特許第5903266号(P5903266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5903266椅子の座若しくは背凭れ、並びに椅子の座若しくは背凭れの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903266
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】椅子の座若しくは背凭れ、並びに椅子の座若しくは背凭れの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 5/06 20060101AFI20160331BHJP
   A47C 7/32 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A47C5/06
   A47C7/32
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-284912(P2011-284912)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132411(P2013-132411A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和男
(72)【発明者】
【氏名】岡本 功
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖教
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−033542(JP,A)
【文献】 特開平06−106571(JP,A)
【文献】 特開2001−224461(JP,A)
【文献】 特開2001−088231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 5/06
A47C 7/00− 7/74
B29B 7/00−11/14
13/00−15/06
B29C 31/00−31/10
37/00−37/04
45/00−45/24
45/46−45/63
45/70−45/72
45/74−45/84
71/00−71/02
D03D 1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における前記メッシュ部材の前記支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と直交する方向の織り糸同士の間隔を前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによって前記メッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくすることを特徴とする椅子の座若しくは背凭れ。
【請求項2】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における前記メッシュ部材の前記支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と同じ方向の織り糸同士の間隔を前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによって前記メッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくすることを特徴とする椅子の座若しくは背凭れ。
【請求項3】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における編みのループを前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に細かくすることによって前記メッシュ部材の編み目を他の部分よりも細かくすることを特徴とする椅子の座若しくは背凭れ。
【請求項4】
前記メッシュ部材と前記支持部材との一体成形の後にヒートセットによって前記メッシュ部材に必要な張力が付与されたものであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の椅子の座若しくは背凭れ。
【請求項5】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における前記メッシュ部材の前記支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と直交する方向の織り糸同士の間隔を前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによって前記メッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくし、当該織り目を細かくした部分を前記支持部材との結合部分として配置するように前記メッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うことを特徴とする椅子の座若しくは背凭れの製造方法。
