特許第5903148号(P5903148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5903148
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】電線仮置具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-219809(P2014-219809)
(22)【出願日】2014年10月29日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】専徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏康
(72)【発明者】
【氏名】石原 純司
(72)【発明者】
【氏名】田中 未来
(72)【発明者】
【氏名】石本 貫
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−304706(JP,A)
【文献】 実開平3−86709(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕金に取付けられ、電線の仮置に使用される電線仮置具であって、
前記電線の周囲を囲う開閉式の電線カバーを備え、
前記電線カバーは、前記電線カバーの内側に配置され前記電線を載置する電線仮置部と、前記電線カバーの外側から前記電線仮置部への前記電線の経路を開閉する開閉カバーとを備え、
前記開閉カバーは、前記電線仮置部に前記電線が載置されると閉まり、前記電線仮置部から前記電線が取り除かれると開くことを特徴とする電線仮置具。
【請求項2】
前記開閉カバーは、回動自在な回動体であり、前記電線仮置部に前記電線が載置されると前記電線の重量により回動して閉まることを特徴とする請求項1に記載の電線仮置具。
【請求項3】
前記電線カバーは、前記電線仮置部に前記電線が載置されていないときに前記開閉カバーを開いた状態に保つ開放手段を備え、
前記開放手段は、前記電線仮置部に前記電線が載置されると前記開閉カバーが閉まるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線仮置具。
【請求項4】
前記開放手段は、バネを備え、
前記開閉カバーは、前記バネの弾性力により開いた状態に保たれ、前記電線仮置部に前記電線が載置されると、前記バネの弾性力に打ち勝ち閉まることを特徴とする請求項3に記載の電線仮置具。
【請求項5】
前記開放手段は、前記開閉カバーに取付けられた重量体を備え、
前記重量体は、前記開閉カバーが開く方向に力が加わるように前記開閉カバーに取付けられており、
前記開閉カバーは、前記重量体の重量により開いた状態に保たれ、前記電線仮置部に前記電線が載置されると、前記重量体が作用する力に打ち勝ち閉まることを特徴とする請求項3に記載の電線仮置具。
【請求項6】
前記電線カバーは、絶縁体で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電線仮置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕金に取付けられ、電線を仮置する際に使用される電線仮置具に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線路の電線を支持する碍子に雷撃等によりひび割れが発生した場合、間接活線作業により碍子の取替を行うことがある。碍子の取替作業時には、碍子から取外した電線(高圧線)と(高圧)腕金との接触等による地絡、短絡事故を防止すべく、電線及び腕金に地絡、短絡防止用の絶縁シート等の防具を取付け、シートクリップ等で固定する必要があるが、間接活線作業では長尺な絶縁操作棒を用いて作業を行うため、防具の取付けや固定に時間が掛かるという問題があった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
間接活線作業による碍子の取替作業を簡素化すべく、碍子から取外した電線を保護する絶縁カバーを備える、腕金に一時的に取付け可能な電線仮支持具が提案されている(例えば特許文献2参照)。これによれば、電線仮支持具を腕金に取付け、クリップ様の部材を絶縁操作棒で抓んで絶縁カバーを開き、碍子から電線を外して絶縁カバー内に仮置し、押しボタン様の部材を絶縁操作棒で押すと絶縁カバーが閉まり、電線が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−213521号公報
