(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼対象物を投入されかつ耐火レンガ壁(A12)と燃焼対象物の燃焼を補助するための助燃焼用バーナー(A31)とを具備する主燃焼部(A1)と、前記主燃焼部(A1)の上に配置されかつ水冷ジャケット壁(A27)を具備する水冷ジャケット部(A2)とを設けた一次燃焼室(A)と、
前記一次燃焼室(A)の上方に配置されかつ未燃焼ガスを燃焼するための再燃焼用バーナー(B1)を具備する二次燃焼室(B)と、
前記二次燃焼室(B)の側方に一列に順次配置された、セラミックフィルタ(C1)を具備するフィルタ付燃焼室(C)及び集塵サイクロン(D3)を具備する三次燃焼室(D)と、
前記三次燃焼室(D)の上方に配置されかつ未燃焼ガスを燃焼するための別の再燃焼用バーナー(E1)を具備する四次燃焼室(E)と、
前記四次燃焼室(E)の上方に配置されかつ強制排気手段(F2, F5)を具備する排気筒(F)と、を有し、
前記二次燃焼室(B)の再燃焼用バーナー(B1)は、前記フィルタ付燃焼室(C)に対向する側面の隣に位置する側面に取り付けられ、かつ、前記フィルタ付燃焼室(C)に向かう方向に対して鋭角(α)に傾斜して取り付けられていることを特徴とする
無煙焼却炉。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型焼却炉は、一次燃焼室が大型焼却炉に比べて小さいため、一次燃焼室への過剰な有機物の投入により、温度低下や局所的なエア不足が起きやすい。また、炉内にエアが十分にあっても未燃焼ガスとの撹拌不足によりエア不足となる。また、エアの過剰によっても温度低下を生じる。これらの結果、未燃焼ガスを含む黒煙が発生する。黒煙には、ダイオキシン類や一酸化炭素が含まれている。昨今では、小型焼却炉のダイオキシン類対策が進んだことにより、一次燃焼室で完全燃焼しなかった未燃焼ガスを再燃焼するための二次燃焼室を設けることが重視されている。しかしながら、黒煙を完全に排除した無煙の小型焼却炉は、実現されていないのが現状である。
【0006】
また、過剰な有機物の投入に対応するために、一次燃焼室で過剰な燃焼を行うことが原因で二次燃焼室に過剰な圧力が掛かることがある。この結果、一次燃焼室及び二次燃焼室で使用されるバーナーが破損することが頻繁に起きる。
【0007】
また、一次燃焼室の炉材を高温から保護するために水冷ジャケットを設けた場合、一次燃焼室の温度が低下し易くなり、ダイオキシン類を含む黒煙が発生するおそれがある。
【0008】
以上の現状に鑑み、本発明は、一次燃焼室を十分に高温に保持するとともに、未燃焼ガスを完全燃焼させることにより黒煙の発生を抑止するとともに、十分な燃焼を行っても燃焼室のバーナーを破損させるおそれのない無煙焼却炉を提供することを目的とする。さらに、このような無煙焼却炉と、発電機及び/又は熱交換器を組み合わせたシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、以下の構成を提供する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0010】
本発明による第1の態様は、無煙焼却炉において、燃焼対象物を投入されかつ耐火レンガ壁(A12)と燃焼対象物の燃焼を補助するための助燃焼用バーナー(A31)とを具備する主燃焼部(A1)と、前記主燃焼部(A1)の上に配置されかつ水冷ジャケット壁(A27)を具備する水冷ジャケット部(A2)とを設けた一次燃焼室(A)と、
前記一次燃焼室(A)の上方に配置されかつ未燃焼ガスを燃焼するための再燃焼用バーナー(B1)を具備する二次燃焼室(B)と、
前記二次燃焼室(B)の側方に一列に順次配置された、セラミックフィルタ(C1)を具備するフィルタ付燃焼室(C)及び集塵サイクロン(D3)を具備する三次燃焼室(D)と、
