特許第5903313号(P5903313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903313
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ヘッドランプの光軸制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/10 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   B60Q1/10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-82384(P2012-82384)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209061(P2013-209061A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 惇信
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−094446(JP,U)
【文献】 特開2000−225887(JP,A)
【文献】 特開平09−169241(JP,A)
【文献】 特開2013−049344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるヘッドランプの光軸方向を調整するヘッドランプの光軸制御装置において、
車両に前方照射可能に搭載されてアクチュエータにより光軸が調整可能なヘッドランプと、
車両の少なくとも前後方向の傾斜角を検知する傾斜角検知手段と、
車両のドアの開閉を検知するドア開閉検知手段と、
前記ドア開閉検知手段によりドア開が検知されたドア開時に前記傾斜角検知手段により検知された基準車両傾斜角と前記ドア開閉検知手段により全ドア閉が検知された全ドア閉時に検知された車両傾斜角との差分に基づいて前記ヘッドランプの光軸を調整するヘッドランプコントロールユニットとを備えた、ことを特徴とするヘッドランプの光軸制御装置。
【請求項2】
車速を検知する車速検知手段を備え、
前記ヘッドランプコントロールユニットは、前記ドア開閉検知手段による全ドア閉の検知前に前記車速検知手段が車速を検知したときは前記車速検知手段が車速検知時に前記傾斜角検知手段により検知された車両傾斜角と前記基準車両傾斜角との差分に基づいて前記ヘッドランプの光軸を調整することを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプの光軸制御装置。
【請求項3】
前記傾斜検知手段は、Gセンサにより構成される傾斜角センサであることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドランプの光軸制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるヘッドランプの光軸方向を調整するヘッドランプの光軸制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、乗員や荷物の積載状況、或いは路面状況等によって、車両の前後方向の傾斜角が水平方向に対して傾くことがある。このときヘッドランプの向きも車両の傾斜角に応じて上下方向に変化してしまう。そこで、車両の前後方向の傾斜角、即ちピッチ角に応じてヘッドランプの光軸を自動的に上下方向に調整するオートレベリングシステムが知られている。
【0003】
この種のオートレベリングシステムとしては、例えば、前輪サスペンションと後輪サスペンション、或いはいずれか一方のサスペンションに結合したアーム等を備えた車高センサが車両の前後方向の傾斜角を読み取り、この車高センサの傾斜角検知に基づいてヘッドランプの光軸調整を行うものである。このシステムでは車高センサの出力信号、例えば出力電圧がヘッドランプコントロールユニット(ヘッドランプECU)に入力されると、ヘッドランプECUは入力された車両傾斜角と、予め設定されている基準車両傾斜角に基づいて車両の前後方向の傾斜角、いわゆるピッチ角を算出し、算出した傾斜角と基準車両傾斜角との角度差が生じている場合に、その角度差分だけヘッドランプの光軸を補正するように上下方向に調整する。
【0004】