【特許文献2】特開2012−253994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の電線仮支持具によれば、電線及び腕金に他の防具を取付けることなく、碍子取替作業時における地絡、短絡事故を防止することができるが、クリップ様の部材及び押しボタン様の部材を絶縁操作棒で操作する必要があり、さらなる作業の簡素化が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、安全性を確保しつつ電線の仮置を容易に行うことができる電線仮置具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、腕金に取付けられ、電線の仮置に使用される電線仮置具であって、前記電線の周囲を囲う開閉式の電線カバーを備え、前記電線カバーは、前記電線カバーの内側に配置され前記電線を載置する電線仮置部と、前記電線カバーの外側から前記電線仮置部への前記電線の経路を開閉する開閉カバーとを備え、前記開閉カバーは、前記電線仮置部に前記電線が載置されると閉まり、前記電線仮置部から前記電線が取り除かれると開くことを特徴とする電線仮置具である。
【0008】
また本発明において、前記開閉カバーは、回動自在な回動体であり、前記電線仮置部に前記電線が載置されると前記電線の重量により回動して閉まることを特徴とする。
【0009】
また本発明において、前記電線カバーは、前記電線仮置部に前記電線が載置されていないときに前記開閉カバーを開いた状態に保つ開放手段を備え、前記開放手段は、前記電線仮置部に前記電線が載置されると前記開閉カバーが閉まるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明において、前記開放手段は、バネを備え、前記開閉カバーは、前記バネの弾性力により開いた状態に保たれ、前記電線仮置部に前記電線が載置されると、前記バネの弾性力に打ち勝ち閉まることを特徴とする。
【0011】
また本発明において、前記開放手段は、前記開閉カバーに取付けられた重量体を備え、前記重量体は、前記開閉カバーが開く方向に力が加わるように前記開閉カバーに取付けられており、前記開閉カバーは、前記重量体の重量により開いた状態に保たれ、前記電線仮置部に前記電線が載置されると、前記重量体が作用する力に打ち勝ち閉まることを特徴とする。
【0012】
また本発明において、前記電線カバーは、絶縁体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電線仮置具によれば、仮置した電線の周囲を囲う電線カバーが電線仮置部と開閉カバーとを備え、開閉カバーは、電線仮置部に電線が載置されると閉まり、電線仮置部から電線が取り除かれると開くので、安全性を確保しつつ電線の仮置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の電線仮置具1を腕金92に取付けた状態を示す斜視図である。
図2図1の電線仮置具1の電線仮置部36まで電線91を移動させた状態を示す斜視図である。
図3図1の電線仮置具1の電線カバー11が閉まった状態を示す斜視図である。
図4図1及び図3の電線仮置具1の正面図である。
図5】本発明の第2実施形態の電線仮置具2の斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態の電線仮置具3を腕金92に取付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態の電線仮置具1を腕金92に取付けた状態を示す斜視図である。図2は、図1の電線仮置具1の電線仮置部36まで電線91を移動させた状態を示す斜視図である。図3は、図1の電線仮置具1の電線カバー11が閉まった状態を示す斜視図である。図4(a)は、図1の電線仮置具1の正面図である。図4(b)は、図3の電線仮置具1の正面図である。
【0016】
本発明の第1実施形態の電線仮置具1は、電線91を載置させ周囲を囲う開閉式の電線カバー11と、腕金92に着脱可能な取付金具12とを備え、例えば、腕金92に設置された碍子93の取替作業時に碍子93から取外された電線91を仮置するために腕金92に一時的に取付けて使用される。
【0017】
電線カバー11は、横長平板状の固定カバー21と、2枚の横長平板材を回動自在に互いの長辺部で連結した開閉カバー22と、固定カバー21及び開閉カバー22を固定する基台23とを備え、固定カバー21と開閉カバー22とで電線91を囲う。電線カバー11は、固定カバー21と開閉カバー22とが向かい合うように基台23に固定されており、基台23の下面が取付金具12の上面に接合されている。なお第1から第3実施形態において、固定カバーと開閉カバーとが互いに向き合う方向を内側とする。
【0018】
また電線カバー11では、上部における固定カバー21と開閉カバー22との離隔が電線91の経路となり、開閉カバー22が回動することで該経路が開閉する。
【0019】
