特許第5903923号(P5903923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903923
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】着座荷重検出装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/44 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   B60N2/44
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-32625(P2012-32625)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-166532(P2013-166532A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】桑原 武士
(72)【発明者】
【氏名】坂野 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 直子
(72)【発明者】
【氏名】宅間 摂
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105138(JP,A)
【文献】 特開2010−175312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の着座を検知する感圧スイッチを構成する複数の被接離部が所定間隔を空けて形成されるとともに該被接離部間を接続するスイッチ配線が形成された帯状の第1フィルムと、前記第1フィルムと対向配置され、前記感圧スイッチを構成し前記被接離部にそれぞれ接離する複数の接離部が形成された帯状の第2フィルムと、前記第1フィルム及び第2フィルムの間に配置され、前記複数の感圧スイッチに対向する位置に夫々貫通穴が形成されるとともに、前記各貫通穴に連通して大気に連通する空気通路が形成された離隔部材と、で構成され、
前記第1フィルム及び前記離隔部材の基端部に設けられ、前記感圧スイッチにより検出された荷重信号を出力する外部出力部と、
前記感圧スイッチと前記外部出力部との間を導通する導通部と、を備えた着座荷重検出装置であって、
前記導通部は、前記感圧スイッチが車両用シートの着座面に取り付けられるときに湾曲して取り付けられる湾曲部を備え、
前記湾曲部は、前記第2フィルムを除いた前記第1フィルム及び前記離隔部材により構成されており、
前記離隔部材は、前記湾曲部の前記感圧スイッチ側の端部において前記空気通路が開口し、
前記湾曲部の前記感圧スイッチ側の端部から前記外部出力部までの間の前記離隔部材は、前記空気通路が形成されていない中実部材である着座荷重検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに設置して乗員の着座荷重を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に装備されたシートベルトやエアバッグ等の各種安全装置の性能を向上させるため、シートに乗員が着座している状態を検知してこれらの安全装置をコントロールする場合がある。しかし、シートには人が着座する以外に荷物が置かれることもあり、人を荷物と区別して正しく判定することは、安全装置を正しく作動させるために極めて重要である。
【0003】
このような乗員の着座状態を検知するのに適するものとして、薄くて可撓性があるメンブレンスイッチが考えられ、そのようなメンブレンスイッチを使用した着座センサが特許文献1に開示されている。この着座センサは、直線状に形成された第一フィルムと、第一フィルムと同形状に形成され、第一フィルムに対向して配置される第二フィルムと、第一フィルムと第二フィルムとの間に対向して且つ離隔して配置され、荷重を受けた場合に当接して導通する2つのセンサセル(感圧スイッチ)のセンサ電極(接離部及び被接離部)と、第一フィルムと第二フィルムとの間に配置され、センサ電極に導通する導通部における導通電極(スイッチ配線)と、第一フィルムおよび第二フィルムの端部に結合され、導通電極を介してセンサ電極に導通されるコネクタ部とが記載されている。そして、この着座センサを車両前後方向および車両左右方向に対して斜めの方向を向くように座面に配置し、乗員が正しい姿勢で着座した場合に、乗員の臀部に当たる部分に二つのセンサセルが配置されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−157914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図16及び図17に示すように、直線状の着座センサについてはシートクッション102に抜け穴(挿入穴)104を設け、センサセル116はシートクッション102の表側である座面に配し、前記抜け穴104部分よりメンブレンスイッチ106の基端部108とコネクタ部110とを通し、コネクタ部110をシートクッション102の裏側に配置する場合が多い。