【実施例】
【0013】
以下、本発明に係る着座荷重検出装置を車両用シートに実施した実施形態について図面を参照して説明する。
図1には独座用の車両用シートのシートクッション2の座面を示す斜視図が描かれている。
【0014】
シートクッション2は、
図1に示すように、ウレタン等から構成されるパッド部材4とパッド部材4の着座側表面を覆うように装着される布製(又は皮革製等)の表皮部材6とを備えている。シートクッション2のパッド部材4の上面には左右方向に延在する凹溝8が陥没形成されている。パッド部材4の座面の後方中央部には、パッド部材4の上面から下面に貫通する着座荷重検出装置10の基端部が挿入される挿入穴12が形成されている。
【0015】
着座荷重検出装置10は、対となった第1フィルム14と第2フィルム16とを離隔部材としての絶縁スペーサ18を介して重合することにより形成されるメンブレンスイッチ19から主に構成される。メンブレンスイッチ19は、
図2及び
図3に示すように、細長い帯状に形成されている。メンブレンスイッチ19には4つの感圧スイッチA,B,C,Dと、第1フィルム14において感圧スイッチA,B,C,Dの間を連結する感圧スイッチ間スイッチ配線(スイッチ配線)20と、一番基端側の感圧スイッチDと基端部に設けられたコネクタ部24との間に設けられ、感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線(スイッチ配線)22を備えた導通部26とを有している。
【0016】
第1フィルム14は、例えば厚さ0.1mmのPEN(ポリエチレンナフタレート)製で、
図4に下面図で示すように、コネクタ部24のプラス及びマイナスの電極に夫々導通する感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22が略平行に印刷等で形成されている。第1フィルム14の感圧スイッチA,B,C,Dに対応する箇所は略円形で幅広に形成され、幅広に形成された箇所には各々一方の電極に導通するスイッチ配線20,22に接続される円形の被接離部28が印刷等で形成されている。
【0017】
絶縁スペーサ18は、例えば0.15mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)製で、
図5に平面図で示すように、感圧スイッチA,B,C,Dに対応する部分に厚み方向に貫通する円形の貫通穴30が夫々設けられている。各貫通穴30の側壁には厚み方向に貫通するとともに幅方向の寸法が0.15mmの空気通路32が開口し、空気通路32は一番基端側の感圧スイッチDの近傍において、第2フィルム16の端部に設けられた通気口33(
図7参照)につながって大気と連通するようになっている。通気口33よりも基端部側の絶縁スペーサ18は、空気通路32が設けられていない断面矩形の中実状に形成されている(中実部材)。この中実状の部分により残部34が構成される。
なお、ここで述べた各数値は、実施の一例を示すものであり各々適宜変更可能である。
【0018】
第2フィルム16は、
図6に平面図で示すように、導通部26を除いた部分について第1フィルム14と同形状に形成され、感圧スイッチA,B,C,Dに対応する部分には導通材からなる円形の接離部36が印刷等で形成されている。感圧スイッチA及び感圧スイッチCに対応する接離部36は感圧スイッチ間スイッチ配線20により電気的に接続され、感圧スイッチB及び感圧スイッチDに対応する接離部36は感圧スイッチ間スイッチ配線20により電気的に接続されている。また、感圧スイッチAC間を接続する感圧スイッチ間スイッチ配線20と、感圧スイッチBD間を接続する感圧スイッチ間スイッチ配線20とは、接続線35により電気的に接続されている。また、第2フィルム16は、
図7に示すように、最も基端側の感圧スイッチDより少しコネクタ部24側に行ったところで終了し、当該終了位置からコネクタ部24までは第1フィルム14と絶縁スペーサ18とが接着剤が塗布された接着剤層25で張合わされて形成されている。第2フィルム16の裏面には粘着材27が設けられ、シートクッション2のパッド部材4の着座面に感圧スイッチA〜Dが固定されるようになっている。
【0019】
