特許第5903310号(P5903310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化成品工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5903310-樹脂被覆顔料粒子の製造方法 図000013
  • 特許5903310-樹脂被覆顔料粒子の製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903310
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】樹脂被覆顔料粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20160331BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20160331BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20160331BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C09C3/10
   G02F1/167
   C09C1/00
   C09C3/08
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-76756(P2012-76756)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203975(P2013-203975A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】久保田 博信
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−100068(JP,A)
【文献】 特開2011−209447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/10
C09C 1/00
C09C 3/08
G02F 1/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなる顔料粒子を、ジルコニウム含有有機化合物で構成される表面処理剤で処理することで、前記顔料粒子の表面を被覆する表面処理剤由来の層を形成する工程と、
前記顔料粒子100重量部に対して40〜350重量部となるように樹脂層で前記表面処理剤由来の層を被覆する工程とを含み、
前記樹脂層で表面処理剤由来の層を被覆する工程が、動粘度100センチストークス以下のシリコーンオイルからなる溶媒の存在下で行なわれることを特徴とする樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項2】
前記表面処理剤が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基、R2は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基又は炭素数2〜24のアルケニル基、Xは炭素原子又はリン原子、aはXが炭素原子の場合1、Xがリン原子の場合2、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、m+nが4である)で表されるジルコニウム含有有機化合物である請求項1に記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項3】
前記表面処理剤は、R1が任意にビニル基を有するアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状アルコキシ基又は炭素数3〜12の分岐鎖状アルコキシ基、R2が直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシ基又はアルケニル基であるジルコニウム含有有機化合物である請求項1又は2に記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項4】
前記表面処理剤由来の層が、前記顔料粒子の比表面積に対して、0.0015〜0.0080g/m2の量の前記表面処理剤で、前記顔料粒子を処理することにより得られた層である請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項5】
前記樹脂層が、シリコーンマクロモノマーと第1のビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させて得られた末端に二重結合を有する分散剤の存在下で、第1のビニル系単量体と同一又は異なる第2のビニル系単量体を重合させて得られた層である請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項6】
前記樹脂層が、前記分散剤と前記第2のビニル系単量体とを1:0.5〜5.0の重量比とする条件の下で、第2のビニル系単量体を重合させて得られた層である請求項5に記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項7】
前記樹脂被覆顔料粒子が、0.05〜1μmの平均粒子径を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【請求項8】
前記樹脂被覆顔料粒子が、電気泳動性を有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の樹脂被覆顔料粒子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆顔料粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、分散安定性に優れる(分散媒体中で十分な電気泳動性を示す)樹脂被覆顔料粒子の製造方法に関する。製造された樹脂被覆顔料粒子は、電気泳動を利用した画像表示素子用の電気泳動粒子として有用である。
【背景技術】
【0002】
分散媒体中の荷電粒子が外部電場により移動する性質、即ち、電気泳動性を利用した表示装置が、低消費電力及び高視野角の観点から、電子書籍分野で注目されている。荷電粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等からなる顔料粒子が知られている。
表示装置は、顔料粒子が偏在することなく、外部電場により移動することが求められており、この観点から、顔料粒子を樹脂で被覆した樹脂被覆顔料粒子が種々報告されている。
