(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903222
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】RFコイルアセンブリ、その保護方法および磁気共鳴イメージングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
A61B5/05 350
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-105583(P2011-105583)
(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公開番号】特開2011-251118(P2011-251118A)
(43)【公開日】2011年12月15日
【審査請求日】2014年5月9日
(31)【優先権主張番号】12/791,166
(32)【優先日】2010年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511113741
【氏名又は名称】クオリティ エレクトロダイナミックス,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱村 良紀
(72)【発明者】
【氏名】シャオユウ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス カストリラ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイ・アレン
(72)【発明者】
【氏名】光井 信二
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−502138(JP,A)
【文献】
特開平11−056812(JP,A)
【文献】
特開平01−242055(JP,A)
【文献】
特表2003−500133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/64
G01N 24/00−24/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF送信機能及びRF受信機能を有し、かつ磁気共鳴イメージングシステムに接続可能なRFコイルアセンブリであって、
RF電流が流れたときに、磁気共鳴イメージングシステムの架台内で撮像される被検体にRF場を磁気的に送信するように構成されたRFコイルと、
磁気共鳴イメージングシステムとの接続インタフェースから前記RFコイルへRF電流を給電するように構成されたRF給電回路と、
前記RFコイルおよび前記RF給電回路のうちの少なくとも1つの内部または少なくとも1つに電気的に接続された少なくとも1つの可変インピーダンスであって、前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないときに、過大な誘導RF電流の流れから前記RFコイルアセンブリを保護する、前記少なくとも1つの可変インピーダンスと、を備え、
前記可変インピーダンスは、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないときに高く、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF送信機能が動作するときに低く、及び、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF受信機能が動作するときに低くなるように、
3つの動作状態それぞれに対応するようにインピーダンス状態が制御されることを特徴とするRFコイルアセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、RFコイル要素内に直列接続されることを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、RFコイル要素の給電点に直列接続されることを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、RFコイル要素の給電点と前記接続インタフェースとの間の前記RF給電回路に接続されることを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項5】
前記接続インタフェースとRFコイル要素との間の前記RF給電回路の一部として配置された送信/受信スイッチと、
前記送信/受信スイッチと前記接続インタフェースとの間に接続され、これによって送信/受信用磁気共鳴イメージングRFコイルアセンブリを形成するRF受信増幅回路と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項6】
複数の前記RFコイルと、前記RFコイルそれぞれに連結されたRF給電回路と、少なくとも1つの可変インピーダンスと、を含むバードケージ型RFコイルアセンブリを構成し、
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、前記バードケージ型RFコイルアセンブリが磁気共鳴イメージングシステムから切断されたときに異なるインピーダンス値の間で自動的に変わる、
ことを特徴とする請求項5に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、逆向きに直列接続された少なくとも2つのダイオードを備えた電気制御式スイッチを含むことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項8】
前記RFコイル、前記可変インピーダンス、および前記RF給電回路のアレイを備えたことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、電気制御式スイッチを含み、
