(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5903152
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】高圧引下線用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/14 20060101AFI20160331BHJP
H01R 31/02 20060101ALI20160331BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20160331BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
H01R11/14
H01R31/02 A
H02G1/02
H02G7/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-239192(P2014-239192)
(22)【出願日】2014年11月26日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏典
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−198900(JP,A)
【文献】
特開2011−165562(JP,A)
【文献】
特許第5461661(JP,B1)
【文献】
特開平9−65530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/14
H01R 31/02
H02G 1/02
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引下線を高圧線に接続する一対の高圧線接続部を備え、一方の高圧線接続部は、他方の高圧線接続部と共に前記高圧線を保持するための本体部と、前記本体部の下側に設けられた板状体であり作業用の把持部とを備える高圧引下線用コネクタにおいて、
前記本体部の一方の側面から他方の側面に向けて空けられていると共に前記引下線が抜き差し可能な径をした貫通孔と、
前記本体部から前記把持部の下端まで所定幅で切り取られて形成されていると共に前記貫通孔の少なくとも下側が切り取られて形成された開口と、
前記開口を上下方向に移動可能な可動部と、
前記引下線の先端に設けられ、前記貫通孔に差し込まれる棒状体の接続具と、
を備え、
前記可動部は、前記貫通孔に前記接続具が差し込まれた後で前記開口を上方向に移動されると、前記接続具のロックをするロック手段を備え、前記開口を下方向に移動されると、前記ロック手段によるロックを解除する、
ことを特徴とする高圧引下線用コネクタ。
【請求項2】
前記接続具は、端部の周囲に切り欠きが設けられ、
前記ロック手段は、前記貫通孔に前記接続具が差し込まれた後で前記可動部が前記開口を上方向に移動されると、前記接続具の切り欠きの部分と嵌合して前記接続具のロックを行い、
前記可動部は、前記開口を下方向に移動されると、前記ロック手段による前記切り欠きとの嵌合を外してロックを解除する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高圧引下線用コネクタ。
【請求項3】
前記接続具は、
前記引下線の導体を差し込むために、一方の側面に空けられた取付け孔と、
前記取付け孔に差し込まれた前記引下線の導体が抜けないように固定する固定具と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧引下線用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電柱間に架設されている高圧線に対して引下線を接続するための高圧引下線用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
引下線は、電柱間に架設されている高圧線から例えば電柱に設置されている変圧器までを接続する電線である。高圧線に引下線を接続するために、高圧引下線用コネクタが使用される(例えば、特許文献1参照。)。この高圧引下線用コネクタを
図11と
図12とに示す。
図11は高圧引下線用コネクタの正面図であり、
図12は高圧引下線用コネクタの側面図である。この高圧引下線用コネクタは、第1の高圧線接続部100と第2の高圧線接続部200と弾性部材300A、300Bとボルト400とを備えている。
【0003】
