【実施例】
【0031】
A.
ブロッコリー雑種PS05151639の起源および育種の経緯
雑種PS05151639の親は、BRM 51-1162およびBRL 51-1128である。これらの親は、下記のとおり作製された。
【0032】
系統FT-69は、John Innes Center, UKにより開発された系統であり、高められたレベルのファイトケミカルMSP (グルコイベリン)を有する。それは、栽培化ブロッコリーの野生型(Brassica villosa)を栽培化ブロッコリー(Brassica oleracea)と交配することにより作製された。FT-69を適合したブロッコリー親系統BRM 51-19まで戻し交配した。各々の交配後、反復親BRM 51-19との表現型類似性に基づいて植物を選択し、MSP (グルコイベリン)およびさらなるファイトケミカルMSB (グルコラファニン)のレベルについて解析した。最終系統をBRM 51-1162と名付けた。
【0033】
BRL 51-1128は、キャベツBlue Dynasty細胞質を有する細胞質雄性不稔(CMS)ブロッコリーを用いたBRL 51-99単交配(SC)のもとの交配から開発された。BRL 51-99は、倍化半数体近交系統398-1254であった。5世代の間、花粉反復親としてBRL 51-99を用いた戻し交配プログラムを追跡した。戻し交配の5世代後、BRL 51-1128 CMS BC 5系統が生産地に送られ、種苗源(breeder source) 05BajaBK 76-2A/CP 1915が作製され、この近交系についての原種プログラム(foundation seed program)で使用された。
【0034】
B.
ブロッコリー雑種PS05151639、ブロッコリー系統BRM 51-1162およびブロッコリー系統BRL 51-1128の生理学的および形態学的特徴
本発明の1つの局面において、ブロッコリー雑種PS05151639およびその親系統の生理学的および形態学的特徴を有する植物が提供される。そのような植物の生理学的および形態学的特徴の記載を表1-3に示す。
【0035】
表1: 雑種PS05151639の生理学的および形態学的特徴
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
*これらは、典型値である。値は、環境により変わり得る。実質的に同等な他の値はまた、本発明の範囲内である。
【0042】
表2: 系統BRM 51-1162の生理学的および形態学的特徴
【表8】
【0043】
【表9】
【0044】
【表10】
【0045】
【表11】
【0046】
【表12】
【0047】
【表13】
【0048】
【表14】
【0049】
【表15】
*これらは、典型値である。値は、環境により変わり得る。実質的に同等な他の値はまた、本発明の範囲内である。
【0050】
表3: 系統BRL 51-1128の生理学的および形態学的特徴
【表16】
【0051】
【表17】
【0052】
【表18】
【0053】
【表19】
【0054】
【表20】
【0055】
【表21】
【0056】
【表22】
【0057】
【表23】
*これらは、典型値である。値は、環境により変わり得る。実質的に同等な他の値はまた、本発明の範囲内である。
【0058】
C.
ブロッコリー植物の育種
本発明の1つの局面は、ブロッコリー系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128を交配することを含むブロッコリー雑種PS05151639の種子を作製する方法に関する。あるいは、本発明の他の態様において、雑種PS05151639、系統BRM 51-1162、または系統BRL 51-1128をそれ自身と、または任意の第2植物と交配させ得る。そのような方法は、雑種PS05151639および/またはブロッコリー系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128の繁殖のために使用され得るか、または雑種PS05151639および/またはブロッコリー系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128に由来する植物を作製するために使用され得る。特定の態様において、雑種PS05151639および/またはブロッコリー系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128に由来する植物は、新規ブロッコリー品種の開発のために使用され得る。
【0059】
1個またはそれ以上の出発品種を用いた新品種の開発は、当分野で既知である。本発明によると、新品種は、雑種PS05151639を交配し、その後、そのような既知の方法により複数の世代の育種を経ることにより作製され得る。新品種は、任意の第2植物と交配することにより作製され得る。新系統を開発する目的で交配されるべき第2植物の選択において、いずれかが1個またはそれ以上の選択される望ましい特性を示すか、または組み合わせて雑種になると(when in hybrid combination)望ましい特性を示す植物を選ぶことが望ましくあり得る。いったん最初の交配が行われると、同系交配および選択が新品種を作製するために行われる。均一な系統の開発のために、しばしば、5世代またはそれ以上の世代の自殖および選択が行われる。