前記RF給電回路は、前記磁気共鳴イメージングシステムとの前記接続インタフェースから少なくとも前記電気制御式スイッチへと延在するDCバイアス電流経路を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項10】
前記可変インピーダンスは、
前記磁気共鳴イメージングシステムのRF動作周波数で共振する並列LC回路と、
前記並列LC回路の少なくとも一部の両端に接続され、かつ逆向きに接続された少なくとも1対のダイオードと、を含み、
前記少なくとも1対のダイオードは、
前記ダイオードを順バイアスさせるバイアス制御電流により前記並列LC回路を共振からデチューンさせる低下したRFインピーダンスを生じさせることで、実質的に妨害されることなく磁気共鳴イメージングのRF撮像電流をRFコイル要素へ流すように構成され、もしくは、
順バイアスされない場合に、前記RFコイルアセンブリが、前記磁気共鳴イメージングシステムに電気的に接続されていないが、前記RFコイルアセンブリ内にRF電流を誘導する磁気共鳴イメージングシステムのRF送信場にさらされる可能性がある磁気共鳴イメージングシステム領域に残されたままの場合には、誘導RF電流の流れを実質的に遮断する実質的な並列共振インピーダンスを前記並列LC回路が生じさせた状態にするように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項11】
前記可変インピーダンスは、逆向きに直列接続された複数のダイオードを含み、
前記複数のダイオードは、
前記ダイオードを順バイアスさせるバイアス制御電流により低下したRFインピーダンスを生じさせることで、実質的に妨害を受けることなく磁気共鳴イメージングのRF撮像電流をRFコイル要素へ流すように構成され、もしくは、
順バイアスされない場合に、前記RFコイルアセンブリが、前記磁気共鳴イメージングシステムに電気的に接続されていないが、前記RFコイルアセンブリ内にRF電流を誘導する磁気共鳴イメージングシステムのRF送信場にさらされる可能性がある磁気共鳴イメージングシステム領域に残されたままの場合には、誘導RF電流の流れを実質的に遮断する実質的なインピーダンスを生じさせるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項12】
前記ダイオードのそれぞれの両端に並列に接続された抵抗であって、誘導RF電流によって逆バイアスされたときに、前記ダイオードの両端に実質的に等しい電圧降下を生じさせるような実質的に等しい抵抗値を有する前記抵抗をさらに備えたことを特徴とする請求項11に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項13】
請求項1に記載のRFコイルアセンブリを含むことを特徴とする磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項14】
RF送信機能及びRF受信機能を有し、かつ磁気共鳴イメージングシステムに接続可能なRFコイルアセンブリであって、
磁気共鳴イメージングシステムの架台内で撮像される被検体へRF場を磁気的に送信するように構成されたRFコイル回路と、
前記RFコイル回路に接続され、前記RFコイルアセンブリが磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないときに当該RFコイルアセンブリ内で誘導RF電流の流れを実質的に妨げるための手段と、を備え、
前記手段は、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないときに高く、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF送信機能が動作するときに低く、及び、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF受信機能が動作するときに低くなるように、
3つの動作状態それぞれに対応するように制御されることを特徴とするRFコイルアセンブリ。
【請求項15】
前記RFコイル回路は、RF受信増幅回路と、RFコイルと、磁気共鳴イメージングとの手動操作式接続インタフェースとに接続された送信/受信スイッチとを含み、
前記送信/受信スイッチおよび前記RF受信増幅回路は、接続された磁気共鳴イメージングシステムから、誘導RF電流の流れを自動的かつ実質的に妨げるための前記手段へDCバイアス制御電流を通すように構成されたDCバイアス電流回路を含む、
ことを特徴とする請求項14に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項16】
誘導RF電流の流れを自動的に妨げるための前記手段は、RFコイルと磁気共鳴イメージングシステムへの電気的インタフェースとの間に直列接続されることを特徴とする請求項14に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項17】
誘導RF電流の流れを自動的に妨げるための前記手段は、前記RFコイルの給電点に接続されることを特徴とする請求項16に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項18】
誘導RF電流の流れを自動的に妨げるための前記手段は、RFコイル内に直列接続されることを特徴とする請求項14に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項19】
RF送信機能及びRF受信機能を有する接続可能なRFコイルアセンブリが磁気共鳴イメージングシステムから分離されても作動中の磁気共鳴イメージングシステムのRF場に磁気的に連結された位置に残されている場合に、当該RFコイルアセンブリを誘導RF電流から保護するRFコイルアセンブリの保護方法であって、
前記RFコイルアセンブリが使用中であるときに、磁気共鳴イメージングシステムへの電気的インタフェースを含む当該RFコイルアセンブリ内の各RFコイルに可変インピーダンス素子を直列に配置し、
