特許第5903411号(P5903411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903411
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】環境試験装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-163063(P2013-163063)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-31651(P2015-31651A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−240331(JP,A)
【文献】 特開2007−020356(JP,A)
【文献】 特開2012−242341(JP,A)
【文献】 特開2003−240703(JP,A)
【文献】 特開2013−080107(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0121913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01R 31/26
H02J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から電力が供給され、試験室に配置された試料の雰囲気状態を所定条件に変化させて試験を行う試験部と、
外部電源から電力が供給され、前記試験部を制御する制御部と、
前記制御部と通信可能に接続されていると共に、外部電源からの電力供給が遮断された際に前記外部電源に代わって前記試験部及び前記制御部に電力を供給するバッテリーを有する電源部とを備えた環境試験装置であって、
前記制御部は、
前記バッテリーの供給可能電力の残量を取得する電力残量取得手段と、
前記試験部の運転モードを、前記試料の雰囲気状態を前記所定条件とする通常モードから、前記通常モードよりも消費電力を少なくしつつ前記所定条件で試験を行う省電力モード又は前記試料の雰囲気状態を前記所定条件から変更する条件変更モードに切り替えるモード切替手段と、
前記電力残量取得手段によって取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量に基づいて、前記モード切替手段による運転モードの切り替えの要否を判断する判断手段とを備えていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電力残量取得手段によって取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量から、運転可能な残り時間を算出する運転可能時間算出手段をさらに備えており、
前記判断手段は、前記運転可能時間算出手段により算出された前記残り時間が第1所定時間以下である場合に、前記モード切替手段による運転モードの切り替えが必要であると判断することを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記試験部は、前記試験室の温湿度を調整する空調機器をさらに備えており、
前記モード切替手段によって運転モードの切り替えが行われた際に、前記空調機器の制御が切り替えられることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記空調機器は、前記試験室を加熱する加熱装置及び冷却する冷却装置を含んでおり、
前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記加熱装置又は前記冷却装置の少なくとも一方の消費電力を少なくするような前記省電力モードに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記試料に結露が生じないように湿度を調整しつつ前記試験室の温度が常温になるように前記空調機器が制御される前記条件変更モードに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記試料は電子機器であり、
前記試験部は、前記電子機器に通電する通電手段をさらに備えており、
前記空調機器は、前記試験室を加熱する加熱装置、前記試験室を加湿する加湿ヒータ、及び前記試験室を冷却する冷却装置とを含んでおり、
前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記電子機器、前記加熱装置、及び前記加湿ヒータよりも前記冷却装置への通電が優先されるような前記条件変更モードに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記空調機器による前記試験室の湿度の制御を中止し、前記試験室の温度のみを調整する、前記条件変更モードに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記試験部の状態に関する情報を記憶する状態記憶手段をさらに備えており、
前記状態記憶手段は、前記モード切替手段により前記通常モードから前記条件変更モードに切り替えられたときも、引き続き前記試験部の状態に関する情報を記憶することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項9】
外部電源から電力が供給され、試験室に配置された試料の雰囲気状態を所定条件に変化させて試験を行う試験部と、
外部電源から電力が供給され、前記試験部を制御する制御部と、
前記制御部と通信可能に接続されていると共に、外部電源からの電力供給が遮断された際に前記外部電源に代わって前記試験部及び前記制御部に電力を供給するバッテリーとを備えた環境試験装置の制御方法であって、
前記バッテリーの供給可能電力の残量を取得する電力残量取得ステップと、
前記試験部の運転モードを、前記試料の雰囲気状態を前記所定条件とする通常モードから、前記通常モードよりも消費電力を少なくしつつ前記所定条件で試験を行う省電力モード又は前記試料の雰囲気状態を前記所定条件から変更する条件変更モードに切り替えるモード切替ステップと、
