(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理剤の不揮発分に占める前記エステル(A)の重量割合が10〜70重量%であり、前記ノニオン界面活性剤(B)の重量割合が15〜65重量%である、請求項1又は2に記載の処理剤。
前記ノニオン界面活性剤(B)が、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル及び該多価アルコールエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(B1)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の合成繊維用処理剤は、特定のエステル(A)とノニオン界面活性剤(B)を必須に含有するものである。以下、詳細に説明する。
【0018】
[エステル(A)]
エステル(A)は、本発明の処理剤の必須成分であり、多価アルコールと直鎖脂肪酸がエステル結合した構造を持つエステルである。エステル(A)の代わりに、1価アルコールと直鎖脂肪酸がエステル結合した構造を持つエステルのみを必須に用いた場合、平滑性に優れるが、繊維を保護する油膜強度が弱く、かえって毛羽が増加する。また、多価アルコールと分岐脂肪酸とがエステル結合した構造を持つエステルを用いた場合、平滑性が不足し、毛羽が増加する。エステル(A)は、1種又は2種以上を使用してもよい。なお、エステル(A)は、分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。
【0019】
エステル(A)を構成する直鎖脂肪酸は、炭素骨格が直鎖構造である脂肪族モノカルボン酸をいう。直鎖脂肪酸には、ヒドロキシ脂肪酸も含まれてもよいが、ヒドロキシ脂肪酸が含まれると該処理剤の平滑剤としての役割が不足することから、ヒドロキシ脂肪酸は含まれないことが好ましい。
【0020】
エステル(A)を構成する直鎖脂肪酸は、リノール酸と、リノール酸を除く炭素数14〜22の直鎖脂肪酸(以下、直鎖脂肪酸(a)という)とを含有し、直鎖脂肪酸全体に占めるリノール酸の割合は5〜20重量%、リノール酸と直鎖脂肪酸(a)との合計の重量割合が95重量%以上である。つまり、該脂肪酸は、リノール酸と直鎖脂肪酸(a)から実質的に構成されているものである。
【0021】
直鎖脂肪酸全体に占めるリノール酸の割合は、5〜20重量%であり、6〜19重量%がより好ましく、7〜18重量%さらに好ましい。リノール酸の割合が5重量%未満の場合、十分な油膜強度が得られなくなり、毛羽が発生し、高品位の繊維が得られない。一方、リノール酸の割合が20重量%超の場合、処理剤の耐熱性が悪化し、ローラー汚れが発生し、その結果、毛羽、断糸が発生する。
直鎖脂肪酸全体に占める直鎖脂肪酸(a)の割合は、75〜95重量%であり、76〜94重量%がより好ましく、77〜93重量%さらに好ましい。該割合が75重量%未満の場合、該エステル油膜強度が不足したり、分子量が大きくなり十分な平滑性が得られなくなったりする。そのため、毛羽が発生し、高品位の繊維が得られないことがある。一方、該割合が95重量%超の場合、リノール酸の含有量が不足し、この場合も油膜強度が低下し、毛羽が発生することがある。
また、直鎖脂肪酸全体に占めるリノール酸と直鎖脂肪酸(a)との合計の重量割合は、95重量%以上であり、96重量%以上が好ましく、97重量%以上がより好ましい。該割合が95重量%未満の場合、十分な油膜強度が得られなくなり、毛羽が発生し、高品位の繊維が得られない。
【0022】
直鎖脂肪酸全体に占めるリノレン酸の重量割合は、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。該重量割合が2重量%超の場合、処理剤の耐熱性が悪化し、ローラー汚れが発生し、その結果、毛羽、断糸が発生するおそれがある。
なお、各脂肪酸の重量割合は、ガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製ガスクロマトグラフィーGC−2010、カラム:Agilent Technologies社製のDB−WAXETR)を用いて、定量することができる。
【0023】
また、直鎖脂肪酸(a)は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸であってもよい。直鎖脂肪酸(a)の炭素数は14〜22であり、14〜20がさらに好ましい。炭素数が14未満の場合、十分な油膜強度が得られなくなり、毛羽が発生する。炭素数が22超であると、エステルの平滑性が不足し、毛羽が増加する。
【0024】
直鎖脂肪酸(a)としては、例えば、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノレン酸、エイコセン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0025】
エステル(A)を構成する多価アルコールは、2価以上のアルコールであれば、特に限定はない。多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール等が挙げられる。
脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。
芳香族多価アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、平滑性と油膜強による毛羽減少の点から、多価アルコールとしては、2〜4価のアルコールが好ましく、3価アルコールがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパンの脂肪族3価アルコールがさらに好ましく、グリセリンが特に好ましい。4価を超えるアルコールの場合、平滑性に劣り、毛羽、断糸が増加し、糸品位が低下するおそれがある。
【0027】