前記RFコイルアセンブリが、磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないとき、過度の誘導RF電流の流れから当該RFコイルアセンブリを保護するために、当該RFコイルアセンブリが磁気共鳴イメージングシステムから切断されるとき、前記可変インピーダンス素子のインピーダンスを変更すること、を含み、
前記可変インピーダンス素子は、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないときに高く、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF送信機能が動作するときに低く、及び、
前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されているときであって前記RF受信機能が動作するときに低くなるように、
3つの動作状態それぞれに対応するようにインピーダンス状態が制御されることを特徴とする保護方法。
【請求項20】
前記インピーダンスを変更するステップが、前記電気的インタフェースを介して前記可変インピーダンス素子に流れるDCバイアス電流を前記可変インピーダンス素子から除去するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、全体として、RF(Radio Frequency)コイルがRF送信機能を有する磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)用のRFコイルアセンブリ(たとえば、送信/受信RFコイルアセンブリ)の構成要素内における誘導高周波(RF)電流からのフェールセーフ保護(安全保護)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRI用の送信/受信RFコイルアセンブリ(すなわち、または、局所送信機能を有する送信専用コイルアセンブリ)は、MRIシステムへの接続部から切り離されているとき(すなわち、使用されていないとき)、撮像工程中の強いRF磁場の影響下にあるMRIシステムの架台領域内に間違って残される場合がある。そして、送信/受信RFコイルアセンブリが、送信のデカップリング手段を備えていない場合には、RFコイルアセンブリの各種構成要素内に大きな誘導RF電流が流れる可能性がある。そのため、通常、着脱可能なRF受信専用コイルは、あらかじめ内蔵保護装置を備えている(たとえば、それら受信専用コイルは、撮像される被検体から発せられる弱いRF磁場のみが存在する場合に限って受信可能となる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5136244号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】L.Kyle Hedges,”A Fuse for Magnetic Resonance Imaging Probes”,Mag Res Med,Vol.9,pages 278−281 (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般的に、送信機能を有する着脱可能なRFコイル(たとえば、送信/受信コイル)は、適切な内蔵自動保護装置を備えていない。内蔵自動保護装置は、大きな誘導RF電流を受けた後もRFコイルアセンブリを損傷させないように保ち、誘導RF電流を受けている間中も、RFコイルアセンブリに接触している被検体その他に対してRFコイルアセンブリの安全性を保ち、かつ、誘導RF電流を受けた後も直ちにRFコイルアセンブリの使用を(たとえば、RFコイルアセンブリのヒューズなどのあらゆる構成要素を交換する必要もなく)続けることができるように準備された状態にしておくものである。なお、大きな誘導RF電流は、送信または送信/受信RFコイルアセンブリに損傷を与えたり、アセンブリ表面の温度を非常に高くする可能性があるので、このアセンブリに接触した被検体や他の人を危険にさらしたりする可能性がある。たとえば、そのような大電流は、(たとえば、その瞬間、大型の内蔵固定RFコイルのような他のRF送信コイルの使用によって)一部の構成要素を過熱させる可能性があり、撮像されているあらゆる被検体に火傷を負わせる恐れのある危険を与える場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのような誘導RF電流から送信専用RFコイルまたは送信/受信RFコイルを保護するための安全保護を実現するために、後述のいくつかの実施形態では、好適な可変インピーダンス(たとえば、電気制御式スイッチ)およびそれぞれ対応する方法を使用する。実施形態では、そのような可変インピーダンスは、RFコイルをMRIシステムに接続したときに自動的に出力される電気制御電流に応じて、異なるインピーダンスの値に変化する。そのような「接続」状態では、電気的に制御されたインピーダンスによって、MRIシステムと保護付きRF送信/受信コイルとの間で実質的に妨害を受けることなくRF電流が流れるようになる(すなわち、接続受信モードと接続送信モード)。しかし、フェールセーフ「非接続」状態では、送信/受信RFコイルアセンブリ内で有害な誘導RF電流が流れるのを実質的に妨害するように、可変インピーダンスの異なるインピーダンス状態が構成される。実際には、このスイッチは、3モードを有する。すなわち、2つの「接続」MRI動作モード、および1つのフェールセーフ「非接続」MRI非動作モードである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、送信/受信RFコイルアセンブリ内の誘導RF電流からの安全保護を含むMRIシステムの実施形態を示す。
【
図2】
図2は、
図1の実施形態に使用できる種類の送信/受信RFコイルアセンブリの実施形態の概略ブロック線図である。
【
図3A】
図3Aは、MRIシステムがRF磁場送信中に、MRIシステム内に非接続状態で残された場合に、MRIシステム内の周囲RF磁場からの誘導電流の影響下にある従来技術の装置で通常見られるようなRF送信/受信コイル要素とその給電回路との概略等価回路を示す。
【
図3B】