前記電力残量取得ステップにおいて取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量に基づいて、前記モード切替ステップにおける運転モードの切り替えの要否を判断する判断ステップとを備えていることを特徴とする環境試験装置の制御方法。
【請求項10】
前記電力残量取得ステップにおいて取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量から、運転可能な残り時間を算出する運転可能時間算出ステップをさらに備えており、
前記判断ステップにおいては、前記運転可能時間算出ステップにより算出された前記残り時間が第1所定時間以下である場合に、前記モード切替ステップにおける運転モードの切り替えが必要であると判断することを特徴とする請求項9に記載の環境試験装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の雰囲気状態を所定条件に変化させて試験を行う環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の試料の性能や耐久性を調べるために、試料が配置された空間の温度や湿度等を所定条件に変化させる環境試験を行う環境試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる環境試験装置は、試料が配置される試験室と、空気を冷却する蒸気圧縮式の冷凍機と、空気を加熱する加熱ヒータと、空気を加湿する加湿装置と、冷凍機、加熱ヒータ、及び加湿装置によって温湿度が調整された空気を試験室に送り込む送風機とを主に備えている。また、試料に電線が取り付けられて、通電可能になっている場合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2013−72680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような環境試験装置では、試験室内の温湿度を調整するための冷凍機、加熱ヒータ、加湿装置、及び送風機を運転するため、また必要に応じて試料に通電するために電力が必要である。特に、冷凍機の運転には大きな電力が必要であるので、商用電源から電力を供給するのが一般的である。
【0005】
しかしながら、商用電源のみから電力を供給する場合には、自然災害や電源施設の故障等で停電が生じた場合に、試験が中断されてしまう。このような場合には後に再試験を行う必要があり、試験効率が低下する。また、突然電力供給が止まることで、試験室内の温湿度の急激な変化による試料の表面への結露の発生等により試料が損傷する場合がある。そこで、バックアップ用の電源としてバッテリーを備えておき、停電時には商用電源に代えてバッテリーにより電力供給を行うことが考えられる。しかしながら、停電が長時間にわたり、バッテリーの供給電力の残量が0となったときには、試験の中断が生じ、また試料が損傷する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、試験の中断や試料の損傷が生じるのを抑制できる環境試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明にかかる環境試験装置は、外部電源から電力が供給され、試験室に配置された試料の雰囲気状態を所定条件に変化させて試験を行う試験部と、外部電源から電力が供給され、前記試験部を制御する制御部と、前記制御部と通信可能に接続されていると共に、外部電源からの電力供給が遮断された際に前記外部電源に代わって前記試験部及び前記制御部に電力を供給するバッテリーとを備えた環境試験装置である。前記制御部は、前記バッテリーの供給可能電力の残量を取得する電力残量取得手段と、前記試験部の運転モードを、前記試料の雰囲気状態を前記所定条件とする通常モードから、前記通常モードよりも消費電力を少なくしつつ前記所定条件で試験を行う省電力モード又は前記試料の雰囲気状態を前記所定条件から変更する条件変更モードに切り替えるモード切替手段と、前記電力残量取得手段によって取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量に基づいて、前記モード切替手段による運転モードの切り替えの要否を判断する判断手段とを備えている。
【0008】
この環境試験装置は、運転モードを省電力モードに切り替えることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。また、条件変更モードに切り替えることで、バッテリーからの電力供給が終了するのに備えて試料の雰囲気状態を試験を行う際の所定条件から変化させ、電力供給終了による試料の損傷を抑制することができる。
【0009】
第2の発明にかかる環境試験装置は、第1の発明にかかる環境試験装置において、前記制御部は、前記電力残量取得手段によって取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量から、運転可能な残り時間を算出する運転可能時間算出手段をさらに備えており、前記判断手段は、前記運転可能時間算出手段により算出された前記残り時間が第1所定時間以下である場合に、前記モード切替手段による運転モードの切り替えが必要であると判断してもよい。
【0010】
この環境試験装置では、バッテリーの供給可能電力の残量が少なくなるのに伴って運転可能な残り時間も次第に短くなり、残り時間が第1所定時間以下となった場合に運転モードを通常モードから省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。したがって、バッテリーからの電力供給が終了する前に確実に省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。
【0011】
本発明の環境試験装置は、第1の発明にかかる環境試験装置において、前記電力残量取得手段によって取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量が所定量以下である場合に、警報を発する警報手段をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
