特許第5903374号(P5903374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903374
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】車両用バックドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20160331BHJP
   B60J 1/18 20060101ALI20160331BHJP
   B60J 5/04 20060101ALN20160331BHJP
【FI】
   B60J5/10 Z
   B60J1/18 G
   !B60J5/04 R
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-257265(P2012-257265)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104790(P2014-104790A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権現 智士
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219000(JP,A)
【文献】 特開2012−046109(JP,A)
【文献】 特開2012−030655(JP,A)
【文献】 特開2006−123865(JP,A)
【文献】 特開昭63−173721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
B60J 1/18
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓用開口部(13)が形成された樹脂製ドアインナ部材(3)と、ドアアッパアウタ部材(29)及びドアロアアウタ部材(31)に分割され上記ドアインナ部材(3)に車外側から接着された樹脂製ドアアウタ部材(5)と、上記窓用開口部(13)を覆う窓部材(7)とを備え、上記ドアアッパアウタ部材(29)の外周縁部は、上記ドアインナ部材(3)の上記窓用開口部(13)上側で該窓用開口部(13)上端縁部及び該ドアインナ部材(3)外周縁部に第1接着剤(33)を介して接着され、上記ドアロアアウタ部材(31)の外周縁部は、上記ドアインナ部材(3)の上記窓用開口部(13)下側で該窓用開口部(13)下端縁部及び上記ドアインナ部材(3)外周縁部に上記第1接着剤(33)を介して接着され、上記窓部材(7)の外周縁部は、上記窓用開口部(13)上端縁部側では上記ドアアッパアウタ部材(29)の下端縁部に、上記窓用開口部(13)下端縁部側では上記ドアロアアウタ部材(31)の上端縁部に、上記窓用開口部(13)の車幅方向両側端縁側では上記ドアインナ部材(3)の車幅方向両側端縁部にそれぞれ第2接着剤(35)を介して接着された車両用バックドアであって、
上記窓部材(7)と上記ドアインナ部材(3)及び上記ドアアウタ部材(5)との接着面(37)は、矩形環状をなし、
上記ドアアッパアウタ部材(29)下端縁部の車幅方向両端には、下方に突出する上側突出片(29a)が設けられている一方、上記ドアロアアウタ部材(31)上端縁部の車幅方向両端には、上方に突出する下側突出片(31b)が設けられ、該下側突出片(31b)は、上記上側突出片(29a)よりも上記ドアインナ部材(3)の車幅方向外側端から車幅方向内側に離れて配置され、
上記ドアインナ部材(3)の上記上側及び下側突出片(29a,31b)に対応する部位には、該上側及び下側突出片(29a,31b)が嵌め込まれる上側及び下側段落部(39,43)が形成され、
該上側及び下側段落部(39,43)に該上側及び下側突出片(29a,31b)が嵌め込まれた状態で、上記上側突出片(29a)とその周りの上記ドアインナ部材(3)とは面一になっていて、両者の上側境界ライン(41)は、該上側突出片(29a)の下端において車幅方向に延びる外側ライン部(41a)と、該外側ライン部(41a)の車幅方向内側端から上方に直線状に延びる中間ライン部(41b)と、該中間ライン部(41b)上端から車幅方向内側に延びる内側ライン部(41c)とを有している一方、上記下側突出片(31b)とその周りの上記ドアインナ部材(3)とは面一になっていて、両者の下側境界ライン(45)は、該下側突出片(31b)の上端において車幅方向に延びる内側ライン部(45a)と、該内側ライン部(45a)の車幅方向外側端から下方に直線状に延びる中間ライン部(45b)と、該中間ライン部(45b)下端から車幅方向外側に延びる外側ライン部(45c)とを有し、