前記三次燃焼室(D)の上方に配置されかつ未燃焼ガスを燃焼するための別の再燃焼用バーナー(E1)を具備する四次燃焼室(E)と、
前記四次燃焼室(E)の上方に配置されかつ強制排気手段(F2, F5)を具備する排気筒(F)と、を有
し、前記二次燃焼室(B)の再燃焼用バーナー(B1)は、前記フィルタ付燃焼室(C)に対向する側面の隣に位置する側面に取り付けられ、かつ、前記フィルタ付燃焼室(C)に向かう方向に対して鋭角(α)に傾斜して取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
上記第1の態様において、前記二次燃焼室(B)の再燃焼用バーナー(B1)は、前記フィルタ付燃焼室(C)及び前記三次燃焼室(D)を加熱可能である。
【0015】
上記第1の態様において、前記一次燃焼室(A)の前記主燃焼部(A1)の下方部分にておき燃焼のためのエアを供給するおき燃用エアノズル(A10)を具備する。
【0017】
上記第1の態様において、前記一次燃焼室(A)の前記水冷ジャケット部(A2)にさらに別の再燃焼用バーナー(A33)を具備する。
【0018】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の無煙焼却炉(1)と、
前記一次燃焼室(A)の前記水冷ジャケット部(A2)から送出される蒸気を供給されて発電を行う発電機(G)と、を有することを特徴とする発電システムである。
【0019】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様の無煙焼却炉(1)と、
前記排気筒(F)から送出される排ガスを供給されて熱交換を行う熱交換器(H)と、を有することを特徴とする熱交換システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無煙焼却炉は、一次燃焼室を主燃焼部とその上に配置した冷却ジャケット部から構成することにより、主燃焼部では十分な高温を保持して完全燃焼させるとともに、冷却ジャケット部により過度の加熱を防止し、主燃焼部の温度を安定に保持することができる。これにより無煙化に寄与する。
【0021】
一次燃焼室では、炉内を密閉し、焼却に必要な最小限のエアを供給することにより、焼却時に発生する熱分解ガスとエアを混合させ、炉内上部を未燃焼ガスの滞留と再燃焼のために空間として機能させることで、焼却によるガス化速度を安定させ、バランスよく燃焼を行わせることができる。炉内が安定した際は、エアのみで効率よく完全燃焼させることができる。
【0022】
また、二次燃焼室、フィルタ付燃焼室及び三次燃焼室を水平方向に順次配置し、かつ、二次燃焼室に設けた再燃焼用バーナーによりこれら3室全てを加熱可能としたので、省エネルギーかつ効率的に排ガス中の未燃焼ガスを再燃焼させることができ、無煙化に寄与する。
【0023】
集塵サイクロンを有する三次燃焼室においても、加熱による高温下で集塵を行うので、集塵途中の微粒子も燃焼させられ、集塵灰を低減するとともに無煙化に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、一例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する本発明の無煙焼却炉は、燃焼室が小さいために温度低下や局所的エア不足の影響を受けやすい小型焼却炉において無煙化を実現できる点で、特に小型焼却炉として好適である。一方、大型焼却炉については、燃焼室が大きく未燃焼ガスの滞留時間が長いために十分なエア供給により完全燃焼を比較的容易に行える。本発明は、このような大型焼却炉においても、当然に実施可能である。
【0026】
