(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、広い視野角、大きいコントラスト比、および速い応答時間が得られるという点で、その他の種類のディスプレイ素子よりも利点を有する自発光素子である。有機EL素子は、低分子(芳香族ジアミン)およびアルミニウム錯体を発光層に使用することによって、イーストマン・コダック社により最初に開発された[Appl.Phys.Lett.51,913,1987]。
【0003】
有機EL素子において発光効率を決定する最も重要な要因は、発光材料である。現在まで蛍光材料が発光材料として広く使用されてきた。しかし、エレクトロルミネッセンスの機構を考えると、リン光材料は理論的に蛍光材料よりも4倍高い発光効率を示す。従って、近年、リン光材料が調査されている。
【0004】
イリジウム(III)錯体は、リン光材料として広く知られており、リン光材料には、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)−ピリジナト−N,C3’)イリジウム(アセチルアセトネート)((acac)Ir(btp)
2)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)およびビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジナト−N,C2)ピコリナートイリジウム(Firpic)が、それぞれ赤色、緑色および青色材料として挙げられる。
【0005】
色純度、発光効率および安定性を改善するために、発光材料は、ドーパントとホスト材料を混合することによって調製されたものとして使用することができる。ホスト材料/ドーパント系において、ホスト材料は、EL素子の効率および性能に、より大きな影響を及ぼす、従って重要である。
【0006】
現在、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)は、リン光材料のホスト材料として最も広く知られている。さらに、パイオニア(日本)は、ホスト材料として、正孔ブロッキング層に使用さる材料であった、バトクプロイン(BCP)またはアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリネート)(4−フェニルフェノラート)(BAlq)を用いる高性能有機EL素子を開発した。
【0007】
これらのリンのホスト材料は良好な発光特性をもたらすが、これらは次の欠点を有する:(1)そのガラス転移温度が低いことと熱安定性が低いことに起因して、真空での高温堆積プロセスの間にそれらの分解が起こる可能性がある。(2)有機EL素子の電力効率は、[(π/電圧)×電流効率]によって与えられ、従って電力効率が電圧に反比例する。リン光材料を含む有機EL素子は蛍光材料を含むものよりも良好な電流効率(cd/A)を提供するが、かなり高い駆動電圧を有機EL素子に加える必要があり、それによって電力効率(lm/W)が低下する。(3)さらに、有機EL素子の動作寿命は短く、発光効率を改善することがなお必要とされる。
【0008】
国際公開第2006/049013号は、その骨格が縮合二環式基を有する有機エレクトロルミネッセンス材料のための化合物を開示する。しかし、それは、含窒素縮合二環式基(2個の6員環、つまりカルバゾール(carbazolic)基、およびアリールもしくはヘテロアリール基を縮合することにより形成される)を有する化合物を開示していない。さらに、前記化合物を含む有機EL素子は、良好な発光効率、動作寿命および駆動電圧を提供することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れた発光効率、長い動作寿命および低い駆動電圧を素子に付与する有機エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに前記化合物を用いる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的は次式1で表される化合物によって実現することができることを見出した。
【0013】
【化1】
【0014】
式中、
L
1は、単結合、置換もしくは非置換5員〜30員ヘテロアリーレン基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレン基、または置換もしくは非置換(C6−C30)シクロアルキレン基を表し,
X
1は、CHまたはNを表し;
Yは、−O−、−S−、−CR
11R
12−または−NR
13−を表し;
Ar
1は、単結合、置換もしくは非置換5員〜30員ヘテロアリーレン基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレン基、または置換もしくは非置換(C1−C30)アルキレン基を表し;
Ar
2は、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、または置換もしくは非置換5員〜30員へテロアリール基を表し;
R
1〜R
5は、各々独立に、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、置換もしくは非置換5員〜30員ヘテロアリール基、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換5員〜7員ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール(C1−C30)アルキル基、少なくとも1つの(C3−C30)シクロアルキル基と縮合した置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、少なくとも1つの置換もしくは非置換(C6−C30)芳香環と縮合した5員または7員ヘテロシクロアルキル基、少なくとも1つの置換もしくは非置換(C6−C30)芳香環と縮合した(C3−C30)シクロアルキル基、−NR
14R
15、−SiR
16R
17R
18、−SR
19、−OR
20、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル基、置換もしくは非置換(
C2−C30)アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、またはヒドロキシル基を表すか;あるいは、置換もしくは非置換(C3−C30)アルキレン基または置換もしくは非置換(C3−C30)アルケニレン基によって、隣の置換基に連結されて、その炭素原子(単一または複数)が窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子によって置換されていてよい単環式もしくは多環式の脂環式環または単環式もしくは多環式の芳香環を形成し;
R
11〜R
20は、R
1〜R
5の1つと同じ意味を有し;
a、bおよびeは、各々独立に、1〜4の整数を表し;a、bまたはeが2以上の整数である場合、R
1の各々、R
2の各々またはR
5の各々は、同じであるかまたは異なり,
cおよびdは、各々独立に、1〜3の整数を表し;cまたはdが2以上の整数である場合、R
3の各々またはR
4の各々は同じであるかまたは異なり;かつ
ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール(エン)基は、B、N、O、S、P(=O)、SiおよびPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する。
【0015】
本明細書において、「(C1−C30)アルキル(エン)」は、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキル(エン)であり、それには、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどが挙げられる;「(C2−C30)アルケニル(エン)」は、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルケニル(エン)であり、それには、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチルブタ−2−エニルなどが挙げられる;「(C2−C30)アルキニル」は、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルキニルであり、それには、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチルペンタ−2−イニルなどが挙げられる;「(C1−C30)アルコキシ」は、1〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐アルコキシであり、それには、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、1−エチルプロポキシなどが挙げられる;「(C3−C30)シクロアルキル」は、3〜30個、好ましくは3〜20個、より好ましくは3〜7個の炭素原子を有する単環式もしくは多環式炭化水素であり、それには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる;「(C6−C30)シクロアルキレン」は、6〜30個、好ましくは6〜20個、より好ましくは6または7個の炭素原子を有するシクロアルキルから水素を除去することによって形成されるものであり;かつ、「5員〜7員のヘテロシクロアルキル」は、B、N、O、S、P(=O)、SiおよびP、好ましくはN、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子、ならびに前記ヘテロ原子以外の残留環骨格原子として炭素原子を有するシクロアルキルであり、それには、テトラヒドロフラン、ピロリジン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。さらに、「(C6−C30)アリール(エン)」は、芳香族炭化水素から誘導され、好ましくは6〜20個の環骨格炭素原子を有する単環式環または縮合環であり;それには、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどが挙げられる。さらに、「5員または30員ヘテロアリール(エン)」は、B、N、O、S、P(=O)、SiおよびPからなる群から選択される、少なくとも1個の、好ましくは1〜4個のヘテロ原子および前記ヘテロ原子以外の残留環骨格原子として炭素原子を有するアリールであり;単環式環または少なくともベンゼン環と縮合した縮合環であり;好ましくは5〜21個の環骨格原子を有し;部分的に飽和していてよく;単結合(単一または複数)を介して少なくとも1つのヘテロアリールもしくはアリール基とヘテロアリール基を結合させることによって形成されたものであってよく;かつ、それには、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、などをはじめとする単環式環型ヘテロアリール、および、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェノキサジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリルなどをはじめとする縮合環型ヘテロアリールが挙げられる。
【0016】
好ましくは、式Iの置換基は以下の通りである:
【0017】
L
1は、好ましくは、単結合、置換もしくは非置換5員もしくは30員ヘテロアリーレン基、または置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレン基、より好ましくは、単結合または置換もしくは非置換(C6−C30)アリーレン基を表し;
Xは、好ましくはNを表し;
Yは、好ましくは、−O−、−S−、−CR
11R
12−(式中、R
11およびR
12は、各々独立に、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基を表す)または−NR
13−(式中、R
13は、ハロゲン、重水素、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、または置換もしくは非置換5員もしくは30員ヘテロアリール基を表す)を表す。
【0018】
R
1およびR
2は、各々独立に、水素、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、置換もしくは非置換5員もしくは30員ヘテロアリール基、−NR
14R
15(式中、R
14およびR
15は、各々独立に、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基または置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基を表す)またはヒドロキシル基を表し、より好ましくは水素または置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基を表す。
【0019】
R
3〜R
5は、各々独立に、水素または置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基を表し、より好ましくは水素を表す。
【0020】
a〜eは、各々独立に、1の整数を表す。
【0021】
【化2】
は、次の構造から選択される:
【化3】
【0022】
本明細書において、L
1、Ar
1、Ar
2、R
1〜R
5およびR
11〜R
