(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(バット融着機)
次に本発明の管軸調整治具及びこれを備えたバット融着機の実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1に示すバット融着機100は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂からなる一対の管材(以下、第一管材1及び第二管材2と称する)の端面1b,2b同士を加熱融着して接合する装置である。このバット融着機100は、第一管材1及び第二管材2を支持するクランプ部10と、これら第一管材1及び第二管材2の端面1b,2bを加熱溶融させる加熱部13と、第一管材1の軸線位置を調整する一対の管軸調整治具20A,20Bと、これら管軸調整治具20A,20Bを固定するための支持部15と、を備えている。
【0020】
クランプ部10は、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士を互いに対向させた状態でこれら第一管材1及び第二管材2を近接可能に支持している。このクランプ部10は、第一管材1を把持する第一クランプ11と第二管材2を把持する第二クランプ12とを有している。これら第一クランプ11及び第二クランプ12は、バット融着機100のベース(図示省略)にそれぞれ設けられている。
【0021】
第一クランプ11及び第二クランプ12は、第一管材1、第二管材2の軸線O1,О2を挟んだ両側からそれぞれ第一管材1、第二管材2の外周面1a,2aに当接することでこれら第一管材1、第二管材2を把持している。本実施形態の第一クランプ11及び第二クランプ12は、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士が互いに水平方向に対向するように、これら第一管材1及び第二管材2をそれぞれ上下方向から把持している。
【0022】
このような第一クランプ11及び第二クランプ12は、第一管材1、第二管材2を把持した状態で、アクチュエータ等(図示省略)によって互いに水平方向に近接、離間するように移動可能とされている。このような第一クランプ11及び第二クランプ12の移動によって、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士が互いに近接可能とされている。
【0023】
加熱部13は、例えばジュール熱によって発熱する板状をなす部材であって、その一面が第一管材1が押し当てられる第一加熱面13aとされ、該一面の反対側の他面が第二管材2が押し当てられる第二加熱面13bとされている。このような加熱部13は、互いに対向する第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士の間の位置である加熱位置と、これら端面1b,2b同士の間から外れた退避位置との間で移動可能とされている。なお、加熱部13が加熱位置にある際には、第一加熱面13aが第一管材1の端面1bと対向状態となり、第二加熱面13bが第二管材2の端面2bと対向状態となる。
【0024】
支持部15は、クランプ部10とともにバット融着機100のベースに設けられており、第一クランプ11と加熱部13との間において第一管材1の径方向外側に該第一管材と離間して配置されている。この支持部15は、第一管材1の軸線O1を挟んで互いに反対側に設けられた第一支持部材16及び第二支持部材17を有している。本実施形態では、これら第一支持部材16及び第二支持部材17は、上下方向に離間して設けられている。また、このような支持部15は、クランプ部10における第一クランプ11と連動して第一管材1の軸線O1方向、即ち、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士を近接離間させる方向に移動可能とされている。
【0025】
(管軸調整治具)
次に管軸調整治具20A,20Bの構成について説明する。管軸調整治具20A,20Bは、
図1から
図4に示すように、第一管材1の軸線O1を両側から挟み込むように該第一管材1の径方向(以下、単に径方向と称する。)外側に一対が設けられている。本実施形態では、管軸調整治具20A,20Bは第一管材1の上下に一対が設けられており、上方に設けられた一方の管軸調整治具20Aは支持部15における第一支持部材16に固定されており、下方に設けられた他方の管軸調整治具20Bは支持部15における第二支持部材17に固定されている。
【0026】
このような管軸調整治具20A,20Bは、
図2から
