(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部電極用金属成分がNiであり、前記端子電極用金属成分がCuであり、前記連結電極は、Ni-Cu合金により主として構成される請求項2に記載の積層電子部品。
前記第1中間絶縁領域に前記連結電極が存在する割合は、10%以上であり、前記第2中間絶縁領域に前記連結電極が存在する割合は、10%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の積層電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0020】
第1実施形態
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。素子本体4は、第1内部電極層12および第2内部電極層13を有し、内側誘電体層10を挟むように、これらの内部電極層12,13が交互に積層してある。
【0021】
素子本体4は、その積層方向(Z軸方向)の両端面に、外側誘電体層14を有する。交互に積層される一方の第1内部電極層12は、素子本体4の第1側端面5に形成してある第1端子電極6に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の第2内部電極層13は、素子本体4の第2側端面7に形成してある第2端子電極8に対して電気的に接続してある。
【0022】
素子本体4の第1側端面5と第2側端面7とは、X軸方向に沿って相互に対向している。
図1〜
図4において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、Z軸が誘電体層10の積層方向に一致し、X軸は、内部電極層12および13の引出方向に一致する。素子本体4は、Y軸方向にも所定の幅を有する。
【0023】
内側誘電体層10および外側誘電体層14の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各内側誘電体層10,11の厚みは、特に限定されないが、0.5μm〜数十μmのものが一般的である。また、外側誘電体層14からなる外層部の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0024】
第1内部電極層12および第2内部電極層13の材質は、特に限定されず、たとえばNi、Pd、Ag、Cuなどが例示されるが、好ましくは、NiまたはNi合金である。
【0025】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Cu等の少なくとも1種、又はそれらの合金を用いることができる。端子電極6および8としては、通常、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金等が使用される。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常2〜50μm程度である。
【0026】
端子電極6および8は、単一層で構成しても良いが、複数の層で構成しても良い。いずれにしても、素子本体4の側端面5または7に直接に接触する端子電極6および8の部分は、内部電極層12および13の主成分と異なる金属を主成分とすることが好ましい。たとえば内部電極層12および13の主成分をNiとする場合には、端子電極6および8は、Cuを主成分とする金属で構成することが好ましい。後述するように、カーケンドール効果による金属拡散を利用して連結電極24を形成し易くするためである。
【0027】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.2〜5.7mm)×横(0.1〜5.0mm)×厚み(0.1〜3.2mm)程度である。
【0028】
本実施形態では、第1内部電極層12の第1側端面5方向の端部には、第1側端面5に露出して第1端子電極6に接続する第1リード部22が第1内部電極層12と同一平面状に形成してある。また、第2内部電極層13の第2側端面7方向の端部には、第2側端面7に露出して第2端子電極8に接続する第2リード部23が第2内部電極層13と同一平面状に形成してある。
【0029】
第1内部電極層12の第2側端面7方向の端部と、第2端子電極8との間には、第1中間絶縁領域20が形成してある。第1中間絶縁領域20は、Z軸方向に隣接する第2リード部23の間に形成され、内側誘電体層10と繋がっている。第2内部電極層23の第1側端面5方向の端部と、第1端子電極6との間には、第2中間絶縁領域21が形成してある。
【0030】
図2に示すように、第1中間絶縁領域20には、当該第1中間絶縁領域20を挟んで対向する第2リード部23の相互を接続するようにランダムに形成される微小クラックに埋め込まれる連結電極24が形成してある。本実施形態では、連結電極24は、後述するように、端子電極8の主成分を構成するCuと、リード部23の主成分を構成するNiとの合金で構成される。なお、本発明における微小クラックとは、製品としての特性値に影響を与えない程度の極微小のクラックを意味する。
