特許第5903527号(P5903527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5903527ポリイミド樹脂から製造されたポリイミドフィルム及びこれを含む表示素子用基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903527
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂から製造されたポリイミドフィルム及びこれを含む表示素子用基板
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20160331BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20160331BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20160331BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C08L79/08 Z
   C08K9/00
   C08G73/10
   C09K3/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-518321(P2015-518321)
(86)(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公表番号】特表2015-527422(P2015-527422A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】KR2013004394
(87)【国際公開番号】WO2014189154
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ハク ギ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,チョル ハ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−200074(JP,A)
【文献】 再公表特許第98/029471(JP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0111333(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101311224(CN,A)
【文献】 特開2008−127253(JP,A)
【文献】 特開2000−007941(JP,A)
【文献】 特開2010−155750(JP,A)
【文献】 特開2006−169328(JP,A)
【文献】 特開2010−186055(JP,A)
【文献】 Te-Cheng Mo, Hong-Wen Wang, San-Yan Chen, Rui-Xuan Dong, Chien-Hung Kuo, Yun-Chieh Yeh,Synthesis and Characterization of Polyimide-Silica Nanocomposites Using Novel Fluorine-Modified Silica Nanoparticles,Journal of Applied Polymer Science,Wiley,2007年,Vol.104,882-890
【文献】 Yulai HAN, Junji WAKITA, Shigeki KUROKI, Xiaogong WANG, Shinji ANDO,Preparation and Characterization of Polyimide/Fluorinated Silicate Nano-hybrid Thin Films with Low Refractive Indices,Journal of Photopolymer Science and Technology,2008年,Volume21,143-150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08G 73/10
C08K 9/00
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラー及びポリイミド樹脂を含むポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミド樹脂は、ジアミンモノマー及びジアンヒドリドモノマーに由来する繰返し単位を含み、
前記ジアミンモノマーは、ビストリフルオロメチルベンジジンを含み、
前記ジアンヒドリドモノマーは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリドを含み、
前記ポリイミド樹脂はアンヒドリドモノマーに由来する構造単位をさらに含み、前記アンヒドリドモノマーは4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリドであることを特徴とするポリイミドフィルム
【請求項2】
前記シリカフィラーは、ポリイミド樹脂の総量を基準に0.01〜0.1重量%の量で含まれる請求項1に記載のポリイミドフィルム
【請求項3】
前記フッ素含有化合物は、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシトリフルオロメチルシラン、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン及びトリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)シランからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のポリイミドフィルム
【請求項4】
イズが1.5%以下である請求項1に記載のポリイミドフィルム
【請求項5】
さ25〜100μmのフィルムを基準に波長550nmの光に対する光透過率が87%以上である請求項1に記載のポリイミドフィルム
【請求項6】
前記ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリドの含量はジアンヒドリドモノマーの総量を基準に4〜30モル%である請求項に記載のポリイミドフィルム
【請求項7】