図4に示すように、支持部15に固定される基部30と、第一管材1に当接する押圧面61を有して該押圧面61を基部30に対して相対移動させるように可動する可動部40と、可動部40を可動させることで押圧面61の基部30に対する相対位置を調整する調整部70とを備えている。
【0027】
以下では、第一管材1の軸線O1方向一方側(
図1及び
図4の左側、
図2及び
図3の紙面手前側)を正面側と称し、軸線O1方向他方側を背面側(
図1及び
図4の右側、
図2及び
図3の紙面奥側)と称する。
さらに、互いに交差して第一管材1の径方向に延びる2方向をそれぞれ第一方向D1、第二方向D2と称する。本実施形態では、第一方向D1が、第一管材1の軸線O1に直交する水平方向とされており、第二方向D2は、第一管材1の軸線O1に直交し、かつ、第一方向D1に直交する方向、即ち、一対の管軸調整治具20A,20Bの対向方向である上下方向とされている。
【0028】
基部30は、第一方向D1及び第二方向D2を含む平面、即ち、軸線O1に直交する平面に沿って延在する板状をなしており、第一方向D1を長手方向としている。この基部30における第二方向D2かつ径方向外側を向く面、即ち、基部30における第一管材1の反対側を向く面は、軸線O1を中心として湾曲する湾曲面31とされている。また、基部30における正面側を向く面は基部主面33とされ、背面側を向く面は基部裏面34とされている。
【0029】
基部主面33は、
図2及び
図4に示すように、第一管材1の軸線O1に直交する平坦面状をなしている。また、この基部主面33における径方向外側の部分には、正面側へと向かって一段凹むととともに上記湾曲面31と同様に湾曲する段差部35が形成されている。この段差部35には、基部30が固定される支持部15が当接し、即ち、上側の管軸調整治具20Aの段差部35には第一支持部材16が当接し、下側の管軸調整治具20Bの段差部35には第二支持部材17が当接する。
さらに、基部30における第二方向D2に沿う径方向の内側を向く面は、
図3及び
図4に示すように、第一方向D1に向かって平坦状に延在する基部ガイド面36とされている。
【0030】
また、基部30の湾曲面31には、径方向内側へと向かって凹むとともに軸線O1方向に貫通する固定用スリット32が形成されている。この固定用スリット32には、基部30の正面側から背面側へと向かって基部固定ねじ37が挿通されており、該基部固定ねじ37の先端は、第一支持部15、第二支持部15に形成された雌ネジ孔(図示省略)にそれぞれ螺合している。これによって、基部30が第一支持部15又は第二支持部15に一体に固定され、第一管材1の径方向外側に該第一管材1と離間して配置される。
【0031】
可動部40は、少なくとも押圧面61が形成された部分が基部30に対して第一方向D1及び第二方向D2に相対移動可能となるように可動するように基部30に取り付けられている。
本実施形態の可動部40は、基部30に対して第一方向D1に相対移動可能に取り付けられた第一スライド部50と、押圧面61が形成されるとともに第一スライド部50に対して第二方向D2に相対移動可能に取り付けられた第二スライド部60とを有している。
【0032】
第一スライド部50は、第一方向D1及び第二方向D2を含む平面、即ち、軸線O1に直交する平面に沿って延在する板状をなしており、即ち、基部30と平行な板状をなしている。この第一スライド部50は、第一方向D1を長手方向とした正面視矩形状をなしており、該正面視形状が基部30よりも一回り小さいものとされている。
【0033】
この第一スライド部50における背面側を向く面は、
図4に示すように、軸線O1に直交する平坦状をなす第一裏面51とされており、基部主面33に摺動可能に当接している。また、この第一裏面51における第二方向D2に沿う径方向の内側の部分には、背面側に向かってさらに突出して第一方向D1に延在する突出部52が形成されている。この突出部52における第二方向D2かつ径方向外側を向く面は、第一方向D1に平坦状に延在する第一被ガイド面52aとされている。
【0034】
また、第一スライド部50における正面側を向く面は、
図2〜
図4に示すように、軸線O1に直交する平坦状をなす第一主面53とされている。この第一主面53には、該第一主面53から正面視矩形状に一段凹むとともに、第二方向D2に沿う径方向の内側に向かって開口する凹部54が形成されている。この凹部54における底面、即ち、正面側を向く面は、
図4に示すように、軸線O1に直交する平坦状をなす摺動面55とされている。また、凹部54における第一方向D1に対向する一対の面は、第二方向D2に延在する第一ガイド面56,56とされている。