【0031】
これらの連結電極24は、後述する拡散現象を利用したカーケンドール効果により形成されることから、端子電極8と素子本体4との界面からX軸方向に所定長さL1の範囲で形成される。端子電極8と素子本体4との界面からX軸に沿って第1内部電極層22の端部までの距離L0は、所定長さL1よりも長く、連結電極24の存在により、第1内部電極層12と第2内部電極層13とが短絡することは無い。所定長さL1は、カーケンドール効果の及ぶ範囲に対応し、一般的には、5〜20μmである。これに対して、距離L0は、L0=30〜100μmである。
【0032】
図2に示す連結電極24は、第2リード部23で挟まれる全ての第1中間絶縁領域20に形成される必要は無いが、好ましくは10%以上(存在割合)の第1中間絶縁領域20に連結電極24が形成される。連結電極の存在割合を高めることで、リード部23と端子電極8との電気的接続が良好に確保され、静電容量不良の発生を防ぐことができる。
【0033】
なお、連結電極24の存在割合(%)は、たとえば以下のようにして決定される。すなわち、同一の素子本体4におけるリード部23の付近を顕微鏡で観察した場合に、T個の第1中間絶縁領域20のうちのX個の第1中間絶縁領域20に連結電極24が観察され、残り(T−X)個の第1中間絶縁領域20には観察されなかったとする。その場合には、連結電極24の存在割合(%)は(100×X/T)%となる。連結電極24が観察される各第1中間絶縁領域20には、複数の連結電極24が存在する場合もある。ただし、T=20以上である。
【0034】
また、
図2に示すように、第2リード部23に接続する連結電極24の基準厚みTbは、第2リード部23の厚みTaに対して、好ましくは5〜100%の大きさである。連結電極24の基準厚みTbは、(Tb1+Tb2)/2で表すことができる。なお、Tb1およびTb2は、連結電極24が、それぞれ近接するリード部23に接触する幅である。リード部23の厚みTaと連結電極24の基準厚みTbは、複数の連結電極24について測定される平均値で表される。
【0035】
連結電極24の基準厚みTbは、第1中間絶縁領域20に形成されるクラックの大きさに基づき決定される。すなわち、連結電極24は、第1中間絶縁領域20に積極的に形成される微小クラックに、合金成分がカーケンドール効果により入り込むことを利用して形成される。そのため、連結電極24の基準厚みTbが大きいと言うことは、第1中間絶縁領域20に形成される微小クラックの基準幅が大きいことを意味し、品質に悪影響を与えるおそれがある側端面の割れ・ヒビの発生率が高くなる。そのため、連結電極24の基準厚みTbは、上記の範囲が好ましい。
【0036】
上記の説明では、
図2に基づき、第1中間絶縁領域20における連結電極24に関して述べたが、
図1に示す第2中間絶縁領域21における連結電極24に関しても同様である。
【0037】
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
【0038】
まず、
図3(A)に示すように、PETフィルム等で構成してある支持シート30の上に、ドクターブレード法などでグリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、焼成後に
図1に示す内側誘電体層10となる部分である。
【0039】
次に、
図3(B)に示すように、グリーンシート10aの上に、スクリーン印刷法などで、
図1に示す第1内部電極層12または第2内部電極層13となる内部電極パターン層12aまたは13aを形成する。
【0040】
次に、
図3(C)に示すように、内部電極パターン層12aまたは13aの隙間に、余白パターン層10bをスクリーン印刷法などで形成する。余白パターン層10bは、
図1に示す中間絶縁領域20または21の一部となる部分である。余白パターン層10bは、グリーンシート10aと同様な塗料組成でも良いが、本実施形態では、素子本体4の焼成後に内側誘電体層10よりも微小クラックが発生しやすい塗料組成にしてある。微小クラックを利用して
図2に示す連結電極24を形成するためである。
【0041】
グリーンシート10aに比較して、微小クラックを発生させやすい余白パターン層10bの塗料組成は、たとえば以下のように調整して得ることができる。たとえばグリーンシート10aのための塗料組成に比較して、余白パターン層10bの塗料組成を、以下のように調節する。
【0042】
グリーンシート10aの塗料に比較して、余白パターン層10bの塗料では、セラミック粉末の粒径を大きくする。たとえばグリーンシート10aの塗料に含まれるセラミック粉末の1.3〜2.0倍の粒径のセラミック粉末を用いる。また、グリーンシート10aの塗料に比較して、余白パターン層10bの塗料では、バインダ樹脂の添加量を増やして余白パターン層の密度をグリーンシート10aより小さくする。
【0043】
次に、
図3(C)に示すグリーンシート10a、電極パターン層12a(または13a)および余白パターン層10bで構成されるユニットU1を、支持シート30から剥がして、
