(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
室をリフォームする場合、特に集合住宅などにおいては、リフォームする室以外の室に居住者が居住したまま、施工が行われることがある。この場合、上記特許文献2,3のように、床暖房マットを釘やビスで床下地に留め付ける方法では、この釘やビスを床暖房マット及び床下地に打ち込む際の騒音が大きな問題となることがある。
【0009】
上記特許文献1では、床暖房マットを接着剤のみで床下地に貼り付けるため、施工時に釘打ちやビス打ちによる騒音が発生しない。しかしながら、通常、接着剤が硬化するまでには時間がかかるため、接着剤が硬化するまでの間に、床暖房マットに反りが生じたり、床暖房マットがずれたりするおそれがある。
【0010】
本発明は、施工時の釘打ちやビス打ちによる騒音の発生を防止することができると共に、接着剤が硬化するまでの間に温調マットに反りやずれが生じることを防止することができ、これにより温調マットの略全体を略均等にマット設置面に取り付けることが可能な温調マットの取付方法及び取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(
第1態様)の温調マットの取付方法は、温調マットをマット設置面に取り付ける方法において、該温調マットの裏面の一部に粘着材を設けると共に、該裏面の他部に接着剤を設け、その際、該粘着材の厚さを0.3〜2.0mmとし、該接着剤として、23℃における粘度が5〜70Pa・sである接着剤を用い、該粘着材及び接着剤により該温調マットを該マット設置面に貼り付けることを特徴とするものである。
【0012】
第2態様の温調マットの取付方法は、
第1態様において、前記粘着材は両面粘着テープであることを特徴とするものである。
【0013】
第3態様の温調マットの取付方法は、
第1又は第2態様において、前記粘着材を前記温調マットの裏面の複数箇所に互いに間隔をおいて設けると共に、前記接着剤を、該粘着材と重ならないように、該温調マットの裏面の複数箇所に互いに間隔をおいて設けることを特徴とするものである。
【0014】
第4態様の温調マットの取付方法は、
第3態様において、前記粘着材の設置間隔は300〜900mmであり、前記接着剤の設置間隔は50〜300mmであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明(
第5態様)の温調マットの取付構造は、
第1ないし第4態様のいずれかに記載の温調マットの取付方法により温調マットがマット設置面に取り付けられたものである。
【0016】
第6態様の温調マットの取付構造は、
第5態様において、前記温調マットは、前面に配管収容溝が凹設された基板と、該基板の該配管収容溝内に収容された温調用配管とを備えており、該基板は、裏面に該配管収容溝が露呈する厚さとなっていることを特徴とするものである。
【0017】
第7態様の温調マットの取付構造は、
第6態様において、前記温調マットは複数本の前記温調用配管を備えており、各温調用配管の一端側は、それぞれ、第1の分岐継手を介して、熱媒体供給源に連なる往き側主配管に接続されており、各温調用配管の他端側は、それぞれ、第2の分岐継手を介して、該熱媒体供給源に連なる戻り側主配管に接続されており、該第1の分岐継手及び第2の分岐継手は、それぞれ、継手本体と、該継手本体から突設された主配管接続ノズルと、該継手本体から突設された複数個の分岐配管接続ノズルと、該継手本体に設けられた、各分岐配管接続ノズルと主配管接続ノズルとをそれぞれ連通した分岐流路とを備えており、該第1の分岐継手及び第2の分岐継手のうちの少なくとも一方の分岐継手の該継手本体に、他方の分岐継手の該分岐配管接続ノズルが挿通可能なノズル挿通部が設けられており、該第1の分岐継手と第2の分岐継手とは、それらのうちの該一方の分岐継手の該ノズル挿通部に該他方の分岐継手の該分岐配管接続ノズルが挿通された状態で前記マット設置面に設置されており、該第1の分岐継手の主配管接続ノズルに該往き側主配管が接続され、該第1の分岐継手の各分岐配管接続ノズルにそれぞれ各温調用配管の該一端側が接続されており、該第2の分岐継手の主配管接続ノズルに該戻り側主配管が接続され、該第2の分岐継手の各分岐配管接続ノズルにそれぞれ各温調用配管の該他端側が接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
第8態様の温調マットの取付構造は、
第7態様において、前記第1の分岐継手及び第2の分岐継手において、それぞれ、前記継手本体は、前面及び裏面、並びに、該前面及び裏面と交わる1対の側面を有しており、前記主配管接続ノズルは、該継手本体の前面から突設されており、前記分岐配管接続ノズルは、それぞれ、該継手本体の一方の側面から突設されており、該一方の側面において、該分岐配管接続ノズル同士は、該前面の延在方向と平行方向に間隔をおいて配列されており、少なくとも前記一方の分岐継手において、前記ノズル挿通部は、該継手本体の他方の側面から該一方の側面まで該継手本体を貫通するか又は該継手本体の裏面を切り欠くようにして形成されており、該ノズル挿通部は、隣り合う該分岐配管接続ノズル同士の間に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明(
第1態様)の温調マットの取付方法にあっては、温調マットを粘着材及び接着剤によりマット設置面に貼り付けるため、施工時に温調マット及びマット設置面に釘打ちやビス打ちを行うことが不要である。これにより、施工時の騒音の発生を大幅に軽減することが可能である。
【0020】
また、本発明の温調マットの取付方法にあっては、温調マットの裏面の一部が粘着材によってマット設置面に接着され、該裏面の他部が接着剤によってマット設置面に接着される。この粘着材による接着は、接着剤のように硬化を待つ必要がなく、即座に温調マットの一部がマット設置面に接着される。これにより、温調マットの裏面の該他部において接着剤が硬化するまでの間に温調マットに反りやずれが生じることを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明では、粘着材の厚さを0.3〜2.0mmとする。これにより、マット設置面が粗面となっていたり、マット設置面に不陸が存在していても十分に粘着材で温調マットを該マット設置面に貼り付けることができ、且つ温調面に触れたときの感触(踏み心地など)を良好なものとすることができる。また、本発明では、接着剤として、23℃における粘度が5〜70Pa・sであるものを用いる。このような接着剤を用いることにより、温調マットをマット設置面に貼り付けたときに接着剤が該温調マットの裏面に沿って適度に広がり、温調マットの略全体を略均等にマット設置面に接着することができる。