従って、本発明は、装置の規模、特定の使用目的及び焼却対象物に限定されるものではなく、多様な焼却炉として実施可能である。本発明の適用においては、その特徴的構成を逸脱しない限りにおいて、適用される焼却炉の規模、使用目的及び焼却対象物の必要に応じて、その寸法や材質などを適宜、設計変更してもよい。
【0027】
本発明の無煙焼却炉の焼却対象物は、基本的には有機物である。例えば、家庭や事業所から廃棄される有機物であり、例えば生ゴミ、紙、木や草等の植物、廃ゴムや廃プラスチック等多様である。しかしながら、燃焼処理に支障の無い程度の無機物や金属が混合されていてもよい。
【0028】
以下では、小型焼却炉における本発明の適用例を示すことにより、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態の一例である無煙焼却炉1を概略的に示す正面図であり、
図2は同じく左側面図、
図3は同じく平面図である。
図4は、
図1の無煙焼却炉1の主要部を模式的に示した正面断面図であり、
図5は、無煙焼却炉1の別の主要部を模式的に示した正面断面図である。
図1〜
図5を参照して、無煙焼却炉1の構成を説明する。
【0030】
図1に示すように、無煙焼却炉1は、主要部として、一次燃焼室A、二次燃焼室B、フィルタ付燃焼室C、三次燃焼室D、四次燃焼室E、及び、排気筒Fを備えている。一次燃焼室Aの上方に二次燃焼室Bが配置され、二次燃焼室Bの一方の側面方向にフィルタ付燃焼室C及び三次燃焼室Dが順次配置され、三次燃焼室Dの上方に四次燃焼室Eが配置され、さらに四次燃焼室Eの上面から上方に排気筒Fが配置されている。各室の外側の面は、基本的に鋼板で被覆されている。
【0031】
以下、各室の構成を説明する。
<一次燃焼室A>
一次燃焼室Aは、
図4に示すように、1つの略直方体の内部空間を有する。一次燃焼室Aは、上下方向に配置された2つの部分から構成されている。それらは、下に位置する主燃焼部A1と上に位置する水冷ジャケット部A2である。主燃焼部A1と水冷ジャケット部A2は、それらの壁構造の相違により区別されている。
【0032】
主燃焼部A1は、焼却対象物を最初に焼却する空間である。主燃焼部A1の正面には、焼却対象物を投入するための投入口A7が設けられている。投入口A7は、逐次投入を可能とする構成であり、例えば、二式投入型の回転ダンパーである。このような回転ダンパーは、焼却対象物の投入の際に一次燃焼室A内の温度を低下させないように、二重構造となっており、主燃焼部A1への入口にセラミック断熱材(図示せず)を配置している。このような投入口は周知のものである。また、主燃焼部A1の背面側には、灰出口A8が設けられている。
【0033】
主燃焼部A1は、
図4に示すように、表面の鋼板の内側に所定の厚さの耐火レンガ壁A12を設けている。耐火レンガ壁A12は、各側壁と底壁に配置されている。主燃焼部A1の内部空間は、焼却時には、ダイオキシン類の発生を防止するために800℃以上、好適には850℃〜900℃の温度に維持されることが好ましい。耐火レンガ壁A12は、焼却時の内部空間の温度低下を防ぐことができ、それにより、ダイオキシン類を発生しない焼却を行わせるとともに、焼却によるガス化により発生した排ガス中の未燃焼ガスの再燃焼を促進することができる。
図4中の黒矢印は、排ガスの流れの方向を示している。
【0034】
耐火レンガ壁A12は、内部空間の温度に耐えうる材質と厚さを備えている。例えば、耐火レンガ壁A12として、シャモットレンガ、高アルミナレンガ等を用いることができる。シャモットレンガは低コストであるので、小型焼却炉に好適である(例えば、加賀耐火レンガ株式会社製の型番「SK34」、最高使用温度1380℃)。また、耐火レンガ壁A12により、外部との断熱が確保され、表面の鋼板の変形や劣化も抑止できる。
【0035】