【請求項6】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における前記メッシュ部材の前記支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と同じ方向の織り糸同士の間隔を前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによって前記メッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくし、当該織り目を細かくした部分を前記支持部材との結合部分として配置するように前記メッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うことを特徴とする椅子の座若しくは背凭れの製造方法。
【請求項7】
メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、前記メッシュ部材の周縁部であって前記支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における編みのループを前記支持部材との際における前記樹脂のばりの生成を防ぐ程度に細かくすることによって前記メッシュ部材の編み目を他の部分よりも細かくし、当該編み目を細かくした部分を前記支持部材との結合部分として配置するように前記メッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うことを特徴とする椅子の座若しくは背凭れの製造方法。
【請求項8】
前記一体成形の後にヒートセットによって前記メッシュ部材に必要な張力を付与することを特徴とする請求項5から7のうちのいずれか一つに記載の椅子の座若しくは背凭れの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の座若しくは背凭れ、並びに椅子の座若しくは背凭れの製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、メッシュ状の膜部材とその周縁部を保持する支持部材とからなる椅子の座若しくは背凭れに適用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、椅子の座や背凭れなど着座者の身体を支える構造として、着座者の身体を支える支持面を構成するメッシュ状の膜部材と当該膜部材の周縁を保持する樹脂製の枠状の支持部材とを備え、これら膜部材と枠状の支持部材とが一体成形されるものがある(特許文献1)。
【0003】
また、図6に示すように樹脂で形成された枠状の支持部材102と当該支持部材102の内側に張設されるメッシュ101(101a)とを一体成形する従来からの方法として、まず図7(A)に示すように留め具105bを用いて第二の金型105の上面上の孔部105aを塞ぐ位置にメッシュ101が広げられて設置され、続いて同図(B)に示すように屋根具110が下ろされるとメッシュ押さえ具112の押さえ部112bが第二の金型105上に張られたメッシュ101に接触してバネ部112cが縮んでメッシュ101が第二の金型105に押し付けられる。そして更に押すと第三の金型106の凸部106aが孔部105aを塞いでいるメッシュ101を第三の金型106の凸部106aで押して当該凸部106aが孔部105aに嵌挿されると共に、メッシュ101が第一の金型104と第三の金型106との間に挟まれて張設された状態で固定される。このとき、メッシュ101の一部は切取跡101cが形成される部分を象った第三の金型106の凸部106aと第二の金型105の孔部105aとの間の成形空間から外側に引き出されている(外側のメッシュ101b)。そして、ゲート108a,104b,104cを介して成形空間に樹脂が射出されて固化すると、枠状の支持部材102の内側のメッシュ101aが支持部材102に張設され、一方、枠状の支持部材102の外側のメッシュ101bが支持部材102の取付溝103から引き出されたメッシュ付き樹脂枠が形成される。そして、枠状の支持部材102の外側のメッシュ101bが切断されるようにするものがある(特許文献2)。なお、図7において、符号108は樹脂を射出可能な射出装置(図示していない)の射出口を表し、符号112aはメッシュ押さえ具112の本体部を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−137065号
【特許文献2】特開2004− 90521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
着座者の身体を支える支持面を構成する部材としてメッシュを用いる椅子では、一般的には通気性を重視することをコンセプトとしているため、メッシュ自体の織り方・編み方は着座者を支持可能な十分な強度を確保した上で密度の粗いもの、言い換えると、織り目・編み目が粗いものになっている。
【0006】
そして、このように織り目・編み目が粗い従来のメッシュでは、例えば特許文献2の方法のようにメッシュ101を金型にセットした状態で樹脂製の枠状の支持部材102を成形する場合に、メッシュ101を挟んだ上下の金型106,104のジョイント部分から内側のメッシュ101aの支持部材102との際(きわ)に樹脂が漏れ出した状態(織り目・編み目に樹脂が滲み出した状態)で成形され、内側のメッシュ101aの周縁部であって内側のメッシュ101aと支持部材102との際に樹脂のばりができてしまう。特に、上下の金型106,104のジョイント部分からの樹脂の漏れ出しを完全に防止するために上の金型106を下の金型104に強く押し付けるようにすると上下の金型106,104に挟まされたメッシュ101が押し潰されて損傷したり破れてしまったりするので、ジョイント部分からの樹脂の漏れ出しを完全に防止するほどには上の金型106を下の金型104に強く押し付けることができないという事情もある。そして、枠体からの樹脂の漏れ出し(滲み出し)によって生成されたばりによって、着座者の太ももや背中などにちくちくする不快感を与えてしまったり、皮膚を傷付けてしまったり、ストッキングを伝線させてしまったり、着衣を破いてしまったりすることがある。このため、快適性や安全性が損なわれてしまうという問題がある。そこで、従来のメッシュでの製造工程では、最後にばりを取る作業工程が必要であり、作業工数の増加を招いていた。
