特許第5903357号(P5903357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903357
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】魚信音響システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20160331BHJP
   A01K 97/12 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A01K87/00 640Z
   A01K97/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-191907(P2012-191907)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-45722(P2014-45722A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英二
(72)【発明者】
【氏名】川村 拓司
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−127218(JP,A)
【文献】 特開2002−233284(JP,A)
【文献】 米国特許第05410746(US,A)
【文献】 特開昭55−108230(JP,A)
【文献】 特開2005−058197(JP,A)
【文献】 特表平10−501692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
A01K 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿の中空内部の壁面に取り付けられて、前記釣竿の竿先に発生する、該竿先から伸び出る仕掛けに掛かった魚による魚信である第1の振動及び、前記仕掛けに掛かった前記魚以外の障害物により発生する第2の振動を含む振動を音信号として取得するマイクと、
前記釣竿内に配置され、前記マイクにより取得された前記音信号を無線信号に変換して送信する送信部と、
前記送信部と分離して設けられ、前記送信部から送信された無線信号を受信し、前記第1の振動と前記第2の振動とに選別して、前記第1の振動を前記第2の振動とは異なる音信号に復調し、少なくとも前記第1の振動による音信号を出力する受信部と、
前記受信部と取り外し可能に端子接続し、該受信部から受信した音信号に基づき、前記魚による魚信を表す音を生成する音信号生成部と、
を具備することを特徴とする魚信音響システム。
【請求項2】
前記第1の振動は、前記釣竿による実釣時に前記仕掛けに掛かった魚種によって異なる魚信の周波数帯域内の振動であり、
前記受信部は、前記第1の振動と、前記第2の振動を、それぞれ可聴周波数帯域内の異なる任意の周波数の音信号又は、異なる任意の音量の音信号として生成することを特徴とする請求項1に記載の魚信音響システム。
【請求項3】
前記マイクは、前記釣竿の壁面上に形成された平坦面に取り付けられ、該平坦面が前記魚信の振動における最大振幅となる位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚信音響システム。
【請求項4】
前記受信部は、帽子に装着され、
前記音信号生成部は、再生周波数帯域を少なくとも十数Hz〜100Hz程度の音信号を再生するイヤホン又は携帯型スピーカの何れかで構成され、前記帽子の側面から前記受信部に接続するケーブルが引き出されて、前記音信号生成部に接続することを特徴とする請求項1に記載の魚信音響システム。
【請求項5】
釣竿の中空内部の壁面から延伸した複数の支持部材により、前記中空内部の略中央に配置され、前記釣竿に発生した振動を音信号として取得するマイクと、
前記マイクの前方で、前記釣竿の竿先側に広がるホーン形状を成し、前記マイクと当接する平坦な面の底部を有し、前記底部から拡がり延伸した円筒形状のホーン外周部が前記釣竿の中空内部の壁面に密着して固定される集音部と、
前記釣竿内に設けられ、前記集音部により集音されて前記マイクにより取得された前記振動に基づく音信号を無線信号に変換して送信する送信部と、
前記送信部から送信された無線信号を受信し、音信号に復調する受信部と、
前記受信部と取り外し可能に端子接続し、該受信部で再生された音信号を出力する音信号生成部と、
