特許第5903402号(P5903402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000002
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000003
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000004
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000005
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000006
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000007
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000008
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000009
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000010
  • 特許5903402-データ処理装置及びプログラム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903402
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】データ処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/32 20060101AFI20160331BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   G06F1/32 Z
   G06F3/12 318
   G06F3/12 324
   G06F3/12 378
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-113973(P2013-113973)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-232479(P2014-232479A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】寺原 恒治
【審査官】 白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−110089(JP,A)
【文献】 特開2003−256791(JP,A)
【文献】 特開2009−294927(JP,A)
【文献】 特開2009−134696(JP,A)
【文献】 特開2007−183797(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0174808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26 − 1/32
G06F 3/12
B41J 29/38
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを処理する第1のデータ処理手段を含み、前記第1のデータ処理手段による処理を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行する機能を備えた本体部と、
前記本体部が前記省電力モードに移行している際には、予め定められた待ち時間をカウントする間はデータの送受信を行わず、前記待ち時間をカウントし終えたときに外部機器との間でデータを送受信する送受信手段、及び、前記送受信手段が前記外部機器から受信したデータを処理する第2のデータ処理手段を含み、前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが第1種別のデータであるならば前記第2のデータ処理手段により当該データを処理し、当該データが前記第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば前記本体部の省電力モードを解除して前記第1のデータ処理手段に当該データを処理させる通信部と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記第1種別のデータは、MACアドレスを問い合わせるためのデータであって、問い合わせ先のIPアドレスを含み、
前記第2のデータ処理手段は、問い合わせ先のIPアドレスとして前記データ処理装置のIPアドレスを含む前記第1種別のデータを前記送受信手段が受信した場合、前記送受信手段に前記通信部のMACアドレスを前記外部機器へ送信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記外部機器から複数の宛先に送信されたデータを前記送受信手段が受信した場合、当該データが前記第1種別のデータである場合を除き、当該データに関する処理を実行しない、
ことを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記第2種別のデータは、前記通信部のMACアドレスを宛先として含むデータである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記省電力モードに移行した状態において、外部からデータが入力されたことに応じて前記省電力モードを解除する機能を備え、