【0060】
新品種の均一な系統はまた、半数体倍化により開発され得る。この技術により、複数の世代の自殖および選択を必要とすることなく、真の育種系統が可能となる。この方法において、真の育種系統は、わずか1世代で作製され得る。半数体胚は、小胞子、花粉、葯培養または子房培養から作製され得る。次いで、半数体を自律的に倍化させるか、または化学的処理(例えば、コルヒチン処理)により倍化させ得る。あるいは、半数体胚を半数体植物に成長させ、染色体倍化を誘導するために処理され得る。いずれの場合においても、受精ホモ接合型植物が得られる。本発明によると、ホモ接合型系統を得るために、そのような技術のいずれかが、本発明の植物およびその子孫と組み合わせて使用され得る。
【0061】
戻し交配はまた、近交系植物を改良するために使用され得る。戻し交配は、1つの近交系または非近交系起源から当該特性を欠いた近交系に特定の望ましい特性を送達する。これは、例えば、優れた近交系(A) (反復親)を、問題となる特性について適当な遺伝子座または複数の遺伝子座を有している供与近交系(非反復親)に最初に交配することにより達成され得る。次いで、この交配の子孫を優れた反復親(A)に戻し交配し、その後、非反復親から移された望ましい特性について得られた子孫を選択する。望ましい特性について選択した5またはそれ以上の戻し交配世代の後、子孫は、移された特性を有するが、大部分またはほぼすべての他の遺伝子座について優れた親と同様である。最後の戻し交配世代を自殖して、特性が移された純粋な育種子孫を得ることができる。
【0062】
本発明の植物は、特に、植物の遺伝学的背景の優良な性質に基づく新系統を開発するのに適している。新規ブロッコリー系統を開発する目的でPS05151639および/またはブロッコリー系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128と交配されるべき第2植物の選択において、一般に、いずれかが1個またはそれ以上の選択される望ましい特性を示すか、または組み合わせて雑種になると望ましい特性を示す植物を選ぶことが好ましくあり得る。特定の態様において、望ましい特性の例は、高い種子収量、高い種子発芽、苗木の活力、高収量、病気寛容もしくは耐性、ならびに土壌および気候条件への適応性を含み得る。消費者中心の特性、例えば、頭部形状、栄養的価値および味覚は、本発明により開発されたブロッコリー植物の新規系統に組み込まれ得る他の特性である。
【0063】
D.
品質特性
上記したとおり、雑種PS05151639は、望ましい農学特性を示す。PS05151639の品質特性が、他の品種と比較した品質特性の客観解析の対象であった。解析の結果を下記に示す。
【0064】
表4: PS05151639および選択された品種*についての品質特性
【表24】
【0065】
【表25】
【0066】
【表26】
*示されたスケールに基づく
【0067】
標準的な方法を用いて、MSBレベルを定量化した。固定効果としての品種、および場所、植栽、reps within (場所×植栽)、場所×植栽、ならびにランダム効果としての品種との相互作用を考慮して、場所および植栽に沿った組み合わせ解析を用いてデータを解析した。MSBについての結果を表5に示す。雑種PS05151639のLS平均値は428であり、比較品種HeritageのLSM平均値は180であり、MarathonのLSM平均値は123であった。PS05151639のMSBは、Heritageの2.4倍であり、Marathonの3.5倍であった。
【0068】
表5: PS05151639および選択された品種についてのMSBレベル
【表27】
【0069】
標準的な方法を用いて、MSPレベルを定量化した。固定効果としての品種、および場所、植栽、reps within (場所×植栽)、場所×植栽、ならびにランダム効果としての品種との相互作用を考慮して、場所および植栽に沿った組み合わせ解析を用いてデータを解析した。MSPについての結果を表6に示す。雑種PS05151639のLS平均値は62であり、比較品種HeritageのLSM平均値は8であり、MarathonのLSM平均値は7であった。PS05151639のMSBは、Heritageの7.8倍であり、Marathonの8.5倍であった。
【0070】
表6: PS05151639および選択された品種についての品質特性
【表28】
【0071】
標準的な方法を用いて、MSBおよびMSPレベルを系統BRL 51-1128およびBRM 51-1162で定量化した。この解析の結果を表7に示す。
【0072】
表7: BRL 51-1128およびBRM 51-1162についての品質特性
【表29】
*測定不能グルコイベリン(MSP)
【0073】
E.