第1の高圧線接続部100は本体部110と把持部120とで構成されている。本体部110は、縦の長さがL11であり横の長さがL12である板状の導体で作られている。本体部110の上部の内側には、円弧状の第1の溝111が横方向に沿って設けられている。第1の溝111は高圧線の導体部分に接触する部分である。本体部110の下部の内側には、第1の突起112と第2の突起113とが横方向に沿って離れて設けられている。さらに、第1の突起112と第2の突起113との間に、円弧状の第2の溝114が設けられている。第2の溝114は引下線の導体部分に接触する部分である。
【0004】
こうした本体部110に対して、縦の長さがL13であり横の長さがL12である把持部120が形成されている。把持部120は、本体部110と同様の導体で作られていて、本体部110の下端から突出するように、かつ、本体部110に対して一体的に形成されている。把持部120は引下線取付けの作業の際に作業者に把持される部分である。また、把持部120には、一対の貫通孔121、122が空けられている。
【0005】
一方、第2の高圧線接続部200は、縦の長さがL11より短く、横の長さがL12である板状の導体で作られている。第2の高圧線接続部200の上部の内側には、円弧状の第1の溝211が横方向に沿って設けられている。第1の溝211は、高圧線の導体部分に接触する部分であり、第1の高圧線接続部100の第1の溝111と共に高圧線の導体部分を把持する。つまり、第1の溝211は第1の高圧線接続部100の第1の溝111と共に高圧線保持部M1を形成する。
【0006】
第2の高圧線接続部200の下部の内側には、凹部212が横方向に沿って形成されている。凹部212は、第1の高圧線接続部100の第1の突起112と嵌合する部分である。凹部212を設けることで第2の高圧線接続部200の下部には、凸部213が横方向に形成される。凸部213には、円弧状の第2の溝214が横方向に沿って形成されている。第2の溝214は、第1の高圧線接続部100の第2の溝114と共に引下線の導体部分を把持する。つまり、第2の溝214は第1の高圧線接続部100の第2の溝114と共に引下線保持部M2を形成する。
【0007】
以上の第1の高圧線接続部100と第2の高圧線接続部200とは、第1の高圧線接続部100の内側と第2の高圧線接続部200の内側とが向かい合うように組み合わされて、一対で用いられる。
【0008】
弾性部材300A、300Bは、針金状のバネであり、把持部120の貫通孔121、122を貫通すると共に端部が一対の高圧線接続部100、200にそれぞれ固定されている。弾性部材300A、300Bは一対の高圧線接続部100、200を弾性力で締め付けるためのものである。ボルト400は、締結具であり、高圧線保持部M1に高圧線を挟持し、かつ、引下線保持部M2に引下線を挟持した状態で、高圧引下線用コネクタを高圧線に固定する際に使用される。
【0009】
こうした高圧引下線用コネクタは、高圧線の絶縁用の被覆が取り除かれた部分に固定されると共に、同じく引下線の絶縁用の被覆が取り除かれた部分に固定される。これにより、引下線が高圧線に電気的に接続される。この後、高圧引下線用コネクタには、絶縁用のカバーなどが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−100614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先に述べた高圧引下線用コネクタによる引下線の接続には、次のような課題がある。高圧線に対する作業、例えば変圧器の交換の作業により、高圧線に接続されている引下線を取り外す場合がある。このような場合、作業者は、棒状のホットスティックを使用し、間接用ラチェットで架線から高圧引下線用コネクタを取外している。しかし、高圧引下線用コネクタを用いて高圧線に引下線を長期間接続していると、ボルトが回りにくくなり、高圧引下線用コネクタの取り外しが困難な場合が多い。
【0012】
こうした場合には、作業者は引下線を切断して作業を行うことになる。この後、再び引下線を接続するためには、スリーブを用いて切断した箇所を接続する。しかし、この場合には引下線に接続痕が残ってしまうという課題がある。