前記通信部は、前記第2種別のデータを前記送受信手段が受信した場合、前記本体部に当該データを出力することで前記本体部の前記省電力モードを解除する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
データを処理するデータ処理手段を含み、前記データ処理手段による処理を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行する機能を備えた本体部と、前記本体部が前記省電力モードに移行している際には、予め定められた待ち時間をカウントする間はデータの送受信を行わず、前記待ち時間をカウントし終えたときに外部機器との間でデータを送受信する送受信手段を含む通信部とを備えるデータ処理装置において、前記通信部が備えるプロセッサに、
前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが第1種別のデータであるならば当該データを処理する機能と、
前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが前記第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば前記本体部の省電力モードを解除して前記データ処理手段に当該データを処理させる機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、外部機器と通信するデータ処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のデータ処理装置を省電力モードにて動作させる技術がある。省電力モード下のデータ処理装置は、ディスプレイ、補助記憶装置、プロセッサなどのデバイスの動作を停止させたり、動作能力を低減させたりすることで、通常の動作モードよりも消費電力を抑えて動作する。
【0003】
データ処理装置が省電力モードに移行している場合、省電力モードの態様によっては、当該装置を宛先として外部機器から送信されるデータに対して当該装置が応答できない場合がある。このような事態が生じれば、システムの処理能力が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−157147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、省電力モードに移行する機能を備えたデータ処理装置において、外部機器との円滑な協働を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態におけるデータ処理装置は、本体部と、通信部とを備える。本体部は、データを処理する第1のデータ処理手段を含み、上記第1のデータ処理手段による処理を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行する機能を備える。通信部は、上記本体部が上記省電力モードに移行している際には、予め定められた待ち時間をカウントする間はデータの送受信を行わず、上記待ち時間をカウントし終えたときに外部機器との間でデータを送受信する送受信手段、及び、上記送受信手段が上記外部機器から受信したデータを処理する第2のデータ処理手段を含み、上記本体部が上記省電力モードに移行している際に上記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが第1種別のデータであるならば上記第2のデータ処理手段により当該データを処理し、当該データが上記第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば上記本体部の省電力モードを解除して上記第1のデータ処理手段に当該データを処理させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態におけるオーダリングシステムの構成を示す図。
図2】ブロードキャストフレームの構造の一例を示す図。
図3】ユニキャストフレームの構造の一例を示す図。
図4】ARP要求フレームの構造の一例を示す図。
図5】ARP応答フレームの構造の一例を示す図。
図6】一実施形態におけるハンディーターミナルの要部構成を示すブロック図。
図7】省電力モード下におけるハンディーターミナルの動作を示すフローチャート。
図8】本体装置と無線通信装置の動作モードの遷移を説明するための図。
図9】本体装置と無線通信装置の動作モードの遷移を説明するための図。
図10】本体装置と無線通信装置の動作モードの遷移を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態においては、飲食店にて稼働するオーダリングシステム、及び、当該システムにて使用されるハンディーターミナルを開示する。
【0009】
図1は、オーダリングシステムの構成を示す。オーダリングシステムは、ハンディーターミナル1、サーバ2、キッチンプリンタ3、POS(Point Of Sales)端末4、アクセスポイント5、及び、LAN(Local Area Network)ケーブル6を含む。オーダリングシステムは、複数のハンディーターミナル1を備えてもよい。
【0010】