エステル(A)のヨウ素価は、30〜80が好ましく、35〜75がより好ましく、40〜75がさらに好ましい。エステル(A)のヨウ素価が30未満の場合、ローラー汚れは低減できるものの、毛羽抑制効果が不十分であることがある。一方、エステル(A)のヨウ素価が80超の場合、耐熱性が悪化し、その結果、毛羽、断糸も悪化することがある。なお、本発明でのヨウ素価は、JIS K−0070に基づき測定した。
【0028】
エステル(A)の酸価は、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。エステル(A)の酸価が7超の場合、熱処理時に多量の発煙が発生したり、臭気が発生したりして、使用環境を悪化する場合がある。なお、本発明での酸価は、JIS K−0070に基づき測定した。
【0029】
エステル(A)の水酸基価は、0.1〜25が好ましく、0.5〜23がより好ましく、1.0〜20がさらに好ましい。エステル(A)の水酸基価が0.1未満の場合、エステルを得るのは困難な場合がある。一方、エステル(A)の水酸基価が25超の場合、該処理剤の平滑剤としての役割が不足し、毛羽が増加する場合がある。なお、本発明での水酸基価は、JIS K−0070に基づき測定した。
【0030】
エステル(A)の重量平均分子量は、500〜1200が好ましく、700〜1000がより好ましく、800〜1000がさらに好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1200超の場合、平滑性が不足して毛羽が多発し、高品位の繊維が得られないだけでなく、製織や編み工程での品位が劣る場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0031】
エステル(A)、は一般的に市販されている直鎖脂肪酸と多価アルコールを用いて、公知の方法で合成し得られたものを使用してもよい。又、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルであって、エステル(A)の構成を満足する天然エステルをそのまま使用したり、必要に応じて、天然エステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行ったエステルを用いたりしてもよい。エステル(A)としては、天然エステル又は天然エステルより得られるエステルであって、エステル交換していないエステルが好適である。詳細には、エステル(A)としては、脂肪酸とグリセリンとを反応させて得られる合成エステルや、2種以上の天然エステル(油脂)をエステル交換して得られたエステルや、天然エステルと脂肪酸とグリセリンとを混合し、ランダムにエステル交換して得られるエステルを除くものが好ましい。
【0032】
[ノニオン界面活性剤(B)]
本発明の処理剤は、上記のエステル(A)に加え、ノニオン界面活性剤(B)を必須に含有するものである。エステル(A)とノニオン界面活性剤(B)を併用することにより、処理剤の油膜強度が向上し、高い製糸性が得られる。ノニオン界面活性剤(B)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0033】
処理剤の油膜強度を向上させ、高い製糸性を得ることができる点から、ノニオン界面活性剤(B)としては、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル及びポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(B1)を必須に含むことが好ましい。
ノニオン界面活性剤(B1)以外のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0034】
(ノニオン界面活性剤(B1))
ノニオン界面活性剤(B)全体に占めるノニオン界面活性剤(B1)の重量割合は、5〜95重量%が好ましく、8〜93重量%がより好ましく、10〜91重量%がさらに好ましい。該重量割合が5重量%未満の場合、処理剤の油膜強度が低下し毛羽が増加したり、本処理剤をエマルションで使用する場合の安定性が不足したりすることがある。一方、該重量割合が95重量%超の場合、処理剤の平滑性が不足し、毛羽が増加することがある。
【0035】
ノニオン界面活性剤(B1)の一つであるポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)は、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上の水酸基がエステル化されている。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0036】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、例えば、炭素数6〜22(好ましくは16〜20)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
【0037】
炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸挙げられ、ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸が好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0038】
アルキレンオキシドの付加モル数は、3〜60が好ましく、8〜50がさらに好ましい。アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。アルキレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。
【0039】
ポリヒドロキシエステルは、例えば、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシモノカルボン酸)を通常の条件でエステル化してエステル化物を得て、次いでこのエステル化物にアルキレンオキシドを付加反応させることによって製造できる。ポリヒドロキシエステルは、ひまし油などの天然から得られる油脂やこれに水素を添加した硬化ひまし油を用い、さらにアルキレンオキシドを付加反応させることによっても、好適に製造できる。