前記ジアンヒドリドモノマーは、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸ジアンヒドリド(TDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシランジアンヒドリド(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィドジアンヒドリド(BDSDA)、スルホニルジフタル酸アンヒドリド(SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(CBDA)及びイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸アンヒドリド(6HBDA)からなる群から選ばれた少なくとも1種をさらに含む請求項に記載のポリイミドフィルム
【請求項8】
前記ジアミンモノマーは、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F、44−6F)、及びビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素置換されたジアミンモノマーである請求項に記載のポリイミドフィルム
【請求項9】
前記4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリド(4−PEPA)の含量は、ジアミンモノマーの総量を基準に20モル%以下である請求項に記載のポリイミドフィルム
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のポリイミドフィルムを含む表示素子用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面フッ素処理されたシリカフィラーを含むポリイミド樹脂、及びこれから製造されたポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)樹脂は、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミド酸誘導体を製造する工程と、ポリアミド酸誘導体を閉環脱水させてイミド化する工程とを含む方法によって製造される高耐熱樹脂である。ポリイミド樹脂を製造するために、芳香族ジアンヒドリド成分としてピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)又はビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)などを使用しており、芳香族ジアミン成分としてはオキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)などを使用している。
【0003】
このようなポリイミド樹脂は、不溶の超高耐熱性樹脂であって、優れた耐酸化性、耐熱性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などを持っており、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの先端耐熱素材、及び絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜などの電子材料分野に広範囲にわたって使用されている。最近は、光ファイバや液晶配向膜などの表示材料及びポリイミドフィルム内に導電性フィラーを含有しあるいは表面にコートして透明電極フィルムなどにも用いられている。
【0004】
一般なポリイミド樹脂は、濃い褐色及び黄色である。よって、このポリイミド樹脂に透明性を与えるために、連結基(linkage group)(−O−、−SO−、−CO−、−CFCCF−など)又は相対的に自由体積の大きい側鎖をポリイミド樹脂の主鎖に導入させて分子間、分子内電荷移動錯体形成を最小化する。
このような透明ポリイミドフィルムの場合、前記導入された官能基により耐熱性が低下する。これは、電荷移動錯体の形成によりその色相は薄くなるものの、これと同時に耐熱性が低下するためである。このような耐熱性の低下により、透明ポリイミドフィルムは、高い工程温度を要求する表示素子及び半導体などの先端素材分野の適用に限界がある。
【0005】
一方、フィラーは、フィルムにおいて様々な目的で使用される。例えば、フィルムの走行性を高めるために又は必要に応じてフィルムの光学物性の変更及び耐熱性の強化のために使用される。しかし、フィラーは、ポリイミド樹脂に均一に分散させることが困難であるため、前述した目的に実際に使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した問題点を解消するためになされたもので、その目的は、表面フッ素処理されたフィラーを含む透明ポリイミドフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、耐熱性が向上した表示素子用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーを含むポリイミド樹脂を提供する。
【0008】
前記ポリイミド樹脂において、前記シリカフィラーは、ポリイミド樹脂の総量を基準に0.01〜0.1重量%の量で含むことができる。
【0009】
前記ポリイミド樹脂において、前記フッ素含有化合物は、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシトリフルオロメチルシラン、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、及びトリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)シランからなる群から選ばれた少なくとも1種とすることができる。
【0010】
前記ポリイミド樹脂において、ヘイズは1.5%以下とすることができる。
前記ポリイミド樹脂において、ポリイミド樹脂で製造された厚さ25〜100μmのフィルムを基準に波長550nmの光に対する光透過率を87%以上とすることができる。
前記ポリイミド樹脂は、ジアミンモノマー及びジアンヒドリドモノマーに由来する繰返し単位を含み、前記ジアンヒドリドモノマーは、ビシロク[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド(以下、BTA)を含むことができる。
前記ポリイミド樹脂において、前記ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド(以下、BTA)の含量は、ジアンヒドリドモノマーの総量を基準に4〜30モル%とすることができる。
【0011】
