特許第5903136号(P5903136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5903136アルミナ粉末、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903136
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】アルミナ粉末、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/02 20060101AFI20160331BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160331BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C01F7/02 K
   C08L101/00
   C08K3/22
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-165173(P2014-165173)
(22)【出願日】2014年8月14日
(62)【分割の表示】特願2010-510148(P2010-510148)の分割
【原出願日】2009年4月28日
(65)【公開番号】特開2014-240351(P2014-240351A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2008-118246(P2008-118246)
(32)【優先日】2008年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝明
(72)【発明者】
【氏名】國友 修
(72)【発明者】
【氏名】水本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】江崎 寿
(72)【発明者】
【氏名】下川 明範
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−019425(JP,A)
【文献】 特開2005−306718(JP,A)
【文献】 特開2002−348116(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133904(WO,A1)
【文献】 特開2005−281063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/02
C08K 3/22
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の方法で測定されたα相含有率が40%以下であるα相とθ相を主結晶として含有し、粒子径が45〜200μm、および粒子径が45μm未満の各粒度域における平均円形度が0.95以上であり、かつ平均粒子径が100μm以下であることを特徴とするアルミナ粉末。
[α相含有率の測定方法]
α相アルミナ粉末とθ相アルミナ粉末を0:10、5:5、10:0の質量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成する。次にサンプルのアルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近のピークの積分強度を算出し、上記作成の検量線からα相含有率を求める。
【請求項2】
前記α相含有率が30%以下である請求項1に記載のアルミナ粉末。
【請求項3】
前記α相含有率が20%以下である請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。
【請求項4】
樹脂又はゴム中に請求項1に記載のアルミナ粉末を含有してなる樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ゴムがシリコーンゴムである請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項又はに記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【請求項8】
請求項〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均円形度の大きい、高充填時の流動特性を改善したアルミナ粉末、その製造方法及びそれを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の発熱性電子部品の高機能化と高速化の進展に伴い、それが搭載された電子機器の発熱量が増大しており、半導体封止材においても高い放熱特性が求められている。半導体封止材の放熱特性を高めるには、熱伝導性の高いアルミナ粉末をゴム又は樹脂に含有させればよいが、一般的なバイヤー法アルミナ粉末では高充填時の著しい増粘現象により、アルミナの熱伝導特性を十分に活かすことが出来なかった。
【0003】
これを解決するため、水酸化アルミニウム粉末又は水酸化アルミニウム粉末のスラリーを強力な分散機能を有するフィード管から火炎中に噴霧し、球状アルミナ粉末を得る方法が提案された(特許文献1参照)。この方法で得られた球状アルミナ粒子では、平均球形度0.90以上の粒子であっても水酸化アルミニウム原料由来の表面凹凸があり、改善の余地があった。また、バイヤー法アルミナ粉末を原料に用いた場合においても、表面に原料由来の凹凸が現れており、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−19425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、平均円形度の大きい、高充填時の流動特性を改善したアルミナ粉末、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段により、前記課題を解決するものである。