【0035】
このような第一スライド部50は、基部30の正面側に積層されるようにして、第一裏面51を基部30の基部主面33に当接させて配置される。また、この際、第一スライド部50の第一被ガイド面52aは、基部30の基部ガイド面36に当接する。この第一スライド部50の第一被ガイド面52aが基部30の基部ガイド面36にその延在方向に向かって案内されることによって、第一スライド部50は基部30に対して第一方向D1に相対移動可能とされている。
【0036】
ここで、
図2及び
図3に示すように、第一スライド部50における凹部54の第一方向D1両側の部分には、該第一スライド部50を軸線O1方向に貫通するとともに第一方向D1に延在する長孔状をなす第一取付孔58が一対形成されている。この第一取付孔58には、正面側から背面側に向かって第一取付用ネジ59が挿通されており、該第一取付用ネジ59の先端は、基部主面33に形成された雌ネジ孔(図示省略)に螺合されている。これによって、第一スライド部50は、基部30に対する第一方向D1の相対移動を第一取付孔58の延在範囲で許容されながら、基部30に一体に取り付けられており、即ち、第一スライド部50は基部30に対して第一方向D1に相対移動可能に取り付けられている。
【0037】
第二スライド部60は、
図2〜
図4に示すように、第一方向D1及び第二方向D2を含む平面、即ち、軸線O1に直交する平面に沿って延在する板状をなしており、即ち、基部30及び第一スライド部50と平行な板状をなしている。この第二スライド部60は、正面視において第一方向D1を長手方向としており、該正面視形状が第一スライド部50よりも一回り小さいものとされている。
【0038】
この第二スライド部60は、その第二方向D2に沿う径方向の内側の部分が第一スライド部50よりも該径方向内側に突出するようにして、第一スライド部50の凹部54内に配置されている。
第二スライド部60の背面側を向く面は、
図4に示すように、軸線O1に直交する平坦状をなす第二裏面62とされている。また、第二スライド部60における第一方向D1両側を向く一対の面は、それぞれ第二方向D2に延在する第二被ガイド面63とされている。
第二スライド部60が凹部54内に配置された状態では、第二裏面62が摺動面55に対して摺動可能に当接し、第二被ガイド面63が第一ガイド面56に対して摺動可能に当接する。これによって、第二スライド部60は、凹部54内において第二方向D2に向かって第一スライド部50に対して相対移動可能とされている。
【0039】
また、
図2及び
図3に示すように、第二スライド部60には、第一方向D1に離間するようにして該第二スライド部60を軸線O1方向に貫通するとともに第二方向D2に延在する長孔状をなす第二取付孔64が形成されている。
この第二取付孔64には、正面側から背面側に向かってそれぞれ第二取付用ネジ65が挿通されており、該第二取付用ネジ65の先端は、凹部54における摺動面55に形成された雌ネジ孔(図示省略)に螺合されている。これによって、第二スライド部60は、基部30に対する第二方向D2の相対移動を第二取付孔64の延在範囲で許容されながら第一スライド部50に一体に取り付けられており、即ち、第二スライド部60は第一スライド部50に対して第二方向D2に相対移動可能に取り付けられている。
【0040】
このような第二スライド部60に形成された押圧面61は、第一管材1の外周面1aを第一方向D1及び第二方向D2に押圧可能な面であって、第二スライド部60における第二方向D2に沿う径方向の内側を向く面から該径方向の外側に向かって凹む円弧面状をなしている。即ち、押圧面61は、軸線O1を中心として管材の周方向にわたって延びる円弧面状をなしており、第一管材1の外周面1aに周方向にわたって当接可能とされている。
【0041】
なお、この押圧面61は、該押圧面61が第一方向D1、第二方向D2に移動する際に、第一管材1に対して該押圧面61からの押圧力を伝達させることができる範囲にわたって第一管材1の周方向に延在しており、例えば第一管材の外周面に軸線O1を中心とした90°〜180°の範囲にわたって延在している。本実施形態の押圧面61は、第一管材1の外周面の略180°の範囲にわたって当接するように延在しており、正面視形状にて半円状をなしている。
【0042】
調整部70は、可動部40を可動させることで基部30に対する押圧面61の第一方向D1及び第二方向D2の相対位置を調整する役割を有しており、
図2〜
図4に示すように、第一調整部材71と第二調整部材81とを備えている。