固定カバー21は、短手方向が鉛直になるように基台23の上部に固定されている。固定カバー21の内側の面には、電線カバー11が閉まる際に、後述する開閉カバー22の上板33を受けるストッパー31が突出した形で設けられている。また固定カバー21は、公知の絶縁シートや絶縁管と同様、電線91の電圧に耐え得る絶縁体で形成されている。
【0020】
なお固定カバー21及び後述する開閉カバー22は、平板材ではなく、周囲(端部)に芯材(図示省略)を配置し、芯材に絶縁シート(図示省略)を張設して構成されていてもよい。これは、他の実施形態についても同様である。
【0021】
ストッパー31は、長手方向に亘って設けられており、正面視において上側が傾斜した直角三角形に形成されている。ただしストッパー31の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、開閉カバー22の上板33の形状や接触するときの角度等に合わせて適宜最適な形状にすればよい。またストッパー31は、電線カバー11の開閉の度に開閉カバー22の上板33に接触するので、耐久性やクッション性に優れた材質で形成されていることが好ましい。
【0022】
開閉カバー22は、基台23に固定されている下板32と、下板32に回動自在に連結されている上板33と、下板32と上板33とを連結しているヒンジ34と、ヒンジ34に取付けられている、ねじりコイルばね(図示省略)とを備える。また開閉カバー22は、固定カバー21と同様、絶縁体で形成されている。
【0023】
下板32は、平板材であり、固定カバー21と互いの長手方向が平行になるように基台23に固定されている。また下板32は、上板33と固定カバー21との間に電線91が通過可能な離隔を確保すべく、外側に傾いて固定されている。なお下板32は、上板33と固定カバー21との離隔を確保することが可能であれば傾いている必要はなく、例えば、基台23に垂直に固定されていてもよい。
【0024】
上板33は、平板材であり、ヒンジ34を介して下端部が下板32の上端部に回動自在に連結されている。上板33は、外側へ回動する際には、下端部が下板32の上端部に当接し固定カバー21と向かい合う面同士が平行になるまで回動する。上板33は、内側へ回動する際には、上端部が固定カバー21のストッパー31に当接するまで回動する。
【0025】
なお本実施形態の電線カバー11において、上板33が外側へ回動し切った状態が開いた状態であり、上板33が内側へ回動し切った状態が閉まった状態である。
【0026】
上板33の内側の面の中央部には、電線91を載置させる電線仮置部36が長手方向に亘って設けられている。電線仮置部36には、電線91を上から載置可能に、正面視において下半分の半円形の溝が形成されている。電線仮置部36の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、電線91を載置可能であり、上板33が内側に回動して電線カバー11が閉まったときに電線91が落下しない形状であればよい。
【0027】
ヒンジ34は、公知のヒンジを用いることができる。またヒンジ34には、上板33を外側へ回動させる、ねじりコイルばね(図示省略)が取付けられている。ねじりコイルばねの弾性力は、電線91が電線仮置部36に載置されていないときに上板33が下板32の上端部に当接するまで外側に回動するように、かつ電線91が電線仮置部36に載置されたときに電線91(及びストレーリングトング95)の重量により上板33がストッパー31に当接するまで内側に回動するように決められている。
【0028】
なお電線カバー11の大きさの一例を挙げると、長さ(固定カバー21、開閉カバー22の長手方向)が約50cm、高さが約20cmである。ただし、これに限定されるものではない。例えば、固定カバー21において、ストッパー31よりも上の部分が形成されていなくてもよい。
【0029】
取付金具12は、略コ字状の金具本体51とボルト様の固定具52とを備え、金具本体51を腕金92に掛止させ、固定具52を用いて腕金92に固定される。取付金具12は、腕金92に固定されたときに電線カバー11の長手方向が腕金92と直交する(電線91と平行になる)向きで基台23に接合されている。なお電線カバー11と取付金具12との互いの水平角度を調節可能に、図示しない回転自在なジョイント等を介して基台23と取付金具12とが連結されていてもよい。
【0030】
金具本体51は、腕金92に掛止可能に上側の開口端部から直角に形成された掛止片61と、固定具52を取付可能に下面中央部に形成されたボルト孔62とを備える。
【0031】
固定具52は、外周面にネジ山が設けられたボルト様の部材であり、先端に腕金92に密接する円板様の固定部63を備え、基端に絶縁操作棒(図示省略)に着脱容易な連結部64を備える。連結部64は、絶縁操作棒の先端を挿入し長軸周りに回転させて着脱可能な公知のいわゆるツイストロック機構である。