例えば、特許第4188091号公報(特許文献1)では、顔料粒子に1〜15重量%の範囲で樹脂を共有結合又はイオン結合させた樹脂被覆顔料粒子が記載されている。また、特開2008−145713号公報(特許文献2)及び特開2008−145879号公報(特許文献3)では、顔料粒子に15〜100重量%の範囲で樹脂をグラフト結合させた樹脂被覆顔料粒子が記載されている。
【0003】
しかしながら、顔料粒子は、樹脂との馴染み性が高くないため、単純に顔料粒子を樹脂で覆っただけでは、樹脂量が少ないか又は樹脂が剥離することがある。従って、上記従来の樹脂被覆顔料粒子では、液体中での分散性が十分でなく、表示装置に使用するには不適当であった。
特許第4516481号公報(特許文献4)では、溶媒中での顔料粒子の分散性を向上する観点から、顔料粒子の表面をカップリング剤で処理した後、ラジカル重合により樹脂で顔料粒子を被覆した樹脂被覆顔料粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4188091号公報
【特許文献2】特開2008−145713号公報
【特許文献3】特開2008−145879号公報
【特許文献4】特許第4516481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献4の方法では、顔料粒子の樹脂での被覆が、水分の存在下で行なわれているため、得られた樹脂被覆顔料粒子中に、水分が存在することになる。このような水分が存在する樹脂被覆顔料粒子を表示装置に使用した場合、一般に有機媒体が使用される分散媒体中で、十分な電気泳動性が得られないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を鑑み、本発明の発明者は、鋭意検討の結果、特定の表面処理剤で顔料粒子の表面を被覆した後、樹脂層を形成することで得られた樹脂被覆顔料粒子は、分散媒体中で十分な電気泳動性を示すことを見い出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、金属酸化物からなる顔料粒子を、ジルコニウム含有有機化合物で構成される表面処理剤で処理することで、前記顔料粒子の表面を被覆する表面処理剤由来の層を形成する工程と、
前記顔料粒子100重量部に対して40〜350重量部となるように樹脂層で前記表面処理剤由来の層を被覆する工程とを含み、
前記樹脂層で表面処理剤由来の層を被覆する工程が、動粘度100センチストークス以下のシリコーンオイルからなる溶媒の存在下で行なわれることを特徴とする樹脂被覆顔料粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散安定性に優れる樹脂被覆顔料粒子を提供できる。本発明の樹脂被覆顔料粒子は、溶媒中での分散性が高いため、電気泳動を利用する表示装置に使用した場合、良好な電気泳動特性を長期間安定に維持できる。
表面処理剤が、下記一般式(I)
【化1】
【0009】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基、R2は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基又は炭素数2〜24のアルケニル基、Xは炭素原子又はリン原子、aはXが炭素原子の場合1、Xがリン原子の場合2、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、m+nが4である)で表されるジルコニウム含有有機化合物である場合、より高い樹脂付着量の樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
表面処理剤は、R1が任意にビニル基を有するアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状アルコキシ基又は炭素数3〜12の分岐鎖状アルコキシ基、R2が直鎖状アルキル基、直鎖状アルコキシ基又はアルケニル基であるジルコニウム含有有機化合物である場合、より高い樹脂付着量の樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
表面処理剤由来の層が、顔料粒子の比表面積に対して、0.0015〜0.0080g/m2の量の表面処理剤で、顔料粒子を処理することにより得られた層である場合、より高い樹脂付着量の樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
【0010】
樹脂層が、シリコーンマクロモノマーと第1のビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させて得られた末端に二重結合を有する分散剤の存在下で、第1のビニル系単量体と同一又は異なる第2のビニル系単量体を重合させて得られた層である場合、非極性溶剤中での分散安定性に優れ、より高い樹脂付着量の樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
樹脂層が、分散剤と前記第2のビニル系単量体とを1:0.5〜5.0の重量比とする条件の下で、第2のビニル系単量体を重合させて得られた層である場合、非極性溶剤中での分散安定性に優れ、より高い樹脂付着量の樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
樹脂被覆顔料粒子が、0.05〜1μmの平均粒子径を有する場合、電気泳動性を利用する表示装置に適切な大きさの樹脂被覆顔料粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の樹脂被覆顔料粒子の電子顕微鏡写真である。
図2】比較例1の樹脂被覆顔料粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(樹脂被覆顔料粒子)
本発明の樹脂被覆顔料粒子は、金属酸化物からなる顔料粒子と、顔料粒子の表面を被覆する表面処理剤由来の層と、表面処理剤由来の層を被覆する樹脂層とを含んでいる。本発明では、表面処理剤にジルコニウム含有有機化合物が使用される。
(1)表面処理剤由来の層
表面処理剤由来の層は、顔料粒子の表面を表面処理剤で処理することにより形成できる。ここで使用できる表面処理剤は、樹脂被覆顔料粒子に分散媒体中での十分な電気泳動性を付与することができる限り特に限定されない。