【0022】
第2態様の通り、この粘着材としては、両面粘着テープが簡便であり、好ましい。
【0023】
第3態様の通り、温調マットの裏面の複数箇所に互いに間隔をおいて粘着材及び接着剤をそれぞれ設けることにより、温調マットの略全体を略均等にマット設置面に接着することができる。
【0024】
この場合、
第4態様の通り、粘着材の設置間隔を300〜900mmとし、接着剤の設置間隔を50〜300mmとすることが好ましい。粘着材及び接着剤の設置間隔をそれぞれこのように設定することにより、1尺(約30cm)を単位寸法とする規格品の温調マットの裏面に、粘着材と接着剤とをバランスよく分布させて該温調マットをマット設置面に略均等に接着することができる。
【0025】
かかる本発明の温調マットの取付方法により温調マットがマット設置面に取り付けてなる本発明(
第5態様)の温調マットの取付構造にあっては、温調マットに反りやずれが生じることが防止された温調構造が得られる。
【0026】
第6態様にあっては、温調マットの基板は、その前面に設けられた配管収容溝が裏面に露呈する程厚さが小さく、これにより、温調マットの全体の厚さも小さいものとなっている。そのため、例えば温調マットを敷設してなる床のレベルと、この温調マットを敷設していない部屋の床レベルとの差を小さく抑えることができる。
【0027】
また、このように温調マットの厚さが小さいので、その分だけ、この温調マットの上に敷設される仕上げ床材として厚さの大きいものを用いても、床のレベルが過度に高くなることが防止される。このように仕上げ床材として厚さの大きいものを用いることにより、構築された温調床の強度及び剛性を高めることができる。また、仕上げ床材の選択の自由度も高まる。
【0028】
第7態様では、各温調用配管の一端側を往き側主配管に接続する第1の分岐継手、及び、各温調用配管の他端側を戻り側主配管に接続する第2の分岐継手のうちの少なくとも一方の分岐継手の継手本体に、他方の分岐継手の分岐配管接続ノズルが挿通可能なノズル挿通部が設けられている。そして、第1の分岐継手と第2の分岐継手とは、それらのうちの該一方の分岐継手のノズル挿通部に該他方の分岐継手の分岐配管接続ノズルが挿通された状態でマット設置面に設置されている。このようにして第1の分岐継手と第2の分岐継手とを合体させてマット設置面に設置することにより、これらの分岐継手を設置するのに必要なスペースを小さくすることができる。
【0029】
第8態様では、少なくとも該一方の分岐継手において、ノズル挿通部は、継手本体の前面と平行方向に並んだ分岐配管接続ノズル同士の間に配置されている。従って、このノズル挿通部に該他方の分岐継手の分岐配管接続ノズルを挿通することにより、第1の分岐継手の上に第2の分岐継手を重ねることなく、これらの分岐配管接続ノズル同士を同高さに且つ交互に配置することができる。これにより、第1の分岐継手及び第2の分岐継手の設置高さを低くすることができるので、
第7態様のように薄型の温調マットを用いて温調構造を構築した場合でも、分岐継手の上面が温調構造(表面仕上げ材)の上面と同高さかそれよりも低位に位置するように、あるいは、分岐継手が温調構造の上面から過度に上方へ突出しないように、分岐継手を設置することが可能である。また、マット設置面においてこれらの分岐継手を設置するために確保すべき面積も小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、床暖房マットの床下地への取付方法及び取付構造への本発明の適用例である。なお、以下の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は以下の実施の形態以外の形態をもとりうる。
【0032】
第1図は温調マットとしての床暖房マット1を前側から見た平面図、第2図はこの床暖房マット1を裏側から見た平面図、第3図は第1図のIII−III線に沿う断面図、第4図は第3図と同一部分の分解断面図、第5図はこの床暖房マット1の下面の粘着材20を覆った被覆材21の端部付近の斜視図である。第6図は、この床暖房マット1をマット設置面としての床下地Fに取り付ける取付方法を示す断面図であり、第7図は、この床暖房マット1を床下地Fに取り付けて構築した床暖房構造の断面図である。なお、第6,7図は、それぞれ、第2図のVI−VI線に沿う部分の断面を示している。第8図(a)は、この床暖房マット1の各温水配管3と、熱媒体供給源としてのボイラ(図示略)からの主配管51,52とをそれぞれ接続する分岐継手60の斜視図、第8図(b)は、この分岐継手60の正面図、第8図(c)は、第8図(b)のC−C線に沿う断面図である。第9図(a)は、往き側分岐継手60Aと戻り側分岐継手60Bとの組み合わせ方法を示す正面図、第9図(b)は、この往き側分岐継手60Aと戻り側分岐継手60Bとを組み合わせた状態を示す正面図、第9図(c)は、第9図(b)のC−C線に沿う断面図である。第10図は、各温水配管3と主配管51,52とをそれぞれ分岐継手60A,60Bで接続した接続部付近の平面図である。第11図は、第10図のXI−XI線に沿う断面図である。
【0033】
この実施の形態では、床暖房マット1は、複数枚(この実施の形態では6枚)の略長方形の薄板状の基板11〜16と、各基板11〜16の上面に設けられた配管収容溝2と、この配管収容溝2に収容されるようにして配材された温調用配管としての温水配管3と、各基板11〜16の上面を覆うように配置され、各基板11〜16の上面に付着された均熱シート5と、該温水配管3と接するように配管収容溝2の内面から各基板11〜16の上面にかけて配材された均熱板6等を備えている。
【0034】
この床暖房マット1は、その下面の一部に粘着材20が設けられると共に、下面の他部に接着剤30が設けられ、これらの粘着材20及び接着剤30により床下地F(第6,7図)に貼り付けられる。これらの粘着材20及び接着剤30の配置等の詳細については、後述する。