この場合にはメンブレンスイッチ106の本体部は曲げられた状態で配置され、複数のフィルムが重ねられて形成されたメンブレンスイッチ106の曲げられた外側のフィルム(第1フィルム)112と内側のフィルム(第2フィルム)114との間で周長差が生じてしまう。そのため、センサセル(感圧スイッチ)116にも曲げによる応力の歪が波及し、例えばセンサセル116の第2フィルム114側が膨らんでしまい対向して電通させるフィルム間の距離や形状が変化する。そのため、センサがONしなかったり、所期の荷重より大きな荷重でONしたりして、乗員の適正な荷重が検出できないという問題があった。
【0006】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、着座荷重検出装置が曲げられて車両用シートクッションに配置される場合でも、乗員の着座状態を正しく検知する着座荷重検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、着座荷重検出装置において、乗員の着座を検知する感圧スイッチを構成する複数の被接離部が所定間隔を空けて形成されるとともに該被接離部間を接続するスイッチ配線が形成された帯状の第1フィルムと、前記第1フィルムと対向配置され、前記感圧スイッチを構成し前記被接離部にそれぞれ接離する複数の接離部が形成された帯状の第2フィルムと、前記第1フィルム及び第2フィルムの間に配置され、前記複数の感圧スイッチに対向する位置に夫々貫通穴が形成されるとともに、前記各貫通穴に連通して大気に連通する空気通路が形成された離隔部材と、で構成され、前記第1フィルム及び前記離隔部材の基端部に設けられ、前記感圧スイッチにより検出された荷重信号を出力する外部出力部と、前記感圧スイッチと前記外部出力部との間を導通する導通部と、を備えた着座荷重検出装置であって、前記導通部は、前記感圧スイッチが車両用シートの着座面に取り付けられるときに湾曲して取り付けられる湾曲部を備え、前記湾曲部は、前記第2フィルムを除いた前記第1フィルム及び前記離隔部材により構成されており、前記離隔部材は、前記湾曲部の前記感圧スイッチ側の端部において前記空気通路が開口し、前記湾曲部の前記感圧スイッチ側の端部から前記外部出力部までの間の前記離隔部材は、前記空気通路が形成されていない中実部材であることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、第1フィルム及び第2フィルムと両フィルムの間に配設された離隔部材とから主に形成された着座荷重検出装置が、車両用シートに湾曲して取り付けられると、湾曲したときに内側となる第2フィルムと外側となる第1フィルムとの間に周長差が生じる。そのため、従来は第1フィルムと第2フィルムとが、離隔部材に接着されていない貫通穴に対応する被接離部及び接離部において、第1フィルム及び第2フィルムのいずれか又は両方が、互いに離間する方向に膨らむか、互いに接近する方向に縮む等の歪が生じる。
【0010】
しかし、本件発明においては、感圧スイッチが車両用シートの着座面に取り付けられるときに湾曲して取り付けられる湾曲部は、第2フィルムを除いた第1フィルム及び離隔部材により構成され、第2フィルムを除いた分厚みが少なくなるので、湾曲部に生じていた周長差が減少する。さらに、湾曲部には第2フィルムがないので、感圧スイッチを構成する第2フィルムには湾曲部による歪が伝播されない。そのため、感圧スイッチにおいて、第1フィルムと第2フィルムとの間で周長差に基づく歪が軽減され、感圧スイッチの被接離部と接離部との離間距離が前記歪によって変化することを防止できる。これによって、着座荷重検出装置が湾曲されて配置された場合にも、乗員の着座荷重を高い精度で検出することができる。
また、離隔部材は、湾曲部において空気通路が形成されていない中実部材であるため、導通部において空気通路からの水分の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る着座荷重検出装置を車両用シートクッションの配置した状態を示す図。
図2】着座荷重検知装置の平面図。
図3】着座荷重検出装置のIII-III断面図。
図4】第1フィルムの一部を拡大して示す下面図。
図5】離隔部材の一部を拡大して示す平面図。
図6】第2フィルムの一部を拡大して示す平面図。
図7】着座荷重検出装置の側断面を示す概念図。
図8】着座荷重検出装置の回路図。
図9】別例の着座荷重検出装置の回路図。
図10】着座荷重検出装置が湾曲されて車両用シートに配置された状態を示す図。
