特許第5903344号(P5903344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903344
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】集合住宅インターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   H04M9/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-153796(P2012-153796)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-17666(P2014-17666A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】田原 拓
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−235219(JP,A)
【文献】 特開2012−054628(JP,A)
【文献】 特開2002−359580(JP,A)
【文献】 特開2006−041590(JP,A)
【文献】 特開2004−088210(JP,A)
【文献】 特開平06−315174(JP,A)
【文献】 国際公開第96/14694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/76− 3/44
3/50− 3/60
7/005−7/015
H04M 9/00− 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者が居住者を呼び出すために集合住宅のエントランスに設置された集合玄関機と、前記集合玄関機からの呼び出しに居住者が応答するために各住戸に設置された居室親機と、前記集合玄関機及び前記居室親機の間の通信を制御する制御機とを有し、前記集合玄関機と前記居室親機とは前記制御機を介した伝送線で接続され、前記制御機から前記居室親機へ至る伝送線がデータ線と少なくとも2本の通話線を備えた親機幹線で構成され、複数の居室親機が前記親機幹線から分岐器によって分岐接続された集合住宅インターホンシステムであって、
前記制御機は、前記居室親機に対し通話線の切り替えを要求する通話線切替要求部と、
前記通話線の帰還特性が当該通話線の長さに伴って変化することにより発生するハウリングを防止するための帰還量調整部と、
前記帰還量調整部の所定のパラメータを記憶する記憶部とを有する一方、
前記居室親機は、前記通話線切替要求を受けて前記分岐器に対し通話線切替信号を出力する分岐切替送信部を有すると共に、前記分岐器は複数線の通話線の何れかに切り替えて前記居室親機を接続する切替スイッチを有し、
前記帰還量調整部は、前記通話線の帰還信号を打ち消すための帰還量打ち消し回路と、前記帰還量打ち消し回路を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記通話線の帰還量調整を前記切替スイッチを切り替えて順次実施し、それぞれの通話線の帰還量が最小となる前記帰還量打ち消し回路の前記パラメータを前記記憶部に書込み、
機器間の通話路形成時は、使用する通話線に応じたパラメータを使用して前記帰還量打ち消し回路を動作させることを特徴とする集合住宅インターホンシステム。
【請求項2】
前記帰還量打ち消し回路は、所定の信号を増幅する増幅回路と、帰還量を前記増幅回路出力で削減する減算回路とを有し、
前記パラメータが前記増幅回路の増幅率を決定する抵抗の抵抗値であることを特徴とする請求項1記載の集合住宅インターホンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅インターホンシステムに関し、特に居室親機と制御機の間に複数本の通話線が設けられた集合住宅インターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
制御機と居室親機の間の伝送線を、信号線と2本の通話線で構成した集合住宅インターホンシステムがある(例えば特許文献1参照)。
インターホンで使用される通話線は通常並行する2線で構成されており、線路長が長くなると線路抵抗や線路間容量が大きくなり、帰還量が大きくなることが知られている。そのため、伝送線の長さに対応したハウリング対策が必要であり、通話線に帰還量打ち消し回路を設けて対応している。
例えば特許文献2では、帰還量打ち消し回路に送話音声の利得を調整して出力する増幅回路を設け、所定の調整工程を実行して帰還量を良好に打ち消すよう増幅器の利得を調整し、帰還量を最小にしてハウリングを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−235219号公報