【0035】
[床暖房マット1の構成について]
以下に、この実施の形態における床暖房マット1の構成について詳しく説明する。
【0036】
この実施の形態では、第1,2図の通り、基板11,12,13同士が、この順に、各々の長側辺同士を突き合わせるようにして配列され、基板14,15,16同士が、この順に、各々の長側辺同士を突き合わせるようにして配列され、基板11,14同士、12,15同士及び13,16同士が、各々の短側辺同士を突き合わせるようにして配列されている。
【0037】
床暖房マット1は、これらの隣り合う基板11,12同士、12,13同士、14,15同士、15,16同士、11,14同士、12,15同士、及び13,16同士の境界線に沿って折られることにより、折り畳み可能とされている。
【0038】
第3,4図に示すように、この実施の形態では、各基板11〜16は、各々の底面に配管収容溝2が露呈する厚さとなっている。
【0039】
第3図の通り、この実施の形態では、各基板11〜16の上面からの配管収容溝2の深さは、温水配管3の外径と略等しいものとなっている。即ち、各基板11〜16の厚さも、温水配管3の外径と略等しいものとなっている。
【0040】
温水配管3は、第3,4図のように、略円形の断面形状となっている。
【0041】
この実施の形態では、第3,4図の通り、配管収容溝2の長手方向と直交方向の断面形状は、各基板11〜16の上面側から下面側まで等幅の略方形の断面形状となっている。なお、配管収容溝2の断面形状はこれに限定されない。例えば、配管収容溝2は、底部が温水配管3の外面に沿うように半円弧状に湾曲した略U字形の断面形状であってもよい。この場合、配管収容溝2の底部の幅方向の中央付近が、各基板11〜16を貫通して各基板11〜16の下面に露呈する。
【0042】
各基板11〜16にそれぞれ配管収容溝2が複数条設けられており、これらの配管収容溝2にそれぞれ温水配管3が収容されている。各基板11〜16の長手方向の両端近傍以外の領域では、各配管収容溝2は、該基板11〜16の短手方向に所定の間隔をおいて配列され、それぞれ該基板11〜16の長手方向に延在している。各基板11〜16の長手方向の一端側及び他端側の両端部近傍領域においては、各配管収容溝2は、それぞれ、反対側の端部近傍領域に向ってUターンするように延在している。この実施の形態では、基板12,16の長手方向の途中部にも、それぞれ、配管収容溝2がUターンするように延在した部分が存在している。
【0043】
この実施の形態では、基板11の基板15と反対側の角隅部に、これらの配管収容溝2に収容された温水配管3の両端側を床暖房マット1の外部に引き出すための配管引き出し部17が設けられている。
【0044】
この実施の形態では、基板11の一部の配管収容溝2の一端側は配管引き出し部17に臨んでおり、他端側は該基板11の基板12側の長側辺に臨んでいる。基板11の別の一部の配管収容溝2の一端側は配管引き出し部17に臨んでおり、他端側は該基板11の基板14側の短側辺に臨んでいる。基板11の残りの配管収容溝2の一端側は該基板11の基板12側の長側辺に臨んでおり、他端側は基板14側の短側辺に臨んでいる。
【0045】
基板12の各配管収容溝2の一端側は該基板12の基板11側の長側辺に臨んでおり、他端側は該基板12の基板13側の長側辺に臨んでいる。基板13の各配管収容溝2の両端側は、それぞれ、該基板13の基板12側の長側辺に臨んでいる。基板14の各配管収容溝2の一端側は該基板14の基板11側の短側辺に臨んでおり、他端側は該基板14の基板15側の長側辺に臨んでいる。基板15の各配管収容溝2の一端側は該基板15の基板14側の長側辺に臨んでおり、他端側は該基板15の基板16側の長側辺に臨んでいる。基板16の各配管収容溝2の両端側は、それぞれ、該基板16の基板15側の長側辺に臨んでいる。
【0046】
これにより、第1図のように床暖房マット1を展開した状態にあっては、基板11〜16の各配管収容溝2同士は、これらの基板11,12同士、12,13同士、11,14同士、14,15同士、15,16同士の境界部を横切って相互に連続したものとなっており、これらの一連の配管収容溝2の両端側は、それぞれ配管引き出し部17に臨んでいる。なお、配管収容溝2の延在パターン及び配管引き出し部17の配置はこれに限定されない。
【0047】
この配管収容溝2に沿って温水配管3が基板11〜16に連続して引き回されている。この実施の形態では、3本(即ち3回路)の温水配管3が引き回されている。各温水配管3の両端側は、それぞれ、配管引き出し部17から床暖房マット1の外部に引き出されている。配管引き出し部17から床暖房マット1の外部に引き出された各温水配管3の一端側は、それぞれ、後述の分岐継手60(60A)を介して、ボイラから温水が送給されてくる往き側主配管51に接続され、各温水配管3の他端側は、それぞれ、別の分岐継手60(60B)を介して、ボイラに温水を返送するための戻り側主配管52に接続される。配管引き出し部17からは、各温水配管3の一端側(往き側)と他端側(戻り側)とが交互に引き出されている。
【0048】
第3,4図に示すように、均熱板6は、この実施の形態では、配管収容溝2の内面に沿うU字部6aと、該U字部6aの両端(上端)から各基板11〜16の上面に沿って側方に延出する1対のフランジ部6bとを有した略Ω字形断面形状のものである。この均熱板6は、アルミや銅等の高熱伝導材よりなることが好ましい。
【0049】
この均熱板6のU字部6aが配管収容溝2内に配置され、その上から、温水配管3がこのU字部6a内に嵌め込まれるようにして配管収容溝2に収容されている。なお、この実施の形態では、各配管収容溝2のうち各基板11〜16の長手方向に直線状に延在した部分にのみ均熱板6が配材されているが、均熱板6の配置はこれに限定されない。各配管収容溝2が湾曲した形状となっている部分にも均熱板6が配材されてもよい。なお、均熱板6は省略されてもよい。
【0050】
温水配管3の外径は、通常、5〜10mm、特に6〜7mmであることが好ましい。また、均熱板6の厚さは、通常、0.03〜1mm、特に0.08〜1mmであることが好ましい。
【0051】