第一調整部材71は、第一スライド部50の基部30に対する第一方向D1の相対位置を調整する部材である。この第一調整部材71は、基部30に固定される第一ブロック72と、該第一ブロック72に取り付けられた第一調整ネジ74とを有している。
【0043】
第一ブロック72は、直方体状をなしており、基部30における第一方向D1を向く一方の側面に第一ブロック固定ネジ73を介して固定されている。この第一ブロック72は、
図2及び
図4に示すように、その一部が基部30の基部主面33よりも正面側に突出しており、これによって第一ブロック72は、第一スライド部50における第一方向D1を向く側面と対向している。
【0044】
第一調整ネジ74は、第一ブロック72を第一方向D1に挿通しており、該第一ブロック72に対して挿通方向に相対移動不能、かつ、挿通方向回りに相対回転可能に取り付けられている。また、第一調整ネジ74の一端側、即ち、第一スライド部50側の部分には第一雄ネジ部75が形成されており、この第一雄ネジ部75は、
図3に示すように、第一スライド部50における第一方向D1を向く側面に形成された第一雌ネジ部57に第一方向D1から螺合されている。
これによって、第一調整ネジ74を回転させると、該第一調整ネジ74の第一雄ネジ部75を介して接続された第一スライド部50が、該第一雄ネジ部75及び第一雌ネジ部57のピッチに従って基部30に対して第一方向D1に相対移動する。
【0045】
第二調整部材81は、第二スライド部60の第一スライド部50に対する第二方向D2の相対位置を調整する部材である。この第二調整部材81は、第一スライド部50に固定される第二ブロック82と、該第二ブロック82に取り付けられた第二調整ネジ84とを有している。
【0046】
第二ブロック82は、直方体状をなしており、第一スライド部50における第二方向D2に沿う径方向の外側を向く面に第二ブロック固定ネジ83を介して固定されている。この第二ブロック82は、
図2及び
図4に示すように、その一部が第一スライド部50の第一主面53よりもさらに正面側に突出しており、これによって第二ブロック82は、第二スライド部60の第二方向D2に沿う径方向の外側を向く面と対向している。
【0047】
第二調整ネジ84は、第二ブロック82を第二方向D2に挿通しており、該第二ブロック82に対して挿通方向に相対移動不能、かつ、挿通方向回りに相対回転可能に取り付けられている。また、第二調整ネジ84の一端側、即ち、第二スライド部60側の部分には第二雄ネジ部85が形成されており、この第二雄ネジ部85は、
図3に示すように、第二スライド部60の第二方向D2に沿う径方向の外側を向く面に形成された第二雌ネジ部66に第二方向D2から螺合されている。
これによって、第二調整ネジ84を回転させると、該第二調整ネジ84の第二雄ネジ部85を介して接続された第二スライド部60が、該第二雄ネジ部85及び第二雌ネジ部のピッチに従って第一スライド部50に対して第二方向D2に相対移動する。
【0048】
次に、上記構成の管軸調整治具20A,20Bを備えたバット融着機100による第一管材1及び第二管材2の接合手順について説明する。
まず
図1に示すように、クランプ部10の第一クランプ11によって第一管材1を把持するとともに第二クランプ12によって第二管材2を把持し、これら第一管材1及び第二管材2の端面1b,2bを対向配置させる。この段階では、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士は互いに離間している。また、このように第一クランプ11によって第一管材1が把持された状態では、第一管材1の外周面1aが一対の管軸調整治具20A,20Bの押圧面61に対向するようにして、これら押圧面61の間を挿通している。
【0049】
次いで、一対の管軸調整治具20A,20Bによって第一管材1の軸線位置を調整することで、第一管材1及び第二管材2の軸線O1,О2同士のズレを是正する。このような軸線位置の調整は、一対の管軸調整治具20A,20Bの調整部70を操作することで行われる。
具体的には、第一管材1の端面1aと第二管材2の端面2aとを突合せ、第一管材1及び第二管材2の軸線O1,О2のズレ量を測定し、当該ズレ量に応じて第一管材1の軸線O1が第二管材2の軸線О2に一致するように、第一管材1を変位させる。
例えば第一管材1を第一方向D1に変位させる際には、