本発明の環境試験装置は、第2の発明にかかる環境試験装置において、前記運転可能時間算出手段により算出された前記残り時間が、前記第1所定時間よりも長い第2所定時間以下である場合に、警報を発する警報手段をさらに備えていることが好ましい。
【0013】
これらの環境試験装置では、モード切替手段によって運転モードの切り替えが行われる前にその旨をユーザに知らせることができる。
【0014】
本発明の環境試験装置は、第1又は第2の発明にかかる環境試験装置において、前記モード切替手段による運転モードの切り替えが可能な状態と不可能な状態とのいずれかを設定する指示がユーザにより入力される切替可否設定部をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
この環境試験装置では、ユーザの意思により、モード切替手段により運転モードの切り替えが行われる状態と行われない状態とのいずれかを選択できる。
【0016】
第3の発明にかかる環境試験装置は、第1又は第2の発明にかかる環境試験装置において、前記試験部は、前記試験室の温湿度を調整する空調機器をさらに備えており、前記モード切替手段によって運転モードの切り替えが行われた際に、前記空調機器の制御が切り替えられてもよい。
【0017】
この環境試験装置では、空調機器の運転状態を変更して運転モードを切り替えることができる。
【0018】
第4の発明にかかる環境試験装置は、第3の発明にかかる環境試験装置において、前記空調機器は、前記試験室を加熱する加熱装置及び冷却する冷却手装置を含んでおり、前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記加熱装置又は前記冷却装置の少なくとも一方の消費電力を少なくするような前記省電力モードに切り替えてもよい。
【0019】
この環境試験装置では、加熱装置又は冷却装置の少なくとも一方の消費電力を少なくすることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。
【0020】
本発明にかかる環境試験装置は、第1〜第4のいずれかの発明にかかる環境試験装置において、ユーザに対して前記試験部の運転状況を知らせる報知手段をさらに備えており、前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記報知手段の消費電力が少なくなるような前記省電力モードに切り替えてもよい。
【0021】
この環境試験装置では、報知手段の消費電力を少なくすることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。
【0022】
第5の発明にかかる環境試験装置は、第3の発明にかかる環境試験装置において、前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記試料に結露が生じないように湿度を調整しつつ前記試験室の温度が常温になるように前記空調機器が制御される前記条件変更モードに切り替えてもよい。
【0023】
この環境試験装置では、バッテリーからの電力供給が終了しても結露により試料が損傷するのを抑制できる。
【0024】
第6の発明にかかる環境試験装置は、第3の発明にかかる環境試験装置において、前記試料は電子機器であり、前記試験部は、前記電子機器に通電する通電手段をさらに備えており、前記空調機器は、前記試験室を加熱する加熱装置、前記試験室を加湿する加湿ヒータ、及び前記試験室を冷却する冷却装置とを含んでおり、前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記電子機器、前記加熱装置、及び前記加湿ヒータよりも前記冷却装置への通電が優先されるような前記条件変更モードに切り替えてもよい。
【0025】
この環境試験装置では、バッテリーからの電力供給が終了しても試料が燃えて損傷するのを抑制できる。
【0026】
第7の発明にかかる環境試験装置は、第3の発明にかかる環境試験装置において、前記モード切替手段は、前記判断手段により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、前記空調機器による前記試験室の湿度の制御を中止し、前記試験室の温度のみを調整する、前記条件変更モードに切り替えてもよい。
【0027】
この環境試験装置では、温度の急激な変化による結露によって試料が損傷するのを抑制することができる。
【0028】
本発明にかかる環境試験装置は、第5〜第7の発明にかかる環境試験装置において、ユーザに対して前記試験部の運転状況を知らせる報知手段をさらに備えており、前記制御部は、前記モード切替手段により運転モードが前記条件変更モードに切り替えられた際に、前記報知手段の消費電力が少なくなるように制御してもよい。
【0029】
この環境試験装置では、報知手段の消費電力を少なくすることで試料の損傷を抑制するための制御に残りの電力を使用することができる。よって、確実に試料の損傷を抑制することができる。
【0030】
本発明にかかる環境試験装置は、第1〜第7のいずれかの発明にかかる環境試験装置において、前記モード切替手段により通常モードから切り替えられる運転モードを、前記省電力モードと前記条件変更モードとのいずれかに設定する指示がユーザにより入力される運転モード設定部をさらに備えていることが好ましい。
【0031】
この環境試験装置では、ユーザの意思により、モード切替手段により通常モードから切り替えられる運転モードを省電力モードとするか条件変更モードとするかを選択できる。
【0032】
第8の発明にかかる環境試験装置は、第1〜第7のいずれかの発明にかかる環境試験装置において、前記制御部は、前記試験部の状態に関する情報を記憶する状態記憶手段をさらに備えており、前記状態記憶手段は、前記モード切替手段により前記通常モードから前記条件変更モードに切り替えられたときも、引き続き前記試験部の状態に関する情報を記憶する。
【0033】
この環境試験装置では、条件変更モードに切り替えられて試料の雰囲気状態が試験が行われる所定条件から変更された場合であっても、状態記憶手段に記憶された試験部の状態に関する情報により、再試験の必要性の判断等を行うことができる。
【0034】
