特許第5903977号(P5903977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5903977
(24)【登録日】2016年3月25日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】化学蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20160331BHJP
   C09K 5/18 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F28D20/00 H
   C09K5/18 J
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-72468(P2012-72468)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-204867(P2013-204867A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】若杉 知寿
(72)【発明者】
【氏名】志満津 孝
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−014788(JP,A)
【文献】 特開平09−033090(JP,A)
【文献】 特開2002−195656(JP,A)
【文献】 特開2004−003851(JP,A)
【文献】 特開2009−019866(JP,A)
【文献】 特開平11−132680(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0043473(US,A1)
【文献】 特開2013−204856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
C09K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器と気密状態で連通された反応液の蒸発流路を備え、前記蒸発流路で前記反応液を蒸発させて前記反応器へ蒸気を供給し、前記脱水反応で生じた前記反応器からの蒸気を凝縮して回収する蒸発・凝縮器と、
前記蒸発流路と連通され前記反応液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から前記蒸発流路へ前記反応液を供給し、前記蒸発流路に貯留された前記反応液を前記貯留槽へ排出させる搬送量可変機能と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ供給する反応液量の計測手段と、を備えた搬送装置と、
前記蒸発流路と接して前記蒸発・凝縮器に設けられた媒体流路に、前記反応液を蒸発させる熱媒、又は前記反応器からの蒸気を凝縮させる冷媒を供給する媒体供給手段と、
前記蒸発流路の前記反応液の液位を検出する液位検出手段であって、設定された目標生成蒸気量を確保するための反応液量から求められた目標液位を挟んで上下方向に所定の間隔を開けて少なくとも2個が設けられ、前記反応液の状態が気相であるか液相であるかを検出する前記液位検出手段と、
前記液位検出手段からの出力に基づいて前記搬送装置を制御して、前記反応液を前記目標液位に制御する制御手段であって、2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を推定生成蒸気量とし、前記目標生成蒸気量と前記推定生成蒸気量との差から制御量を求め、前記搬送装置を制御して、前記制御量を用いて前記反応液の液位を前記目標液位に制御する前記制御手段と、
を有する化学蓄熱システム。
【請求項2】
2個の前記液位検出手段の前記所定の間隔は、前記目標生成蒸気量の許容範囲から求められた、前記目標液位からの液位変動の許容限度とされている請求項1に記載の化学蓄熱システム。
【請求項3】
加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器と気密状態で連通された反応液の蒸発流路を備え、前記蒸発流路で前記反応液を蒸発させて前記反応器へ蒸気を供給し、前記脱水反応で生じた前記反応器からの蒸気を凝縮して回収する蒸発・凝縮器と、
前記蒸発流路と連通され前記反応液を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽から前記蒸発流路へ前記反応液を供給し、前記蒸発流路に貯留された前記反応液を前記貯留槽へ排出させる搬送量可変機能と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ供給する反応液量の計測手段と、を備えた搬送装置と、
前記蒸発流路と接して前記蒸発・凝縮器に設けられた媒体流路に、前記反応液を蒸発させる熱媒、又は前記反応器からの蒸気を凝縮させる冷媒を供給する媒体供給手段と、
前記蒸発流路の前記反応液の液位を検出する液位検出手段であって、上下方向に少なくとも4個が設けられ、中央部の2個が設定された目標生成蒸気量を確保するための前記反応液量から求められた目標液位を挟む位置に配置され、最上部と最下部の2個が所定の間隔を開けた位置に配置され、前記反応液の状態が気相であるか液相であるかを検出する前記液位検出手段と、
