特許第5903399号(P5903399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5903399-多極型ヒュージブルリンク 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903399
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】多極型ヒュージブルリンク
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/143 20060101AFI20160331BHJP
   H01H 85/12 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H01H85/143
   H01H85/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-86363(P2013-86363)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-211963(P2014-211963A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 史幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰徳
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−273848(JP,A)
【文献】 特開2012−230856(JP,A)
【文献】 特開平10−199396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/12
H01H 85/143−85/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子部と、当該入力端子部から入力された電流が流れるバスバー部と、当該バスバー部に、可溶体部を介して接続された複数の端子部とを備えた多極型ヒュージブルリンクであって、
前記可溶体部が接続される前記バスバー部の下端部と、当該下端部の反対側の上端部との間の幅が、前記下端部に接続される前記可溶体部に応じて変更され、
その変更は、前記下端部の形状を変更することでなされ、
前記バスバー部の前記下端部と前記上端部との間の幅は、
前記入力端子部側よりも、当該入力端子部とは反対側の末端部側の方が狭くなるように、前記下端部の形状を変更しており、
前記可溶体部は、その定格が、前記入力端子部側よりも前記末端部側の方が小さくなるように配置されていることを特徴とする多極型ヒュージブルリンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車用電気回路等に用いられる多極型ヒュージブルリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多極型ヒュージブルリンクは、自動車などにおいてバッテリと各種電装品との間に過電流が流れた場合に各種電装品を保護するために使用されてきた。図3(a)に示すように、従来から知られている多極型ヒュージブルリンク200は、主に、入力端子部210と、当該入力端子部210から入力された電流が流れる平面視略長方形状のバスバー部220と、当該バスバー部220に可溶体部(230Aから230D)を介して接続された複数の端子部(240Aから240D)からなる。
【0003】
そして、多極型ヒュージブルリンク200の入力端子部210には、バッテリ電源等が接続され、端子部(240Aから240D)には各種電装品が接続される。これにより、バッテリ電源等と各種電装品の間の電気回路中にヒューズが設けられる構成となる。そして、電気回路中に意図しない高電流が流れた場合には、可溶体部230が高電流による発熱により溶断して、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0004】
また、複数の端子部240を備える多極型ヒュージブルリンク200は、各端子部240とバスバー部220との間に、様々な定格の可溶体部230が接続される。例えば、図3(a)に示す多極型ヒュージブルリンク200は、入力端子部210に近い側から、定格が50A(アンペア)の可溶体部230A、定格が40Aの可溶体部230B、定格が30Aの可溶体部230C、定格が20Aの可溶体部230Dが接続されている。なお、図面上では、各可溶体部の定格を、接続されている端子部240上に、便宜的に表示している。
