(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903941
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ネックサポート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/48 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
B60N2/48
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-54751(P2012-54751)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-189029(P2013-189029A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖典
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−334056(JP,A)
【文献】
特開平08−332879(JP,A)
【文献】
実開平01−161650(JP,U)
【文献】
特開2007−330515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックとヘッドレストとの間に取り付けられ、シート上に着座す
る乗員の頸部を保護するネックサポートであって、前記ネックサポートは、前記ヘッドレストを前記シートバックに対して支持するアームに取り付けられ、内部にクッション体を有し、該クッション体の下方に位置する位置決めプレートと、該位置決めプレートを前記アームに対して高さ固定するリング部材と、該リング部材の径を変化させる調整部材とを備え、
前記シートバックに対して所望の高さにて位置固定を行う高さ調整機構を備えたネック
サポート装置。
【請求項2】
前記シートバックに対して支持されるベース部と、該ベース部に対して乗員の頭部に向けて進退自在な可動部とを有する前記ヘッドレストに対し、前記ネックサポートは、前記ベース部側に取り付けられ、前記高さ調整機構により、前記可動部の進退時でも位置固定が成される請求項1に記載のネックサポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネックサポート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネックサポート装置は、頂部にヘッドレストの支柱挿入孔を設けたシートバック本体と、ヘッドレストとの間に乗員の頸部を支持するクッション材を備えたものが知られている。この装置は、頭部と頸部の保護機能を有すると共に、運転時における乗員の疲労を低減し、事故発生時に乗員の頭部への衝撃を緩和する(特許文献1参照)。
【0003】
また、枕状物を布でヘッドレストに巻き、面ファスナーでヘッドレストに対して固定することにより、乗員の頸部をサポートするものも知られている。(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−332879号公報
【特許文献2】特開2002−120626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される車両用ネックサポート装置では、乗員の頸部を支持するクッション材を備え、頭部と頸部の保護機能を有し、乗員の運転時における疲労を低減し、事故発生(例えば後方からの衝突)時には衝撃を緩和するものの、乗員が着座した時に、乗員の体格に合わせて頸部にクッション材の当たる高さを調整するものではなく、事故発生時等にはクッション材が不適切な位置に動いてしまい、乗員の頭部や頸部の保護機能が十分でないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2のものでは、シートバック本体とヘッドレストの間に枕状物を備え、枕状物を布でヘッドレストに巻きつけて、面ファスナーでヘッドレストに対して装着する構造となっている。したがって、特許文献2に示されるものは、枕状物の高さを自由に固定するものではない。また、近年では車両後方からの車両追突時に乗員(ドライバーや助手席の人)の頭部を保護する可動式ヘッドレストが高級車等に採用されている。この様な後方からの衝突時に作動して、ヘッドレストの前部が前進して乗員の頭部を保護する機能を持つ可動式ヘッドレストに特許文献2に示されるものを使用した場合、可動式ヘッドレストが適正に作動しないおそれがある。また、ヘッドレストに巻きつけられた枕状物も可動式ヘッドレストと一緒に前方(乗員側)に瞬時に位置が移動して進出する場合でも乗員の頭部のみならず頸部を確実に保護する必要があり、乗員の頸部も保護する何らかの対策が必要になる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、乗員が着座した時の乗員の体格に合わせてネックサポートの高さ調整を行うことができること、また、可動式ヘッドレストにも適用できること、また、頸部や頭部を保護することができるネックサポート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題解決手段は、車両用シートのシートバックとヘッドレストとの間に取り付けられ、シート上に着座する乗員の頸部を保護するネックサポートであって、前記シートバックに対して所望の高さにて位置固定を行う高さ調整機構を備える構成とした。