前記液位検出手段からの出力に基づいて前記搬送装置を制御して、前記反応液を前記目標液位に制御する制御手段であって、下部2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を下部推定生成蒸気量とし、上部2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた前記生成蒸気量を上部推定生成蒸気量とし、
前記目標生成蒸気量と前記下部推定生成蒸気量との差から下部制御量を求め、及び前記目標生成蒸気量と前記上部推定生成蒸気量との差から上部制御量を求め、前記搬送装置を制御して、前記下部制御量又は前記上部制御量を用いて前記反応液の液位を前記目標液位に制御する前記制御手段と、
を有する化学蓄熱システム。
【請求項4】
4個の前記液位検出手段における最下部とその直上の下部2個の下部液位検出手段間隔は、最上部とその直下の上部2個の上部液位検出手段間隔より広くされ、最下部と最上部の前記所定の間隔は、前記目標生成蒸気量の許容範囲から求められた、前記目標液位からの液位変動の許容限度とされている請求項3に記載の化学蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応により蓄熱及び放熱する化学蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ土類金属酸化物を充填した反応器、水を貯蔵する水タンク、水タンクの水を反応器に供給する水供給管、及び反応器から水を水タンクに戻す還流管からなる密閉サイクル、反応器への水の給排水を制御する水送給手段、反応器内のアルカリ土類金属水酸化物を加熱分解しアルカリ土類金属酸化物に再生する加熱手段、並びに上記水送給手段を制御しアルカリ土類金属酸化物と水との可逆反応を制御する反応制御手段を備え、アルカリ土類金属酸化物の水和反応に伴い発生する熱を利用するようにした化学発熱装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−180539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、反応器を短時間で昇温させ、その後一定の放熱出力を実現する蒸気発生が困難である。即ち、反応液の供給量を増大させると、その後の低出力制御が不安定となり、反応液の供給量を減少させると、蒸発器内部のドライアウトにより出力が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、蒸発流路の反応液の液位を目標液位に制御することにより、目標生成蒸気量を許容限度内に制御する化学蓄熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る化学蓄熱システムは、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器と気密状態で連通された反応液の蒸発流路を備え、前記蒸発流路で前記反応液を蒸発させて前記反応器へ蒸気を供給し、前記脱水反応で生じた前記反応器からの蒸気を凝縮して回収する蒸発・凝縮器と、前記蒸発流路と連通され前記反応液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ前記反応液を供給し、前記蒸発流路に貯留された前記反応液を前記貯留槽へ排出させる搬送量可変機能と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ供給する反応液量の計測手段と、を備えた搬送装置と、前記蒸発流路と接して前記蒸発・凝縮器に設けられた媒体流路に、前記反応液を蒸発させる熱媒、又は前記反応器からの蒸気を凝縮させる冷媒を供給する媒体供給手段と、前記蒸発流路の前記反応液の液位を検出する液位検出手段であって、設定された目標生成蒸気量を確保するための反応液量から求められた目標液位を挟んで上下方向に所定の間隔を開けて少なくとも2個が設けられ、前記反応液の状態が気相であるか液相であるかを検出する前記液位検出手段と、前記液位検出手段からの出力に基づいて前記搬送装置を制御して、前記反応液を前記目標液位に制御する制御手段であって、2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を推定生成蒸気量とし、前記目標生成蒸気量と前記推定生成蒸気量との差から制御量を求め、前記搬送装置を制御して、前記制御量を用いて前記反応液の液位を前記目標液位に制御する前記制御手段と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、反応器は、内蔵された化学蓄熱材により、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する。また、反応器と気密状態で連通され、反応液の蒸発流路を備えた蒸発・凝縮器により、反応液を蒸発させて反応器へ蒸気が供給され、反応器からの蒸気を凝縮して反応液が回収される。
また、貯留槽に貯留された反応液が、搬送装置により貯留槽から蒸発流路へ供給され、蒸発流路から貯留槽へ反応液が排出される。このとき、媒体供給手段により、媒体流路には、反応液を蒸発させる熱媒又は反応蒸気を凝縮させる冷媒が供給されている。
また、制御手段は、設定された目標生成蒸気量を確保するために求められた蒸発流路における反応液の液位を目標液位とし、液位検出手段からの出力に基づいて搬送装置を制御して、反応液を目標液位に制御する。
そして、搬送装置に設けられた計測手段により、貯留槽から蒸発流路への反応液の供給量が計測され、蒸発流路内の目標液位を挟んで上下方向に所定の間隔を開けて設けられた2個の液位検出手段により、反応液の状態が気相であるか液相であるかが検出される。