図5(a)に示すように、調整部70のうち第一調整部材71を操作することによって、即ち、第一調整部材71における第一調整ネジ74を回転させることによって、基部30に対する第一スライド部50の第一方向D1の相対位置を調整する。これによって、第一スライド部50の第一方向D1の基部30に対する相対位置が変化すると、該第一スライド部50に取り付けられた第二スライド部60も第一方向D1に移動し、その結果、第二スライド部60の押圧面61を介して第一管材1の外周面1aに第一方向D1に向かっての押圧力が付与される。これによって、第一スライド部50の第一方向D1の変位に応じて第一管材1を第一方向D1に移動させることができ、第一管材1の軸線位置を第一方向D1に任意に調整することができる。
【0050】
また、第一管材1を第二方向D2に変位させる際には、
図5(b)に示すように、調整部70のうち第二調整部材81を操作することによって、即ち、第二調整部材81における第二調整ネジ84を回転させることによって、第一スライド部50に対する第二スライド部60の第二方向D2の相対位置を調整する。これによって、第二スライド部60の第二方向D2の相対位置が径方向内側に向かって変化すると、該第二スライド部60の押圧面61を介して第一管材1の外周面1aに第二方向D2に向かっての押圧力が付与される。これによって、第二スライド部60の第二方向D2の変位に応じて第一管材1を第二方向D2に移動させることができ、第一管材1の軸線位置を第二方向D2に任意に調整することができる。
【0051】
このような第一管材1の軸線位置の調整は、一対の管軸調整治具20A,20Bのそれぞれの調整部70を操作することで自在に行うことができる
また、第一管材1が扁平な場合には、一対の管軸調整治具20A,20Bの押圧面61がそれぞれ径方向内側に移動するように調整部70の第二調整部材81を操作して、円弧面状をなす一対の押圧面61で第一管材1を挟み込むことによって、該第一管材1の軸線О1に直交する断面形状を真円に近づける。
【0052】
以上のような管軸調整治具20A,20Bの操作によって、第一管材1の軸線О1を第二管材2の軸線О2と一致させた後、加熱部13を加熱位置に移動させ、第一クランプ11及び第二クランプ12を近接移動させることで、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2bを加熱部13の第一加熱面13a、第二加熱面13bにそれぞれ接触させる。これにより、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2bがそれぞれ加熱溶融する。
【0053】
次いで、第一クランプ11及び第二クランプ12を離間させることにより、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2bを加熱部13から離間させ、該加熱部13を退避位置に移動させる。その後、第一クランプ11及び第二クランプ12を再び近接させることによって、第一管材1及び第二管材2の端面1b,2b同士を接触させ、一定時間加圧した後、除圧して冷却保持する。これにより、端面1b,2b同士が融着されることで第一管材1及び第二管材2が接合される。
【0054】
以上のように、本実施形態の管軸調整治具20A,20Bによれば、調整部70によって可動部40の押圧面61を基部30に対して第一方向D1又は第二方向D2に相対移動させると、該押圧面61を介して第一管材1を第一方向D1又は第二方向D2に押圧することができる。これにより、第一管材1の軸線О1を互いに交差する第一方向D1及び第二方向D2に任意に変位させることができる。
【0055】
即ち、押圧面61の基部30に対する相対位置の調整のみをもって、第一管材1及び該第一管材1の軸線O1を互いに交差する第一方向D1及び第二方向D2に任意に変位させることができるため、容易かつ正確に第一管材1の軸線位置の調整を行うことが可能となる。
したがって、本実施形態のバット融着機100では、第一管材1及び第二管材2を加熱融着する前にこれら第一管材1及び第二管材2の軸線О1,О2を容易に一致させることができるため、これら第一管材1及び第二管材2を適切に接続することができる。
【0056】
また、本実施形態では、可動部40が第一スライド部50及び第二スライド部60からなり、調整部70としてこれら第一スライド部50及び第二スライド部60の相対位置を調整する第一調整部材71、第二調整部材81を採用している。よって、これら第一調整部材71及び第二調整部材81を操作して第一スライド部50、第二スライド部60を適宜移動させることで、第二スライド部60に形成された押圧面61を任意に変位させることができる。したがって、該押圧面61を介して第一管材1を第一方向D1及び第二方向D2に確実に変位させ、軸線О1の位置を容易かつ正確に調整することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の管軸調整治具20A,20Bでは、押圧面61が第一管材1の周方向に延びる円弧面状をなしているため、押圧面61を基部30に対して第一方向D1又は第二方向D2に相対移動させた際に該押圧面61を介して第一方向D1又は第二方向D2に向かっての押圧力を確実に付与することができる。また、このような円弧面状をなす押圧面61によって第一管材1の外周面1aを押圧することで、該第一管材1の扁平を是正することができ、真円度を向上させることができる。