【0032】
次に本実施形態の電線仮置具1の使用方法について、碍子93の取替作業を例として説明する。絶縁操作棒(図示省略)の先端を電線仮置具1の取付金具12の連結部64に連結させ、電線仮置具1を持ち上げて、取替を行う碍子93に隣接するように取付金具12の金具本体51を腕金92に掛止させる。この状態で絶縁操作棒を操作し取付金具12の固定具63を回転させて電線仮置具1を腕金92に固定する(図1参照)。
【0033】
碍子93に固定されている電線91を、碍子93を挟んで2箇所、間接活線工具であるストレーリングトング95を用いて把持し、間接活線工具である絶縁ヤットコ(図示省略)等を用いて電線91を碍子93に固定しているバインド線94を外す。この作業は、従来の碍子取替作業の場合と同様である。
【0034】
ストレーリングトング95を操作し電線91を電線仮置具1の電線仮置部36に載置する(図2参照)。このとき電線仮置具1は、ねじりコイルばねの作用により開閉カバー22の上板33が外側へ回動し電線カバー11が開いた状態なので、そのまま電線91を載置させることができる。
【0035】
電線91を電線仮置部36に載置すると、電線91(及びストレーリングトング95)の重量により開閉カバー22の上板33がねじりコイルばねの弾性力に打ち勝ち固定カバー21のストッパー31に当接するまで内側へ回動し、電線カバー11が閉まる(図3参照)。
【0036】
碍子93を取替えた後は、ストレーリングトング95を操作し電線91を電線仮置部36から持ち上げると、ねじりコイルばねの弾性力により開閉カバー22の上板33が外側へ回動し、電線カバー11が開いた状態となる。そのままストレーリングトング95を操作し電線91を取替えた碍子(図示省略)まで移動させ、バインド線94を巻き付けて電線91を碍子に固定する。
【0037】
以上のように、本実施形態の電線仮置具1を用いると、電線91及び腕金92への絶縁防具の取付が不要であることに加え、電線91を移動させる操作だけで電線91を絶縁体の電線カバー11内に仮置することができるので、安全性を確保しつつ容易に作業を行うことができる。また電線91にストレーリングトング95を取付けたままの状態で碍子93の取替作業を行うことができるので、取替後の碍子に電線91を近接させる作業が容易となる。なお本実施形態の電線仮置具1は、碍子93の取替作業に限らず、電線91を仮置する他の用途に幅広く用いることができる。
【0038】
図5(a)は、本発明の第2実施形態の電線仮置具2の斜視図である。図5(b)は、図5(a)の電線仮置具2の電線カバー71が閉まった状態を示す斜視図である。図1から図4に示す第1実施形態の電線仮置具1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態の電線仮置具2は、第1実施形態の電線仮置具1と基本的構成は同じであるが、ねじりコイルばねに代えて、重量体75が開閉カバー72に取付けられている。またヒンジ34に代えて、パイプ77とシャフト78とを備える。
【0039】
本実施形態の電線仮置具2の開閉カバー72は、上板33の下端面に平板材である重量体取付板76が取付けられており、重量体取付板76の下端部の内側に半円柱体の重量体75が取付けられている。
【0040】
重量体取付板76は、上板33と同じ長さ、厚みで形成されている。また重量体取付板76の高さは、開閉カバー72が開いた状態で下端の高さが固定カバー21及び下板73の下端の高さと同じになるように決められている。重量体75は、重量体取付板76に長手方向に亘って取付けられている。なお重量体75及び重量体取付板76の形状は、特定の形状に限定されるものではない。
【0041】
重量体75及び重量体取付板76は、電線仮置部36に電線91が載置されていないときには、重量体取付板76が下板73の上端部74に当接するまで上板33が外側に回動し、電線仮置部36に電線91が載置されると、電線91(及びストレーリングトング95)の重量により上板33が重量体75の作用する力に打ち勝ち固定カバー21のストッパー31に当接するまで内側に回動するように、重量、形状、取付位置が決められる。
【0042】
開閉カバー72の下板73は、上端部74の形状が第1実施形態の電線仮置具1の下板32と異なっている。下板73の上端部74は、上板33が外側に回動し重量体取付板76が上端部74に当接したときに、上板33と固定カバー21との向かい合う面同士が平行になるように形状が決められている。
【0043】
また上板33の下端部の内側中央部、及び下板73の上端部の内側両端部には、それぞれ円筒体のパイプ77が互いに長手方向に連通するように取付けられており、円柱体のシャフト78がパイプ77に挿通して取付けられている。これにより上板33が下板73に回動自在に連結されている。
【0044】