図3Bは、意図しない誘導RF電流にさらされるが、フェールセーフ電気制御式スイッチの実施形態によって当該誘導RF電流から保護されるRF送信/受信コイル要素のための概略等価回路を示す。
【
図4】
図4は、送信/受信RFコイルアセンブリの誘導RF電流からの安全保護を備えるために使用できる典型的な電気制御式スイッチの概略線図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した線図に類似するが、DCバイアス回路の部品が含まれている実施形態のより詳細な概略線図である。
【
図6】
図6は、送信/受信RFコイルアセンブリの誘導RF電流からの安全保護を備えるために使用できる電気制御式スイッチの他の実施形態の概略回路線図である。
【
図7A】
図7Aは、安全スイッチがRF送信/受信コイル要素の給電点以外の位置に置かれている他の実施形態を示す。
【
図7B】
図7Bは、安全スイッチがRF送信/受信コイル要素の給電点以外の位置に置かれている他の実施形態を示す。
【
図8】
図8は、安全スイッチがRF送信/受信コイル要素の給電点以外の位置に置かれている他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す典型的なMRIシステムの実施形態は、架台10(概略断面で示す)と、互いに接続され機能する各種の関連システム構成要素20とを含む。少なくとも架台10は、通常、シールドルームに配置される。
図1に示す一つの典型的なMRIシステムの形状は、実質的には静磁場B
0磁石12と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット14と、内蔵固定型のRFコイルアセンブリ15とが同軸円筒状に配置される。この円筒状の配置の水平軸線に沿って、実質的には被検体テーブル11によって支持された被検体9の頭部を取り囲むように示された撮像領域18がある。
【0009】
MRIシステム制御部22は、表示部24、キーボード26、およびプリンタ28に接続される入力/出力ポートを備える。言うまでもなく、表示部24は、制御入力もまた備えるような多様性のあるタッチスクリーンであるとよい。
【0010】
MRIシステム制御部22は、MRIシーケンス制御部30とインタフェース接続し、MRIシーケンス制御部30は、順次、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信部34、および送信/受信スイッチ36を制御する。MRIシーケンス制御部30は、MRIシーケンス制御部30に有用なMRIシーケンスを実行するための適切なプログラムコード構造38を含む。
【0011】
各種の関連システム構成要素20からなるMRIシステムは、表示部24へ送るための処理された画像データを作成するMRIデータ処理部42に入力を供給するRF受信部40を含む。本実施形態では、着脱可能な送信/受信RFコイルアセンブリ16のプリアンプ63に相互接続インタフェース16a、16bを介して接続されたRF受信部40を示す。しかし、当業者には明らかであるが、RF受信部40は、
図1に不図示の別な制御方式のRFスイッチ回路を介して、他のRFコイルに接続してもよい(たとえば、MRIシステムの内蔵固定型のRFコイルアセンブリ15からの接続を
図1に点線で概略的に示す)。
【0012】
MRIデータ処理部42はまた、(たとえば、実施形態およびプログラムコード構造44に従った処理から得られたデータを格納するために)プログラムコード構造44および記憶装置46にもアクセスできるように構成してもよい。
【0013】
また、
図1には、MRIシステムプログラム格納部50が一般化されて示されている。MRIシステムプログラム格納部50では、格納されるプログラムコード構造は、MRIシステムの各種データ処理構成要素にアクセス可能なコンピュータ可読格納媒体に格納される。当業者には自明であるが、MRIシステムプログラム格納部50は分割され、少なくともその1部分は、正常使用時にそのような格納されたプログラム構造がすぐに必要なシステム処理コンピュータに直接接続されてもよい(すなわち、MRIシステム制御部22に普通に格納したり、直結したりする代わりに)。
【0014】
実際のところ、当業者には自明であるが、
図1は、本明細書で後述する実施形態を実行できるように若干の変更を加えた一般的なMRIシステムの非常に高度に簡素化した線図を示している。システムの構成要素は、各種論理集合の「ボックス」に分けられ、通常、多数のデジタル信号処理装置(DSP)、超小型演算処理装置、特殊用途向け処理回路(たとえば、高速A/D変換、高速フーリエ変換、アレイ処理用など)を含む。これら処理装置のそれぞれは、通常、各クロックサイクル(または所定数のクロックサイクル)が発生すると、物理データ処理回路がある物理的状態から他の物理的状態へ進むクロック動作型の「ステートマシン」である。
【0015】
動作中に、処理回路(たとえば、CPU(Central Processing Unit)、レジスタ、バッファ、計算ユニット、など)の物理的状態が、あるクロックサイクルから他のクロックサイクルへ漸進的に変化するだけでなく、連結されているデータ格納媒体(たとえば、磁気記憶媒体のビット格納部)の物理的状態も、そのようなシステムの動作中に、ある状態から他の状態へ変わる。たとえば、撮像工程の終了時、物理的格納媒体のコンピュータ可読アクセス可能データ値格納場所のアレイは、いくつかの事前の状態(たとえば、全部一律の「ゼロ」値、または全部「1」値)から新しい状態に変わる。その新しい状態では、そのようなアレイの物理的場所の物理的状態は、最小値と最大値の間で変動し、現実世界の物理的事象および状況(たとえば、撮像される体積空間内の物理的構造)を表現する。当業者には自明であるが、格納されたデータ値のそのようなアレイは、物理的構造を表しかつ構成する。つまり、命令レジスタの中に順次読み込まれてMRIシステムの1つ以上のCPUによって実行されたときに、動作状態の特定シーケンスを発生させてMRIシステム内で転送させるコンピュータ制御プログラムコードの特定構造を表しかつ構成するようにである。