【0040】
ノニオン界面活性剤(B1)には、上述のポリヒドロキシエステルの少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルも含まれる。封鎖する脂肪酸の炭素数は6〜24が好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸中の炭化水素基の炭素数は分布があってもよく、炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、多環構造を有していてもよい。このような脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。エステル化の方法、反応条件等については特に限定はなく、公知の方法、通常の条件を採用できる。
【0041】
ノニオン界面活性剤(B1)としては、例えば、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物モノオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物ジオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、これらのなかでも処理剤の相溶性、油膜強度、毛羽減少の点から、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレートが好ましい。
【0042】
(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでもグリセリン、トリメチロールプロパン、ショ糖、が好ましい。
【0043】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、4〜70がより好ましく、5〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの重量平均分子量は、300〜10000が好ましく、400〜8000がより好ましく、500〜5000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、毛羽、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が10000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0044】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとしては、ポリエチレングリコール、グリセリンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジグリセリンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ショ糖エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
(ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル)
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0046】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラドコサン酸等が挙げられる。
【0047】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、5〜70がより好ましく、10〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、300〜7000が好ましく、500〜5000がより好ましく、700〜3000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、熱処理工程で発煙が発生し、環境を悪化する場合がある。また、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が7000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0048】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
(ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1〜100モルが好ましく、2〜70モルがより好ましく、3〜50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
【0050】
(ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル)
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルとはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、150〜800がより好ましく、200〜700がさらに好ましい。
【0051】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジオレエート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0052】
(多価アルコール脂肪酸エステル)
多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持つ化合物であり、上記の多価アルコール脂肪酸エステル(A)を除く化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0053】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、イソイコサン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0054】