第9の発明にかかる環境試験装置の制御方法は、外部電源から電力が供給され、試験室に配置された試料の雰囲気状態を所定条件に変化させて試験を行う試験部と、外部電源から電力が供給され、前記試験部を制御する制御部と、前記制御部と通信可能に接続されていると共に、外部電源からの電力供給が遮断された際に前記外部電源に代わって前記試験部及び前記制御部に電力を供給するバッテリーとを備えた環境試験装置の制御方法である。そして、前記バッテリーの供給可能電力の残量を取得する電力残量取得ステップと、前記試験部の運転モードを、前記試料の雰囲気状態を前記所定条件とする通常モードから、前記通常モードよりも消費電力を少なくしつつ前記所定条件で試験を行う省電力モード又は前記試料の雰囲気状態を前記所定条件から変更する条件変更モードに切り替えるモード切替ステップと、前記電力残量取得ステップにおいて取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量に基づいて、前記モード切替ステップにおける運転モードの切り替えの要否を判断する判断ステップとを備えている。
【0035】
この制御方法によると、運転モードを省電力モードに切り替えることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。また、条件変更モードに切り替えることで、バッテリーからの電力供給が終了するのに備えて試料の雰囲気状態を試験を行う際の所定条件から変化させ、電力供給終了による試料の損傷を抑制することができる。
【0036】
第10の発明にかかる環境試験装置の制御方法は、第9の発明にかかる制御方法において、前記電力残量取得ステップにおいて取得された前記バッテリーの供給可能電力の残量から、運転可能な残り時間を算出する運転可能時間算出ステップをさらに備えており、前記判断ステップにおいては、前記運転可能時間算出ステップにより算出された前記残り時間が第1所定時間以下である場合に、前記モード切替ステップにおける運転モードの切り替えが必要であると判断してもよい。
【0037】
この制御方法では、バッテリーの供給可能電力の残量が少なくなるのに伴って運転可能な残り時間も次第に短くなり、残り時間が第1所定時間以下となった場合に運転モードを通常モードから省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。したがって、バッテリーからの電力供給が終了する前に確実に省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。
【発明の効果】
【0038】
運転モードを省電力モードに切り替えることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。また、条件変更モードに切り替えることで、バッテリーからの電力供給が終了するのに備えて試料の雰囲気状態を試験を行う際の所定条件から変化させ、電力供給終了による試料の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態にかかる環境試験装置の概略構成を示す側面図である。
図2図1の電源部の概略構成を示すブロック図である。
図3図1のコントローラの概略構成を示すブロック図である。
図4図1の環境試験装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0041】
本発明の一実施形態にかかる環境試験装置100は、図1に示すように、試験部1、電源部3、及びコントローラ4を主に備えている。試験部1は、後述する試験室13に配置された試料Mの雰囲気状態を所定の試験条件に沿って変化させ試験を行うものである。本実施例では、試験部1は試験室13の温湿度を調整する空調機器2を備えており、温湿度を所定の試験条件に沿って変化させる試験が行われる。コントローラ4は、環境試験装置100全体を制御するものである。電源部3は、試験部1及びコントローラ4に電力を供給するものであり、且つコントローラ4と有線または無線の通信回路により通信可能に接続されている。
【0042】
試験部1は、内部に空間1aを有する略直方体形状の試験槽11と、試験槽11内の空間1aを仕切る仕切り壁12と、仕切り壁12によって分離され且つ仕切り壁12に形成された上部孔12a及び下部孔12bを介して互いに連通した試験室13及び空調室14と、空調室14に収容された空調機器2とを含んでいる。試験室13には、試料Mを載置するための載置台18、及び温度と湿度との検出が可能な温湿度センサ15が配置されている。本実施形態においては、試料Mは電子材料や半導体素子等の電子機器とする。試料Mに通電するためのケーブル16は、試験槽11に形成された挿通孔17を介して試験槽11内に引き込まれている。
【0043】
空調機器2は、送風機21、空気ヒータ22、冷却除湿装置23、及び加湿装置24を有している。空気ヒータ22は空調室14内の空気を加熱するものであり、例えばシーズヒータ等の電熱ヒータからなる。冷却除湿装置23は空調室14内の空気を冷却したり除湿したりするものであり、本実施形態では蒸気圧縮式冷凍機を採用することとするが、ペルチェ素子、スターリング冷却器、ヒートパイプ、ヒートレーン等を用いることもできる。加湿装置24は空調室14内の空気を加湿するものであり、容器内の水を加熱する加湿ヒータ24aを備えている。これら送風機21、空気ヒータ22、冷却除湿装置23、及び加湿装置24は、コントローラ4によってその出力がそれぞれ制御される。
【0044】
試験室13から下部孔12bを通って空調室14に流入した空気は、順次、加湿装置24、冷却除湿装置23、及び空気ヒータ22によってその温度及び湿度が調整され、所定の温度及び湿度となった状態で送風機21により上部孔12aを介して再び試験室13に流入する。なお、送風機21によって空調室14内の空気が試験室13に送り出されることで、試験室13内の空気が下部孔12bを通って空調室14内に流入する。こうして、試験室13と空調室14との間を空気が循環する。
【0045】
なお、後で詳述するように、試験部1は、コントローラ4の制御により、停電が発生していない通常時は通常モードで運転され、停電が発生した場合には省電力モード及び条件変更モードのいずれかのモードに切り替えて運転することができる。