前記ポリイミド樹脂において、前記ジアンヒドリドモノマーは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸ジアンヒドリド(TDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジアンヒドリド、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシランジアンヒドリド(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィドジアンヒドリド(BDSDA)、スルホニルジフタル酸アンヒドリド(SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(CBDA)、及びイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸アンヒドリド(6HBDA)からりなる群から選ばれた少なくとも1種をさらに含むことができる。
【0012】
前記ポリイミド樹脂において、前記ジアミンモノマーは、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F、44−6F)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、及びビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素置換されたジアミンモノマーとすることができる。
前記ポリイミド樹脂は、アンヒドリドモノマーをさらに含んでもよい。
前記ポリイミド樹脂において、前記アンヒドリドモノマーは4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリド(4−PEPA)とすることができる。
前記ポリイミド樹脂において、前記4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリド(4−PEPA)の含量はジアミンモノマーの総量を基準に20モル%以下とすることができる。
本発明の他の実施形態は、前記ポリイミド樹脂を用いて製造されたポリイミドフィルムを提供する。
本発明のさらに別の実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含む表示素子用基板を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明は、表面フッ素処理されたフィラーを含む透明ポリイミドフィルムを提供することができる。また、本発明は、前記表面フッ素処理されたフィラーが含有されたポリイミドフィルムを含む表示素子用基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書よび請求の範囲で使用された用語及び単語は、通常的意味又は辞典的定義に限定されると解釈されず、本発明者が本発明を施行するにあたり最善の方法を記述するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的範囲に関する意味と概念を持つと解釈されるべきである。
本明細書全般にわたって、任意の部分が任意の構成成分「からなる」、その構成成分を「含む」、「含有する」及び「有する」というのは、別途記載されない限り、他の構成成分を排除するのではなくさらに含むことを意味する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーを含むポリイミド樹脂を提供する。
他の実施形態において、本発明は、前記ポリイミド樹脂を用いて製造されたポリイミドフィルム、及びこのポリイミドフィルムを含む表示素子用基板を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般に、シリカフィラーは、シリカ自体の非常に強い凝集性を有するため、超音波又は各種ミルでポリイミド樹脂に分散させても、さらに凝集することがある。
本発明では、シリカフィラーをフッ素含有化合物で表面処理することにより、その表面の自由体積が大きくなって、シリカフィラー粒子間の反発力によってこれらの粒子の凝集が抑制される。よって、シリカフィラーとポリイミド樹脂との混和性及び分散性を向上させることができる。
【0017】
フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーは、シリカフィラーの表面を酸で処理してその表面にヒドロキシル基(−OH)を発生させ、その後、フッ素含有アルコキシシランを用いてシリカフィラーの表面をゾルゲル法によりフッ素処理して製造される。
【0018】
高分子樹脂の結合構造に阻害せずに、改質特性を示すためには、シリカフィラーを、ポリイミド樹脂の総量を基準、に0.01〜0.1重量%の含量で含ませることができる。また、使用したポリイミド樹脂の種類によって、0.1重量%を超えて含ませることもできる。
【0019】
この際、シリカフィラーの表面にヒドロキシル基(−OH)を発生させることが可能な酸であれば制限なく使用できる。酸の例としては、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸などが挙げられる。酸の含量は、ヒドロキシル基(−OH)を十分に発生させることができれば特に限定されない。
【0020】
フッ素含有アルコキシシランは、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシトリフルオロメチルシラン、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリエトキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルシラン、トリエトキシ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、及びトリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)シランからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0021】
フッ素含有アルコキシシランの含量は、使用されたアルコキシシランの種類によって変更することができる。含量対効果又は費用の観点から、フッ素含有アルコキシシランの含量は、シリカフィラー100重量部を基準に1〜50重量部、好ましくは5〜25重量部である。
【0022】