(1)下記の方法で測定されたα相含有率が40%以下であるα相とθ相を主結晶として含有し、粒子径45〜200μm、および粒子径45μm未満の各粒度域における平均円形度が0.95以上であり、かつ平均粒子径が100μm以下であることを特徴とするアルミナ粉末。
[α相含有率の測定方法]
α相アルミナ粉末とθ相アルミナ粉末を0:10、5:5、10:0の質量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成する。次にサンプルのアルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近のピークの積分強度を算出し、上記作成の検量線からα相含有率を求める。
(2)前記α相含有率が30%以下である前記(1)に記載のアルミナ粉末
(3)前記α相含有率が20%以下である前記(1)又は(2)に記載のアルミナ粉末
(4)樹脂又はゴム中に前記(1)に記載のアルミナ粉末を含有してなる樹脂組成物。
(5)前記樹脂が、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂である前記(4)に記載の樹脂組成物。
)前記ゴムがシリコーンゴムである前記(4)に記載の樹脂組成物。
)前記(4)又は(5)に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
)前記(4)〜()のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。


【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均円形度が大きく、樹脂組成物中に高充填した際においても流動特性を高く保持することができ、充填材として好適なアルミナ粉末、及びその製造方法が提供される。本発明のアルミナ粉末は、半導体封止材、放熱部材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のアルミナ粉末の製造方法の一例の模式的概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアルミナ粉末は、原料に電融アルミナ粉砕物を使用することにより、アルミナ粉末粒子の表面の割れを低減することができ、流動性を高めることができる。
また、アルミナ粉末のα相含有率を40%以下にコントロールすることにより、粒子表面の凹凸形状についても改善することができ、流動性を更に高めることができる。α相含有率は0に近い方が好ましく、30%以下がより好ましく、特に、20〜0%が好適である。
【0010】
アルミナ粉末のα相含有率は、電融アルミナ粉砕物の熱処理後の冷却条件を変化させることにより、コントロールすることができる。冷却は炉体中胴部から炉内に水を噴霧することにより行うことができる。炉内の冷却条件は、水の噴霧量により調整できる。
本発明では、冷却に用いる水の噴霧量は、1時間当り100L(リットル)以上であることが好ましい。
【0011】
本発明のアルミナ粉末の平均粒子径は、用途に応じて種々選択される。後記する本発明の製造方法によれば、平均粒子径が100μm以下であり、特に10〜95μmのアルミナ粉末を容易に製造することができる。平均粒子径は、原料の平均粒子径をコントロールすることによって増減できる。
【0012】
本発明におけるアルミナ粉末の平均粒子径を100μm以下にせしめるのは、平均粒子径が100μmを超えると平均円形度0.95以上を達成することが困難となるためである。高充填域において高い流動性を発現させるためには、平均円形度0.95以上であることが好ましく、さらに好ましくは平均円形度は、0.97以上である。
【0013】
平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル920」(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。平均粒子径25μm未満の粒子についてはサンプル1g、平均粒子径25〜45μm未満の粒子についてはサンプル2g、平均粒子径45〜120μm未満の粒子についてはサンプル4gを秤量し、直接シーラスグラニュロメーターのサンプル導入部に投入する。シーラスグラニュロメーターによる粒度分布測定は、溶媒に水を使用し、設定はアルミナの屈折率(1.768)を用い、ポンプ回転数は60rpmで行った。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、樹脂またはゴムに本発明のアルミナ粉末を含有し、充填したものである。なお、本発明では、樹脂に本発明のアルミナ粉末を含有し、充填したものを「樹脂組成物」とし、ゴムに本発明のアルミナ粉末を含有し、充填したものを「ゴム組成物」という。さらに、本発明の明細書の「樹脂組成物」とは、樹脂組成物およびゴム組成物を包含して表すこともある。
樹脂またはゴムにアルミナ粉末を高充填するには、アルミナ粉末の平均円形度は0.95以上が好ましく、特に0.97以上が好ましい。アルミナ粉末の平均円形度は、火炎形成に用いる燃料ガス(例えばLPG)の量を変化させることによって増減させることができる。
【0015】
平均円形度は、例えば、Sysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」を用いて測定できる。すなわち、200mlビーカーにアルミナ粉末40gを計量し、イオン交換水を100ml入れて撹拌した後、超音波洗浄器(例えばアズワン社製、商品名「超音波洗浄器強力型VS−150」)で3分間分散させる。受け皿を取り付けたJIS45μm篩にビーカー中のスラリーを入れた後、300mlのイオン交換水を篩の上から注ぎ、その後、粒子径に応じて以下のように測定する。なお、平均円形度は、上記フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」により、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、下記の式により円形度を求め、粒子数36000個当たりの平均値を自動算出する。
