(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1つの実施態様にかかる投影光学系では、正・負・正・開口絞り・正・負・正の屈折力配置を採用しており、開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正することができる。
【0016】
また、正の屈折力を持つ第1レンズ群は、第1物体側のテレセントリック性を維持させながら主に歪曲収差の補正に寄与している。また、正の屈折力を持つ第6レンズ群も、第2物体側のテレセントリック性を維持しながら主に歪曲収差の補正に寄与している。具体的には、これらの第1および第6レンズ群は、歪曲収差を発生させて、第2〜第5レンズ群から発生する歪曲収差をバランス良く補正している。
【0017】
負の屈折力を持つ第2レンズ群および第5レンズ群は、主に全系のペッツバール和を補正する機能を有し、広い露光領域にわたる像面の平坦化を図っている。正の屈折力を持つ第3レンズ群は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第2レンズ群は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第3レンズ群中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第3レンズ群から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0018】
また、正の屈折力を持つ第4レンズ群は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第5レンズ群は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第4レンズ群中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第4レンズ群から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0019】
さて、上述の如き投影光学系においては、以下の条件(1) 〜 (3) を満足することが好ましい。
(1) 0 .3 < f1 / fa < 1.3
(2) −0.36 < f2 / fa < −0.08
(3) 0.13 < f3 / fa < 0.5
但し、
β :前記投影光学系の横倍率、
f1 :前記第1レンズ群の焦点距離、
f2 :前記第2レンズ群の焦点距離、
f3 :前記第3レンズ群の焦点距離、
fa :前記第1、第2および第3レンズ群からなる前群の焦点距離、である。
【0020】
上記条件(1)の上限を超える場合には、第1 物体側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生する。更に第2および第3レンズ群の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(1)の下限を超える場合には、第1物体側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(2)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(2)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(2)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(3)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(3)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(3)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0021】
更に、上述の如き投影光学系においては、以下の条件(4) 〜 (7) を満足することが好ましい。
(4) 0.45 < | β | < 2.2
(5) 0 .3 < f6 / fb < 1.3
(6) −0.36 < f5 / fb < −0.08
(7) 0.13 < f4 / fb < 0.5
但し、
f4 :前記第4レンズ群の焦点距離、
f5 :前記第5レンズ群の焦点距離、
f6 :前記第6レンズ群の焦点距離、
fb :前記第4、第5および第6レンズ群からなる後群の焦点距離、である。
上記条件(4)は、投影光学系の前群と後群が開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正する最適な倍率範囲を規定している。条件(4)の倍率範囲を超える場合には、前群と後群の非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を補正することは困難となり、好ましくない。
上記条件(5)の上限を超える場合には、第2物体側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生する。更に第4および第5レンズ群の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(5)の下限を超える場合には、第2物体側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(6)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(6)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(6)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(7)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(7)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(7)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0022】
また、上述の如き投影光学系においては、以下の条件(8) 〜 (9) を満足することが好ましい
(8) −1.8 < r1 / r2 < −0.6
(9) 1.0 < r3 / r2 < 1.8
但し、
r1 :前記第2レンズ群の互いに向き合った凹面組の中に第一物体側の凹面の曲率半径、
r2 :前記第2レンズ群の互いに向き合った凹面組の中に第二物体側の凹面の曲率半径、
r3 :前記第3レンズ群の各レンズ面の中に、各曲率半径の絶対値の一番小さい値、である。
上記条件(8) は、第2レンズ群における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(8) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
上記条件(9) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(9)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(9)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0023】
更に、上述の如き投影光学系においては、以下の条件(10) 〜 (11) を満足することが好ましい。
(10) 1.0 < r4 / r5 < 1.8
(11) −1.8 < r6 / r5 < −0.6
但し、
r4 :前記第4レンズ群の各レンズ面の中に、各曲率半径の絶対値の一番小さい値、
r5 :前記第5レンズ群の互いに向き合った凹面組の中に第一物体側の凹面の曲率半径、
r6 :前記第5レンズ群の互いに向き合った凹面組の中に第二物体側の凹面の曲率半径である。