図11図9の一部を拡大して示す図。
図12】別例の着座検出装置の第1フィルムを示す図。
図13】別例の着座検出装置の絶縁スペーサを示す図。
図14】別例の着座検出装置の第2フィルムを示す図。
図15】別例の着座検出装置の感圧スイッチ部分の断面図。
図16】従来の着座荷重検出装置の側断面を示す概念図。
図17】従来の着座荷重検出装置が湾曲されて車両用シートに配置された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下、本発明に係る着座荷重検出装置を車両用シートに実施した実施形態について図面を参照して説明する。図1には独座用の車両用シートのシートクッション2の座面を示す斜視図が描かれている。
【0014】
シートクッション2は、図1に示すように、ウレタン等から構成されるパッド部材4とパッド部材4の着座側表面を覆うように装着される布製(又は皮革製等)の表皮部材6とを備えている。シートクッション2のパッド部材4の上面には左右方向に延在する凹溝8が陥没形成されている。パッド部材4の座面の後方中央部には、パッド部材4の上面から下面に貫通する着座荷重検出装置10の基端部が挿入される挿入穴12が形成されている。
【0015】
着座荷重検出装置10は、対となった第1フィルム14と第2フィルム16とを離隔部材としての絶縁スペーサ18を介して重合することにより形成されるメンブレンスイッチ19から主に構成される。メンブレンスイッチ19は、図2及び図3に示すように、細長い帯状に形成されている。メンブレンスイッチ19には4つの感圧スイッチA,B,C,Dと、第1フィルム14において感圧スイッチA,B,C,Dの間を連結する感圧スイッチ間スイッチ配線(スイッチ配線)20と、一番基端側の感圧スイッチDと基端部に設けられたコネクタ部24との間に設けられ、感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線(スイッチ配線)22を備えた導通部26とを有している。
【0016】
第1フィルム14は、例えば厚さ0.1mmのPEN(ポリエチレンナフタレート)製で、図4に下面図で示すように、コネクタ部24のプラス及びマイナスの電極に夫々導通する感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22が略平行に印刷等で形成されている。第1フィルム14の感圧スイッチA,B,C,Dに対応する箇所は略円形で幅広に形成され、幅広に形成された箇所には各々一方の電極に導通するスイッチ配線20,22に接続される円形の被接離部28が印刷等で形成されている。
【0017】
絶縁スペーサ18は、例えば0.15mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製で、図5に平面図で示すように、感圧スイッチA,B,C,Dに対応する部分に厚み方向に貫通する円形の貫通穴30が夫々設けられている。各貫通穴30の側壁には厚み方向に貫通するとともに幅方向の寸法が0.15mmの空気通路32が開口し、空気通路32は一番基端側の感圧スイッチDの近傍において、第2フィルム16の端部に設けられた通気口33(図7参照)につながって大気と連通するようになっている。通気口33よりも基端部側の絶縁スペーサ18は、空気通路32が設けられていない断面矩形の中実状に形成されている(中実部材)。この中実状の部分により残部34が構成される。
なお、ここで述べた各数値は、実施の一例を示すものであり各々適宜変更可能である。
【0018】
第2フィルム16は、図6に平面図で示すように、導通部26を除いた部分について第1フィルム14と同形状に形成され、感圧スイッチA,B,C,Dに対応する部分には導通材からなる円形の接離部36が印刷等で形成されている。感圧スイッチA及び感圧スイッチCに対応する接離部36は感圧スイッチ間スイッチ配線20により電気的に接続され、感圧スイッチB及び感圧スイッチDに対応する接離部36は感圧スイッチ間スイッチ配線20により電気的に接続されている。また、感圧スイッチAC間を接続する感圧スイッチ間スイッチ配線20と、感圧スイッチBD間を接続する感圧スイッチ間スイッチ配線20とは、接続線35により電気的に接続されている。また、第2フィルム16は、図7に示すように、最も基端側の感圧スイッチDより少しコネクタ部24側に行ったところで終了し、当該終了位置からコネクタ部24までは第1フィルム14と絶縁スペーサ18とが接着剤が塗布された接着剤層25で張合わされて形成されている。第2フィルム16の裏面には粘着材27が設けられ、シートクッション2のパッド部材4の着座面に感圧スイッチA〜Dが固定されるようになっている。
【0019】