また、制御手段により、2個の液位検出手段及び計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を推定生成蒸気量とし、目標生成蒸気量と推定生成蒸気量との差から制御量を求め、搬送装置を制御して、制御量を用いて反応液の液位を目標液位に制御する。
これにより、2個の液位検出手段で挟まれた目標液位に、反応液を制御することができる。
【0008】
この構成とすることにより、蒸発流路の反応液が目標液位に制御され、目標生成蒸気量を許容限度内に制御可能な化学蓄熱システムを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱システムにおいて、2個の前記液位検出手段の前記所定の間隔は、前記目標生成蒸気量の許容範囲から求められた、前記目標液位からの液位変動の許容限度とされていることを特徴としている。
【0014】
これにより、反応液を目標液位からの液位変動の許容限度の範囲内とすることで、目標生成蒸気量を許容範囲内に制御することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る化学蓄熱システムは、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器と気密状態で連通された反応液の蒸発流路を備え、前記蒸発流路で前記反応液を蒸発させて前記反応器へ蒸気を供給し、前記脱水反応で生じた前記反応器からの蒸気を凝縮して回収する蒸発・凝縮器と、前記蒸発流路と連通され前記反応液を貯留する貯留槽と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ前記反応液を供給し、前記蒸発流路に貯留された前記反応液を前記貯留槽へ排出させる搬送量可変機能と、前記貯留槽から前記蒸発流路へ供給する反応液量の計測手段と、を備えた搬送装置と、前記蒸発流路と接して前記蒸発・凝縮器に設けられた媒体流路に、前記反応液を蒸発させる熱媒、又は前記反応器からの蒸気を凝縮させる冷媒を供給する媒体供給手段と、前記蒸発流路の前記反応液の液位を検出する液位検出手段であって、上下方向に少なくとも4個が設けられ、中央部の2個が設定された目標生成蒸気量を確保するための前記反応液量から求められた目標液位を挟む位置に配置され、最上部と最下部の2個が所定の間隔を開けた位置に配置され、前記反応液の状態が気相であるか液相であるかを検出する前記液位検出手段と、前記液位検出手段からの出力に基づいて前記搬送装置を制御して、前記反応液を前記目標液位に制御する制御手段であって、下部2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を下部推定生成蒸気量とし、上部2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた前記生成蒸気量を上部推定生成蒸気量とし、前記目標生成蒸気量と前記下部推定生成蒸気量との差から下部制御量を求め、及び前記目標生成蒸気量と前記上部推定生成蒸気量との差から上部制御量を求め、前記搬送装置を制御して、前記下部制御量又は前記上部制御量を用いて前記反応液の液位を前記目標液位に制御する前記制御手段と、を有することを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、反応器は、内蔵された化学蓄熱材により、加熱により脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する。また、反応器と気密状態で連通され、反応液の蒸発流路を備えた蒸発・凝縮器により、反応液を蒸発させて反応器へ蒸気が供給され、反応器からの蒸気を凝縮して反応液が回収される。
また、貯留槽に貯留された反応液が、搬送装置により貯留槽から蒸発流路へ供給され、蒸発流路から貯留槽へ反応液が排出される。このとき、媒体供給手段により、媒体流路には、反応液を蒸発させる熱媒又は反応蒸気を凝縮させる冷媒が供給されている。
また、制御手段は、設定された目標生成蒸気量を確保するために求められた蒸発流路における反応液の液位を目標液位とし、液位検出手段からの出力に基づいて搬送装置を制御して、反応液を目標液位に制御する。
そして、搬送装置に設けられた計測手段により、貯留槽から蒸発流路への反応液の供給量が計測される。
また、蒸発流路内の上下方向に少なくとも4個が設けられ、中央部の2個が目標液位を挟む位置に配置され、最上部と最下部の2つが所定の間隔を開けた位置に配置された液位検出手段により、反応液の状態が気相であるか液相であるかが検出される。
【0017】
このとき、制御手段は、下部2個の前記液位検出手段及び前記計測手段からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を下部推定生成蒸気量とし、上部2個の液位検出手段及び搬送装置からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を上部推定生成蒸気量とし、目標生成蒸気量と下部推定生成蒸気量から下部制御量を求め、及び目標生成蒸気量と上部推定生成蒸気量との差から上部制御量を求め、搬送装置を制御して、下部制御量及び上部制御量を用いて反応液の液位を目標液位に制御する。
【0018】