例えば、下記一般式(I)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルコキシ基、R2は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基又は炭素数2〜24のアルケニル基、Xは炭素原子又はリン原子、aはXが炭素原子の場合1、Xがリン原子の場合2、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、m+nが4である)で表されるジルコニウム含有有機化合物である。
上記式(I)は、Xが炭素原子の場合、下記式(Ia)で、リン原子の場合、下記式(Ib)でそれぞれ表すことができる。
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
アルコキシ基R1は、炭素数1〜15のアルコキシ基である。具体的なR1としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−トリデシルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ等の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシ、ジメチルプロパン等の上記直鎖状アルキル基の構造異性体である分岐状アルキル基が挙げられる。
更に、R1は置換基を有していてもよい。置換基は、R1の置換可能位置に1つ又は複数存在していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜4の低級アルコキシ基が挙げられる。また、低級アルコキシ基は、例えば、アリルオキシ基のように、置換可能位置にビニル基を有していてもよい。
【0018】
アルキル基R2は、炭素数1〜24のアルキル基である。炭素数が24より多い場合、疎水性が強く、樹脂層の付着量が低下することがある。このアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。具体的なR2としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−イコシル、n−ヘニコシル、n−ドコシル、n−トリコシル、n−テトラコシル等の直鎖状アルキル基、これら直鎖状アルキル基の構造異性体である分岐状アルキル基が挙げられる。好ましい炭素数は1〜22であり、より好ましい炭素数は1〜20である。なお、分岐状アルキル基の場合、炭素数の下限は3である。また、樹脂との相溶性の観点で、R2は直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0019】
アルコキシ基R2は、炭素数1〜24のアルコキシ基である。炭素数が24より多い場合、疎水性が強く、樹脂層の付着量が低下することがある。このアルコキシ基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。具体的なR2としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−トリデシルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−ヘプタデシルオキシ、n−オクタデシルオキシ、n−ノナデシルオキシ、n−イコシルオキシ、n−ヘニコシルオキシ、n−ドコシルオキシ、n−トリコシルオキシ、n−テトラコシルオキシ等の直鎖状アルコキシ基、これら直鎖状アルコキシ基の構造異性体である分岐状アルコキシ基が挙げられる。好ましい炭素数は1〜22であり、より好ましい炭素数は1〜20である。なお、分岐状アルコキシ基の場合、炭素数の下限は3である。また、樹脂との相溶性の観点で、R2は直鎖状のアルコキシ基であることが好ましい。
【0020】
アルケニル基R2は、炭素数2〜24のアルケニル基である。炭素数が24より多い場合、疎水性が強く、樹脂層の付着量が低下することがある。このアルケニル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。具体的なR2としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘニコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル等が挙げられる。好ましい炭素数は1〜22であり、より好ましい炭素数は1〜20である。これらアルケニル基は直鎖状アルケニル基でも、直鎖状アルケニル基の構造異性体である分岐状アルケニル基(例えば、イソプロペニル等)でもよい。なお、分岐状アルケニル基の場合、炭素数の下限は3である。更に、アルケニル基中のビニル基の位置は、特に限定されない。また、樹脂との相溶性の観点で、R2は直鎖状のアルケニル基であることが好ましい。
【0021】
mとnの合計(m+n)は4である。また、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数である。
具体的な表面処理剤としては、一般式(Ia)に含まれるものとして、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウム(ビスプロパノレートメチル)ブタノエートトリスネオデカノレート等が挙げられる。一般式(Ib)に含まれるものとして、ジルコニウム(ビスプロパノレートメチル)ブタノエートトリス(ジオクチル)ホスフェート等が挙げられる。
更に、本発明で使用できるジルコニウム含有有機化合物としては、楠本化成社製の製品名A,C,C−1,F,M,M−1,S,APG,CPG,CPM,FPM,MPG,MPM及び、テトラプロピルジルコアルミネート等の下記一般式(II)で表されるジルコアルミニウム化合物も挙げられる。
【0022】
【化5】
【0023】
式中、nは1〜18、Xは水素原子、アミノ基、カルボキシル基又はチオール基、(メタ)アクリロイル基である。
表面処理剤由来の層が、顔料粒子の比表面積に対して、0.0015〜0.0080g/m2の量の表面処理剤で、顔料粒子を処理することにより得られた層であることが好ましい。例えば、比表面積が12m2/gの酸化チタンJR−600Aからなる顔料粒子を用いた場合、顔料粒子1gあたりの表面処理剤の量は0.018〜0.096gであることが好ましい。また、比表面積が20.5m2/gの酸化チタンPT−401Mからなる顔料粒子を用いた場合、顔料粒子1gあたりの表面処理剤の量は0.3075〜0.164gであることが好ましい。この範囲で表面処理剤を使用することで、表面処理剤由来の層上に形成される樹脂層の固着性を高めることができる。
【0024】