また、特許文献1に開示のヘッドランプの光軸制御装置は、前輪軸及び後輪軸の近傍にそれぞれ地上からの高さを検知する車高センサを設け、この車高センサからの情報に基づいて車両の振動を検出する振動検知手段と、車高センサからの情報に基づいて車両の前後方向の車両傾斜角を検知する傾斜検知手段と、ドアの開閉を検知するドア開閉検知手段と、このドア開閉検知手段によりドアが開状態であると検出されかつ振動検知手段により車両の振動が所定未満であることが検出されると傾斜検知手段からの車両傾斜角及び予め設定された基準車両傾斜角に基づきヘッドランプの光軸を調整する光軸制御手段とを備える。そして、ドア開閉検知手段によりドアが開状態にあることが検知されかつ振動検知手段により車両の振幅が所定量未満である時に乗員の乗降が終了して車両姿勢が安定したとみなし、このとき光軸制御手段において傾斜検出手段からの車両傾斜角及び予め設定された基準車両傾斜角に基づき傾斜角を算出し、算出した傾斜角と基準車両傾斜角との角度差が生じている場合に、その角度差に相当する分だけヘッドランプの光軸を補正するように調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−248627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記オートレベリングシステムによると、サスペンションに結合した車高センサによる車両傾斜角と予め設定された基準車両傾斜角に基づいて傾斜角を算出し、この算出した傾斜角と基準傾斜角との角度差に応じてヘッドランプの光軸を調整する。また、特許文献1のヘッドランプの光軸制御装置は、ドア開閉検知手段によりドアが開状態でかつ振動検知手段による車両の振動が所定未満であるときに傾斜検知手段からの車両傾斜角と予め設定された基準傾斜角に基づき車両の前後方向の傾斜角を算出し、算出した傾斜角と基準車両傾斜角との角度差に応じてヘッドランプの光軸を調整する。
【0007】
しかし、これらオートレベリングシステム及びヘッドランプの光軸制御装置によると、検出された車両傾斜角と予め設定された車両の基準車両傾斜角とにより算出された傾斜角との角度差に応じて光軸調整することから、その光軸補正の際に例えば路面が傾斜していたり、車輪が縁石に乗り上げていた場合等には、傾斜検出手段により路面の傾斜や車輪が縁石に乗り上げ等に起因する車両の傾斜角を含む傾斜角(車両姿勢による傾斜角+路面の傾斜や車輪が縁石に乗り上げに起因する車両の傾斜角)が車両傾斜角として検出され、路面の傾斜角に影響されて適正なヘッドランプの光軸補正が得られないことが懸念される。
【0008】
また、車高センサを構造が複雑なサスペンション機構部或いはサスペンションに結合或いは近接して取り付けることから、その取り付けスペースの確保が難しく、かつチッピング、泥はね等の影響を受けやすく、耐衝撃性や配置位置に配慮が必要であった。
【0009】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、簡単な構成で路面の傾斜等に影響されることなく適切にヘッドランプの光軸制御が確保できるヘッドランプの光軸制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1に記載のヘッドランプの光軸制御装置の発明は、車両に搭載されるヘッドランプの光軸方向を調整するヘッドランプの光軸制御装置において、車両に前方照射可能に搭載されてアクチュエータにより光軸が調整可能なヘッドランプと、車両の少なくとも前後方向の傾斜角を検知する傾斜角検知手段と、車両のドアの開閉を検知するドア開閉検知手段と、前記ドア開閉検知手段によりドア開が検知されたドア開時に前記傾斜角検知手段により検知された基準車両傾斜角と前記ドア開閉検知手段により全ドア閉が検知された全ドア閉時に検知された車両傾斜角との差分に基づいて前記ヘッドランプの光軸を調整するヘッドランプコントロールユニットとを備えたことを特徴とする。
【0011】
これによると、ドア開時に傾斜角検知手段により検知した車両の傾斜角である基準車両傾斜角と、ドアを閉じた全ドア閉時に傾斜角検知手段により検知した車両傾斜角との差分がドア開時から全ドア閉時における乗員変動や荷物の積載等による車体自体の姿勢変化量であり、この差分に基づいてヘッドランプの光軸を調整することで路面の傾斜等の影響を除外した適切なヘッドランプの光軸制御が得られる。また、ドア開閉検知手段、傾斜検知手段及びヘッドランプコントロールユニット等の簡単な構成でヘッドランプの光軸制御装置が形成できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1のヘッドランプの光軸制御装置において、車速を検知する車速検知手段を備え、前記ヘッドランプコントロールユニットは、前記ドア開閉検知手段による全ドア閉の検知前に前記車速検知手段が車速を検知したときは前記車速検知手段が車速検知時に前記傾斜角検知手段により検知された車両傾斜角と前記基準車両傾斜角との差分に基づいて前記ヘッドランプの光軸を調整することを特徴とする。
【0013】
