(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903760
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】電動アシストターボチャージャの冷却装置
(51)【国際特許分類】
F02B 39/16 20060101AFI20160331BHJP
F02B 37/10 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
F02B39/16 G
F02B37/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-244389(P2010-244389)
(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2012-97609(P2012-97609A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 治世
(72)【発明者】
【氏名】菅野 知宏
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章
(72)【発明者】
【氏名】水島 由加利
(72)【発明者】
【氏名】橘川 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朝幸
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】坂下 翔吾
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−196478(JP,A)
【文献】
特開2007−120383(JP,A)
【文献】
米国特許第06032466(US,A)
【文献】
特表2004−512453(JP,A)
【文献】
特開2006−090274(JP,A)
【文献】
特開2006−320143(JP,A)
【文献】
特開2006−002568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/16
F02B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャのターボ軸にモータを連結した電動アシストターボチャージャにおいて、
前記ターボ軸を軸承するベアリングハウジングと、
前記ターボチャージャのコンプレッサハウジングと、
前記ベアリングハウジングと前記コンプレッサハウジングとを接続するモータケースと、
前記モータケースに収容され、前記ターボ軸に連結されたロータと、ステータと、からなる前記モータと、
前記ステータ外周のモータケースに形成された主水冷室と、
前記ベアリングハウジングに形成された副水冷室と、
前記主水冷室と前記副水冷室の間に設けられた断熱ガスケットと、
前記断熱ガスケットを介して、前記主水冷室と前記副水冷室を連通する連通通路と、
を備えたことを特徴とする電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項2】
前記モータケースの下部に前記主水冷室の冷却水入口が設けられ、前記ベアリングハウジングの上部に前記副水冷室の冷却水出口が設けられ、前記冷却水入口と前記冷却水出口間にラジエータを含むステータ冷却ラインが接続される請求項1記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項3】
前記ベアリングハウジングと前記モータケースとが前記断熱ガスケットを介して接続され、前記主水冷室は、前記ステータの外周を冷却する冷却水流路と、前記冷却水流路と連続し、前記ステータの前記ベアリングハウジング側からの熱を断熱する端面冷却流路とからなる請求項1又は2記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項4】
前記副水冷室は、前記タービンケーシング側に位置して環状の冷却流路を有する請求項1〜3いずれかに記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに電動機(モータ)を組み合わせた電動アシストターボチャージャに係り、特にその電動アシストターボチャージャのモータを冷却するための電動アシストターボチャージャの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に示すようにターボチャージャ20は、タービン21とコンプレッサ22をターボ軸23で連結して構成される。タービン21は、タービンホイール24とタービンホイール24を囲み、排ガスが導入されるタービンハウジング25からなり、コンプレッサ22は、コンプレッサホイール26とコンプレッサホイール26を囲み、吸気が導入されるコンプレッサハウジング27からなり、タービンホイール24とコンプレッサホイール26を連結するターボ軸23がベアリングハウジング28内に収容されると共にベアリングハウジング28内に設けた軸受部29で軸承される。ベアリングハウジング28の上部には、潤滑油を軸受部29に供給する潤滑油入口30が設けられ、下部には潤滑油排出路31が形成される。
【0003】
図3は、ターボチャージャ20をエンジン40に付加した際の吸排気系と潤滑油による冷却系統を示したものである。
【0004】