本発明のさらなる態様
本発明の特定の局面において、少なくとも1個の望まれる遺伝学的特性を含むように修飾された植物が提供される。1つの態様において、そのような植物は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術により開発され得て、ここで、遺伝子座が戻し交配技術により植物に移されることに加えて、品種の望まれる形態学的および生理学的特性の実質的にすべてが回復する。本明細書で使用される単一遺伝子座変換植物なる用語は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術により開発されるブロッコリー植物を意味し、ここで、遺伝子座が戻し交配技術により植物に移されることに加えて、品種の望まれる形態学的および生理学的特性の実質的にすべてが回復する。望まれる形態学的および生理学的特性の実質的にすべては、戻し交配または
導入遺伝子の直接導入の間に生じ得る偶発的変種特性以外に、同じ環境において比較されるときに他に存在する植物の特性が回復することを意味する。
【0074】
戻し交配法は、本発明と一緒に使用して、現在の品種を改良または特徴を導入することができる。望ましい特徴の遺伝子座に関与する親ブロッコリー植物は、非反復親または供与親と呼ばれる。この用語は、戻し交配プロトコールにおいて非反復親が1回だけ使用され、したがって反復しない事実をいう。非反復親から遺伝子座または複数の遺伝子座が移る親ブロッコリー植物は、それが戻し交配プロトコールにおいて数ラウンド使用されるため、反復親として知られている。
【0075】
典型的な戻し交配プロトコールにおいて、関心のあるもとの品種(反復親)を、移すべき関心のある単一の遺伝子座を有する第2の品種(非反復親)と交配する。ついで、この交配から得られた子孫を反復親と再び交配し、この工程を、非反復親からの単一の移された遺伝子座に加えて、反復親の実質的にすべての望ましい形態学的および生理学的特徴が変換された植物で回復するブロッコリー植物が得られるまで繰り返す。
【0076】
適当な反復親の選択は、戻し交配手順の成功のための重要な工程である。戻し交配プロトコールの目的は、もとの品種における単一の特性もしくは特徴を改良または置換することである。これを達成するために、反復品種の単一遺伝子座を非反復親からの望まれる遺伝子座で修飾もしくは置換しつつも、残りの望まれる遺伝学的な構成、およびしたがって、もとの品種の望まれる生理学的および形態学的構成のすべてを実質的に保持する。特定の非反復親の選択は、戻し交配の目的に依存し; 主な目的の1つは、いくつかの商業的に望まれる特性を植物に付与することである。正確な戻し交配のプロトコールは、改変される特徴もしくは特性および反復親と非反復親の間の遺伝学的距離に依存する。戻し交配法は、形質転換される特徴が優性対立遺伝子である場合には容易であるが、劣性対立遺伝子または相加対立遺伝子(additive allele)(劣性と優性の間)はまた、伝達され得る。この場合には、望まれる特性の送達が成功したか否かを決定するために、子孫の試験を導入する必要があり得る。
【0077】
1つの態様において、PS05151639が反復親である戻し交配の子孫ブロッコリー植物は、(i) 非反復親からの望まれる特性、および(ii) 同じ環境条件で育てられた場合に5%の有意差レベルで決定されるブロッコリー雑種PS05151639の生理学的および形態学的特徴のすべてを含む。
【0078】
ブロッコリー品種はまた、2種以上の親から開発され得る。修飾戻し交配として既知の技術は、戻し交配の間に異なる反復親を使用する。修飾戻し交配を用いると、元の反復親をある種のより望ましい特徴を有する品種で置き換えることができるか、または複数の親を用いて各々から異なる望ましい特徴を得ることができる。
【0079】
新規近交系の開発に通常は選択されないが、戻し交配技術によって改良することができる多くの単一遺伝子座特性が同定されている。単一遺伝子座特性はトランスジェニックであってもなくてもよく; 例えば、これらの特性は、除草剤耐性、細菌、真菌類もしくはウイルス病に対する耐性、昆虫耐性、修飾された脂肪酸または炭水化物代謝および改良された栄養価を含むがこれらに限定されない。これらは、一般に、核を介して遺伝する遺伝子を含む。
【0080】