また、第2フィルム16と絶縁スペーサ18とについても前述の接着剤(接着剤層25)によって重ね合わせて接着され、第1フィルム、絶縁スペーサ及び第2フィルムの3つが重ね合わされて接着されて、外部から水分等が浸入しないようになっている。このようにフィルム等が重ね合わせて接着されることにより、各貫通穴30は第1フィルム14の被接離部28と第2フィルム16の接離部36とを接離・離間させる空間を形成する。第1フィルム14に配された円形状の被接離部(上方電極)28と、第2フィルム16に配された円形状の接離部(下方電極)36とが、貫通穴30を挟んで同心上に対向するように設けられ、感圧スイッチA,B,C,Dにおいて厚み方向の荷重が加わると、接離部36と被接離部28とが接触してオンされ、この接触によって流れる電流を検知するようになっている。感圧スイッチA,B,C,Dは、
図8に示すように、基端側と先端側と夫々直列する2つの感圧スイッチA及び感圧スイッチCにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたとき、または感圧スイッチB及び感圧スイッチDにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたときにオンされて、電流が検知されるようになっている。そして、感圧スイッチA,C間のスイッチ配線と感圧スイッチB,D間のスイッチ配線とを繋ぐ接続線35によって、感圧スイッチA及び感圧スイッチDにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたとき、感圧スイッチB及び感圧スイッチCにおける接離部36と被接離部28とが同時に接触されたときにも、オンされて電流が検知されるようになっている。
【0020】
メンブレンスイッチ19の基端部には外部出力部38が設けられている。外部出力部38は感圧スイッチ20で検出された荷重を出力するものであり、出力電極が形成されている。この外部出力部38にはコネクタが接続されてコネクタ部24を構成する。コネクタ部24は乗員の着座状態を判断する図略のECU(Electronic Control Unit)に連結されている。
【0021】
メンブレンスイッチ19の基端部が、
図10及び
図11に示すように、パッド部材4の挿入穴12に挿入され、基端部がシートクッション2の裏面において図略のフレームに固定される場合には、最も基端部側の感圧スイッチDからコネクタ部24側に少し移動した位置における導通部26が下方に湾曲されて湾曲部40が形成される。
【0022】
この湾曲部40において、第1フィルム14は円弧の外側になり伸長され、絶縁スペーサ18が円弧の内側になり圧縮される。しかし、
図11に示すように、湾曲部40には第2フィルム16が設けられていないので、第2フィルム16が圧縮された絶縁スペーサ18より受ける圧縮力は小さく、第1フィルム14と第2フィルム16との間で周長差による長手方向のずれも極めて小さいものとなる。そのため、感圧スイッチA,B,C,Dにおける接離部36と被接離部28との間の距離に変動を生じさせることが少なく、正確な荷重の検出をおこなうことができる。
【0023】
そして、作動においては、
図8の回路図に示すように、感圧スイッチA及び感圧スイッチCの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力される。そのため、荷重の際に接する面積が小さい荷物等により乗員荷重が検出されるのが防止され、この電流による着座検出信号によって、ECUがシートクッション2上に座っているのが人であると判断すると、例えばエアバック装置の作動を可能にしたり、シートベルトが非装着である旨の警告を発したりする。
【0024】
上記のように構成された着座荷重検出装置10によると、第1フィルム14及び第2フィルム16と両フィルム14,16の間に配設された絶縁スペーサ18とから主に形成された着座荷重検出装置10が、シートクッション2に湾曲して取り付けられると、湾曲したときに内側となる第2フィルムと外側となる第1フィルムとの間に周長差が生じる。そのため、従来は第1フィルムと第2フィルムとが離隔部材に接着されていない貫通穴に対応する被接離部及び接離部において、第1フィルム及び第2フィルムのいずれか又は両方が、互いに離間する方向に膨らむか、互いに接近する方向に縮む等の歪が生じる。
【0025】