【特許文献2】特開2012−54628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成の場合、同時に2通話路を形成することができるため利便性が良いが、ハウリングを防止するためには帰還量を調整するための回路も2回路必要であった。特に、特許文献2に開示されているような帰還量調整機能を設けた場合、大幅なコスト増は避けられなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、複数の通話線を備えた伝送線を使用する場合でも、1回路の帰還量調整回路のみで個々の通話線の帰還量を最適に調整できる集合住宅インターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、来訪者が居住者を呼び出すために集合住宅のエントランスに設置された集合玄関機と、集合玄関機からの呼び出しに居住者が応答するために各住戸に設置された居室親機と、集合玄関機及び居室親機の間の通信を制御する制御機とを有し、集合玄関機と居室親機とは制御機を介した伝送線で接続され、制御機から居室親機へ至る伝送線がデータ線と少なくとも2本の通話線を備えた親機幹線で構成され、複数の居室親機が親機幹線から分岐器によって分岐接続された集合住宅インターホンシステムであって、制御機は、居室親機に対し通話線の切り替えを要求する通話線切替要求部と、通話線の帰還特性が通話線の長さに伴って変化することにより発生するハウリングを防止するための帰還量調整部と、帰還量調整部の所定のパラメータを記憶する記憶部とを有する一方、居室親機は、通話線切替要求を受けて分岐器に対し通話線切替信号を出力する分岐切替送信部を有すると共に、分岐器は複数線の通話線の何れかに切り替えて居室親機を接続する切替スイッチを有し、帰還量調整部は、通話線の帰還信号を打ち消すための帰還量打ち消し回路と、帰還量打ち消し回路を制御する制御部とを有し、制御部は、通話線の帰還量調整を切替スイッチを切り替えて順次実施し、それぞれの通話線の帰還量が最小となる帰還量打ち消し回路のパラメータを記憶部に書込み、機器間の通話路形成時は、使用する通話線に応じたパラメータを使用して帰還量打ち消し回路を動作させることを特徴とする。
この構成によれば、帰還量がハウリングが発生しない最適値と成った時のパラメータを記憶しておくため、実際の通話路形成時に使用する通話線に応じて記憶したパラメータを読み出して帰還量を調整することができ、複数の通話線に対して個々に帰還量調整部を設けることなく、1つの帰還量調整部により全ての通話線の帰還量調整を実施できる。よって、低コストでハウリングを防止できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、帰還量打ち消し回路は、所定の信号を増幅する増幅回路と、帰還量を増幅回路出力で削減する減算回路とを有し、パラメータが増幅回路の増幅率を決定する抵抗の抵抗値であることを特徴とする。
この構成によれば、単純に増幅率の調整で実施するため、帰還量の調整がし易いしパラメータを把握し易い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の通話線に対して個々に帰還量調整部を設けることなく、1つの帰還量調整部により全ての通話線の帰還量調整を実施でき、低コストでハウリングを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示す構成図である。
図2】制御機のブロック説明図である。
図3】居室親機のブロック説明図である。
図4】分岐器のブロック説明図である。
図5】帰還量調整部の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示す構成図であり、1は集合住宅のエントランスに設置されて来訪者が居住者を呼び出すための集合玄関機、2は各住戸に設置されて集合玄関機1からの呼び出しを報音し、居住者が来訪者と通話するための居室親機、3は集合玄関機1と居室親機2との間の通信を制御する制御機である。
集合玄関機1はデータ線(信号線)と1本の通話線から成る伝送線L1を介して制御機3に接続されている。居室親機2は、データ線と2本の通話線から成る親機幹線L2を介して制御機3に接続されている。そして、居室親機2はデータ線と1本の通話線、更に分岐器制御線を有する伝送線L3を介して親機幹線L2上に設置された分岐器4に接続されてる。
【0011】
図2は居室親機2の構成の一部をブロックで示した説明図である。居室親機2は、図2に示すように、後述する通話線切替要求部33により送信される信号を受信し、分岐器4に対し通話路を切り替えるための切替信号を送信する分岐切替送信部21と、この分岐切替送信部21を制御する親機CPU22、制御機3と通信するための親機インターフェース(親機IF)23を備えている。尚、居室親機2は、通話するためのマイク及びスピーカ、応答操作等各種操作をするための操作部等を備えているが、省略してある。
【0012】
図3は制御機3の構成の一部をブロックで示した説明図である。制御機3は、図3に示すように通話線の長さに伴って変化する帰還量を小さくなるよう制御してハウリングの発生を防止するための帰還量調整部31と、帰還量調整部31により設定された帰還量設定抵抗の抵抗値を記憶する抵抗値記憶部32と、居室親機2に対し通話線の切り替えを要求する通話線切替要求部33、制御機3の各部を制御する制御機CPU34、集合玄関機1と通信する集合玄関機インターフェース(集合玄関機IF)35、居室親機2と通信する居室親機インターフェース(居室親機IF)36等を備えている。
【0013】
図4は分岐器4の構成の一部をブロックで示した説明図である。分岐器4は図4に示すように、データ線L2aと2本の通話線(第1通話線L2b、第2通話線L2c)で構成される親機幹線L2から、データ線L2aと何れか1本の通話線を分岐するよう切替スイッチ41を備えて構成されている。