【0016】
図1の実施形態に示すように、送信/受信RFコイルアセンブリ16は、取り外しができ(たとえば、いくつかの撮像手順で使用される他の着脱可能なRFコイルアセンブリや取り外せないように設置されたRFコイルアセンブリ15のために(たとえば、送信されたRFを固定されたRFコイルアセンブリ15または着脱可能なコイルアセンブリの接続インタフェース16bに通すことができるコイルスイッチ17参照))、かつ手動で接続したプラグ/ソケットアセンブリインタフェース16a、16bを介してMRIシステムから手動で切り離すことができるように構成される。さらに、電気制御式フェールセーフ安全スイッチ60a、60bが、着脱可能な送信/受信RFコイルアセンブリ16に含まれる(たとえば、複数のRFコイル要素が存在する場合は、それぞれに対して1つずつ含まれる)。
【0017】
図1の実施形態では、典型的な着脱可能な送信/受信RFコイルアセンブリ16は、たとえば、複数のコイル要素を含む直交検波(QD)RF「ヘッド」コイルを構成してもよい。これら複数のコイル要素それぞれは、MRIシステムの架台10内で撮像される被検体(たとえば、被検体の頭部)にRF場を電磁的に結合させるように構成される。明らかなように、実施形態で提供した安全保護は、直交コイルに限定されるものではなく、たとえば、アレイ型送信コイルやアレイ型送信/受信コイルなどで利用されてもよい。
【0018】
典型的な送信/受信RFコイルアセンブリ16のより詳細なブロック線図を
図2に示す。当業者には自明であるが、一般的なQDヘッドコイルは、空間的かつ電気的に互に対して90度偏移する2つのRFコイル要素(たとえば、RFコイル要素61a、61b)を含む。そのため、
図2には、2つのRFコイル要素間で電気的RF位相偏移をもたらすための90度ハイブリッド電力結合器/分配器の概略図が含まれている。当業者には自明であるが、そのようなハイブリッド電力結合器/分配器は、(
図2に概略示したように)送信/受信スイッチ内、または送信/受信スイッチの前後のいずれか(たとえば、MRIシステム内で離れた位置に置かれた電力増幅器とコイルループ要素との間のいずれか)に配置されるとよい。当然のことながら、このような位相偏移は、すべての多重コイル要素RFコイルアセンブリで必ずしも必要になるとは限らない。
【0019】
本実施形態では、フェールセーフ安全スイッチ(たとえば、安全スイッチ60a、60b)は、各RFコイル要素と直列に接続される。すなわち、本実施形態では、各RFコイル要素とそれぞれ連動する別個に直列接続された安全スイッチが用いられる。しかし、当業者には自明であるが、特定のRFコイルアセンブリ構成では、フェールセーフ安全スイッチの他の配置が効果的であることが明白な場合もある(たとえば、スイッチが、RFコイル要素の給電点、RFコイル要素の内部、またはRF回路内の他の好適なRF波長に関連したインピーダンスに敏感な制御位置に配置されてもよい)。
【0020】
送信/受信スイッチ36(MRIシステムの一部として離れた場所に配置されてもよい)は、シーケンス制御部30によって制御され、特定のデータ収集シーケンス、もちろん特定のRFコイルアセンブリ構造/構成に適したように、MRIシステムの適切なRF送信部(RF送信/増幅回路)34またはRF受信部(RF受信回路)40を他のRFコイル要素に有効に接続する。送信/受信スイッチが必要とされない場合は、専用の分離型送信用RFコイルおよび受信用RFコイルを使用してもよい。
図2の実施形態では、好適なRF受信バッファ/プリアンプ回路63を送信/受信RFコイルアセンブリ16内に共同配置する。もちろん
図2に概略的に図示したように、複数Nの受信チャンネルを収容するために複数の受信アンプがあるとよい。また
図2にも示したように、送信/受信RFコイルアセンブリ16は、プラグ接続インタフェース16a(およびMRIシステムに付随する結合ソケット16b)を介してMRIシステムに手動接続するのに好適である。
【0021】
図2の実施形態では、RFコイル要素と送信/受信スイッチとのインタフェース接続は、同軸ケーブル伝送線64、65の全長(たとえば、60cmほどの長さ)を介して行われる。もちろん「ケーブル」の代わりに他のインタフェース接続回路が採用されてもよい。通常、そのようなインタフェース回路は、50オームの特性インピーダンスを有する伝送線回路を含むとよい。
図2の実施形態では、安全スイッチ60a、60bは、安全スイッチと送信/受信スイッチ36との間に延在する相互連結伝送線長64、65と共にコイル要素給電点に近接して配置および接続されるのが望ましい。しかし、明らかなように、安全スイッチに対する他の適切な機能的位置が採用されてもよい。
【0022】
当業者には自明であるが、送信/受信RFコイルアセンブリ16は、通常、特定の被検体の身体部分(たとえば、この典型的な事例では頭部)を収容するように、好適な筐体内に機能的かつ美的に配置される。
【0023】
RFコイル要素、送信/受信スイッチ、送信アンプ、受信アンプ、MRIシステムなどの構造は、従来設計のものでよいので、これらの要素に対するさらなる詳細な記述は必要ない。しかし、本実施形態では、関連するRF構成要素によるDCバイアス回路が既存でない場合、MRIシステムから(単数または複数の)安全スイッチへDCバイアス電流を通すために、必要に応じてコネクタ16a、16bおよび各種のRF回路を介して(たとえば、DCバイアス電流を通すための好適なローパス周波数フィルタ要素(たとえば、インダクタ)や、ハイパスDCブロッキングコンデンサを使用することによって)、DCバイアス回路が形成される。
【0024】