【0007】
そこで、本発明は、メッシュの通気性を確保しつつメッシュ周縁部の支持部材との際(きわ)にばりが生成されることなくメッシュと支持部材とが一体成形された椅子の座や背凭れを提供すること、並びに、作業工数の増加を招くことなくメッシュの通気性を確保しつつメッシュ周縁部の支持部材との際にばりを生成させることなくメッシュと支持部材とを一体成形することができる椅子の座や背凭れの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の椅子の座若しくは背凭れは、メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲におけるメッシュ部材の支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と直交する方向の織り糸同士の間隔を支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによってメッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくするようにしている。
【0010】
また、請求項記載の椅子の座若しくは背凭れメッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲におけるメッシュ部材の支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と同じ方向の織り糸同士の間隔を支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによってメッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくするようにしている。
【0011】
また、請求項記載の椅子の座若しくは背凭れメッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における編みのループを支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に細かくすることによってメッシュ部材の編み目を他の部分よりも細かくするようにしている。
【0012】
また、請求項記載の発明は、請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の椅子の座若しくは背凭れにおいて、メッシュ部材と支持部材との一体成形の後にヒートセットによってメッシュ部材に必要な張力が付与されたものであるようにしている。
【0013】
したがって、これらの椅子の座若しくは背凭れによると、メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形による椅子の座若しくは背凭れにおいて、メッシュ部材の通気性が確保された上で、一体成形の金型のジョイント部分においてメッシュ部材の織り目・編み目に樹脂が滲み出ることが防止される。
【0014】
また、請求項記載の椅子の座若しくは背凭れの製造方法は、メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における前記メッシュ部材の前記支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と直交する方向の織り糸同士の間隔を支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによってメッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくし、当該織り目を細かくした部分を支持部材との結合部分として配置するようにメッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うようにしている。
【0016】
また、請求項記載の椅子の座若しくは背凭れの製造方法メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲におけるメッシュ部材の支持部材との際に樹脂が漏れ出す方向と同じ方向の織り糸同士の間隔を支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に狭くすることによってメッシュ部材の織り目を他の部分よりも細かくし、当該織り目を細かくした部分を支持部材との結合部分として配置するようにメッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うようにしている。
【0017】
また、請求項記載の椅子の座若しくは背凭れの製造方法メッシュ部材と樹脂製の支持部材との一体成形によって椅子の座若しくは背凭れを製造する際に、メッシュ部材の周縁部であって支持部材の内べりから内側に向けて所定の幅を有する範囲における編みのループを支持部材との際における樹脂のばりの生成を防ぐ程度に細かくすることによってメッシュ部材の編み目を他の部分よりも細かくし、当該編み目を細かくした部分を支持部材との結合部分として配置するようにメッシュ部材を金型に設置して一体成形を行うようにしている。