主燃焼部A1の側壁には、助燃焼用バーナーA31が設けられている。助燃焼用バーナーA31は、焼却対象物に対する最初の点火のために用いられる。ほとんどの場合、一旦燃焼を開始した焼却対象物は、自燃により燃焼を持続する。主燃焼部A1の温度は、焼却対象物の自燃のみにより必要な焼却温度に到達することが可能である。従って、焼却のために燃料を消費することはほとんどない。助燃焼用バーナーA31は、燃焼状況に応じて、焼却対象物のガス化を制御するために適宜用いられる。
【0036】
さらに、助燃焼用バーナーA31の上方の側壁に、再燃焼用バーナーA32が設けられることが好ましい。再燃焼用バーナーA32は、主燃焼部A1の未燃焼ガスの滞留状況に応じて(例えば黒煙が発生しているとき)、未燃焼ガスを再燃焼させるために適宜用いられる。未燃焼ガスを再燃焼させることにより、黒煙を無色とし、悪臭の発生を抑制できる。
【0037】
水冷ジャケット部A2は、主燃焼部A1の上に位置する。水冷ジャケット部A2は、主燃焼部A1の過度の温度上昇を防止する役割を果たすものである。主燃焼部A1の耐火レンガ壁A12は、高温の保持には適しているが、逆に温度が過度に上昇しやすいという欠点もある。その場合、過剰な燃焼を起こし、エア不足を生じて不完全燃焼となり、黒煙を発生することになる。これを防止するため、水冷ジャケット壁A27を備えた水冷ジャケット部A2を設けている。水冷ジャケット壁A27は、表面の鋼板の内側に隙間を介して別の鋼板が配置された二重壁であり、その隙間に水が流れるように構成されている。水冷ジャケット部A2の水冷ジャケット壁A27が、下方の主燃焼部A1の余分な熱を吸収することで、主燃焼部A1の温度を安定に維持することができる。これにより、主燃焼部A1におけるガス化速度を安定させバランスよく燃焼を行わせることができる。
【0038】
従来技術では、一次燃焼室の保護のために一次燃焼室全体を囲むように水冷ジャケット壁を設けることが多いが、その場合、主燃焼部の温度が低下し易くなり、その結果、不完全燃焼し易くなり、ダイオキシン類が発生しやすくなるという問題があった。
【0039】
水冷ジャケット部A2の水冷ジャケット壁A27への水の供給は、
図2及び
図3に示す給水タンクA21から行われる。給水タンク21は、外部から給水口A26を通して貯水される。給水タンク21から水冷ジャケット壁27へ、
図2に示す水冷給水管A22により水が送られる。水冷ジャケット壁27を流れる水は、高温に曝されることで蒸気となり、
図2に示すように、蒸気送出管A23を通って膨張タンクA24へ送られる。膨張タンクA24において蒸気の温度は適宜低下させられ、その後、上方に延びる蒸気筒A25を通って放出される。
【0040】
水冷ジャケット部A2は、側壁に再燃焼用バーナーA33を設けている。再燃焼用バーナーA33は、主燃焼部A1の再燃焼用バーナーA32と同様に、上昇してきた排ガス中の未燃焼ガスの滞留状況に応じて未燃焼ガスを再燃焼させるために適宜用いられる。未燃焼ガスを再燃焼させることにより、悪臭の発生を抑制する。
【0041】
図4に示すように、一次燃焼室Aの内部空間には、最下部から最上部まで鉛直方向に延在するエアノズルA11が設けられている。この例では、内部空間の四隅に4本のエアノズルA11が配置されている。エアノズルA11の表面には多数のエア噴出孔が形成されている。
図4中の白矢印はエアの流れを示している。
【0042】
エアノズルA11へ供給されるエアは、例えばターボブロアA4からバルブA5を介して送られ、主燃焼部A1の底部に配置されたエアタンクA6に蓄積される。各エアノズルA11は、エアタンクA6と連通している。バルブA5を制御することにより、燃焼に必要な量のエアのみを一次燃焼室Aに送ることができる。内部空間に噴射されるエアは、焼却対象物の燃焼に必要な酸素を供給するとともに、未燃焼ガスと撹拌されて混合ガスとなり、効率よく完全燃焼を行うことができる。
【0043】