上記条件(10)
は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(10)の上限を超える場合には、負の球面収差と上側のコマ収差が大きく発生し、逆に、上記条件(10)の下限を超える場合には、正の球面収差と下側のコマ収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(11) は、第2レンズ群における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(11) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
【0024】
上述の如き投影光学系においては、第2物体の像を第1物体上に投影することでも、諸収差の補正量が同様で、同じ効果をもたらす。
【0025】
上述の如き投影光学系においては、構成レンズの総枚数が、10枚以上20枚以下であることを特徴とする。
特許文献1〜4に記載の投影光学系のように、レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。一方、構成レンズの枚数が10枚を下回る場合には、プリント回路基板等の露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
よって、本投影光学系においては、構成レンズの総枚数を10枚以上20枚以下にすることが好ましいと考えられる。
【0026】
本発明の投影光学系は、更に、物体側及び像側共にテレセントリック光学系であることを特徴とする。
【0027】
本実施形態では、投影光学系の物体側及び像側の両側において、光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。 投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0028】
本発明の投影光学系は、第1レンズ群に1枚以上の正屈折率レンズで構成され、第6レンズ群に1枚以上の正屈折率レンズで構成されることを特徴とする。第1および第6レンズ群が相対的に大型のレンズであるため、正屈折率レンズで構成されるレンズ群が、大型レンズの枚数が少なくなり、製造誤差の発生も少なく、更なるコスト削減の要因となる。また、光学系全体の透過率も向上し、レンズから発熱の問題も低減できる。
【0029】
本発明の投影光学系は、第1レンズ群に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有し、第6レンズ群に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有することを特徴とする。第1および第6レンズ群が相対的に大型のレンズであるため、曲率半径の絶対値が同じである曲面で構成されたレンズは、製造コスト削減の要因となる。レンズ製造精度の向上が容易となる。
【0030】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、第1物体と第2物体との間の投影倍率が−1であることを特徴とする。開口絞りに関して対称的に配置された前群と後群とからなり、コマ収差、歪曲収差および倍率色収差がゼロに補正ことが可能とあり、製造コストが削減され、好ましい。
【実施例1】
【0031】
〔第1実施例〕
図1は、本実施形態の第1実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。第1実施例にかかる投影光学系は、第1物体側P1から第2物体側P2側の順に、1枚のレンズL1から構成される正屈折力の第1レンズ群G1と、2枚のレンズL2〜L3から構成される負屈折力の第2レンズ群G2と、2枚のレンズL4〜L5から構成される正屈折力の第3レンズ群G3と、開口絞りASと、2枚のレンズL6〜L7から構成される正屈折力の第4レンズ群G4と、2枚のレンズL8〜L9から構成される負屈折力の第5レンズ群G5と、1枚のレンズL10から構成される正屈折力の第6レンズ群G6とが備えられている。また、第2レンズ群G2の一対の負レンズL2〜L3に互いに向き合った凹面の組を形成し、第5レンズ群G5の一対の負レンズL8〜L9に互いに向き合った凹面の組を形成する。以上のように、投影光学系の第1の実施形態では、計10枚のレンズから構成されている。
次に、本投影光学系の諸元の値を下表に示す。正・負・正・開口絞り・正・負・正の屈折力配置を採用しており、開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正することができる。
また、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1は、第1物体側P1側のテレセントリック性を維持させながら主に歪曲収差の補正に寄与している。また、正の屈折力を持つ第6 レンズ群G6も、第2物体側P2側のテレセントリック性を維持しながら主に歪曲収差の補正に寄与している。
負の屈折力を持つ第2レンズ群G2および第5 レンズ群G5は、主に全系のペッツバール和を補正する機能を有し、広い露光領域にわたる像面の平坦化を図っている。正の屈折力を持つ第3レンズ群G3は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第2レンズ群G2は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第3レンズ群G3中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第3レンズ群G3から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0032】
また、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第5レンズ群G5は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第4レンズ群G4中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第4レンズ群G4から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0033】
【0034】
上記の結果によれば、以下の条件(1) 〜 (3) を満足している。
(1) 0 .3 < f1 / fa < 1.3
(2) −0.36 < f2 / fa < −0.08
(3) 0.13 < f3 / fa < 0.5
上記条件(1)の上限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生する。更に第2および第3レンズ群G3の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(1)の下限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(2)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(2)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(2)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(3)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(3)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(3)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0035】
更に、以下の条件(4) 〜 (7) を満足している。
(4) 0.45 < | β | < 2.2