【0046】
図2に示すように、電源部3は、家庭用100V電源や工場用200V電源等の商用電源10に接続されており、商用電源10の電圧を検出する第1電圧計53、ニッケル水素電池等のバッテリー51、バッテリー51を充電するための充電器52、バッテリー51の電圧を検出する第2電圧計54、及びインバータ55等で構成される。充電器52は、バッテリー51が常にフル充電状態となるように適宜に作動される。電源部3は、通常時は商用電源10からの電力を試験部1及びコントローラ4に供給し、停電時にはバッテリー51に貯えられた電力を試験部1及びコントローラ4に供給する。
【0047】
図3に示すように、コントローラ4は、空調機器2である送風機21、空気ヒータ22、冷却除湿装置23、及び加湿装置24とそれぞれ電気的に接続されている。また、コントローラ4には、試験室13内の温湿度や試験時間等を表示してユーザに対して試験部1の運転状況を知らせる表示部5と、ユーザにより試験条件や各種設定等の指示が入力される設定部6、及びバッテリー51による電力供給が行われている際に、運転可能時間が所定時間以下となった際にアラーム音を鳴らしユーザに対して警報を発するブザー7が接続されている。本実施形態においては、設定部6では、試験部1の運転モードの切り替えが可能な状態と不可能な状態とのいずれかの設定、及び停電発生時に通常モードから切り替えられる運転モードを、省電力モードと条件変更モードとのいずれかにするかの設定を入力できるようになっている。
【0048】
コントローラ4は、例えば汎用のパーソナルコンピュータによって構成されている。かかるコンピュータには、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどのハードウェアが収納されており、ハードディスクには、環境試験装置100の全体の動作を制御するためのプログラムを含む各種のソフトウェアが記憶されている。そして、これらハードウェア及びソフトウェアが組み合わされることによって、空調機器制御部41、表示制御部42、試料通電制御部43、運転可能時間算出部44、警報制御部45、状態記憶部46、モード切替部47、及び判断部48が構築されている。
【0049】
空調機器制御部41は、空調機器2である送風機21、空気ヒータ22、冷却除湿装置23、及び加湿装置24の駆動をそれぞれ制御し、試験室13の温湿度を調整する。なお、空気ヒータ22単独、冷却除湿装置23単独、加湿装置24単独で試験室13の温湿度を所望の環境に維持するのは一般に困難であり、通常はこれら三者のうち二者または三者を同時に駆動させている。すなわち例えば、蒸気圧縮式冷凍機である冷却除湿装置23により湿度を低下させる場合には、湿度だけを低下させることはできず温度も低下してしまうので空気ヒータ22により温度の調整を行う必要がある。また、加湿ヒータ24aを備えた加湿装置24により湿度を上昇させる場合には、湿度だけを上昇させることはできずヒータの熱により温度も上昇してしまうので冷却除湿装置23により温度の調整を行う必要がある。表示制御部42は、表示部5の駆動を制御する。試料通電制御部43は、試料Mへの通電を制御する。
【0050】
運転可能時間算出部44は、バッテリー51による電力供給が行われている際に、バッテリー51によって運転可能な残り時間を算出する。具体的には、電源部3の第2電圧計54によって検出されたバッテリー51の電圧値を取得し、この電圧値に基づきバッテリー51の供給可能電力の残量を求め、設定されている試験条件から空調機器2で今後消費される電力を勘案しつつ残り時間を算出する。
【0051】
警報制御部45は、運転可能時間算出部44により算出された残り時間が第1所定時間よりも長い第2所定時間以下である場合に、ブザー7を鳴らす。状態記憶部46は、試験部1の温湿度や通電状態等を記憶する。
【0052】
モード切替部47は、試験部1の運転モードを通常モードから省電力モード及び条件変更モードのいずれかに切り替えるものである。ここで通常モードとは、試験室13の温湿度を設定済みの試験条件に沿って制御するモードである。省電力モードとは、通常モードよりも消費電力を少なくしつつ、試験室13の温湿度を設定済みの試験条件に沿って制御するモードである。条件変更モードとは、試験室13の温湿度を設定済みの試験条件から変更するように制御するモードである。より具体的には、条件変更モードでは、試験部1への電力供給が終了しても試料Mが損傷するのを抑制するように、電力供給が終了する前に試験室13の温湿度を制御する。なお、上述のように、モード切替部47による運転モードの切り替えの可否、及びモード切替部47により通常モードから切り替えられる運転モードを省電力モードとするか条件変更モードとするかは、ユーザにより設定可能となっている。
【0053】
本実施形態においては、モード切替部47により運転モードが通常モードから省電力モードに切り替えられた際には、空調機器制御部41及び表示制御部42は空調機器2と表示部5の消費電力が少なくなるようにそれぞれ制御する。具体的には、例えば試験室13内を高温に保つ試験を行っている際には、空調機器制御部41は冷却除湿装置23への通電を中止する。また、試験室13内を低温に保つ試験を行っている際には、空調機器制御部41は空気ヒータ22への通電を中止する。これにより試験環境の制御は多少乱れる恐れはあるが、試験を継続することができる。なお、その他予め定められた省エネ運転方法での運転に切り替えてもよい。さらに、表示制御部42は表示部5への通電を中止する。これによりユーザに試験部1の運転状況を知らせることはできなくなるが、試験を継続することができる。
【0054】
モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられた際には、バッテリー51による電力供給が終了しても試料Mに結露が生じないようにするために、空調機器制御部41は試験室13内の湿度を低下させてから試験室13内を常温にするように空調機器2を制御する。すなわち、通常モードにおいて加湿装置24を駆動していた場合には、まず加湿装置24への通電を中止する。そして冷却除湿装置23により試験室13内の湿度を所定値まで低下させ、その後送風機21、空気ヒータ22、及び冷却除湿装置23への通電を中止する。また、表示制御部42は表示部5への通電を中止する。これによりユーザに試験部1の運転状況を知らせることはできなくなるが、結露を抑制するための制御に残りの電力を使用することができる。さらに、モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられたときにも、状態記憶部46は、引き続き試験部1の温湿度や通電状態等を記憶する。