各基板11〜16の厚さは、通常、5〜10mm、特に5.5〜7mmであることが好ましい。とりわけ、各基板11〜16の厚さは、通常、温水配管3の外径+0〜1mm、特に温水配管3の外径+0〜0.3mmであることが好ましい。なお、各基板11〜16の厚さは、温水配管3が配管収容溝2の外にずれ出すことを防止するのに足りる大きさであればよく、各基板11〜16の厚さは、温水配管3の外径よりも小さくてもよい。この場合、各基板11〜16の厚さは、温水配管3の外径の90%以上特に95%以上であることが好ましい。
【0052】
各温水配管3を各配管収容溝2(U字部6a)に収容しつつ基板11〜16に引き回した後、基板11〜16の上面を覆うように均熱シート5が配置され、この均熱シート5が該基板11〜16の上面に接着剤等により貼り付けられている。この均熱シート5は、アルミや銅等の高熱伝導材よりなることが好ましい。この均熱シート5は、各基板11〜16の上面に個別に配材されてもよく、複数枚の基板11〜16の上面に跨って配材されてもよい。
【0053】
第1図の通り、この実施の形態では、湾曲した形状の配管収容溝2が存在する各基板11〜16の長手方向の一端側及び他端側の両端部近傍領域、並びに、基板12,16の長手方向の途中部の下面に、それぞれ、裏打ち材18が設けられている。この実施の形態では、該裏打ち材18は、配管収容溝2よりも幅広のシート状のものであり、該配管収容溝2の底部を塞ぐように各基板11〜16の下面に沿って配置され、該下面の各配管収容溝2の両側部分に接着剤等により貼り付けられている。これにより、各基板11〜16と温水配管3とが一体化される。この裏打ち材18は、各配管収容溝2内に収容された温水配管3にも貼着されてもよい。
【0054】
この裏打ち材18の材料としては、金属よりなる層と、樹脂よりなる層とを積層してなる積層シートが好適である。このような積層シートにより裏打ち材18を構成した場合、該金属層を各基板11〜16側とし、樹脂層を床下地F側として裏打ち材18を配材することが好ましい。このように裏打ち材18を配材することにより、温水配管3と床下地Fとが直接触れることが防止され、仮に床下地Fに、温水配管3の材質に対して有害な物質が付着している場合でも、温水配管3の劣化を防止することができるという作用効果が奏される。この積層シートの金属層を構成する金属としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が好適であり、樹脂層を構成する樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好適である。なお、積層シートの構成材料はこれに限定されない。裏打ち材18は、この積層シート以外の材料により構成されてもよい。
【0055】
この裏打ち材18の厚さは、0.01〜0.1mm特に0.01〜0.05mmであることが好ましい。
【0056】
なお、裏打ち材18の構成及び配置はこれに限定されない。例えば、この実施の形態では、複数条の配管収容溝2を1枚の裏打ち材18で連続して覆っているが、各配管収容溝2を個別に裏打ち材18で覆うように構成してもよい。この実施の形態では、裏打ち材18は、各基板11〜16のうち、湾曲した形状の配管収容溝2が存在する部分の下面にのみ配材されているが、直線状の配管収容溝2が存在する部分の下面にも配材されてもよい。裏打ち材18は、各基板11〜16の下面の全体を覆うように配材されてもよい。裏打ち材18は、複数枚の基板11〜16に跨って配材されてもよい。
【0057】
第2図の通り、この実施の形態では、各基板11〜16の下面(裏打ち材18が設けられた部分においては、該裏打ち材18の下面。以下、同様。)にそれぞれ粘着材20が設けられている。
【0058】
この実施の形態では、粘着材20は、帯状の基材の両面に粘着材料を付着又は含浸させてなる両面粘着テープよりなる。この実施の形態では、第2図の通り、各基板11〜16の下面において、この両面粘着テープよりなる粘着材20は、該基板11〜16の長手方向に所定の間隔d
1をおいて複数本(この実施の形態では3本)設置され、この長手方向の各位置において、それぞれ、該基板11〜16の短手方向と略平行方向に延在している。なお、粘着材20の配置はこれに限定されない。なお、粘着材20は両面粘着テープに限定されない。例えば、粘着材20として両面粘着テープを用いる代わりに、各基板11〜16の下面に直接、粘着材料を付着させてもよい。
【0059】
この粘着材20に用いられる粘着材料としては、例えば、アクリル系粘着材が好適である。粘着材20として両面粘着テープを用いる場合、この両面粘着テープの基材は、発泡体よりなり、床下地Fの凹凸を吸収するものが好ましく、また、圧力が加えられていない状態では粘着機能が働かず、圧力が加えられることにより粘着機能が働く性質のものであれば、さらに好ましいが、これに限定されない。
【0060】
各基板11〜16の下面において、隣り合う粘着材20,20同士の設置間隔d
1は300〜900mm特に300〜675mmとりわけ300〜450mmであることが好ましい。最も好ましくは、第2図の通り、各基板11〜16の下面において、隣り合う粘着材20,20同士の間に、約150mmの設置間隔d
2にて接着剤30を複数条塗布することができるように、該粘着材20,20同士の設置間隔d
1が設定される。
【0061】
この粘着材20の延在方向と直交方向の幅W
1(第6図)は10〜50mm特に20〜30mmが好ましい。
【0062】
粘着材20の厚さt
1(第4図)は、床下地Fが粗面となっていたり、該床下地Fに不陸が存在していても、この粘着材20により床暖房マット1を十分な強度にて床下地Fに貼り付けることが可能な大きさとされることが好ましい。具体的には、この粘着材20の厚さt
1は0.3〜2.0mm特に0.5〜1.5mmとりわけ0.7〜1.2mmであることが好ましい。なお、粘着材20の厚さt
1が過度に小さいと、床下地Fが粗面となっていたり、床下地Fに不陸が存在する場合に、これに対応することができず、粘着材20が十分な貼付強度を発揮することができないおそれがある。また、粘着材20の厚さt
1が過度に大きいと、この床暖房マット1を用いて構築した暖房床の踏み心地が悪くなるおそれがある。
【0063】