(5) 0 .3 < f6 / fb < 1.3
(6) −0.36 < f5 / fb < −0.08
(7) 0.13 < f4 / fb < 0.5
上記条件(4)は、投影光学系の前群と後群が開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正する最適な倍率範囲を規定している。条件(4)の倍率範囲を超える場合には、前群と後群の非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を補正することは困難となり、好ましくない。
上記条件(5)の上限を超える場合には、第2 物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生する。更に第4および第5レンズ群G5の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(5)の下限を超える場合には、第2物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(6)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(6)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(6)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(7)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(7)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(7)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0036】
また、以下の条件(8) 〜 (9) を満足している
(8) −1.8 < r1 / r2 < −0.6
(9) 1.0 < r3 / r2 < 1.8
上記条件(8) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(8) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
上記条件(9) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(9)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(9)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0037】
更に、以下の条件(10) 〜 (11) を満足している。
(10) 1.0 < r4 / r5 < 1.8
(11) −1.8 < r6 / r5 < −0.6
上記条件(10)
は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(10)の上限を超える場合には、負の球面収差と上側のコマ収差が大きく発生し、逆に、上記条件(10)の下限を超える場合には、正の球面収差と下側のコマ収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(11) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(11) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
【0038】
以上のように、投影光学系の第1の実施形態では、計10枚のレンズから構成されている。
レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。一方、構成レンズの枚数が10枚を下回る場合には、プリント回路基板等の露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
【0039】
以上のように、投影光学系の第1の実施形態では、物体側及び像側共に光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。 投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0040】
第1レンズ群G1に1枚の正屈折率レンズで構成され、第6レンズ群G6に1枚の正屈折率レンズで構成される。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、正屈折率レンズで構成されるレンズ群が、大型レンズの枚数が少なくなり、製造誤差の発生も少なく、更なるコスト削減の要因となる。また、光学系全体の透過率も向上し、レンズから発熱の問題も低減できる。
【0041】
以上のように、投影光学系の第1の実施形態では、第1物体側P1と第2 物体側P2との間の投影倍率が−1である。開口絞りに関して対称的に配置された前群と後群とからなり、コマ収差、歪曲収差および倍率色収差がゼロに補正ことが可能とあり、製造コストが削減され、好ましい。
【0042】
図5は、第1実施形態における投影光学系の非点収差および歪曲収差を示す図である。
図6は、第1実施形態における投影光学系のコマ収差を示す図である。各収差図において、Yは像高をそれぞれ示している。非点収差図のTで示す線は、タンジェンシャル像面の像面湾曲を示し、Sで示す線はサジタル像面の像面湾曲を示す。また、コマ収差図の縦軸スケールは、5目盛分で50ミクロンを示す。各収差図から明らかなように、第1実施例の投影光学系では、大きな投影視野(有効径204mm)の全体に亘って諸収差が良好に補正され、良好な光学性能が確保されていること、特に非点収差図を参照すると像面の平坦性が良好に確保されていることがわかる。
本発明に係る投影光学系の第1の実施形態においては、投影光学系の収差を良好に補正することが可能であって、各種基板を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、第2、第3、第4および第5レンズG2〜G5の外径が抑えられたコンパクトな投影光学系で、低いコストで実現することができる。
【実施例2】
【0043】
〔第2実施例〕
図2は、本実施形態の第2実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。第2実施例にかかる投影光学系は、第1物体側P1から第2物体側P2側の順に、2枚のレンズL1〜L2から構成される正屈折力の第1レンズ群G1と、2枚のレンズL3〜L4から構成される負屈折力の第2レンズ群G2と、2枚のレンズL5〜L6から構成される正屈折力の第3レンズ群G3と、開口絞りASと、2枚のレンズL7〜L8から構成される正屈折力の第4レンズ群G4と、2枚のレンズL9〜L10から構成される負屈折力の第5レンズ群G5と、2枚のレンズL11〜L12から構成される正屈折力の第6レンズ群G6とが備えられている。また、第2レンズ群G2の一対の負レンズL3〜L4に互いに向き合った凹面の組を形成し、第5レンズ群G5の一対の負レンズL9〜L10に互いに向き合った凹面の組を形成する。以上のように、投影光学系の第2の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
次に、本投影光学系の諸元の値を下表に示す。正・負・正・開口絞り・正・負・正の屈折力配置を採用しており、開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正することができる。
また、正の屈折力を持つ第1 レンズ群G1は、第1 物体側P1側のテレセントリック性を維持させながら主に歪曲収差の補正に寄与している。また、正の屈折力を持つ第6レンズ群G6も、第2物体側P2側のテレセントリック性を維持しながら主に歪曲収差の補正に寄与している。