本実施形態の電線仮置具2では、電線仮置部36に電線91が載置されていないときには、重量体75(及び重量体取付板76)の重量により開閉カバー72の上板33が外側へ回動し電線カバー71が開いた状態となる。なお重量体75と、第1実施形態の電線仮置具1のねじりコイルばねとを併用することも可能である。また本実施形態の電線仮置具2では、ヒンジ34に代えて、パイプ77とシャフト78とを用いたが、第1実施形態の電線仮置具1と同様にヒンジ34を用いてもよい。
【0045】
図6は、本発明の第3実施形態の電線仮置具3を腕金92に取付けた状態を示す斜視図である。図1から図4に示す第1実施形態の電線仮置具1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。第3実施形態の電線仮置具3は、第1実施形態の電線仮置具1と基本的構成は同じであるが、電線カバー81の固定カバー82の形状と開閉カバー83の構成が異なる。
【0046】
固定カバー82は、底板84を有し、底板84の両端と中央とに垂直に平板を立設させた形の転倒E字状の絶縁体構造物であり、底板84において電線カバー81の外側に位置する外側電線落下防止部85と、中央に立設しストッパー31を備える電線カバー部86と、底板84において電線カバー81の内側に位置する内側電線落下防止部87とを備える。
【0047】
外側電線落下防止部85は、電線91を碍子93から電線カバー部86まで移動させるときに電線91が落下した場合に、落下した電線91を受けることで電線91が腕金92に接触することを防止する。
【0048】
また外側電線落下防止部85の端部には、外側電線落下防止部85からの電線91の滑落を防止すべく、鉛直上向きに滑落防止板88が形成されている。
【0049】
電線カバー部86は、第1実施形態の電線仮置具1の固定カバー21と同一の形状であり、内側電線落下防止部87、開閉カバー83とともに電線仮置部36に載置された電線91の周囲を囲う。
【0050】
内側電線落下防止部87は、電線91を電線カバー部86から電線仮置部36まで移動させるときに電線91が落下した場合に、落下した電線91を受けることで電線91が腕金92に接触することを防止する。
【0051】
内側電線落下防止部87の端部には、開閉カバー83を連結させる連結板89が鉛直上向きに形成されている。
【0052】
開閉カバー83は、第1実施形態の電線仮置具1の開閉カバー22の上板33のみからなる。開閉カバー83は、ヒンジ34を介して固定カバー82の連結板89の上端部に回動自在に連結されている。開閉カバー83の開閉動作については、第1実施形態の電線仮置具1の開閉カバー22の上板33と同じであるため説明を省略する。
【0053】
本実施形態の電線仮置具3を用いると、電線91の移動中に万が一、電線91が落下した場合でも、電線91と腕金92との接触を防止することができる。
【0054】
以上、第1から第3実施形態の電線仮置具1、2、3を用いて、本発明の電線仮置具を説明したが、本発明の電線仮置具は、上記実施形態に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲で変形することができる。例えば、固定カバーも開閉カバーと同様に回動するように構成し、固定カバーと開閉カバーとで電線カバーの開閉を行うようにしてもよい。このとき電線仮置部が固定カバーに設けられていてもよい。
【0055】
ねじりコイルばねに代えて、電動モーター(図示省略)を設け、開閉カバーの開閉を電動モーターで行うとともに、電線仮置部に電線が載置されたことを検出するセンサー(図示省略)等を設け、センサーが電線を検知したときに開閉カバーが自動で閉まるようにしてもよい。
【0056】
開閉カバーは、回動して開閉するものに限定されるものではなく、例えば、直動して開閉するように構成してもよい。
【0057】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3 電線仮置具
11、71、81 電線カバー
22、72、83 開閉カバー
36 電線仮置部
75 重量体
91 電線
92 腕金
【要約】
【課題】安全性を確保しつつ電線の仮置を容易に行うことができる電線仮置具を提供する。
【解決手段】腕金92に取付けられ、電線91の仮置に使用される電線仮置具1であって、電線91の周囲を囲う開閉式の電線カバー11を備え、電線カバー11は、電線カバー11の内側に配置され電線91を載置する電線仮置部36と、電線カバー11の外側から電線仮置部36への電線91の経路を開閉する開閉カバー22とを備え、開閉カバー22は、電線仮置部36に電線91が載置されると閉まり、電線仮置部36から電線91が取り除かれると開くように構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6