しかし、本件発明においては、感圧スイッチA,B,C,Dがシートクッション2の着座面に取り付けられるときに湾曲して取り付けられる湾曲部40は、第2フィルム16を除いた第1フィルム14及び絶縁スペーサ18により構成され、第2フィルム16を除いた分厚みが少なくなるので、湾曲部40に生じていた周長差が減少する。さらに、湾曲部40には第2フィルム16がないので、感圧スイッチA,B,C,Dを構成する第2フィルム16には湾曲部40による歪が伝播されにくい。そのため、感圧スイッチA,B,C,Dにおいて、第1フィルム14と第2フィルム16との間で周長差に基づく歪が生じるのが防止され、感圧スイッチA,B,C,Dの被接離部28と接離部36との離間距離が前記歪によって変化することを防止できる。これによって、着座荷重検出装置10の導通部26が湾曲されて配置された場合にも、乗員の着座荷重を高い精度で検出することができる。
【0026】
また、絶縁スペーサ18は、湾曲部40において空気通路32が形成されていない中実部材であるため、導通部26において空気通路からの水分の浸入を防止することができる。なお、この空気通路32は、厚さ方向から貫通するものとしたが、これに限定されず、例えば離隔部材の長手方向に連続して貫設された貫通穴でもよい。
【0027】
なお、上記実施形態においては、感圧スイッチA及び感圧スイッチCの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるものとしたが、これに限定されず、例えば、
図9の回路図で示すように、感圧スイッチA及び感圧スイッチBの組、感圧スイッチC及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチA及び感圧スイッチDの組、感圧スイッチB及び感圧スイッチCの組のうちの少なくとも1つの組において、同じ組を構成する感圧スイッチが同時にオンされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるようにしてもよい。これによって、少なくとも隣り合う感圧スイッチが同時にオンされたときに、着座検出信号が出力されるため、検出範囲を容易に調整することが可能となり、検出を予定される人(例えば女性や子供)や物(例えば荷物やチャイルドシート)の大きさや形状に応じて、正確な着座状態を検出することができる。
【0028】
また、上記実施形態及びその別例のように、感圧スイッチA,B,C,Dの組(例えばAとCとで組)のいずれかにおいて、同じ組内の感圧スイッチが同時にONされたときに感圧スイッチ・コネクタ部間スイッチ配線22に電流が流れて着座検出信号が出力されるものとしたが、これに限定されず、例えば、
図12乃至
図15に示すように、メンブレンスイッチ52における第1フィルム54には各電極に夫々電通して平行に設けられたスイッチ配線60と各スイッチ配線60の感圧スイッチK,L,M,Nに対応する位置に半月形状に設けられた一対の被接離部64とが設けられており、第2フィルム56には被接離部64に対向する位置に接離部66が設けられ、接離部66が被接離部64に接触すると対となって隣り合う被接離部64同士を電通させるものでもよい。この構成においても、絶縁スペーサ68には感圧スイッチK,L,M,Nに対応する位置に貫通穴70が設けられている。メンブレンスイッチ52の基端部が、パッド部材4の挿入穴12に挿入され、基端部がシートクッション2の裏面において図略のフレームに固定される場合には、前述と同様に最も基端部側の感圧スイッチNから(図略)コネクタ部側に少し移動した位置における(図略)導通部が下方に湾曲されて(図略)湾曲部が形成される。湾曲部は、前述の実施形態と同様に第2フィルムを除いた第1フィルムと絶縁スペーサとが接着剤等により重合されて構成される。
【0029】
この実施形態では、感圧スイッチK,L,M,Nのいずれか1つがONされれば、着座検出信号が出力される。その他の構成及び作用効果は、前述の実施形態と同様である。
【0030】
また、メンブレンスイッチは一本の帯状のものに限定されず、例えば感圧スイッチが配置された検出部が二股や三股に分かれたものでもよい。
【0031】
また、導通部16は、全体に亘って第2フィルム16を除いた第1フィルム14と絶縁スペーサ18とで構成されるものとしたが、これに限定されず、例えば、導通部のうち取付けられる際に湾曲される部分(湾曲部)だけが、第2フィルム16を除いた第1フィルム14と絶縁スペーサ18とで構成されるものでもよい。
【0032】
また、導通部26を残部34において空気通路32のない中実部材としたが、これに限定されず、例えば残部において空気通路が設けられていてもよい。
【0033】
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。