LANケーブル6は、サーバ2、POS端末4、及び、アクセスポイント5を相互通信可能に接続する。アクセスポイント5は、ハンディーターミナル1及びキッチンプリンタ3と、例えば電波を介して無線通信する。アクセスポイント5は、ハンディーターミナル1、サーバ2、キッチンプリンタ3、及び、POS端末4の間におけるデータの送受信を中継する。
【0011】
ハンディーターミナル1は、客が注文する料理や飲み物等の情報を操作者が入力するために使用される。ハンディーターミナル1の操作者は、店員であってもよいし、客であってもよい。ハンディーターミナル1は、入力された情報を表す注文データを、アクセスポイント5を介してサーバ2に送信する。注文データは、例えば客が着席したテーブルを示すテーブル番号、注文された料理の名称及び注文数等の情報を含む。
【0012】
サーバ2は、ハンディーターミナル1から受信した注文データを記憶する。さらにサーバ2は、アクセスポイント5を介してキッチンプリンタ3に当該注文データを送信する。
【0013】
キッチンプリンタ3は、サーバ2から受信した注文データに含まれる情報を用紙に印刷した注文伝票を出力する。厨房の調理人は、キッチンプリンタ3が出力した注文伝票を参照して、客が注文した料理を調理したり、客が注文した飲み物を用意したりする。
【0014】
POS端末4は、客の飲食代金の会計に関する処理を実行する。この処理において、POS端末4は、サーバ2から会計対象の客の注文データを読み出し、読み出した注文データに含まれる料理や飲み物の合計代金を算出する。さらに、POS端末4は、算出した合計代金を現金やクレジットカードにて決済するための処理を実行する。
【0015】
ここで、オーダリングシステムに含まれる機器の間で行われる通信について説明する。オーダリングシステムに含まれる各機器は、パケット通信方式にてパケットを送受信する。より詳細にいうと、パケットは、少なくとも1つのパケットを含むフレームにカプセル化した状態で送受信される。
【0016】
フレームの種別は、ブロードキャストフレームと、ユニキャストフレームとに大別できる。ブロードキャストフレームは、オーダリングシステムに含まれる全ての機器を宛先として送信されるフレームである。ユニキャストフレームは、オーダリングシステムに含まれる特定の機器を宛先として送信されるフレームである。
【0017】
ここで、図1に示すように、ハンディーターミナル1のIPアドレスが“888.888.888.888”であり、ハンディーターミナル1のMACアドレスが“99:99:99:99:99:99”であり、POS端末4のIPアドレスが“222.222.222.222”であり、POS端末4のMACアドレスが“11:11:11:11:11:11”である場合を例に挙げてブロードキャストフレーム及びユニキャストフレームの構造について説明する。これらのIPアドレス及びMACアドレスは、いずれも16進数にて表記している。
【0018】
図2は、ブロードキャストフレームの構造の一例を示す。当該ブロードキャストフレームは、ヘッダ、宛先MACアドレス、及び、送信元MACアドレスを含む。ヘッダは、フレームの種別やヘッダに続く各情報のビット長を表す。ブロードキャストフレームの宛先MACアドレスは、宛先の指定無しを表す“FF:FF:FF:FF:FF:FF”である。当該ブロードキャストフレームは、POS端末4から送信されるフレームである。したがって、送信元MACアドレスは“11:11:11:11:11:11”である。
【0019】
図3は、ユニキャストフレームの構造の一例を示す。当該ユニキャストフレームは、ヘッダ、宛先MACアドレス、及び、送信元MACアドレス等を含む。ヘッダは、フレームの種別やヘッダに続く各情報のビット長を表す。当該ユニキャストフレームは、POS端末4からハンディーターミナル1に送信されるフレームである。したがって、宛先MACアドレスは“99:99:99:99:99:99”であり、送信元MACアドレスは“11:11:11:11:11:11”である。
【0020】
ユニキャストフレームを送信するためには、送信元の機器が宛先の機器のMACアドレスを把握している必要がある。オーダリングシステムに含まれる各機器は、ARP(Address Resolution Protocol)に準拠した処理を行うことで、定期的に他の機器のMACアドレスを把握する。
【0021】
他の機器のMACアドレスを把握するための処理は、いずれかの機器がARP要求フレームをブロードキャストするステップと、他の機器がARP応答フレームを返信するステップとを含む。
【0022】
図4は、ARP要求フレームの構造の一例を示す。ARP要求フレームは、ヘッダ、送信元MACアドレス、送信元IPアドレス、宛先MACアドレス、及び、宛先IPアドレスを含む。ヘッダは、フレームの種別やヘッダに続く各情報のビット長を表す。当該ARP要求フレームは、図1の例において、POS端末4がIPアドレス“888.888.888.888”の機器、すなわちハンディーターミナル1に応答を要求するためのフレームである。したがって、送信元MACアドレスは“11:11:11:11:11:11”であり、送信元IPアドレスは“222.222.222.222”であり、宛先IPアドレスは“888.888.888.888”である。ARP要求フレームの宛先MACアドレスは、宛先MACアドレスが不明であることを表す“00:00:00:00:00:00”である。
【0023】