【0055】
判断部48は、運転可能時間算出部44によって算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間に基づいて、モード切替部47による運転モードの切り替えの要否を判断する。具体的には、運転可能時間算出部44によって算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間が第1の所定時間以下である場合に、モード切替部47により運転モードを通常モードから省電力モードまたは条件変更モードに切り替える必要があると判断する。
【0056】
次に図4を参照しつつ、本実施形態の環境試験装置100の動作について説明する。まず、商用電源10から供給された電力により設定済みの試験条件に沿って通常モードで試験が開始されると、停電の有無の検出が行われる(ステップS1)。具体的には、例えば第1電圧計53の検出値が、商用電源10の定格電圧値(定格電圧範囲)を下回ったときに停電とみなす。ステップS1での判断は停電が検出されるまで繰り返し行われる。停電が検出された場合には(ステップS1:YES)、電力供給源が商用電源10からバッテリー51に切り替えられる(ステップS2)。
【0057】
続いて、停電復帰したか否かの判断が行われる(ステップS3)。停電復帰したと判断された場合には(ステップS3:YES)、電力供給源がバッテリー51から商用電源10に戻され(ステップS4)、再度ステップS1での停電の有無の検知が行われる。一方、停電復帰していないと判断された場合には(ステップS3:NO)、運転可能時間算出部44により算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間が第2所定時間以下であるか否かが判断される(ステップS5)。
【0058】
残り時間が第2所定時間以下であると判断されない場合には(ステップS5:NO)、ステップS3に戻って停電復帰したか否かの判断が行われる。そして、残り時間が第2所定時間以下と判断された場合には(ステップS5:YES)、警報制御部45の制御によりブザー7が鳴らされる(ステップS6)。なお、ブザー7はユーザによって止められるまで鳴り続けるのが望ましい。続いて、停電復帰したか否かの判断が行われる(ステップS7)。停電復帰したと判断された場合には(ステップS7:YES)、電力供給源がバッテリー51から商用電源10に戻され(ステップS8)、再度ステップS1での停電の有無の検知が行われる。一方、停電復帰していないと判断された場合には(ステップS7:NO)、バッテリー51の運転可能な残り時間が第1所定時間以下であるか否かが判断される(ステップS9)。
【0059】
残り時間が第1所定時間以下であると判断されない場合には(ステップS9:NO)、ステップS7に戻って停電復帰したか否かの判断が行われる。そして、残り時間が第1所定時間以下と判断された場合には(ステップS9:YES)、運転モードの切り替えが可能な状態に設定されているか否かが判断される(ステップS10)。運転モードの切り替えが不可能な状態に設定されている場合には(ステップS10:NO)、後述するステップS11〜13を省略してステップS14に進む。
【0060】
一方、運転モードの切り替えが可能な状態に設定されている場合には(ステップS10:YES)、通常モードから切り替えられる運転モードが省電力モードに設定されているか否かが判断される、(ステップS11)。通常モードから切り替えられる運転モードが省電力モードに設定されている場合には(ステップS11:YES)、モード切替部47により試験部1の運転モードが通常モードから省電力モードに切り替えられ、空調機器2と表示部5との消費電力を少なくしつつ試験が継続される(ステップS12)。また、通常モードから切り替えられる運転モードが条件変更モードに設定されている場合には(ステップS11:NO)、モード切替部47により試験部1の運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられ、電力供給終了により試料Mに結露が生じるのを避けるために試験室13内の湿度を低下させてから試験室13内を常温にする制御が行われる(ステップS13)。
【0061】
続いて、停電復帰したか否かの判断が行われる(ステップS14)。停電復帰したと判断された場合には(ステップS14:YES)、電力供給源がバッテリー51から商用電源10に戻されると共に運転モードが通常モードに戻され(ステップS15)、再度ステップS1での停電の有無の検知が行われる。一方、停電復帰していないと判断された場合には(ステップS14:NO)、運転を終了するか否かの判断が行われる(ステップS16)。すなわち、省電力モードでの運転が行われる場合には、試験が終了したか否かの判断が行われ、条件変更モードでの運転が行われている場合には、試験室13内の湿度が所定値(例えば室温25℃での水分量以下)まで低下し空調機器2への通電が中止されたか否かの判断が行われる。ここで、未だ運転が終了しないと判断された場合には(ステップS16:NO)、上述のステップS14に戻って停電復帰したか否かの判断が行われる。そして、運転を終了すると判断された場合には(ステップS16:YES)、環境試験装置100の全ての運転を終了する。
【0062】