上記の範囲を下回る場合は、表面処理剤由来の層上に形成される樹脂層の固着性が低下し、結果として得られる顔料被覆微粒子の電気泳動特性において不具合を生じることがある。また、上記範囲を上回る場合は、添加量に見合った効果が得られないばかりでなく、顔料粒子表面に吸着されない表面処理剤の存在により、同様に電気泳動特性に不具合を生じることがある。
表面処理剤由来の層は、上記ジルコニウム含有有機化合物である表面処理剤で顔料粒子の表面を処理することで形成できる。
【0025】
顔料粒子の表面処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、顔料粒子を表面処理剤で直接処理する乾式法、湿式法(スラリー法)、スプレー法等がある。また、乾式法としては、インテグラルブレンド法と称される直接法、マスターバッチ法、ドライコンセントレート法等がある。
これらの表面処理方法の中では、顔料粒子を直接処理できる直接法が簡便である。この直接法には、前述のように乾式法、湿式法、スプレー法の3種類があり、それらについての一例を以下に記載するが、表面処理剤による処理は、これらの方法に限定されるものではない。
【0026】
乾式法は、顔料粒子と表面処理剤を乾燥状態(溶媒等の媒体なしの状態)で混合することで、顔料粒子の表面処理を行うものである。この方法では、表面処理剤の添加後に、せん断力のあるヘンシルミキサー、スーパーミキサー等を用いて、加温条件下で高速攪拌することで表面処理できる。加温条件は、表面処理剤による処理反応が進行する条件であればよく、必要に応じて加熱すればよい。また、必要に応じて顔料粒子を事前に乾燥しておくと処理の効率を向上できる。
【0027】
一方、湿式法は、各種溶媒(水系、有機系各種溶媒を表面処理剤との関係で選択できる)に顔料粒子を分散させた状態で、表面処理剤による表面処理を行うものである。この場合にも必要に応じて加温してもよく、顔料粒子を事前に乾燥してもよい。また、溶媒への分散状態で顔料粒子の表面処理が進行することから、顔料粒子の表面処理効率を向上させるために、顔料粒子の凝集状態をほぐしておくことが好ましい。ほぐす方法としては、例えば、攪拌、分散等による粉砕処理、各種ミキサー等によるせん断力を利用した粉砕処理、各種分散剤、乳化剤等の添加による分散処理等が挙げられる。
【0028】
表面処理は、後述の樹脂被覆工程を分散重合法にて行うために、湿式法が最も好適である。具体的な湿式法による表面処理は、例えば次の手順で行うことができる。即ち、まず、顔料粒子を溶媒に分散させてなる分散液に表面処理剤を添加する。添加後、必要に応じてガラスビーズ、スチールビーズやジルコニアビーズ等の分散媒体を分散液に加える。必要に応じて分散媒体を含む分散液を、ダイノーミルやDSP−ミルの如きビーズミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、ニーダーやナノマイザーの如き高圧噴射ミル等の分散機に入れ、分散液を混合することで、顔料粒子の表面処理を行うことができる。
【0029】
ここで、使用される溶媒は、特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルが挙げられる。
【0030】
そのうち作業環境のような環境への影響を考慮して、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルが好ましい。
また、顔料粒子と表面処理剤の分散を効率よく行うために、シリコーンオイルは、JIS K 2283で測定した動粘度が100センチストークス以下のオイルであることが更に好ましい。
溶媒中には、樹脂層を形成するための単量体が一部又は全部含まれていてもよい。単量体を含むことで、表面処理剤由来の層と樹脂層とのなじみをより向上できる。
【0031】
(2)顔料粒子
本発明において顔料粒子としては、金属酸化物であれば特に限定されない。顔料粒子としては、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料、鉛丹、気鉛等の酸化鉛系顔料、チタンホワイト、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料、酸化コバルト、亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料、モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等が挙げられる。
顔料粒子は、表示装置からの要求に応じて、適宜平均粒子径が設定される。一般に、50〜300nmの平均粒子径の顔料粒子が用いられる。
また、顔料粒子の形状は、特に限定されないが、分散媒への分散安定性を考慮すると、できるだけ球形に近いことが好ましい。
【0032】
(3)樹脂層
樹脂層を構成する樹脂としては、疎水性の樹脂であれば、特に限定されず、公知の樹脂をいずれも使用できる。例えば、樹脂層としては、次の単官能単量体に由来する層が挙げられる。即ち、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン類及びその誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等の分子内に二重結合を有する脂肪酸類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩等の分子内に二重結合を有する単量体が挙げられる。
【0033】
これら単量体は、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、(メタ)アクリル酸エステル系の単量体が好ましく、非極性溶剤中での分散性及び沈降性を考慮すると、低比重モノマーであるアクリル酸イソステアリルがより好ましい。
【0034】
また、樹脂層は架橋することが好ましい。架橋は、架橋性単量体を使用することにより行うことができる。架橋性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル系単量体が挙げられる。これら架橋性単量体は2種類以上組み合わせて用いることもできる。架橋性単量体の使用割合は、単量体全量中、0.5〜80重量%であることが好ましく、5〜50重量%がより好ましい。
【0035】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。重合開始剤は、樹脂層形成用の単量体100重量部に対して、0.1〜1.0重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0036】