図2の実施形態では、安全スイッチ60a、60bは、各対応するRFコイル要素内の適切なインピーダンス制御点またはRFコイル要素に接続された少なくとも1つの可変インピーダンス素子を有する電気制御式スイッチを含む。可変インピーダンス素子は、プラグ16aをMRIシステムに接続するたびに、MRIシステムから自動的に出力される電気制御信号(たとえば、DCバイアス制御電流)に応じて異なるインピーダンス状態の間で、電流の流れに対するインピーダンスを変えるように構成される。DCバイアス電流の経路は、DCバイアス制御電流を安全スイッチ60a、60bへも誘導する構成要素であるRF受信アンプ63と、RF送信部34と、コイルスイッチ17と、送信/受信スイッチ36と、接続インタフェース16aおよび16bと、プリアンプ63と、同軸ケーブル伝送線64および65とを含むRF回路内に形成するとよい。フェールセーフモードでは(すなわち、送信/受信RFコイルアセンブリ16が、プラグ16aを介してMRIシステムに接続されていないとき)、DCバイアス制御電流が利用できないため、安全スイッチ60a、60bは、たまたま送信/受信RFコイルアセンブリ16が架台領域内に間違って残されてしまい、MRIシステムが動作したときに送信/受信RFコイルアセンブリ16が非常に強いRF磁場にさらされることにより発生する、コイル要素へ向かう誘導RF電流を減らすインピーダンス状態に戻る。
【0025】
一方、送信/受信RFコイルアセンブリ16が手動操作式プラグインタフェースコネクタ16aを介してMRIシステムに接続されると、DCバイアス制御電流が安全スイッチに供給され、このバイアス制御電流によって、可変インピーダンス素子が異なったインピーダンス状態に移行される。この異なったインピーダンス状態では、送信/受信RFコイルアセンブリ16を使用する撮像手順の間、送信/受信RFコイルアセンブリ16との往路や復路で、実質的に妨害を受けることなくRF電流が流れるようになる。
【0026】
図2の実施形態では、図示されるとおり、RFコイル要素61a、安全スイッチ60aおよび伝送線64は、MRIシステムに手動で(この特定事例では間接的に)接続されるRFコイルデバイスサブアセンブリを構成する。RFコイル要素61aは、MRIシステムの架台内で撮像される被検体(たとえば、被検体の頭部)に送信し、あるいは、被検体から受信するRF磁場に電磁的に結合するように構成される。電気制御式の安全スイッチ60aは、RFコイル要素61aに関連付けられている適切なインピーダンス制御点に接続された少なくとも1つの可変インピーダンス素子を有する。この可変インピーダンス素子は、RFコイルデバイスをMRIシステムに接続したときに出力される電気制御電流または信号(たとえば、DCバイアス電流)に応じて、第1のインピーダンス状態と第2の異なるインピーダンス状態との間で、電流の流れに対するインピーダンスを変えるように構成される。
【0027】
本実施形態では、送信/受信RFコイルデバイスサブアセンブリもまた、送信/受信スイッチ36を含むと考えることができる。この実施形態では、送信/受信スイッチ36を送信/受信RFコイルアセンブリの一部として含めて、RF電流およびDCバイアス電流の両方をRF送信/受信回路に往復通過させるように構成する。なお、そのような送信/受信スイッチは、実施形態によってはMRIシステム内でより遠くに配置されてもよい。
【0028】
典型的なデバイスサブアセンブリは、このデバイスサブアセンブリの一部として、通常、MRIシステム内のRF受信部40に(接続インタフェース16a、16bを介して)手動で接続も可能なRF受信プリアンプ回路63を含むことができる。通常、RF受信プリアンプ63は、RFコイル要素に比較的近接して配置される。
【0029】
自明なように、この実施形態では、送信用RF回路または受信用RF回路の少なくとも1つは、MRIシステムから発せられ(かつMRIシステムに沿ってRF電流と並行して補助DCバイアス電流経路を通過し)、少なくとも(単数または複数の)可変インピーダンス素子の方へ進むDCバイアス制御電流を通すように構成する。
【0030】
当業者には自明であるが、
図2のN番目の要素までつながる一連の点によって表したように、単一のRF入/出ポート、対になったRF入/出ポート、またはそれ以上のRF入/出ポートを有するRFコイルアセンブリがあってもよい。特に、いくつかの現在公知のRFコイルアセンブリでは、(たとえば、改善された画質、特に高静磁場レベル用には)4つの独立したRF入/出ポートが利用されている。
【0031】
図3Aでは、コイル要素80を有する一般的な従来技術の回路の概略等価回路を示す。このコイル要素80は、他のコイルを使用する撮像手順の間、MRI架台内に非接続の状態で放置された場合に、コイル要素80に結合された強いRFのB1磁束81にさらされる可能性がある。
図3Aに示すように、給電回路(インタフェース伝送経路64、送信/受信スイッチ36、RF受信アンプ63、および
図2に示すコネクタ16aを通る好適な電気インタフェース回路(たとえば、他のRF伝送経路)を含む)は、
図3Aに示す簡略化された等価LCR回路としてみなすことができる。所与の装置内に流れる正確な電流値は大きく変動する場合があるが、
図3Aには、誘導電流として発生しうるシミュレートされた電流の大きさを示す。たとえば、3アンペアの電流がRF給電回路に流れる(そして越える)可能性があると同時に、4.7アンペアの電流がコイル要素80自体に流れる可能性があると考えられる。コイル要素およびキャパシタンスは、比較的低損失部品であるため、それらはあまり発熱しないと思われる。しかし、自明なように、そのような大きな誘導RF電流(特に時間が経つにつれて)は、より損失の大きい(すなわち、抵抗値の大きい)給電回路の部品や、周囲のRF磁気エネルギをより効率的に吸収できる遠方に連結された回路を実質的に加熱する可能性がある。この加熱は、そのような構成要素に(おそらく交換を必要とするほどひどく)損傷を与えたり、むしろ極端な高温を発生させたりする可能性があり、従って、そのような置き場所を誤ったRFコイルアセンブリに接触する可能性がある技術者や被検体、または、偶然に接触する可能性がある技術者や被検体の安全を脅かすことになる。たとえば、表面温度は、(従来技術の回路ではヒューズが含まれていたとしても、ヒューズが飛ぶ前でさえ)41℃以上に達する可能性がある。そのような極端な高温は、そのような置き場所を誤ったRFコイルアセンブリに接触した被検体、技術者およびその他のものに重傷を負わせる原因となる。
【0032】