以上に述べたように、本実施形態にかかる環境試験装置100は、商用電源10のバックアップ用のバッテリー51を有する電源部3と通信可能に接続されたコントローラ4を備えている。コントローラ4は、バッテリー51の運転可能な残り時間を算出する運転可能時間算出部44と、試験部1の運転モードを、試料Mの雰囲気状態を試験条件とする通常モードから、通常モードよりも消費電力を少なくしつつ試験条件で試験を行う省電力モード及び試料Mの雰囲気状態を試験条件から変更する条件変更モードのいずれかに切り替えるモード切替部47と、運転可能時間算出部44で算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間に基づいてモード切替部47による運転モードの切り替えの要否を判断する判断部48とを備えている。したがって、運転モードを省電力モードに切り替えることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。また、条件変更モードに切り替えることで、バッテリー51からの電力供給が終了するのに備えて試料Mの雰囲気状態を試験条件から変化させ、電力供給終了による試料Mの損傷を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の環境試験装置100では、判断部48は、運転可能時間算出部44により算出された残り時間が第1所定時間以下である場合に、モード切替部47による運転モードの切り替えが必要であると判断する。したがって、バッテリー51の供給可能電力の残量が少なくなるのに伴って運転可能な残り時間も次第に短くなり、残り時間が第1所定時間以下となった場合に運転モードを通常モードから省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。よって、バッテリー51からの電力供給が終了する前に確実に省電力モードまたは条件変更モードに切り替えることができる。
【0064】
さらに、本実施形態の環境試験装置100は、運転可能時間算出部44により算出された残り時間が第1所定時間よりも長い第2所定時間以下である場合に、アラーム音を鳴らしユーザに対して警報を発するブザー7を備えている。したがって、残り時間が第1所定時間以下となりモード切替部47によって運転モードの切り替えが行われる前に、運転モードの切り替えが行われる旨をユーザに知らせることができる。
【0065】
加えて、本実施形態の環境試験装置100は、モード切替部47による運転モードの切り替えが可能な状態と不可能な状態とのいずれかの設定、及びモード切替部47により通常モードから切り替えられる運転モードを、省電力モードと条件変更モードとのいずれにするかの設定がユーザにより入力される設定部6をさらに備えている。したがって、ユーザの意思により、モード切替部47により運転モードの切り替えが行われる状態と行われない状態とのいずれかを選択できる。また、ユーザの意思により、モード切替部47により通常モードから切り替えられる運転モードを省電力モードとするか条件変更モードとするかを選択できる。
【0066】
また、本実施形態の環境試験装置100では、試験部1は試験室13の温湿度を調整する空調機器2を備えており、モード切替部47によって運転モードの切り替えが行われた際に、空調機器2の制御が切り替えられる。したがって、空調機器2の運転状態を変更して運転モードを切り替えることができる。
【0067】
さらに、本実施形態の環境試験装置100では、空調機器2は試験室13を加熱する空気ヒータ22及び冷却する冷却除湿装置23を含んでおり、モード切替部47は判断部48により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、空気ヒータ22及び冷却除湿装置23の消費電力を少なくするような省電力モードに切り替える。したがって、空気ヒータ22及び冷却除湿装置23の消費電力を少なくすることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。
【0068】
加えて、本実施形態の環境試験装置100では、ユーザに対して試験部1の運転状況を知らせる表示部5を備えており、モード切替部47は、判断部48により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、表示部5の消費電力が少なくなるような省電力モードに切り替える。したがって、表示部5の消費電力が少なくすることで、試験を長く継続させて試験が中断され難くすることができる。
【0069】
また、本実施形態の環境試験装置100では、モード切替部47は、判断部48により運転モードの切り替えが必要であると判断された場合に、試料Mに結露が生じないように湿度を調整しつつ試験室13の温度が常温になるように空調機器2が制御される条件変更モードに切り替える。したがって、バッテリー51からの電力供給が終了しても結露により試料Mが損傷するのを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態の環境試験装置100では、モード切替部47により運転モードが条件変更モードに切り替えられた際に、表示制御部42が表示部5への通電を中止する。したがって、表示部5で消費される電力を削り試料Mの損傷を抑制するための制御に残りの電力を使用することができる。よって、確実に試料Mの損傷を抑制することができる。
【0071】
加えて、本実施形態の環境試験装置100では、試験部1の状態に関する情報を記憶する状態記憶部46をさらに備えており、状態記憶部46は、モード切替部47により通常モードから条件変更モードに切り替えられたときも、引き続き試験部1の状態に関する情報を記憶する。したがって、条件変更モードに切り替えられて試料Mの雰囲気状態が試験条件から変更された場合であっても、状態記憶部46に記憶された試験部1の状態に関する情報により、再試験の必要性があるか、続きから試験を行うことができるか、試験途中で条件変更モードに変更したものの試験としては成立しているか等の判断を行うことができる。
【0072】
(第1変形例)
次に、上述の実施形態の第1変形例について説明する。本変形例は、運転モードが条件変更モードに変更された際の制御のみが上述の実施形態と異なっている。すなわち本変形例においては、モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられた際には、バッテリー51による電力供給が終了しても試料Mが燃えないようにするために、試料M、空気ヒータ22、及び加湿ヒータ24aよりも冷却除湿装置23への通電が優先されるように制御する。具体的には、試験室13内を高温に保つ試験を行っている際において、まず試料Mへの通電を中止し、続いて空気ヒータ22及び加湿ヒータ24aへの通電を中止し、送風機21と冷却除湿装置23とへの通電は継続して試験室13が常温になるように制御する。第1変形例によると、バッテリー51からの電力供給が終了しても試料Mが燃えて損傷するのを抑制できる。