これにより、反応液を目標液位からの液位変動の許容限度内とすることができ、目標生成蒸気量を許容範囲に制御することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の化学蓄熱システムにおいて、4個の前記液位検出手段における最下部とその直上の下部2個の下部液位検出手段間隔は、最上部とその直下の上部2個の上部液位検出手段間隔より広くされ、最下部と最上部の前記所定の間隔は、前記目標生成蒸気量の許容範囲から求められた、前記目標液位からの液位変動の許容限度とされていることを特徴としている。
【0020】
これにより、反応液の上昇時と下降時の液位変動の検出精度を、液位検出手段が2個の場合より高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成としてあるので、蒸発流路の反応液の液位を目標液位に制御することにより、目標生成蒸気量を許容限度内に制御する化学蓄熱システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の参考例に係る化学蓄熱システムのシステム構成を説明するための模式図である。
図2】本発明の参考例に係る化学蓄熱システムの蒸発・凝縮器を説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は水平方向断面図、(c)は鉛直方向断面図である。
図3】本発明の参考例に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位制御を説明するための模式図である。
図4】本発明の参考例に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位センサと水位の関係を示す図であり、(a)は水位センサより水位が低い場合を示し、(b)は水位センサより水位が高い場合を示している。
図5】本発明の参考例に係る化学蓄熱システムの水位制御シーケンスを示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位制御を説明するための模式図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位センサと水位の関係を示す図であり、(a)は水位センサより水位が低い場合を示し、(b)は水位センサより水位が高い場合を示し、(c)は2個の水位センサの間に水位がある場合を示している。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る化学蓄熱システムの水位制御シーケンスを示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位制御を説明するための模式図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る化学蓄熱システムの蒸発流路における水位センサと水位の関係を示す図であり、(a)は水位センサの取付け位置を示し、(b)は水位センサより水位が高い場合を示し、(c)は4個の水位センサの間に水位がある場合を示し、(d)は水位センサより水位が低い場合を示している。
図11】外乱による反応器の反応速度変化の例であり、(a)は急激な温度低下を示し、(b)は緩やかな温度上昇を示す模式図である。
図12】外乱による水位変化の例であり、(a)は急激な温度低下の場合を示し(b)は緩やかな温度低下の場合を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係る化学蓄熱システムの水位制御シーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
参考例
本発明の参考例に係る化学蓄熱システム10について、図1図5に基づいて説明する。
図1には、本発明の参考例に係る化学蓄熱システム10の基本構成が示され、図2には、蒸発・凝縮器16の基本構成が示され、図3には蒸発流路32における水位制御システムが示され、図4には水位センサと水位の関係が示され、図5には水位制御シーケンスを示すフローチャートが示されている。
【0024】
図1の模式図に示すように、化学蓄熱システム10は、化学蓄熱材14が内蔵された反応器12を有している。化学蓄熱材14は、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等で形成され、脱水反応を生じることで蓄熱し、水和反応を生じることで放熱する特性を備えている。
【0025】
以下、化学蓄熱材として、アルカリ土類金属の水酸化物の1つである水酸化カルシウム(CaO/Ca(OH))を採用した例について説明する。従って、反応器12内では、以下に示す反応で蓄熱、放熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
CaO + HO ⇔ Ca(OH)+ΔH(kJ/mol)
【0026】
ここに、ΔHは反応熱量であり、反応器12には、水和反応で生じた反応熱量(放熱速度)を供給先へ搬送する、図示しない搬送装置が設けられている。
反応器12は、水和反応用の蒸気を発生させる蒸発・凝縮器16と蒸気配管28で接続され、蒸気配管28を介して蒸発・凝縮器16から反応器12へ蒸気が供給される。更に、蒸発・凝縮器16は、反応器12で発生した脱水反応時の水蒸気を凝縮させ、液体(水)にして回収する。
【0027】
蒸気配管28は、気密状態で蒸発・凝縮器16と反応器12を連結され、蒸気配管28には、蒸気の流れを制御するバルブ30が取り付けられている。
蒸発・凝縮器16は、図2(a)の斜視図に示すように、中空柱状に形成され、上面の中央部には開口部78が設けられ、開口部78が蒸気配管28と連結されている。
【0028】