第2図の通り、粘着材20は、各基板11〜16の外周縁から離隔した位置に設けられることが好ましい。即ち、この実施の形態においては、第2図の通り、各基板11〜16の下面において、該基板11〜16の長手方向の両端側に位置する粘着材20は、該基板11〜16の長手方向の両端側の短側辺からそれぞれ離隔していることが好ましく、且つ、各粘着材20の延在方向の両端側は、該基板11〜16の短手方向の両端側の長側辺からそれぞれ離隔していることが好ましい。この基板11〜16の外周縁と粘着材20との間隔d
3(第2図)は、10〜60mm特に40〜50mmであることが好ましい。このように、粘着材20を各基板11〜16の外周縁から離隔した位置に設けることにより、比較的反りが生じやすい各基板11〜16の端部付近に接着剤30を塗布することが可能となり、また接着剤30を各基板11〜16の端部から適度な間隔をあけて塗布することができるので、接着剤30が各基板11〜16の端部からはみ出すのを抑制することができる。
【0064】
この実施の形態では、床暖房マット1の製造段階において、各基板11〜16の下面にそれぞれ粘着材20が設けられ、この床暖房マット1の保管時や運搬時等に粘着材20が汚れないように、該粘着材20が被覆材21で覆われている。この被覆材21としては、例えば、紙等よりなる基材テープの表面にシリコーンをコーティングしたものや、ポリエステルフィルムなど、粘着材20から比較的容易に剥離可能なものが用いられる。この実施の形態では、該被覆材21は、両面粘着テープよりなる粘着材20と略等幅の帯状のものであり、各粘着材20をその延在方向の一端側から他端側まで連続して覆っている。なお、通常、この被覆材21は、両面粘着テープの製造工程において予め両面粘着テープの一方の面に付着されるものであり、床暖房マット1の製造時には、この両面粘着テープよりなる粘着材20は、一方の面が初めからこの被覆材21によって覆われた状態で各基板11〜16の下面に貼り付けられる。
【0065】
この実施の形態では、第2,5図の通り、床暖房マット1の運搬時等において、被覆材21が不用意に粘着材20から剥離することを防止するために、該被覆材21の下面と、その周囲の基板11〜16の下面とに跨って剥離防止材22が付着されている。この剥離防止材22は、床暖房マット1の運搬時の振動や軽い擦過程度では基板11〜16の下面から剥離しにくいが、作業者が剥そうとしたときには比較的容易に剥すことができるものとなっている。このような剥離防止材22としては、例えば、帯状ないしシート状の基材の片面に、比較的粘着力の弱い粘着材料を付着又は含浸させてなる、一般的な仮止め用の片面粘着テープ(又はシート)等が簡便であり、好ましい。なお、剥離防止材22はこれに限定されない。
【0066】
なお、第2,5図の通り、剥離防止材22を被覆材21の延在方向の両端側に設けただけでも、通常は、十分に被覆材21の粘着材20からの剥離を防止することができるが、被覆材21の延在方向の途中部にも剥離防止材22を設けてもよい。
【0067】
第2図の通り、各基板11〜16の下面のうち、粘着材20が設けられていない領域(以下、粘着材不存在領域という。)には、接着剤30の塗布位置を示すマーク31が設けられている。この実施の形態では、床暖房マット1を床下地F上に配置する直前に、このマーク31に従って各基板11〜16の下面に接着剤30を塗布する。
【0068】
第2図の通り、この実施の形態では、基板11,14の基板12,15と反対側の長側辺(以下、単に基板11,14の長側辺ということがある。)の近傍部、及び、基板13,16の基板12,15と反対側の長側辺(以下、単に基板13,16の長側辺ということがある。)の近傍部に、それぞれマーク31が設けられている。また、第2図の通り、基板11,12,13の基板14,15,16と反対側の短側辺(以下、単に基板11,12,13の短側辺ということがある。)の近傍部、並びに基板14,15,16の基板11,12,13と反対側の短側辺(以下、単に基板14,15,16の短側辺ということがある。)の近傍部の粘着材不存在領域にも、それぞれマーク31が設けられていることが、より好ましい。なお、第2図では基板12,13の短側辺及び基板15,16の短側辺にそれぞれマーク31が設けられているが、基板11の短側辺及び基板14の短側辺にもマーク31が設けられてもよい。
【0069】
この基板11,13,14,16の各長側辺の近傍部においては、それぞれ、第2図の通り、各粘着材20と重ならないように、これらの長側辺の延在方向に所定の間隔d
2をおいて、複数個のマーク31が設けられている。この基板11,13,14,16の長側辺の延在方向に隣接するマーク31,31同士の間隔d
2は、50〜300mm特に75〜225mmとりわけ100〜150mmであることが好ましい。この間隔d
2が過度に大きいと、接着剤30による接着面積を十分に確保することができないおそれがある。また、この間隔Pが過度に小さいと、接着剤30塗布量が過剰となり、粘着材20との厚さのバランスが崩れ、粘着材20の効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。
【0070】
基板11の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板12側の端部と、該基板11の基板12側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。基板12の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板11側の端部と、該基板12の基板11側の長側辺との間、及び/又は、この粘着材20の基板13側の端部と、該基板12の基板13側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。基板13の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板12側の端部と、該基板13の基板12側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。
【0071】