シリカフィラーの粒径は、改質されるフィルムの特性及びフィラーの種類に応じて調節することができ、特に制限されない。シリカフィラーの平均粒径は、0.001〜50μm、好ましくは0.01〜1μmである。これによって、ポリイミドフィルムに改質効果を容易に発現させることができるとともに、表面特性及び機械特性に優れるポリイミドフィルムを得ることができる。
【0023】
このようなシリカフィラー含有ポリイミド樹脂のヘイズ値は1.5%以下である。このポリイミド樹脂をフィルムに製造すると、波長550nmの光に対するフィルムの光透過率は、フィルムの厚さ15〜100μmを基準に87%以上である。よって、表面処理が施されていないフィラーを同一の含量で添加した場合と比較すると、低ヘイズ及び高光透過率を実現することができる。
【0024】
ポリイミド樹脂は、ジアミンモノマーとジアンヒドリドモノマーに由来する繰返し単位を含む。このジアンヒドリドモノマーとしては、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド(以下、BTA)が挙げられる。
【0025】
透明ポリイミド樹脂の場合、ポリイミドのみの高い耐熱性は、透明性を維持するために導入したモノマーにより低下するおそれがある。透明ポリイミド樹脂の耐熱性を向上させるために、ジアミン類(パラ−フェニレンジアミンモノマー(p−PDA)、4,4−オキシジアニリン(4,4−ODA))及びジアンヒドリド類(フェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA))を適用することができる。にもかかわらず、透明ポリイミド樹脂の耐熱性の向上が十分でないという問題もある。
【0026】
本発明では、このような問題を克服するために、ジアミン又はジアンヒドリドと架橋結合可能な官能基を有するモノマー(ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド)をポリイミド樹脂に導入することにより、架橋結合基を使用していない従来のポリイミド重合法とは異なり、架橋結合基がポリイミド樹脂の主鎖に導入され、これによりポリイミドフィルムの耐熱性を向上させることができる。
【0027】
ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド(以下、BTA)の含量は、ジアンヒドリドモノマーの総量を基準に4〜30モル%とすることができる。含量が4モル%より少なければ、官能基が少量で含有されるため、ポリイミドフィルムの耐熱性などの物性が向上できないという問題がある。また、この含量が30モル%より多ければ、ポリイミドの分子量が小さくなり、ポリイミドフィルムが容易に破壊されてポリイミドフィルムの特性を発現することが難しくなる。また、BTA反応性が低ければ、ポリイミドフィルムが形成されないおそれがある。
【0028】
よって、BTAの低い反応性を補償するために、柔軟性の高いジアミンモノマーをさらに使用することができる。ここで、本発明で使用されたジアミンモノマーは、m−ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(mBAPS)、アミノフェノキシベンゼン(APB)誘導体、及び2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)からなる群から選択できる。
【0029】
本発明で追加的に使用されたジアンヒドリドモノマーの例としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸ジアンヒドリド(TDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(PMDA))、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、オキシジフタル酸ジアンヒドリド(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシランジアンヒドリド(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィドジアンヒドリド(BDSDA)、スルホニルジフタル酸アンヒドリド(SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(CBDA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸アンヒドリド(6HBDA)、及びビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTA)が挙げられるが、これに限定されない。これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0030】
ジアミンモノマーは、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F、44−6F)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、及びビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素置換されたジアミンモノマーとすることができる。
【0031】
本発明において、フッ素処理されたジアミンモノマー及びフッ素処理されたジアンヒドリドモノマーの使用によって、ポリイミド樹脂とフッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーとの相溶性が向上するため、ポリイミド樹脂内のシリカフィラーの分散性が増加する。
一方、本発明において、ポリイミドフィルムの耐熱性を向上させるために、アンヒドリドモノマーを1:1のモル比の前記ジアンヒドリドモノマー及びジアミンモノマーに添加してポリイミド分子鎖の末端をアンヒドリドモノマーで置換する。これらのモノマーを重合した後にイミド化する。
【0032】
アンヒドリドモノマーは、4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリド(4−PEPA)であってもよい。ポリイミド樹脂は、ジアミンモノマー:ジアンヒドリドモノマーとアンヒドリドモノマーのモル比が1:1となるようにジアミンモノマー、ジアンヒドリドモノマー及びアンヒドリドモノマーを含むことができる。4−フェニルエチニルフタル酸アンヒドリド(4−PEPA)の含量は、ジアミンモノマーの総量を基準に20モル%以下、好ましくは4〜20モル%である。4−PEPAの含量が4モル%より少なければ、その効果が十分ではなく、4−PEPAの含量が20モル%より多ければ、ポリイミド主鎖の分子量が非常に低くなり、ポリイミド樹脂の物性が低下する。