円形度=粒子投影像の周囲長/粒子投影像の面積に相当する円の周囲長
【0016】
[粒子径45〜200μmの粒子の平均円形度]
5mlの容器に上記の篩上の粒子を0.15〜0.20g計量し、プロピレングリコール25質量%水溶液5mlを加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させる。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を45〜200μm(円相当径/個数基準)として解析する。
【0017】
[粒子径45μm未満の粒子の平均円形度]
上記の受け皿の中で沈降したスラリーを撹拌棒で撹拌してから、その0.5mlを5mlの容器に採取し、プロピレングリコール25質量%水溶液5mlを加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させる。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を1.5〜45μm未満(円相当径/個数基準)として解析する。
【0018】
本発明のアルミナ粉末の製造は、好ましくは、原料粉末として電融アルミナ粉砕物を、図1に示す設備を用いて行われる。
概説すれば、炉頂部より電融アルミナ粉砕物を火炎中に噴射しながら溶融し、炉体中胴部より炉内に水を噴霧し急冷を行い、得られた球状化物を排ガスと共にブロワーによってバグフィルターに搬送し捕集する。火炎の形成は、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の燃料ガスと、空気、酸素等の助燃ガスとを、炉体に設定された燃焼バーナーから噴射して行う。火炎温度は2100℃以上とすることが好ましく、2100〜2300℃とすることが特に好ましい。
【0019】
炉内への水噴霧による冷却は、2流体ノズルを使用することができる。本発明においてはアトマックスノズルBN160型(アトマックス社製)を用いて水噴霧による急冷処理を行なうことが好ましい。
本発明における上記水を噴霧する急冷処理では、炉内の温度は、水を噴霧しない場合に比べ、200〜400℃低下させることが好ましい。
炉内の温度低下の範囲は、好ましくは、前記した水の噴霧量により達成せしめられる。
【0020】
本発明のアルミナ粉末の製造方法において、アルミナ粉末のα相含有率は、水の噴霧量(炉内の温度条件の設定に対応する)により調節できる。
【0021】
本発明のアルミナ粉末の製造方法で使用される原料の電融アルミナ粉砕物は、バイヤー法アルミナの溶融固化物の粉砕物であるのが好ましい。バイヤー法アルミナの溶融にはアーク炉を使用することができる。電融アルミナ粉砕物の平均粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは10〜95μmであるのが好適である。
【0022】
本発明におけるアルミナ粉末を半導体封止材に使用する際は、アルミナ粉末中のイオン性不純物を低減させる必要がある。アルミナ粉末中のイオン性不純物の低減は、電融アルミナ粉砕物の火炎処理物を水洗処理することが好ましい。該水洗処理としては、例えば、特開2005−281063号公報に記載の方法が使用される。すなわち、アルミナ粉末をイオン交換樹脂の存在下で、Na、K、NH、Mg、Caを実質的に含まないpHが3〜7の水で洗浄して行われる。
【0023】
本発明の樹脂組成物の樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。なかでも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ABS樹脂、シリコーン樹脂などが好ましい。
特に好ましくはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、本発明のアルミナ粉末を前記樹脂または前記ゴムに含有させ、充填せしめたものである。本発明の樹脂組成物は、各材料の所定量をブレンダーやヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸押し出し機等によって混練し、冷却後、粉砕することによって製造することができる。アルミナ粉末の含有率は用途によって異なるが、本発明では、アルミナ粉末を樹脂またはゴム中に高充填できることに特徴があり、樹脂組成物100体積%に対して40体積%以上とするのが好ましく、65〜90体積%がより好ましい。
本発明のアルミナ粉末をエポキシ樹脂に含有させたものは半導体封止材として好適である。半導体封止材用として3W/m・Kを超える高い熱伝導率を発現させるためには、アルミナ粉末の含有率を、樹脂組成物100体積%に対して70体積%以上にすることが好ましく、75〜90体積%にするのがより好ましい。
本発明のアルミナ粉末をシリコーン樹脂又はシリコーンゴムに含有させたものは放熱部材として好適である。放熱部材としての高い熱伝導率を発現させるためには、アルミナ粉末の含有率を、樹脂組成物100体積%に対して65体積%以上にすることが好ましく、70〜80体積%にするのがより好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例1〜9および比較例1〜3(アルミナ粉末の製造)
[電融アルミナ粉砕物の製造]
バイヤー法仮焼アルミナ粉末「D」(日本軽金属社製A11)をアーク炉で溶融・冷却・粉砕して、電融アルミナ粉砕物「A」、「B」、および「C」を製造した。「A」、「B」、および「C」の製造分けは粉砕時間を調整して行った。