直接選択は、単一遺伝子座が優性特性として作用する場合に適用され得る。この選択工程のために、最初の交配の子孫を戻し交配の前にウイルス耐性および/または対応する遺伝子の存在についてアッセイする。選択により、望まれる遺伝子および耐性特性を有さない植物を排除し、当該特性を有する植物のみを次の戻し交配で使用する。次いで、この工程をすべてのさらなる戻し交配世代について繰り返す。
【0081】
育種するブロッコリー植物の選択は、必ずしも植物の表現型に依存するのではなく、その代わりに遺伝学的調査に基づくことができる。例えば、関心のある特性と遺伝学的に密接に関連した適当な遺伝学的マーカーを利用することができる。これらのマーカーのうちの1つを用いて、特定の交配の子孫における特性の存在または非存在を同定することができ、続行する育種の子孫の選択に用いることができる。この技術は、通常、マーカー支援選択といわれる。植物中の関心のある特性の相対的な存在または不存在を同定することができるいずれか他の型の遺伝学的マーカーまたは他のアッセイは、育種目的にも有用となり得る。マーカー支援選択についての手順は、当分野で既知である。かかる方法は、劣性特性および変化し易い表現型の場合、または従来のアッセイがより高価で、時間がかかり、または他の不利益を有し得る場合に特に有用であろう。本発明により使用され得る遺伝学的マーカーの型は、単純配列長多型(SSLP) (Williams et al., 1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリント(DAF)、配列特徴付け増幅領域(SCAR)、任意開始ポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP) (EP 534 858、特にその全体を引用により本明細書の一部とする)および一塩基多型(SNP) (Wang et al., 1998)を含むがこれらに限定されない。
【0082】
F.
遺伝学的改変により誘導される植物
戻し交配により、および直接植物に導入され得る多くの有用な特性は、遺伝学的形質転換技術により導入されるものである。したがって、遺伝学的形質転換は、選択された
導入遺伝子を本発明の植物に挿入するために使用されるか、または戻し交配により導入され得る
導入遺伝子の作製のために使用され得る。当業者に既知であり、多くの作物品種に適用可能な植物の形質転換法は、エレクトロポレーション、微粒子銃、アグロバクテリウム仲介形質転換およびプロトプラストによるDNAの直接取り込みを含むが、これらに限定されない。
【0083】
エレクトロポレーションによる形質転換を行うために、細胞の懸濁培養物または胚発生カルスのようなもろい組織を使用し得るか、または未成熟胚もしくは他の組織化された組織を、直接、形質転換し得る。この技術において、選択された細胞の細胞壁を、ペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に曝すか、または制御された方法で機械的に組織を損傷させることにより部分的に分解させ得る。
【0084】
形質転換DNA断片を植物細胞に送達する効率的な方法は、微粒子銃である。この方法において、粒子は、核酸で覆われており、推進力により細胞に送達される。例えば、粒子は、タングステン、プラチナ、および好ましくは、金からなるものを含む。爆撃のために、懸濁細胞をフィルター上または固体培養培地上に濃縮する。あるいは、未成熟な胚または他の標的細胞を固体培養培地上に並べ得る。爆撃されるべき細胞は、マイクロプロジェクタイル停止プレート(macroprojectile stopping plate)下に適当な距離で配置されている。
【0085】
加速によってDNAを植物細胞に送達する方法の例示的な態様は、Biolistics Particle Delivery Systemであり、これを用いてDNAで被覆した粒子を推進させるか、またはステンレス鉱またはNytexスクリーンのようなスクリーンを介して標的細胞で覆われた表面に細胞を推進する。スクリーンは、粒子が大きな集合体で受容細胞に送達されないように粒子を分散する。プロジェクタイル装置と爆撃すべき細胞との間に介在するスクリーンは、プロジェクタイル集合体のサイズを減少させ、大きすぎるプロジェクタイルによる受容細胞に加わる損傷を減少させることによって高い頻度の形質転換に寄与し得ると考えられる。微粒子銃技術は、広く適用可能であり、事実上、あらゆる植物品種を形質転換するために使用され得る。
【0086】