20で表される、置換(C1−C30)アルキル基、置換(C2−C30)アルケニル基、置換(C2−C30)アルキニル基、置換(C6−C30)シクロアルキレン基、置換(C3−C30)シクロアルキル基、置換5員〜7員ヘテロシクロアルキル基、置換(C6−C30)アリール(エン)基、置換5員〜30員ヘテロアリール(エン)基および置換芳香環の置換基は、各々独立に、重水素、ハロゲン、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、(C1−C30)アルキル基、ハロ(C1−C30)アルキル基、(C2−C30)アルケニル基、(C2−C30)アルキニル基、(C1−C30)アルコキシ基、(C1−C30)アルキルチオ基、(C3−C30)シクロアルキル基、(C3−C30)シクロアルケニル基、5員〜7員ヘテロシクロアルキル基、(C6−C30)アリール基、(C6−C30)アリールオキシ基、(C6−C30)アリールチオ基、5員〜30員ヘテロアリール基、(C6−C30)アリール基で置換された5員〜30員ヘテロアリール基、5員〜30員ヘテロアリール基で置換された(C6−C30)アリール基、トリ(C1−C30)アルキルシリル基、トリ(C6−C30)アリールシリル基、ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル基、(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル基、アミノ基、モノもしくはジ(C1−C30)アルキルアミノ基、モノもしくはジ(C6−C30)アリールアミノ基、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールアミノ基、(C1−C30)アルキルカルボニル基、(C1−C30)アルコキシカルボニル基、(C1−C30)アリールカルボニル基、ジ(C6−C30)アリールボルニル(arylbornyl)基、ジ(C1−C30)アルキルボルニル(alkylbornyl)基、(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールボルニル(arylbornyl)基、(C6−C30)アリール(C1−C30)アルキル基および(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリール基からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、前記置換基は、重水素、ハロゲン、(C1−C30)アルキル基、ハロ(C1−C30)アルキル基、(C6−C30)アリール基、5員〜30員ヘテロアリール基、トリ(C1−C30)アルキルシリル基、トリ(C6−C30)アリールシリル基、ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル基、(C1−C30)アルキルジ(C6−C30)アリールシリル基、ヒドロキシル基および(C1−C30)アルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0023】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物には、以下が挙げられるが、それらに限定されるものではない:
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0024】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物は、当技術分野で周知の方法によって調製することができ、例えば、下のスキーム1に従う。
【0025】
【化10】
【0026】
式中、R
1〜R
5、Ar
1、Ar
2、Y、X
1、L
1、a、b、c、dおよびeは、上記式1に定義される通りであり、Xは、ハロゲンを表す。
【0027】
さらに、本発明は、式1の有機エレクトロルミネッセンス化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【0028】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間の少なくとも1つの有機層を含む。前記有機層は、少なくとも1種の式1の有機エレクトロルミネッセンス化合物を含む。さらに、前記有機層は、式1の有機エレクトロルミネッセンス化合物がホスト材料として含まれている発光層を含む。式1の有機エレクトロルミネッセンス化合物がホスト材料として発光層に含まれている場合、前記発光層は、少なくとも1つのリン光ドーパントをさらに含む。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記リン光ドーパントは、特に限定されないが、次式2で表される化合物から選択することができる。
【0029】
【化11】
【0030】
式中
M
1は、Ir、Pt、PdおよびOsからなる群から選択され;L
101、L
102およびL
103は、各々独立に、次の構造:
【化12】
から選択され;
R
201〜R
203は、各々独立に、水素、重水素、非置換であるかまたはハロゲン(単一または複数)によって置換されている(C1−C30)アルキル基、非置換であるかまたは(C1−C30)アルキル基(単一または複数)によって置換されている(C6−C30)アリール基、またはハロゲンを表し;R
204〜R
219は、各々独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C1−C30)アルコキシ基、置換もしくは非置換(C3−C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換(C2−C30)アルケニル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、置換もしくは非置換モノ−もしくはジ−(C1−C30)アルキルアミノ基、置換もしくは非置換モノ−もしくはジ−(C6−C30)アリールアミノ基、SF
5、置換もしくは非置換トリ(C1−C30)アルキルシリル基、置換もしくは非置換ジ(C1−C30)アルキル(C6−C30)アリールシリル基、置換もしくは非置換トリ(C6−C30)アリールシリル基、シアノ基またはハロゲンを表し;R
220〜R
223は、各々独立に、水素、重水素、非置換であるかまたはハロゲン(単一または複数)によって置換されている(C1−C30)アルキル基、または非置換であるかまたは(C1−C30)アルキル基(単一または複数)によって置換されている(C6−C30)アリール基を表し;R
224およびR
225は、各々独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、またはハロゲンを表すか、あるいは、R
224およびR
225は、縮合環を含むまたは含まない(C3−C12)アルキレン基または(C3−C12)アルケニレン基を介して相互に連結されて、単環式もしくは多環式脂環式環または単環式もしくは多環式芳香環を形成することができ;R
226は、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、置換もしくは非置換5員もしくは30員ヘテロアリール基またはハロゲンを表し;R
227〜R
229は、各々独立に、水素、重水素、置換もしくは非置換(C1−C30)アルキル基、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基またはハロゲンを表し;Qは、
【化13】
を表し;R
231〜R
242は、各々独立に、水素、重水素、非置換であるかまたはハロゲン(単一または複数)によって置換されている(C1−C30)アルキル基、(C1−C30)アルコキシ基、ハロゲン、置換もしくは非置換(C6−C30)アリール基、シアノ基、置換もしくは非置換(C5−C30)シクロアルキル基を表すか、あるいは、R
231〜R
242の各々は、(C2−C30)アルキレン基または(C2−C30)アルケニレン基によって、隣の置換基に連結されて、スピロ環または縮合環を形成することができるか、あるいは、(C2−C30)アルキレン基または(C2−C30)アルケニレン基を介してR