【0005】
ところで、これら可溶体部は、一般的に、定格が小さくなると、可溶体部の抵抗値を大きくするために、可溶体部の全長、つまり高さを高くしている。例えば、図3(a)に示すように、定格が50Aの可溶体部230Aの高さa1、定格が40Aの可溶体部230Bの高さa2、定格が30Aの可溶体部230Cの高さa3、定格が20Aの可溶体部230Dの高さa4は、定格が小さくなるにつれて、その高さが高くなっている(a1<a2<a3<a4)。
【0006】
また、各端子部240の形状や配置には、様々なものが考えられるが、本明細書では、説明の都合上、各端子部240の高さはd0で不変で、各端子部240の下端は、全て横一列に揃えるものとする。また、各可溶体部の高さa1からa4も、不変とする。
【0007】
そのため、図3(a)に示すように、横一列に並べられた各可溶体部230の高さは、入力端子部210から離れるほど、高さa1、a2、a3、a4と次第に高くなっている。
【0008】
そして、平面視略長方形状のバスバー部220の下端部222は直線状なので、高さが最も高い可溶体部230Dに下端部222が接続されると、他の可溶体部230A、可溶体部230B、及び可溶体部230Cのそれぞれの先端と下端部222の間に隙間ができ、互いに接続できなくなる。そのため、それぞれの可溶体部の先端に、高さ調節部250A、高さ調節部250B、及び高さ調節部250Cを設けて、各可溶体部と下端部222とが接続できるようにしている。
【0009】
以上の構成からなる多極型ヒュージブルリンク200の高さL0は、L0=(c0+a4+d0)となる。この高さa4、及び高さd0は、不変であるから、高さL0は、バスバー部220の幅c0に左右される。しかしながら、このバスバー部220は、平面視略長方形状をしており、その幅c0は均一であることから、これ以上、多極型ヒュージブルリンク200の高さL0を低くするには限界がある。そして、このように、多極型ヒュージブルリンク200の高さの寸法規制が厳しいため、例えば、多極型ヒュージブルリンク200を取り付けるヒューズボックスを小さくできない等の問題があった。
【0010】
一方、特許文献1に開示されている多極型ヒュージブルリンクは、可溶体部の溶断時間のばらつきを抑制するために、バスバー部の上端部を傾斜させたことを特徴としており、図3(b)に、この特徴を備えた多極型ヒュージブルリンク300を示した。しかしながら、図3(b)からわかるように、バスバー部320の上端部321を傾斜させたとしても、多極型ヒュージブルリンク300の高さは、図3(a)に示す多極型ヒュージブルリンク200の高さL0と変わらず、上記問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−230856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、簡単な構造により、全体の高さを低くすることのできる多極型ヒュージブルリンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の多極型ヒュージブルリンクは、入力端子部と、当該入力端子部から入力された電流が流れるバスバー部と、当該バスバー部に、可溶体部を介して接続された複数の端子部とを備えた多極型ヒュージブルリンクであって、前記可溶体部が接続される前記バスバー部の下端部と、当該下端部の反対側の上端部との間の幅が、前記下端部に接続される前記可溶体部に応じて変更され、その変更は、前記下端部の形状を変更することでなされることを特徴としている。
【0014】
上記特徴によれば、バスバー部の下端部と上端部の幅(以下、簡単に、「バスバー部の幅」と呼ぶ)が、下端部の形状を変更することで、変更されている。つまり、下端部の形状を変更してバスバー部の幅を狭くすれば、その狭くなった分だけ、可溶体部を配置できる高さ方向のスペースを確保することができる。すなわち、バスバー部の下端部が削られて、その削られた部分に可溶体部を配置できるので、バスバー部全体が、可溶体部側へ移動することができ、その結果、多極型ヒュージブルリンク全体の高さが低くなるのである。
【0015】
このように、多極型ヒュージブルリンク全体の高さが低くなれば、当該多極型ヒュージブルリンクを取り付けるヒューズボックス自体を小さくできる。また、多極型ヒュージブルリンクは、導電性の金属枚を打ち抜いて形成されているので、多極型ヒュージブルリンクの高さが低くなれば、1枚の金属板から生産できる多極型ヒュージブルリンクの数も増え、歩留りが向上する。
【0016】