アグロバクテリウム仲介導入は、遺伝子座を植物細胞に導入するための他の広く適用可能な系である。当該技術の利点は、DNAが全植物組織中に導入され得ることであり、それにより、プロトプラストからインタクト植物の再生のための必要性を回避し得る。最新のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、E. coliおよびアグロバクテリウム中で複製することができ、それにより、簡便な操作を可能にする(Klee et al., 1985)。さらに、アグロバクテリウム仲介遺伝子送達のためのベクターにおける最近の技術的な前進は、ベクター中の遺伝子および制限酵素部位の配置を改良して、さまざまなポリペプチドコード遺伝子を発現可能にするベクターの構築を促進したことである。記載されたベクターは、挿入されたポリペプチドコード遺伝子の直接的な発現のために、プロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接した簡便なマルチリンカー領域を有する。さらに、病原化(armed)および非病原化(disarmed)Ti遺伝子を含むアグロバクテリウムが形質転換のために使用され得る。
【0087】
アグロバクテリウム仲介形質転換が有効である植物系統において、それは、遺伝子導入の容易さおよび規定された性質のために最適な方法である。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム仲介植物組み込みベクターの使用は、当分野で既知である(Fraley et al., 1985; 米国特許第5,563,055号)。
【0088】
植物プロトプラストの形質転換はまた、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションおよびこれらの処理の組み合わせに基づく方法を用いて達成され得る(例えば、Potrykus et al., 1985; Omirulleh et al., 1993; Fromm et al., 1986; Uchimiya et al., 1986; Marcotte et al., 1988を参照のこと)。植物の形質転換および外因性遺伝学的要素の発現は、Choi et al. (1994)およびEllul et al. (2003)に例示されている。
【0089】
多くのプロモーターが関心のある任意の遺伝子の植物遺伝子発現について有用であり、選択性マーカー、獲得性マーカー、害虫耐性、病気耐性、栄養強化のための遺伝子および農学的に関心のある任意の他の遺伝子を含むがこれらに限定されない。ブロッコリー植物遺伝子発現のために有用な構成的プロモーターの例は、単子葉植物(例えば、Dekeyser et al., 1990; Terada and Shimamoto, 1990を参照のこと)を含む多くの植物組織において、構成的に高レベルの発現を誘導するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV) P-35Sプロモーター(例えば、Odel et al., 1985を参照のこと); CaMV 35Sプロモーターのタンデム重複版(改良型35Sプロモーター(P-e35S))である、ノパリンシンターゼプロモーター(An et al., 1988)、オクトピンシンターゼプロモーター(Fromm et al., 1989); ならびに米国特許第5,378,619号に記載されたゴマノハグサモザイクウイルス(P-FMV)プロモーターおよびFMVプロモーター(P-eFMV)の改良版(ここで、P-FMVのプロモーター配列は、タンデムで重複している)、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター、サトウキビバチルスウイルスプロモーター、ツユクサ黄斑ウイルスプロモーター、ならびに植物細胞中で発現することが既知な他の植物DNAウイルスプロモーターを含むがこれらに限定されない。
【0090】