207またはR
208に連結されて、飽和もしくは不飽和縮合環を形成することができる。
【0031】
式2のドーパントには、以下が挙げられるが、それらに限定されるものではない:
【化14】
【化15】
【0032】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物に加えて、アリールアミン系化合物およびスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系化合物をさらに含むことができる。
【0033】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子において、有機層は、周期律表の第1族の金属、第2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、ランタニド類およびd−遷移元素の有機金属、あるいは前記金属を含む少なくとも1つの錯体化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属をさらに含むことができる。有機層は、発光層および電荷発生層を含むことができる。
【0034】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物に加えて、青色エレクトロルミネッセンス化合物、赤色エレクトロルミネッセンス化合物または緑色エレクトロルミネッセンス化合物を含む少なくとも1つの発光層をさらに含むことによって白色光を発光することができる。必要に応じて、有機エレクトロルミネッセンス素子は、黄色発光層または橙色発光層をさらに含むことができる。
【0035】
好ましくは、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子では、カルコゲニド層、金属ハロゲン化物層および金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(以降、「表面層」)を、電極の一方または両方の内面に設置することができる。具体的には、シリコンまたはアルミニウムのカルコゲニド層をエレクトロルミネッセンス媒体層のアノード表面に設置し、金属ハロゲン化物層または金属酸化物層をエレクトロルミネッセンス媒体層のカソード表面に設置することが好ましい。そのような表面層は、動作安定性を有機エレクトロルミネッセンス素子にもたらす。好ましくは、前記カルコゲニドには、SiO
X(1≦X≦2)、AlO
X(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlONなどが挙げられる;前記金属ハロゲン化物には、LiF、MgF
2、CaF
2、希土類金属フッ化物などが挙げられる;前記金属酸化物には、Cs
2O、Li
2O、MgO、SrO、BaO、CaOなどが挙げられる。
【0036】
好ましくは、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子では、電子輸送化合物の混合領域または正孔輸送化合物の混合領域および酸化性ドーパントを、一対の電極の少なくとも一方の表面に設置することができる。この場合、電子輸送化合物は還元されてアニオンとなり、従ってエレクトロルミネッセンス媒体への電子の注入および輸送が促進される。さらに、正孔輸送化合物は酸化されてカチオンとなり、従ってエレクトロルミネッセンス媒体への正孔の注入および輸送が促進される。好ましくは、酸化性ドーパントには、様々なルイス酸およびアクセプター化合物が含まれ、還元的ドーパントには、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属、およびそれらの混合物が挙げられる。還元的ドーパント層は、2以上のエレクトロルミネッセンス層を有し白色光を放射する、エレクトロルミネッセンス素子を調製するための電荷発生層として用いることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物は、高い発光効率および長い動作寿命を有し、電力効率および電力消費を改良する低い駆動電圧しか要しない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
下文において、有機エレクトロルミネッセンス化合物を調製するための実施例、およびそれを用いる有機エレクトロルミネッセンス素子の特性が記載される。
【0039】
実施例で使用される略語は、以下の意味を有する:
【0040】
Ph:フェニル、MeOH:メタノール、EtOH:エタノール、MC:塩化メチレン、EA:酢酸エチル、
DMF:ジメチルホルムアミド、n−Bu:ノルマル−ブチル、i−Pr:イソプロピル、Me:メチル、
THF:テトラヒドロフラン、EDA:エチレンジアミン、NBS:N−ブロモスクシンイミド
【0043】
化合物C−1−1の調製
ジベンゾ[b,d]フラン−2−イルボロン酸(10.33g、48.76mmol)、3−ブロモ−9H−カルバゾール(10g、40.63mmol)、K
2CO
3(13.5g、97.52mmol)およびPd(PPh
3)
4(2.35g、2.03mmol)を、トルエン200mL、EtOH50mLおよび精製水50mLに添加した。反応混合物を3時間90〜100℃で撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮し、MCでトリチュレートした後、濾過して化合物C−1−1を得た(9.75g、72%)。
【0044】
化合物C−1−2の調製
2,4−ジクロロキナゾリン(30g、151mmol)、フェニルボロン酸(9.2g、75.3mmol)、Pd(PPh
3)
4(2.6g、2.3mmol)およびNa
2CO
3(16g、150mmol)をトルエン(300mL)および蒸留水(75mL)に溶解した後、反応混合物を2時間90℃で撹拌した。混合物を減圧下で蒸留して有機層を得、次にMeOHでトリチュレートした。得られた固体をMCに溶解し、シリカで濾過した後、MCおよびヘキサンでトリチュレートして化合物C−1−2を得た(9.3g、51.4%)。
【0045】
化合物C−3の調製
化合物C−1−1(5.3g、14.7mmol)および化合物C−1−2(5g、15.8mmol)をDMF80mLに懸濁した後、60%NaH(948mg、22mmol)を混合物に室温で添加した。得られた反応混合物を12時間撹拌した。精製水(1L)を添加した後、混合物を減圧下で濾過した。得られた固体をMeOH/EAでトリチュレートし、MCに溶解し、シリカで濾過した後、MC/n−へキサンでトリチュレートして化合物C−3を得た(5g、51.5%)。
【0048】
化合物C−2−1の調製
9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イルボロン酸(14g、48.76mmol)、3−ブロモ−9H−カルバゾール(10g、40.63mmol)、K
2CO
3(13.5g、97.52mmol)およびPd(PPh
3)
4(2.35g、2.03mmol)を、トルエン200mL、EtOH50mLおよび精製水50mLに添加した。反応混合物を3時間90〜100℃で撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮し、MCでトリチュレートした後、濾過して化合物C−2−1を得た(12g、72%)。