【0013】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、引下線の取り外しを容易に行うことを可能にする高圧引下線用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、引下線を高圧線に接続する一対の高圧線接続部を備え、一方の高圧線接続部は、他方の高圧線接続部と共に前記高圧線を保持するための本体部と、前記本体部の下側に設けられた板状体であり作業用の把持部とを備える高圧引下線用コネクタにおいて、前記本体部の一方の側面から他方の側面に向けて空けられていると共に前記引下線が抜き差し可能な径をした貫通孔と、前記本体部から前記把持部の下端まで所定幅で切り取られて形成されていると共に前記貫通孔の少なくとも下側が切り取られて形成された開口と、前記開口を上下方向に移動可能な可動部と、前記引下線の先端に設けられ、前記貫通孔に差し込まれる棒状体の接続具と、を備え、前記可動部は、前記貫通孔に前記接続具が差し込まれた後で前記開口を上方向に移動されると、前記接続具のロックをするロック手段を備え、前記開口を下方向に移動されると、前記ロック手段によるロックを解除する、ことを特徴とする高圧引下線用コネクタである。
【0015】
請求項1の発明では、貫通孔に接続具が差し込まれた後で、可動部が開口を上方向に移動されると、貫通孔に差し込まれた接続具のロックをロック手段が行う。また、可動部は、開口を下方向に移動されると、ロック手段によるロックを解除する。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の高圧引下線用コネクタにおいて、前記接続具は、端部の周囲に切り欠きが設けられ、前記ロック手段は、前記貫通孔に前記接続具が差し込まれた後で前記可動部が前記開口を上方向に移動されると、前記接続具の切り欠きの部分と嵌合して前記接続具のロックを行い、前記可動部は、前記開口を下方向に移動されると、前記ロック手段による前記切り欠きとの嵌合を外してロックを解除する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の高圧引下線用コネクタにおいて、前記接続具は、前記引下線の導体を差し込むために、一方の側面に空けられた取付け孔と、前記取付け孔に差し込まれた前記引下線の導体が抜けないように固定する固定具と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、可動部が開口を下方向に移動させると、貫通孔に差し込まれた接続具のロックが解除されるので、引下線の取り外しを容易に行うことを可能にする。この結果、引下線の取り外し作業に際して、作業性の向上と、作業時間の短縮化と、作業の安全性の向上とを図ることが出来る。
【0019】
請求項2の発明によれば、可動部が上方向に移動されたときに、接続具に設けられた切り欠きとの嵌合を利用して接続具をロックし、可動部を下方向に移動させるとことで切り欠きとの嵌合が外れるので、接続具のロックとロック解除とを簡単化することが出来る。
【0020】
請求項3の発明によれば、接続具の取付け孔に差し込まれた引下線の導体を固定具で固定するので、引下線の導体に対して接続具を着脱自在にすることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態1による高圧引下線用コネクタを示す構成図である。
【
図8】本体部に対する可動部の取り付けの様子を示す斜視図である。
【
図10】この発明の実施の形態2で用いられる本体部を示す斜視図である。
【
図11】従来の高圧引下線用コネクタを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、この発明の各実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0023】
(実施の形態1)
この実施の形態による高圧引下線用コネクタを
図1、
図2および
図3に示す。この高圧引下線用コネクタは、高圧線W1に引下線W2を接続するために用いられる。高圧引下線用コネクタは、第1の高圧線接続部10と第2の高圧線接続部20と弾性部材30A、30Bとボルト40と接続具50とを備えている。この高圧引下線用コネクタは、
図11と
図12とに示した高圧引下線用コネクタと同様に、第1の高圧線接続部10と第2の高圧線接続部20とが一対で用いられる。
【0024】
接続具50は、
図4に示すように、引下線W2の導体W2
1の先端に接続される。接続具50は導体で作られた棒状体51を備え、棒状体51の径は引下線W2と同じである。棒状体51の先端から所定長N1だけ離れた部分の周囲が直角の三角形状に切り欠かれ、長さがN1の先端部分51Aと段差部分51Bが形成されている。また、棒状体51の後端には、引下線W2より大きな径のストッパー52が一体的に取り付けられている。ストッパー52は、接続具50が第1の高圧線接続部10に差し込まれたときの位置決めをするためのものである。つまり、接続具50は所定の長さだけ第1の高圧線接続部10に差し込まれる。