図2(b)の水平断方向面図、図2(c)の鉛直方向断面図に示すように、蒸発・凝縮器16の中央部には、水(反応液)を貯留し蒸発させる蒸発流路32が設けられ、蒸発流路32の上部が開口部78とされている。蒸発流路32で発生した蒸気は、矢印R1方向へ移動する(図2(c)参照)。蒸発流路32の両側面には、蒸発流路32と接して、加熱用の熱媒又は冷却用の冷媒を供給させる媒体流路34が設けられている。
【0029】
蒸発流路32と媒体流路34は、熱伝導率の高い材料で形成された熱交換隔壁38で鉛直方向に区画されている。蒸発流路32の下部には、蒸発流路32へ水を注入するための注入管25と、蒸発流路32から水を排出する排出管27が設けられている。また、媒体流路34の下部と上部には、加熱用又は冷却用の媒体を矢印R2(図2(c)参照)方向に供給させる入口管17aと出口管17bが設けられている。
【0030】
蒸発流路32は、水を貯留する貯留槽22と配管25、27で接続されている。配管25には供給ポンプ24が設けられ、貯留槽22から蒸発流路32へ水を供給する。このとき水の入口は蒸発流路32の底面に設けられ、矢印R3で示すように、水は底面から上方へ注入される(図2(c)参照)。
【0031】
また、排出ポンプ26により、蒸発流路32に貯留された水を貯留槽22へ排出することができる。
供給ポンプ24と排出ポンプ26は、いずれも回転数制御機能を備えており、回転数を増大させて水の搬送量を増大させ、回転数を減少させて水の搬送量を減少させることができる。
【0032】
また、媒体流路34は、媒体供給装置18と配管17a、17bで接続されている。媒体供給装置18は、媒体流路34に媒体(熱媒又は冷媒)を供給させる。媒体供給装置18が熱媒を供給させることで、蒸発流路32に貯留させた水を加熱して蒸発させ(図2(a)の矢印R1参照)、冷媒を供給させることで、蒸発流路32に送られた蒸気を凝縮させる(図2(a)の矢印R4参照)。
【0033】
蒸発流路32には、蒸発流路32に貯留された未蒸発の水を検出する水位センサ88が設けられている。水位センサ88は、予め設定された目標生成蒸気量から求められた目標液位h(m)と同じ高さに設置されている。
【0034】
ここに、水位センサ88のプローブには、光ファイバプローブ、伝導率式、静電容量式、抵抗発熱体式、超音波式、レベルスイッチ式のいずれか1つが採用され、液体が検出された場合には図示しない変換部から検出信号I(t)=1が出力され、気体が検出された場合には検出信号I(t)=0が出力される。
【0035】
水位センサ88、供給ポンプ24及び排出ポンプ26は、それぞれリード線38でコントローラ36と接続されている。
コントローラ36には、図示しないCPU、ROM、RAMが組み込まれ、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、水位センサ88の出力から、供給ポンプ24及び排出ポンプ26の回転数を制御して、水位を目標水位に制御する。
【0036】
以上説明した構成とすることにより、反応液供給回収装置20により、貯留槽22から供給された水は、蒸発・凝縮器16の蒸発流路32で、媒体流路34の熱媒と熱交換され蒸気に変換される。生成された蒸気は、反応器12内に充填された蓄熱材14と反応して、反応熱量を発生させる。
【0037】
このとき、蒸発流路32に貯留させた水量を増やす(蒸発流路32における水位を高くする。)ことで、熱交換隔壁38における媒体流路34との熱交換面積が増し、交換熱量を増大させることができる。
【0038】
次に図3図5を用いて、制御手順を説明する。
先ず、コントローラ36は、蒸発通路32で蒸発させる目標生成蒸気量F(mol/sec)を設定する(ステップ100)。また、目標生成蒸気量Fを実現するための目標水位h(m)と、目標水位hまで到達させるための目標制御時間t(sec)を設定する(ステップ101)。ここに、目標水位hは必要蒸発水量、蒸発流路32の伝熱面積、熱交換特性、水の物性値等により決定される。
【0039】
次に、コントローラ36は、供給ポンプ24を制御して、蒸発流路32へ水の供給を開始する。運転開始直後の初期供給においては、蒸発流路32には未蒸発水は存在していないため、下式(1)で示す、目標生成蒸気量Fを上回る水量Fを供給する(ステップ102)。
【0040】
=F+h・A・ρ/(M・t) …(1)
ここに、F:設定された目標生成蒸気量(mol/sec)
:目標水位(m)
:蒸発流路の流路断面積(m
ρ :反応液の密度(kg/m3)
M :反応液の分子量(kg/mol)
t :液位高さへの目標制御時間(sec)
【0041】
次いで、水位センサ88から変換器89を介して出力された検出信号I(t)を読み込む(ステップ103)。変換器89で変換された検出信号I(t)が「0」の時は、水位センサ88の位置が液体であり(図4(b)参照)、水位hが目標水位hより高いため、次のステップ104へ進む。
【0042】
一方、変換器89で変換された検出信号I(t)が「1」の時は、水位センサ88の位置が気体であり(図4(a)参照)、未だ水位hが目標水位hより低いため、ステップ102へ戻り、水の初期供給を継続する。検出信号I(t)が「0」になるまで、継続して水を供給する。
【0043】
水位hが上昇して、水位センサ88の位置(目標水位h)を越えたとき、水位センサ88からは、液体検出信号(検出信号I(t)=0)が出力され、コントローラ36は、供給水量Fを減少させ、新たな一定の供給水量F(F=F)を継続して供給する(ステップ104)。水位hが一定に制御された流路32では、供給水量と生成蒸気量は等価となるため、供給水量Fを一定に維持することで、目標生成蒸気量Fを維持することができる。