上記第1接着剤(33)は、上記上側及び下側段落部(39,43)において上記中間ライン部(41b,45b)に沿って設けられ、上記第2接着剤(35)は、該中間ライン部(41b,45b)を跨いで上記ドアインナ部材(3)及び上記ドアアウタ部材(5)上に設けられていることを特徴とする車両用バックドア。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バックドアにおいて、
上記ドアインナ部材(3)並びに上記上側及び下側突出片(29a,31b)の少なくとも1つの上記中間ライン部(41b,45b)に対応する部位には、該中間ライン部(41b,45b)側に開口する切欠部(47)が設けられ、
上記第1接着剤(33)及び上記第2接着剤(35)は、該切欠部(47)において接合していることを特徴とする車両用バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バックドアの改良に関し、詳しくは、樹脂製ドアインナ部材に樹脂製ドアアウタ部材が接着された車両用バックドアにおいて、外部から両部材間に入った水が車室側に浸入するのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略矩形板状の樹脂製ドアインナ部材とその上部に接着された樹脂製ドアアッパアウタ部材とを有し、該ドアアッパアウタ部材の下縁車幅方向両端部には、下方に突出する突出片が設けられている一方、上記ドアインナ部材には、当該突出片が嵌め込まれる凹部が形成され、この凹部に突出片が嵌め込まれた状態で、突出片が凹部底面に接着されている外部から車室側への水の浸入を防ぐ迷路構造を設けた車両用バックドアが開示されている。このバックドアでは、突出片とその周りのドアインナ部材との境界ラインから接着剤がはみ出すのを防止するために、接着剤が当該境界ラインよりも内側に塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−219000号公報(段落0036、0042、0052欄、図1図2図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用バックドアでは、上記迷路構造があるが接着剤が上記境界ラインよりも内側に塗布されているので、接着剤と凹部側壁との間に隙間ができる。そうすると、大量の水が浸入した場合にドアインナ部材とドアアウタ部材との間に入った水が上記迷路構造を乗り越えて上記隙間を通って車室側に浸入する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドアインナ部材とそれに接着されたドアアウタ部材との間に入った水が接着部から車室側に浸入するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、ドアインナ部材とドアアウタ部材との接着構造を工夫したものである。
【0007】
具体的には、本発明は、窓用開口部が形成された樹脂製ドアインナ部材と、ドアアッパアウタ部材及びドアロアアウタ部材に分割され上記ドアインナ部材に車外側から接着された樹脂製ドアアウタ部材と、上記窓用開口部を覆う窓部材とを備え、上記ドアアッパアウタ部材の外周縁部は、上記ドアインナ部材の上記窓用開口部上側で該窓用開口部上端縁部及び該ドアインナ部材外周縁部に第1接着剤を介して接着され、上記ドアロアアウタ部材の外周縁部は、上記ドアインナ部材の上記窓用開口部下側で該窓用開口部下端縁部及び上記ドアインナ部材外周縁部に上記第1接着剤を介して接着され、上記窓部材の外周縁部は、上記窓用開口部上端縁部側では上記ドアアッパアウタ部材の下端縁部に、上記窓用開口部下端縁部側では上記ドアロアアウタ部材の上端縁部に、上記窓用開口部の車幅方向両側端縁側では上記ドアインナ部材の車幅方向両側端縁部にそれぞれ第2接着剤を介して接着された車両用バックドアを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記窓部材と上記ドアインナ部材及び上記ドアアウタ部材との接着面は、矩形環状をなし、上記ドアアッパアウタ部材下端縁部の車幅方向両端には、下方に突出する上側突出片が設けられている