図4に示すように、金型40の上に先に積層してある外装用グリーンシート15の上に順次積層してグリーン積層体4aを形成する。ユニットU1を積層する際には、電極パターン層12aと13aとが交互になるように積層する。ユニットU1を所定の枚数で積層した後には、その上に、複数の外装用グリーンシート15を積層する。外装用グリーンシート15は、焼成後に、
図1に示す外側誘電体層14となる部分である。
【0044】
グリーンシート10a,11aを形成するための誘電体用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。本実施形態では、これらのペーストは、有機溶剤系ペーストである。
【0045】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0046】
内部電極パターン12a,13aを形成するための内部電極用ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0047】
なお、
図4では、図示の容易化のために、内部電極層12aおよび13aの積層数を少なく図示してあるが、数層から数百層と自由に設定することができる。グリーン積層体4aにおいて、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、パターン12a,13aのX軸に沿って、半パターンずらしてある直線の繰り返しパターンである。また、パターン12a,13aのY軸に沿って見れば、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、同じピッチ長さの分離した直線パターンである。
【0048】
グリーン積層体4aは、切断予定線50に沿って切断される。
図4では、X軸方向の切断予定線50のみを図示してあるが、Y軸方向にも切断予定線が形成され、これらの切断予定線に沿って切断され、焼成前のグリーンチップが得られる。
【0049】
次に、これらのグリーンチップに脱バインダ処理および焼成処理を施す。脱バインダ処理および焼成処理の諸条件は特に限定されないが、焼成温度としては、たとえば1000〜1400℃である。
【0050】
その後に、
図1に示す焼成後の素子本体4の両側端面5および7を研磨し、各側端面5および7に内部電極層10および12のリード部22および23の端部を露出させる。研磨処理としては、回転バレル研磨、遠心バレル研磨、振動バレル研磨、渦流バレル研磨等のバレル研磨、サンドブラスト研磨が挙げられる。この中でも、効率的な観点から遠心バレル研磨、回転バレルが好ましい。ところで、バレル研磨は一般的に水や有機溶剤などの溶媒ともに研磨対象物を研磨する湿式バレル研磨と、溶媒を用いない乾式バレル研磨の2種類に分けられるが、乾式バレル研磨の場合、条件によっては、端面のみではなく、他の表面にカケを発生させる場合があるため、本発明においては、適切な力を付与するといった観点から湿式バレル研磨が好ましい。
【0051】
その後に、素子本体4の両側端面5および7に端子電極6および8を形成するための端子電極ペーストを塗布する。その後に、端子電極ペーストの焼き付け処理を行う。
【0052】
端子電極ペーストの焼き付け条件は、カーケンドール効果が有効に生じて、
図2に示すように、中間絶縁領域20および21に形成された微小クラックに合金が入り込み連結電極24が形成され易いように設定される。連結電極24を構成する合金は、端子電極ペーストに含まれる金属(たとえばCu)と内部電極層12または13を構成する金属(たとえばNi)との合金であり、たとえばCu−Ni合金で構成される。
【0053】
このような焼き付け処理時の具体的な条件は、端子電極ペーストに含まれる金属によっても異なるが、たとえば焼き付け温度が、好ましくは、710〜850℃であり、より好ましくは、710〜800℃であり、雰囲気ガスが、N
2とH
2との混合ガスである。
【0054】
本実施形態では、端子電極ペーストが焼き付けされた後に、メッキ処理されて、メッキ膜が積層され、
図1に示す第1端子電極6および第2端子電極8が形成される。このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0055】
本実施形態では、
図4に示す余白パターン層10bが
図1に示す中間絶縁領域20および21の一部となり、これらに微小クラックが入りやすくなっている。このため、特に焼成後の素子本体4のバレル研磨時に、
図2に示す所定長さL1の領域内に所定の厚みの微小クラックが所定の割合で形成される。
【0056】
そして、端子電極6,8の下地電極を構成する電極ペーストの焼き付け時に、カーケンドール効果により、端子電極6,8と内部電極層12,13との接続界面から内部電極層6,8のリード部22,23に向けて、金属拡散が発生する。そのため、近接するリード部22,23に位置する中間絶縁領域20,21に形成してある微小クラックに合金成分が入り込み、所定長さL1の範囲内に連結電極24が所定の割合で容易に形成される。
【0057】