図3Bでは、給電回路(連結されているあらゆる遠方の回路を含む)の抵抗性インピーダンスを大幅に(たとえば、50オームから1000オームに)増加した場合の実施形態における等価回路を概略的に示す。この実施形態では、
図3Aと同様に想定されたシミュレーションの条件のもと、シミュレートされた典型的な誘導電流が(給電回路と、連結されているあらゆる遠方の回路との両方の回路内で)大幅に減少していることがわかる。RFコイルアセンブリ内の典型的な誘導電流は、ほぼ正常使用の水準にまで減少していると同時に、給電回路内ではさらに大幅に誘導電流が減少し、それによって、全RFコイルアセンブリ内では、たとえあったとしても、非常に小さい有効発熱しか起こさないようになる。
【0033】
この用途に使用するために好適な電気制御式スイッチのより詳細な実施形態を
図4の概略線図に示す。
図4では、インダクタL1−4と、コンデンサC1−4およびC2−4とを含む並列LC回路は、MRIシステムの所定のRF動作周波数(たとえば、1.5テスラシステムで約63.86メガヘルツ、および3テスラシステムで約127.73メガヘルツ)で並列共振(すなわち、最大インピーダンス)を生じさせるために必要な大きさに形成されている。また、逆向きに接続された対になったダイオードD1−4およびD2−4が、並列LC回路の少なくとも一部の両端に接続され、両ダイオードが順バイアスされたときに(これにより、LC回路が共振からデチューン(detune)する(外れる))、低下したRFインピーダンスが生じるように構成される。このようにして、低下した非共振インピーダンスが、所望のRF撮像電流が実質的に妨害を受けることなくコイル要素へ流れることを可能にする。しかし、両ダイオードが順バイアスされないとき(たとえば、RFコイルアセンブリがMRIシステムに接続されていないとき)に、接続されていないコイルデバイスが、RF送信場(たとえば、コイル要素/給電回路の部品内で危険なRF電流を誘導すると想定される他のRFコイルからのRF磁場)にさらされる可能性があるMRIシステム位置内にそれでもなお放置されている場合には、逆向きに接続されたダイオードが、誘導RF電流の流れを実質的に遮断する実質的な並列共振インピーダンスをLC回路に生じさせておく。
【0034】
本実施形態として、RFコイルアセンブリの3つの動作状態、フェールセーフスイッチのインピーダンス状態、およびDCバイアス制御電圧の間の典型的な関係を表1に示す。
【0036】
図5のより詳細な実施形態は、インダクタL2−5、L3−5およびコンデンサC1−5を介して形成される典型的なDCバイアス制御電流経路を含む。自明なように、コンデンサC1−5は、所望のRF動作周波数で実質上の短絡を引き起こすために必要な大きさにする。この実施形態では、並列共振LC回路は、インダクタンスL1−5および直列接続されたコンデンサC2−5、ならびに、直列に接続された対になった(並列接続された)コンデンサC3−5、C4−5、C5−5、C6−5を含む。(たとえば、バッテリBで概略表示した)DCバイアス電流源は、MRIシステムの一部として遠方に配置される。したがって、
図5では、DCバイアス電流源を点線接続で示している。
【0037】
図5の実施形態では、フェールセーフスイッチ100は、(インピーダンス整合を行うために適した大きさにした)インダクタL16およびDCブロッキングコンデンサC96、C97を介して、RFコイル要素の給電点に接続されるのが望ましい。しかし、以下でより詳細に説明するように、RFコイル要素やRFコイル要素のRF給電経路にある他の好適なインピーダンス制御点が、フェールセーフスイッチ100のための位置として選択されてもよい。
【0038】
図5の実施形態では、逆向きに接続された対になったPINダイオードが、並列共振LC回路のキャパシタンスの部分のみの両端に接続されるので、PINダイオードの両端で電圧を下げることができ、したがって、非接続フェールセーフ状態の間中、最大ダイオード温度を抑える効果がある。しかし、共振LC回路の分割キャパシタンスの比率によっても、正常接続モードにおける実効RF損失を変えることができる(正常接続モードで望ましいインピーダンス整合が実現できると同時に、回路内の比較的高いインダクタンス値を実現できた場合、その高いインダクタンス値を使うことによって、実効RF損失を多少抑制できるであろう)。当業者には当然のことであるが、すべての実施形態で回路値を必要な大きさにするためには、所与の特定RFコイルアセンブリおよび関連するMRIシステムに対する回路部品の値の最適な組を見出すためのいくらかの設計トレードオフおよび試行錯誤を行うことになる。
【0039】
フェールセーフスイッチ102の他の詳細な実施形態を
図6に概略的に示す。この図では、並列共振LC回路は全く含まれていない。その代り、同じ向きに直列接続された複数のダイオードD1−6、D2−6およびD3−6と、これらのダイオードと反対の向きに直列接続された複数のダイオードD4−6、D5−6およびD6−6とが含まれる。好適なDCバイアス制御回路は、インダクタL1−6、L2−6、L3−6、およびコンデンサC1−6、C2−6によって形成される(たとえば、RF同軸ケーブルの中心の導線とシステム接地との間の点線で接続されたバッテリBとして
図6に概略的に示したMRIシステムの電源からDCバイアス電流を伝えることができる)。(たとえば、RFコイルアセンブリの一部として含まれている場合には、送信/受信スイッチおよび他のRF回路を介して)MRIシステム内に非接続の状態で残された場合、これらの複数の逆向きに接続されたバイアスされていないダイオードは、誘導電流の流れを実質的に遮断する相当なインピーダンスを引き起こす。しかし、フェールセーフスイッチ102をMRIシステムに接続した場合には、DCバイアス制御電流がすべてのダイオードを順バイアスするので、RFインピーダンスの低下が引き起こされるので、RF撮像電流は、それぞれ関連するコイル要素への往復で実質的に妨害を受けることなく流れることが可能になる。繰り返しになるが、インピーダンス整合インダクタンスL17はコイル要素への給電点に設けられ、この実施形態でも同様に、DCブロッキングキャパシタンスC98、C99が採用される。