を具備することを特徴とする魚信音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掛かった魚による魚信を音響に変換して、魚信の振動と共に音として釣り人に伝達する魚信音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣竿に魚が掛かった場合、釣り人は、魚による引きの強さや魚が発する振動、所謂、魚信から経験的に、掛かった魚の種別や大きさを推測している。また、同様に、根掛かり等の川底又は海底に存在する岩や障害物に仕掛けが掛かった場合には、竿先は引き込まれるが魚信とは異なる振動が釣竿に生じる。実釣の経験の少ない釣り人においては、 振動により魚か根掛かりかを判断できるのみでも有用である。
【0003】
例えば、特許文献1には、中空に形成された釣竿の竿尻(グリップ)内に、ボビン等に導線が巻回されて形成されたコイルと、コイル近傍に配置されて導線の巻回方向と交差する方向に揺動する棒磁石を片持ち支持する支持部と、棒磁石の揺動に伴いコイルに発生した誘導電流を増幅する増幅器と、増幅された誘導電流を外部出力する出力端子又は、音として発するスピーカと、が収納されている。この釣竿においては、竿尻に生じた振動に応じた誘導電流が生成され、音として釣り人に伝えられる。
【0004】
また、特許文献2には、磯や岸壁において、リールが装着された釣竿をロッドスタンド等に掛けた置き竿に対して、魚が掛かった際にその魚信を無線信号に変換して、受信機を持つ釣り人に音で知らせるシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−73665号公報
【特許文献2】特開2005−58197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載される片持ち支持された棒磁石は、釣竿の振動に従ってコイルの近傍で揺動して誘導電流を発生する構成である。このような構成において、棒磁石の重さのため、釣竿の振動と棒磁石の振動が必ずしも一致しない。つまり、釣竿の振動の仕方(振動数)によっては、棒磁石の支持部分が振れを先行して、棒磁石の先端(非支持部分)が後に続いて振動する。よって、竿尻の振動が先行して棒磁石の揺れが遅れた場合となり、釣竿自体の振動を抑制する事態が発生する。
【0007】
一般に、釣竿のタイプ(掛けカーブ等)が変わった場合、感度の違いや微妙な感覚の違いがあったとしても、魚の種別の違いによる魚信が異なっていることは感じ取れるため、掛かった魚の種別や大きさを推測することは可能である。しかし、釣竿自体が振動を変化させた場合には、実際の魚信とは異なった釣竿の振動となっているため、釣り人は違和感を持ち、経験的に判断できた魚種やその魚体の大きさが分からなくなる。即ち、振動を発生する機構自体が状況により釣竿の本来の振動を変えてしまい、その振動音に至っては、混乱を招く虞が多い。
【0008】
また、イヤホンで釣竿の振動を聴音する構成例では、釣竿の竿尻にライン接続されているため、釣竿をあげて竿尻が大きく移動した場合や、竿尻を脇に挟んだ際には、イヤホンが引っ張られて耳から外れることか想定される。イヤホンケーブルを長くした場合には、周辺の物に引っ掛かり、取り回しが不便である。さらに、スピーカは、釣竿内に収納した構成では、防水機構とすることは容易ではなく、片付ける際の釣竿の水洗いが難しくなる。さらに、内蔵スピーカから大音量を発生させることは困難であり、周囲の騒音により聞き取れない事態も想定される。
【0009】
また、引用文献2においては、リール(スピニングリール)及び釣糸ガイドを利用した構成であるため、渓流竿や鮎竿のように、リールや釣糸ガイドを使用しない釣竿においては、適用することができない。
そこで本発明は、小型且つコードレスであり、釣竿の種別に制限なく、釣竿内に中空な収納スペースがあれば容易に適用することができ、取り回しのよい釣竿を実現する魚信音響システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、釣竿の中空内部の壁面に設けられた平坦面に取り付けられて、前記釣竿の竿先に発生する振動を、竿先から伸び出る仕掛けに掛かった魚による魚信である第1の振動及び、前記仕掛けに前記魚以外に掛かった障害物により発生する第2の振動を、音信号として取得するマイクと、前記釣竿内に配置され、前記マイクにより取得された前記音信号を無線信号に変換して送信する