基板14の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板15側の端部と、該基板14の基板15側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。基板15の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板14側の端部と、該基板15の基板14側の長側辺との間、及び/又は、この粘着材20の基板16側の端部と、該基板15の基板16側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。基板16の短側辺の近傍部にマーク31を設ける場合、この短側辺に沿って設けられた粘着材20の基板15側の端部と、該基板16の基板15側の長側辺との間に、マーク31を設けることが好ましい。
【0072】
第2図の通り、基板11,14の長側辺に設けられたマーク31は、それぞれ、該基板11,14から基板12,15に向う方向を指し示した矢印よりなる。基板13,16の長側辺に設けられたマーク31は、それぞれ、該基板13,16から基板12,15に向う方向を指し示した矢印よりなる。基板11,12,13の短側辺にマーク31を設ける場合、それぞれ、該基板11,12,13から基板14,15,16に向かう方向を指し示した矢印とすることが好ましい。基板14,15,16の短側辺にマーク31を設ける場合、該基板14,15,16から基板11,12,13に向かう方向を指し示した矢印とすることが好ましい。なお、マーク31の形状や配置はこれに限定されない。
【0073】
床暖房マット1の施工時には、これらの矢印に沿って、床暖房マット1の下面の外周縁から該下面の中央側に向かって線状に接着剤30を塗布する。
【0074】
各マーク31に沿って接着剤30を塗布して床暖房マット1を床下地Fに配置し、該床暖房マット1に上方から作業者が人力により適度な荷重(好ましくは0.1〜0.5kg/cm
2特に好ましくは0.2〜0.3kg/cm
2)を加えたときに、接着剤30が床暖房マット1の下面の粘着材不存在領域に適度に押し伸ばされ、且つこの押し伸ばされた接着剤30の厚さが粘着材20の厚さt
1と略同じ大きさとなることが好ましい。これにより、施工時には、床暖房マット1が部分的に粘着材20によって即座に且つ十分に床下地Fに接着されるため、接着剤30が硬化するまでの間に床暖房マット1に反りやずれ等が発生しにくくなる。また、接着剤30が硬化した後には、床暖房マット1は、全体が略均等に床下地Fに接着される。
【0075】
このような作用効果を得るためには、接着剤30の粘度が重要であり、接着剤30の粘度は、23℃において5〜70Pa・s特に8〜60Pa・sとりわけ12〜50Pa・sであることが好ましい。接着剤30の粘度が過度に低いと、床暖房マット1を床下地F上に配置したときに、接着剤30が広がりすぎて該接着剤30の厚さが粘着材20に比べて薄くなり、接着剤30が床暖房マット1と床下地Fとの間に十分に充填されなくなるおそれがある。また、接着剤30の粘度が過度に高いと、床暖房マット1を床下地F上に配置した後、該床暖房マット1に上方から荷重を加えても、接着剤30が押し伸ばされにくくなるため、接着剤30の厚さが粘着材20の厚さt
1よりも大きくなり、粘着材20が十分に床下地Fに密着しにくくなるので、粘着材20による接着力を十分に得られず、床暖房マット1に反りやズレが生じ易くなるおそれがある。
【0076】
接着剤30としては、例えば1液形湿気硬化型のウレタン樹脂系接着剤が好適であるが、これに限定されない。
【0077】
上記の好適な粘度範囲の接着剤30を、各マーク31に沿って上記の好適な設置間隔d
2にて床暖房マット1の下面に塗布する場合、該マーク31(矢印)の指向方向と直交方向における接着剤30の幅W
2(第6図)は10〜50mm特に30〜40mmであることが好ましく、接着剤30の最大厚さt
2(第6図)は2〜5mm特に3〜4mmであることが好ましい。また、接着剤30の塗布には、単穴式ノズルではなく、複数穴式ノズルを使用することがより好ましい。この実施の形態では4穴式ノズルを使用している。
【0078】
[分岐継手60の構成について]
次に、分岐継手60の構成について説明する。なお、以下の説明において、分岐継手60の上下方向とは、後述の通り床暖房マット1を用いて室に暖房床が構築され、該分岐継手60がこの室の壁K(第10,11図)に沿って設置された状態における上下方向をいい、横方向とは、この状態における水平方向且つ壁Kの延在方向と平行方向をいう。
【0079】
この実施の形態では、第8図(a)〜(c)の通り、分岐継手60は、継手本体61と、該継手本体61の上面から突設された主配管接続ノズル62と、該継手本体61の壁Kと反対側の側面(以下、正面という。)から突設された3個の分岐配管接続ノズル63と、該継手本体61に設けられた、別の分岐継手60の分岐配管接続ノズル63が挿通可能なノズル挿通部64等を備えている。継手本体61内には、これらの分岐配管接続ノズル63と主配管接続ノズル62とをそれぞれ連通する分岐流路65が設けられている。
【0080】
第8図(a),(b)の通り、これらの分岐配管接続ノズル63は、継手本体61の正面において、横方向(継手本体61の上面と平行方向)に所定の間隔をあけて配列されている。ノズル挿通部64は、隣り合う分岐配管接続ノズル63,63同士の間にそれぞれ設けられている。
【0081】
第8図(a)〜(c)の通り、この実施の形態では、ノズル挿通部64は、継手本体61の下面を該継手本体61の正面からこれと反対側の側面(背面)まで切り欠くようにして形成された凹溝よりなる。この凹溝よりなるノズル挿通部64の延在方向の両端側は、それぞれ、継手本体61の正面及び背面にそれぞれ開放している。なお、ノズル挿通部64の構成はこれに限定されない。例えば、ノズル挿通部64は、継手本体61をその正面から背面まで貫通した貫通孔により形成されてもよい。
【0082】
継手本体61の下面からノズル挿通部64の天井面までの高さ、及び、このノズル挿通部64の横幅は、それぞれ、分岐配管接続ノズル63に温水配管3を接続してバンドBで結束した状態におけるこの分岐配管接続ノズル63と温水配管3との接続部の最大太さよりも大きいことが好ましい。
【0083】
継手本体61の上下の厚さは、床暖房マット1の厚さと後述の床仕上げ材Gの厚さとの合計と同等かそれよりも小さいことが好ましい。