また、カーケンドール効果による金属拡散を利用して連結電極24を形成しているために、所定長さL1の範囲を超えて連結電極24が形成されるおそれは少なく、内部電極層12,13間の短絡も有効に防止することができる。
【0058】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2では、近接するリード部22,23相互が、ランダムに形成される複数の連結電極24により電気的に接続され、仮に一部のリード部22,23と端子電極6,8との接続が図れなくとも、他のリード部22,23と端子電極6,8との電気的接続が補完することになる。そのため、リード部22,23と端子電極6,8との電気的接続が良好に確保され、静電容量不良の発生を防ぐことができる。
【0059】
さらに、一般的には形成されない方が良いとされている微小クラックに、カーケンドール効果を利用して連結電極24を形成するために、製造工程を大幅に変更する必要がなく、量産性にも適している。
【0060】
第2実施形態
上述した実施形態では、
図4に示す余白パターン層10bの塗料組成を、グリーンシート10aに比較して、素子本体4の焼成後に、中間絶縁領域20および21において微小クラックを発生させやすい塗料組成としている。本実施形態では、余白パターン層10bの塗料組成を、従来と同様な塗料組成で構成し、
図1に示す焼成後の素子本体4の両側端面5および7をバレル研磨する際に、その研磨条件を特定の条件に設定することで、中間絶縁領域20および21に微小クラックを発生させる。
【0061】
具体的には、
図2に示す所定長さL1の範囲内で、所定厚み(Tb=(Tb1+Tb2)/2)の微小クラックが生じるように、研磨処理時間、研磨メディア量、素体の量、回転速度などを調節する。
【0062】
ちなみに、従来では、中間絶縁領域20および21に微小クラックなどが発生しない条件を採用することが一般的であった。本実施形態では、むしろ、中間絶縁領域20および21に微小クラックが適度に発生する条件で研磨処理を行う。本実施形態におけるその他の製造方法は、第1実施形態と同様であり、同様な積層セラミックコンデンサ2が得られる。
【0063】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサにおいても、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサと同様な作用効果を奏する。ただし、本実施形態では、余白パターン層10bを従来と同様な塗料組成で構成するために、
図1に示す中間絶縁領域20および21の所定範囲内にのみ微小クラックを発生させるための研磨条件の選択が、第1実施形態よりも厳しくなる。
【0064】
そこで、本発明では、第1実施形態に示す方法と第2実施形態に示す方法とを組み合わせて、中間絶縁領域20および21の所定範囲内に、所定幅の微小クラックを所定の割合で形成しても良い。すなわち、中間絶縁領域20および21の所定範囲内に所定幅の微小クラックを所定の割合で形成するために、余白ペーストの組成と研磨条件との双方を適切に選択するようにしても良い。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば中間絶縁領域20および21の所定範囲内に所定幅の微小クラックを所定の割合で形成するための方法は、上述した実施形態に限定されず、たとえばセラミック粉末の粒径、バインダ量を調整することによっても可能である。これらを調整することで、L1部とL1よりも深い所で焼結が異なり、L1部の密度を低くすることができる。これにより、バレルなどにより、微小クラックを形成することができる。
【0066】
また、本発明に係る積層電子部品は、上述した積層セラミックコンデンサに限定されず、積層サーミスタ、積層インダクタ、積層チップバリスタなどであっても良い。すなわち、積層電子部品の種類によっては、素子本体4は、誘電体層以外のセラミック層で構成してあっても良い。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0068】
実施例1
内側および外側グリーンシート用ペースト、余白パターン層用ペースト
まず、セラミック粉末としてBaTiO
3 系粉末:100重量部と、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB):6重量部と、溶剤としてエタノール:19重量部、溶剤としてn−プロパノール:19重量部と、溶剤としてキシレン:14重量部、溶剤としてミネラルスピリット:7重量部、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP):3重量部と、をボールミルでスラリー化して内側グリーンシート用ペーストを得た。
なお、内側グリーンシート用ペーストに用いたポリビニルブチラールの分子量は、92000であった。
【0069】
次に、セラミック粉末としてBaTiO