送信部と、前記送信部と分離して設けられ、前記送信部から送信された無線信号を受信し、前記第1の振動と前記第2の振動とに選別して、少なくとも前記第1の振動を前記魚による魚信として音信号に復調する受信部と、前記受信部と取り外し可能に端子接続し、該受信部で再生された音信号を出力する音信号生成部と、を具備する魚信音響システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型且つコードレスであり、釣竿の種別に制限なく、釣竿内に中空な収納スペースがあれば容易に適用することができ、取り回しのよい釣竿を実現する魚信音響システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係る魚信音響システムを搭載する釣竿の全体的な構成例を示す図である。
図2図2は、釣竿に収納された魚信音響システムの概念的な配置構成を示す図である。
図3図3は、マイクの配置状態を示す図である。
図4図4は、魚信音響システムの通信装置及び受信装置のブロック構成を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る魚信音響システムの変形例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る釣竿に収納された魚信音響システムの概念的な配置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る魚信音響システム(以下、音響システムと称する)を搭載する釣竿の全体的な構成例を示す図、図2は、釣竿に収納された魚信音響システムの概念的な配置構成を示す図、図3は、マイクロフォン(以下、マイクと称する)の配置状態を示す図である。図4は、通信機器の構成例を示す図である。
【0014】
本実施形態の音響システムは、釣竿1の竿尻側の内部に設けられた送信器である信号検出送信器3と、携帯可能な無線通信を行う受信器2と、受信器2に着脱可能に接続されたイヤホン4とで構成される。以下に説明する本実施形態では、信号検出送信器3を竿尻側の内部に収納しているが、この位置に限定されるものではなく、竿先側等、管内径によるスペースには制限されるが釣竿の中空内であれば、各構成部位の配置を工夫することで、適宜変更できるものであり、限定されるものではない。また、釣竿においては、振動の伝達がよい材料により形成することが好ましく、例えば、弾性率Eが高いカーボン繊維シート等により形成された釣竿が好適する。
【0015】
本実施形態では、釣竿1に負荷が掛かり、竿先が引き込まれる際の引きの強さやその振動等の釣竿に発生する振動を利用して電極間の距離を変動させた容量変化による電気信号化を行う機器、例えば、マイクで取得し、音信号(可聴周波数帯の電気信号)として取得し、さらに音信号を送信器で無線信号、例えばFM無線信号に変換して受信器側に無線送信する。受信器側は、受信した無線信号を復調して音信号に変換し、音信号生成部であるイヤホンにより釣竿の振動を音として聴音することができる。以下の説明の中で、釣竿に発生した振動をマイクで取得し、電気信号に変換された信号を音信号と称している。音信号からイヤホンにより再生された音を釣り人が聞き取ることを聴音(音を聴きとり、聴き分けること)することと称している。
【0016】
本実施形態においては、イヤホン(小型音信号生成部)は、防滴構造であり、再生周波数帯域を少なくとも略15Hz〜100Hz程度の音を再生する。勿論、この再生周波数帯域に限定されるものではなく、専用竿であれば、対象魚が発生させる振動をカバーできる周波数帯域を有していればよい。つまり、釣竿毎に対象魚となる魚による魚信(第1の振動)に偏って、聴音することができるように、振動を選択的に音作成してもよい。例えば、鮎竿に魚信音響システムを搭載するのであれば、鮎が発生させる振動を選択的に強調し、川底で石や川の中の障害物等に仕掛けが引っ掛かった場合を含む振動(第2の振動)には、上記とは異なる音又は、釣り人へ音を生成することなく、釣竿の振れ具合だけで判断させるように仕向けてもよい。また、マイクロフォンで取得した振動数(周波数)が可聴周波数帯域でない場合には、可聴周波数帯内の任意の周波数にシフトさせて、音を作成してもよい。
【0017】