【0084】
この実施の形態では、同一形状の2個の分岐継手60を、それぞれ、往き側主配管51が接続される往き側分岐継手60A(請求項7における第1の分岐継手に相当)、及び、戻り側主配管52が接続される戻り側分岐継手60B(請求項7における第2の分岐継手に相当)として用いる。
【0085】
第9図(a)〜(c)の通り、一方の分岐継手60Aを他方の分岐継手60Bの後側に配置し、該一方の分岐継手60Aの一部の分岐配管接続ノズル63を他方の分岐継手60Bのノズル挿通部64に挿通することにより、これらの分岐継手60A,60B同士を上下に重ねて配置することなく、往き側分岐配管接続ノズル63と戻り側分岐配管接続ノズル63とを同一高さに交互に配列することができる。これにより、分岐継手60A,60Bの設置高さを低く抑えることができるので、薄型の床暖房マット1を用いて暖房床を構築した場合でも、分岐継手60A,60Bの上面が暖房床(床仕上げ材G)の上面と同高さかそれよりも低位に位置するように、あるいは、分岐継手60A,60Bが暖房床の上面から過度に上方へ突出しないように、分岐継手60A,60Bを設置することが可能である。また、このように分岐継手60A,60B同士を組み合わせることにより、これらの分岐継手60A,60Bを設置するのに必要な床面積も小さくすることができる。なお、分岐継手60Bの一部の分岐配管接続ノズル63を分岐継手60Aのノズル挿通部64に挿通するようにしてもよい。
【0086】
なお、この実施の形態では、分岐継手60は3個の分岐配管接続ノズル63を備えているが、2個以下又は4個以上の分岐配管接続ノズル63を備えてもよい。また、この実施の形態では、継手本体61の下面に2個のノズル挿通部64が設けられているが、1個又は3個以上のノズル挿通部64が設けられてもよい。往き側分岐継手60Aと戻り側分岐継手60Bとで、分岐配管接続ノズル63やノズル挿通部64の数が異なっていてもよい。往き側分岐継手60A及び戻り側分岐継手60Bのいずれか一方にのみ、ノズル挿通部64が設けられていてもよい。
【0087】
[床暖房マット1を用いた暖房床の構築方法について]
以下に、床暖房マット1を用いて暖房床を構築する方法について以下に説明する。なお、以下の方法は一例であり、本発明は以下の方法に限定されない。
【0088】
室に暖房床を構築する場合、該室の壁Kに設けられた換気口(図示略)等を通して、該室内にボイラからの温水循環用の往き側主配管51及び戻り側主配管52を引き込み、これらを壁Kに沿って床下地F付近まで引き回す。次いで、往き側主配管51の先端を往き側分岐継手60Aの主配管接続ノズル62に接続すると共に、戻り側主配管52の先端を戻り側分岐継手60Bの主配管接続ノズル62に接続し、これらをバンドBで結束する。壁Kには、これらの主配管51,52を覆うように壁化粧カバー53(第10,11図)を取り付ける。
【0089】
室の床面積が床暖房マット1の設置面積よりも大きいときには、この床のマット設置予定領域とその周囲の壁Kとの間に、この床暖房マット1の各基板11〜16と略同厚さのダミー基板(図示略)を配材する。このダミー基板も、床暖房マット1と同様に、下面に接着剤30及び/又は粘着材20が設けられて床下地Fに接着される。
【0090】
また、このマット設置予定領域の外縁に沿って、床暖房マット1の配管引き出し部17から壁Kの主配管51,52の引き込み位置の下まで各温水配管3を案内するためのガイド基板54を配材する。ガイド基板54の上面には、床暖房マット1の配管引き出し部17から引き出された各温水配管3の一端側及び他端側がそれぞれ収容される複数条(この実施の形態では6条)の配管収容溝55(第10図)が設けられている。これらの配管収容溝55には、各温水配管3の一端側(往き側)と他端側(戻り側)とが交互に収容される。主配管51,52の引き込み位置の下方に位置するガイド基板54の端部には、分岐継手60A,60Bが配置される切欠状の継手配置部56が形成されている。
【0091】
ガイド基板54の厚さも、床暖房マット1の各基板11〜16と略同等となっている。即ち、このガイド基板54においても、各配管収容溝55は、該ガイド基板54の下面に露出したものとなっている。ガイド基板54の下面には、これらの配管収容溝55の底部を塞ぐように裏打ち材57(第11図)が設けられている。このガイド基板54の裏打ち材57は、床暖房マット1の裏打ち材18と同様のものである。このガイド基板54も、床暖房マット1と同様に、下面に接着剤30及び/又は粘着材20が設けられて床下地Fに接着される。
【0092】
なお、ダミー基板及びガイド基板54は、床暖房マット1の基板11〜16と同様の材質のものであってもよく、異なる材質のものであってもよい。
【0093】
以上の通り下準備を行った後、床暖房マット1の折り畳み体を室内に搬入し、その折りを解いて床暖房マット1を広げる。次いで、被覆材21と剥離防止材22とを各粘着材20及び基板11〜16の下面から剥して各粘着材20を露出させる。また、各マーク31に従って各基板11〜16の下面に接着剤30を塗布する。次いで、第6図の通り、この粘着材20及び接着剤30を下にして床暖房マット1を床下地Fのマット設置予定領域に敷き、この床暖房マット1の全体に上方から適宜荷重を加える。これにより、第7図の通り、各粘着材20が床下地Fに接着されると共に、床暖房マット1と床下地Fとの間の粘着材不存在領域に接着剤30が略均等に広がる。この接着剤30が硬化することにより、この接着剤30及び粘着材20によって床暖房マット1の下面の略全体が床下地Fに接着される。
【0094】
次に、床暖房マット1の配管引き出し部17から引き出された各温水配管3の一端側及び他端側を、それぞれ、ガイド基板54の各配管収容溝55に沿って壁Kの主配管51,52の引き込み位置の下まで引き回す。次いで、各温水配管3の一端側を往き側分岐継手60Aの各分岐配管接続ノズル63に接続すると共に、各温水配管3の他端側を戻り側分岐継手60Bの各分岐配管接続ノズル63に接続し、これらをバンドBで結束する。これらの分岐継手60A,60Bは、第9図(b),(c)及び第10,11図のように組み合わされてガイド基板54の継手配置部56内に配置される。
【0095】