負の屈折力を持つ第2レンズ群G2および第5 レンズ群G5は、主に全系のペッツバール和を補正する機能を有し、広い露光領域にわたる像面の平坦化を図っている。正の屈折力を持つ第3
レンズ群G3は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第2レンズ群G2は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第3レンズ群G3中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第3レンズ群G3から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0044】
また、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第5レンズ群G5は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第4レンズ群G4中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第4レンズ群G4から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0045】
【0046】
上記の結果によれば、以下の条件(1) 〜 (3) を満足している。
(1) 0 .3 < f1 / fa < 1.3
(2) −0.36 < f2 / fa < −0.08
(3) 0.13 < f3 / fa < 0.5
上記条件(1)の上限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生する。更に第2および第3レンズ群G3の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(1)の下限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(2)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(2)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(2)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(3)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(3)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(3)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0047】
更に、以下の条件(4) 〜 (7) を満足している。
(4) 0.45 < | β | < 2.2
(5) 0 .3 < f6 / fb < 1.3
(6) −0.36 < f5 / fb < −0.08
(7) 0.13 < f4 / fb < 0.5
上記条件(4)は、投影光学系の前群と後群が開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正する最適な倍率範囲を規定している。条件(4)の倍率範囲を超える場合には、前群と後群の非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を補正することは困難となり、好ましくない。
上記条件(5)の上限を超える場合には、第2 物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生する。更に第4および第5レンズ群G5の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(5)の下限を超える場合には、第2物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(6)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(6)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(6)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(7)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(7)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(7)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0048】
また、以下の条件(8) 〜 (9) を満足している
(8) −1.8 < r1 / r2 < −0.6
(9) 1.0 < r3 / r2 < 1.8
上記条件(8) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(8) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
上記条件(9) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(9)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(9)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0049】
更に、以下の条件(10) 〜 (11) を満足している。
(10) 1.0<r4/r5<1.8
(11) −1.8<r6 / r5 <−0.6
上記条件(10) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(10)の上限を超える場合には、負の球面収差と上側のコマ収差が大きく発生し、逆に、上記条件(10)の下限を超える場合には、正の球面収差と下側のコマ収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(11) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(11) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
【0050】
以上のように、投影光学系の第2の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。一方、構成レンズの枚数が10枚を下回る場合には、露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
【0051】
以上のように、投影光学系の第2の実施形態では、物体側及び像側共に光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。 投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0052】
第1レンズ群G1に1枚の正屈折率レンズで構成され、第6レンズ群G6に1枚の正屈折率レンズで構成される。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、正屈折率レンズで構成されるレンズ群が、大型レンズの枚数が少なくなり、製造誤差の発生も少なく、更なるコスト削減の要因となる。また、光学系全体の透過率も向上し、レンズから発熱の問題も低減できる。
【0053】
以上のように、投影光学系の第2の実施形態では、第1レンズ群G1に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有し、第6レンズ群G6に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有する。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、曲率半径の絶対値が同じである曲面で構成されたレンズは、製造コスト削減の要因となる。レンズ製造精度の向上が容易となる。