信号検出送信器3は、マイク11と、音信号増幅部12と、送信部13と、送信アンテナ14と、電源15と、選択用スイッチ16とで構成される。これらの構成部位は、図示しないプリント基板上に実装されて構成されている。また、受信器2は、受信アンテナ21と、受信部22と、増幅部23、電源24とで構成される。電源は、一般的な電池(ボタン電池やリチウム電池等)を使用し、図示しない取り外し可能な電池室カバーを設けることにより、より簡単に電池交換ができる。
【0018】
本実施形態において、マイク11は、容量性マイク、例えばエレクトレット・コンデンサ型マイク(ECM)を適用する。他にも、コンタクトマイク、接話型マイク、カーボンマイク又は圧電マイク等も適用できる。音信号増幅部12は、マイク11で検出した音信号を増幅する。マイク11は、図3に示すように、釣竿1内部に平坦面を形成し、その平坦面にマイク11を密着するように設けて、釣竿1に発生した振動を効率よくピックアップする。尚、本実施形態では、平坦面を形成する際に、内部を樹脂部材で密に形成しているが、平坦面内部に間隙を設けて、平坦面を層状に形成し、音を伝達させてもよい。
【0019】
音信号増幅部12は、マイク11から出力される音信号が微小信号であるため、前段階として、音信号を増幅処理する。
送信部13は、公知な構成であり、図4に示すように、可変リアクタンス部31、LC発信部32、周波数逓倍部33、切り替え部34、AFC回路35及び、電力増幅部36により構成される。切り替え部34は、可変リアクタンス部31に対して、複数の送信器が近づいた際に混信しないように、異なる送信周波数となるように、予め設定された複数のチャンネルから使用するチャンネルを設定する。切り替え部34は、竿尻底部に設けられている選択用スイッチ16の選択操作により、使用するチャンネルが設定される。
【0020】
受信部22も公知な構成であり、高周波増幅部41、周波数変換部42、中間波増幅部43、振幅制限部44、周波数弁別部45及び、ディエンファシス部46により構成される。受信部22には、図示しないフィルタ、例えばバンドパスフィルタ等を加えて、実釣に基づく魚信の周波数帯域のみを取り出して、音信号に変換してもよい。
【0021】
電源15は、受信器2の電源24と同様な電池を使用し、竿尻の底部に設けられた蓋部18を開けて装填する。蓋部18と竿尻の底部との間には、ゴムや樹脂からなるパッキング部材19が介在するように装着されており、蓋部18を閉じた際には、竿尻内が水密な構造となり、内部への水等の進入を防止する。尚、竿尻内部においても、釣竿の継ぎ目の開口から水等が信号検出送信器3に達しないように、竿内部に分離用壁が設けられている。
【0022】
増幅部23は、イヤホン4に出力するために、音信号を増幅する低周波増幅部であり、さらに、図示しないボリュームを設けることで、イヤホン4の音量調節も実現できる。尚、イヤホン4から発せられる音響は、ブザー音、楽器の音、メロディー音及びアナウンスガイド(声)等が考えられ、音の強弱及び/又は、音の高低音の変化により出力される。
【0023】
また、本実施形態では、竿尻内に、マイクと一体化した信号検出送信器3を配置したがこのような配置に限定されることない。例えば、マイクと信号検出送信器3を別体に構成して、ライン接続し、マイクの取り付け位置を釣竿における釣り人の把持箇所より竿先側に配置してもよい。また、魚信の振動数が既知であれば、釣竿に伝搬される振動の腹部分(最も振幅が大きい部分)となる釣竿内の箇所にマイクを配置することで、効率よく、振動を検出することも可能である。
【0024】
以上説明したように、これまで釣り人が釣竿から伝わる振動や竿先の引かれ具合により、魚種やその大きさを推測していたが、釣竿の竿尻に本実施形態の魚信音響システムを搭載することにより、これらの加えて、魚信に基づく聴音による情報(判断材料)が加わることとなり、釣り人にとっては、体感的に与えられる釣竿の振動及び釣竿の把持部に掛かる負荷と、視覚的に与えられる竿先が引き込まれている竿形状(掛けカーブ)とに加えて、聴音として与えられる魚信に基づく音という、新たな情報(判断材料)が与えられるため、魚種の推測がより確実なものとなり、実釣をより楽しむことができる。
【0025】
また、釣竿内に設けられた送信器と受信器がコードレスの無線通信により、情報伝達が行われるため、従来の釣竿の取り回しと同様に扱うことができる。また、受信器が小型軽量化されているため、携帯音響機器と同様に上着のポケット内に収用でき、イヤホンのコードも邪魔にならない。送信器と受信器の電源が市販電池を利用でき、取り替えが容易であり、使い勝手がよい。さらに、経験の浅い釣り人においては、釣竿に発生した振動が魚信か、仕掛けが異物や石等に根掛かったか否かの判断に対して、聴音によるサポートを得ることができ、正しい判断の手助けの1つとなっている。