【0033】
本発明のポリイミドフィルムは、通常の方法によってフッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーを含む前記ポリイミド樹脂を用いて製造される。
【0034】
フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーの添加方法には、重合前又は後にポリアミド酸溶液に添加する方法、ポリアミド酸重合後に3−ロールミル、高速撹拌器、回転式混合器などを用いて混練する方法、フィラーの分散した溶液を製造した後にポリアミド酸溶液と混合させる方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態によれば、本発明のポリイミドフィルムは、フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラーを前述の含量で第1溶媒に分散させる工程と、1:0.9〜1:1.05のモル比のジアミンモノマーとジアンヒドリドモノマーとを重合させてポリアミド酸を製造する工程と、このポリアミド酸をイミド化する工程とを含む方法によって製造される。
【0036】
重合反応条件は特に制限されないが、反応温度は−20〜80℃であり、反応時間は2〜48時間であることが好ましい。また、重合反応はアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気中で行うことがさらに好ましい。
【0037】
モノマーの重合に使用された第1溶媒は、ポリアミド酸を溶解することが可能であれば特に限定されない。例えば、第1溶媒は、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン及びジエチルアセテートからなる群から選ばれた少なくとも1種の極性溶媒とすることができる。また、第1溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶媒又はγ−ブチロラクトンなどの低吸着性溶媒を使用してもよい。
【0038】
第1溶媒の含量は特に制限されないが、適切な分子量及び粘度を有するポリアミド酸溶液を製造するために、第1溶媒の含量は、ポリアミド酸溶液の総量を基準に、好ましくは50〜95重量%、より好ましくは70〜90重量%である。
【0039】
このように製造されたポリアミド酸溶液をイミド化してポリイミド樹脂を製造する。ここで、製造されたポリイミド樹脂のガラス転移温度は熱安定性の観点から200〜400℃であることが好ましい。
【0040】
製造されたポリアミド酸溶液をポリイミドフィルムに製造する方法は、通常の公知の方法で行うことができる。すなわち、ポリイミドフィルムは、ポリアミド酸溶液を支持体上にキャストしてからイミド化することにより製造できる。
【0041】
イミド化方法として、熱イミド化法、化学イミド化法又はこれらの組み合わせを適用することができる。化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に脱水剤(代表例:酢酸無水物などの酸無水物)とイミド化触媒(代表例:イソキノリン、ピコリン、ピリジンなどの第3級アミン類など)とを添加してイミド化する方法である。熱イミド化法又は熱イミド化法と化学イミド化法との組み合わせを適用する場合、ポリアミド酸溶液の加熱条件はポリアミド酸溶液の種類及びポリイミドフィルムの厚さによって変動する。
【0042】
次に、熱イミド化法と化学イミド化法との組み合わせを適用する場合のポリイミドフィルムの製造方法を説明する。
【0043】
まず、ポリアミド酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒を添加する。その後、ポリアミド酸溶液を支持体上にキャストし、50〜200℃、好ましくは80〜180℃に加熱して、脱水剤及びイミド化触媒を活性化する。その後、ポリアミド酸溶液を部分硬化及び乾燥させてゲル状のポリアミド酸フィルムを得、このフィルムを支持体から剥離する。その後、このゲル状のポリアミド酸フィルムを支持板に固定させ、5〜400分間、100〜400℃に加熱してポリイミドフィルムを得る。ここで、ゲル状のポリアミド酸フィルムはピン型のフレーム又はクリップ型のフレームを用いて固定させることができる。前記支持体としては、ガラス板、アルミニウム箔、ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを使用することができる。
【0044】
本発明では、得られた前記ポリアミド酸溶液から次のとおりポリイミドフィルムを製造することができる。
具体的に、まず、得られたポリアミド酸溶液をイミド化する。その後、イミド化されたポリアミド酸溶液を第2溶媒に導入して沈殿させ、濾過し、乾燥させてポリイミド固形分を得る。その後、フィラーを、超音波機器を用いて第1溶媒に分散させ、ポリイミド固形分をフィラーの分散した溶媒に溶解することにより、ポリイミド溶液を得る。このポリイミド溶液を製膜工程によってポリイミドフィルムに製造する。
【0045】
前述したように、ポリアミド酸溶液をイミド化するために、熱イミド化法、化学イミド化法又は熱イミド化法と化学イミド化法との組み合わせを適用することができる。熱イミド化法と化学イミド化法との組み合わせを適用する場合、具体的に、ポリアミド酸溶液に脱水剤及びイミド化触媒を添加し、20〜180℃で0.5〜12時間加熱してイミド化することができる。
【0046】
第1溶媒として、ポリアミド酸溶液の重合に用いられた溶媒を使用することができる。第2溶媒は、ポリイミド固形分を得るために、第1溶媒より極性の低いものを使用することができる。具体的には、第2溶媒は水、アルコール類、エーテル類及びケトン類の中から選ばれた少なくとも1種とすることができる。
【0047】
第2溶媒の含量は特に制限されないが、第2溶媒の含量は、ポリアミド酸溶液100重量部を基準に500〜2000重量部であることが好ましい。第2溶媒の沸点を考慮し、得られたポリイミド固形分を濾過し、50〜120℃で3〜24時間乾燥させることが好ましい。
【0048】
その後、製膜工程によって、ポリイミド固形分が溶解しているポリイミド溶液を支持体上にキャストしてから40〜400℃で1分〜8時間、徐々に加熱して、ポリイミドフィルムを得る。
【0049】
本発明では、このようにして得られたポリイミドフィルムに、もう1回熱処理工程を施すことができる。ポリイミドフィルムを100〜500℃で1〜30分間熱処理することが好ましい。熱処理されたポリイミドフィルムの残留揮発成分の含量は5%以下、好ましくは3%以下である。