【0014】
上記構成の集合住宅インターホンシステムの動作を次に説明する。尚、集合玄関機1からの呼び出し、居室親機2からの応答動作等インターホンの基本動作は従来と同様であるため説明を省略し、ここでは通話線L2b,L2cの帰還量調整制御の流れを中心に説明する。
【0015】
制御機3の電源が投入されると、制御機CPU34が帰還量調整部31に実行命令を出す。この命令を受けて、帰還量調整部31は帰還量調整制御を実施し、例えば始めに第1通話線L2bの帰還量調整を実施する。この調整は、上記特許文献2に記載の如く実施される。具体的に図5を参照して説明する。
図5は、帰還量調整部31のブロック図であり、51はテスト信号を出力するFPGAで構成された発振回路、52は帰還量を打ち消す信号を生成する帰還量打ち消し回路、53は親機幹線L2を介して居室親機2と通信するためにハイブリッド回路で形成された送受信回路、54は居室親機2から伝送された音声信号を集合玄関機1等へ伝送する受話回路、55は打ち消し後の帰還量のピークを検出するピーク検出回路、56は居室親機2に伝送する信号を集合玄関機1等の機器からの信号或いは発振回路51が出力するテスト信号の何れかに切り替えるスイッチ、58は帰還量調整部31の各回路を制御する制御部である。
【0016】
尚、抵抗値記憶部32は帰還量打ち消し回路52に設けられている。また、帰還量打ち消し回路52は、デジタル・ポテンショメータ(DP)52bを有して信号を増幅する機能を備えた打ち消し信号生成回路52a、打ち消し信号生成回路52aの出力信号により親機幹線L2から伝送された信号(帰還量)を削減する減算回路57を有し、抵抗値記憶部32はDP52bにおいて、信号の調整値により設定された抵抗値が記憶される。
【0017】
制御機CPU34の実行命令を受けた制御部58は、発振回路51に、例えば5kHzの正弦波のテスト信号を生成させるとともにスイッチ56を切換え、発振回路51からのテスト信号を親機幹線L2に送出すると共に、帰還量打ち消し回路52に送出する。
テスト信号を受信した帰還量打ち消し回路52は、テスト信号の振幅をDP52bで抵抗値を変化させることにより調整して出力し、減算回路57で帰還量を減算して受話回路54に出力する。
制御部58は、この減算された信号をピーク検出回路55の出力情報から読み取り、この信号が最小となるポイントを打ち消し信号生成回路52aを制御して探索する。具体的に、DP52bの増幅率を変更して探索する。
こうして最小となるポイントを探索したら、その時のDP52bの抵抗値を抵抗値記憶部32に書き込み、次の通話線の帰還量調整に移る。
【0018】
第1通話線L2bの帰還量調整が終了したら、帰還量調整部31が制御機CPU34に対して終了信号を出し、この信号を受けた制御機CPU34は、第2通話線L2cの帰還量調整工程に入る。
制御機CPU34が通話線切替要求部33を制御して、通話線切替要求部33から切替要求信号が出力される。切替要求信号は、帰還量を調整している親機幹線L2に接続されている全ての居室親機2に対してデータ線L2aを介して送信される。この切替要求信号を受信した居室親機2の親機CPU22は、分岐切替送信部21を起動して分岐器制御線を介して分岐器4に切替信号を出力させる。この信号により分岐器4のスイッチ41が切り替わり、個々の居室親機2は第2通話線L2cに接続される。
その後、帰還量調整部31により、上記第1通話線L2bの調整と同等な流れで第2通話線L2cの帰還量調整が行われ、調整した結果である抵抗値が抵抗値記憶部32へ書き込まれる。
【0019】
こうして、抵抗値記憶部32に保存された抵抗値データに基づいて使用する通話線に応じて、対応する抵抗値を抵抗値記憶部32から読み取って、DP52bの増幅率を設定し、機器間の通話路を形成する。
【0020】
このように、帰還量がハウリングが発生しない最適値と成った時のパラメータを記憶しておくため、実際の通話路形成時に使用する通話線に応じて記憶したパラメータを読み出して帰還量を調整することができ、2本の通話線L2b,L2cに対して個々に帰還量調整部31を設けることなく、1つの帰還量調整部31により全ての通話線の帰還量調整を実施できる。よって、低コストでハウリングを防止できる。
また、単純に増幅率の調整で実施するため、帰還量の調整がし易いしパラメータを把握し易い。
【0021】
尚、上記実施形態では通話線を第1通話線L2bと第2通話線L2cの2本としているが、親機幹線L2を構成する通話線は、2本以上であっても本発明を容易に適用することができ、1つの帰還量調整部31を備えるだけで、各通話線の帰還量を良好に調整できる。
また、親機CPU22と分岐切替送信部21とを別体としているが親機CPU22に分岐切替送信部21を組み込んで一体としても良いし、制御機3においても制御機CPU34、帰還量調整部31、抵抗値記憶部32、通話線切替要求部33を一体としても良い。
【符号の説明】
【0022】
1・・集合玄関機、2・・居室親機、3・・制御機、4・・分岐器、21・・分岐切替送信部、22・・親機CPU、31・・帰還量調整部、32・・抵抗値記憶部(記憶部)、33・・通話線切替要求部、34・・制御機CPU、41・・切替スイッチ、52・・帰還量打ち消し回路、52a・・打ち消し信号生成回路(増幅回路)、57・・減算回路、58・・制御部、L2・・親機幹線、L2b・・第1通話線、L2c・・第2通話線。
図1
図2
図3
図4
図5