルラグ溝14の溝幅W5は、外側ミドル陸部8の内側トレッド端Ti側の剛性を確保しつつ、大きな雪柱を形成するため、好ましくは、4〜9mmである。同様の観点より、内側ミドルラグ溝14の溝深さ(図示省略)は、好ましくは、主溝の溝深さの80%〜100%である。
【0059】
図2に示されるように、内側ミドル陸部9は、第2主溝4と第3主溝5とで区分されている。内側ミドル陸部9は、本実施形態では、第2主溝4と第3主溝5との間を継ぐ横溝が設けられていないリブ9Aである。このような内側ミドル陸部9は、その剛性が大きく確保されるため、特に乾燥路で高い操縦安定性能を発揮させる。
【0060】
内側ミドル陸部9には、ミドル横ラグ溝18と幅W7が0.8mm以下の内側ミドルサイピング19とが設けられている。ミドル横ラグ溝18は、内側ミドル陸部9の剛性の過度の低下を抑制しつつ、雪柱せん断力を発揮する。内側ミドルサイピング19は、内側ミドル陸部9の剛性を効果的に低下させ、接地時のミドル横ラグ溝18の溝の開閉を大きくして、大きな雪柱を形成させる。
【0061】
ミドル横ラグ溝18は、第3主溝5からタイヤ赤道C側にのびかつ内側ミドル陸部9内で終端している。これにより、旋回走行時の大きな横力を利用して、ミドル横ラグ溝18内の雪を効果的に第3主溝5側に排出できる。
【0062】
ミドル横ラグ溝18は、第1縁部5aのタイヤ周方向長さの中間位置に設けられている。このようなミドル横ラグ溝18は、内側ミドル陸部9の剛性の過度の低下を抑制する。
【0063】
ミドル横ラグ溝18の溝幅W6は、好ましくは、外側トレッド端To側の溝縁5eの1ピッチP1の5%〜20%である。また、ミドル横ラグ溝18のタイヤ軸方向の長さL5は、好ましくは、内側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の最大幅Wbの20%〜40%である。ミドル横ラグ溝18の長さL5は、ミドル横ラグ溝18の溝中心線18cのタイヤ軸方向の長さである。ミドル横ラグ溝18の溝深さは、好ましくは、主溝の溝深さの65%〜85%である。
【0064】
ミドル横ラグ溝18のタイヤ周方向に対する角度θ4は、好ましくは、60度以上である。ミドル横ラグ溝18の角度θ4が60度以下の場合、ミドル横ラグ溝18の軸方向成分が小さくなり、雪路性能が悪化するおそれがある。ミドル横ラグ溝18の角度θ4は、より好ましくは65度以上である。
【0065】
内側ミドルサイピング19は、内側ミドル陸部9を横断するフルオープンタイプであって、直線状にのびている。このような内側ミドルサイピング19は、ミドル横ラグ溝18の開閉を大きくして、より大きな雪柱を形成するのに役立つ。
【0066】
特に限定されるものではないが、内側ミドルサイピング19の深さは、好ましくは、主溝の溝深さの65%〜75%である。
【0067】
内側ミドルサイピング19は、ミドル横ラグ溝18と同じ向きに傾斜している。これにより、ミドル横ラグ溝18と内側ミドルサイピング19との間の内側ミドル陸部9の縦剛性が、タイヤ軸方向に亘ってバランス良く確保され、操縦安定性能が向上する。
【0068】
内側ミドルサイピング19は、ミドル横ラグ溝18と第2主溝4とを継ぐ第1サイピング20と、第3主溝5と第2主溝4とを継ぐ第2サイピング21とを含んでいる。
【0069】
第1サイピング20は、本実施形態では、ミドル横ラグ溝18の溝中心線18cを滑らかに延長させた延長線上に設けられている。このような第1サイピング20は、ミドル横ラグ溝18の開閉をさらに大きくして、大きな雪柱を形成させることができるため、雪路性能を向上する。
【0070】
第2サイピング21は、第2縁部5bに滑らかに接続されている。これにより、第1縁部5aと第2縁部5bとが交差して第3主溝5側へ凹となる内側ミドル陸部9の入隅コーナ部9aでの応力集中が緩和されるため、内側ミドル陸部9の剛性が高く維持される。本実施形態では、第2サイピング21は、第2縁部5bと1本の直線を形成するように接続されている。
【0071】
車両外側の陸部には、車両内側の陸部よりも、旋回走行時の横力が大きく作用する。このため、内側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の最大幅Wbを、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の最大幅Wa(
図3に示す)よりも小さくして、車両外側及び内側の剛性をバランス良く確保することにより、操縦安定性能が向上する。外側ミドル陸部8の最大幅Waが、内側ミドル陸部9の最大幅Wbの1.5倍未満の場合、又は、外側ミドル陸部8の最大幅Waが、内側ミドル陸部9の最大幅Wbの4.5倍を超える場合、外側ミドル陸部8と内側ミドル陸部9との剛性バランスが悪化し、操縦安定性能が悪化するおそれがある。このため、外側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の最大幅Waは、好ましくは、内側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の最大幅Wbの1.5〜4.5倍である。
【0072】