【0050】
得られたポリイミドフィルムの厚さは特に制限されないが、その厚さは10〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜150μmである。
【0051】
本発明のポリイミドフィルムは、熱膨張係数が40ppm/℃以下であり、フィルムの厚さ15〜100μmを基準に、波長550nmの光に対する光透過率が80%以上である。このようなポリイミドフィルムは、透明で向上した耐熱性を有するため、表示素子用基板などの分野に広範囲にわたって活用できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<製造例1>
コロイド状シリカ(平均粒径:10nm)2g及び0.8M硝酸350mLを窒素(N)雰囲気中で500mLの丸底フラスコ還流装置に投入し、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、混合物をエタノールで洗浄し、60℃の真空オーブンで24時間乾燥させ、酸処理されたシリカを得た。その後、酸処理されたシリカ1.5g、エタノール350mL及びトリエトキシフルオロシラン0.182gを窒素(N)雰囲気中で500mLの丸底フラスコ還流装置に投入して60℃に加熱し、12時間還流撹拌した。次いで、混合物を洗浄し、乾燥させて、フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラー(平均粒粒:20nm)1.515gを得た。
【0054】
<製造例2>
コロイド状シリカ(日本触媒社製、平均粒径:10nm)2g及び0.8M硝酸350mLを窒素(N)雰囲気中で500mLの丸底フラスコ還流装置に投入し、80℃で6時間加熱撹拌した。その後、混合物をエタノールで洗浄し、60℃の真空オーブンで24時間乾燥させ、酸処理されたシリカを得た。その後、酸処理されたシリカ1.5g、エタノール350mL及びトリエトキシフルオロメチルシラン0.23gを窒素(N)雰囲気中で500mLの丸底フラスコ還流装置に投入して60℃に加熱し、12時間還流撹拌した。次いで、混合物を洗浄し、乾燥させて、フッ素含有化合物で表面処理されたシリカフィラー(平均粒粒:25nm)1.72gを得た。
【0055】
<実施例1>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、製造例1で製造されたシリカフィラー0.116gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)580gに分散させて第1溶液を得、反応器の温度を25℃に調節した。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を第1溶液に添加し、溶解させて第2溶液を得、ここに6FDA71.08g(0.16mol)を入れ、完全に溶けるように3時間撹拌して第3溶液を得た。この際、第3溶液の温度は25℃で維持した。次いで、第3溶液にBTA9.928g(0.04mol)を入れ、24時間撹拌して固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0056】
その後、このポリアミド酸溶液にグラブス触媒(Grubbs catalyst)0.34gを入れて30分間50℃に加熱し、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを入れ、60分間撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をステンレス板に塗布して300μmの厚さにキャストし、80℃で30分間以下熱風乾燥させ、120℃に加熱し、30分間以下乾燥させてフィルムを得た。このフィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。フィルムの備えられたフレームを高温のオーブンに入れ、120℃から300℃まで2時間徐々に加熱し、その後、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、得られたポリイミドフィルムを300℃で30分間最終熱処理した。
【0057】
<実施例2>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、製造例2で製造されたシリカフィラー0.116gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)580gに分散させて第1溶液を得、反応器の温度を25℃に調節した。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を第1溶液に添加し、溶解させて第2溶液を得、ここに6FDA71.08g(0.16mol)を入れ、完全に溶けるように3時間撹拌して第3溶液を得た。この際、第3溶液を25℃で維持した。次いで、第3溶液にBTA9.928g(0.04mol)を入れて24時間撹拌し、固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0058】
その後、このポリアミド酸溶液にグラブス触媒(Grubbs catalyst)0.34gを入れて30分間50℃に加熱し、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを入れ、60分間撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をステンレス板に塗布して300μmの厚さにキャストし、80℃で30分間以下熱風乾燥させ、120℃に加熱し、30分間以下乾燥させてフィルムを得た。このフィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。フィルムの備えられたフレームを高温のオーブンに入れ、120℃から300℃まで2時間徐々に加熱し、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、得られたポリイミドフィルムを300℃で30分間最終熱処理した。
【0059】