【0009】
上記構成において、前記ネックサポートは、前記ヘッドレストを前記シートバックに対して支持するアームに取り付けられ、内部にクッション体を有し、該クッション体の下方に位置する位置決めプレートと、該位置決めプレートを前記アームに対して高さ固定するリング部材と、該リング部材の径を変化させる調整部材とを備えることが好ましい。
【0010】
また、前記シートバックに対して支持されるベース部と、該ベース部に対して乗員の頭部に向けて進退自在な可動部とを有する前記ヘッドレストに対し、前記ネックサポートは、前記ベース部側に取り付けられ、前記高さ調整機構により、前記可動部の進退時でも位置固定が成される構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネックサポート装置は、シートバックに対して所望の高さにて位置固定を行う高さ調整機構を備えるため、シート着座時の乗員の体格に合わせてネックサポートを乗員の頸部に当てることができる。頸部に対して後ろから支えがあるため、頸部の安定感が増し、運転時における乗員の疲労を低減し、頸部や頭部を保護することができる。
【0012】
また、ネックサポートは、ヘッドレストをシートバックに対して支持するアームに取り付けられるため、ネックサポートの固定が強固になり、位置ずれが発生し難い。ネックサポートの高さ調整機構は、アームに取り付けられるリング部材と、リング部材の径を縮径する締結部材とを備え、締結部材の操作により、ネックサポートの高さ調整が行えるため、高さ調整の操作が簡易であり、高さの微調整も容易であり、さらに運転時における乗員の疲労を低減し、頸部や頭部の保護機能も向上する。
【0013】
また、乗員の頭部に向けて進退自在な可動部を有するヘッドレストの可動部が進退する場合にも、ネックサポートは、位置固定が成されるため、車両後方からの追突の危険時に、乗員の後頭部側に向けてのヘッドレスト可動部の飛び出しを阻害せず、乗員の後頭部側がヘッドレストに打ちつけられる衝撃を緩和するため、頸部や頭部の保護機能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態における車両用ネックサポート装置の側面図である。
【
図3】ネックサポート装置の高さ調整機構の断面図である。
【
図4】ネックサポート装置の高さ調整機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1のネックサポート装置1は、車両の前部座席の運転席あるいは助手席に装着される。ネックサポート装置1は、運転席シートと助手席シートの両方に適用することが好ましい。運転席シートと助手席シートは、左右対称に構成されるため、ここでは、運転席シートについて説明する。なお、ネックサポート装置1は、後部座席にも適用できる。
【0017】
図1のネックサポート装置1は、ヘッドレスト3とシートバック2の間に配設されるネックサポート5と高さ調整機構6を備える。シートバック2とヘッドレスト3は、ヘッドレスト3に取り付けられたアーム4により連結されている。そして、シートバック2とヘッドレスト3の間には、アーム4に前後部に突出した形状のウレタン樹脂性のクッション体5bを布地5cで覆ったネックサポート5が取り付けられている。ネックサポート5の下部には、ネックサポート5の高さ調整機構6として、樹脂プレート7(位置決めプレート)と軸受けカラー(リング部材)8が配設され、軸受けカラー8は、後述する締結ボルト9(調整部材)を備えている。
【0018】
ヘッドレスト3は、シートバック2の頂部と連結されるアーム4を介して固定されたベース部3aと車両前方に前進する可動部3bを備えている。本実施例では、ヘッドレスト3は、前部が可動するもので説明するが、稼動しない固定式のものでも適用できる。可動部3bは、互いに交差する2本のアーム(図示せず)によりベース部3aと連結されており、可動部3bが車両前後方に進退する構造である。車両後部からの衝突の際に車両前方に進出し、乗員の頭部20がヘッドレスト3に打ちつけられる衝撃を緩和し、乗員の頸部30への負担を軽減するものである。
【0019】
図2は、ネックサポート装置1のネックサポート5をアーム4に取り付ける前の斜視図である。シートバック2とヘッドレスト3の間に取り付けられるネックサポート5は、ヘッドレスト3の2本のアーム4の先端部4aをネックサポート5に設けられた2箇所の挿通孔5bに挿入させる。次に、中央部に挿入孔が設けられた円盤状の樹脂プレート7と樹脂製の軸受けカラー8を2本のアーム4にそれぞれに通し、さらに、シートバック2の頂部に設けられた2個の挿入孔2aに挿入させる。
【0020】