以上のように、投影光学系の第2の実施形態では、第1物体側P1と第2 物体側P2との間の投影倍率が−1である。開口絞りに関して対称的に配置された前群と後群とからなり、コマ収差、歪曲収差および倍率色収差がゼロに補正ことが可能とあり、製造コストが削減され、好ましい。
【0054】
図7は、第2実施形態における投影光学系の非点収差および歪曲収差を示す図である。
図8は、第2実施形態における投影光学系のコマ収差を示す図である。各収差図において、Yは像高をそれぞれ示している。非点収差図のTで示す線は、タンジェンシャル像面の像面湾曲を示し、Sで示す線はサジタル像面の像面湾曲を示す。また、コマ収差図の縦軸スケールは、5目盛分で50ミクロンを示す。各収差図から明らかなように、第2実施例の投影光学系では、大きな投影視野(有効径204mm)の全体に亘って諸収差が良好に補正され、良好な光学性能が確保されていること、特に非点収差図を参照すると像面の平坦性が良好に確保されていることがわかる。
本発明に係る投影光学系の第2の実施形態においては、投影光学系の収差を良好に補正することが可能であって、各種基板を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、第2、第3、第4および第5レンズG2〜G5の外径が抑えられたコンパクトな投影光学系で、低いコストで実現することができる。
【実施例3】
【0055】
〔第3実施例〕
図3は、本実施形態の第3実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。第3実施例にかかる投影光学系は、第1 物体側P1から第2 物体側P2側の順に、2枚のレンズL1〜L2から構成される正屈折力の第1レンズ群G1と、2枚のレンズL3〜L4から構成される負屈折力の第2レンズ群G2と、2枚のレンズL5〜L6から構成される正屈折力の第3レンズ群G3と、開口絞りASと、2枚のレンズL7〜L8から構成される正屈折力の第4レンズ群G4と、2枚のレンズL9〜L10から構成される負屈折力の第5レンズ群G5と、2枚のレンズL11〜L12から構成される正屈折力の第6レンズ群G6とが備えられている。また、第2レンズ群G2の一対の負レンズL3〜L4に互いに向き合った凹面の組を形成し、第5レンズ群G5の一対の負レンズL9〜L10に互いに向き合った凹面の組を形成する。以上のように、投影光学系の第3の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
次に、本投影光学系の諸元の値を下表に示す。正・負・正・開口絞り・正・負・正の屈折力配置を採用しており、開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正することができる。
また、正の屈折力を持つ第1 レンズ群G1は、第1 物体側P1側のテレセントリック性を維持させながら主に歪曲収差の補正に寄与している。また、正の屈折力を持つ第6レンズ群G6も、第2物体側P2側のテレセントリック性を維持しながら主に歪曲収差の補正に寄与している。
負の屈折力を持つ第2 レンズ群G2および第5 レンズ群G5は、主に全系のペッツバール和を補正する機能を有し、広い露光領域にわたる像面の平坦化を図っている。正の屈折力を持つ第3
レンズ群G3は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第2レンズ群G2は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第3レンズ群G3中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第3レンズ群G3から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0056】
また、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第5レンズ群G5は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第4レンズ群G4中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第4レンズ群G4から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0057】
【0058】
上記の結果によれば、以下の条件(1) 〜 (3) を満足している。
(1) 0 .3 < f1 / fa < 1.3
(2) −0.36 < f2 / fa < −0.08
(3) 0.13 < f3 / fa < 0.5
上記条件(1)の上限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生する。更に第2および第3レンズ群G3の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(1)の下限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(2)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(2)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(2)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(3)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(3)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(3)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0059】
更に、以下の条件( 4 ) 〜 ( 7 ) を満足している。
(4) 0.45 <| β | <2.2
(5) 0 .3 <f6 / fb <1.3
(6) −0.36 <f5 / fb <−0.08
(7) 0.13 <f4 / fb <0.5
上記条件(4)は、投影光学系の前群と後群が開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正する最適な倍率範囲を規定している。条件(4)の倍率範囲を超える場合には、前群と後群の非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を補正することは困難となり、好ましくない。
上記条件(5)の上限を超える場合には、第2物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生する。更に第4および第5レンズ群G5の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(5)の下限を超える場合には、第2物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(6)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(6)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(6)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(7)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(7)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(7)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0060】