【0049】
化合物C−2−2の調製
2,4−ジクロロキナゾリン(20g、0.1mol)、ビフェニル−4−イルボロン酸(18.9g、0.1mol)、Pd(PPh
3)
4(3.5g、3.01mmol)およびNa
2CO
3(31.9g、0.3mol)を、トルエン800mL、EtOH200mLおよび精製水200mLに添加した。反応混合物を3時間70〜80℃で撹拌した後、水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮した後、シリカカラムクロマトグラフィーによって精製して化合物C−2−2を得た(15g、47%)。
【0050】
化合物C−9の調製
化合物C−2−2(4.6g、14.7mmol)および化合物C−2−1(5g、12.2mmol)をDMF80mLに懸濁した後、60%NaH(881g、22mmol)を混合物に室温で添加した。得られた反応混合物を12時間撹拌した。精製水(1L)を添加した後、混合物を減圧下で濾過した。得られた固体をMeOH/EAでトリチュレートし、MCに溶解し、シリカで濾過した後、MC/n−ヘキサンでトリチュレートして、化合物C−9を得た(4g、47.4%)。
【0051】
[調製実施例3]化合物C−12の調製
【0053】
化合物C−3−1の調製
ジベンゾ[b,d]チオフェン−2−イルボロン酸(10.33g、48.76mmol)、3−ブロモ−9H−カルバゾール(10g、40.63mmol)、K
2CO
3(13.5g、97.52mmol)、およびPd(PPh
3)
4(2.35g、2.03mmol)を、トルエン200mL、EtOH50mLおよび精製水50mLに添加した。反応混合物を3時間90〜100℃で撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮し、MCでトリチュレートした後、濾過して化合物C−3−1を得た(9.75g、72%)。
【0054】
化合物C−12の調製
化合物C−3−1(5.5g、15.8mmol)および化合物C−2−2(5g、15.8mmol)をDMF80mLに懸濁した後、60%NaH(948mg、22mmol)を混合物に室温で添加した。得られた反応混合物を12時間撹拌した。精製水(1L)を添加した後、混合物を減圧下で濾過した。得られた固体をMeOH/EAでトリチュレートし、MCに溶解し、シリカで濾過した後、MC/n−ヘキサンでトリチュレートした。化合物C−12(5.2g、52%)を得た。
【0055】
[調製実施例4]化合物C−15の調製
【0057】
化合物C−4−1の調製
ビフェニル−4−イルボロン酸(157g、554mmol)、1,3−ジブロモベンゼン(100g、581.7mmol)、Pd(PPh
3)
4(13g、11.08mmol)およびNa
2CO
3(150g、1.385mol)をトルエン(3.5L)、EtOH(0.7L)および蒸留水(0.7L)に溶解した後、反応混合物を3時間90℃で撹拌した。混合物をEAおよび蒸留水で抽出し、クロロホルム(10L)に熱によって溶解した後、シリカで濾過した。反応生成物をEAおよびヘキサンでトリチュレートした後、反応生成物をEAおよびMeOHでトリチュレートして化合物C−4−1を得た(94g、60%)。
【0058】
化合物C−4−2の調製
化合物C−4−1(55g、178mmol)をTHF(800mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(106mL、267mmol)を、反応混合物に−78℃で添加した後、混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(82mL、356mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、ヘキサンおよびアセトンで再結晶化させた。化合物C−4−2(43g、88.0%)を得た。
【0059】
化合物C−4−3の調製
2,4−ジクロロキナゾリン(20g、73mmol)、化合物C−4−2(15g、73mmol)、Pd(PPh
3)
4(2.5g、2.2mmol)およびNa
2CO
3(23g、241mmol)を、トルエン(500mL)、EtOH(100mL)および蒸留水(100mL)に溶解した後、5時間100℃で撹拌した。反応混合物を減圧下で蒸留して有機層を得、次にMeOHでトリチュレートした。得られた固体をMCに溶解し、シリカで濾過した後、MCおよびヘキサンでトリチュレートして化合物C−4−3を得た(19.5g、68%)。
【0060】
化合物C−15の調製
化合物C−2−1(5g、12.2mmol)および化合物C−4−3(4.6g、11.6mmol)をDMF80mLに懸濁した後、60%NaH(881mg、22mmol)を混合物に室温で添加した。得られた反応混合物を12時間撹拌した。精製水(1L)を添加した後、混合物を減圧下で濾過した。得られた固体をMeOH/EAでトリチュレートし、DMFでトリチュレートした後、EA/THFでトリチュレートした。反応生成物をMCに溶解し、シリカで濾過した後、MeOH/EAでトリチュレートした。化合物C−15(5.1g、57%)を得た。
【0061】
[調製実施例5]化合物C−29の調製
【0063】
化合物C−5−1の調製
2−ナフチルボロン酸(157g、554mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(100g、581.7mmol)、Pd(PPh
3)
4(13g、11.08mmol)およびNa
2CO
3(150g、1.385mol)を、トルエン(3.5L)、EtOH(0.7L)および蒸留水(0.7L)に溶解した後、反応混合物を3時間90℃で撹拌した。混合物をEAおよび蒸留水で抽出し、熱によってクロロホルム(10L)に溶解した後、シリカによって濾過した。反応生成物をEAおよびヘキサンでトリチュレートした後、反応生成物をEAおよびMeOHでトリチュレートして化合物C−5−1を得た(94g、60%)。
【0064】
化合物C−5−2の調製
化合物C−5−1(94g、332mmol)をTHF(800mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(80mL、386.4mmol)を、反応混合物に−78℃で添加した後、混合物を1時間撹拌した。B(OMe)
3(28mL、498mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、ヘキサンおよびアセトンで再結晶化させた。化合物C−5−2(57g、67.0%)を得た。
【0065】
化合物C−5−3の調製
2,4−ジクロロキナゾリン(46g、230mmol)、化合物C−5−2(57g、230mmol)、Pd(PPh
3)
4(10.6g、9.2mmol)およびNa
2CO
3(73g、690mmol)を、トルエン(1.1L)、EtOH(230mL)および蒸留水(350mL)に溶解した後、5時間100℃で撹拌した。反応混合物を減圧下で蒸留して有機層を得た後、MeOHでトリチュレートした。得られた固体をMCに溶解し、シリカで濾過した後、MCおよびヘキサンでトリチュレートして化合物C−5−3を得た(51g、99.9%)。