上記樹脂層は、表面処理剤由来の層を有する顔料粒子を、樹脂層形成用の単量体混合物中に分散させ、単量体混合物を重合することにより形成できる。この樹脂層の形成は、溶媒中で行うことが好ましい。具体的な樹脂層の形成方法としては、単量体混合物を溶媒中に液滴となるように乳化分散した後に重合する方法、有機溶媒中に単量体混合物を溶解した後に重合を開始する方法(本明細書では分散重合法と定義する)等が挙げられる。形成方法は、得られる樹脂被覆顔料粒子の非極性溶媒に対する分散安定性を向上させる目的で、特に水分の非存在下での重合法であることが好ましい。本発明において好ましく用いることのできる分散重合法において使用できる溶媒は、上記表面処理剤由来の層の形成時に使用できる溶媒と同一又は上記表面処理剤由来の層の形成時に使用できる溶媒を溶解可能なものであればよい。
更に、上記樹脂層以外に、シリコーンマクロモノマーと第1のビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを重合させて得られた末端に二重結合を有する分散剤の存在下で、第1のビニル系単量体と同一又は異なる第2のビニル系単量体を分散重合させて得られた分散剤含有樹脂層でもよい。
【0037】
(i)分散剤
シリコーンマクロモノマーとしては、片末端に重合性不飽和基を有し、かつシリコーン単位(ジメチルポリシロキサン単位のようなオルガノシロキサン単位)を有する種々の化合物を適時使用できる。そのようなシリコーンマクロモノマーとしては、例えば次式:
【0038】
【化6】
【0039】
(RAは水素原子又はメチル基であり、RBは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RCは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、nは整数である)
で示される構造を有するものが挙げられる。
【0040】
上記の式において、RBが意味する炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基及びそれらの位置異性体等が挙げられる。
また、RCが意味する炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びそれらの位置異性体等が挙げられる。
また、nは3〜500の間、好ましくは10〜250の間の整数を意味する。
シリコーンマクロモノマーの分子量は、数平均分子量500〜40000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。上記シリコーンマクロマーを二種以上混合して使用してもよい。
より具体的なシリコーンマクロモノマーとしては、α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0041】
第1のビニル系単量体としては、上記の単量体をいずれも使用できる。
また、第1のビニル系単量体として電子供与性基を有しないビニル系単量体、例えばメタクリル酸メチルを用いることにより、シリコーンオイル中における顔料粒子の極性を明確に正にすることができる。
第1のビニル系単量体は、シリコーンマクロモノマー100重量部に対して、2〜50重量部使用することが好ましい。2重量部未満の場合、顔料粒子との親和性が悪くなるため物理的に固定することが難しく、その結果、顔料粒子の分散安定性が悪くなることがある。また、50重量部より多い場合、溶媒との親和性が悪くなり顔料粒子の分散安定性が悪くなることがある。より好ましい使用量は5〜25重量部である。
【0042】
分散剤は、例えば、シリコーンマクロモノマーと第1のビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとを、溶媒に添加し、撹拌下に加熱することで、共重合させることにより得ることができる。共重合には、重合開始剤を使用してもよい。
具体的な重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤であれば特に限定されない。ラジカル重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)のようなアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド及びt−ブチルパーベンゾエートのような過酸化物系開始剤等が挙げられる。重合開始剤は、モノマー組成物(シリコーンマクロモノマーとビニル系単量体との混合物)中に0.1〜5重量%程度の量で予め溶解することが好ましい。
溶媒の量は、モノマー組成物100重量部に対し、20〜400重量部が好ましく、より好ましくは50〜200重量部である。
【0043】
上記の共重合における反応温度及び時間については特に限定されるものではなく、例えば用いる重合開始剤の種類や使用量及び使用するシリコーンマクロモノマーとビニル系単量体とα−メチルスチレンダイマーとの反応性により適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜25時間である。
また、重合雰囲気は、大気雰囲気でも、不活性ガス雰囲気でもよい。この内、雰囲気中の酸素による重合速度の遅延及び重合阻害を防止するために、不活性ガス雰囲気で行なうことが好ましい。このような不活性ガスとしては、窒素ガス及びアルゴンガスが挙げられる。特に、経済性の面から窒素ガス雰囲気が好ましい。
ここで、得られる分散剤は、分散剤の製造後に使用した非極性溶剤から分離しても、分離しなくてもよい。分離しない場合は、非極性溶剤に分散又は溶解した分散剤を、樹脂被覆顔料粒子の製造にそのまま使用できる。
【0044】
(ii)分散剤含有樹脂層の製造
分散剤含有樹脂層の製造に用いられる第2のビニル系単量体としては、分散剤の製造において例示した第1のビニル系単量体から選択して用いることができる。
第2のビニル系単量体の使用量としては、顔料粒子100重量部に対して、10〜500重量部使用することが好ましい。使用量が10重量部未満の場合、顔料粒子の樹脂での被覆が不完全となり非極性溶剤への分散性が悪化することがある。また、500重量部より多い場合、顔料の被覆に寄与しない樹脂が多く発生し、電気泳動を利用する表示装置に使用した場合に電気泳動性の阻害及びコントラストの低下が生じることがある。より好ましい使用量は100〜400重量部である。
【0045】
分散剤含有樹脂層の製造には、重合開始剤を用いてもよい。この重合開始剤としては、分散剤の製造において例示した重合開始剤から選択して、同様の使用量を用いることができる。その際、重合開始剤は、第2のビニル系単量体に溶解させて使用できる。