【0025】
また、棒状体51には、ストッパー52を貫通して取付け孔53が空けられている。取付け孔53の径は引下線W2の導体W2
1を通す位の大きさである。さらに、ストッパー52と段差部分51Bとの間には、2つのネジ54が取り付けられている。2つのネジ54は、取付け孔53に差し込まれた引下線W2の導体W2
1を抜けないように固定するための固定具である。
【0026】
以上が接続具50の構成である。次に第1の高圧線接続部10について述べる。
【0027】
第1の高圧線接続部10は本体部11と把持部12とで構成されている。本体部11は、縦の長さがL1(=L11)であり横の長さがL2(=L12)である略直方体の形状をした導体で作られている。本体部11の上部には、円弧状の第1の溝11Aが横方向に設けられている。第1の溝11Aは高圧線の導体部分に接触する部分である。本体部11の下部には、第1の突起11Bと第2の突起11Cとが横方向に沿って離れて設けられている。
【0028】
こうした本体部11に対して、縦の長さがL3(=Ll3)であり横の長さがL1である板状の把持部12が形成されている。把持部12は、本体部11と同様の導体で作られていて、本体部11の下端から突出するように、かつ、本体部11に対して一体的に形成されている。把持部12は作業の際に作業者に使用される部分である。把持部12には、
図11と同様にして、一対の貫通孔12A、12Bが空けられている。
【0029】
また、本体部11に対して貫通孔13が設けられている。貫通孔13は、
図5に示すように、本体部11の下端部の把持部12付近に形成されている。さらに、貫通孔13は、本体部11の一方の側面11Dから他方の側面11Eまで貫通する長さL2の通し孔である。貫通孔13の径は引下線W2の出し入れが可能な大きさである。これにより、貫通孔13の内壁面13Aに沿って、引下線W2の接続具50が貫通孔13の内部を移動可能になる。
【0030】
本体部11の下端部から把持部12の下端に至る部分に、
図6に示すように、幅がL4(L4<L2)である凹形状の開口14が空けられている。開口14は、側面14A
1、14B
1と上面14C
1とで形成されている。なお、
図6の貫通孔11Fはボルト40をはめ込むためのものであり、貫通孔11Fの内壁面にはネジの溝が設けられている。開口14は、
図7に示すように、本体部11の内部に設けられている貫通孔13の下部にまで達している。開口14(
図6)を形成する側面14A
1、14B
1の下部には、突起14A
2、14B
2が互いに向かい合うように設けられている。
【0031】
第1の高圧線接続部10の開口14には、
図8に示すように、可動部15が取り付けられている。可動部15は、開口14を塞ぐために略L字形状に形成されている。可動部15は導体または絶縁材で作られている。可動部15は、第1板状部分15
1と第2板状部分15
2とで形成され、第2板状部分15
2は第1板状部分15
1に一体的に設けられている。第1板状部分15
1は本体部11に空けられている開口14の部分を塞ぐ。このために、第1板状部分15
1は、本体部11の貫通孔13と合うように湾曲した形状をしている。また、第2板状部分15
2は、把持部12に空けられている開口14の部分を塞ぐ。
【0032】
可動部15は、開口14を形成する側面14A
1、14B
1を動くように取り付けられている。このために、可動部15の一方の側面15Aには、断面形状が凹形状の溝15A
1が設けられ、可動部15の他方の側面15Bには、
図9に示すように断面形状が凹形状の溝15B
1が設けられている。そして、可動部15の溝15A
1には、開口14を形成する側面14A
1から突き出されて設けられている突起14A
2(
図6)が差し込まれ、可動部15の溝15B
1には、同じように側面14B
1に設けられている突起14B
2(
図6)が嵌合される。これにより、可動部15は、把持部12の幅方向つまり把持部12に対して上下方向D(
図8)に動くようになる。しかも、可動部15の溝15A
1、15B
1と開口14の突起14A
2、14B
2とが噛み合うことにより、可動部15が下方向に動かされても、開口14から可動部15が脱落することが無い。
【0033】
先に述べたように、可動部15の第1板状部分15
1は、本体部11の貫通孔13と合うように湾曲した形状をしている。つまり、可動部15が把持部12に対して上方向に動かされたときに、第1板状部分15
1の内壁面15C(
図9)は、貫通孔13を形成する内壁面13A(