これによると、ドア開閉検知手段による全ドア閉を検知する前に車速検知手段が車速を検知したとき、例えば全ドアの内少なくとも1つのドアの閉状態が不完全な、いわゆる半ドア状態で走行した際において、ドア開時に傾斜角検知手段により検知した車両の傾斜角である基準車両傾斜角と車両が走行開始時に傾斜角検知手段により検知した車両の傾斜角との差分がドア開時から走行開始時における乗員変動や荷物の積載等による車体の姿勢変化量であり、この差分に基づいてヘッドランプの光軸を調整することで路面の傾斜等の影響を除外して適切にヘッドランプの光軸制御が得られる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のヘッドランプの光軸制御装置において、前記傾斜検知手段は、Gセンサにより構成される傾斜角センサであることを特徴とする。
【0015】
これは傾斜検知手段の一例であって、傾斜角検知手段としてGセンサにより構成される構成が簡単で小型軽量の傾斜角センサを用いることで、サスペンション等から離れた適宜箇所に配置することができ、チッピング、泥はね等の影響を受けることのない任意の箇所に配置することが可能になり、設計の自由度が確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、ドア開時に傾斜角検知手段により検知した基準車両傾斜角と、全ドア閉時に傾斜角検知手段により検知した車両傾斜角との差分に基づいてヘッドランプの光軸を調整することで路面の傾斜等の影響を除外した適切なヘッドランプの光軸制御が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態における車両に搭載されたヘッドランプの光軸制御装置の概略構成図である。
図2】ヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
図3】ヘッドランプの光軸制御装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図4】ヘッドランプの光軸制御装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図4を参照して説明する。
【0019】
図1は、車両に搭載されたヘッドランプの光軸制御装置の概略構成図、図2はヘッドランプの概略構成図であり、図3は光軸制御装置の制御ルーチンを示すフローチャート、図4はヘッドランプの光軸制御装置の作動説明図である。
【0020】
図1に示すように、車両1にはその前部に左右一対のヘッドランプ10が前方照射可能に搭載され、各ヘッドランプ10にはそれぞれヘッドランプ10の照射方向となる光軸Xの向きを調整するためのアクチュエータ15が設けられ、アクチュエータ15はヘッドランプコントロールユニット(ヘッドランプECU)20に接続されている。
【0021】
なお、本実施の形態における車両1は、例えば5ドア車であって、乗員乗降用の一対のフロントドア2及びリヤドア3を有すると共に、荷物搭載用のリヤゲート4を有している。
【0022】
ここで、図2を参照してヘッドランプ10の構成の一例を説明する。ヘッドランプ10は、ランプ11とそのランプ11を固定するリフレクタ12、リフレクタ12の上部を揺動自在に支持する支持部13及びリフレクタ12の下部を支持するアクチュエータ15が配設されて構成される。アクチュエータ15は、例えばステップモータであって、ロッド16の先端がリフレクタ12の下部に連結され、ロッド16が伸縮或いは出没作動すると、リフレクタ12が支持部13の回りで揺動して、矢印で示すようにヘッドランプ10の光軸Xの向きが上下方向に変化する。これにより、ヘッドランプECU20からの指令によりアクチュエータ15を作動させることによって、ヘッドランプ10の光軸Xが調整される。
【0023】
ヘッドランプECU20は、ヘッドランプ10の光軸調整等の制御を行うための制御装置である。ヘッドランプECU20には、バッテリが電源として接続されると共に、その入力側にイグニッションスイッチ21、車両1のフロントドア2、リヤドア3及びリヤゲート4の各ドアにそれぞれ設けられてそれぞれのドア開閉状態を検知するドア開閉センサ(ドア開閉検知手段)22、23及び24と、車両1の車速を検知する車速センサ(車速検出手段)25と、ヘッドランプECU20に一体或いはヘッドランプECU20の近傍に設けられて車両1の少なくとも前後方向の傾斜角を検知する傾斜角センサ(傾斜角検出手段)26等の各センサが接続される。
【0024】
傾斜角センサ26は比較的小型で構成が簡単な周知のGセンサよりなり、ヘッドランプECU20或いは車両1に固定した支持部に移動自在に支持した質量体の支持力の変化に基づいて車両の傾斜角を検出する。
【0025】
一方、ヘッドランプECU20の出力側には、上述のヘッドランプ10のアクチュエータ15が接続される。
【0026】
このように構成されたヘッドランプの光軸制御装置の作動及び作用を図3に示すフローチャート及び図4に示す作動説明図に基づいて説明する。