<実施例3>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、製造例1で製造されたシリカフィラー0.1165gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)580gに分散させて第1溶液を得、反応器の温度を25℃に調節した。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を第1溶液に添加し、溶解させて第2溶液を得、ここに6FDA66.64g(0.15mol)を入れ、完全に溶けるように3時間撹拌して第3溶液を得た。この際、第3溶液を25℃で維持した。次いで、第3溶液にBTA9.928g(0.04mol)及び4−PEPA4.965g(0.02mol)を入れて24時間撹拌し、固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0060】
その後、このポリアミド酸溶液にグラブス触媒(Grubbs catalyst)0.34gを入れて30分間50℃に加熱し、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを添加し、60分間撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をステンレス板に塗布して300μmの厚さにキャストし、80℃で30分間以下熱風乾燥させた後、120℃に加熱し、30分間以下乾燥させてフィルムを得た。このフィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。フィルムの備えられたフレームを高温のオーブンに入れ、120℃から300℃まで2時間徐々に加熱し、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、得られたポリイミドフィルムを300℃で30分間最終熱処理した。
【0061】
<実施例4>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、製造例2で製造されたシリカフィラー0.1165gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)580gに分散させて第1溶液を得、反応器の温度を25℃に調節した。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を第1溶液に添加し、溶解させて第2溶液を得、ここに6FDA66.64g(0.15mol)を入れ、完全に溶けるように3時間撹拌して第3溶液を得た。この際、第3溶液を25℃で維持した。次いで、第3溶液にBTA9.928g(0.04mol)及び4−PEPA4.965g(0.02mol)を入れ、24時間撹拌して固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0062】
その後、このポリアミド酸溶液にグラブス触媒(Grubbs catalyst)0.34gを入れて30分間50℃に加熱し、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを添加し、60分間撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をステンレス板に塗布して300μmの厚さにキャストし、80℃で30分間以下熱風乾燥させ、120℃に加熱し、30分間以下乾燥させてフィルムを得た。このフィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。フィルムの備えられたフレームを高温のオーブンに入れ、120℃から300℃まで2時間徐々に加熱し、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、得られたポリイミドフィルムを300℃で30分間最終熱処理した。
【0063】
<実施例5>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、製造例1で製造されたシリカフィラー0.108gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)541gに分散させて第1溶液を得、反応器の温度を25℃に調節した。その後、TFDB64.046g(0.2mol)を第1溶液に添加し、溶解させて第2溶液を得、ここにBPDA35.306g(0.12mol)を入れ、完全に溶けるように3時間撹拌して第3溶液を得た。この際、第3溶液を25℃で維持した。次いで、第3溶液に6FDA31.08g(0.07mol)及び4−PEPA4.965g(0.02mol)を入れて24時間撹拌し、固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0064】
その後、このポリアミド酸溶液にグラブス触媒(Grubbs catalyst)0.34gを入れて30分間50℃に加熱し、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを添加し、60分間撹拌して混合液を得た。その後、この混合液をステンレス板に塗布して300μmの厚さにキャストし、80℃で30分間以下熱風乾燥させ、120℃に加熱し、30分間以下乾燥させてフィルムを得た。このフィルムをステンレス板から剥離してフレームにピンで固定した。フィルムの備えられたフレームを高温のオーブンに入れ、120℃から300℃まで2時間徐々に加熱し、徐々に冷却してフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。その後、得られたポリイミドフィルムを300℃で30分間最終熱処理した。
【0065】
<比較例1>
処理していない純粋シリカフィラー(日本触媒社製、平均粒径:10nm)を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0066】
<比較例2>
処理していない純粋シリカフィラー(日本触媒社製、平均粒径:10nm)を使用した以外は実施例3と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0067】
<比較例3>
処理していない純粋シリカフィラー(日本触媒社製、平均粒径:10nm)を使用した以外は実施例5と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0068】
<比較例4>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)611gを充填し、反応器の温度を25℃に調節し、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解して得た溶液を25℃で維持した。次いで、この溶液に6FDA88.85g(0.2mol)を入れて24時間撹拌し、固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを投入し、60分間撹拌した。その後、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを得た。