図8)の一部となる。また、第1板状部分15
1の湾曲した内壁面15C(
図9)には、断面が三角形状をした突起15D、15Eが設けられている。突起15D、15Eは、先に述べた接続具50の棒状体51に形成されている、三角形状に切り欠かれた段差部分51Bと同じ形状であり、この段差部分51Bと噛み合うように嵌合する。また、突起15Dと突起15Eとは距離N1(
図4)より多少長めに離れて設けられている。さらに、本体部11の一方の側面11Dから引下線W2の接続具50が差し込まれた場合に、突起15Dは、接続具50の段差部分51Bと噛み合う位置に、かつ、接続具50の先端部分51Aが突起15Dと突起15Eとの間に納まる位置に設けられている。同様にして、本体部11の他方の側面11Eから接続具50が差し込まれた場合に、突起15Eは、接続具50の段差部分51Bと噛み合う位置に、かつ、接続具50の先端部分51Aが突起15Dと突起15Eとの間に納まる位置に設けられている。
【0034】
つまり、第1の高圧線接続部10の貫通孔13に引下線W2の接続具50が差し込まれた場合に、接続具50の可動部15が把持部12に対して上方向に動かされたときに、可動部15の突起15D、15Eのどちらか一方が接続具50の段差部分51Bに噛み合うように嵌合し、接続具50つまり引下線W2をロックする。なお、可動部15の突起15D、15Eのどちらが接続具50の段差部分51Bに嵌合するかは、第1の高圧線接続部10に対して接続具50がどちらから差し込まれたかによる。
【0035】
また、可動部15の第1板状部分15
1の先端にはマグネット15Fが取り付けられている。マグネット15Fは、ネオジウム等の強力なものであり、可動部15が開口14に対して上方向に動かされた場合に、開口14を形成する上面14C
1に接触する。この結果、マグネット15Fが磁力により上面14C
1に引き付けられて、可動部15が開口14に固定される。
【0036】
さらに、可動部15の第2板状部分15
2には、ホットスティックなどの工具を引っ掛けるための作業孔15Gが空けられている。
【0037】
以上が第1の高圧線接続部10の構成である。次に第2の高圧線接続部20について述べる。
【0038】
第2の高圧線接続部20(
図1)は、縦の長さが第1の高圧線接続部10より短く、横の長さが第1の高圧線接続部10と同じ長さL2である板状の導体で作られている。第2の高圧線接続部20の上部の内側には、円弧状の第1の溝21A(
図3)が横方向に沿って設けられている。第1の溝21Aは、高圧線W1の導体に接触する部分であり、第1の高圧線接続部10の第1の溝11Aと共に高圧線W1の導体を把持する。つまり、第1の溝21Aは第1の高圧線接続部10の第1の溝11Aと共に高圧線保持部M1を形成する。
【0039】
第2の高圧線接続部20の下部の内側には、第2の溝21Bが横方向に沿って形成されている。また、第2の溝21Bが形成されることにより、第2の高圧線接続部20の下部の内側には凸部21Cが直線状に形成されている。第2の溝21Bには、第1の高圧線接続部10の本体部11に形成されている第1の突起11Bが入り込み、凸部21Cは第1の高圧線接続部10の第1の突起11Bと第2の突起11Cとの間に入り込む構造である。これにより、第2の高圧線接続部20が第1の高圧線接続部10に取り付けられる際に、第1の高圧線接続部10に対する第2の高圧線接続部20の位置決め等が行われる。
【0040】
弾性部材30A、30Bとボルト40は、
図11の弾性部材300A、300Bとボルト400と同じであるので、これらの説明を省略する。
【0041】
以上が高圧引下線用コネクタの構成である。次に、この高圧引下線用コネクタの使用方法について説明する。作業者が高圧引下線用コネクタを利用して、高圧線W1に引下線W2を接続する場合、ボルト40を緩めて、第1の高圧線接続部10に対して第2の高圧線接続部20が開き易くする。この場合、第1の高圧線接続部10と第2の高圧線接続部20との、ボルト40による締め付けを解除しても、弾性部材30A、30Bが第1の高圧線接続部10と第2の高圧線接続部20とを弾性力によって締め付けているので、第1の高圧線接続部10から第2の高圧線接続部20が脱落することはない。
【0042】
次に、作業者は、第1の高圧線接続部10と第2の高圧線接続部20とで形成されている高圧線保持部M1に高圧線W1を差し込む。この後、作業者は、ボルト40を締めて、第1の高圧線接続部10に対して第2の高圧線接続部20を固定する。これにより、高圧引下線用コネクタに高圧線W1が接続される。
【0043】