【0027】
例えば、傾斜した路面や車輪を縁石に乗り上げて車両1が傾斜して停車した状態、本実施の形態の説明では図4(a)に模式的に示すように傾斜角θで傾斜する路面R上に車両1が停車し、この車両1に乗降或いは荷物等を積み降ろす積載作業等にあたり、フロントドア2、リヤドア3或いはリヤゲート4のいずれか1つのドアが開放されると、ステップS101において対応するドア開閉センサ22、23、或いは24がドア開であることを検出し、ステップS102においてイグニッションスイッチ21がOFFであるか否か判別する。
【0028】
ステップS102の判別結果がYES、即ちイグニッションスイッチ21がOFFの場合は、乗員が乗車していない状態或いは乗車しているが車両1のエンジンが停止状態でフロントドア2、リヤドア3或いはリヤゲート4のいずれか1つのドアが開かれたとみなしステップS103に移行してヘッドランプECU20を起動する。なお、イグニッションスイッチ21がONではヘッドランプECU20は起動された状態である。
【0029】
ステップS103でヘッドランプECU20が起動すると、ステップS104において傾斜角センサ26によってドア開時の車両1の傾斜角を検出してヘッドランプECU20に基準車両傾斜角Aとして記録する。この基準車両傾斜角Aは、路面Rの路面傾斜角θを含み、路面傾斜角θとこのときの路面Rに対する車両1自体の傾斜角である初期車両姿勢傾斜角αとの総計となる(基準車両傾斜角A=路面傾斜角θ+初期車両姿勢傾斜角α)。
【0030】
ここで、車両1に乗降或いは荷物等の積み降ろし後にフロントドア2、リヤドア3及びリヤゲート4の全てのドアが閉じられると、ドア開閉センサ22、23、及び24により各ドアが閉じられた全ドア閉を検出する。一方、フロントドア2、リヤドア3及びリヤゲート4のいずれか少なくとも1つのドア閉操作が不完全、いわゆる半ドア状態ではドア開閉センサ22、23、及び24のいずれかがドア開状態を検知して全ドア閉は検知されない。
【0031】
そして、ステップS105においてドア開閉センサ22、23、及び24による全ドア閉の検知が車速センサ25による車速検知より先か否かを判別する。
【0032】
ステップS105の判別結果がYES、即ち全ドア閉の場合は、ステップS106に移行して全ドア閉をドア開閉センサ22、23、及び24が検知した時に傾斜角センサ26が検知した車両1の傾斜角を車両傾斜角BとしてヘッドランプECU20に記憶する。この乗車或いは荷物積載等による積載及び乗員変動した後の車両1の車両傾斜角Bは、例えば図4(b)に示すように路面Rの路面傾斜角θが含まれ、路面傾斜角θと乗降や荷物積み降ろしによる車両1自体の車両姿勢変化後の車両姿勢傾斜角βを含む(車両傾斜角B=路面傾斜角θ+車両姿勢傾斜角β)。
【0033】
続くステップS107において車両傾斜角Bと基準車両傾斜角Aの差、即ち車両傾斜角B(=路面傾斜角θ+車両姿勢傾斜角β)から基準車両傾斜角A(=路面傾斜角θ+初期姿勢傾斜角α)を減算して乗車或いは荷物積載等の前と後の車両姿勢変化量C(=車両傾斜角B−基準車両傾斜角A=車両姿勢傾斜角β−初期車両傾斜角α)を演算して算出する。この車両姿勢変化量Cは、全ドア閉時における傾斜角センサ26により検出した車両傾斜角Bとドア閉時における傾斜角センサ26により検出した基準車両傾斜角Aとの差分であり、路面傾斜角θの影響を除外した車両1自体の積載及び乗員変動等による車両姿勢変化量である。
【0034】
ステップS108において、ステップS107で算出された車両姿勢変化量Cに基づいてヘッドランプECU20からの指令によりアクチュエータ15を作動させることによってヘッドランプ10の光軸Xを調整する。即ち、ドア開時と全ドア閉時における傾斜角センサ26による検出傾斜角の差分である車両1自体の積載及び乗員変動等による車両姿勢変化量Cに従ってヘッドランプ10の光軸Xを調整することで、路面傾斜角θによる影響を除外した適切なヘッドランプの光軸制御ができる。
【0035】
一方、上記車両1に乗降或いは荷物等の積み降ろした積載及び乗員変動した後にフロントドア2、リヤドア3及びリヤゲート4を閉じた後のステップS105において判別結果がNOの場合、即ち、ドアセンサ22、23、及び24のいずれかがドア閉を検知しない、即ち全ドア閉でない状態で車速センサ26が車速を検知したときには、フロントドア2、リヤドア3及びリヤゲート4のいずれか少なくとも1つのドア閉が不完全、いわゆる半ドア状態で走行したとみなされる。このステップS105における判別結果がNOのときはステップS109に移行して車速センサ25が車速を検知した時、即ち車両1が走行を開始した時の傾斜角センサ26によって検知した車両1の傾斜角を車両1の車両傾斜角DとしてヘッドランプECU20に記憶する。この車両姿勢変化後の車両傾斜角Dは、図4(b)に示すように路面Rの路面傾斜角θを含み、路面傾斜角θと乗車或いは荷物積載等による積載及び乗員変動した後の車両1自体の傾斜角である車両姿勢傾斜角βを含む(車両傾斜角D=路面傾斜角θ+車両姿勢傾斜角β)。