一方、上記ドアロアアウタ部材上端縁部の車幅方向両端には、上方に突出する下側突出片が設けられ、該下側突出片は、上記上側突出片よりも上記ドアインナ部材の車幅方向外側端から車幅方向内側に離れて配置され、上記ドアインナ部材の上記上側及び下側突出片に対応する部位には、該上側及び下側突出片が嵌め込まれる上側及び下側段落部が形成され、該上側及び下側段落部に該上側及び下側突出片が嵌め込まれた状態で、上記上側突出片とその周りの上記ドアインナ部材とは面一になっていて、両者の上側境界ラインは、該上側突出片の下端において車幅方向に延びる外側ライン部と、該外側ライン部の車幅方向内側端から上方に直線状に延びる中間ライン部と、該中間ライン部上端から車幅方向内側に延びる内側ライン部とを有している一方、上記下側突出片とその周りの上記ドアインナ部材とは面一になっていて、両者の下側境界ラインは、該下側突出片の上端において車幅方向に延びる内側ライン部と、該内側ライン部の車幅方向外側端から下方に直線状に延びる中間ライン部と、該中間ライン部下端から車幅方向外側に延びる外側ライン部とを有し、上記第1接着剤は、上記上側及び下側段落部において上記中間ライン部に沿って設けられ、上記第2接着剤は、該中間ライン部を跨いで上記ドアインナ部材及び上記ドアアウタ部材上に設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ドアインナ部材並びに上記上側及び下側突出片の少なくとも1つの上記中間ライン部に対応する部位には、該中間ライン部側に開口する切欠部が設けられ、上記第1接着剤及び上記第2接着剤は、該切欠部において接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、ドアインナ部材の上側段落部に上側突出片が嵌め込まれた状態で、該上側突出片とその周りのドアインナ部材との上側境界ラインが、該上側突出片の下端において車幅方向に延びる外側ライン部と、該外側ライン部の車幅方向内側端から上方に直線状に延びる中間ライン部とを有しており、この中間ライン部を上下方向、すなわち重力方向に長く設定することができる。したがって、外部から入った水は、境界ラインに沿って車室側に進入しようとするが、中間ライン部が重力方向に長く延びているので、重力に逆らって中間ライン部に沿って上方に進入するのは困難である。よって、水が境界ラインに沿って車室側に進入するのを防止することができる。一方、下側突出片とその周りのドアインナ部材との下側境界ラインも上側境界ラインと同様に形成されているので、水が当該下側境界ラインに沿って車室側に進入するのを防止することができる。
【0011】
しかも、第1接着剤が上側及び下側段落部において中間ライン部に沿って設けられ、第2接着剤が中間ライン部を跨いでドアインナ部材及びドアアウタ部材上に設けられているので、第1接着剤及び第2接着剤が中間ライン部で重なって両者間の隙間を塞ぐか又は狭くした部分を上下方向に長く設定することができる。したがって、水が中間ライン部に沿って重力に逆らって上方に進入するのをより確実に防止することができる。
【0012】
第2の発明によれば、ドアインナ部材並びに上側及び下側突出片の少なくとも1つの中間ライン部に対応する部位に中間ライン部側に開口する切欠部が設けられ、第1接着剤及び第2接着剤が切欠部において接合しているので、この接合部分で水の進入路を完全に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車両用バックドアの分解斜視図である。
図2】ドアインナ部材にドアアウタ部材を接着した状態における図1のII部拡大平面図である。
図3】窓部材を接着した状態における図2のA−A線矢視相当断面図である。
図4】窓部材を接着した状態における図2のB−B線矢視相当断面図である。
図5】窓部材を接着した状態における図2のC−C線矢視相当断面図である。
図6】窓部材を接着した状態における図2のD−D線矢視相当断面図である。
図7】ドアインナ部材にドアアウタ部材を接着した状態における図1のVII部拡大平面図である。
図8】窓部材を接着した状態における図7のE−E線矢視相当断面図である。
図9】変形例に係る車両用バックドアの図2相当図である。
図10】窓部材を接着した状態における図9のB’−B’線矢視相当断面図である。