図5は、ARP応答フレームの構造の一例を示す。ARP応答フレームは、ヘッダ、送信元MACアドレス、送信元IPアドレス、宛先MACアドレス、及び、宛先IPアドレスを含む。ヘッダは、フレームの種別やヘッダに続く各情報のビット長を表す。当該ARP応答フレームは、図4に示すARP要求フレームの宛先IPアドレスと同一のIPアドレスが割り当てられた機器、すなわちハンディーターミナル1がPOS端末4に応答するフレームである。したがって、送信元MACアドレスは“99:99:99:99:99:99”であり、送信元IPアドレスは“888.888.888.888”であり、宛先MACアドレスは“11:11:11:11:11:11”であり、宛先IPアドレスは“222.222.222.222”である。オーダリングシステムに含まれる各機器は、ARP要求フレームを受信しても、当該フレームに含まれる宛先IPアドレスが自機のIPアドレスと異なる場合にはARP応答フレームを返信しない。
【0024】
ハンディーターミナル1の詳細な構成ついて説明する。
【0025】
図6は、ハンディーターミナル1の要部構成を示すブロック図である。ハンディーターミナル1は、本体装置10及び無線通信装置20を備える。本体装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ディスプレイ14、入力インターフェイス15、バッテリ16、DC−DCコンバータ17、及び、バスライン18を含む。バスライン18は、CPU11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、入力インターフェイス15、及び、無線通信装置20を電気的に接続する。
【0026】
CPU11は、コンピュータの中枢部分に相当する。CPU11は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、ハンディーターミナル1としての各種の機能を実現すべく各部を制御する。
【0027】
ROM12は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。ROM12は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM12は、CPU11が各種の処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
【0028】
RAM13は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。RAM13は、CPU11が各種の処理を実行する上で必要なデータを必要に応じて記憶する。またRAM13は、CPU11が各種の処理を行う際のワークエリアとしても利用される。
【0029】
ディスプレイ14は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)或いはOELD(Organic ElectroLuminescence Display)である。ディスプレイ14は、注文に関する画面等を表示する。この画面は、入力インターフェイス15によって操作可能なGUI(Graphical User Interface)を含むこともある。
【0030】
入力インターフェイス15は、例えばディスプレイ14に表示されたGUIに対する操作を検出するタッチパネル或いは各種のキーを配列したキーボードである。操作者は、入力インターフェイス15を操作することで、客が注文する料理や飲み物に関する情報等を入力することができる。
【0031】
バッテリ16は、例えば商用交流電源に接続されたクレイドルにハンディーターミナル1が装着された際に、当該電源から供給される電力によって充電される。バッテリ16は、DC−DCコンバータ17に直流電圧を供給する。DC−DCコンバータ17は、バッテリ16から供給される直流電圧を変圧して、CPU11、ROM12、RAM13、ディスプレイ14、入力インターフェイス15、及び、無線通信装置20等のデバイスに供給する。
【0032】
無線通信装置20は、例えば電波を介してアクセスポイント5と通信可能な無線チップである。無線通信装置20は、MPU(Micro Processing Unit)21、送受信回路22、及び、アンテナ23を含む。
【0033】
データをアクセスポイント5へ送信するに際して、送受信回路22は、当該データを変調した信号をアンテナ23に出力する。アンテナ23は、送受信回路22から入力される信号に応じた電波を送信する。アンテナ23は、アクセスポイント5からの電波を受信した場合、当該電波に応じた信号を送受信回路22に出力する。送受信回路22は、アンテナ23から入力される信号を復調して受信データを生成する。
【0034】
MPU21は、メモリ21aを備える。MPU21は、メモリ21aが記憶するコンピュータプログラムに従って情報処理を実行する。メモリ21aは、上記コンピュータプログラムの他に、製造段階で無線通信装置20に割り当てられたMACアドレスと、オーダリングシステムにおいて動的にハンディーターミナル1に割り当てられるIPアドレスとを記憶する。このIPアドレスは、例えばハンディーターミナル1に割り当てられた際に、ハンディーターミナル1のオペレーティングシステムがMPU21に通知する。MPU21は、通知されたIPアドレスをメモリ21aに書き込む。
【0035】
本体装置10と無線通信装置20は、接続ライン30を介して接続される。接続ライン30は、本体装置10と無線通信装置20との間でデータを授受するためのラインと、DC−DCコンバータ17からの直流電圧を無線通信装置20に供給するためのラインとを含む。
【0036】