【0044】
次いで、水位hが上昇し、水位センサ88からの出力が液体を検出(検出信号I(t)=0)したとき(ステップ105)、コントローラ36は、供給水量Fを減少させて(F=F−ΔF)ステップ105へ戻る(ステップ107)。
【0045】
水位hが低下して、水位センサ88からの出力が気体を検出(検出信号I(t)=1)したとき、コントローラ36は、供給水量を増加させ(F=F+ΔF)ステップ108へ進む(ステップ106)。
蒸気の生成を継続する時はステップ105へ戻り、蒸気の生成を終了する時は水の供給を終了させる(ステップ108)。
以上説明した手順により、蒸発流路32における水位hが、目標水位hに制御されるため、目標生成蒸発量を安定して維持することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態においては、蒸発流路32における水位を一定に制御することが可能となり、外乱(例えば媒体温度変化、蒸気消費量変化など)により発生する、物質アンバランスによる液オーバーフロー、蒸発流路内ドライアウト等を回避することができる。
【0047】
なお、本実施の形態においては、蒸発流路32の熱交換は、いわゆるコフロータイプの熱交換器の例で説明した。しかし、これに限定されることはなく、カウンターフロタイプやクロスフロータイプの熱交換器でもよい。
【0048】
第1の実施形態
本発明の第1の実施形態に係る化学蓄熱システム40について、図6図8に基づいて説明する。
図6には、本発明の第1の実施形態に係る化学蓄熱システム40の基本構成が示され、図7には、蒸発流路32に設けられた水位センサ90、91の位置と水位の関係が示され、図8には制御フロー図が示されている。
【0049】
図6に示すように、第1の実施形態係る化学蓄熱システム40は、供給された水位hを計測する、2個の水位センサ90、91が、蒸発流路32に取り付けられている。また、供給ポンプ24には、貯留槽22から蒸発流路32へ供給する水量の計測手段が設けられている。参考例と同一の部位には同一の番号を付して、参考例との相違点を中心に説明する。
【0050】
水位センサ90、91は、目標水位hを挟んで上下方向に所定の間隔Δhを開けて、高さh、hの位置にそれぞれ取り付けられている。ここに、目標水位h=(h+h)/2(m)とされている。水位センサ90、91は、参考例で説明した水位センサ88と同じ構成であり、水位センサ90、91の位置における水の状態が気相であるか液相であるかを検出する。
【0051】
また、2個の水位センサ90、91の所定の間隔Δhは、目標生成蒸気量Fの許容範囲から求められた、目標生成蒸気量Fを確保するために定められた目標水位hの水位変動の許容限度Δhmの範囲内とされている。
【0052】
コントローラ54は、後述するように、2個の水位センサ90、91及び供給ポンプ24からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を推定生成蒸気量F‘とし、目標生成蒸気量Fと推定生成蒸気量F‘との差から制御量|ΔF|を求め、供給ポンプ24を制御して、蒸発流路32に貯留された水位hを目標水位hに制御する。
これにより、水位hを、目標水位hからの液位変動の許容限度Δhmの範囲内に制御することが可能となる。
【0053】
本実施の形態による制御を、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
先ず、記述の参考例と同様に、コントローラ54は、蒸発通路32で蒸発させる目標生成蒸気量Fを設定する(ステップ100)。また、目標生成蒸気量F(mol/sec)を実現するための目標水位h(m)と、目標水位hまで到達させるための目標制御時間t(sec)を設定する(ステップ101)。
【0055】
次に、蒸発通路32への水の供給を開始する。初期供給においては、下式(2)で示す水量Fを供給する(ステップ110)。ここに、水位hは高い方の水位センサ91の位置である。
=F+h・A・ρ/(M・t) …(2)
ここに、F:設定された目標生成蒸気量(mol/sec)
:上側の水位センサ高さ(m)
Ac:蒸発流路の流路断面積(m
ρ :反応液の密度(kg/m3)
M :反応液の分子量(kg/mol)
t :液位高さへの目標制御時間(sec)
【0056】
次いで、水位センサ90、91の出力を、変換機89を介して検出信号I(t)、I(t)として読み込む(ステップ111)。検出信号I(t)が「0」となったとき、上側の水位センサ91まで水位が達している状態であり(図7(b)参照)、次のステップ112へ進む。
検出信号I(t)が「1」の時は水位センサ91の位置が気体であり、未だ上側の水位センサ91まで水位が上昇していない状態であり(図7(a)、(c)参照)、ステップ110へ戻り、水の初期供給を継続する。
【0057】
水位が上昇して、水位センサ91の位置hに到達したとき、供給水量Fを減少させ、新たな一定の供給水量F(F=F)を継続して供給する(ステップ112)。水位が一定に制御された蒸発器では、供給水量と生成蒸気量は等価となるため、供給水量Fを一定に維持することで、目標生成蒸気量Fを維持することができる。
【0058】
次いで、2つの水位センサ90、91が水を検出した時間のずれから、検出の遅れ時間Δt(sec)を算出する(ステップ113)。この遅れ時間Δt(sec)は、2個の水位センサ90、91の間を水位が上昇(水位が下降)するのに要した時間となる。