さらに、本願発明の多極型ヒュージブルリンクは、前記バスバー部の前記下端部と前記上端部との間の幅が、前記入力端子部側よりも、当該入力端子部とは反対側の末端部側の方が狭くなるように、前記下端部の形状を変更したことを特徴としている。
【0017】
多極型ヒュージブルリンクでは、入力端子部から入力された電流が、バスバー部を流れてゆき、下流の端子部へと分岐していく。したがって、入力端子部から離れるほど、各端子部へ電流が分岐していくので、バスバー部を流れる電流は少なくなっていく。そのため、流れる電流の減少に応じて、バスバー部の幅は、入力端子部側よりも、当該入力端子部とは反対側の末端部側の方を狭くできる。したがって、バスバー部の幅を流れる電流に応じて最適にすることができる。
【0018】
さらに、本願発明の多極型ヒュージブルリンクでは、可溶体部は、その定格が、入力端子部側よりも末端部側の方が小さくなるように配置されていることを特徴としている。
【0019】
多極型ヒュージブルリンクでは、定格の大きな可溶体部は、定格の小さな可溶体部に比べて発熱が大きいため、入力端子部に近い方に定格の大きな可溶体部を配置し、入力端子部から遠い方に定格の小さな可溶体部を配置することが望ましい。つまり、可溶体部の定格が入力端子部側よりも末端部側の方が小さくなるように配置すると、各可溶体部の配置が最適となる。
【発明の効果】
【0020】
上記したように、本願発明の多極型ヒュージブルリンクによれば、簡単な構造により、従来の多極型ヒュージブルリンクに比べて、その全体の高さを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明に係る多極型ヒュージブルリンクの平面図である。
図2】(a)は、本願発明の多極型ヒュージブルリンクの平面図、(b)は、本願発明の多極型ヒュージブルリンクに絶縁ハウジングを取り付けた平面図である。
図3】(a)は、従来の多極型ヒュージブルリンクの平面図、(b)は、他の従来の多極型ヒュージブルリンクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本願発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図1から図3においては、従来の多極型ヒュージブルリンクと比較検討を行いやすくするために、各可溶体部の定格及び高さ、端子部の高さd0、バスバー部の入力端子部側の幅c0は変更しないものとする。なお、以下で説明する実施形態におけるバスバー部の形状や、可溶体部の定格や形状等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。
【0023】
図1は、本願発明の多極型ヒュージブルリンク100を示すもので、この多極型ヒュージブルリンク100は、入力端子部110とバスバー部120と、バスバー部120の下端部122に接続された可溶体部130と、可溶体部130を介して端子部140が接続されている。
【0024】
また、可溶体部130の配置順序は、従来の多極型ヒュージブルリンク200と同様に、入力端子部110に近い方から、定格が50Aでその長さがa1の可溶体部130A、定格が40Aでその長さがa2の可溶体部130B、定格が30Aでその長さがa3の可溶体部130C、定格が20Aでその長さがa4の可溶体部130Dが接続されている。
【0025】
図1に示すように、本願発明の多極型ヒュージブルリンク100では、バスバー部120の幅が、従来のように一定ではなく(図3(a)参照)、末端部123に向かうにつれて狭くなっている。以下では、バスバー部120の幅をこのように変更した理由について簡単に説明する。
【0026】
多極型ヒュージブルリンク100に流れる電流は、まず、入力端子部110から入力され、末端部123へ向けてバスバー部120内を流れていく。その過程で、電流は、各可溶体部130を介して各端子部140へと分岐していく。詳しく説明すると、まず、入力端子部110に140Aの電流が入力される。そして、入力端子部110から末端部123へ進むにつれて、可溶体部130Aへは、50Aの電流が分岐する。すると、A地点から末端部123側へ流れる電流は、分岐した50A分だけ減るので、90Aとなる。
【0027】
したがって、A地点より末端部123側のバスバー部120の幅は、そこに流れる90Aの電流に応じて、幅c0より狭い幅b1とすることができる。すなわち、上端部121と下端部122の幅が狭くなるように、下端部122の形状を傾斜するように変更できる。
【0028】
同様に、A地点より末端部123側のB地点では、末端部123側へ流れる電流は、可溶体部130Bに分岐した40A分だけ減るので、50Aとなる。したがって、B地点より末端部123側のバスバー部120の幅は、そこに流れる50Aの電流に応じて、幅b1より狭い幅b2することができる。