また該多価アルコール脂肪酸エステルは、少なくとも1つ又は2つ以上の水酸基を有する。
多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、200〜800がより好ましく、300〜600がさらに好ましい。
【0055】
脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
[合成繊維用処理剤]
本発明の合成繊維用処理剤は、上記のエステル(A)とノニオン界面活性剤(B)とを必須に含有するものである。処理剤の不揮発分に占めるエステル(A)の重量割合は、10〜70重量%が好ましく、13〜67重量%がより好ましく、15〜65重量%がさらに好ましい。該重量割合が10重量%未満の場合、毛羽の発生を十分に低減できないことがある。一方、該重量割合が70重量%超の場合、繊維集束性が悪化したり、毛羽が増加したりすることがある。なお、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0057】
処理剤に占めるノニオン界面活性剤(B)の重量割合は、15〜65重量%が好ましく、20〜63重量%がより好ましく、25〜60重量%がさらに好ましい。該重量割合が15重量%未満の場合、処理剤の油膜強度が低下し、毛羽が増加したりすることがある。一方、該重量割合が65重量%超の場合、エステル成分の使用量が減少して平滑性が不足し、毛羽が増加することがある。
【0058】
本発明の効果をより発揮させる点から、処理剤に占めるエステル(A)とノニオン界面活性剤(B)の合計の重量割合は、30重量%以上が好ましく、35重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましい。
【0059】
(その他成分)
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤のエマルション化、繊維への付着性補助、繊維からの処理剤の水洗、繊維への制電性、潤滑性、集束性の付与等のために、上記のノニオン界面活性剤(B)以外の界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、アルキルホスフェートの金属塩又はアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルホスフェートの金属塩又はアミン塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルイミダゾリニウム塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上で併用してもよい。これら界面活性剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める界面活性剤の重量割合は、特に限定はないが、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。なお、ここでいう界面活性剤は、重量平均分子量が1000未満のものをいう。
【0060】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、耐熱性を向上させる点から、アルカンスルホン酸塩をさらに含有してもよい。アルカンスルホン酸塩としては、例えば、特開平8−120564号公報に記載の式[I]で示されるアルカンスルホン酸塩等を挙げることができる。アルカンスルホン酸塩は1種または2種以上を併用してもよい。アルカンスルホン酸塩を含有する場合の処理剤の不揮発分に占めるアルカンスルホン酸塩の重量割合は、特に限定はないが、0.5〜5.0重量%が好ましく、1.5〜4.0重量%が好ましい。
【0061】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、耐熱性を付与するため、さらに酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系、チオ系、ホスファイト系等の公知のものが挙げられる。酸化防止剤は1種または2種以上を併用してもよい。酸化防止剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める酸化防止剤の重量割合は、特に限定はないが、0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%が好ましい。
【0062】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0063】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物を含有してもよい。
チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物は、抗酸化能を有する成分である。該ジエステル化合物を使用することで、処理剤の耐熱性を高めることができる。1種または2種以上を使用してもよい。該ジエステル化合物を構成するチオジプロピオン酸の分子量は、400〜1000が好ましく、500〜900がより好ましく、600〜800がさらに好ましい。該ジエステル化合物を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有するものが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜24がさらに好ましい。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、これらの中でもオレイルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0064】