この実施の形態では、各温水配管3をガイド基板54の各配管収容溝55に沿って引き回した後、ガイド基板54の上面を覆うように均熱シート58を配置し、この均熱シート58をガイド基板54の上面に接着剤(図示略)等により付着させる。このガイド基板54の上面の均熱シート58は、床暖房マット1の各基板11〜16の上面の均熱シート5と同様のものである。
【0096】
次に、床暖房マット1、ダミー基板及びガイド基板54の上面に接着剤40を塗布し、これらの上に床仕上げ材Gを敷設する。この実施の形態では、第11図の通り、ガイド基板54の継手配置部56の上側には床仕上げ材Gを配材せず、代わりに、床仕上げ材Gの上からこの継手配置部56を覆うように床化粧カバー59を配置する。壁化粧カバー53の下端は、この床化粧カバー59の上面に当接する。
【0097】
その後、接着剤40が硬化することにより、暖房床が構築され、施工が完了する。
【0098】
この床暖房マット1の床下地Fへの取付方法にあっては、床暖房マット1を粘着材20及び接着剤30により床下地Fに貼り付けるため、施工時に釘打ちやビス留め等が不要である。これにより、施工時の騒音の発生を大幅に軽減することが可能である。
【0099】
また、この床暖房マット1の床下地Fへの取付方法にあっては、床暖房マット1の下面の一部が粘着材20によって床下地Fに接着され、他部が接着剤30によって床下地Fに接着される。この粘着材20による接着は、接着剤30のように硬化を待つ必要がなく、即座に床暖房マット1の一部が床下地Fに接着される。そのため、床暖房マット1の下面の粘着材不存在領域において接着剤30が硬化するまでの間に床暖房マット1に反りやずれが生じることを効果的に防止することができる。
【0100】
この実施の形態のように、粘着材20としては、両面粘着テープを用いるのが簡便であり、好ましい。両面粘着テープを用いれば、床暖房マット1の裏面に容易に粘着材20を設けることができる。
【0101】
この実施の形態では、床暖房マット1の製造時から床暖房マット1を床下地Fに配置する直前まで、粘着材20は被覆材21によって覆われており、さらに剥離防止材22により該被覆材21の粘着材20からの剥離が防止されている。これにより、床暖房マット1の保管時や運搬時等に粘着材20に埃等が付着して粘着材20の粘着力が低下することが防止される。
【0102】
この実施の形態では、床暖房マット1の各基板11〜16は、各々の上面に設けられた配管収容溝2が下面に露呈する程厚さが小さく、これにより、床暖房マット1の全体の厚さも小さいものとなっている。そのため、この床暖房マット1を敷設した床のレベルと、この床暖房マット1を敷設していない部屋の床レベルとの差を小さく抑えることができる。
【0103】
また、このように床暖房マット1の厚さが小さいので、その分だけ、この床暖房マット1の上に敷設される仕上げ床材Gとして厚さの大きいものを用いても、床のレベルが過度に高くなることが防止される。このように仕上げ床材Gとして厚さの大きいものを用いることにより、構築された暖房床の強度及び剛性を高めることができる。また、仕上げ床材Gの選択の自由度も高まる。
【0104】
[材質等]
上記各部材の材質の一例として次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
基板としては例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂のほか木材等を用いることができる。発泡合成樹脂としては、断熱性の点から、内部の気泡が独立気泡となっているものが好ましい。
【0106】
均熱シート及び均熱板としては、アルミ又は銅等の金属箔が好ましい。
【0107】
均熱シートの上面にポリエチレンテレフタレート等のフィルムをラミネートすることにより、温調マットの梱包時や運搬時等に均熱シートの破損を防止することができる。なお、このフィルムの材質はポリエチレンテレフタレート以外であってもよい。
【0108】
温水配管としては、可撓性のポリエチレン等の合成樹脂チューブや銅パイプが例示される。
【実施例】
【0109】
各部の寸法及び材質等を以下の通りとして床暖房マット1を製作した。この実施例では、均熱シート5及び均熱板6を省略した。
基板11〜16 :樹脂発泡マット製、厚さ5.5mm
温水配管3 :外径5.5mm
裏打ち材18 :アルミニウム層とPET樹脂層との積層シート
基板11〜16と接する側にアルミニウム層を配置し、床下地F
と接する側にPET層を配置した。
【0110】
この床暖房マット1の裏側に、第2図に従い、粘着材20として厚さ1.0mmの両面粘着テープ(積水化学工業株式会社製#530)を設置間隔450mmにて複数本貼り付けると共に、この両面粘着テープと重ならないように、接着剤30(ウレタン系接着剤、粘度20Pa・s(23℃))を設置間隔150mmにて塗布し、この床暖房マット1を床下地Fに敷設した。その後、床暖房マット1の全体に万遍なく0.2〜0.3kg/cm
2程度の荷重を加えた。
【0111】
接着剤30が硬化するまでの間に、床暖房マット1の反りやずれは全く又は殆ど観測されなかった。接着剤30の硬化後、床暖房マット1を剥してみたところ、接着剤30は、床暖房マット1の下面の粘着材不存在領域と床下地Fとの間の略全体に、粘着材20(両面粘着テープ)とほぼ同厚さにて、略均等に広がっていたことが確認された。
【0112】
[その他の構成]
上記の実施の形態は、いずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は図示の構成に限定されない。
【0113】
本発明の温調マットを構成する基板の枚数に特に制限はなく、6枚よりも多くても少なくてもよい。
【0114】
上記実施の形態では、床暖房マット1は、全体が発泡合成樹脂よりなる基板11〜16にて構成されているが、適宜の配設パターンにて小根太(図示略)が設けられていてもよい。
【0115】
上記実施の形態では、床暖房マット1を1枚だけ用いて暖房床を構築しているが、室の床面積が大きい場合には、1室に床暖房マット1を2枚以上用いて暖房床を構築してもよい。
【0116】
上記の実施の形態は床暖房マットに関するものであるが、本発明の温調マットは、壁や天井等に配置されてもよい。また、温水ではなく、冷水を配管に通水して冷房するようにしてもよい。水以外のオイル、不凍液等の熱媒体を流通させてもよい。