【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例1〜9および比較例1〜3(アルミナ粉末の製造)
[電融アルミナ粉砕物の製造]
バイヤー法仮焼アルミナ粉末「D」(日本軽金属社製A11)をアーク炉で溶融・冷却・粉砕して、電融アルミナ粉砕物「A」、「B」、および「C」を製造した。「A」、「B」、および「C」の製造分けは粉砕時間を調整して行った。
【0026】
原料調製時の粉砕処理は、ボールミル(セイワ技研社製AXB−15)を使用し、粉砕メディアにはアルミナボール(直径30mmの球)を使用した。
表1には、本発明で使用したアルミナ粉末原料「A」、「B」、「C」、および「D」の種類、および平均粒子径を示す。
【0027】
[アルミナ粉末の製造]
[熱処理]
熱処理は
図1に示す製造装置を用いて行った。燃料ガス(LPG)と助燃ガス(O
2ガス)の噴射量を表2に示す量に調整して2150〜2500℃の火炎を形成した。アルミナ粉末原料(供給量は30kg/Hr)を酸素ガス(供給量は20Nm
3/Hr)に同伴させノズルから火炎中に噴射し、得られたアルミナ粉末をバグフィルターから回収した。火炎温度は炉外にバーナーを設置し、Impac社製放射温度計IS5/F型を使用して確認した。
【0028】
[急冷処理]
α相含有率を低減させるために、炉内への水噴霧による冷却処理を行った。水噴霧にはアトマックスノズルBN160型(アトマックス社製)を用いた。水の噴霧は、炉体周囲を均等に16分割した穴から行った。噴霧する水の温度は10℃に調整した。水の噴霧量を表2に示す。
また、急冷の程度については、水噴霧用ノズルと同じ水平面にR熱電対を水平方向に炉壁面まで挿入して炉壁温度を測定して行い、炉壁温度を対照として、冷却効果を確認した。測定した炉壁温度は、表2に示す。
【0029】
[水洗処理]
得られたアルミナ粉末を水洗処理した。水洗処理は以下の手順に従って行った。すなわち、水洗処理は、アルミナ粉末と、原子吸光分光光度計測定においてLi
+、Na
+、およびK
+成分が未検出であるPH=7のイオン交換水とを混合して、アルミナ粉末濃度が40質量%の水スラリーを調製し、撹拌混合装置(アシザワ・ファインテック社製、商品名「スターディスパーサーRSV175」)を用いて1時間撹拌し、フィルタープレスで脱水処理した。得られたケーキの含水率は、全て20質量%以下であった。このケーキを棚段乾燥機にて150℃で48時間乾燥して、水洗処理したアルミナ粉末を得た。
【0030】
アルミナ粉末の平均円形度は以下の方法により測定した、それらの結果を表3に示す。
[平均円形度]
平均円形度は、Sysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」を用いて測定した。すなわち、200mlビーカーにアルミナ粉末40gを計量し、イオン交換水を100ml入れて撹拌した後、超音波洗浄器(例えばアズワン社製、商品名「超音波洗浄器強力型VS−150」)で3分間分散させた。次いで、受け皿を取り付けたJIS45μm篩にビーカー中のスラリーを入れた後、300mlのイオン交換水を篩の上から注ぎ、その後、粒子径に応じて以下のように測定した。
平均円形度は、フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」により、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、下式により円形度を求め、
円形度=(粒子投影像の周囲長)/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)
36000個当たりの平均値を自動算出した。
[粒子径45〜200μmの粒子の平均円形度]
5mlの容器に上記の篩上の粒子を0.15〜0.20g計量し、プロピレングリコール25質量%水溶液を5ml加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させた。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個で繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を45〜200μm(円相当径/個数基準)として解析した。
[粒子径45μm未満の粒子の平均円形度]
上記の受け皿の中で沈降したスラリーを撹拌棒で撹拌してから、その0.5mlを5mlの容器に採取し、プロピレングリコール25質量%水溶液を5ml加えた後、超音波洗浄器で10秒間分散させた。これをフロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」に全量入れ、HPFモード/定量カウント方式(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)で測定し、粒子径の範囲を1.5〜45μm未満(円相当径/個数基準)として解析した。
【0031】
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル920」を用いて測定した。平均粒子径25μm以下の粒子についてはサンプル1g、平均粒子径25〜45μmの粒子についてはサンプル2g、平均粒子径45〜120μmの粒子についてはサンプル4gを秤量し、直接シーラスグラニュロメーターのサンプル導入部に投入した。シーラスグラニュロメーターによる粒度分布測定は、溶媒に水を使用し、設定はアルミナの屈折率(1.768)を用い、ポンプ回転数は60rpmで行った。
【0032】
α相含有率は、以下の方法により測定した。その結果を表3に示す。