【0029】
このように、入力端子部110から離れるにつれて、流れる電流は、各可溶体部へ分岐して少なくなることから、入力端子部110から最も離れた末端部123では、バスバー部120の幅b3は最小となる。以上のように、バスバー部120の幅を、流れる電流に応じて次第に狭くして最適にすることができる。
【0030】
そして、図1に示すように、バスバー部120の幅がb1、b2、b3と次第に狭くなった分だけ、バスバー部120の下端部122には、各可溶体部(130Bから130D)を配置できるスペースSが確保される。したがって、このスペースSの分だけ、バスバー部120を各可溶体部130へ近づけることができ、その結果、多極型ヒュージブルリンク100全体の高さが低くなるのである。
【0031】
具体的には、幅b3<c0の関係より、多極型ヒュージブルリンク100の高さL1=(b3+a4+d0)は、従来の多極型ヒュージブルリンク200の高さL0=(c0+a4+d0)より低くなっているのがわかる。
【0032】
また、図1に示すように、各可溶体部(130Aから130D)を、入力端子部110側から離れるにつれて定格が次第に小さくなるように並べて配置している。これは、定格の大きな可溶体部は、定格の小さな可溶体部に比べて発熱が大きいため、入力端子部210に近い方に定格の大きな可溶体部を配置し、入力端子部210から遠い方に定格の小さな可溶体部を配置することが望ましく、最適な配置だからである。
【0033】
そして、定格の小さな可溶体部ほど、その高さが高くなるので、この図1に示す各可溶体部の配置は、入力端子部110側から離れるほど、各可溶体部の高さが次第に高くなるものである。
【0034】
一方、バスバー部120の幅は、入力端子部110側から離れるほど狭くなるようにしている。そのため、入力端子部110側から離れるほど、バスバー部120の下端部122には、可溶体部を配置できる高さ方向のスペースが確保されている。
【0035】
つまり、入力端子部110側から離れるほど、各可溶体部の高さが次第に高くなるが、その一方で、バスバー部120の幅も次第に狭くなっており、それにより、高さが高くなっていく各可溶体部を配置できるスペースが確保されているのである。
【0036】
したがって、入力端子部210側から離れるほど幅が狭くなるバスバー部120の形状は、入力端子部110側から離れるほど定格が小さくなる各可溶体部の配置に、最もよく適合しており、無駄がなく最適なものとなる。
【0037】
なお、本実施形態では、バスバー部の下端部を直線状に傾斜させることで、バスバー部の幅を狭くしているが、これに限定されることはなく、段階的に幅を狭くするなど、任意に変更することができる。
【0038】
では、次に、本願発明の多極型ヒュージブルリンクに、絶縁ハウジングを取り付けた態様を図2に示す。
【0039】
多極型ヒュージブルリンク100は、厚さが均一の金属板を図2(a)に示すような形状に打ち抜いて、バスバー部120、可溶体部130、端子部140を一体的に形成している。金属板の素材としては、銅等の導電性金属を用いることができる。なお、バスバー部120、可溶体部130、及び端子部140は、一枚の板を打ち抜いて一体形成しなくても、各部材を個別に用意して、それらを溶接して形成してもよい。
【0040】
次に、図2(b)に示すように、絶縁性の合成樹脂等からなる絶縁ハウジングHを、多極型ヒュージブルリンク100の上下から挟み込むように装着する。ただし、多極型ヒュージブルリンク100の入力端子部110と端子部140は、ヒューズボックス等と接続するために、露出した状態となっている。また、可溶体部130は、絶縁ハウジングHの透明窓Wに覆われているので、可溶体部130を外部から視認することができる。そして、絶縁ハウジングHが装着された状態の多極型ヒュージブルリンク100は、ヒューズボックス等に取り付けられて使用される。
【0041】
なお、本願発明の多極型ヒュージブルリンクは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明の多極型ヒュージブルリンクの用途は、自動車用電気回路用に限られず、種々の用途の電気回路にヒューズとして使用でき、これらも本願発明の範囲に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
100 多極型ヒュージブルリンク
110 入力側端子部
120 バスバー部
121 上端部
122 下端部
123 末端部
130 可溶体部
140 端子部
図1
図2
図3