環境、ホルモン、化学物質、および/または発生シグナルに応答して制御されるさまざまな植物遺伝子プロモーターが植物細胞における操作可能に結合した遺伝子発現のために使用され得て、該プロモーターは、(1) 熱(Callis et al., 1988)、(2) 光(例えば、エンドウrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeier et al., 1989; トウモロコシrbcSプロモーター、Schaffner and Sheen, 1991; もしくはクロロフィルa/b-結合タンパク質プロモーター、Simpson et al., 1985)、(3) ホルモン、例えば、アブシシン酸(Marcotte et al., 1989)、(4) 創傷(例えば、wunl、Siebertz et al., 1989); または(5) 化学物質、例えば、ジャスモン酸メチル、サリチル酸もしくはSafenerにより制御されるプロモーターを含む。また、器官特異的プロモーター(例えば、Roshal et al., 1987; Schernthaner et al., 1988; Bustos et al., 1989)を使用することが有利であり得る。
【0091】
例えば、本発明のブロッコリー植物に導入され得る核酸は、例えば、他の品種由来のDNA配列もしくは遺伝子、または同じ品種に由来するか、もしくは同じ品種に存在する遺伝子もしくは配列を含むが、古典的な生殖もしくは育種技術ではなく遺伝子工学的手法により受容細胞に導入され得る。しかしながら、「外因性」なる用語はまた、形質転換される細胞中に通常存在しないか、または単に形質転換DNA断片もしくは遺伝子に見出されるような形態、構造などで存在しない遺伝子、または通常存在するが、天然の発現様式とは異なる方法で発現させる(例えば、過剰発現させる)ことを望む遺伝子を意味することを意図する。したがって、「外因性」遺伝子もしくはDNAなる用語は、同様の遺伝子がすでに細胞中に存在し得るか否かにかかわらず、受容細胞に導入される任意の遺伝子またはDNA断片を意味することを意図する。外因性DNAに包含されるDNAの型は、植物細胞中にすでに存在するDNA、他の植物由来のDNA、異なる生物由来のDNA、または遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列のような外部で産生されるDNA、または遺伝子の合成もしくは修飾型をコードするDNA配列を含み得る。
【0092】
数千とは言わないまでも数百もの異なる遺伝子が既知であり、本発明によるブロッコリー植物に潜在的に導入され得る。ブロッコリー植物に導入するために選択され得る特定の遺伝子および対応する表現型の例は、昆虫耐性、例えば、Bacillus thuringiensis (B.t.)遺伝子、害虫耐性、例えば、菌類病制御のための遺伝子、除草剤耐性、例えば、グリホサート耐性を与える遺伝子、および質改善のための遺伝子、例えば、収量、栄養強化、環境もしくはストレス耐性、または植物生理、成長、発生、形態もしくは植物生成物における任意の望まれる変化についての1個またはそれ以上の遺伝子を含むがこれらに限定されない。例えば、構造遺伝子は、害虫耐性を与えるすべての遺伝子を含み得て、例えば、WO 99/31248(その全体を引用により本明細書の一部とする)、米国特許第5,689,052号(その全体を引用により本明細書の一部とする)、米国特許第5,500,365号(その全体を引用により本明細書の一部とする)および米国特許第5,880,275号(その全体を引用により本明細書の一部とする)に記載されたBacillus害虫制御タンパク質遺伝子を含むがこれらに限定されない。他の態様において、構造遺伝子は、除草剤グリホサートに対する耐性を与えることができ、例えば、該遺伝子は、米国特許第5,633,435号(その全体を引用により本明細書の一部とする)に記載されたアグロバクテリウム株CP4グリホサート耐性EPSPS遺伝子(aroA:CP4)、または米国特許第5,463,175号(その全体を引用により本明細書の一部とする)に記載されたグリホサート酸化還元酵素遺伝子(GOX)を含むがこれらに限定されない。
【0093】
あるいは、DNAコード配列は、例えばアンチセンスもしくは共抑制仲介メカニズムにより内因性遺伝子発現の標的化阻害を引き起こす非翻訳RNA分子をコードすることにより、これらの表現型に影響を与えることができる(例えば、Bird et al., 1991を参照のこと)。RNAはまた、望まれる内因性mRNA産物を切断するように改変された触媒RNA分子(すなわち、リボザイム)であり得る(例えば、Gibson and Shillito, 1997を参照のこと)。したがって、関心のある表現型もしくは形態変化を発現するタンパク質またはmRNAを産生する任意の遺伝子は、本発明の実施のために有用である。
【0094】
G.