【0018】
また、請求項記載の発明は、請求項5から7のうちのいずれか一つに記載の椅子の座若しくは背凭れの製造方法において、一体成形の後にヒートセットによってメッシュ部材に必要な張力を付与するようにしている。
【0019】
したがって、これらの椅子の座若しくは背凭れの製造方法によると、メッシュ部材の通気性が確保された上で、一体成形の金型のジョイント部分においてメッシュ部材の織り目・編み目に樹脂が滲み出ることが防止された椅子の座若しくは背凭れが製造される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の椅子の座若しくは背凭れによれば、メッシュ部材の通気性を確保することができると共に一体成形の金型のジョイント部分においてメッシュ部材の織り目・編み目に樹脂が滲み出ることを防止することができるので、メッシュであることによる通気性を確保しつつ一体成形時のばりの生成を防止して快適性及び安全性を確保することが可能になる。
【0021】
また、本発明の椅子の座若しくは背凭れの製造方法によれば、作業工数の増加を招くことなくメッシュ部材の通気性を確保した上で一体成形の金型のジョイント部分においてメッシュ部材の織り目・編み目に樹脂が滲み出ることが防止された椅子の座若しくは背凭れを製造することができるので、メッシュであることによる通気性が確保され且つ一体成形時のばりの生成を防止して快適性及び安全性が確保された椅子の座若しくは背凭れを製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の椅子の全体構成を表す斜視図である。
図2】座の左右方向縦断面図である。(A)は実施形態の座の全体縦断面図である。(B)は実施形態の座の座フレームの一次成形後の当該フレーム及びその近傍の拡大縦断面図である。(C)は実施形態の座の座フレームの二次成形後の当該フレーム及びその近傍の拡大縦断面図である。
図3】座の平面図である。(A)は実施形態の座であってメッシュ部材の前縁部分の目が細かい座の平面図である。(B)はメッシュ部材の前縁部分及び後縁部分の目が細かい場合の座の平面図である。
図4】座の平面図である。(A)はメッシュ部材の左右縁部分の目が細かい場合の座の平面図である。(B)はメッシュ部材の周縁部全体に亘って目が細かい場合の座の平面図である。
図5】他の実施形態の座の座フレーム及びその近傍の拡大縦断面図である。
図6】樹脂製の支持部材とこれに張設されるメッシュ状の膜部材とを一体成形した従来のメッシュ付樹脂枠を示す斜視図である。
図7】樹脂製の支持部材とこれに張設されるメッシュとを金型を用いて一体成形する従来の方法を説明する図である。(A)は金型にメッシュを設置した状態を表す側面図である。(B)はメッシュ押さえ具でメッシュを固定した状態を表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1から図3に、本発明の実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、本発明の構造を図1に全体構造を示す椅子10の座1に適用した場合を例に挙げて説明する。また、本明細書においては、椅子10の座1に座った着座者を基準にして上下、前後、左右を定義する。また、各図に表されている本実施形態の椅子10に張られたメッシュ部材2は織り方のイメージであって厳密に図示されたものではない。
【0025】
本実施形態の椅子10は、座1と背凭れ5とを備えると共に、これら座1及び背凭れ5を支持するためのパイプフレーム11を有する。また、座1は、着座者の身体を支える支持面を構成するメッシュ部材2と、当該メッシュ部材2の周縁を保持し支持する部材としての座フレーム3とを有する。また、背凭れ5は、着座者の身体を支える支持面を構成する膜状部材6と、当該膜状部材6の周縁を保持し支持する部材としての背凭れフレーム7とを有する。
【0026】
パイプフレーム11は、一本のパイプを折り曲げ加工して形成され、座1の座フレーム3の左右側部3a,3aそれぞれを下から支持する座左右支持部11A,11Aと、背凭れ5の背凭れフレーム7の左右側部7a,7aそれぞれを後ろから支える背左右支持部11B,11Bと、背凭れフレーム7の上側部7bを支える背上支持部(背凭れフレーム7の上側部7bに隠れて見えない)と、パイプが矩形に折り曲げられてなる左右のサークル脚部11C,11Cとを有する。
【0027】
座フレーム3は、矩形枠状に形成され、パイプフレーム11の座左右支持部11A,11Aに載置され組み付けられて固定される。座フレーム3のパイプフレーム11の座左右支持部11A,11Aへの固定の仕方は、特定の方法・仕組みに限定されるものではなく、例えば、ねじ止めにしたり、或いは、座フレーム3の下面に一体として形成された若しくは後付けされた係止爪を座左右支持部11Aの係止穴に押し込むなどして引っ掛けるようにしたりしても良い。
【0028】
座フレーム3は、合成樹脂製であると共に、射出成形等によってメッシュ部材2の周縁部が一体化されて内側にメッシュ部材2が張設された状態で一体成形される。これにより、メッシュ部材2は周縁部が座フレーム3によって保持されて着座者を支持するための張力が維持される。
【0029】