【0026】
図5を参照して、第1の実施形態の変形例について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る魚信音響システムの変形例を示す図である。前述した第1の実施形態では、受信器がベスト等の着衣に装着又は収納する小型受信器であったが、本変形例では、帽子に受信器を装着して、イヤホンで聴音する構成である。本変形例の魚信音響システムの構成は、前述した第1の実施形態と同等であり、ここでの説明は省略する。
【0027】
本変形例によれば、帽子51に受信器2を装着し、受信器2から帽子51の側面、即ち、耳の脇からイヤホン4のイヤホンコードが引き出されるように、帽子51内を引き回す。この配線により、イヤホン4と耳とが最短距離となるため、コードの露呈部分が少なくなり、イヤホンコードが腕や周辺の物に引っ掛かったりせず、全く邪魔にならない。
【0028】
次に、第2の実施形態について説明する。
前述した第1の実施形態では、送信器のマイクを釣竿内部に直接取り付けた構成であったが、これに対して、本実施形態は、マイクに集音器を設けた構成である。図6は、釣竿に収納された魚信音響システムの概念的な配置構成を示す図である。図6に示す構成部位において、前述した第1の実施形態の構成部位と同じ部位には、同じ参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0029】
図6に示すように、マイク11は、釣竿内で複数のバー形状の支持部材62により、略中央に支持されている。少なくとも3本以上の支持部材62によりマイク11を支持することが好ましい。その前方の竿先側には、ホーン形状(ラッパ形)の集音部61が設けられている。集音部61は、底部61bが平坦な面に形成され、マイク11が密着するように取り付けられている。また、底部61bから拡がり延伸したホーン外周部が円筒形状の幅を有するつば部61aを成し、このつば部61aは、竿内壁面に密着するように設けられている。集音部61は、釣竿と同様なカーボン等の硬質樹脂部材又は金属部材により形成される。
【0030】
本実施形態の構成によれば、釣竿に発生した振動は、ホーン部分から集音部61の底部61bに集まるように伝達され、底部61bにてマイク11によりピックアップされる。竿全周囲から振動をマイク11に取り込めるため、振動自体が弱い場合であっても効率的に取り込むことができる。また、底部11bからホーン外周部までの拡がり角度を調整することにより、所望する振動周波数を選択的に集めることも可能である。
【0031】
尚、本実施形態及び前述した第1の実施形態及び、その変形例を含み、イヤホンに代わって、受信器に軽量小型スピーカを設けた構成であってもよい。勿論、スピーカは、受信器と一体であっても、別体でケーブル接続された小型軽量の携帯型スピーカ、例えば、耳元近くの衣服や釣用ベストにピン留め装着可能なスピーカを用いてもよい。耳元でスピーカを用いた場合には、イヤホンの耳装着に対して、煩わしさが解消する。
また、前述した実施形態においては、各1台の送信器と受信器を一組として説明したが、1本の釣竿、即ち、1つの送信器に対して、複数の受信器を用いて、魚信を受信することも可能である。尚、本実施形態では、魚信を音信号に変換してイヤホンで再生する構成であり、振動音を可聴周波数帯の音として発生しているが、その音として、具体的には、単一の音調のブザー音、異なる音調(音階)が混在するブザー音、任意の曲のメロディー音、予め設定されたメッセージ(音声)等、種々の表現方法が採用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…釣竿、2…受信器、3…信号検出送信器(送信器)、4…イヤホン、11…マイクロフォン、12…音信号増幅部、13…送信部、14…送信アンテナ、15,24…電源、16…選択用スイッチ、21…受信アンテナ、22…受信部、23…増幅部、31…可変リアクタンス部、32…LC発信部、33…周波数逓倍部、34…切り替え部、35…AFC回路、36…電力増幅部、41…高周波増幅部、42…周波数変換部、43…中間波増幅部、44…振幅制限部、45…周波数弁別部、46…ディエンファシス部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6