3 系粉末:100重量部と、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB):6重量部と、溶剤としてエタノール:15重量部、溶剤としてn−プロパノール:15重量部と、溶剤としてキシレン:7重量部、溶剤としてトルエン:11重量部、溶剤としてミネラルスピリット:10重量部、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP):3重量部と、をボールミルでスラリー化して外側グリーンシート用ペーストを得た。BaTiO
3 系粉末の径として、SEMで観察測定した径のD50径が0.5μmのものを用いた。
なお、外側グリーンシート用ペーストに用いたポリビニルブチラールの分子量は、92000であった。
【0070】
次に、70℃の温度で、分子量13万のエチルセルロース樹脂:4重量部と分子量23万のエチルセルロース樹脂:4重量部とをイソボニルアセテート:92重量部に撹拌溶解することにより有機ビヒクルを作製した。すなわち、エチルセルロース樹脂の8重量%イソボニルアセテート溶液を有機ビヒクルとした。次いで、BaTiO
3 粉末:95.70重量部、有機ビヒクル:104.36重量部、ポリエチレングリコール系分散剤:1.0重量部、フタル酸ジオクチル(可塑剤):2.61重量部、イソボニルアセテート:19.60重量部、アセトン57.20重量部、およびイミダゾリン系界面活性剤(帯電助剤):0.4重量部を、ボールミルを使用して混合してペースト化した。BaTiO
3 系粉末の径として、SEMで観察測定した径のD50径が0.7μmのものを用いた。次いで、得られたペーストを、エバポレータおよび加熱機構を備えた攪拌装置を使用して、アセトンを蒸発させることにより、除去し、余白パターン用ペーストを得た。
【0071】
内部電極パターン層用ペーストの作製
Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極パターン層用ペーストを作製した。
【0072】
グリーンチップの形成
次いで、上記にて作製したグリーンシート用ペーストと、内部電極パターン層用ペーストと、を用い、以下のようにして、
図1に示す積層セラミックチップコンデンサ2を製造した。
【0073】
まず、支持体としてのPETフィルム上に、内側グリーンシート用ペーストをドクターブレード法により、所定厚みで塗布し、乾燥することでグリーンシートを作製した。
【0074】
次に、得られた内側グリーンシートの上に、内部電極ペーストを用いて、所定パターンの内部電極パターン層12aまたは13a(
図3(B)参照)を形成した。また、内部電極パターン層12aまたは13aのパターン隙間には、余白パターン層10bを形成した。
【0075】
一方、上記とは別に、外側グリーンシート用ペーストを用いて、PETフィルム上に外側グリーンシートを形成した後、PETフィルムからシートを剥離した。
【0076】
次いで、内部電極パターン層12aまたは13aを形成した内側グリーンシート10aを複数積層すると共に、外側グリーンシート14aを複数積層することにより、
図4に示すグリーン積層体4aを得た。そして、得られたグリーン積層体4aを所定サイズに切断して、グリーンチップを得た。
【0077】
グリーンチップの焼成等
次に、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10
−6PaにN
2 とH
2 との混合ガスを水蒸気に通して調整した)の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したN
2ガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
【0078】
得られた焼結体(素子本体4)の両側端面5,7を遠心バレルにて研磨した。研磨条件は、湿式とし、処理時間を90分、回転数を200rpmとした。また、遠心バレル研磨に用いるポッドの体積に対して、チップと研磨メディアの総体積割合が50%となる充填量とし、残部に水を充填した。
【0079】
研磨後の素子本体4のサンプルを切断し、顕微鏡写真で確認したところ、中間絶縁領域20,21における所定長さL1の範囲内に、微小クラックが形成されることが確認できた。
【0080】
次に、その他の研磨後の素子本体4の両側端面に、端子電極ペースト(Cuを導電性材料の主成分として含む)を塗布し、これに750℃の温度条件にて焼き付け処理を行い、端子電極を形成して、
図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。
【0081】
端子電極ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したN
2 とH
2 との混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とした。得られた焼結体のサイズは、縦1.0mm×横0.5mm×高さ0.5mmであり、一対の内部電極層間に挟まれる内側誘電体層10の厚みは約1.0μm、内部電極層12の厚みは0.8μmであった。
【0082】
得られた積層セラミックコンデンサ2のサンプルを切断し、顕微鏡写真で確認したところ、