【0066】
化合物C−29の調製
化合物C−2−1(5g、12.2mmol)および化合物C−5−3(4.5g、12.2mmol)をDMF80mLに懸濁した後、60%NaH(881mg、22mmol)を混合物に室温で添加した。得られた反応混合物を12時間撹拌した。精製水(1L)を添加した後、混合物を減圧下で濾過した。得られた固体をMeOH/EAでトリチュレートし、DMFでトリチュレートした後、EA/THFでトリチュレートした。反応生成物をMCに溶解し、シリカで濾過した後、MeOH/EAでトリチュレートした。化合物C−29(1.8g、20%)を得た。
【0067】
[調製実施例6]化合物C−84の調製
【0069】
化合物C−6−1の調製
化合物C−2−1(14g、34.3mmol)、1,3−ジブロモベンゼン(48.5g、171.4mmol)、CuI(3.3g、17.1mmol)、K
3PO
4(21.8g、102.9mmol)およびEDA(2.3mL、34.3mmol)を、トルエン500mLに添加した。反応混合物を還流下で1日撹拌し、EAで抽出した後、減圧下で蒸留した。MC/へキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−6−1(15.5g、80.1%)を得た。
【0070】
化合物C−6−2の調製
化合物C−6−1(15.5g、27.5mmol)をTHF(250mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(17.6mL、44mmol)を−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(12.6mL、55mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、ヘキサンおよびMCで再結晶化させた。化合物C−6−2(8.7g、60%)を得た。
【0071】
化合物C−84の調製
化合物C−1−2(2.3g、9.5mmol)、化合物C−6−2(6g、11.3mmol)、Pd(PPh
3)
4(532mg、0.46mmol)およびNa
2CO
3(2.9g、27.6mmol)を、トルエン(55mL)、EtOH(14mL)および蒸留水(14mL)に溶解した後、反応混合物を2時間90℃で撹拌した。混合物を蒸留水およびEAで抽出した。MCおよびへキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−84(2.4g、36.9%)を得た。
【0072】
[調製実施例7]化合物C−86の調製
【0074】
化合物C−7−1の調製
化合物C−2−1(14g、34.3mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(48.5g、171.4mmol)、CuI(3.3g、17.1mmol)、K
3PO
4(21.8g、102.9mmol)およびEDA(2.3mL、34.3mmol)を、トルエン500mLに添加した。反応混合物を還流下で1日撹拌し、EAで抽出した後、減圧下で蒸留した。MC/へキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−7−1(15.5g、80.1%)を得た。
【0075】
化合物C−7−2の調製
化合物C−7−1(15.5g、27.5mmol)をTHF(250mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(17.6mL、44mmol)を、−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(12.6mL、55mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、MCおよびヘキサンで再結晶化させた。化合物C−7−2(8.7g、60%)を得た。
【0076】
化合物C−86の調製
化合物C−1−2(2.3g、9.5mmol)、化合物C−7−2(6g、11.3mmol)、Pd(PPh
3)
4(532mg、0.46mmol)およびNa
2CO
3(2.9g、27.6mmol)を、トルエン(55mL)、EtOH(14mL)および蒸留水(14mL)に溶解した後、反応混合物を2時間90℃で撹拌した。混合物を蒸留水およびEAで抽出した。MCおよびへキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−86(2.4g、36.9%)を得た。
【0077】
[調製実施例8]化合物C−87の調製
【0079】
化合物C−8−1の調製
9H−カルバゾール(20g、119.6mmol)、1−ブロモ−4−フルオロベンゼン(40mL、358.8mmol)、CuI(23g、119.6mmol)、K
3PO
4(117g、357mmol)およびEDA(16mL、238mmol)を、トルエン500mLに添加した。反応混合物を還流下で1日撹拌し、EAで抽出した後、減圧下で蒸留した。MC/へキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−8−1(42g、67%)を得た。
【0080】
化合物C−8−2の調製
化合物C−8−1(5g、19.1mmol)をDMF(100mL)に溶解した後、NBS(3.4g、19.1mmol)をそれに加えた。反応混合物を1日撹拌し、EAで抽出した後、減圧下で蒸留した。MC/へキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−8−2(5.6g、86%)を得た。
【0081】
化合物C−8−3の調製
C−8−2(5.6g、16.5mmol)をTHF(85mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(7.2mL、18.2mmol)を、−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(5.7mL、24.7mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、MCおよびヘキサンで再結晶化させた。化合物C−8−3(8.7g、60%)を得た。
【0082】
化合物C−8−4の調製
化合物C−8−3(14g、48.76mmol)、3−ブロモ−9H−カルバゾール(10g、40.63mmol)、K
2CO
3(13.5g、97.52mmol)およびPd(PPh
3)
4(2.35g、2.03mmol)を、トルエン200mL、EtOH50mL、および精製水50mLに添加した。反応混合物を3時間90〜100℃で撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮し、MCで再結晶化させた後、濾過して化合物C−8−4を得た(12g、72%)。
【0083】
化合物C−8−5の調製
化合物C−8−4(14g、34.3mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(48.5g、171.4mmol)、CuI(3.3g、17.1mmol)、K