また、第2フィルム16と絶縁スペーサ18とについても前述の接着剤(接着剤層25)によって重ね合わせて接着され、第1フィルム、絶縁スペーサ及び第2フィルムの3つが重ね合わされて接着されて、外部から水分等が浸入しないようになっている。このようにフィルム等が重ね合わせて接着されることにより、各貫通穴30は第1フィルム14の被接離部28と第2フィルム16の接離部36とを接離・離間させる空間を形成する。第1フィルム14に配された円形状の被接離部(上方電極)28と、第2フィルム16に配された円形状の接離部(下方電極)36とが、貫通穴30を挟んで同心上に対向するように設けられ、感圧スイッチA,B,C,Dにおいて厚み方向の荷重が加わると、接離部36と被接離部28とが接触してオンされ、この接触によって流れる電流を検知するようになっている。感圧スイッチA,B,C,Dは、図8に示すように、基端側と先端側と夫々直列する2つの感圧スイッチA及び感圧スイッチCにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたとき、または感圧スイッチB及び感圧スイッチDにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたときにオンされて、電流が検知されるようになっている。そして、感圧スイッチA,C間のスイッチ配線と感圧スイッチB,D間のスイッチ配線とを繋ぐ接続線35によって、感圧スイッチA及び感圧スイッチDにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたとき、感圧スイッチB及び感圧スイッチCにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたときにも、オンされて電流が検知されるようになっている。
【0020】
メンブレンスイッチ19の基端部には外部出力部38が設けられている。外部出力部38は感圧スイッチ20で検出された荷重を出力するものであり、出力電極が形成されている。この外部出力部38にはコネクタが接続されてコネクタ部24を構成する。コネクタ部24は乗員の着座状態を判断する図略のECU(Electronic Control Unit)に連結されている。
【0021】
メンブレンスイッチ19の基端部が、図10及び図11に示すように、パッド部材4の挿入穴12に挿入され、基端部がシートクッション2の裏面において図略のフレームに固定される場合には、最も基端部側の感圧スイッチDからコネクタ部24側に少し移動した位置における導通部26が下方に湾曲されて湾曲部40が形成される。
【0022】
この湾曲部40において、第1フィルム14は円弧の外側になり伸長され、絶縁スペーサ18が円弧の内側になり圧縮される。しかし、図11に示すように、湾曲部40には第2フィルム16が設けられていないので、第2フィルム16が圧縮された絶縁スペーサ18より受ける圧縮力は小さく、第1フィルム14と第2フィルム16との間で周長差による長手方向のずれも極めて小さいものとなる。そのため、感圧スイッチA,B,C,Dにおける接離部36と被接離部28との間の距離に変動を生じさせることが少なく、正確な荷重の検出をおこなうことができる。
【0023】
そして、作動においては、図8の回路図に示すように、感圧スイッチA及び感圧スイッチCの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力される。そのため、荷重の際に接する面積が小さい荷物等により乗員荷重が検出されるのが防止され、この電流による着座検出信号によって、ECUがシートクッション2上に座っているのが人であると判断すると、例えばエアバック装置の作動を可能にしたり、シートベルトが非装着である旨の警告を発したりする。
【0024】
上記のように構成された着座荷重検出装置10によると、第1フィルム14及び第2フィルム16と両フィルム14,16の間に配設された絶縁スペーサ18とから主に形成された着座荷重検出装置10が、シートクッション2に湾曲して取り付けられると、湾曲したときに内側となる第2フィルムと外側となる第1フィルムとの間に周長差が生じる。そのため、従来は第1フィルムと第2フィルムとが離隔部材に接着されていない貫通穴に対応する被接離部及び接離部において、第1フィルム及び第2フィルムのいずれか又は両方が、互いに離間する方向に膨らむか、互いに接近する方向に縮む等の歪が生じる。
【0025】
しかし、本件発明においては、感圧スイッチA,B,C,Dがシートクッション2の着座面に取り付けられるときに湾曲して取り付けられる湾曲部40は、第2フィルム16を除いた第1フィルム14及び絶縁スペーサ18により構成され、第2フィルム16を除いた分厚みが少なくなるので、湾曲部40に生じていた周長差が減少する。さらに、湾曲部40には第2フィルム16がないので、感圧スイッチA,B,C,Dを構成する第2フィルム16には湾曲部40による歪が伝播されにくい。そのため、感圧スイッチA,B,C,Dにおいて、第1フィルム14と第2フィルム16との間で周長差に基づく歪が生じるのが防止され、感圧スイッチA,B,C,Dの被接離部28と接離部36との離間距離が前記歪によって変化することを防止できる。これによって、着座荷重検出装置10の導通部26が湾曲されて配置された場合にも、乗員の着座荷重を高い精度で検出することができる。