図11】窓部材を接着した状態における図9のD’−D’線矢視相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係る車両用バックドア(以下、バックドアという)1を示す。このバックドア1は、ハッチバック車の車体(図示せず)後端のバックドア開口部(図示せず)を上下方向に開閉する。上記車体の上記バックドア開口部の左右両側下半部に対応する位置にはウィンカ(図示せず)が設けられていて、このウィンカを車体後方に露出させるために、上記バックドア1の下半部分は下方に行くに従って左右幅が狭くなっている。上記バックドア1は、略矩形状の樹脂製ドアインナ部材3と、該ドアインナ部材3に車外側から組み付けられるドアアウタ部材5と、ガラス製又は樹脂製の窓部材7とからなる。
【0016】
上記ドアインナ部材3は、PP−GF(Polypropylene Glass Fiber)、PP−CF(Polypropylene Carbon Fiber)等の繊維補強材を含有する熱可塑性樹脂からなる。該ドアインナ部材3は、一枚物であり、上半部分が台形状をなし、下半部分が下方に行くに従って左右幅が狭くなっている本体部8を有し、該本体部8の外周縁全体には、環状の外側立ち壁9が上記ドアアウタ部材5側に立ち上がるように突設され、該外側立ち壁9の突出端全体には、接合用の外側フランジ11が外側に張り出すように設けられている。上記ドアインナ部材3の上半部分には、左右に延びる窓用開口部13が形成され、該窓用開口部13上方には、一対のヒンジ取付部15,15が左右に間隔をあけて設けられている。上記窓用開口部13の内周縁全体には、環状の内側立ち壁17が上記ドアアウタ部材5側に立ち上がるように突設され、該内側立ち壁17の突出端全体には、接合用の内側フランジ19が窓用開口部13内側に張り出すように設けられている。該内側立ち壁17下縁と上記外側立ち壁9下縁との間の左右方向中央部には、ナンバープレート(図示せず)照明用のライト(図示せず)が取り付けられるライト取付部21が形成され、その下端、すなわち外側立ち壁9下縁の左右方向中央には、上記車体に固定されたストライカ(図示せず)に係合・離脱するロック装置(図示せず)が取り付けられるロック装置取付部23が形成されている。
【0017】
上記ドアアウタ部材5は、樹脂製ドアアッパアウタ部材29と、樹脂製ドアロアアウタ部材31とに分割され、両分割部材は、タルク入りPP(Polypropylene)等の熱可塑性樹脂からなる。
【0018】
上記ドアアッパアウタ部材29は、左右に細長い略矩形板状をなし、下端縁部全体に車体前方に凹む段差が形成されている。該ドアアッパアウタ部材29の外周縁部は、上記ドアインナ部材3の上記窓用開口部13上側で該窓用開口部13上端縁部及び該ドアインナ部材3外周縁部にウレタン系接着剤からなる第1接着剤33(図3及び図4参照)を介して接着されている。すなわち、該ドアアッパアウタ部材29の外周縁部は、上記内側フランジ19の上辺部19aと、上記外側フランジ11の上辺部11a及び左右両側辺部11b上端部とに接着されている。
【0019】
一方、上記ドアロアアウタ部材31は、下方に行くに従って左右幅が狭くなる略矩形板状をなし、上端縁部全体に車体前方に凹む段差が形成されている。該ドアロアアウタ部材31の外周縁部は、上記ドアインナ部材3の上記窓用開口部13下側で該窓用開口部13下端縁部及び該ドアインナ部材3外周縁部に上記第1接着剤33を介して接着されている。すなわち、該ドアロアアウタ部材31の外周縁部は、上記内側フランジ19の下辺部19bと、上記外側フランジ11の下辺部11cと、該外側フランジ11の左右両側辺11b部下端から中央部下寄り部分とに接着されている。なお、当該ドアロアアウタ部材31の中央部には、ナンバープレート取付部31aが形成されている。
【0020】
上記窓部材7は、矩形板状をなし、上記窓用開口部13に対応する領域が透明であって、その外側領域が黒色のセラミクス等によって隠蔽されている。該窓部材7は、上記ドアアッパアウタ部材29及び上記ドアロアアウタ部材31が上記ドアインナ部材3に接着された状態で、該ドアアッパアウタ部材29下端の上記段差と該ドアロアアウタ部材31上端の上記段差との間に嵌め込まれている。そして、該窓部材7の外周縁部は、上記窓用開口部13上端縁部側では上記ドアアッパアウタ部材29の下端縁部に、上記窓用開口部13下端縁部側では上記ドアロアアウタ部材31の上端縁部に、上記窓用開口部13の車幅方向両側端縁側では上記ドアインナ部材3の左右両側縁部すなわち上記外側フランジ11の左右両側辺部にそれぞれウレタン系接着剤からなる第2接着剤35(図3図5参照)を介して接着されている。つまり、上記窓部材7と上記ドアインナ部材3及びドアアウタ部材5との接着面37(図2参照)は、矩形環状をなしている。