本実施形態におけるハンディーターミナル1は、通常モードと省電力モードとの間で動作モードを切り換える機能を備える。通常モードは、ハンディーターミナル1を、機能を制限せずに通常の能力で動作させるモードである。省電力モードは、通常モードにおける動作時よりも消費電力を抑えてハンディーターミナル1を動作させるモードである。省電力モードにおいてハンディーターミナル1は、例えばハンディーターミナル1が備えるデバイスの全て或いは一部を通常モードにおける動作時よりも低能力で動作させるか、これらデバイスの全て或いは一部への電源供給を停止することによって、消費電力を抑える。省電力モードの具体的な仕様は、例えばコンピュータの電源制御に関する規格であるACPI(Advanced Configuration and Power Interface)に則して設計すればよい。
【0037】
ハンディーターミナル1は、通常モードで動作しているとき、所定条件の成立を以って省電力モードに移行する。所定条件は、例えば入力インターフェイス15が所定時間以上操作されなかったこと、無線通信装置20を介した通信が所定時間以上行われなかったこと、或いは入力インターフェイス15に対して所定の操作がなされたことなどである。
【0038】
本実施形態において、ハンディーターミナル1は、省電力モードに移行した際に少なくともCPU11による情報処理を制限する。この制限は、例えばアプリケーションプログラムやオペレーティングシステムの動作を停止することで行う。さらに、ハンディーターミナル1は、ディスプレイ14、入力インターフェイス15及び無線通信装置20等のデバイスを低消費電力で動作させる。
【0039】
無線通信装置20の動作について説明する。
ハンディーターミナル1が省電力モードに移行している際に送受信回路22がデータを受信した場合、無線通信装置20は、当該データが第1種別のデータであるならばMPU21により当該データを処理する。無線通信装置20は、当該データが第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば本体装置10の省電力モードを解除してCPU11に当該データを処理させる。例えば、第1種別のデータはMPU21にて処理可能なデータとして定義でき、第2種別のデータはMPU21にて処理不可能かつCPU11にて処理可能なデータとして定義できる。
【0040】
特に本実施形態において、第1種別のデータはARP要求フレームであり、第2種別のデータはハンディーターミナル1を宛先としたユニキャストフレームである。
【0041】
省電力モード下において、MPU21は、メモリ21aが記憶するコンピュータプログラムを実行することにより、図7のフローチャートに沿って動作する。
【0042】
当該フローチャートにおいて、先ずMPU21は、予め定められた待ち時間をカウントする(Act1)。この待ち時間のカウントの間、無線通信装置20は、データの送受信を実行しない。待ち時間をカウントし終えたとき、MPU21は、送受信回路22を制御してデータの受信処理を実行させる(Act2)。MPU21は、送受信回路22がフレームを受信したかを判定する(Act3)。
【0043】
フレームを受信していないと判定した場合(Act3のNo)、MPU21は、本体装置10から省電力モードの解除が指令されているかを判定する(Act4)。例えば本体装置10は、入力インターフェイス15に対して所定の操作がなされた際に、無線通信装置20に省電力モードの解除を指令する。省電力モードの解除が指令されていないと判定した場合(Act4のNo)、MPU21は、動作をAct1に戻す。
【0044】
このように、省電力モード下において無線通信装置20は、待ち時間のカウントと受信処理の実行を繰り返す。待ち時間のカウントを行う際には、送受信回路22を駆動しないので、消費電力が低減される。
【0045】
Act3においてフレームを受信したと判定した場合(Act3のYes)、MPU21は、当該フレームがハンディーターミナル1宛のARP要求フレームであるかを判定する(Act5)。
【0046】
MPU21は、当該フレームのヘッダがARP要求フレームであることを示し、且つ当該フレームの宛先IPアドレスとメモリ21aが記憶するハンディーターミナル1のIPアドレスとが一致する場合、当該フレームがハンディーターミナル1宛のARP要求フレームであると判定する(Act5のYes)。この場合、MPU21は、一時的に省電力モードを解除して通常モードに移行し、ARP応答処理を実行する(Act6)。ARP応答処理において、MPU21は、ARP応答フレームを生成する。当該ARP応答フレームの送信元MACアドレス及び送信元IPアドレスは、メモリ21aが記憶する無線通信装置20のMACアドレス及びハンディーターミナル1のIPアドレスである。当該ARP応答フレームの宛先MACアドレス及び宛先IPアドレスは、ARP要求フレームに含まれる送信元MACアドレス及び送信元IPアドレスである。MPU21は、送受信回路22を制御して、生成したARP応答フレームを送信させる。ARP応答フレームを送信した後、MPU21は、無線通信装置20を再び省電力モードに移行させる。Act6の後、MPU21の動作はAct4に移る。
【0047】