【0026】
また、絶縁スペーサ18は、湾曲部40において空気通路32が形成されていない中実部材であるため、導通部26において空気通路からの水分の浸入を防止することができる。なお、この空気通路32は、厚さ方向から貫通するものとしたが、これに限定されず、例えば離隔部材の長手方向に連続して貫設された貫通穴でもよい。
【0027】
なお、上記実施形態においては、感圧スイッチA及び感圧スイッチCの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるものとしたが、これに限定されず、例えば、図9の回路図で示すように、感圧スイッチA及び感圧スイッチBの組、感圧スイッチC及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるようにしてもよい。これによって、少なくとも隣り合う感圧スイッチが同時にオンされたときに、着座検出信号が出力されるため、検出範囲を容易に調整することが可能となり、検出を予定される人(例えば女性や子供)や物(例えば荷物やチャイルドシート)の大きさや形状に応じて、正確な着座状態を検出することができる。
【0028】
また、上記実施形態及びその別例のように、感圧スイッチA,B,C,Dの組(例えばAとCとで組)のいずれかにおいて、同じ組内の感圧スイッチが同時にONされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるものとしたが、これに限定されず、例えば、図12乃至図15に示すように、メンブレンスイッチ52における第1フィルム54には各電極に夫々電通して平行に設けられたスイッチ配線60と各スイッチ配線60の感圧スイッチK,L,M,Nに対応する位置に半月形状に設けられた一対の被接離部64とが設けられており、第2フィルム56には被接離部64に対向する位置に接離部66が設けられ、接離部66が被接離部64に接触すると対となって隣り合う被接離部64同士を電通させるものでもよい。この構成においても、絶縁スペーサ68には感圧スイッチK,L,M,Nに対応する位置に貫通穴70が設けられている。メンブレンスイッチ52の基端部が、パッド部材4の挿入穴12に挿入され、基端部がシートクッション2の裏面において図略のフレームに固定される場合には、前述と同様に最も基端部側の感圧スイッチNから(図略)コネクタ部側に少し移動した位置における(図略)導通部が下方に湾曲されて(図略)湾曲部が形成される。湾曲部は、前述の実施形態と同様に第2フィルムを除いた第1フィルムと絶縁スペーサとが接着剤等により重合されて構成される。
【0029】
この実施形態では、感圧スイッチK,L,M,Nのいずれか1つがONされれば、着座検出信号が出力される。その他の構成及び作用効果は、前述の実施形態と同様である。
【0030】
また、メンブレンスイッチは一本の帯状のものに限定されず、例えば感圧スイッチが配置された検出部が二股や三股に分かれたものでもよい。
【0031】
また、導通部16は、全体に亘って第2フィルム16を除いた第1フィルム14と絶縁スペーサ18とで構成されるものとしたが、これに限定されず、例えば、導通部のうち取付けられる際に湾曲される部分(湾曲部)だけが、第2フィルム16を除いた第1フィルム14と絶縁スペーサ18とで構成されるものでもよい。
【0032】
また、導通部26を残部34において空気通路32のない中実部材としたが、これに限定されず、例えば残部において空気通路が設けられていてもよい。
【0033】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。
【符号の説明】
【0034】
2…シートクッション、10…着座荷重検出装置、14…第1フィルム、16…第2フィルム、18…離隔部材(絶縁スペーサ)、19…着座荷重検出装置(メンブレンスイッチ)、20…スイッチ配線(感圧スイッチ間スイッチ配線)、22…スイッチ配線(感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線)、26…導通部、28…被接離部、30…貫通穴、32…空気通路、34…残部、36…接離部、40…湾曲部、52…着座荷重検出装置(メンブレンスイッチ)、54…第1フィルム、56…第2フィルム、60…スイッチ配線、64…被接離部、66…接離部、68…離隔部材(絶縁スペーサ)、70…貫通穴、A,B,C,D…感圧スイッチ、K,L,M,N…感圧スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17