また、分散剤含有樹脂層は、超音波照射下における溶媒中での分散重合により形成することが好ましい。溶媒としては、分散剤の製造において例示した溶媒から選択して用いることができる。この溶媒の使用量としては、例えば、第2のビニル系単量体100重量部に対し、650〜3200重量部が好ましく、より好ましくは650〜1500重量部である。
【0046】
分散剤含有樹脂層は、分散剤の存在下、溶媒中で、第2のビニル系単量体を、重合させることにより行われる。
分散剤の使用量は、第2のビニル系単量体100重量部に対して20〜400重量部であることが好ましい。20重量部未満の場合、非極性溶剤中での分散安定性が低下することがある。また、400重量部より多い場合、粒子径が小さくなり、非極性溶媒中の粘度が上昇し、その結果、非極性溶剤中での分散安定性が低下することがある。より好ましい使用量は40〜200重量部である。
重合は超音波照射下で行うことが好ましい。また、重合は、前記の分散剤の製法と同じ理由から、不活性雰囲気下で行なうのが好ましい。より好ましい不活性雰囲気は、窒素ガス雰囲気である。
【0047】
上記の分散重合における反応温度及び時間については特に限定されるものではなく、重合開始剤の種類や使用量及び第2のビニル系単量体の量等により適時調整して用いることが可能である。好ましくは反応温度40〜120℃、反応時間0.5〜50時間の範囲で行うことができる。より好ましくは、反応温度は40〜80℃、反応時間は2〜12時間である。
【0048】
超音波の照射は、一般に用いられる超音波洗浄装置に温水等の媒体を適量満たし、これに反応に供する混合液を入れた容器を浸して超音波を照射する方法、又は内部照射型超音波発生装置等を用い、反応に供する混合液を入れた容器に超音波振動子を挿入して超音波を照射する方法等により行うことができる。
超音波の発信周波数は16kHz以上であることが好ましく、20〜500kHzの範囲であることがより好ましい。また、出力は、超音波を照射する媒体1Lあたり、10〜1000Wが好適である。
また、超音波照射下における分散重合には、マグネチックスターラー等の機械的撹拌装置の併用も可能である。
また、外部温調装置により温度をコントロールした媒体を超音波洗浄装置内に循環させることによって重合温度(反応温度)を調整してもよい。
【0049】
樹脂層は、分散剤の量及び第2のビニル系単量体の選択により付着量を制御することが可能である。例えば、第2のビニル系単量体に対して、分散剤の割合を増やすことにより、樹脂層の付着量を小さくすることができる。また、非極性溶剤に対する親和性が高い第2のビニル系単量体を選択して用いることによっても、樹脂層の付着量を小さくすることができる。
樹脂層の付着量は、顔料粒子100重量部に対し、40〜350重量部が好ましく、更に100〜250重量部が好ましい。付着量が40重量部未満の場合、顔料の樹脂の被覆が不完全となり非極性溶剤への分散性が悪化することがあり、350重量部より多い場合、顔料に被覆されない樹脂が発生し、電気泳動を利用する表示装置に使用した場合に電気泳動性の阻害及びコントラストの低下が生じることがある。
樹脂層は、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料、有機溶剤等を含んでいてもよい。
【0050】
(4)樹脂被覆顔料粒子の洗浄
樹脂被覆顔料粒子を洗浄してもよい。洗浄方法として、特に限定されないが、樹脂被覆顔料粒子を形成させた後、高速遠心機等を用いて、非常に高い遠心加速度を与え沈降させて上澄みを除去し、新たに非極性溶媒を加え樹脂被覆顔料粒子を非極性溶媒に分散させ、この操作を数回繰り返すことにより不純物を除去する方法、クロスフロー式のろ過方法により洗浄を行うことで不純物を除去する方法、また、樹脂被覆粒子に対して、粒子の凝集剤となる溶媒を添加することにより、溶媒中において粒子を凝集沈降させ、フィルター等を用いて樹脂被覆顔料粒子を分離し、洗浄溶媒により洗浄する方法等が挙げられる。
【0051】
(5)樹脂被覆顔料粒子の形状
樹脂被覆顔料粒子の形状は、特に限定されない。しかしながら、表示装置の用途では、できるだけ球状に近い形状を樹脂被覆顔料粒子が有していることが好ましい。
樹脂被覆顔料粒子の大きさは、使用する用途に応じて適宜設定できる。
【0052】
(用途)
本発明の樹脂被覆顔料粒子は、表示装置、電気粘性流体、光学素子、化粧料、インク、塗料、潤滑剤等の原料として好適に使用できる。表示装置としては、電子ペーパーのような電気泳動を利用した装置が挙げられる。
電気泳動を利用した装置としては、例えば、電極を有する一対の基板間に、溶媒に分散させた樹脂被覆顔料粒子からなる表示層を挟んだ構造が挙げられる。電極間に電圧を印加することで、印加された電圧の極性に応じて樹脂被覆顔料粒子が、一対の基板の内の片側に移動する。この装置では、樹脂被覆顔料粒子の移動を利用して情報が表示される。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、各種測定法について説明する。
(シリコーンマクロモノマーの数平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、数平均分子量を測定した。なお、数平均分子量はポリスチレン(PS)換算数平均分子量を意味する。その測定方法は次の通りである。
測定装置:東ソー社製GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×30cm)
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)、
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/min)、
RI温度(35℃)、INLET温度(35℃)、
測定時間(55min)、検出器(UV254nm、RI)
測定方法:試料50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過する。
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495
【0054】
(非極性溶媒の動粘度)
動粘度はJIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)により測定する。
【0055】
(顔料粒子と樹脂被覆顔料粒子の平均粒子径)