ターボチャージャ20は、エンジン40のエギゾーストパイプ41にタービン21が接続され、インテークパイプ42にコンプレッサ22が接続され、エンジン40の燃焼室43から排気された排ガスがエギゾーストパイプ41を通してタービン21に供給されて、タービン21を駆動し、吸気はエアクリーナ44からコンプレッサ22に導入されて圧縮され、インタークーラ46で冷却され、吸気スロットル45を介して、エンジン40の燃焼室43に導入される。
【0005】
このターボチャージャ20は、ベアリングハウジング28内の軸受部29の潤滑のためと、排ガスからの受熱による軸受部29の冷却のために、エンジン40からの潤滑油を、オイル供給管47を通してベアリングハウジング28内に導入し、軸受部29を潤滑すると共に冷却するようになっており、ベアリングハウジング28に供給された潤滑油は、潤滑油排出路31からオイル戻し管48にてオイルパンへ戻され、再度ベアリングハウジング28内に循環されるようになっている。
【0006】
このエンジン40にターボチャージャ20を付加したシステムでは、エンジンの低回転域での過給圧の立ち上がりが悪く、低回転時に高トルクが要求されてもエンジンの出力特性が良好でない問題がある。
【0007】
そこで最近は、ターボチャージャのターボ軸にモータのロータを直結し、高トルクが要求されたときにモータでターボ軸を回転して過給圧を上げ、また逆にタービンの回転でモータを発電機として使用する電動アシストターボチャージャが開発されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−169629号公報
【特許文献2】特開2006−320143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この電動アシストターボチャージャにおいては、ベアリングハウジングとコンプレッサーハウジングの間にモータを設置したものであるが、モータ駆動時にステータの自己発熱およびタービンからの受熱により、モータの温度が200℃以上に上昇するため、駆動力低下が生じる問題がある。
【0010】
図4は、モータの温度が−20℃、+25℃、+75℃のときの、トルクに対するモータ速度特性とモータ電流特性を示したもので、モータ温度が高いとモータの電流特性も速度特性も悪くなる。
【0011】
従ってモータ温度が100℃以上に上昇した場合には、ブースト立ち上がり時間の遅れが生じ、排ガス性能の悪化、ドライビングレスポンス性の悪化が生じると共に、モータの耐熱性にも問題を生じる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、電動アシストターボチャージャのモータを冷却できる電動アシストターボチャージャの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ターボチャージャのターボ軸にモータのロータを連結した電動アシストターボチャージャにおいて、ターボ軸を軸承するベアリングハウジングとターボチャージャのコンプレッサハウジングとをモータケースで接続すると共にモータケース内にロータとステータからなるモータを収容し、そのステータ外周のモータケースに主水冷室を形成し、前記ベアリングハウジングに前記主水冷室と連通する副水冷室を形成したことを特徴とする電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0014】
請求項2の発明は、前記モータケースの下部に前記主水冷室の冷却水入口が設けられ、ベアリングハウジングの上部に副水冷室の冷却水出口が設けられ、その冷却水入口と冷却水出口間にラジエータを含むステータ冷却ラインが接続される請求項1記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0015】
請求項3の発明は、前記主水冷室は、前記ステータの外周を冷却する冷却水流路と、その冷却水流路と連続し、ステータのベアリングハウジング側からの熱を断熱する端面冷却流路とからなる請求項1又は2記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0016】
請求項4の発明は、前記副水冷室は、タービンケーシング側に位置して環状の冷却流路を有する請求項1〜3いずれかに記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、モータのステータの冷却性能が向上し、モータ駆動力の低下を防止できると共にモータを発電機として使用する際には発電効率を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】従来のターボチャージャを示す断面図である。
【
図3】従来のターボチャージャをエンジンの吸排気系に組み込んだ図である。
【
図4】モータの各温度におけるトルクに対する速度特性と電流特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1において、10は、電動アシストターボチャージャを示し、モータ12の構成を除いて、タービンとコンプレッサは、
図2で説明したターボチャージャ20のタービン21とコンプレッサ22の構造と基本的に同じであり、同一符号を付すと共にその説明は省略する。
【0021】
さて、ベアリングハウジング28とコンプレッサハウジング27とはモータケース11で接続され、そのモータケース11内にモータ12が設けられて電動アシストターボチャージャ10が構成される。