座フレーム3の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂或いはポリエステルといった熱可塑性合成樹脂、或いは、熱硬化性合成樹脂が用いられ得る。また、座フレーム3は、全体が単一材質である必要はなく、強度が必要とされる箇所に部分的にグラスファイバーや炭素繊維などの補強材を充填するようにしても良い。
【0030】
メッシュ部材2としては、弾性を有すると共に着座者を支持可能なメッシュ状の膜部材(織物,編み物)が用いられる。なお、メッシュ部材2の材質は、弾性を発揮して着座者の体重を支持可能であると共に座フレーム3との一体化(一体成形)が可能であれば特定の材質に限定されるものではなく、織物・編み物として用いられ得るいずれの材質であっても良い。例えばポリエステル製のメッシュシートが用いられ得る。本実施形態では、メッシュ部材2として、経糸としてのポリエステル糸と緯糸としてのエラストマ性ポリエステル糸とが組み合わされて織られた織物が用いられ得る。なお、本実施形態では、前後方向の糸が経糸であり、左右方向の糸が緯糸であるとする。
【0031】
そして、本発明は、メッシュ部材2の周縁部であって座フレーム3との結合部分におけるメッシュ部材2の織り目・編み目を他の部分よりも細かくするようにしている。
【0032】
ここで、メッシュ部材2の周縁部であって座フレーム3との結合部分とは、メッシュ部材2の、当該メッシュ部材2と座フレーム3との接合位置及び当該接合位置よりも内側部分を指す。また、メッシュ部材2の周端部であって一体成形する際に座フレーム3内に埋没する部分を含めても良い。
【0033】
そして、メッシュ部材2の周縁部であって座フレーム3との結合部分の、メッシュ部材2の外べりからの幅(或いは、座フレーム3の内べりからの幅)は、特定の大きさに限定されるものではない。すなわち、メッシュ部材2と座フレーム3との一体成形の際にメッシュ部材2への座フレーム3成形のための樹脂の漏れ出しを防ぎ、メッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)におけるばりの生成を防ぐのに必要な大きさを少なくとも確保するように適宜設定される。
【0034】
本実施形態では、メッシュ部材2及び座フレーム3の前側部分におけるばりの生成を防止するため、メッシュ部材2と座フレーム3との結合部分としてメッシュ部材2の前縁部分2aの織り目を他の部分2bよりも細かくするようにしている(図3(A))。具体的には、前縁部分2aにおいて緯糸同士の間隔を他の部分2bの緯糸同士の間隔よりも狭くするようにしている。すなわち、本実施形態では、メッシュ部材2の前縁部分2aにおいてメッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)に樹脂が漏れ出す方向であって樹脂のばりが成長する方向である前後方向と直交する方向である左右方向の緯糸同士の間隔を狭くするようにしている。
【0035】
なお、織り目を細かくする程度は、特定の程度に限定されるものではなく、メッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)におけるばりの生成を防ぐのに必要な程度に適宜設定される。具体的には例えば、図3(A)に示す例であれば、メッシュ部材2の前縁部分2aにおける緯糸同士の隙間がほぼ無いことが好ましく、前縁部分2aにおける緯糸同士が密接して隙間が全く無いことが最も好ましい。
【0036】
座フレーム3は、内側フレーム3Aと当該内側フレーム3Aの外側周面を覆う外側フレーム3Bとからなり、射出成形等により、内側フレーム3Aの一次成形と外側フレーム3Bの二次成形とを経て両者が一体成形される。また、内側フレーム3Aとメッシュ部材2の周縁部とが一体化される。
【0037】
具体的には、図2に示すように、まず一次成形として内側フレーム3Aの平面視全周に亘って上面にメッシュ部材2が貼り付けられるように一体成形され(同図(B))、次に二次成形として上面にメッシュ部材2が貼り付けられた状態の内側フレーム3Aの外側周面(上面,側面,下面の一部)を覆うように外側フレーム3Bが一体化されて成形される(同図(C))。
【0038】
一次成形の際には、例えば、射出成形の金型内部に設けられた保持用突起にメッシュ部材2の周縁部が引っ掛けられたり或いは金型外部でメッシュ部材2の周縁部が保持されたりしてメッシュ部材2が金型に設置される。そして、メッシュ部材2の周縁部が金型のキャビティ内に収容されたまま当該キャビティ内に合成樹脂が射出されて硬化して内側フレーム3Aの射出成形が行われ、メッシュ部材2と一体化された状態で内側フレーム3Aが成形される。これにより、メッシュ部材2と内側フレーム3Aとが一体化される。
【0039】
ここで、メッシュ部材2への、椅子の座として必要な弾性力を発揮させる張力の付与は、上述のように金型に設置する際に予張力を与えておくようにしたり、一体成形後にヒートセットによって与えるようにしたり、或いは、金型設置の際の予張力の付与と一体成形後のヒートセットによる付与とを併用するようにしたりする。なお、ヒートセットとは、加熱した熱源をメッシュ部材に当接或いは接近させることでメッシュ部材を熱収縮させることによって予張力を付与することをいう。
【0040】
また、二次成形の際には、一体化されたメッシュ部材2と内側フレーム3Aとが二次成形用の金型に設置され、これらが金型のキャビティ内に収容されたまま当該キャビティ内に合成樹脂が射出されて硬化して外側フレーム3Bの射出成形が行われ、メッシュ部材2及び内側フレーム3Aに加えて外側フレーム3Bが一体化された状態で外側フレーム3Bが成形される。これにより、メッシュ部材2と座フレーム3(内側フレーム3A,外側フレーム3B)とが一体化された一体成形品として座1が得られる。