【0040】
また、
図6の実施形態では、各ダイオードの両端で並列接続された抵抗が用いられる。抵抗R1、R2、R3、R4、R5、R6は、実質的には等しい抵抗値(たとえば、4.4Kオーム)のものであり、ダイオードが誘導電流(すなわち、誘導電流にさらされ、かつ順バイアス制御電流が存在しないとき)によって同時に逆バイアスされている間、同一極性方向を有するダイオードの両端で実質的に等しいRF誘導電圧の降下を生じさせる。
【0041】
図6の実施形態では、複数対の逆向きに接続されたダイオードを使用すると、誘導RF電流の流れから発生される熱の発散に効果がある。
【0042】
本実施形態では、ダイオードは、比較的高い逆降伏電圧特性(たとえば、500ボルトより高い)と比較的小さい順抵抗とを有するPINダイオードであるとよい。通常、約150ミリアンペアのバイアス電流で十分といえる。
【0043】
本実施形態によれば、(非接続状態の)等価回路の実効線質係数(すなわち、Q値)が(おそらく20倍まで)高まるため、RFコイル要素自体の発熱量を確実に比較的少なくできるようになる。可能であれば、スイッチの実効高抵抗状態(たとえば、MRIシステムに非接続の場合)を、約1キロオーム以上にするのがよい。
【0044】
いくつかの典型的な現在入手可能な好適なPINダイオードは、Macom Technology社からダイオード部品番号MA4P7470F−1072T(800ボルトの逆降伏電圧を有する)、またはMA4P7446F−1091(600ボルトの逆降伏電圧を有する)として購入可能である。いかなる可変インピーダンス素子を使用しても、逆降伏電圧は、比較的高くするのがよい(たとえば、望ましくは、QDヘッドコイルの分野で使用する場合、少なくとも500ボルト)。
【0045】
図5の実施形態は、通常の部品選択であれば、約5オームの等価低インピーダンス抵抗を有する。一方、
図6の実施形態では、同様の部品選択のために、約1.8オームの等価低抵抗を用いてもよい。状況によっては、より低い抵抗での実施形態が好ましいかもしれないが、どちらの実施形態も、適切な設計がされていれば、おそらく殆ど等しく良好な結果が得られるであろう。
【0046】
なお、実施形態の電気制御式スイッチは、RFコイル給電点に比較的近い誘導RF電流接続路の流れを効果的に絶縁するのが望ましい。すなわち、典型的な電気制御式スイッチは、RFコイル要素給電点に極力近付けて配置されるのが望ましい。その結果として、比較的少量の誘導RFエネルギが、送信/受信スイッチと他のより遠方の(すなわち、よりMRIシステムに近い)RF回路の部品に伝達される。同時に、給電点での誘導RF電流による発熱もまた低減される。
【0047】
安全スイッチを望ましくはコイル給電点に配置した実施形態を説明してきたが、安全スイッチは、あるいは、
図7A(単一ループ型)および
図7B(バードケージ型)に示すRFコイル要素のループの1つまたは複数の中で直列に配置されてもよい。または、安全スイッチは、
図8に示すように、給電点から1/2波長(または1/2波長の整数倍)離れた電気的に等価なインピーダンス制御位置に配置されてもよい。もちろん、安全スイッチの他の好適なインピーダンス点が、給電点から1/4波長(または1/4波長の奇数倍)離れた位置であってもよい(この場合、可変インピーダンスの高インピーダンス状態および低インピーダンス状態は、安全スイッチを給電点から1つ以上の1/2波長の位置に配置した場合と比較して、同等のコイルモードを達成するためには逆転されることになるであろう)。
【0048】
上述したように、実施形態に係るRFコイルアセンブリは、RF送信機能を有し、かつ磁気共鳴イメージングシステムに接続可能なRFコイルアセンブリであって、RFコイルと、RF給電回路と、少なくとも1つの可変インピーダンスとを備える。前記RFコイルは、RF電流が流れたときに、磁気共鳴イメージングシステムの架台内で撮像される被検体にRF場を磁気的に送信するように構成される。前記RF給電回路は、磁気共鳴イメージングシステムとの接続インタフェースから前記RFコイルへRF電流を給電するように構成される。前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、前記RFコイルおよび前記給電回路のうちの少なくとも1つの内部または少なくとも1つに電気的に接続されており、前記磁気共鳴イメージングシステムから切断された前記RFコイルアセンブリに呼応して、RF電流の流れに対するインピーダンスを異なる第1および第2のインピーダンス状態の間で変えるように構成され、前記RFコイルアセンブリが前記磁気共鳴イメージングシステムに接続されていないとき、過大な誘導RF電流の流れから前記コイルアセンブリを保護する。なお、例えば、RFコイルアセンブリは、磁気共鳴イメージングシステムに手動で接続されてもよい。また、磁気共鳴イメージングシステムとの接続インタフェースは、手動操作式接続インタフェースであってもよい。また、前記少なくとも1つの可変インピーダンスは、過大な誘導RF電流の流れから前記コイルアセンブリを自動的に保護するように構成されてもよい。
【0049】
本発明のある特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は、単なる事例として提示したのであって、本発明の範囲を限定するものではない。実際、本明細書で説明した新奇の方法およびシステムは、各種の他の態様で具体化が可能である。さらには、本明細書で説明した方法およびシステムの態様の各種の省略、置換、および変更が、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。添付の特許請求の範囲およびその均等物は、本発明の範囲と精神に収まると考えられる態様または変更を有効範囲に含むためのものである。
【符号の説明】
【0050】
16 送信/受信RFコイルアセンブリ
16a、16b 相互接続インタフェース
36 送信/受信スイッチ
60a、60b 安全スイッチ
61a、61b RFコイル要素
63 RF受信アンプ
64、65 インタフェース伝送経路