本発明の合成繊維用処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と原液安定剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンであってもよい。本発明の合成繊維用処理剤が水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンの場合、不揮発分の濃度は5〜35重量%が好ましく、6〜30重量%がより好ましい。不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤の粘度(30℃)は、繊維材料に均一に付与させる点から、3〜120mm
2/sが好ましく、5〜100mm
2/sがさらに好ましい。
【0065】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。合成繊維用処理剤は、構成する前記の各成分を任意又は特定の順番で添加混合することによって製造される。
【0066】
[合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び繊維構造物]
本発明の合成繊維フィラメント糸条の製造方法は、原料合成繊維フィラメント糸条に、本発明の合成繊維用処理剤を付与する工程を含むものである。付与する工程としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することできる。通常、原料合成繊維フィラメント糸条の紡糸工程で合成繊維用処理剤を付与する。処理剤が付与された後、熱ローラーにより延伸、熱セットが行われ、巻き取られる。このように、処理剤を付与した後、一旦巻き取れられることなく熱延伸する工程を有する場合に、本発明の合成繊維用処理剤は好適に使用することができる。熱延伸する際の温度として一例をあげると、ポリエステル、ナイロンでは、産業資材用であれば210〜260℃、衣料用であれば110〜180℃が想定される。
原料合成繊維フィラメント糸条に付与する際の合成繊維処理剤は、前述したように、不揮発分のみからなる処理剤、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤、又は水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョン処理剤等が挙げられる。付与方法としては、特に限定されるものではないが、ガイド給油、ローラー給油、ディップ給油、スプレー給油等が挙げられる。これらの中ででも、付与量の管理のしやすさから、ガイド給油、ローラー給油が好ましい。
【0067】
合成繊維用処理剤の不揮発分の付与量は、原料合成繊維フィラメント糸条に対して、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましい。0.05重量%未満の場合、本発明の効果を発揮することができない場合がある。一方、5重量%超の場合、処理剤の不揮発分が糸道に脱落しやすく、熱ローラー上のタールが著しく増加し、毛羽、断糸に繋がる場合がある。
【0068】
(原料)合成繊維フィラメント糸条としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維のフィラメント糸条が挙げられる。本発明の合成繊維用処理剤は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維に適している。ポリエステル繊維としては、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PET)、トリメチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PTT)、ブチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PBT)、乳酸を主たる構成単位とするポリエステル(PLA)等が挙げられ、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられ、ポリオレフィン繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。合成繊維フィラメント糸条の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【0069】
(繊維構造物)
本発明の繊維構造物は、上記の本発明の製造方法で得られた合成繊維フィラメント糸条を含むものである。具体的には、本発明の合成繊維用処理剤が付与された合成繊維フィラメント糸条を用いてウォータージェット織機、エアジェット織機、または、レピア織機で織られた織物、および丸編み機、経編み機、または、緯編み機で編まれた編物である。また繊維構造物の用途としては、タイヤコード、シートベルト、エアバッグ、魚網、ロープ等の産業資材、衣料用等が挙げられる。織物、編物を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例により本発明を説明する、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中及び表中の「%」は「重量%」を、意味する。
【0071】
[実施例1〜9、比較例1〜9]
(実施例1、7、9、比較例1、2の処理剤)
表4、5に記載の成分を混合し、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した処理剤を炭素数12〜15の低粘度鉱物油で希釈して、不揮発分濃度が70重量%である処理剤を調製した。
(実施例2〜6、8、比較例3〜9の処理剤)
表4、5に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した処理剤を攪拌下のイオン交換水に徐々に投入した。投入後、均一な状態になるまで60分攪拌し、不揮発分濃度が18重量%である処理剤(O/W型エマルション状態)を調製した。
【0072】
上記で調製した各処理剤を用いて、次の方法で、ローラー汚れ、毛羽、断糸を評価した。なお、表4〜6における数字は、処理剤の不揮発分の重量部を示す。また、表4〜6のエステル(A)、エステルの詳細については、表1、2に示し、その他の成分の詳細についは、表3に示す。
【0073】