なお、一次燃焼室Aの主燃焼部A1の底部近傍に、おき燃用エアノズルA10を設けてもよい。おき燃用エアノズルA10は、焼却対象物が固体状態で赤熱して燃焼するおき燃焼を促進する。おき燃用エアは、図示の例では、後述する高圧ターボブロアF2からバルブA9を介して適宜供給される。
【0044】
<二次燃焼室B>
二次燃焼室Bは、一次燃焼室Aの上方すなわち水冷ジャケット部A2の上方に配置されている。二次燃焼室Bは、水冷ジャケット部A2の上面中央部の出口と、二次燃焼室Bの下面中央部の入口の間に設けた短いダクトにより連結されている。
【0045】
二次燃焼室Bは、
図4に示すように、表面の鋼板の内側に所定の厚さの多孔質セラミック壁B2を設けている。多孔質セラミック壁B2は、耐火温度1250℃以上の多孔質セラミックで構成されている。多孔質セラミックは、微細な気孔を具備することにより、内部空間に近い部分は蓄熱効果すなわち保温効果を発揮し、外表面に近い部分は断熱効果を発揮する。内部空間に面した表面は、高温となることにより輻射熱(遠赤外線)を放射する。このような多孔質セラミックとして、セラミック粉体を固めたブロック製品があり、例えば加藤電気炉剤製造有限会社製の商品名「耐火フリーブリック」(耐火温度1250℃)を用いることができる。
【0046】
二次燃焼室Bには、再燃焼用バーナーB1が設けられている。再燃焼用バーナーB1は、排ガス中の未燃焼ガスを再燃焼するために適宜使用される。この再燃焼用バーナーB1は、
図3の平面図に示すように、フィルタ付燃焼室Cに対向する側面の隣に位置する側面(すなわち図示の例では正面)に取り付けられている。加えて、再燃焼用バーナーB1は、フィルタ付燃焼室Cに向かう方向rに対し鋭角αをなすように傾斜して取り付けられている。この取付方法は、再燃焼用バーナーB1の破損防止に非常に有用であることが判明している。再燃焼用バーナーB1を、フィルタ付燃焼室Cとは反対側に位置する側面に取り付けた場合、又は、側面に対して直角に取り付けた場合、一次燃焼室からの排ガスの圧力によって再燃焼用バーナーB1が破損してしまうことが多かった。このように所定の側面に傾斜させて取り付けることにより、再燃焼用バーナーB1が破損しなくなった。
【0047】
二次燃焼室Bの出口は、水平方向に隣接するフィルタ付燃焼室Cに対向する側面に設けられている。従って、下方の入口から入ってくる排ガスの上方への流れは、二次燃焼室Bで水平方向に曲げられる。これにより、排ガスの速度が遅くなり、滞留時間が長くなる。この結果、未燃焼ガスの再燃焼の時間を十分にとることができるようになる。
【0048】
また、再燃焼用バーナーB1は、二次燃焼室Bのみでなく、後述するフィルタ付燃焼室C及び三次燃焼室Dまで加熱することができる。これは、二次燃焼室B、フィルタ付燃焼室C及び三次燃焼室Dが水平方向に一列に順次配置されていることによる。この場合、これらの3つの室の内部空間は、二次燃焼室Bから三次燃焼室Dの入口まで、各室間の短い連結ダクト部分を含め、同じ大きさの断面を有して繋がっている。各室間の連結ダクト部分にも多孔質セラミック壁が設けられている。すなわち、二次燃焼室Bから三次燃焼室Dの上部まで繋がる1つの直方体の内部空間が形成されている。このような3つの室B、C、Dの配置と構成により、1つの再燃焼用バーナーB1が3つの室B、C、Dの加熱機能を担うことが可能となっている。
【0049】
<フィルタ付燃焼室C>
フィルタ付燃焼室Cは、二次燃焼室Bの側方に隣接して配置されている。フィルタ付燃焼室Cもまた、
図4に示すように、外表面(上下面及び2つの側面)の鋼板の内側に所定の厚さの多孔質セラミック壁C2を設けている。
【0050】