α相含有率はX線回折の検量線法により求めることができる。X線回折測定にはJDX−3500型X線回折装置(日本電子社製)を使用した。
[α相含有率の測定方法]
α相アルミナ粉末AA−05(住友化学社製)とθ相アルミナ粉末タイミクロンTM−100D(大明化学社製)を0:10、5:5、10:0の重量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成した。
次にサンプルのアルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°付近のピークの積分強度を算出し、上記で作成した検量線からα相含有率を求めた。
【0033】
実施例11〜19および比較例11〜13
表3の実施例11〜18および比較例11〜13では、表5に示される樹脂配合物30体積部と、上記実施例1〜8または比較例1〜3で得られたアルミナ粉末70体積部と、を混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。かかる実施例および比較例のそれぞれの樹脂組成物についての流動性や熱伝導率を以下に従い評価した。
また、実施例19では、表5に示される樹脂配合物20体積部と実施例9のアルミナ粉末80体積部とを混合してエポキシ樹脂組成物を調製し、その流動性、および熱伝導率を以下に従い評価した。
なお、熱伝導率の測定に使用した放熱部材の作製は、以下のように行なった。二軸押出混練機で加熱混練して調製した半導体封止材料を、トランスファー成形機を用いて、縦25mm、横25mm、厚み3mmの板状成型金型に流し込み、熱伝導率評価用のサンプルを作製した。
【0034】
[流動性]
スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(Epoxy Molding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠したスパイラルフロー測定用金型を取り付けたトランスファー成形機を用いて、二軸押出混練機で加熱混練して調製した半導体封止材料のスパイラルフロー値を測定した。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.4MPa(ゲージ圧)、および保圧時間90秒とした。
【0035】
実施例21〜29および比較例21〜23
[粘度評価]
表4の実施例21〜28および比較例21〜23では、液状シリコーンゴム40体積部と、上記実施例1〜8または比較例1〜3で得られたアルミナ粉末70体積部と、を混合してシリコーンゴム組成物を調製した。かかる実施例および比較例のそれぞれのシリコーンゴム組成物についての粘度や熱伝導率を以下に従い評価した。
また、実施例29では、液状シリコーンゴム30体積部と実施例9で得られたアルミナ粉末70体積部とを混合してシリコーンゴム組成物を調製し、その粘度、および熱伝導率を以下に従い評価した。なお、液状シリコーンゴムには、YE5822A(Momentive Material社製)を使用した。
得られた結果を、表4にアルミナ粉末の製造条件(実施例1〜9および比較例1〜3)と合わせて示す。
[粘度測定]
粘度測定は、Momentive Material社製、液状シリコーンゴムYE5822Aに熱処理したアルミナ粉末を投入し、東京理化器械社製、攪拌機NZ−1100を用いて混合した。混合したシリコーンゴム組成物の粘度は、真空脱泡した後、東機産業社製、B型粘度計TVB−10で測定した。粘度測定はNo.7スピンドルを使用し、回転数20rpm、室温20℃で行った。
また、シリコーンゴム組成物を用いた放熱部材の作製は、以下のように行なった。
すなわち、上記の粘度測定において調製した液状シリコーンゴムYE5822Aとアルミナ粉末のシリコーンゴム組成物に、液状シリコーンゴムYE5822BをYE5822Aに対して、質量基準で10:1の割合(YE5822A:YE5822B=10:1)で添加した。YE5822Bを添加後、成形し、120℃の雰囲気で加熱処理し、放熱部材を作製した。
【0036】
[熱伝導率測定]
上記作製したエポキシ樹脂組成物およびシリコーンゴム樹脂組成物の放熱部材を25mm×25mm(縦×横)、および厚み3mmに成形し、該部材を15mm×15mmの銅製ヒーターケースと銅板の間に挟み、締め付けトルク5kgf/cmにてセットした。その後、銅製ヒーターケースに15Wの電力をかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板の温度差を測定し、下記式により熱抵抗を算出した。
熱抵抗(℃/W)=銅製ヒーターケースと銅板の温度差(℃)/ヒーター印加電力(W)
熱伝導率は、熱抵抗(℃/W)、伝熱面積[銅製ヒーターケースの面積](m
2)、および締め付けトルク5kgf/cm時の成形体厚(m)から、下記式により算出することができる。
熱伝導率(W/m・K)= 成形体厚(m)/{熱抵抗(℃/W)×伝熱面積(m
2)}
表3および表4には、各実施例および各比較例の樹脂組成物及びゴム組成物の物性の測定結果を示す。
なお、表3および表4の「フィラー充填率」とは、実施例および比較例で得られたアルミナ粉末の充填率(vol%)のことである。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表3および表4から明らかなように、本発明のアルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、粘度が低く、スパイラルフロー値が高いため、流動性が著しく向上している。
本発明のアルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、半導体封止材あるいは放熱部材の用途に好適である。