(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の化粧シートの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の化粧シートを示す。本実施形態の化粧シート1は、金属積層シート10と、金属積層シート10の一方の面側に設けられた透明表面層20と、金属積層シート10と透明表面層20とを接着させるための接着剤層30と、透明表面層20と接着剤層30との間に設けられた印刷層40と、金属積層シート10の、透明表面層20とは反対側の面に設けられた粘着剤層50と、粘着剤層50の露出面に貼合された離型シート60とを備える。
【0009】
(金属積層シート)
本実施形態における金属積層シート10は、透明基材層11と、透明基材層11の、透明表面層20側に設けられた金属層12とを備える。
【0010】
[透明基材層]
透明基材層11は、化粧シート1の芯材となるものである。なお、本発明においては、「透明」とは、JIS K7105に従って測定した全光線透過率が80%以上、好ましくは90%以上のことである。
透明基材層11を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性、可撓性及び機械的強度の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2軸延伸フィルムとすることが好ましい。
透明基材層11は、通常、無着色であるが、着色されていても構わない。
また、透明基材層11においては、粘着剤層50との接着強度を向上させるために、粘着剤層50側の面にプライマを塗布してもよい。プライマとしては、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。
【0011】
透明基材層11の厚さは10〜100μmが好ましく、12〜50μmがより好ましい。透明基材層11の厚さが前記上限値以下であれば、充分な透明性が確保され、金属層12の視認性が向上する。また、透明基材層11の厚さが前記下限値以上であれば、充分な機械的強度が得られる。
【0012】
[金属層]
金属層12は、化粧シート1に金属調の外観を付与するための層である。金属層12を構成する金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、クロム等が挙げられる。
金属層12は金属蒸着膜であってもよいし、金属箔であってもよい。金属層12が金属蒸着膜である場合には、透明基材層11の片面に金属を蒸着させて形成してもよいし、透明基材層11とは異なる支持体の片面に金属を蒸着させて形成し、これを透明基材層11に貼付してもよい。金属層12が金属箔である場合には、接着剤を用いて透明基材層11に貼付すればよい。
【0013】
金属層12の厚さは特に制限はないが、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜0.08μmであることがより好ましい。金属層12の厚さが前記下限値以上であれば、化粧シート1に金属調を充分に付与でき、前記上限値以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0014】
(透明表面層)
透明表面層20は、光散乱性粒子を含まず且つ表面にエンボス加工が施されていない層であり、非艶消し層となっている。
透明表面層20を構成する樹脂としては、ポリエチレンタレフタレート、ポリ塩化ビニルが挙げられる。化粧シート1を壁紙として使用する場合には、難燃性を有することから、ポリ塩化ビニルが好ましい。
透明表面層20は着色されていれば、化粧シート1の意匠性をより向上させることができるが、無着色であっても構わない。
透明表面層20の厚さは20〜700μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。透明表面層20の厚さが前記下限値以上であれば、より深みのある金属調にすることができ、また、機械的強度を向上させることができ、前記上限値以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0015】
(接着剤層)
接着剤層30は、金属積層シート10と透明表面層20とを接着可能な接着剤から構成される。
接着剤としては、例えば、アクリル系ホットメルト接着剤、エチレン酢酸ビニル系ホットメルト接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶液系接着剤、スチレン−ブタジエンゴムエマルジョン系接着剤、アクリル溶液系接着剤等を用いることができる。これらの中でも、熱ラミネートを適用できることから、アクリル系ホットメルト接着剤、エチレン酢酸ビニル系ホットメルト接着剤が好ましい。
接着剤層30は、通常、無着色であるが、着色されていても構わない。
【0016】
接着剤層30における光散乱性粒子の含有量は、接着剤100質量部に対して0.03〜10質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が前記下限値以上であれば、充分な艶消し効果が得られ、前記上限値以下であれば、充分な光透過性を確保でき、金属層12を充分に視認できる。
【0017】
接着剤層30の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましく、3〜5μmであることが特に好ましい。接着剤層30の厚さが前記下限値以上であれば、充分な接着強度で透明基材層11と透明表面層20とを接着でき、前記上限値以下であれば、接着剤層30を容易に形成できる。