【0026】
原料調製時の粉砕処理は、ボールミル(セイワ技研社製AXB−15)を使用し、粉砕メディアにはアルミナボール(直径30mmの球)を使用した。
表1には、本発明で使用したアルミナ粉末原料「A」、「B」、「C」、および「D」の種類、および平均粒子径を示す。
【0027】
[アルミナ粉末の製造]
[熱処理]
熱処理は図1に示す製造装置を用いて行った。燃料ガス(LPG)と助燃ガス(Oガス)の噴射量を表2に示す量に調整して2150〜2500℃の火炎を形成した。アルミナ粉末原料(供給量は30kg/Hr)を酸素ガス(供給量は20Nm/Hr)に同伴させノズルから火炎中に噴射し、得られたアルミナ粉末をバグフィルターから回収した。火炎温度は炉外にバーナーを設置し、Impac社製放射温度計IS5/F型を使用して確認した。
【0028】
[急冷処理]
α相含有率を低減させるために、炉内への水噴霧による冷却処理を行った。水噴霧にはアトマックスノズルBN160型(アトマックス社製)を用いた。水の噴霧は、炉体周囲を均等に16分割した穴から行った。噴霧する水の温度は10℃に調整した。水の噴霧量を表2に示す。
また、急冷の程度については、水噴霧用ノズルと同じ水平面にR熱電対を水平方向に炉壁面まで挿入して炉壁温度を測定して行い、炉壁温度を対照として、冷却効果を確認した。測定した炉壁温度は、表2に示す。
【0029】
[水洗処理]
得られたアルミナ粉末を水洗処理した。水洗処理は以下の手順に従って行った。すなわち、水洗処理は、アルミナ粉末と、原子吸光分光光度計測定においてLi、Na、およびK成分が未検出であるPH=7のイオン交換水とを混合して、アルミナ粉末濃度が40質量%の水スラリーを調製し、撹拌混合装置(アシザワ・ファインテック社製、商品名「スターディスパーサーRSV175」)を用いて1時間撹拌し、フィルタープレスで脱水処理した。得られたケーキの含水率は、全て20質量%以下であった。このケーキを棚段乾燥機にて150℃で48時間乾燥して、水洗処理したアルミナ粉末を得た。
【0030】
アルミナ粉末の平均円形度は以下の方法により測定した、それらの結果を表3に示す。
[平均円形度]
平均円形度は、Sysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」を用いて測定した。すなわち、200mlビーカーにアルミナ粉末40gを計量し、イオン交換水を100ml入れて撹拌した後、超音波洗浄器(例えばアズワン社製、商品名「超音波洗浄器強力型VS−150」)で3分間分散させた。次いで、受け皿を取り付けたJIS45μm篩にビーカー中のスラリーを入れた後、300mlのイオン交換水を篩の上から注ぎ、その後、粒子径に応じて以下のように測定した。
平均円形度は、フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」により、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、下式により円形度を求め、
円形度=(粒子投影像の周囲長)/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)
36000個当たりの平均値を自動算出した。
[粒子径45〜200μmの粒子の平均円形度]
5mlの容器に上記の篩上の粒子を0.15〜0.20g計量し、プロピレングリコール25質量%水溶液を5ml加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させた。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個で繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を45〜200μm(円相当径/個数基準)として解析した。
[粒子径45μm未満の粒子の平均円形度]
上記の受け皿の中で沈降したスラリーを撹拌棒で撹拌してから、その0.5mlを5mlの容器に採取し、プロピレングリコール25質量%水溶液を5ml加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させた。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を1.5〜45μm未満(円相当径/個数基準)として解析した。
【0031】
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル920」を用いて測定した。平均粒子径25μm以下の粒子についてはサンプル1g、平均粒子径25〜45μmの粒子についてはサンプル2g、平均粒子径45〜120μmの粒子についてはサンプル4gを秤量し、直接シーラスグラニュロメーターのサンプル導入部に投入した。シーラスグラニュロメーターによる粒度分布測定は、溶媒に水を使用し、設定はアルミナの屈折率(1.768)を用い、ポンプ回転数は60rpmで行った。
【0032】
α相含有率は、以下の方法により測定した。その結果を表3に示す。
α相含有率はX線回折の検量線法により求めることができる。X線回折測定にはJDX−3500型X線回折装置(日本電子社製)を使用した。
[α相含有率の測定方法]
α相アルミナ粉末AA−05(住友化学社製)とθ相アルミナ粉末タイミクロンTM−100D(大明化学社製)を0:10、5:5、10:0の重量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成した。
次にサンプルのアルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近のピークの積分強度を算出し、上記で作成した検量線からα相含有率を求めた。
【0033】