図2に示すように、中間絶縁領域20,21における所定長さL1の範囲内に形成された微小クラックの内部に合金が入り込み、連結電極24が形成されていることが確認できた。また、顕微鏡の観察視野内で、100個の中間絶縁領域20または21を調べ、連結電極24が形成された中間絶縁領域20,21の数を調べることで、連結電極の存在割合(%)を計算した。
【0083】
すなわち、同一の素子本体4におけるリード部の付近を顕微鏡で観察した場合に、T個の中間絶縁領域のうちのX個の中間絶縁領域に連結電極が観察され、残り(T−X)個の中間絶縁領域には観察されなかったとする。その場合には、連結電極24の存在割合(%)は(100×X/T)%となる。連結電極24が観察される各中間絶縁領域20には、複数の連結電極24が存在する場合もある。連結電極24の存在割合は、10個のサンプルの平均値である。結果を表1に示す。
【0084】
また、顕微鏡写真により、リード部23の厚みTaとリード部23に接続する連結電極24の基準厚みTbを求めた。基準厚みTbは、(Tb1+Tb2)/2で表すことができる。なお、Tb1およびTb2は、連結電極24が、それぞれ近接するリード部23に接触する幅である。リード部の厚みTaと連結電極24の基準厚みTbは、10個の連結電極24について測定される平均値で表される。リード部の厚みTaに対する連結電極24の基準厚みTbの比率を%で表した結果を表2に示す。
【0085】
また、このようにして得られたコンデンサのサンプルについて、静電容量(取得容量%)を求めた。取得容量は、以下のようにして求めた。LCRメーターを使用し、200個のコンデンサの静電容量を測定し、1.0μFを基準値として、0.9μFよりも低い場合を静電容量不良とした。200個のコンデンサ中で静電容量不良が発生した割合についての結果を表1に示す。
【0086】
また、このようにして得られたコンデンサのサンプルについて、割れ・ヒビの発生について評価した。割れ・ヒビの発生についての評価は、以下のようにして行った。
【0087】
コンデンサ100個の断面を研磨し、電子顕微鏡による観察によって割れ・ヒビの有無を確認した。ここで評価する割れ・ヒビとは、微小クラックとは異なり積層方向に隣接する複数の誘電体層をまたいでリード部を貫通するような態様で発生するものを意味する。割れ・ヒビの発生は、耐電圧特性の低下や高温負荷寿命の低下等電気的特性に対して大きく影響を及ぼすだけではなく、基板実装時の強度不足にもつながる。
【0088】
結果を表2に示す。表2において、○は、割れ・ヒビが存在しない(0個)を意味し、×は、割れ・ヒビが1個以上存在したことを意味する。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
実施例2
バレル研磨時間を40分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例3
バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
実施例4
バレル研磨時間を7分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
比較例1
バレル研磨時間を2分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
比較例2
得られた焼結体(素子本体4)に対してバレル研磨を行わないこととした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
実施例5
端子電極ペーストの焼き付け温度を710℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
実施例6
端子電極ペーストの焼き付け温度を720℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0098】
実施例7
端子電極ペーストの焼き付け温度を780℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
実施例8
端子電極ペーストの焼き付け温度を800℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
比較例3
端子電極ペーストの焼き付け温度を820℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
比較例4
端子電極ペーストの焼き付け温度を850℃とし、バレル研磨時間を15分とした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサのサンプルを作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
評価
表1に示すように、連結部の存在割合を、好ましくは10%以上とすることで、容量不良発生を防ぐことができることが確認された。また、表2に示すように、リード部の厚みTaに対する連結部の厚みTbの割合を、5〜100%とすることで、割れ・ヒビの発生を抑制できることが確認できた。