【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するため、熱源機
およびポンプを有する建物用空調熱源装置群と、外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、前記関連付けられた空調需要量を供給するための前記熱源機
およびポンプの運転方策を予め設定しておき、前記外気エンタルピ、外気温度、日射量、建物用途および建物仕様から選ばれる1種以上の要因に基づいて空調需要を満たすための制御量を
得、得られた制御量を制御信号に変換して制御することにより前記熱源機
およびポンプの運転を行うフィードフォワード制御手段と、室内設定温度と実際の室内温度との偏差量に基づいて空調需要を満たすための制御量を
得、得られた制御量を制御信号に変換して制御することにより、前記熱源機
およびポンプの運転を行うフィードバック制御手段と、前記フィードフォワード制御手段における制御量と、前記フィードバック制御手段における制御量とを比較し、いずれの制御量で前記熱源機
およびポンプの制御を行うかを選択する選択手段とを具備することを特徴とする建物用空調熱源システムを提供する。
【0014】
本発明では、
前記フィードフォワード制御手段における制御量の制御信号と、前記フィードバック制御手段における制御量の制御信号とを同じ単位とし、前記選択手段において、フィードフォワード制御手段における制御量
の制御信号およびフィードバック制御手段における制御量
の制御信号のうち、前記建物用空調熱源装置群に供給するエネルギー量が小さくなるような制御量
の制御信号を選択することが適当であり、これにより熱源機
およびポンプを有する熱源システム全体の効率が向上し、効果的に省エネルギーを図ることが可能となる。ただし、電力消費量が多くなると電力契約が有利になり、結果的に電気料金が安価になる場合があるので、制御量は目的に応じて適宜選択することができ、建物用空調熱源装置群に供給するエネルギー量が大きくなるような制御量を選択することもできる。
【0016】
また、フィードフォワード制御手段における制御量の制御信号は、制御量に対して線形式あるいは非線形式を用いて変換することが適当である。
【0017】
さらに、前記フィードフォワード制御手段は、
前記制御量の制御信号に対して、前記熱源機運転台数、前記熱源機出力温度、前記熱源機運転組み合わせ、前記熱源機出力容量、前記ポンプ運転台数、前記ポンプ運転周波数を設定したデータベースを有することを特徴とする請求項1〜
3のいずれか1項に記載の建物用空調熱源システム。これにより、フィードフォワード制御手段による熱源機
およびポンプの制御を適切に行うことができる
。
【0018】
以下、本発明について説明する。まず、フィードフォワード制御手段について説明する。フィードフォワード制御手段において、熱源機
およびポンプの運転方策(以下、単に「熱源運転方策」という)の構成は必ずしも限定されないが、熱源機の運転機種、運転台数、および出力冷温水温度から選ばれる1種以上と、ポンプの運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上
との組み合わせによって構成することが好ましい。
【0019】
フィードフォワード制御手段では、前述した要因の中で、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを予め関連付けておくことが特に好ましい。その理由は以下のとおりである。建物の空調需要には、大きく分けて、内部負荷(機器発熱、人体発熱等)による需要と、外部負荷(外気取り入れによる負荷、壁からの熱伝達負荷、日射負荷等)による需要がある。しかし、内部負荷を一定とみなした場合は、空調需要の変動は外部負荷による変動のみとなる。特に、コンピュータルームやクリーンルームなどは使用機器や在室人員の変動が小さいため、内部負荷は一定とみなすことができる。
【0020】
一方、上述した外部負荷の中で壁からの熱伝達負荷や日射負荷は、外壁の断熱性の向上や熱反射窓ガラスの採用などから負荷自体が小さくなってきている。したがって、空調需要の変動は外気取り入れによる負荷の影響が大きく、また外気の状態は外気エンタルピまたは外気温度で表すことができるため、結局、空調需要の変動は外気エンタルピまたは外気温度の変動として表現することができる。
【0021】
したがって、フィードフォワード制御手段では、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを事前に関連付けておくとともに、関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策も事前に決定しておき、空調熱源システムの制御は運転時における外気エンタルピまたは外気温度の値に基づいて一義的に決定すること、すなわちフィードフォワード制御を行うことにより、制御応答にタイムラグを生じさせることなく、運転時の外気エンタルピまたは外気温度に応じた空調エネルギーを供給できるので、空調エネルギーの供給に無駄が生じず、省エネルギーを図ることができる。