フィルタ付燃焼室Cの中央部には、セラミックフィルタC1が配置されている。セラミックフィルタC1は、フィルタ付燃焼室Cの内部空間を入口側と出口側の2つの区画に仕切るように設けられている。従って、排ガスは、セラミックフィルタC1を通過して流れる。上述した通り、フィルタ付燃焼室Cは、二次燃焼室Bの再燃焼用バーナーB1により加熱され、セラミックフィルタC1も加熱される。セラミックフィルタC1は、排ガス中の微粒子を吸着し、除去する効果がある。また、フィルタ付燃焼室Cが加熱され高温となることにより、排ガス中の未燃焼ガスの再燃焼も促進される。フィルタ付燃焼室Cも多孔質セラミック壁C2を設けているので、その輻射熱(遠赤外線)によっても高温となり、再燃焼が促進される。
【0051】
図6は、このようなセラミックフィルタC1の一例を示した図である。(a)は、1つの側面を示し、(b)は(a)のI−I断面を示している。黒矢印は排ガスの流れを示す。このようなセラミックフィルタは公知であり、例えば特許文献3に開示されている。セラミックフィルタC1としては、例えばイソライト工業株式会社製のセラミックパイプを用いることができる。
【0052】
<三次燃焼室D>
三次燃焼室Dは、フィルタ付燃焼室Cに対して二次燃焼室Bとは反対側の側方に隣接して配置されている。三次燃焼室Dもまた、
図4に示すように、外表面の鋼板の内側に所定の厚さの多孔質セラミック壁D2を設けている。
【0053】
三次燃焼室Dは、集塵サイクロンD3を具備する。集塵サイクロンD3は、下向き円錐形状を有する。集塵サイクロンD3の下方には、所定の大きさの集塵室D4が設けられている。集塵室D4の正面には、灰出口D1が設けられている。
【0054】
集塵サイクロンD3は、排ガスを旋回させることにより滞留時間を長くするとともに、旋回する遠心力により排ガス中の微粒子を集塵する。微粒子は下降して集塵室D4に蓄積する。
【0055】
上述した通り、三次燃焼室Dは、二次燃焼室Bの再燃焼用バーナーB1により加熱され高温となることにより、排ガス中の未燃焼ガスの再燃焼が促進される。三次燃焼室Dも多孔質セラミック壁D2を設けているので、その輻射熱(遠赤外線)によっても高温となり、再燃焼が促進される。こうして、微粒子を除去され、未燃焼ガスを再燃焼された排ガスは、後述する強制排気流により吸引され、上面に設けた出口から四次燃焼室Eに向かう。
【0056】
<四次燃焼室E>
四次燃焼室Eは、三次燃焼室Dの上方に配置されている。四次燃焼室Eもまた、
図5に示すように、外表面の鋼板の内側に所定の厚さの多孔質セラミック壁E2を設けている。
【0057】
四次燃焼室Eは、側壁に再燃焼用バーナーE1を設けている。再燃焼用バーナーE1は、この位置での排ガス中にまだ未燃焼ガスが残留している場合に、これを再燃焼させるために使用される。この位置での未燃焼ガスの残留は、後述する排気筒Fに設けられている測定口F1における測定により検知される。未燃焼ガスが検知された場合は、再燃焼用バーナーE1により四次燃焼室Eを加熱し、再燃焼させる。四次燃焼室Eも多孔質セラミック壁E2を設けているので、その輻射熱(遠赤外線)によっても高温となり、再燃焼が促進される。
【0058】
<排気筒F>
排気筒Fは、四次燃焼室Eの上面の出口から上方に延びるように配置されている円筒状鋼管部材である。耐熱性・耐食性を高める溶融アルミニウムめっき加工されることが好ましい。
【0059】
排気筒Fの長手方向の中間位置に、強制排気管F5が取り付けられている。強制排気管F5の上端は、排気筒Fの筒壁を外部から内部に貫通し、排気筒Fの中心軸上で上方に向かって開口している。一方、強制排気管F5の下端は、エア送出管F4の一端に接続されている。エア送出管F4の他端は、高圧ターボブロアF2の送風口に設けられたエアチャンバF3に接続されている。
【0060】
高圧ターボフロアF3を稼働させると、高圧エアが強制排気管F5の上端から上方に向かって噴射される。これにより、排気筒F内に上方に向かう強いエア流が形成される。このエア流は、四次燃焼室Eからの排ガスを吸引するように強制的に上方に向かわせる。この強制排気管F5により発生する強制的なエア流は、四次燃焼室Eより前段に配置された各室の排ガスを所定の方向に向かわせるように作用する。