【0021】
次に、上記ドアアッパアウタ部材29とドアインナ部材3との接着構造について図2図6を参照して説明する。図2はドアインナ部材3にドアアッパアウタ部材29を接着した状態における図1のII部拡大平面図、図3は窓部材7を接着した状態における図2のA−A線矢視相当断面図、図4は窓部材7を接着した状態における図2のB−B線矢視相当断面図、図5は窓部材7を接着した状態における図2のC−C線矢視相当断面図、図6は窓部材7を接着した状態における図2のD−D線矢視相当断面図である。なお、以下ではドアアッパアウタ部材29右下端部とドアインナ部材3との接着構造について説明するが、ドアアッパアウタ部材29左下端部とドアインナ部材3との接着構造も同様の構造である。また、図2では上記窓部材7を省略している。
【0022】
図1及び図2に示すように、上記ドアアッパアウタ部材29の下端縁右端には、下方に突出する略矩形板状の上側突出片29aが設けられている。一方、上記外側フランジ11の上記上側突出片29aに対応する部位には、図4に示すように、該上側突出片29aが嵌め込まれる上側段落部39が形成されている。上記上側突出片29aは、断面L字状をなし、上記上側段落部39に嵌め込まれた状態で、短辺部先端が該上側段落部39底面に当接し、長辺部が該上側突出片29a周りの外側フランジ11と面一になっている。なお、上記外側立ち壁9の先端には、図4に示すように、第2接着材35の厚みを確保するとともに該第2接着材35を堰き止めるリブ9aが設けられている。
【0023】
上記上側突出片29aとその周りの外側フランジ11との上側境界ライン41は、図2に示すように、該上側突出片29aの下端において左右に延びる上外側ライン部41aと、該上外側ライン部41a左端から上方に直線状に延びる上側中間ライン部41bと、該上側中間ライン部41b上端から左側に水平に延びる上内側ライン部41cとを有している。つまり、上側中間ライン部41bを上下方向、すなわち重力方向に長く設定することができる。したがって、外部から入った水は、上側境界ライン41に沿って車室側に進入しようとするが、上側中間ライン部41bが重力方向に長く延びているので、重力に逆らってこの上側中間ライン部41bに沿って上方に進入するのは困難である。よって、水が上側境界ライン41に沿って車室側に進入するのを防止することができる。
【0024】
そして、上記第1接着剤33は、上記上側段落部39において上記上側中間ライン部41bに沿って設けられ、上記第2接着剤35は、図4に示すように、該上側中間ライン部41bを跨いで上記外側フランジ11及び上記上側突出片29a上に設けられている。そうして、図6に示すように、上記第1接着剤33と上記第2接着剤35とは上下方向において重なり合っており、ドアインナ部材3とドアアッパアウタ部材29との間の隙間を両接着剤33,35が塞ぐか又は狭めている。したがって、第1接着剤33及び第2接着剤35が上側中間ライン部41bで重なって両者間の隙間を塞ぐか又は狭くした部分を上下方向に長く設定することができる。したがって、水が上側中間ライン部41bに沿って重力に逆らって上方に進入するのをより確実に防止することができる。
【0025】
つづいて、上記ドアロアアウタ部材31と上記ドアインナ部材3との接着構造について図1図7及び図8を参照して説明する。図7はドアインナ部材3にドアロアアウタ部材31を接着した状態における図1のVII部拡大平面図、図8は窓部材7を接着した状態における図7のE−E線矢視相当断面図である。なお、以下ではドアロアアウタ部材31右上端部とドアインナ部材3との接着構造について説明するが、ドアロアアウタ部材31左上端部とドアインナ部材3との接着構造も同様の構造である。また、図7では上記窓部材7を省略している。
【0026】
図7に示すように、上記ドアロアアウタ部材31の上端縁右端には、上方に突出する矩形板状の下側突出片31bが設けられている。この下側突出片31bは、図1に示すように、上記上側突出片29aよりも上記ドアインナ部材3右側端から左側に離れて配置されている。一方、上記外側フランジ11の上記下側突出片31bに対応する部位には、図8に示すように、該上側突出片29aが嵌め込まれる下側段落部43が形成されている。上記下側突出片31bは、断面略L字状をなし、上記下側段落部43に嵌め込まれた状態で、短辺部先端が該下側段落部43底面に当接し、長辺部が該下側突出片31b周りの外側フランジ11と面一になっている。なお、上記下側突出片31bの折曲がり部分には、上記窓部材7側に突出するリブ31cが設けられており、このリブ31cが上記リブ9aと同様に上記第2接着剤35の厚みを確保するとともに該第2接着剤35を堰き止める。