実施例11〜19および比較例11〜13
表3の実施例11〜18および比較例11〜13では、表5に示される樹脂配合物30体積部と、上記実施例1〜8または比較例1〜3で得られたアルミナ粉末70体積部と、を混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。かかる実施例および比較例のそれぞれの樹脂組成物についての流動性や熱伝導率を以下に従い評価した。
また、実施例19では、表5に示される樹脂配合物20体積部と実施例9のアルミナ粉末80体積部とを混合してエポキシ樹脂組成物を調製し、その流動性、および熱伝導率を以下に従い評価した。
なお、熱伝導率の測定に使用した放熱部材の作製は、以下のように行なった。二軸押出混練機で加熱混練して調製した半導体封止材料を、トランスファー成形機を用いて、縦25mm、横25mm、厚み3mmの板状成型金型に流し込み、熱伝導率評価用のサンプルを作製した。
【0034】
[流動性]
スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(Epoxy Molding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠したスパイラルフロー測定用金型を取り付けたトランスファー成形機を用いて、二軸押出混練機で加熱混練して調製した半導体封止材料のスパイラルフロー値を測定した。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.4MPa(ゲージ圧)、および保圧時間90秒とした。
【0035】
実施例21〜29および比較例21〜23
[粘度評価]
表4の実施例21〜28および比較例21〜23では、液状シリコーンゴム40体積部と、上記実施例1〜8または比較例1〜3で得られたアルミナ粉末70体積部と、を混合してシリコーンゴム組成物を調製した。かかる実施例および比較例のそれぞれのシリコーンゴム組成物についての粘度や熱伝導率を以下に従い評価した。
また、実施例29では、液状シリコーンゴム30体積部と実施例9で得られたアルミナ粉末70体積部とを混合してシリコーンゴム組成物を調製し、その粘度、および熱伝導率を以下に従い評価した。なお、液状シリコーンゴムには、YE5822A(Momentive Material社製)を使用した。
得られた結果を、表4にアルミナ粉末の製造条件(実施例1〜9および比較例1〜3)と合わせて示す。
[粘度測定]
粘度測定は、Momentive Material社製、液状シリコーンゴムYE5822Aに熱処理したアルミナ粉末を投入し、東京理化器械社製、攪拌機NZ−1100を用いて混合した。混合したシリコーンゴム組成物の粘度は、真空脱泡した後、東機産業社製、B型粘度計TVB−10で測定した。粘度測定はNo.7スピンドルを使用し、回転数20rpm、室温20℃で行った。
また、シリコーンゴム組成物を用いた放熱部材の作製は、以下のように行なった。
すなわち、上記の粘度測定において調製した液状シリコーンゴムYE5822Aとアルミナ粉末のシリコーンゴム組成物に、液状シリコーンゴムYE5822BをYE5822Aに対して、質量基準で10:1の割合(YE5822A:YE5822B=10:1)で添加した。YE5822Bを添加後、成形し、120℃の雰囲気で加熱処理し、放熱部材を作製した。
【0036】
[熱伝導率測定]
上記作製したエポキシ樹脂組成物およびシリコーンゴム樹脂組成物の放熱部材を25mm×25mm(縦×横)、および厚み3mmに成形し、該部材を15mm×15mmの銅製ヒーターケースと銅板の間に挟み、締め付けトルク5kgf/cmにてセットした。その後、銅製ヒーターケースに15Wの電力をかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板の温度差を測定し、下記式により熱抵抗を算出した。
熱抵抗(℃/W)=銅製ヒーターケースと銅板の温度差(℃)/ヒーター印加電力(W)
熱伝導率は、熱抵抗(℃/W)、伝熱面積[銅製ヒーターケースの面積](m)、および締め付けトルク5kgf/cm時の成形体厚(m)から、下記式により算出することができる。
熱伝導率(W/m・K)= 成形体厚(m)/{熱抵抗(℃/W)×伝熱面積(m)}
表3および表4には、各実施例および各比較例の樹脂組成物及びゴム組成物の物性の測定結果を示す。
なお、表3および表4の「フィラー充填率」とは、実施例および比較例で得られたアルミナ粉末の充填率(vol%)のことである。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表3および表4から明らかなように、本発明のアルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、粘度が低く、スパイラルフロー値が高いため、流動性が著しく向上している。
本発明のアルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、半導体封止材あるいは放熱部材の用途に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のアルミナ粉末は、樹脂組成物の充填材として使用され、さらに、自動車、携帯電子機器、産業用機器、家庭用電化製品等のモールディングコンパウンドや放熱シート等に用いられる。
また、本発明の樹脂組成物から得られる半導体封止材は、グラフィックチップ等の放熱特性が重要な部材として好適に使用される。
なお、2008年4月30日に出願された日本特許出願2008−118246号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 溶融炉
2 バーナー
3 燃料ガス供給管
4 助燃ガス供給管
5 原料粉末供給管
6 水供給管
7 バグフィルター
8 ブロワー
9 R熱電対
図1