図1に示されるように、外側ショルダー陸部10は、外側トレッド端Toと第1主溝3との間に配されている。外側ショルダー陸部10には、外側トレッド端Toと第1主溝3との間を継いでのびる複数本の外側ショルダー横溝23が設けられている。これにより、外側ショルダー陸部10は、外側トレッド端Toと第1主溝3と外側ショルダー横溝23とで区分される外側ショルダーブロック10Bがタイヤ周方向に並んだブロック列として形成されている。
【0073】
本実施形態の外側ショルダー横溝23は、タイヤ軸方向内側に配された内側部23Aと、内側部23Aよりも外側トレッド端To側に配されかつ内側部23Aよりも溝幅の大きい外側部23Bとを含んでいる。このような外側ショルダー横溝23は、溝内の雪がスムーズに外側トレッド端Toから排出される。
【0074】
外側ショルダーブロック10Bは、第1外側ブロック25Aと、第2外側ブロック25Bとを含み、これらがタイヤ周方向に交互に形成されている。第1外側ブロック25Aには、外側ショルダー横溝23からタイヤ軸方向内側にのび外側ショルダーブロック10B内で終端する第1傾斜細溝24Aが設けられている。第2外側ブロック25Bには、外側ショルダー横溝23からタイヤ軸方向外側にのび外側トレッド端Toに連通する第2傾斜細溝24Bが設けられている。第1傾斜細溝24Aと、第2傾斜細溝24Bとは、外側ショルダー横溝23を介して滑らかに連なっている。
【0075】
第1外側ブロック25Aには、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側にのび第1傾斜細溝24Aに連通することなく第1外側ブロック25A内で終端している切り込み状の外側サイプ26Aが設けられている。
【0076】
第2外側ブロック25Bには、第2傾斜細溝24Bよりもタイヤ軸方向内側に配され両端が第2外側ブロック25B内に位置する切り込み状の内側サイプ26Bが設けられている。
【0077】
内側ショルダー陸部11は、第3主溝5と内側トレッド端Tiとの間に形成されている。内側ショルダー陸部11には、タイヤ軸方向にのびる複数本の内側ショルダーラグ溝27と、タイヤ周方向に連続してのびる内側ショルダー縦溝28とが設けられている。
【0078】
本実施形態の内側ショルダーラグ溝27は、内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向内側にのびかつ内側ショルダー縦溝28に連通している。また、内側ショルダーラグ溝27は、タイヤ軸方向内側に配された第1内側部27Aと、第1内側部27Aよりも内側トレッド端Ti側に配されかつ第1内側部27Aよりも溝幅の大きい第2内側部27Bとを含んでいる。このような内側ショルダーラグ溝27は、溝内の雪がスムーズに内側トレッド端Tiから排出される。
【0079】
特に限定されるものではないが、大きな横力が作用する内側ショルダー陸部11及び外側ショルダー陸部10のタイヤ軸方向の最大幅Wc、Wdは、好ましくは、トレッド接地幅TWの10%〜30%である。また、内側ショルダー陸部11の最大幅Wdは、好ましくは、外側ショルダー陸部10の最大幅Wcの0.9〜1.1倍である。
【0080】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのは言うまでもない。
【実施例】
【0081】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、テストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。なお、
図1、
図4及び
図5のトレッド部の総溝面積は、同じである。また、比較例1は、
図1のパターンで、ミドル傾斜溝が、滑らかに車両内側方向にのびて第1主溝に連通し、かつ、内側ミドルラグ溝が設けられていない態様である。
トレッド接地幅TW:166mm
第1ミドル傾斜部の溝深さ:8.2mm
第2ミドル傾斜部の溝深さ:5.4mm
外側ミドルラグ溝の溝深さ:5.8mm
内側ミドルラグ溝の溝深さ:4.0mm
ミドル横ラグ溝の溝深さ:6.3mm
内側ミドルサイピングの深さ:4.0mm
【0082】
<雪路性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量が2400ccの乗用車の全輪に装着され、テストドライバーが、上記車両を圧雪路面のテストコースを走行させ、このときのハンドル安定性、トラクション及びグリップ等に関する走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。
リム(全輪):16×6.5JJ
内圧(全輪):230kPa
【0083】
<操縦安定性能>
上記テスト車両を、テストドライバーが、乾燥アスファルト路面のテストコースを走行させ、このときの旋回時のハンドル応答性、及び剛性感等に関する走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。テストの結果が表1に示される。
【0084】
【表1】
【0085】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて雪路性能及び操縦安定性能がバランス良く向上していることが確認できる。また、タイヤサイズの異なるタイヤや溝幅を好ましい範囲で変化させたタイヤ等についてテストを行ったが、このテスト結果と同じ傾向が見られた。