【0061】
このようにして、排気筒Fの上端から、排ガスが大気中に放出される。この時点では、ほぼ未燃焼ガスはゼロとなっているため、無色かつ無臭の排ガスが放出される。
【0062】
排気筒Fには、強制排気管F5の取付位置より下方に測定口F1が設けられる。測定口F1は、四次燃焼室Eから送出された排ガスの一部を取り出すためのものである。取り出された排ガスは、その成分についての種々の計測に用いられる。計測結果は、制御部(図示しない)に送られ、制御部は計測結果に基づいて四次燃焼室Eの再燃焼用バーナーE1等を制御する。
【0063】
次に、
図7〜
図9を参照して、
図1〜
図6に示した無煙焼却炉1の焼却動作フローをさらに詳細に説明する。なお、説明においては、
図1〜
図6中の符号を参照する場合がある。
【0064】
図7は、焼却開始から一次燃焼室Aにおける燃焼工程までを模式的に示すフロー図である。黒矢印は焼却対象物又はその焼却後の排ガスの流れを示し、白矢印はエア又は水の流れを示す(以下の図においても同様)。
【0065】
焼却を開始する際、投入口A7を開けて焼却対象物を投入する。なお、焼却途中に、逐次、追加投入することも可能である。小型焼却炉では、焼却対象物を無秩序に投入するような使用方法もよく行われる。そのような場合にも、本発明の無煙焼却炉は、主燃焼部A1の温度が低下することなく燃焼が行われる。これは、主燃焼部A1が耐火レンガ壁で囲まれており、十分なエアがエアノズルA11から供給されることによる。エアノズル11によるエアの供給量は、主燃焼部A1の温度に基づいて制御される。主燃焼部A1の温度は温度センサ(図示せず)により計測され、計測結果が制御部(図示せず)に送られ、制御部がそれに基づいて制御を行う。
【0066】
助燃焼用バーナーA31は、最初の点火時に使用するが、自燃により安定な燃焼が行われるようになった場合には停止する。その後は、適量のエアの供給のみにより効率よく完全燃焼が行われる。主燃焼部A1において焼却対象物の大部分は燃焼してガス化し、排ガスとなる。固体である焼却灰は、主燃焼部A1の底に蓄積し、灰出口から取り出される。一方、排ガス中には、完全燃焼した後のガス化成分である二酸化炭素と水(蒸気)以外に、未燃焼ガス(一酸化炭素その他の有害ガス)と浮遊可能な固体(微粒子)とが含まれる。
【0067】
この場合、一次燃焼室Aの主燃焼部A1の上部と水冷ジャケット部A2は、排ガス中の未燃焼ガスの滞留空間として機能する。未燃焼ガスは、主燃焼室の再燃焼用バーナーA32及び/又は水冷ジャケット室A2の再燃焼用バーナーA33により再燃焼させられる。これにより、排ガス中の未燃焼ガスをできるだけ低減した上で、排ガスを二次燃焼室に向かわせる。
【0068】
水冷ジャケット部A2に供給される水は、水蒸気として取り出すことができる。
図7に示すように、水蒸気を利用して発電機Gを駆動してもよい。発電機Gは、例えば蒸気タービンである。このような発電技術は公知のものである。本発明の無煙焼却炉は、このような発電機Gと組み合わせた発電システムとして構成することができる。
【0069】
図8は、二次燃焼室Bから四次燃焼室Eまでを模式的に示すフロー図である。二次燃焼室B、フィルタ付燃焼室C及び三次燃焼室Dは、水平方向に一列に順次配置されているので、二次燃焼室Bに設けた再燃焼用バーナーB1は、フィルタ付燃焼室C及び三次燃焼室Dまで加熱することが可能である。これらの室壁は、蓄熱及び保温の効果の高い多孔質セラミックで形成されており、加熱され高温となると輻射熱(遠赤外線)を壁面から放射する。これにより、排ガス中の未燃焼ガスの再燃焼が促進される。この構成では、1つの再燃焼用バーナーにより3つの燃焼室を加熱することが可能であるので、燃料を効率的に利用でき省エネルギーに寄与することができる。この過程で未燃焼ガスの再燃焼が進み、無煙化が促進される。