【0036】
続くステップS110において車両傾斜角Dと基準車両傾斜角Aの差、即ち車両傾斜角Dから基準車両傾斜角Aを減算して車両姿勢変化量E(=車両傾斜角D−基準車両傾斜角A=車両姿勢傾斜角β−初期車両傾斜角α)を演算して算出する。この車両姿勢変化量Eは、ドア開時と車両走行開始時における傾斜角センサ26により検知された傾斜角の差分であり、路面傾斜角θの影響を除外した車両1自体の積載及び乗員変動による車両姿勢変化量である。
【0037】
ステップS111において、ステップS110で算出された車両姿勢変化量Eに基づいてヘッドランプECU20からの指令によりアクチュエータ15を作動させることによって、ヘッドランプ10の光軸Xを調整する。即ち、ドア開時と車両走行開始時における傾斜角センサ26による検出傾斜角の差分である車両1自体の積載及び乗員変動による姿勢変化量に従ってヘッドランプ10の光軸Xを調整することで、仮にドア閉が不完全な状態、いわゆる半ドア状態で走行した際にも路面傾斜角θに影響されることなく適切にヘッドランプ10の光軸Xの制御ができる。
【0038】
また、例えば、車両1が走行した後、エンジンを停止することなく乗降或いは荷物搭載等のために図4(a)に示すように路面傾斜角θの路面Rに停車してフロントドア2、リヤドア3或いはリヤゲート4のいずれか1つが開放すると、ステップS101においてドアセンサ22、23、或いは24がドア開であることを検出する。そして、ステップS102においてイグニッションスイッチ21がOFFであるか否か判別される。この場合イグニッションスイッチ21がONでありかつヘッドランプECU20が起動状態に保持されてステップS104に移行し、ステップS104において傾斜角センサ26にて車両1の傾斜角を検出してヘッドランプECU20に基準車両傾斜角Aを記録する。これ以降の作動及び作用は上記各ステップと同様であり説明を省略する。このエンジンを停止することなくドアを開閉して乗降或いは荷物の積み降ろしをする場合にも、同様にドア開閉時のドア開閉時における傾斜角センサ26による検出傾斜角の差分である車両1自体の積載及び乗員変動による姿勢変化量に従ってヘッドランプ10の光軸Xを調整することで、路面傾斜角θに影響されることなく適切にヘッドランプの光軸制御ができる。また、ドア閉が不完全、いわゆる半ドア状態で走行した路面傾斜角θに影響されることなく適切にヘッドランプ10の光軸制御ができる。
【0039】
また、イグニッションスイッチ21、ドア開閉センサ22、23、24、車速センサ26等は既存の車両1に搭載された各種センサ等によって構成され、かつ簡単な構成でかつ安価なGセンサからなる傾斜センサ26及びヘッドランプECU20を付加する簡単な構成でヘッドランプの光軸制御装置が形成できる。
【0040】
また、傾斜角検知手段としてGセンサにより構成される構成が簡単で小型軽量の傾斜角センサ26を用いることで、傾斜角センサ26をサスペンション等から離れた適宜箇所に配置することができ、チッピング、泥はね等の影響を受けることのない任意の箇所に配置することが可能になり、設計の自由度が確保できる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、路面Rが傾斜する場合を例に説明したが、車輪が縁石に乗り上げていた場合や、他の外部要因で車両が傾斜した場合でも同様にそれらの外部要因に影響されることなく適切にヘッドランプ10の光軸Xが制御ができ、種々の条件下に適切にヘッドランプ10の光軸制御が適切に実行できる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。例えば上記実施の形態では、車両傾斜角B及び車両傾斜角Dとの差分に従ってヘッドランプ10の光軸Xを調整したが、これらの差分が予め設定された範囲においては光軸Xの調整を不作動とすることでヘッドライト10の光軸調整回数を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 フロントドア(ドア)
3 リヤドア(ドア)
4 リヤゲート(ドア)
10 ヘッドランプ
15 アクチュエータ
20 ヘッドランプコントロールユニット(ヘッドランプECU)
21 イグニッションスイッチ
22、23、24 ドア開閉センサ(ドア開閉検知手段)
25 車速センサ(車速検知手段)
26 傾斜角センサ(傾斜角検知手段)
X 光軸
R 路面
A 基準車両傾斜角
B 車両傾斜角
C 車両姿勢変化量
D 車両傾斜角
E 車両姿勢変化量
図1
図2
図3
図4