【0058】
また、バット融着機100に一対の管軸調整治具20A,20Bを設けることで、一対の押圧面61によって第一管材1を第一方向D1又は第二方向D2にそれぞれ押圧することができるため、該第一管材1の軸線位置の微調整をより容易に行うことができる。
さらに、第一管材1の軸線О1を挟んだ反対側から一対の管軸調整治具20A,20Bの各押圧面61によって第一管材1を押圧することで、第一管材1の扁平をより確実に是正することができる。
【0059】
また、本実施形態では、調整部70における第一調整部材71が第一調整ネジ74を有し、第二調整部材81が第二調整ネジ84を有しているため、これらネジのピッチに従って第一スライド部50及び第二スライド部60を移動させることができ、即ち、これらの移動量の微調整を容易に行うことができる。したがって、押圧面61の基部30に対する相対移動の微調整を容易に行うことができるため、第一管材1の軸線位置の調整をより正確に行うことが可能となる。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば実施形態では、バット融着機100が一対の管軸調整治具20A,20Bを備えるものとして説明したが、バット融着機100に一の管軸調整治具20Aのみを設けた構成であってもよい。これによっても実施形態同様、第一管材1の軸線位置を容易かつ正確に調整することができる。
【0061】
また、第一方向D1と第二方向D2とは、互いに交差して第一管材1の径方向にそれぞれ延びる方向である限り、適宜設定することができる。例えば、第一方向D1を上下方向として第二方向D2を水平方向としてもよいし、これら第一方向D1と第二方向D2とが直交していなくともよい。
【0062】
また、基部30に対する第一スライド部50の第一方向D1の相対移動量、及び、第二スライド部60の第一スライド部50に対する相対移動量を表示する目盛が形成されていてもよい。これによって、第一管材1の軸線O1の変位量を容易に把握することができる。
【0063】
さらに、第一管材1の外周面1aとの間で高摩擦力が作用するゴム等の滑り止め部材が押圧面61に設けられていてもよい。これによって、押圧面61と第一管材1の外周面1aとの間での滑りを抑え、押圧面61の変位に従って第一管材1の軸線O1を確実に変位させることができる。
【0064】
また、実施形態では押圧面61の形状を円弧面状としたが、押圧面61を第一方向D1及び第二方向D2に向かって基部30に対して相対移動させた際に第一管材1に対して押圧力を作用させることができる形状ならば他の形状であってもよく、例えば矩形溝状やV字溝状等の他の形状であってもよい。
【0065】
さらに、実施形態では、可動部40を第一スライド部50と第二スライド部60との二つの部材から構成してこれら第一スライド部50及び第二スライド部60がそれぞれ移動可能な構成としたが、可動部40が基部に対して第一方向及び第二方向の双方向に相対移動可能であるならば二つの部材から構成する必要はなく、即ち、可動部40を一体物として構成してもよい。この場合、可動部40に形成された押圧面61は、調整部70の操作による可動部40の基部30に対する第一方向D1及び第二方向D2の相対移動とともに、これら第一方向D1及び第二方向D2に相対移動する。これによっても実施形態同様、第一管材1を第一方向D1及び第二方向D2に押圧することができ、該第一管材1の軸線位置を任意に調整することができる。
【0066】
また、実施形態では、管軸調整治具20A,20Bが第一管材1の軸線位置を調整するものとして設けられていたが、第二管材2の軸線位置を調整するものとして設けられてもよく、第一管材1及び第二管材2の両方の軸線O1,O2を調整するものとして設けてもよい。
【0067】
さらに、一の基部30に対して二つの可動部40を設け、これら可動部40に形成された押圧面61がそれぞれ第一管材1の軸線位置O1、第二管材2の軸線位置O2を調整するものであってもよい。
【0068】
また、実施形態では、管軸調整治具20A,20Bをバット融着機100に設けた例について説明したが、一対の管材の軸線位置のズレの是正が必要な装置ならば他の装置に設けてもよい。