【0018】
(印刷層)
印刷層40は、透明表面層20の裏面(接着剤層30側の面)に印刷されて形成された層、透明プラスチックフィルムに印刷が施された印刷シートが挙げられる。
いずれの場合も印刷層40は、印刷によって絵柄や模様が形成されている。絵柄、模様としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、タイル貼模様、煉瓦積模様、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、全面印刷等が挙げられる。これら絵柄および模様は組み合わせることもできる。
【0019】
印刷で使用されるインキは、バインダ樹脂と着色剤とを含有する。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジルジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ベリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔粉等の真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。上記着色剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
(粘着剤層)
粘着剤層50は、壁等の被着体に化粧シート1を貼着可能な粘着剤から構成される。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤等が挙げられるが、粘着性、耐候性及び汎用性の点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル重合体を構成する単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
また、アクリル系粘着剤には粘着付与剤が含まれてもよい。粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系、フェノール系、クマロン系などの粘着付与剤が挙げられる。
【0021】
粘着剤層50の厚さは特に制限はないが、30〜100μmであることが好ましい。粘着剤層50の厚さが前記下限値以上であれば、化粧シート1を被着体に貼着させた際に充分な貼着強度を確保でき、前記上限値以下であれば、粘着剤層50を容易に形成できる。
【0022】
(離型シート)
離型シート60は、粘着剤が接着しないものであれば制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるシート、シリコーンなどの離型剤がコーティングされた紙などが挙げられる。
離型シート60の厚さは、取扱性やコストなどを点から、25〜50μmであることが好ましい。
【0023】
(艶消しの方法)
本実施形態の化粧シート1においては、透明基材層11及び接着剤層30の少なくとも一方が艶消し層になっており、透明表面層20は非艶消し層になっている。ここで、「艶消し」とは、JIS Z8105に従って測定した光沢度(%)を5%以上低下させることであり、「非艶消し」は、光沢度の低下が5%未満のことである。
【0024】
本実施形態において、透明基材層11が艶消し層である場合、艶消し方法としては、透明基材層11の金属層12側の面にあらかじめエンボス加工を施す方法が採られる。透明基材層11の金属層12側の面にあらかじめエンボス加工を施すと、金属層12の、透明表面層20側の面に凹凸を形成でき、金属光沢を抑制することができる。
接着剤層30が艶消し層である場合、艶消し方法としては、接着剤と屈折率が異なる光散乱性粒子を含有させて接着剤層30に入射した光を散乱させる方法、接着剤層30の表面をあらかじめエンボス加工して、接着剤層30に入射する光を散乱させる方法を採ればよい。接着剤層30に入射した光を散乱させることにより、金属層12の金属光沢を抑制することができる。
光散乱性粒子の材質としては、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、チタニア、炭酸カルシウム、カーボン等の無機材料、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機材料が挙げられる。
光散乱性粒子は、接着剤層30を構成する樹脂との屈折率差が、光散乱性がより高くなり、艶消し効果がより高くなることから、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
光散乱性粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状、鱗片状、多面体状、針状が挙げられる。光散乱性粒子の体積平均粒子径は0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましい。
【0025】
(製造方法)
上記実施形態の化粧シートは、例えば、以下の製造方法で製造することができる。
すなわち、まず、透明基材層11の一方の面に、金属蒸着又は金属箔の貼付により、金属層12を設けて、金属積層シート10を得る。
次いで、透明表面層20の片面に、印刷を施す又は印刷シートを積層するなどして、印刷層40を設ける。なお、印刷シートを積層する場合には、接着剤を用いてまたは熱ラミネートにより透明表面層20に接着する。