Act5においてARP要求フレームでないと判定した場合(Act5のNo)、MPU21は、Act2にて受信したフレームがハンディーターミナル1宛のユニキャストフレームであるかを判定する(Act7)。MPU21は、当該フレームの宛先MACアドレスとメモリ21aが記憶する無線通信装置20のMACアドレスが一致する場合、当該フレームがハンディーターミナル1宛のユニキャストフレームであると判定する(Act7のYes)。この場合、MPU21は、本体装置10の省電力モードを解除して、当該フレームをCPU11に処理させる(Act8)。例えばMPU21は、当該フレームを本体装置10のCPU11に送信する。CPU11は、当該フレームを無線通信装置20から受信したことに応じて省電力モードを解除し、通常モードに復帰する。さらに、CPU11は、当該フレームに応じた処理を実行する。
【0048】
Act7においてハンディーターミナル1宛のユニキャストフレームでないと判定した場合(Act7のNo)、MPU21は、当該フレームに関する処理を行わずに、動作をAct4に移す。この場合、当該フレームは、ARP要求フレームを除くブロードキャストフレームであるか、或いは他の機器を宛先としたユニキャストフレームである。
【0049】
Act8の後、或いはAct4において省電力モードの解除が指令されていると判定した場合(Act4のYes)、MPU21は、当該フローチャートに示す動作を終了する。これを以って、無線通信装置20の省電力モードが解除され、無線通信装置20の動作は通常モードに移行する。通常モードにおいて、無線通信装置20は、受信処理を常時実行する。さらに、無線通信装置20は、本体装置10から送信データを受信した場合、当該送信データをアクセスポイント5に送信する。
【0050】
本実施形態の作用について説明する。
図8図9及び図10は、本体装置10と無線通信装置20の動作モードの遷移を説明するための図である。図8図10において、斜線を付した要素は通常モードにて動作している要素であり、斜線を付していない要素は省電力モードにて動作している要素である。
【0051】
図8図10には、本体装置10に関して、ディスプレイ14等のハードウェア(H/W)と、このハードウェアを駆動するドライバと、このドライバを制御するオペレーティングシステム(OS)と、このOSの機能を利用するアプリケーション(APL)とが示されている。ドライバ、オペレーティングシステム、及び、アプリケーションは、CPU11がROM12等に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで実現される。また、図8図10には、無線通信装置20に関して、送受信回路22等のハードウェア(H/W)と、このハードウェアを駆動するファームウェア(F/W)とが示されている。このファームウェアは、MPU21がメモリ21aに記憶されたコンピュータプログラムを実行することで実現される。
【0052】
図8は、本体装置10及び無線通信装置20がいずれも省電力モードに移行した状態を表す。この状態において、無線通信装置20は、Act1〜Act4を繰り返し実行する。無線通信装置20は、ARP要求フレームを受信したことに応じてAct6を実行する。このとき、無線通信装置20は、図9に示すように一時的に通常モードに移行してARP要求フレームに対するARP応答フレームを送信する。その後、図8に示すように、無線通信装置20は再び省電力モードに移行する。図8に示す状態において、無線通信装置20は、ユニキャストフレームを受信したことに応じてAct8を実行する。このとき、無線通信装置20及び本体装置10は、図10に示すように通常モードに移行する。
【0053】
本実施形態におけるオーダリングシステムにおいては、ハンディーターミナル1が省電力モードに移行した状態であっても、他の機器がハンディーターミナル1を宛先としたユニキャストフレームを送信することによって省電力モードを解除することができる。
【0054】
例えばIEEE802.11に準拠した無線LAN規格で接続された機器間で他機の省電力モードを解除する一般的な手段として、WOL(Wake On LAN)がある。WOLを利用するためには、Magic Packetという特別なパケットを送受信するためのハードウェア、ファームウェア、オペレーティングシステム、及び、アプリケーション等をシステム内の各機器が備える必要がある。これに対し本実施形態の構成であれば、ハンディーターミナル1にデータを送信する側の機器は、ハンディーターミナル1が省電力モードに移行しているか否かを意識せずに通常通りデータを送信すればよい。すなわち、当該機器が特別な構成を備える必要はない。ハンディーターミナル1においても、本体装置10は、無線通信装置20からユニキャストフレームが入力されたことに応じて省電力モードを解除するという単純な仕組みを持てばよく、WOLのような複雑な構成を必要としない。
【0055】
通常、ARP要求フレームは、システム内において例えば10分間隔程度の高頻度で送信される。ハンディーターミナル1がARP要求フレームに応答しなければ、他の機器はハンディーターミナル1のMACアドレスを把握できない可能性がある。この場合、他の機器は、ハンディーターミナル1にユニキャストフレームを送信できない。この点に関し、本実施形態においては、省電力モード下であっても無線通信装置20がARP要求フレームに応答する。しかも、ARP要求フレームへの応答に際して、本体装置10の省電力モードを解除する必要がない。したがって、本体装置10をできる限り省電力モード下に置いて消費電力を抑制できる。
【0056】
以上説明したほかにも、本実施形態にて開示した構成からは、種々の好適な作用が得られる。
【0057】
(変形例)
いくつかの変形例を挙げる。