平均粒子径は、動的光散乱法と呼ばれる方法を利用して測定したZ平均粒子径である。Z平均粒子径は次のようにして得る。即ち、粒子のシリコーンオイル分散液にレーザー光を照射し、粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された樹脂被覆顔料粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法によりZ平均粒子径が得られる。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用する。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析することで、Z平均粒子径を算出できる。
【0056】
(樹脂被覆顔料粒子の樹脂量)
樹脂被覆顔料粒子を秤量する。秤量後の樹脂被覆顔料粒子を熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG/DTA6200型)中の白金セル中に入れる。白金セル中の樹脂被覆顔料粒子を、窒素雰囲気下、室温から800℃まで10℃/分の速度での昇温で加熱処理することで、樹脂を熱分解させる。取り出した粒子を秤量する。樹脂被覆顔料粒子の秤量値Aと加熱処理後の粒子の秤量値Bを以下の式に代入することで顔料粒子100重量部に対する樹脂量を算出する。
樹脂割合(重量%)=(秤量値A−秤量値B)×100/秤量値A
樹脂量(重量部)=樹脂割合/(100−樹脂割合)×100
【0057】
(顔料粒子の比表面積)
比表面積は、気体吸着による粒子(固体)の比表面積測定法であるJIS Z 8830:2001のBET多点定容量に基づき、自動比表面積/細孔分布測定装置(トライスター3000:島津製作所社製)により、窒素ガスを用いて測定する。
【0058】
(シリコーンオイル中での樹脂被覆顔料粒子の分散安定性の評価)
粒子分散液40mLを50mLのコニカルチューブに入れ、遠心分離機(トミー精工社製卓上遠心機LC−200)を用いて、4000rpmで30分間遠心分離を行う。その後、取り出したコニカルチューブ中の粒子の分散状態を目視にて観察して、以下の基準で分散安定性を評価する。
◎:沈降しない
○:沈降する粒子としない粒子とが共存している
×:沈降する
【0059】
(樹脂被覆顔料粒子の帯電性の測定)
20mlのガラス瓶に、実施例に記載のシリコーンオイル分散体を量り取り、そこへ樹脂被覆顔料粒子固形分が1重量%となる様にシリコーンオイル(非極性溶媒、信越化学社製KF−96L−1CS、動粘度1センチストークス)を加えて10gとし、これを測定用試料とする。
次に、片面にインジウムスズオキサイド(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意する。
冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒静置した。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は負、右側のガラス板に粒子が付着していればその粒子の帯電性は正として評価する。
【0060】
実施例1
(分散剤の作製)
300mlのセパラブルフラスコ中で、シリコーンオイル(非極性溶媒、信越化学社製KF−96L−1CS、動粘度1センチストークス)100重量部、予め開始剤として2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、以下ABNVと称する)2重量部を溶解したメタクリル酸メチル8.0重量部、シリコーンマクロモノマー(チッソ社製サイプラレーンFM−0721、数平均分子量5850、RAはメチル、RBはプロピル、RCはメチル)90.9重量部及びα−メチルスチレンダイマー(日本油脂社製ノフマーMSD)1.1重量部を混合した。得られた混合物を、窒素雰囲気下、50℃で攪拌しながら20時間溶液重合に付すことで分散剤を得た。得られた分散剤の数平均分子量は26800であった。
【0061】
(顔料被覆粒子の作製)
ジルコニアビーズ(直径1mm)500重量部を入れた300mlのガラス製ビーズポット中で、分散剤80重量部、シリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)を60重量部、酸化チタン(顔料粒子、石原産業社製PT−401M、比表面積20.5m2/g、平均粒子径70nm)25重量部を室温で48時間ボールミルによる分散に付した後、シリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)を200重量部加え、ジルコニアビーズを濾別し、顔料粒子分散液を得た。300ml容器中で、顔料粒子分散液385重量部、ジルコニウム系表面処理剤(マツモトファインケミカル製ZB−320(成分濃度81%)、式(1)中、R1はブトキシ、R2は炭素数17からなるアルキル基、mは3、nは1である)2重量部を混合し、室温で24時間攪拌することで、表面処理を行った。
【0062】
得られた表面処理を施した顔料粒子分散液をビーズポットから300mlのセパラブルフラスコに移した。このセパラブルフラスコに、シリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)580重量部、予め重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド(日本油脂社製パーロイルL、以下LPOと称する)6重量部を溶解した。アクリル酸イソステアリル30.0重量部、エチレングリコールジメタクリレート10重量部、分散剤20重量部を添加した。次に、セパラブルフラスコを出力150Wの超音波洗浄機(VELBO−CLEAR社製VS−150)の洗浄槽(長さ230mm×幅180mm×高さ110mmの内寸)内の60℃に保たれた水に浸漬した。この後、セパラブルフラスコの内容物を、窒素雰囲気及び超音波照射下、60℃で8時間分散重合に付すことで樹脂被覆顔料粒子を得た。
【0063】
分散重合終了後、樹脂被覆顔料粒子を遠心分離により沈降分離し、分離された樹脂被覆顔料粒子をシリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)に再分散させた。この沈降分離と再分散の操作を3回繰り返して、樹脂被覆顔料粒子を洗浄した。洗浄後の樹脂被覆顔料粒子を、シリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)に分散させることで、固形分10重量%の樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は371nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は113重量部であった。得られた粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0064】
実施例2