図3は、ネックサポート装置1の高さ調整機構の断面図である。高さ調整機構6は、ネックサポート5のクッション体5bを覆う布地5cの下方に当接する位置に配設され、ネックサポート5の位置決めを行う樹脂プレート7(位置決めプレート)と、樹脂プレート7をアーム4に対して高さを固定する樹脂製の軸受けカラー8(リング部材)と軸受けカラー8の径を変化させる締結ボルト9(調整部材)を備える。樹脂プレート7は、下部にフランジ部7aが設けられ、フランジ部7aの内周面7cには、滑り止めゴムシート10が取り付けられている。そして、樹脂プレート7のフランジ部7aの外周部7dに軸受けカラー8が装着される。軸受けカラー8の径を小さくすると樹脂プレート7が、滑り止めゴムシート10を介してアーム4に保持されてネックサポート5の位置決めができる構成である。上記の滑り止めゴムシート10により、樹脂プレート7は、アーム4への保持力を向上する。高さ調整機構6は、滑り止めゴムシート10の無い構成でも、樹脂プレート7のアーム4への保持力が確保できれば良い。
【0021】
図4は、ネックサポート装置1の高さ調整機構6の説明図であり、軸受けカラー8の(a)側面図と(b)締結ボルトの締結前の上面図と(c)締結ボルトの締結後の上面図である。軸受けカラー8は、締結ボルト9が取り付けられるねじ孔9aが設けられている。軸受けカラー8は、内周部8bに樹脂プレート7のフランジ部7aとアーム4を通すための孔8cが設けられている。そして、軸受けカラー8に取り付けられた締結ボルト9の端部9bを乗員が手で回して、回動させて径を小さくすることにより、ネックサポート5の高さ位置の位置決めする樹脂プレート7が、シートバックに対して所望の高さ位置で固定する。ここで、所望の高さ位置とは、ネックサポート5の突出部5aが車両のシートに着座した乗員の頸部30に当たる高さ位置を表す。樹脂プレート7の上面7aが、ネックサポート5を支えるため、樹脂プレート7の上面7aが小さいとネックサポート5の固定が不十分になる。また、樹脂プレート7の前部7bが前方に突出し過ぎると車両の衝突時に乗員の頸部30に当たる可能性があるため、前方に突出し過ぎない位置に配設する必要がある。逆に、乗員が締結ボルト9を逆向きに回動させて、径を大きくすることにより、樹脂プレート7のアーム4への高さ固定が解除される。樹脂プレート7のアーム4への固定が解除すると、ネックサポート5の高さ位置の固定も解除される。
【0022】
なお、本実施例では、ネックサポート5と樹脂プレート7を別体として構成したが、ネックサポート5に樹脂プレート7を取り付けて一体としても良い。ネックサポート5と樹脂プレート7を一体にすると、部品点数が削減でき、ネックサポート5の高さ位置を乗員が調整する際に取付け作業性も向上する。
【0023】
つぎに、本発明の実施形態による車両用ネックサポート装置の作用(動作)を説明する。
【0024】
軸受けカラー8のアーム4への固定を解除するために、径を大きくする方向に締結ボルト9を回転させる。そして、ネックサポート5の前方の突出部5aが、乗員の頸部30に当たる高さ位置に調整する。ここで、ネックサポート5の高さ位置がずれないようにして、樹脂プレート7および軸受けカラー8がネックサポート5を支える高さ位置に調整する。軸受けカラー8の径を小さくするために、締結ボルト9を乗員が締めて、樹脂プレート7をアーム4へ固定する。ネックサポート5の高さ位置の固定後に、乗員は、シート(図示せず)に着座し、ネックサポート5の高さ位置が頸部30に当たっているか再確認すると良い。ずれが生じている場合には、ネックサポート5の前方の突出部5aが乗員の頸部30に適切に当たるように再度調整を行う。
【0025】
つぎに、本発明の実施形態による車両用ネックサポート装置の効果を説明する。
【0026】
本発明のネックサポート装置1は、シートバック2に対して所望の高さにて位置固定を行う高さ調整機構6を備えるため、シート着座時の乗員の体格に合わせてネックサポート5を乗員の頸部30に当てることができる。頸部30に対して後ろから支えがあるため、頸部30の安定感が増し、乗員の運転時の疲労を低減し、頸部30や頭部20を保護することができる。
【0027】
また、ネックサポート5は、ヘッドレスト3をシートバック2に対して支持するアーム4に取り付けられるため、ネックサポート5の固定が強固になり、位置ずれが発生し難い。
【0028】
ネックサポート5の高さ調整機構6は、アーム4に取り付けられる樹脂プレート7と軸受けカラー8と軸受けカラー8の径を小さくする締結ボルト9とを備え、締結ボルト9を回転させることにより、ネックサポート5の高さ調整が行えるため、高さ調整の操作が簡単で、高さの微調整も容易であり、さらに乗員の運転時における疲労を低減し、頸部30や頭部20の保護機能も向上する。
【0029】
また、乗員の頭部に向けて進退自在な可動部3bを有するヘッドレスト3の可動部3aが進退する場合にも、ネックサポート5は、位置固定が成されるため、事故発生(例えば後方からの衝突)の危険時に、乗員の後頭部側に向けての可動部3aが飛び出すのを阻害せず、乗員の頭部20がヘッドレスト3に打ちつけられる衝撃を緩和するため、乗員の頸部30や頭部20の保護機能が向上する。
【符号の説明】
【0030】
1 ネックサポート装置
2 シートバック
3 ヘッドレスト
3a ベース部
3b 可動部
4 アーム
5 ネックサポート
5b クッション体
6 高さ調整機構
7 樹脂プレート(位置決めプレート)
8 軸受けカラー(リング部材)
9 締結ボルト(調整部材)