また、以下の条件( 8 ) 〜 ( 9 ) を満足している
(8) −1.8 <r1 / r2 <−0.6
(9) 1.0 <r3 / r2 <1.8
上記条件(8) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(8) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
上記条件(9) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(9)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(9)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0061】
更に、以下の条件(10) 〜 (11) を満足している。
(10) 1.0<r4/r5<1.8
(11) −1.8<r6 / r5 <−0.6
上記条件(10) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(10)の上限を超える場合には、負の球面収差と上側のコマ収差が大きく発生し、逆に、上記条件(10)の下限を超える場合には、正の球面収差と下側のコマ収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(11) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(11) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
【0062】
以上のように、投影光学系の第3の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。一方、構成レンズの枚数が10枚を下回る場合には、露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
【0063】
以上のように、投影光学系の第3の実施形態では、物体側及び像側共に光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。 投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0064】
第1レンズ群G1に1枚の正屈折率レンズで構成され、第6レンズ群G6に1枚の正屈折率レンズで構成される。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、正屈折率レンズで構成されるレンズ群が、大型レンズの枚数が少なくなり、製造誤差の発生も少なく、更なるコスト削減の要因となる。また、光学系全体の透過率も向上し、レンズから発熱の問題も低減できる。
【0065】
以上のように、投影光学系の第3の実施形態では、第1レンズ群G1に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有し、第6レンズ群G6に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有する。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、曲率半径の絶対値が同じである曲面で構成されたレンズは、製造コスト削減の要因となる。レンズ製造精度の向上が容易となる。
【0066】
以上のように、投影光学系の第3の実施形態では、第1物体側P1と第2物体側P2との間の投影倍率が−1である。開口絞りに関して対称的に配置された前群と後群とからなり、コマ収差、歪曲収差および倍率色収差がゼロに補正ことが可能とあり、製造コストが削減され、好ましい。
【0067】
図9は、第3実施形態における投影光学系の非点収差および歪曲収差を示す図である。
図10は、第3実施形態における投影光学系のコマ収差を示す図である。各収差図において、Yは像高をそれぞれ示している。非点収差図のTで示す線は、タンジェンシャル像面の像面湾曲を示し、Sで示す線はサジタル像面の像面湾曲を示す。また、コマ収差図の縦軸スケールは、5目盛分で50ミクロンを示す。各収差図から明らかなように、第3実施例の投影光学系では、大きな投影視野(有効径204mm)の全体に亘って諸収差が良好に補正され、良好な光学性能が確保されていること、特に非点収差図を参照すると像面の平坦性が良好に確保されていることがわかる。
本発明に係る投影光学系の第3の実施形態においては、投影光学系の収差を良好に補正することが可能であって、各種基板を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、第2、第3、第4および第5レンズG2〜G5の外径が抑えられたコンパクトな投影光学系で、低いコストで実現することができる。
【実施例4】
【0068】
〔第4実施例〕
図4は、本実施形態の第4実施例にかかる投影光学系のレンズ構成を示す図である。第4実施例にかかる投影光学系は、第1物体側P1から第2物体側P2側の順に、2枚のレンズL1〜L2から構成される正屈折力の第1レンズ群G1と、2枚のレンズL3〜L4から構成される負屈折力の第2レンズ群G2と、2枚のレンズL5〜L6から構成される正屈折力の第3レンズ群G3と、開口絞りASと、2枚のレンズL7〜L8から構成される正屈折力の第4レンズ群G4と、2枚のレンズL9〜L10から構成される負屈折力の第5レンズ群G5と、2枚のレンズL11〜L12から構成される正屈折力の第6レンズ群G6とが備えられている。また、第2レンズ群G2の一対の負レンズL3〜L4に互いに向き合った凹面の組を形成し、第5レンズ群G5の一対の負レンズL9〜L10に互いに向き合った凹面の組を形成する。以上のように、投影光学系の第4の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
次に、本投影光学系の諸元の値を下表に示す。正・負・正・開口絞り・正・負・正の屈折力配置を採用しており、開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正することができる。
また、正の屈折力を持つ第1レンズ群G1は、第1物体側P1側のテレセントリック性を維持させながら主に歪曲収差の補正に寄与している。また、正の屈折力を持つ第6レンズ群G6も、第2物体側P2側のテレセントリック性を維持しながら主に歪曲収差の補正に寄与している。
負の屈折力を持つ第2レンズ群G2および第5 レンズ群G5は、主に全系のペッツバール和を補正する機能を有し、広い露光領域にわたる像面の平坦化を図っている。正の屈折力を持つ第3レンズ群G3は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第2レンズ群G2は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第3レンズ群G3中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第3レンズ群G3から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0069】
また、正の屈折力を持つ第4レンズ群G4は、主に球面収差の補正に寄与するとともに、非点収差と像面湾曲の補正に寄与している。ここで、互いに向き合った凹面の組を形成する一対の負レンズを持つ第5レンズ群G5は、この凹面によって正のペッツバール和を発生させて、第4レンズ群G4中の正レンズ成分から発生する負のペッツバール和を補正するとともに、正屈折力の第4レンズ群G4から発生する負の球面収差を補正する機能を有している。
【0070】
【0071】