【0069】
<比較例5>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)540gを充填し、反応器の温度を25℃に調節し、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解して得た第1溶液を25℃で維持した。次いで、この第1溶液にBPDA35.306g(0.12mol)を入れ、完全に溶けるように3時間攪拌して第2溶液を得た。この際、第2溶液を25℃で維持した。その後、この第2溶液に6FDA35.54g(0.08mol)を投入して固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを投入し、60分間撹拌した。その後、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを得た。
【0070】
<比較例6>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)564gを充填し、反応器の温度を25℃に調節し、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解して得た第1溶液を25℃で維持した。次いで、この第1溶液に6FDA53.311g(0.12mol)を入れ、完全に溶けるように3時間攪拌して第2溶液を得た。この際、第2溶液を25℃で維持した。その後、この第2溶液にBTA19.85g(0.04mol)を投入し、24時間攪拌して固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にグラブス触媒0.509gを入れて30分間50℃に加熱してから、ここにピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを投入し、60分間攪拌した。その後、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを得た。
【0071】
<比較例7>
撹拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器が取り付けられた1Lの反応器に窒素を通過させながら、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)543.7gを充填し、反応器の温度を25℃に調節し、TFDB64.046g(0.2mol)を溶解して得た第1溶液を25℃で維持した。次いで、この第1溶液にBPDA35.306g(0.12mol)を入れ、完全に溶けるように3時間攪拌して第2溶液を得た。この際、第2溶液の温度を25℃で維持した。その後、この第2溶液に6FDA26.655g(0.06mol)を投入して4時間攪拌し、4−PEPA9.93g(0.04mol)を入れて固形分含量20重量%のポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にピリジン31.64g及び酢酸無水物40.8gを投入し、60分間攪拌した。その後、実施例1と同一の方法でポリイミドフィルムを得た。
【0072】
<比較例8>
製造例1で製造されたシリカフィラーを使用していない以外は、実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0073】
<比較例9>
製造例1で製造されたシリカフィラーを使用していない以外は、実施例5と同様にしてポリイミドフィルムを得た。
【0074】
<特性評価方法>
実施例1〜5及び比較例1〜9のポリイミドフィルムそれぞれの物性を測定した。その結果は下記表1に示した。
【0075】
(1)平均光透過率(%)の測定
UV分光計(Cary 100、Varian社製)を用いて、550nmの波長で各ポリイミドフィルムの光透過率を測定した。
【0076】
(2)線形熱膨張係数(CTE)の測定
熱機械分析器(TMA Q400、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50〜250℃で各ポリイミドフィルムの線形熱膨張係数(CTE)を10℃/minの加熱速度及び4mm×24mmの試料面積の条件で測定した。
【0077】
(3)ヘイズの測定
ヘイズ測定器(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、各ポリイミドフィルムのヘイズを測定した。
【0078】
(4)厚さの測定
電子マイクロメーター(アンリツ株式会社製)を用いて各ポリイミドフィルムの厚さを測定した。
【0079】
【表1】
表1に示すように、実施例1及び2のポリイミドフィルムと比較例1のポリイミドフィルムとを比較すると、同一のポリイミド組成及びフィラー含量を使用しても、実施例1及び2のポリイミドフィルムのヘイズ値はそれぞれ1.1及び1.0であった。これに対し、比較例1のポリイミドフィルムのヘイズ値は非常に高い2.5であることが分かる。これは、比較例1のポリイミドフィルムに含まれたフィラーが均一に分散していないか又はフィルム乾燥過程でフィラー粒子が凝集しているためと推定される。これらの結果は同様に光透過率にも適用することができる。
【0080】
一方、実施例1と比較例1及び8のポリイミドフィルムを実施例5と比較例3及び9のポリイミドフィルムとそれぞれ比較すると、同一のポリイミド組成を使用しても、実施例1及び5のポリイミドフィルムの線形熱膨張係数(CTE)は、比較例1、3、8及び9のポリイミドフィルムのCTEより低いことが分かる。これは、シリカフィラーの線形熱膨張係数が有機物質より低いため、シリカフィラー粒子がマトリクスとして使用されたポリイミド樹脂に均一に分散すると、シリカフィラーが熱によるポリイミド樹脂の膨張を減少させると推定される。
【0081】
比較例6では、BTAの含量がジアンヒドリドモノマーの総量を基準に30モル%を超えるため、ポリイミドフィルムが形成されていないことが分かる。
【0082】
本発明は、上述したように好適な実施例を挙げて説明したが、添付した請求の範囲に開示されているように、本発明の精神及び範囲を外れない範囲内において、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって様々な変更、追加及び置換が可能であろう。