【0022】
以下、上述した点についてさらに述べる。本発明において、外気エンタルピは、下記式(a)により算出することができる。
h=c
pat+x(r
0+c
pwt) …(a)
t :外気温度(℃)
x :外気の絶対湿度(kg/kg(DA))
h :外気エンタルピ(比エンタルピ)(kJ/kg(DA))
c
pa:乾き空気の定圧比熱(1.006kJ/kg(DA)K)
c
pw:水蒸気の定圧比熱(1.805kJ/kg(DA)K)
r
0:0℃における水の蒸発潜熱(2501.6kJ/kg)
【0023】
図3の左図に示すように、外気エンタルピと外気温度との間には比例的な関係があるので、本発明のフィードフォワード制御手段では、空調熱源システムの運転日における外気温度の値を用いて熱源運転方策を選択することができる。
【0024】
本発明のフィードフォワード制御手段において、外気エンタルピまたは外気温度の値と建物の空調需要量とを予め関連付けておく方法としては、例えば、所定の外気エンタルピまたは外気温度の値に対応する建物の空調需要量を予め設定しておく方法が挙げられる。所定の外気エンタルピまたは外気温度の値に対応する建物の空調需要量は、建物の特性を考慮して設定する。
【0025】
本発明のフィードフォワード制御手段では、上記関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策(例えば、熱源機の運転機種、運転台数および出力冷温水温度から選ばれる1種以上と、ポンプの運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上と、空調機の運転台数および運転周波数から選ばれる1種以上との組み合わせ)を予め設定しておく。その方法としては、例えば、最適運転解析手法などを用いて省エネルギーや排出CO
2の点で最適となる熱源運転方策を事前に解析により求めておく方法を挙げることができる。
【0026】
本発明のフィードフォワード制御手段では、クラスタ分析法などの類型化手法を用いて1年間の各日を空調需要量の類似性が強い日同士をまとめた複数のグループに類型化し、上記各グループ毎に熱源運転方策を予め設定することができる。すなわち、外気エンタルピは外気温度と外気湿度から求められるが、外気温度と外気湿度は時刻毎に変動するため、外気エンタルピの値も様々な値となる。そのため、空調需要も外気エンタルピや外気温度に従って非定常に変動する。しかし、空調需要を供給する場合には、運転すべき熱源機、ポンプ、空調機の組み合わせは限られており、空調需要が多少変動しても同じ熱源運転方策で供給することができる。そこで、空調需要量をクラスタ分析手法などを用いて類型化しておき、この類型化した空調需要量と空調負荷とを関連付けることが好ましい。
【0027】
この場合、上記クラスタ分析法としては、一般に使用されている方法を用いることができる。また、グループに類型化するに当たって使用する外気エンタルピまたは外気温度の値としては、各日の特定の時刻における外気エンタルピまたは外気温度の値、各日の特定の時間帯(例えば8時から18時)における外気エンタルピまたは外気温度の平均値、あるいは各日の1日の外気エンタルピまたは外気温度の平均値などを使用することができる。上記グループの数に限定はないが、9〜15個とすることが適当である。
【0028】
また、上述のように類型化したグループ毎に熱源運転方策を設定する場合、1年間の各日における任意時刻の外気エンタルピまたは外気温度と各グループの熱源運転方策とが関連付けられたデータベースを用い、空調熱源システムの運転日の任意時刻における外気エンタルピまたは外気温度の値を用いてグループの熱源運転方策を選択することができる。これにより、空調熱源システムの運転日の実際の気候特性に応じて熱源運転方策を容易に選択することができる。
【0029】
本発明のフィードフォワード制御手段では、前述のようにクラスタ分析法などの類型化手法を用いて1年間の各日を空調需要量の類似性が強い日同士をまとめた複数のグループに類型化し、各グループに分類番号を付与して、外気エンタルピの分類データベースを構築することができる。また、上記各グループ毎の外気エンタルピの値と建物の空調需要量とを予め関連付けておくとともに、関連付けられた空調需要量を供給するための熱源運転方策を予め設定しておくことにより、外気エンタルピ分類番号と熱源運転方策のデータベースを構築することができる。
【0030】
次に、フィードバック制御手段について説明する。本発明のフィードバック制御手段において、空調需要を満たすための制御量としては、例えば、各熱源機に供給する空調用冷温水量が挙げられる。具体的には、室内設定温度を28℃に設定した冷房の場合、実際の室内温度が29℃になったときには、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量を増加させ、実際の室内温度が27℃になったときには、室内温度を設定値に戻すために制御量である空調用冷水量を減少させる。