上記の結果によれば、以下の条件(1) 〜 (3) を満足している。
(1) 0 .3 < f1 / fa < 1.3
(2) −0.36 < f2 / fa < −0.08
(3) 0.13 < f3 / fa < 0.5
上記条件(1)の上限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生する。更に第2および第3レンズ群G3の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(1)の下限を超える場合には、第1物体側P1側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(2)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(2)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(2)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(3)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(3)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(3)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0072】
更に、以下の条件( 4 ) 〜 ( 7 ) を満足している。
(4) 0.45 < | β | < 2.2
(5) 0 .3 < f6 / fb < 1.3
(6) −0.36 < f5 / fb < −0.08
(7) 0.13 < f4 / fb < 0.5
上記条件(4)は、投影光学系の前群と後群が開口絞りに関して極力対称性を持たせているため、非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を極めて良好に補正する最適な倍率範囲を規定している。条件(4)の倍率範囲を超える場合には、前群と後群の非対称収差、特にコマ収差、歪曲収差を補正することは困難となり、好ましくない。
上記条件(5)の上限を超える場合には、第2物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、正の歪曲収差が大きく発生する。更に第4および第5レンズ群G5の外径が大きくなり、製造コストがかさむ。逆に上記条件(5)の下限を超える場合には、第2
物体側P2側のテレセントリック性が崩れて、負の歪曲収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(6)では、主に全系のペッツバール和および球面収差を良好に補正するためである。上記条件(6)の上限を超える場合には、正の像面湾曲と正の球面収差が大きく発生し、逆に、上記条件(6)の下限を超える場合には、負の像面湾曲と負の球面収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(7)は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(7)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(7)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0073】
また、以下の条件(8) 〜 (9) を満足している
(8) −1.8 < r1 / r2 < −0.6
(9) 1.0 < r3 / r2 < 1.8
上記条件(8) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(8) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
上記条件(9) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(9)の上限を超える場合には、正の球面収差と正の像面湾曲収差が大きく発生し、逆に、上記条件(9)の下限を超える場合には、負の球面収差と負の像面湾曲収差が大きく発生するため好ましくない。
【0074】
更に、以下の条件(10) 〜 (11) を満足している。
(10) 1.0 < r4 / r5 < 1.8
(11) −1.8 < r6 / r5 < −0.6
上記条件(10) は、主に球面収差と像面湾曲収差を良好に補正するためである。上記条件(10)の上限を超える場合には、負の球面収差と上側のコマ収差が大きく発生し、逆に、上記条件(10)の下限を超える場合には、正の球面収差と下側のコマ収差が大きく発生するため好ましくない。
上記条件(11) は、第2レンズ群G2における互いに向かい合った凹面の最適な形状を規定するものである。ここで、条件(11) の範囲から外れる場合には、この気体レンズの形状の対称性がくずれコマ収差の発生を招き、それに加えて球面収差、ペッツバール和の補正が困難となるため好ましくない。
【0075】
以上のように、投影光学系の第4の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。
レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。一方、構成レンズの枚数が10枚を下回る場合には、露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
【0076】
以上のように、投影光学系の第4の実施形態では、物体側及び像側共に光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。 投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0077】
第1レンズ群G1に1枚の正屈折率レンズで構成され、第6レンズ群G6に1枚の正屈折率レンズで構成される。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、正屈折率レンズで構成されるレンズ群が、大型レンズの枚数が少なくなり、製造誤差の発生も少なく、更なるコスト削減の要因となる。また、光学系全体の透過率も向上し、レンズから発熱の問題も低減できる。
【0078】
以上のように、投影光学系の第4の実施形態では、第1レンズ群G1に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有し、第6レンズ群G6に曲率半径の絶対値が同じである曲面が2面以上を有する。第1および第6レンズ群G6が相対的に大型のレンズであるため、曲率半径の絶対値が同じである曲面で構成されたレンズは、製造コスト削減の要因となる。レンズ製造精度の向上が容易となる。
【0079】
図11は、第4実施形態における投影光学系の非点収差および歪曲収差を示す図である。
図12は、第4実施形態における投影光学系のコマ収差を示す図である。各収差図において、Yは像高をそれぞれ示している。非点収差図のTで示す線は、タンジェンシャル像面の像面湾曲を示し、Sで示す線はサジタル像面の像面湾曲を示す。また、コマ収差図の縦軸スケールは、5目盛分で50ミクロンを示す。各収差図から明らかなように、第4実施例の投影光学系では、大きな投影視野(有効径204mm)の全体に亘って諸収差が良好に補正され、良好な光学性能が確保されていること、特に非点収差図を参照すると像面の平坦性が良好に確保されていることがわかる。
本発明に係る投影光学系の第4の実施形態においては、投影光学系の収差を良好に補正することが可能であって、各種基板を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、第2、第3、第4および第5レンズG2〜G5の外径が抑えられたコンパクトな投影光学系で、低いコストで実現することができる。