定義
本明細書の記載および表において、多くの用語が使用されている。明細書および特許請求の範囲の明確かつ一致した理解を提供するために、下記の定義が提供される:
【0095】
対立遺伝子: 遺伝子座の1個またはそれ以上の択一的形態のいずれかであり、その対立遺伝子のすべてが1個の特性または特徴に関連する。二倍体細胞または生物においては、所定の遺伝子の2個の対立遺伝子が一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0096】
戻し交配: 育種者が雑種子孫を繰り返し交配するプロセスであり、例えば雑種子孫の親の一方に戻した第1世代雑種(F
1)。戻し交配を用いて、1の遺伝学的背景から1個またはそれ以上の単一遺伝子座変換を他のものに導入することができる。
【0097】
交配: 2つの親植物の接合。
【0098】
他家受粉: 異なる植物からの2個の配偶子の結合による受精
【0099】
二倍体: 2組の染色体を有する細胞または生物。
【0100】
去勢: 植物の雄性性器の除去、または雄性不稔性を付与する細胞質または核の遺伝因子または化学物質を用いた雄性性器の不活性化。
【0101】
酵素: 生物学的反応において触媒として作用する分子。
【0102】
F
1雑種: 2つの非同系植物の交配の第1世代子孫。
【0103】
遺伝子型: 細胞または生物の遺伝学的構成。
【0104】
一倍体: 二倍体中の2組の染色体のうちの1組を有する細胞または生物。
【0105】
連鎖: 同じ染色体上に存在する対立遺伝子が、それらの遺伝が独立している場合に、偶然に期待されるよりも高頻度で一緒に分離する傾向がある現象。
【0106】
マーカー: 環境分散成分を有さない、すなわち1の遺伝率の、好ましくは共優性様式で遺伝する容易に検出可能な(二倍体ヘテロ接合体中の遺伝子座の両方の対立遺伝子が容易に検出可能である)表現型。
【0107】
表現型: 遺伝子発現の顕在化である、細胞または生物の検出可能な特性。
【0108】
量的形質座位(QTL): 量的形質座位(QTL)とは、通常は連続して分布するある程度の数値的に表示可能な特性を制御する遺伝子座をいう。
【0109】
耐性: 本明細書で使用される「耐性」および「寛容」なる用語は、特定の生物害虫、病原体、非生物影響または環境条件に症状を示さない植物を記載するために交換可能に使用される。これらの用語はまた、いくらかの症状を示すが、なお許容できる収量を有する商品を生産することが可能な植物を記載するために使用される。耐性または寛容として言及されるいくつかの植物は、植物の成長が妨げられ、収量が減少したとしても、それらがなお作物を産生し得るという意味においてのみ耐性または寛容である。
【0110】
再生: 組織培養
物からの植物の発生。
【0111】
英国王立園芸協会(RHS)カラーチャート値: RHSカラーチャート値は、任意の色の正確な同定を可能にする標準化された参照である。チャート上の色の指定は、その色相、光度および彩度を記載している。色は、グループ名、シート番号および文字を同定することにより、RHSカラーチャートで正確に命名されている(例えば、黄色-橙色群19Aまたは赤色群41B)。
【0112】
自家受粉: 同じ植物の葯から柱頭への花粉の送達。
【0113】
単一遺伝子座変換(コンバージョン)植物: 戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発された植物であって、戻し交配技術および/または遺伝学的形質転換を介して品種に移された単一の遺伝子座の特徴に加えて、ブロッコリー品種の実質的にすべての望ましい形態学的および生理学的特徴が回復した植物。
【0114】
実質的に同等: 比較したときに、平均から統計学的に有意差(例えば、p = 0.05)を示さない特性。
【0115】
組織培養物: 同一または異なる型の単離した細胞を含む組成物、または植物の部分に組織化したかかる細胞の収集物。
【0116】
導入遺伝子: 形質転換によりブロッコリー植物のゲノム中に導入された配列を含む遺伝子座。
【0117】
H.
寄託情報
上記し、特許請求の範囲に記載したブロッコリー雑種PS05151639および系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128の寄託は、合衆国20110-2209バージニア州、マナッサス、ユニバーシティー・ボールバード10801のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に行っている。寄託の日付は2008年12月23日であった。ブロッコリー雑種PS05151639および近交系親系統BRM 51-1162およびBRL 51-1128の寄託した種子の受託番号は、それぞれ、ATCC受託番号PTA-9676、ATCC受託番号PTA-9675およびATCC受託番号PTA-9674である。特許が発行される際、寄託に関する全ての制限は解除され、寄託は、37 C.F.R.§1.801−1.809のすべての要件を満たすことを意図する。受託は、受託機関で30年間、または最後の要求の後5年間、または特許の有効期間のうちのいずれか長い期間維持され、その期間の間に必要な場合は置換される。
【0118】
本発明を説明する様式で、明瞭なことを目的としてある程度詳細に記載したが、添付する特許請求の範囲の範囲のみによって限定されるように、ある種の変化および修飾を本発明の範囲内に実施することができることは明らかである。
【0119】
本明細書で引用されるすべての参照は、引用により本明細書の一部とする。
【0120】
参照
下記の参照は、それらが例示的な手順または本明細書に記載したものを補充する他の詳細を提供するかぎりにおいて、特に引用により本明細書の一部とする。
米国特許第5,378,619号
米国特許第5,463,175号
米国特許第5,500,365号
米国特許第5,563,055号
米国特許第5,633,435号
米国特許第5,689,052号
米国特許第5,880,275号
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EP 534 858
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WO 99/31248