【0027】
そうして、上記下側突出片31bとその周りの外側フランジ11との下側境界ライン45は、図7に示すように、該下側突出片31bの上端において左右に延びる下内側ライン部45aと、該下内側ライン部45aの右端から下方に直線状に延びる下側中間ライン部45bと、該下側中間ライン部45b下端から右側に水平に延びる下外側ライン部45cとを有している。つまり、下側中間ライン部45bを上下方向、すなわち重力方向に長く設定することができる。したがって、外部から入った水は、下側境界ライン45に沿って車室側に進入しようとするが、下側中間ライン部45bが重力方向に長く延びているので、重力に逆らってこの下側中間ライン部45bに沿って上方に進入するのは困難である。よって、水が下側境界ライン45に沿って車室側に進入するのを防止することができる。
【0028】
そして、上記第1接着剤33は、上記下側段落部43において上記下側中間ライン部45bに沿って設けられ、上記第2接着剤35は、該下側中間ライン部45bを跨いで上記外側フランジ11及び上記下側突出片31b上に設けられている。そうして、上記第1接着剤33と上記第2接着剤35とは上下方向において重なり合っており、ドアインナ部材3とドアロアアウタ部材31との間の隙間を両接着剤33,35が塞ぐか又は狭めている。したがって、第1接着剤33及び第2接着剤35が下側中間ライン部45bで重なって両者間の隙間を塞ぐか又は狭くした部分を上下方向に長く設定することができる。したがって、水が下側中間ライン部45bに沿って重力に逆らって上方に進入するのをより確実に防止することができる。
【0029】
《変形例》
上記実施形態では、中間ライン部41b、45bが全体に亘って一定幅であるが、一部を広げてもよい。変形例に係る車両用バックドアについて図9及び図10を参照して説明する。図9は変形例に係る車両用バックドアの図2相当図、図10は窓部材7を接着した状態における図9のB’−B’線矢視相当断面図、図11は窓部材7を接着した状態における図9のD’−D’線矢視相当断面図である。
【0030】
上記上側突出片29aの上記上側中間ライン部41bに対応する部位には、該上側中間ライン部41b側、すなわち左側に開口する切欠部47が設けられている。そして、図10に示すように、上記第1接着剤33及び上記第2接着剤35が上記切欠部47において接合し、図11に示すように、上下方向において上側中間ライン部41bの一部を塞いでいる。このように、第1接着剤33及び第2接着剤35が切欠部47において接合しているので、この接合部分で水の進入路を完全に塞ぐことができる。なお、本変形例では、切欠部47が上側突出片29aに設けられているが、外側フランジ11の上側中間ライン部41bに対応する部位に設けられてもよい。または、上側突出片29a及び外側フランジ11の双方に切欠部47が設けられてもよい。さらに、本変形例では、上記切欠部47が上側突出片29aに設けられているが、下側突出片31bに設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る車両用バックドアは、ドアインナ部材とそれに接着されたドアアウタ部材との間に入った水が接着部から車室側に浸入するのを防止する用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用バックドア
3 ドアインナ部材
5 ドアアウタ部材
7 窓部材
13 窓用開口部
33 第1接着剤
35 第2接着剤
29 ドアアッパアウタ部材
29a 上側突出片
31 ドアロアアウタ部材
31b 下側突出片
37 窓部材とドアインナ部材及びドアアウタ部材との接着面
39 上側段落部
41 上側境界ライン
41a 上外側ライン部
41b 上側中間ライン部
41c 上内側ライン部
43 下側段落部
45 下側境界ライン
45a 下内側ライン部
45b 下側中間ライン部
45c 下外側ライン部
47 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11