【0073】
(第2変形例)
次に、上述の実施形態の第2変形例について説明する。本変形例は、運転モードが条件変更モードに変更された際の制御のみが上述の実施形態と異なっている。すなわち本変形例においては、モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられた際には、空調機器2による試験室13の湿度の制御を中止し、試験室13の温度のみを調整する制御を行う。具体的には、加湿装置24への通電を中止し、送風機21、空気ヒータ22、及び冷却除湿装置23への通電は継続する。第2変形例によると、温度の急激な変化による試料Mへの結露により試料Mが損傷するのを抑制できる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0075】
例えば上述の実施形態では、判断部48が運転可能時間算出部44によって算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間に基づいて、モード切替部47による運転モードの切り替えの要否を判断する場合について説明した。また、警報制御部45が運転可能時間算出部44によって算出された残り時間が第2所定時間以下である場合にブザー7を鳴らす場合について説明した。しかしながら、これら判断部48での判断及び警報制御部45による制御は、バッテリー51の供給可能電力の残量に基づいて行ってもよい。
【0076】
また上述の実施形態では、設定部6で指示を入力することにより、試験部1の運転モードの切り替えが可能な状態と不可能な状態とのいずれかの設定、及び停電発生時に通常モードから切り替えられる運転モードを、省電力モードと条件変更モードとのいずれにするかの設定を行うことができるようになっている場合について説明したが、これらの設定はできなくてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、モード切替部47によって通常モードから切り替えられるモードが省電力モード及び条件変更モードの2種類である場合について説明したが、通常モードから切り替えられるモードは省電力モードのみでもよいし、条件変更モードのみでもよい。また、省電力モードに切り替えた後、状況に応じて条件変更モードに切り替えるものであってもよい。
【0078】
さらに上述の実施形態では、運転可能時間算出部44によって算出されたバッテリー51の運転可能な残り時間が第2所定時間以下である場合に警報を発する警報手段としてブザー7を備えている場合について説明したが、警報手段はこれに限定されるものではない。すなわち例えば、表示部5にメッセージを表示するようにしてもよいし、光を発するランプを備えていてもよい。また、警報手段は備えていなくてもよい(図4のフローチャートのS5、S6はなくてもよい)。
【0079】
加えて上述の実施形態では、モード切替部47により運転モードが通常モードから省電力モードに切り替えられた際に、空調機器2と表示部5との消費電力が少なくなるように制御する場合について説明したが、空調機器2及び表示部5のいずれか一方のみの消費電力が少なくなるように制御してもよい。
【0080】
また上述の実施形態では、モード切替部47により運転モードが通常モードから省電力モードに切り替えられた際も、条件変更モードに切り替えられた際も、表示制御部42が表示部5への通電を中止する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、表示制御部42は表示部5に表示する情報量を少なくするなどし、表示部5の消費電力を少なくするようにしてもよい。
【0081】
さらに上述の実施形態では、モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられた際に、表示制御部42が表示部5への通電を中止する場合について説明したが、これには限定されない。このような条件変更モードに切り替えられた際に表示部5の消費電力を少なくする制御は行われなくてもよい。
【0082】
加えて上述の実施形態では、モード切替部47により運転モードが通常モードから条件変更モードに切り替えられた際に、状態記憶部46が引き続き試験部1の状態を記憶する場合について説明したが、条件変更モードに切り替えられた際に、状態記憶部46による記憶を中止するようにしてもよい。
【0083】
加えて条件変更モードは、条件を変更して運転し、その後停電復帰した場合に試験に復帰しやすい条件で運転するものでもよい。また条件変更モードは、試験条件を緩めて試験を継続するものであってもよい。さらに条件変更モードは、実施形態、第1変形例、及び第2変形例等を組み合わせたものであってもよい。
【0084】
また上述の実施形態では、図4のステップS11において省電力モードに設定されているか否かを判断しているが、条件変更モードに設定されているか否かを判断するものであってもよい。
【0085】
さらに上述の実施形態では、試料が電子機器である場合について説明したが、これには限定されない。試料は部品等であってもよい。
【0086】
また上述の実施形態では、試験室13の温湿度を調整可能な環境試験装置について説明したが、本発明は湿度調整機能がなく温度のみを調整する環境試験装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0087】
1 試験部
2 空調機器
3 電源部
4 コントローラ(制御部)
5 表示部(報知手段)
6 設定部(切替可否設定部、運転モード設定部)
7 ブザー(警報手段)
10 商用電源(外部電源)
13 試験室
16 ケーブル(通電手段)
22 空気ヒータ(加熱装置)
23 冷却除湿装置
24 加湿ヒータ
44 運転可能時間算出部(電力残量取得手段、運転可能時間算出手段)
46 状態記憶部(状態記憶手段)
47 モード切替部(モード切替手段)
48 判断部(判断手段)
51 バッテリー
M 試料(電子機器)
図1
図2
図3
図4