次いで、金属層12の露出面に、接着剤を含む接着剤形成用塗工液を塗工、乾燥させて接着剤層30を形成する。その際の塗工方法としては、例えば、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法などが挙げられる。
次いで、金属層12と、印刷層40を設けた透明表面層20とを、接着剤層30により貼り合せる。
次いで、離型シート60に粘着剤層50が積層した粘着シートを、粘着剤層50により、透明基材層11に貼り合せて、化粧シート1を得る。
【0026】
(作用効果)
上記実施形態の化粧シート1では、金属層12の金属光沢を抑えることができるため、高級感のある金属調にすることができる。
また、透明表面層20が非艶消し層であることにより、金属光沢が抑制された金属調に深みを付与することができ、化粧シート1の意匠性を向上させることができる。
また、本実施形態の化粧シート1は、印刷層40を備えるため、意匠性をより向上させることができる。
また、本実施形態の化粧シート1では、離型シート60を剥離することによって露出する粘着剤層50により、被着体に容易に貼着することができる。
【0027】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、金属積層シートの金属層を粘着剤層側に配置してもよい。その場合の透明基材層の艶消し方法は、透明基材層の少なくとも一方の面をエンボス加工する方法、透明基材層を構成する樹脂と屈折率が異なる光散乱性粒子を含有させて、透明基材層に入射した光を散乱させる方法を採ればよい。
透明基材層に含まれる光散乱性粒子としては、接着剤層を艶消しにするために使用される光散乱性粒子と同様のものを使用することができる。
光散乱性粒子は、透明基材層を構成する樹脂との屈折率差が、光散乱性がより高くなり、艶消し効果がより高くなることから、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
透明基材層における光散乱性粒子の含有量は、透明基材層を構成する樹脂100質量部に対して0.03〜10質量部であることが好ましく、0.05〜3質量部であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が前記下限値以上であれば、充分な艶消し効果が得られ、前記上限値以下であれば、充分な光透過性を確保でき、金属層を充分に視認できる。
【0028】
また、本発明の化粧シートにおいては、印刷層を備えていなくてもよい。印刷層を備えていなくても金属層のみで意匠性を向上させることができる。
また、本発明の化粧シートは、粘着剤層及び離型シートを備えていなくてもよい。粘着剤層及び離型シートを備えない化粧シートを被着体に貼着する際には、金属層の、透明基材層とは反対側の面に接着剤を塗布し又は被着体に接着剤を塗布し、該接着剤を介して化粧シートを貼着すればよい。
【0029】
(用途)
本発明の化粧シートは、例えば、建物の外壁、内壁、柱又は天井、住宅の玄関扉などの建築部材に貼着される壁紙として好適に使用することができる。また、本発明の化粧シートは、自動車の外装・内装、車両・船舶の外装・内装、看板・サインなどにも使用可能である。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
カレンダー成形により得た透明なポリ塩化ビニルのシート(厚さ:138μm)の片面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系インク(SXインク 昭和インク工業所製)を用いてグラビア印刷(木目、抽象柄3〜4版)を施して、印刷層を形成した。
また、マット調ポリエチレンテレフタレートフィルム(PTHZ−12、ユニチカ製)の片面に、アルミニウムの蒸着を施して金属層を形成し、金属積層シートを得た。
次いで、上記の金属層の表面に、ポリエステル系接着剤(主剤:AD581、東洋モートン製 硬化剤:ADRT−8、東洋モートン製)をマイクログラビアにより、乾燥塗布量が15g/m
2となるように塗布して、接着剤層を形成した。
次いで、この接着剤層を用いて、上記印刷層を形成したポリ塩化ビニルシートと、上記金属積層シートとを、金属層上の接着剤層と印刷層とが接するように貼り合せ、50℃で3日間養生した。
次いで、ポリ塩化ビニルシートの表側にエンボス加工を施し、マット調ポリエチレンテレフタレートフィルムの、金属層とは反対側(裏面側)に、アクリル系粘着剤(BPA−001A 藤倉化成製)をコンマコーターにより、乾燥塗布量が約45g/m
2となるように塗布して、粘着剤層を形成した。次いで、その粘着剤層に離型紙を貼り合せ、35℃で2日間養生した。これにより、化粧シートを得た。
【0031】
(比較例1)
マット調ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、表面に凹凸のない厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100、東洋紡績製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0032】
[評価]
各例の化粧シートについて、JIS Z8741に準拠し、ポリ塩化ビニルシート側の面の60°鏡面光沢を測定した。その結果、実施例1では15〜16であり、比較例1では21〜22であった。すなわち、実施例1の化粧シートでは、光沢が適度に抑えられていた。