3PO
4(21.8g、102.9mmol)およびEDA(2.3mL、34.3mmol)を、トルエン500mLに添加した。反応混合物を還流下で1日撹拌し、EAで抽出した後、減圧下で蒸留した。MC/へキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−8−5(15.5g、80.1%)を得た。
【0084】
化合物C−8−6の調製
化合物C−8−5(15.5g、27.5mmol)をTHF(250mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(17.6mL、44mmol)を反応混合物に−78℃で添加した後、混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(12.6mL、55mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を2時間撹拌した。2M HClを添加することによって混合物をクエンチし、蒸留水およびEAで抽出した後、MCおよびヘキサンで再結晶化させた。化合物C−8−6(8.7g、60%)を得た。
【0085】
化合物C−87の調製
化合物C−1−2(2.3g、9.5mmol)、化合物C−8−6(6g、11.3mmol)、Pd(PPh
3)
4(532mg、0.46mmol)およびNa
2CO
3(2.9g、27.6mmol)を、トルエン(55mL)、EtOH(14mL)、および蒸留水(14mL)に溶解した後、反応混合物を2時間90℃で撹拌した後、蒸留水およびEAで抽出した。MCおよびへキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−87(2.4g、36.9%)を得た。
【0086】
[調製実施例9]化合物C−99の調製
【0088】
化合物C−9−1の調製
化合物C−2−1(16g、39.17mmol)、1,4−ジブロモナフタレン(28g、97.92mmol)、CuI(7.7g、40.43mmol)、CsCO
3(38.4g、117.86mmol)およびKI(13g、78.3mmol)を、トルエン400mLに添加した。エチレンジアミン(5.12mL、78.3mmol)をそれに添加した後、反応混合物を還流下で30時間撹拌した。反応が完了した後、混合物を室温まで冷却し、MC/精製水で抽出した。得られた有機層を濃縮した。シリカカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−9−1(7.1g、30%)を得た。
【0089】
化合物C−9−2の調製
化合物C−9−1(6g、9.78mmol)をTHF(60mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(5.9mL、14.7mmol)を、−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(4.5mL、19.6mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を12時間撹拌した。反応が完了した後、精製水20mLを混合物に段階的にゆっくりと滴下した。その後、混合物をMC/NH4Cl水溶液で抽出した。得られた有機層を濃縮した後、シリカによって濾過して、化合物C−9−2を得た(4.5g、79.5%)。
【0090】
化合物C−99の調製
化合物C−9−2(4.5g、7.78mmol)、化合物C−1−2(2g、8.56mmol)、Na
2CO
3(2.5g、23.34mmol)およびPd(PPh
3)
4(0.45g、0.39mmol)をトルエン40mL、EtOH10mLおよび精製水10mLに添加した後、反応混合物を12時間115〜120℃で撹拌した。反応が完了した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−99(3g、52.6%)を得た。
【0091】
[調製実施例10]化合物C−106の調製
【0093】
化合物C−106の調製
化合物C−7−2(2.5g、4.73mmol)、化合物C−5−3(1.7g、4.73mmol)、Pd(PPh
3)
4(273mg、0.24mmol)およびNa
2CO
3(1.5g、14.2mmol)を、トルエン(55mL)、EtOH(14mL)および蒸留水(14mL)に溶解した後、反応混合物を2時間90℃で撹拌した後、蒸留水およびEAで抽出した。MCおよびへキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって反応生成物を精製した後、化合物C−106(2.3g、59.7%)を得た。
【0094】
[調製実施例11]化合物C−109の調製
【0096】
化合物C−11−1の調製
3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール(10g、31.06mmol)、フェニルボロン酸(3.75g、31.06mmol)、K
2CO
3(12.9g、93.18mmol)およびPd(PPh
3)
4(1.8g、1.55mmol)をトルエン150mL、EtOH40mLおよび精製水40mLに溶解した後、反応混合物を3時間90〜100℃で撹拌した。反応が完了した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−11−1(6.4g、65%)を得た。
【0097】
化合物C−11−2の調製
化合物C−11−1(6.4g、20.06mmol)をDMF100mLに溶解した後、NBS(3.6g、20.06mmol)をそれに添加した。反応混合物を3時間撹拌した。反応が完了した後、混合物をMC/精製水で抽出した。反応生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−11−2(4.8g、60%)を得た。
【0098】
化合物C−11−3の調製
化合物C−11−2(4.8g、12.06mmol)をTHF(60mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(6.3mL、15.68mmol)を−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(4.5g、24.12mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を12時間撹拌した。反応が完了した後、精製水20mLを混合物に段階的にゆっくりと滴下した。その後、混合物をMC/NH4Cl水溶液で抽出した。得られた有機層を濃縮し、シリカで濾過した後、MC/ヘキサンで結晶化して化合物C−11−3を得た(3g、70%)。
【0099】
化合物C−11−4の調製
3−ブロモ−9H−カルバゾール(2g、8.26mmol)、化合物C−11−3(3g、8.26mmol)、Pd(PPh
3)
4(0.48g、0.4mmol)およびK
2CO