【0022】
モータ12は、ターボ軸23に連結されたロータ13と、そのロータ13の外周にエアギャップを介して配置されるステータ14とからなり、そのステータ14を囲繞するようにモータケース11が設けられると共にモータケース11内に主水冷室15が形成される。
【0023】
またベアリングハウジング28には、主水冷室15と連通する副水冷室19が形成される。
【0024】
主水冷室15を形成するモータケース11は、外周壁11oと、ベアリングハウジング28と接する側壁11sと、コンプレッサハウジング27と接する側壁11rと、その両側壁11s、11rを連結する内周壁11iとで形成され、その内周壁11iが、ステータ14と接するステータ外周壁部16aと、ステータ14のコンプレッサハウジング27側端面中央に沿って延びるステータ端面壁部16bと、ステータ端面壁部16bの内周端とベアリングハウジング28側の側壁11sとを結ぶ内周壁部16cとで形成される。
【0025】
主水冷室15は、コンプレッサハウジング27と接する側壁11rと内周壁11iのステータ外周壁部16aと外周壁11oとで形成される中空リング状の冷却水流路15aと、内周壁11iのステータ端面壁部16bと、内周壁部16cとベアリングハウジング28側の側壁11sとで形成される端面冷却流路15bとで構成される。
【0026】
このモータケース11の側壁11sとベアリングハウジング28との間には、ベアリングハウジング28からステータ14の端面への入熱を阻止する断熱ガスケット18が設けられる。モータケース11の側壁11sの内周には、オイルシール17が設けられる。
【0027】
また、ベアリングハウジング28の断熱ガスケット18側には、ターボ軸23のスラスト荷重を受けるスラスト軸受32が設けられる。
【0028】
なお、本実施の形態では、ターボ軸23を
図2と同様に軸受部29で直接軸承した例を示しているがボールベアリングで軸承するように構成してもよい。
【0029】
ベアリングハウジング28に形成される副水冷室19は、主水冷室15の上側部と接続され、タービン21に延びる導入流路19aと、タービンハウジング25側に形成された環状の冷却流路19bとで構成される。
【0030】
モータケース11の下部には、主水冷室15に冷却水を導入する冷却水入口33が設けられ、ベアリングハウジング28の上部には、副水冷室19の環状の冷却流路19bから冷却水を排出する冷却水出口34が設けられ、その冷却水入口33と冷却水出口34間にラジエータ35を含むステータ冷却ライン36が接続される。
【0031】
ステータ冷却ライン36は、エンジン冷却ライン50から分岐して設けられるようになっている。
【0032】
エンジン冷却ライン50は、冷却水ポンプ37を有し、冷却水ポンプ37からオイルクーラ38を通し、エンジン40のシリンダブロック40sとシリンダヘッド40hとを通り、ラジエータ35を通って冷却水ポンプ37に戻るように構成され、ステータ冷却ライン36は、エンジン冷却ライン50のシリンダブロック40sから分岐されて設けられる。シリンダブロック40sからの冷却水は、入口側ステータ冷却ライン36aを通して冷却水入口33に流れ、主水冷室15を通り、冷却水出口34から出口側ステータ冷却ライン36bを通りシリンダヘッド40hの出口側のエンジン冷却ライン50に合流するようにされる。
【0033】
また、ベアリンハウジング28の軸受部29とスラスト軸受32への潤滑油の供給は、
図3で説明したようにシリンダブロック40s、シリンダヘッド40hを通った潤滑油がオイル供給管47を通してベアリングハウジング28内に導入され、軸受部29とスラスト軸受32を潤滑すると共に冷却し、潤滑油排出路31からオイル戻し管48にてオイルパンへ戻されて循環されるようになっている。
【0035】
低負荷時に高トルクが要求され過給圧を上げる際には、モータ12のステータ14のコイルに通電してロータ13を回転し、ターボ軸23を介してコンプレッサ22を駆動し、またタービン21の駆動から発電する際には、ステータ14のコイルに生じた回生電流でバッテリを充電する。
【0036】
このモータ12の駆動時には、ステータ14が200℃に発熱するため、ステータ冷却ライン36からの冷却水をモータケース11内の主水冷室15内に流すと共に、ベアリングハウジング28の副水冷室19に流すことで、モータ12の温度を80℃以下に冷却することができる。また副水冷室19では、タービン21側からベアリングハウジング28に伝達される熱をカットする。さらに主水冷室15では、ステータ14の端面を冷却する端面冷却流路15bが形成されており、これによりタービン21からベアリングハウジング28を通しての伝熱をカットすることができ、またベアリングハウジング28とモータケース11間に設けた断熱ガスケット18により受熱をカットすることができる。この断熱ガスケット18は、ベアリングハウジング28のスラスト軸受32と隣接するよう設けられており、そのスラスト軸受32に供給される潤滑油による冷却効果と併せて、タービン21側からモータ12に伝わる熱をカットすることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 電動アシストターボチャージャ
11 モータケース
12 モータ
13 ロータ
14 ステータ
15 主水冷室
19 副水冷室
21 タービン
22 コンプレッサ
23 ターボ軸
27 コンプレッサハウジング
28 ベアリングハウジング