【0070】
フィルタ付燃焼室CのセラミックフィルタC1により排ガス中の微粒子が除去される。また、三次燃焼室Dの集塵サイクロンD3によっても排ガス中の微粒子が除去される。三次燃焼室Dの集塵サイクロンは、加熱による高温下で集塵を行うので、集塵される途中で完全燃焼される微粒子の割合が高くなる。それにより、集塵灰を低減することができるとともに、さらに無煙化が促進される。
【0071】
三次燃焼室Dまでの工程で、排ガス中の未燃焼ガスはほぼ完全燃焼されるが、四次燃焼室Eにおいても残留している場合は、再燃焼用バーナーE1により再燃焼する。未燃焼ガスの残留は、排気筒下部の測定口での計測により検知される。
【0072】
図9は、排気筒Fでの排ガスの流れを模式的に示すフロー図である。完全燃焼による排ガスのみが排気筒Fに流入し、強制排気管F5による強制排気により、排ガスは大気中に放出される。これにより焼却を完了する。
【0073】
なお、排気筒Fの下部の測定口F1から取り出される排ガスは、測定に用いるだけでなく、熱交換器Hに適用してもよい。この位置での排ガスは、例えば350℃程度であり、熱交換器Hに適用するために十分に高温である。この場合、排ガスを、排気筒Fの上部へ送る替わりに、全てを熱交換器Hに適用してもよい。熱交換器Hにおいて水と熱交換を行わせることにより、水をお湯とすることができる。また、熱交換器Hにおいては、空気と熱交換を行わせてもよい。これにより、空気を乾燥させたり、温風暖房に用いたりすることが可能となる。このような熱交換技術は公知のものである。本発明の無煙焼却炉は、このような熱交換器Hと組み合わせた熱交換システムとして構成することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の無煙焼却炉についての試験結果を示す。試験に用いた無煙焼却炉は、上述した実施形態と同じ構成を備えている。装置規模は、以下の通りである。
・焼却能力:16.191(kg/h)
・火床面積: 0.29(m
2)
・排気筒 :直径250(mm), 高さ3.565(m)
【0075】
<ダイオキシン類測定結果>
JIS K 0311 排ガス中のダイオキシン類の測定方法に準拠した測定結果は、次の通りである。
図1の測定口F1、
図2の灰出口A8、及び、
図1の灰出口D1からそれぞれ採取した排ガス、焼却灰、及び、ばいじんについて測定した。
【0076】
【表1】
【0077】
排ガスについては、試験した焼却炉の規模の場合は基準値が設定されていない。参考のとして、1つ上の規模の焼却炉についての基準値は、5となっている。
【0078】
<一酸化炭素及び酸素の濃度測定結果>
図1の測定口F1から採取した排ガスについての一酸化炭素濃度と酸素濃度の測定結果は、次の通りである。測定は、3時間46分の間に一分毎に行い、平均値を算出した。
【0079】
【表2】
【0080】
<排ガス量・排ガス温度・排ガス組成の測定結果>
図1の測定口F1から採取した排ガスについての排ガス量・排ガス温度・排ガス組成の測定結果は、次の通りである。排ガス組成の分析は、JIS K 0301-6. JIS B 7983電気化学式に準拠して行った。
【0081】
【表3】
【解決手段】燃焼対象物を投入されかつ耐火レンガ壁A12と燃焼を補助するための助燃焼用バーナーA31とを具備する主燃焼部A1と、耐火レンガ部A1の上に配置されかつ水冷ジャケット壁A27を具備する水冷ジャケット部A2とを設けた一次燃焼室Aと、一次燃焼室Aの上方に配置され再燃焼用バーナーB1を具備する二次燃焼室Bと、二次燃焼室Bの側方に一列に順次配置された、フィルタ付燃焼室C及び集塵サイクロンD3を具備する三次燃焼室Dと、三次燃焼室Dの上方に配置されかつ再燃焼用バーナーE1を具備する四次燃焼室Eと、強制排気手段F2, F5を具備する排気筒Fと、を有する。