3(3.4g、24.78mmol)を、トルエン40mL、EtOH10mLおよび精製水10mLに添加した。反応混合物を15時間70〜80℃で撹拌した。反応が完了した後、水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層を濃縮した。反応生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−11−4(3.2g、80%)を得た。
【0100】
化合物C−11−5の調製
化合物C−11−4(3.2g、6.6mmol)、ヨードブロモベンゼン(3.7g、13.21mmol)、CuI(1.5g、7.9mmol)およびK
3PO
4(2.8g、13.2mmol)をトルエン33mLに添加した後、エチレンジアミン(0.47g、7.9mmol)をそれに添加した。反応混合物を還流下で30時間撹拌した。反応が完了した後、混合物を室温まで冷却し、次にMC/精製水で抽出した。得られた有機層を濃縮した。反応生成物をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−11−5(3.3g、80%)を得た。
【0101】
化合物C−11−6の調製
化合物C−11−5(3.3g、5.16mmol)をTHF(25mL)に溶解した後、ヘキサン中2.5M n−BuLi(2.6mL、6.7mmol)を−78℃でそれに添加した。反応混合物を1時間撹拌した。B(Oi−Pr)
3(1.9g、10.3mmol)を混合物にゆっくりと添加した後、混合物を12時間撹拌した。反応が完了した後、精製水10mLを混合物に段階的にゆっくりと滴下した。その後、混合物をMC/NH4Cl水溶液で抽出した。得られた有機層を濃縮し、シリカで濾過した後、MC/ヘキサンで再結晶化させて化合物C−11−6を得た(2.5g、80%)。
【0102】
化合物C−109の調製
C−11−6(2.5g、4.14mmol)、化合物C−1−2(1g、4.55mmol)、Na
2CO
3(1.3g、12.42mmol)およびPd(PPh
3)
4(0.24g、0.2mmol)をトルエン20mL、EtOH5mLおよび精製水5mLに添加した後、反応混合物を12時間115〜120℃で撹拌した。反応が完了した後、混合物を室温まで冷却した。水層を重力分離によって混合物から除去した。得られた有機層をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した後、化合物C−109(2.2g、70%)を得た。
【0103】
化合物C−1、C−5、C−6、C−10、C−11、C−18、C−52、C−68、C−95、C−103およびC−120〜C−125を、調製実施例1〜11の方法を用いることにより調製した。調製したすべての化合物の物理化学的特性を次の表1に示す。
【0105】
[実施例1]
本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物を用いるOLED素子の製造
【0106】
有機発光ダイオード(OLED)素子のガラス基板(サムスンコーニング、大韓民国)上の透明な電極である酸化インジウムスズ(ITO)薄膜(15Ω/sq)を、トリクロロエチレン、アセトン、エタノールおよび蒸留水を順に用いる超音波洗浄に供し、次にイソプロパノール中で保存した。次に、ITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダに取り付けた。N
1−(ナフタレン−1−イル)−N
4,N
4−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミンを前記真空蒸着装置のセルに導入し、次に前記装置のチャンバ内の圧力を制御して、10
−6トルを実現した。その後、このセルに電流を加えて上記の導入材料を蒸発させ、それによって厚さ60nmの正孔注入層をITO基板上に形成した。次に、N,N’−ジ(4−ビフェニル)−N,N’−ジ(4−ビフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニルを前記真空蒸着装置の別のセルに導入し、電流をセルに加えることによって蒸発させ、それによって厚さ20nmの正孔輸送層を正孔注入層の上に形成した。その後、化合物C−1を真空蒸着装置の1つのセルにホスト材料として導入し、化合物D−7を別のセルにドーパントとして導入した。これら2つの材料を異なる速度で蒸発させ、4〜20重量%のドーピング量で蒸着させて、厚さ30nmの発光層を正孔輸送層の上に形成した。次に、9,10−ジ(1−ナフチル)−2−(4−フェニル−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール)アントラセンを、1つのセルに導入し、リチウムキノレートを別のセルに導入した。これら2つの材料を異なる速度で蒸発させ、30〜70重量%のドーピング量で蒸着させて、厚さ30nmの電子輸送層を発光層の上に形成した。次に、リチウムキノレートを厚さ1〜2nmの電子注入層として電子輸送層の上に蒸着させた後、厚さ150nmのAlカソードを、別の真空蒸着装置によって電子注入層の上に蒸着させた。このようにして、OLED素子を製造した。OLED素子を製造するために用いた材料はすべて、10
−6トルで真空昇華によって精製した材料であった。
【0107】
製造したOLED素子は、赤色の発光を示し、それは駆動電圧4.3Vおよび電流密度7.5mA/cm
2で、1,020cd/m
2の輝度を有する。さらに、5,000nitの輝度がその輝度の90%に低下する最小時間は140時間であった。
【0108】
[実施例2〜11]
本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物を用いるOLED素子の製造
【0109】
OLED素子類を、下の表2に示されるものをホスト材料およびドーパントとして使用することを除いて、実施例1の方法と同じ方法で製造した。
【0110】
[比較例1]従来のエレクトロルミネッセンス化合物を用いるOLED素子の製造
【0111】
ホスト材料として4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、およびドーパントとして(piq)
2Ir(acac)[ビス−(1−フェニルイソキノリル)イリジウム(III)アセチルアセトネート]を使用することにより、厚さ30nmの発光層を正孔輸送層の上に蒸着させたこと、ならびに、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラートを使用することにより、厚さ10nmの正孔ブロッキング層を蒸着させたことを除いて、OLED素子を実施例1の方法と同じ方法で製造した。
【0112】
製造したOLED素子は、赤色の発光を示し、それは駆動電圧5.5Vおよび電流密度12.5mA/cm
2で、1,000cd/m
2の輝度を有する。さらに、5,000nitの輝度がその輝度の90%に低下する最小時間は15時間であった。
【0113】
実施例および比較例の結果を次の表2に示す。
【0115】
表2に示されるように、本発明による有機エレクトロルミネッセンス化合物は、従来のエレクトロルミネッセンス化合物よりも優れた特性を有する、従って、高い発光効率および長い動作寿命を有し、電力効率および電力消費を改良する低い駆動電圧しか要しない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。