【0041】
なお、メッシュ部材2と座フレーム3とを一体化して一体成形する方法は、上述の射出成形法に限られるものではなく、圧縮成形法や注型法などの他の方法であっても良い。
【0042】
以上のように構成された椅子10の座1によれば、メッシュ部材2と樹脂製の支持部材である座フレーム3との一体成形による椅子10の座1において、メッシュ部材2の通気性が確保された上で、一体成形の金型のジョイント部分においてメッシュ部材2の織り目に樹脂が滲み出ることを防止することができる。
【0043】
また、以上のように構成された椅子10の座1によれば、メッシュ部材2の撓み量を部分的に変更して着座者が感じる座フレーム3への当たり感を減少させることができる。
【0044】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では本発明の構造を図1に全体構造を示す椅子10に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明が適用され得る椅子はこの椅子10に限られるものではなく、メッシュ部材と当該メッシュ部材が張設される支持部材・フレームとを有する構造を備える椅子に適用可能である。すなわち、椅子の用途や各部の形状などは特定のものに限定されないし、勿論、背凭れを備えない椅子であっても良い。
【0045】
また、上述の実施形態では本発明の構造を椅子の座に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明の適用対象は椅子の座に限られるものではなく、メッシュ部材と樹脂製の支持部材とが一体成形される構造であれば、例えば背凭れやヘッドレストや肘掛けなどの着座者の身体を支える支持面を有する構造に広く適用可能である。
【0046】
また、上述の実施形態では座1の座フレーム3の前部3bにおけるばりの生成を防ぐためにメッシュ部材2の前縁部分2aの織り目を他の部分2bよりも細かくするようにしているが(図3(A)参照)、メッシュ部材2の織り目・編み目を他の部分よりも細かくする場所は前縁部分2aに限られるものではなく、メッシュ部材2の周縁部の他の部分であっても良い。言い換えると、着座者と直接接触する少なくとも可能性がある位置においてメッシュ部材2の織り目・編み目を他の部分よりも細かくするようにすれば良い。具体的には例えば、メッシュ部材2の後縁部分2cの織り目・編み目を細かくするようにしても良いし(図3(B)参照;緯糸同士の間隔を狭くしている)、メッシュ部材2の左右縁部分2d,2dの織り目・編み目を細かくするようにしても良いし(図4(A)参照;経糸同士の間隔を狭くしている)、メッシュ部材2の周縁部全体(即ち、前縁部分2a,後縁部分2c,左右縁部分2d・2d)に亘って織り目・編み目を細かくするようにしても良い(図4(B)参照;前縁部分2a及び後縁部分2cにおいて緯糸同士の間隔を狭くすると共に左右縁部分2d・2dにおいて経糸同士の間隔を狭くしている)。さらに、本発明を背凭れに適用する場合には、背凭れの上縁部分,左右縁部分,下縁部分、或いは、周縁部全体に亘って、織り目・編み目を細かくするようにしても良い。
【0047】
また、上述の実施形態ではメッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)に樹脂が漏れ出す方向であって樹脂のばりが成長する方向(=前後方向)と直交する方向(=左右方向)の織り糸(=緯糸)同士の間隔を狭くするようにしているが、これに限られず、メッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)に樹脂が漏れ出す方向であって樹脂のばりが成長する方向と同じ方向の織り糸同士の間隔を狭くするようにしても良い。この場合には、メッシュ部材2の周縁部であって座フレーム3との結合部分において、織り糸の本数を他の部分よりも多くしたり、断面円形の織り糸を平らに潰したりして、織り糸同士の間隔を細く或いは無くすようにしても良い。さらにまた、メッシュ部材2の座フレーム3との際(きわ)に樹脂が漏れ出す方向であって樹脂のばりが成長する方向と直交する方向及び同じ方向の両方向の織り糸同士の間隔を狭くするようにしても良い。
【0048】
また、上述の実施形態ではメッシュ部材2を織物によって構成すると共に織り糸同士の間隔を狭くすることによってメッシュ部材2の織り目を細かくするようにしているが、メッシュ部材2は織物に限られるものではないと共にメッシュ部材2の目を細かくする方法は織り糸同士の間隔を狭くすることに限られるものではない。具体的には、メッシュ部材2を編み物によって構成すると共に編みのループを細かくすることによってメッシュ部材2の目を細かくするようにしても良い。
【0049】
また、上述の実施形態では座フレーム3は内側フレーム3Aと外側フレーム3Bとを有するもの(言い換えると、複数層構造を有するもの)として構成されているが、座フレーム3の構成はこれに限られるものではなく、単一層構造であっても構わない。具体的には、図5に示すように、単一層構造の座フレーム3とメッシュ部材2とが、座フレーム3の内側側面からメッシュ部材2の周端部が埋没するように一体成形される場合にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 座
2 メッシュ部材
3 座フレーム
10 椅子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7