本実施形態ではハンディーターミナル1の省電力モードについて述べた。しかしながら、ハンディーターミナル1が備えるとした省電力モードに関する構成を、オーダリングシステムに含まれる他の機器が備えてもよい。
【0058】
また、本実施形態ではオーダリングシステムを例示した。しかしながら、ハンディーターミナル1が備えるとした省電力モードに関する構成を、他のシステムに含まれるデータ処理装置に適用することもできる。このようなデータ処理装置としては、例えば小売店等で稼働するPOSシステムに含まれるPOS端末等が挙げられる。この場合において、データ処理装置と他の機器との通信形態は無線に限られず、有線であってもよい。
【0059】
本実施形態では、無線通信装置20がユニキャストフレームを受信した場合に、無線通信装置20が当該フレームを本体装置10に送信することで本体装置10の省電力モードを解除するとした。しかしながら、無線通信装置20が本体装置10の省電力モードを解除する仕組みはこれに限られない。例えば、接続ライン30に割り込み信号を送信するためのラインを設け、無線通信装置20がユニキャストフレームを受信した際にこのラインを介して割り込み信号を送信し、この信号を受信したことに応じてCPU11が省電力モードを解除する仕組みを採用してもよい。
【0060】
本実施形態では、第1種別のデータがARP要求フレームであり、第2種別のデータがユニキャストフレームであるとした。しかしながら、第1,第2種別のデータはこれらに限られない。例えば、無線通信装置20がより高度なデータ処理能力を有するならば、第1種別のデータは、より複雑な演算を必要とするデータに拡張されてもよい。また、ブロードキャストフレームの一部が第2種別のデータとして扱われてもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
データを処理する第1のデータ処理手段を含み、前記第1のデータ処理手段による処理を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行する機能を備えた本体部と、
外部機器との間でデータを送受信する送受信手段、及び、前記送受信手段が前記外部機器から受信したデータを処理する第2のデータ処理手段を含み、前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが第1種別のデータであるならば前記第2のデータ処理手段により当該データを処理し、当該データが前記第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば前記本体部の省電力モードを解除して前記第1のデータ処理手段に当該データを処理させる通信部と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
[2]
前記第1種別のデータは、MACアドレスを問い合わせるためのデータであって、問い合わせ先のIPアドレスを含み、
前記第2のデータ処理手段は、問い合わせ先のIPアドレスとして前記データ処理装置のIPアドレスを含む前記第1種別のデータを前記送受信手段が受信した場合、前記送受信手段に前記通信部のMACアドレスを前記外部機器へ送信させる、
ことを特徴とする付記[1]に記載のデータ処理装置。
[3]
前記通信部は、前記外部機器から複数の宛先に送信されたデータを前記送受信手段が受信した場合、当該データが前記第1種別のデータである場合を除き、当該データに関する処理を実行しない、
ことを特徴とする付記[2]に記載のデータ処理装置。
[4]
前記第2種別のデータは、前記通信部のMACアドレスを宛先として含むデータである、
ことを特徴とする付記[1]乃至[3]のうちいずれか1に記載のデータ処理装置。
[5]
前記本体部は、前記省電力モードに移行した状態において、外部からデータが入力されたことに応じて前記省電力モードを解除する機能を備え、
前記通信部は、前記第2種別のデータを前記送受信手段が受信した場合、前記本体部に当該データを出力することで前記本体部の前記省電力モードを解除する、
ことを特徴とする付記[1]乃至[4]のうちいずれか1に記載のデータ処理装置。
[6]
データを処理するデータ処理手段を含み、前記データ処理手段による処理を制限して消費電力を抑える省電力モードに移行する機能を備えた本体部と、外部機器との間でデータを送受信する送受信手段を含む通信部とを備えるデータ処理装置において、前記通信部が備えるプロセッサに、
前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが第1種別のデータであるならば当該データを処理する機能と、
前記本体部が前記省電力モードに移行している際に前記送受信手段がデータを受信した場合、当該データが前記第1種別とは異なる第2種別のデータであるならば前記本体部の省電力モードを解除して前記データ処理手段に当該データを処理させる機能と、
を実現させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0062】
1…ハンディーターミナル、5…アクセスポイント、10…本体装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…ディスプレイ、15…入力インターフェイス、16…バッテリ、17…DC−DCコンバータ、20…無線通信装置、21…MPU、21a…メモリ、22…送受信回路、23…アンテナ、30…接続ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10