【0059】
遅れ時間Δt(sec)、供給水量F(mol/sec)、蒸発流路の断面積Ac(m)等から推定生成蒸気量F‘が下式(3)で求められる。
FV‘=F−ρ/M・(h−h)・Ac/Δt(mol/sec) …(3)
ここに、ρ :密度(kg/m
M :分子量(kg/mol)
Ac:蒸発流路断面積(m
Δt:遅れ時間(sec)
【0060】
続いて、目標生成蒸気量Fと推定生成蒸気量F‘との差から制御量ΔFを算出する(|ΔF|=|F−F’|)。
【0061】
水位が上昇し、水位センサ91からの出力が液体を検出(検出信号I(t)=0)したとき、(ステップ114)、供給水量Fを減少させて(F=F−ΔF)、ステップ113へ戻る(ステップ116)。
【0062】
一方、液位が低下して、水位センサ90からの出力が気体を検出(検出信号I(t)=1)したときは、供給水量Fを増大させて(F=F+ΔF)、ステップ113へ戻る(ステップ117)。
蒸気の生成を継続する時はステップ113へ戻り、蒸気の生成を終了する時は水の供給を終了させる(ステップ118)。
【0063】
以上説明した手順により、2つの水位センサ90、91を用いることで、蒸発流路32における水位hが、目標水位hに制御されるため、目標生成蒸発量を安定して維持することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態においては、液位高さを一定に制御することが可能となり、外乱(例えば媒体温度変化、蒸気消費量変化など)により発生する、物質アンバランスによる液オーバーフロー、蒸発流路内ドライアウト等を回避することができる。
なお、他の構成は参考例と同様であり、説明は省略する。
【0065】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態に係る化学蓄熱システム80について、図9図13に基づいて説明する。図9には、本発明の第2の実施形態に係る化学蓄熱システム80の基本構成が示され、図10には蒸発流路32における水位センサと水位の関係が示され、図11外乱による反応器の反応速度変化が示され、図12には外乱による水位変化が示され、図13には制御フロー図が示されている。
【0066】
図9に示すように、第2の実施形態係る化学蓄熱システム80は、蒸発流路32に貯留された水位hを計測する4個の水位センサ92、93、94、95が取り付けられている。また、供給ポンプ24には、貯留槽22から蒸発流路32へ供給する反応水量の計測手段が設けられている。参考例と同一の部位には同一の番号を付して、参考例との相違点を中心に説明する。
【0067】
4個の水位センサ92、93、94、95は、いずれも参考例に係る水位センサ88と同じ構成であり、それぞれの設置位置における水の状態が、気相であるか液相であるかを検出する。最下部と最上部の2個の水位センサ92、95は、高さh、hに配置され、目標液位hを挟んで上下方向に所定の間隔Δh14を開けて取り付けられている(目標液位h=(h+h)/2(m))。
【0068】
また、最下部の水位センサ92と、その直上(下から2番目)の水位センサ93との2個の間隔Δh12は、最上部の水位センサ95と、その直下(下から3番目)の水位センサ94との2個の間隔Δh34より広くされている(図10(a)参照)。
また、最下部の水位センサ92と最上部の水位センサ95との所定の間隔Δh14は、設定された生成蒸気量の許容範囲から求められた、目標液位からの液位変動の許容限度の範囲内に設定されている(図10(a)参照)。
【0069】
コントローラ36は、下部2個の水位センサ92、93、及び供給ポンプ24からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を下部推定生成蒸気量とし、上部2個の水位センサ94、95、及び供給ポンプ24からの出力に基づいて求めた生成蒸気量を上部推定生成蒸気量とする。
【0070】
また、コントローラ36は、目標生成蒸気量と下部推定生成蒸気量、及び目標生成蒸気量と上部推定生成蒸気量との差から、後述する方法で制御量を求め、供給ポンプ24を制御して水位hを、目標水位hに制御する。
これにより、蒸発通路32に貯留させた水を、目標液位hからの液位変動の許容限度Δhの範囲内に制御することが可能となる。
【0071】
ここで、第1の実施形態で説明した2個の水位センサ90、91による制御の問題点として、例えば、図11(a)の特性Qに示すように、外乱により反応器12の温度が急激に低下した場合、反応器12からの要求出力が一時的に増加する場合がある。このような外乱に対して、2つの水位センサ90、91間の検出距離Δhが短いため、水位低下を計測する時間が短かく(図12(a)参照)、制御量の正確な算出が困難となる。
【0072】
更に、図11(b)の特性Qに示すように、外乱により反応器12の温度が緩やかに上昇した場合、水位センサ90、91間の検出距離Δhが長いため、水位上昇に時間がかかり過ぎて(図12(b)参照)、制御が不安定となる点がある。
本実施形態では、4個の水位センサ92、93、94、95を用いることで、以下に示すように、これらの問題点を解消することができる。
【0073】
次に、具体的な制御方法について、図13のフローチャートを用いて説明する。
先ず、参考例と同様に、コントローラ86は、蒸発通路32で蒸発させる目標生成蒸気量Fを設定する(ステップ100)。また、目標生成蒸気量F(mol/sec)を実現するための目標水位h(m)と、目標水位hまで到達させるための目標制御時間t(sec)を設定する(ステップ101)。