ジルコニウム系表面処理剤量を3重量部とし、アクリル酸イソステアリル量を20重量部とすること以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は279nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は80重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0065】
実施例3
分散剤量を80重量部とし(表面処理を施した後の分散剤20重量部を添加せず)、ジルコニウム系表面処理剤量を0.8重量部とし、酸化チタン量を20重量部とし、アクリル酸イソステアリルに代えてスチレンを20重量部使用すること以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は315nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は100重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0066】
実施例4
下記式で表されるジルコニウム系表面処理剤(KENRICH PETROCHEMICALS製NZ01(成分濃度95%)、式(1)中、R1は2,2−(ビス−2−プロパノレートメチル)ブタノエート、R2は炭素数9からなるアルキル基、mは1、nは3である)を2重量部使用し、酸化チタンとして石原産業社製JR−600A(比表面積12m2/g、平均粒子径250nm)25重量部使用し、アクリル酸イソステアリル量を20重量部とし、エチレングリコールジメタクリレート量を20重量部とすること以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
【0067】
【化7】
【0068】
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は492nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は148重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0069】
実施例5
分散剤量を80重量部とし(表面処理を施した後の分散剤20重量部を添加せず)、下記式で表されるジルコニウム系表面処理剤(KENRICH PETROCHEMICALS製NZ12(成分濃度40%)、式(1)中、R1は2,2−(ビス−2−プロパノレートメチル)ブタノエート、R2は炭素数8からなるアルコキシ基、mは1、nは3である)を3重量部使用し、酸化チタンを20重量部使用し、アクリル酸イソステアリル量を20重量部とし、エチレングリコールジメタクリレート量を15重量部とすること以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
【0070】
【化8】
【0071】
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は436nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は62重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0072】
実施例6
下記式で表されるジルコニウム系表面処理剤(KENRICH PETROCHEMICALS製NZ33(成分濃度100%)、式(1)中、R1は2,2−(ビス−2−プロパノレートメチル)ブタノエート、R2は炭素数3からなるアルケニル基、mは1、nは3である)を3重量部使用し、酸化チタンを20重量部使用し、アクリル酸イソステアリルに代えてスチレンを20重量部使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
【0073】
【化9】
【0074】
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体100重量部を容器に移し、メタノールを30重量部、イソプロパノール15重量部との混合溶媒を添加することで、樹脂被覆顔料粒子を凝集により沈降させた。次に1μmの細孔径を有するメンブランフィルターを用いて粒子を吸引ろ過により分離し、洗浄溶媒としてイソプロピルアルコール100重量部を4回に分けて添加した後にシリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−1CS)中に超音波分散機を用いて分散させた。次に減圧乾燥機を用いて洗浄溶媒を揮発させることで除去した後で再度シリコーンオイルで濃度の調整を行い、固形分10%の樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
【0075】
比較例1
分散剤量を80重量部とし(表面処理を施した後の分散剤20重量部を添加せず)、ジルコニウム系表面処理剤を使用せず、アクリル酸イソステアリル量を20重量部とし、エチレングリコールジメタクリレート量を15重量部とすること以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は423nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は38重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
【0076】
比較例2
ジルコニウム系表面処理剤をチタネート系表面処理剤(味の素ファインテクノ社製プレンアクトKR−TTS)3重量部に変更し、酸化チタン量を20重量部とし、アクリル酸イソステアリル量を20重量部としたこと以外は実施例1と同様にして樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル分散体を得た。
得られた樹脂被覆顔料粒子のシリコーンオイル中での平均粒子径は362nmであった。熱重量分析により顔料粒子100重量部に対する樹脂量は32重量部であった。上記の得られた樹脂被覆顔料粒子の帯電性を測定したところ、この粒子は正に帯電していることが判った。
実施例1〜6及び比較例1と2の結果を表1にまとめて示す。
【0077】
【表1】
【0078】
また、実施例1及び比較例1の樹脂被覆顔料粒子の電子顕微鏡写真を図1及び図2に示す。図中、粒子中心の比較的色の濃い部分が顔料粒子が位置する領域であり、周辺の比較的色の薄い部分が樹脂層が位置する領域である。両図を比較すれば明らかなように、実施例1の樹脂被覆顔料粒子は、表面処理剤を使用しない比較例1より樹脂層が厚いことが分かる。
図1
図2