次に、作業者は、引下線W2の導体に接続具50を差し込んで、接続具50のネジ54により固定する。この後、作業者は、第1の高圧線接続部10の貫通孔13に、側面11Dから接続具50を差し込む。接続具50には引下線W2より大きな径のストッパー52が設けられているので、第1の高圧線接続部10の貫通孔13に作業者が接続具50を差し込むと、ストッパー52が第1の高圧線接続部10の側面11Dに当たる。この結果、接続具50は所定の長さだけ貫通孔13に差し込まれたことになる。
【0044】
この状態で、作業者は可動部15を上方向に動かす。これにより、引下線W2の接続具50の先端部分51Aが突起15Dと突起15Eとの間に入り込み、かつ、可動部15の突起15Dが接続具50の段差部分51Bと噛み合うように嵌合する。これにより、引下線W2が第1の高圧線接続部10に固定される。同時に、可動部15のマグネット15Fが第1の高圧線接続部10の上面14C
1に磁力で吸着し、可動部15が第1の高圧線接続部10に固定される。
【0045】
高圧引下線用コネクタを利用して高圧線W1に引下線W2を接続した後、作業者は、絶縁用のコネクタカバーを高圧引下線用コネクタに被せる。
【0046】
このようにして、高圧引下線用コネクタによって、高圧線W1に引下線W2が接続される。この後、必要に応じて引下線W2を高圧線W1から外す場合には、作業者が可動部15の作業孔15Gにホットスティックのような道具を引っ掛けて引き下げると、可動部15が下方向に動くと同時に、可動部15の突起15Dと接続具50の段差部分51Bとの嵌合が解除される。これにより、作業者は高圧引下線用コネクタの第1の高圧線接続部10から引下線W2を引き抜くことが出来る。
【0047】
こうして、この実施の形態によれば、高圧引下線用コネクタの高圧線保持部M1に高圧線W1を接続した状態で、高圧引下線用コネクタに引下線W2を接続することができる。これにより、高圧線W1と引下線W2とを同時に接続する必要がある従来の高圧引下線用コネクタに比べて、短時間で容易に作業を行うことを可能にする。また、この実施の形態によれば、可動部15を引き下げるだけで、高圧引下線用コネクタから引下線を容易に取り外すことを可能にする。この結果、引下線の取り外し作業に際して、作業性の向上と、作業時間の短縮化と、作業の安全性の向上とを図ることが出来る。
【0048】
また、この実施の形態による高圧引下線用コネクタの形や大きさは、
図11と
図12に示した従来の高圧引下線用コネクタと同じにしてあるので、コネクタカバーを高圧引下線用コネクタに被せる際に、既存の引下線用コネクタカバーを採用することができる。
【0049】
(実施の形態2)
この実施の形態では、第1の高圧線接続部10の本体部11を次のようにしている。なお、この実施の形態では、先に説明した実施の形態1と同一もしくは同一と見なされる構成要素には、それと同じ参照符号を付けて、その説明を省略する。この実施の形態では、
図10に示すように、貫通孔13の代わりに差込孔13
1が空けられている。差込孔13
1は、開口14の位置に比べて側面11Eに向かって多少長く、つまり、可動部15が上下方向Dに動くことが出来るように、側面11Dから空けられている。また、この実施の形態では、可動部15(
図9)は、突起15Eを取り除いた構造をしている。
【0050】
こうした実施の形態によれば、2つの突起15D、15Eを作る場合に比べて、突起15Dだけを形成すればよい。この結果、可動部15の構成が簡略化されて、可動部15の製作を簡単にすることが可能になる。
【符号の説明】
【0051】
10 第1の高圧線接続部
11 本体部
12 把持部
13 貫通孔
14 開口
15、15E 可動部
15D 突起(ロック手段)
20 第2の高圧線接続部
30A、30B 弾性部材
40 ボルト
50 接続具
51B 段差部分(ロック手段)
【要約】
【課題】 引下線の取り外しを容易に行うことを可能にする高圧引下線用コネクタを提供する。
【解決手段】 本体部11の一方の側面から他方の側面に向けて空けられていると共に引下線W2が抜き差し可能な径をした貫通孔13と、本体部11から把持部12の下端まで所定幅で切り取られて形成されていると共に貫通孔13の少なくとも下側が切り取られて形成された開口14と、開口14を上下方向に移動可能な可動部15と、引下線W2の先端に設けられ、貫通孔13に差し込まれる棒状体の接続具50とを備え、可動部15は、貫通孔13に接続具50が差し込まれた後で開口14を上方向に移動されると、接続具50のロックをするロック手段を備え、開口14を下方向に移動されると、ロック手段によるロックを解除する。
【選択図】
図1