【0074】
次に、水の供給を開始する。初期供給においては、水位hを目標にして下式(4)で示す水量Fを供給する(ステップ120)。水位hは、水位センサ93の位置の水位である。
=F+h・A・ρ/(M・t) …(4)
ここに、F:設定された目標生成蒸気量(mol/sec)
:水位センサ95の高さ(m)
Ac:蒸発流路の流路断面積(m
ρ :反応液の密度(kg/m
M :反応液の分子量(kg/mol)
t :液位高さへの目標制御時間(sec)
【0075】
水位センサ93の位置で水が検出されるまで(水位センサ93の出力信号が「0」になるまで)、(4)式で示す水量Fを供給する(ステップ121)。
【0076】
水位が上昇して、水位センサ93の位置hに到達しとき、供給水量Fを減少させ、新たな一定の供給水量F(F=F)とし、継続して水を供給する(ステップ122)。水位が一定に制御された蒸発器では、供給水量と生成蒸気量は等価となるため、供給水量Fを一定に維持することで、目標生成蒸気量Fを維持することができる。
【0077】
次いで、一定の供給水量F(F=F)状態において、水位センサ92、93、94、95の変換器89を介した検出信号I(t)、I(t)、I(t)、I(t)を読み込み、下部2個の水位センサ92、93間の出力の遅れ時間Δt12(sec)、及び上部2個の水位センサ92、93間の出力の遅れ時間Δt34(sec)を算出して次のステップ124へ進む(ステップ123)。
【0078】
ステップ124では、水位が上昇して、水位センサ95の位置hに到達したか否かを判断する。即ち、検出信号I(t)が「1」の時は、水位センサ95の位置が気体であり、水位が上昇していないため、ステップ125へ進む。
一方、水位が上昇して、水位センサ95の位置hに到達しとき(図10(b)参照)、供給水量Fを減少させ、新たな一定の供給水量F(F=F−ΔFL34)とし、継続して供給する(ステップ126)。
【0079】
一方、水位hが低下して、図10(d)に示すように、水位センサ92からの出力が気体を検出(検出信号I(t)=1)したときは(ステップ125)、供給水量を増大させ(F=F+ΔFL12)ステップ123へ戻る(ステップ127)。
【0080】
ここに、下部制御量(ΔFL12)及び上部制御量(ΔFL34)は次の手順で算出する。
遅れ時間Δt12及びΔt34(sec)、液供給量F(mol/sec)、蒸発流路断面積Ac(m)等から、下部推定生成蒸気量FV12‘と上部推定生成蒸気量FV34‘を下式(5)(6)で算出する。
V12‘=FL-ρ/M・(h−h)・Ac・Δt12(mol/sec) …(5)
V34‘=FL-ρ/M・(h−h)・Ac・Δt34(mol/sec) …(6)
ここに、ρ :密度(kg/m
M :分子量(kg/mol)
Ac:蒸発流路断面積(m
Δt12:下部2個の水位センサ間の遅れ時間(sec)
Δt34:上部2個の水位センサ間の遅れ時間(sec)
【0081】
続いて、目標生成蒸気量Fと下部推定生成蒸気量FV12‘、及び目標生成蒸気量Fと上部推定生成蒸気量FV34‘との差から、下部制御量ΔFL12(|ΔFL12|=|F−FV12’|)、上部制御量ΔFL34(|ΔFL34|=|F−FV34’|)を算出する。
【0082】
水位hが上昇し、水位センサ95からの出力が液体を検出(検出信号I(t)=0)したとき、(ステップ124)、供給水量Fを減少させて(F=F−ΔFL34)ステップ123へ戻る(ステップ126)。このとき、上部水位センサ94、95は狭く配置しているので、外乱により反応器12の温度が緩やかに上昇した場合でも、水位上昇に時間がかかり過ぎるという問題点が解消される。
【0083】
一方、上述したように、水位hが低下して、水位センサ92からの出力が気体を検出(検出信号I(t)=1)したときは(ステップ125)、供給水量を増大させ(F=F+ΔFL12)ステップ123へ戻る(ステップ127)。
このとき、下部水位センサ94、95は広く配置しているので、外乱により水位低下の速度が早くても、制御量の正確な算出が困難となる問題点が解消される。
【0084】
続いて、蒸気の生成を継続する時はステップ123へ戻り、蒸気の生成を終了する時は水の供給を終了させる(ステップ128)。
以上説明した手順により、4つの水位センサ92、93、94、95を用いることで、水位hが目標水位hに制御されるため、目標生成蒸発量を安定して維持することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態においては、4個の水位センサで水位を一定に制御することが可能となり、外乱(例えば媒体温度変化、蒸気消費量変化など)により発生する、物質アンバランスによる液オーバーフロー、蒸発流路内ドライアウト等を回避することができる。
なお、他の構成は参考例と同様であり、説明は省略する。
【符号の説明】
【0086】
10、40、80 化学蓄熱システム
12 反応器
14 化学蓄熱材
16、74、86 蒸発・凝縮器
18 媒体供給装置(媒体供給手段)
22 貯留槽
24 供給ポンプ(搬送装置)
26 排出ポンプ(搬送装置)
32 蒸発流路
34 媒体流路
36、54、86 コントローラ(制御手段)
48 供給ポンプ(搬送装置、反応液流量計測手段)
50 排出ポンプ(搬送装置、反応液流量計測手段)
88、90、91、92、93、94,95 水位センサ(液位検出手段)
h 水位
目標水位
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図1