表1、2は、エステルを構成する直鎖脂肪酸の重量割合、エステルを構成する多価アルコール(Gly:グリセリン、TMP:トリメチロールプロパン、PE:ペンタエリスリトール)、エステルのヨウ素価、水酸基価、酸価、重量平均分子量を示すものである。エステルとしては、天然より得られるエステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行った、一般的に市販されているエステル(エステルA−1、A−2、X−1、X−8)を用いたり、あるいは一般的に市販されている直鎖脂肪酸と多価アルコールを用いて公知の方法で合成し、得られたもの(エステルA−3〜A−8、X−2〜X−7、X−9〜X−11)を用いた。下記に合成方法を用いた例を挙げるが、調製方法についてはこれに限定されるものではない。また、表1、2中のCの次にくる数字は直鎖脂肪酸の炭素数を示し、Fの次にくる数字は直鎖脂肪酸中の二重結合の数を示す。
【0074】
セイセイグリセリン9.8部、リノール酸(日油製リノール酸90)13.5部、オレイン酸(日油製NAA―34)36.1部、ステアリン酸(日油製NAA−180)40.6部を混合し、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸1.0部を混合した。窒素気流下の下、210℃に昇温し、1時間反応させた。続けて、250℃に昇温後8時間反応させた。反応後のエステルより反応触媒、未反応脂肪酸を除去し、ヨウ素価60、酸価0.7、水酸基価5.2のエステルA−6を得た。
【0075】
(ローラー汚れ)
1000デニール、96フィラメントの無給油ポリエステルフィラメント(原糸)に対して、上記で調製した処理剤を、ガイド給油法を用いて、不揮発分の付与量が0.6重量%となるよう付与し、温度25℃、湿度65%の雰囲気に48時間放置、調湿した。
調湿した原糸を、走糸法摩擦試験機(東レエンジニアリング社製)にて、250℃の摩擦体(梨地クロムメッキ、直径5cm)に接触させ、荷重500g、走糸速度200m/分で糸を24時間走行させ、摩擦体に付着する汚れを下記の条件で判定し、ローラー汚れを評価した。その結果を表4、5に示す。
○ : タール化物が認められないか、ごくわずかである。
× : 著しいタール化物が認められる。
【0076】
(断糸、毛羽)
溶融紡糸工程において、ポリエステルポリマーを溶融紡糸、冷却固化した糸条に対して、上記で調製した処理剤を、ガイド給油法を用いて、不揮発分の付与量が0.6重量%となるよう付与した。
処理剤が付与された糸条は、一旦巻き取ること無く連続して延伸され、250℃のホットローラを介し、5.1倍に延伸し、1000デニール、96フィラメントのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントを得た。延伸、熱セットされた糸条は巻き上げられるが、巻き上げ直前に糸条にインターレースをかけ、フィラメント相互を集束させた。インターレースは高圧の流体、例えば、高圧空気を、ノズルを通して噴きつけることによって行った。毛羽、断糸について、下記の条件で評価した、その結果を表4、5に示す。
断糸:各処理剤について原糸1トン当たりの糸切れ回数で評価し、1回より少ない場合を○とし、1回以上を×とした。
毛羽:各処理剤付着糸を毛羽カウンターで毛羽数をチェックし、百万m当たりの値が1個より少ない場合を○とし、1個以上を×とした。
【0077】
[実施例10〜13、比較例10〜16]
表6に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した処理剤を攪拌下のイオン交換水に徐々に投入した。投入後、均一な状態になるまで60分攪拌し、不揮発分濃度が16重量%である処理剤(O/W型エマルション状態)を調製した。調製した処理剤を用いて、次の方法で、ローラー汚れ、毛羽、断糸を評価した。
【0078】
(ローラー汚れ)
75デニール、36フィラメントの無給油ポリエステルフィラメント(原糸)に対して、上記で調製した処理剤を、ノズル給油法を用いて、不揮発分の付与量が0.7重量%となるよう付与し、温度25℃、湿度65%の雰囲気に48時間放置、調湿した。
調湿した原糸を、走糸法摩擦試験機(東レエンジニアリング社製)にて、150℃の摩擦体(梨地クロムメッキ、直径5cm)に接触させ、荷重20g、走糸速度200m/分で糸を24時間走行させ、摩擦体に付着する汚れを下記の条件で判定し、ローラー汚れを評価した。その結果を表6に示す。
○ : タール化物が認められないか、ごくわずかである。
× : 著しいタール化物が認められる。
【0079】
(断糸、毛羽)
溶融紡糸工程において、ポリエステルポリマーを溶融紡糸、冷却固化した糸条に対して、上記で調製した処理剤を、ノズル給油法を用いて、不揮発分の付与量が0.7重量%となるよう付与した。
処理剤が付与された糸条は、一旦巻き取ること無く連続して延伸され、150℃のホットローラを介し、2.6倍に延伸し、75デニール、36フィラメントのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントを得た。延伸、熱セットされた糸条は巻き上げられるが、巻き上げ直前に糸条にインターレースをかけ、フィラメント相互を集束させた。インターレースは高圧の流体、例えば高圧空気を、ノズルを通して噴きつけることによって行われた。毛羽、断糸について、下記の条件で評価した、その結果を表6に示す。
断糸:各処理剤について原糸1トン当たりの糸切れ回数で評価し、1回より少ない場合を○とし、1回以上を×とした。
毛羽:各処理剤付着糸を毛羽カウンターで毛羽数をチェックし、百万m当たりの値が1個より少ない場合を○とし、1個以上を×とした。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
表4〜6からわかるように、本発明の実施例1〜13は、断糸、毛羽の発生が著しく低減している。さらに、ローラー汚れが少なく、耐熱性に優れ、生産環境を悪化させていない。一方、比較例1〜16は、断糸評価、毛羽評価、ローラー評価の少なくとも一つが劣っており、これら評価全てを満足できるものはない。